(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
本発明の一側面に係る半導体モジュールは、電力変換回路を含む半導体モジュールであって、回路基板と、上記回路基板に搭載されており、上記電力変換回路における上アームを構成する第1トランジスタと、上記回路基板に搭載されており、上記電力変換回路における下アームを構成しており上記第1トランジスタに電気的に直列接続される第2トランジスタと、を備え、上記回路基板は、第1絶縁部、上記第1絶縁部上に設けられる第2絶縁部及び上記第1絶縁部と上記第2絶縁部との間に配置される導電層を有する基板と、 上記第2絶縁部上に設けられており、上記電力変換回路に第1電力を供給する第1入力端子が接続されると共に、上記第1トランジスタが搭載される第1入力用配線パターンと、 上記第2絶縁部上に設けられており、上記電力変換回路に上記第1電力より低い第2電力を供給する第2入力端子が接続される第2入力用配線パターンと、上記第2絶縁部上に設けられており、上記電力変換回路からの出力電力を取り出す出力端子が接続されると共に、上記第2トランジスタが搭載される出力用配線パターンと、を備え、上記第1トランジスタは、上記第1入力用配線パターンを介して上記第1電力が入力されるように、上記第1入力用配線パターンに電気的に接続されており、上記第2トランジスタは、上記第2入力用配線パターンを介して上記第2電力が入力されるように、上記第2入力用配線パターンに電気的に接続されており、上記導電層は、第1領域と、上記第1領域に電気的に接続される第2領域と、を有し、上記第1領域は、上記第1入力用配線パターンと対向しており、上記第2領域は、上記第2入力用配線パターンに電気的に接続されており、上記導電層は、上記第1入力用配線パターン及び上記出力用配線パターンと上記第2絶縁部により絶縁されている。
【0012】
上記構成では、第1入力端子と第2入力端子が電気的に接続される第1入力用配線パターン及び第2入力用配線パターンの間に、第1トランジスタと第2トランジスタとが電気的に直列接続されることで、電力変換回路が構成されている。よって、第1入力端子と第2入力端子の間に入力される電力を上記電力変換回路で変換して、出力用配線パターン及び出力端子を介して取り出すことができる。
【0013】
回路基板が備える基板は、第1絶縁部と第2絶縁部の間に配置される導電層を有する。導電層の第2領域は、第2入力端子が電気的に接続される第2入力用配線パターンと電気的に接続されている一方、第1入力用配線パターン及び出力用配線パターンと第2絶縁部により絶縁されている。よって、導電層の電位は、第2入力用配線パターンの電位と同様である。第1領域は、第1入力端子が電気的に接続される第1入力用配線パターンと対向配置されていることから、導電層の第1領域と第1入力用配線パターンと第2絶縁部とによりコンデンサが構成されている。このコンデンサは、第1入力用配線パターン及び第2入力用配線パターンの間に直列接続された第1トランジスタと第2トランジスタに対して並列接続されており、サージ電圧吸収用コンデンサとして機能する。第1入力用配線パターンには、第1トランジスタが搭載されることから、上記サージ電圧吸収用のコンデンサは第1トランジスタの近傍に配置されている。よって、サージ電圧を確実に抑制できる。
【0014】
上記出力用配線パターンの一部は、上記第1入力用配線パターンと上記第2入力用配線パターンの間に配置されていてもよい。
【0015】
上記基板の厚さ方向からみて、上記導電層は、上記出力用配線パターンと重なっていなくてもよい。出力用配線パターンの電位は、出力電力に応じたものであるため、時々刻々と変化する。そのため、仮に、上記基板の厚さ方向からみて、出力用配線パターンと、導電層との間に重複領域が存在すると、出力用配線パターンと導電層間に寄生容量が形成される。そのため、形成された寄生容量に応じた変位電流が出力用配線パターンから導電層を介して第2入力用配線パターンに流れ、第2入力用配線パターンに電位分布が生じる。上記のように、上記基板の厚さ方向からみて、上記導電層は、上記出力用配線パターンと重なっていない形態では、上記電位分布を抑制できる。その結果、第2入力用配線パターンを介して第2トランジスタに入力される第2電力を安定化できる。
【0016】
上記回路基板は、上記第2絶縁部上において、上記第1入力用配線パターンに隣接して設けられる補助配線パターンを有し、上記導電層は、上記補助配線パターンと電気的に接続されており、上記補助配線パターンと上記第1入力用配線パターンは、サージ電圧吸収素子により接続されていてもよい。
【0017】
上記補助配線パターンは、導電層と電気的に接続されていることから、第2入力用配線パターンと同じ電位を有する。したがって、上記構成では、第1入力端子が電気的に接続される第1入力用配線パターンと、第2入力端子が電気的に接続される第2入力用配線パターンとが、サージ電圧吸収素子により接続されている。このサージ電圧吸収素子でもサージ電圧を吸収できるので、サージ電圧をより一層抑制できる。
【0018】
一実施形態において、上記第1トランジスタを複数有し、複数の上記第1トランジスタは、上記第1入力用配線パターンに搭載されると共に、電気的に並列接続されており、 上記第2トランジスタを複数有し、複数の上記第2トランジスタは、上記出力用配線パターンに搭載されると共に、電気的に並列接続されていてもよい。この場合、半導体モジュールにより大きな電流を流し得る。
【0019】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1に模試的に示した半導体モジュール1は、インバータ装置といった電力変換装置として機能する。半導体モジュール1は、複数のトランジスタTrと、回路基板10と、を備える。半導体モジュール1は、複数のダイオードDiを備えてもよく、トランジスタTrが搭載された回路基板10を収容するケース2を備えてもよい。
図1では、ケース2を破線で模式的に示している。ケース2は、例えば樹脂から構成される。ケース2内において、トランジスタTrは、例えばシリコーンゲルで埋設されている。
【0021】
以下では、断らない限り、半導体モジュール1が、ダイオードDi及びケース2を備えた形態について説明する。説明において、回路基板10の厚さ方向に直交する2つの方向を、
図1に示したように、X方向及びY方向と称する場合もある。X方向及びY方向は直交している。
【0022】
複数のトランジスタTrは、回路基板10に搭載されている。トランジスタTrは、縦型トランジスタであり、第1上部電極SPと、第2上部電極GPと、下部電極DP(
図5及び
図6参照)とを有する。第1上部電極SP及び下部電極DPのそれぞれは、トランジスタTrに電力(例えば電圧)を供給するための第1主電極及び第2主電極である。第2上部電極GPは、トランジスタTrに制御信号(或いは制御電圧)を供給するための制御電極である。トランジスタTrは、第2上部電極GPに印加される制御信号に応じて第1上部電極SP及び下部電極DP間の導通状態が制御される。これにより、トランジスタTrは、スイッチング素子として機能する。トランジスタTrは横型トランジスタでもよい。
【0023】
トランジスタTrの材料の例は、SiC、GaN等のワイドバンドギャップ半導体及びSiを含む。トランジスタTrの例は、MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)でもよいし、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)でもよい。
【0024】
トランジスタTrがMOSFETである場合、第1上部電極SP、第2上部電極GP及び下部電極DPは、それぞれソース電極、ゲート電極及びドレイン電極に対応する。トランジスタTrがIGBTである場合、第1上部電極SP、第2上部電極GP及び下部電極DPはそれぞれ、エミッタ電極、ゲート電極及びコレクタ電極に対応する。以下、断らない限り、トランジスタTrは、MOSFETである。
【0025】
複数のトランジスタTrは、電力変換回路3を構成するように、電気的に接続されている。本実施形態において、電力変換回路3は、単相インバータ回路である。この場合、半導体モジュール1は、例えば2in1タイプの半導体モジュールである。複数のトランジスタTrのうち、電力変換回路3における上アームを構成するトランジスタTrを第1トランジスタTr1と称し、下アームを構成するトランジスタTrを第2トランジスタTr2と称す。
図1では、半導体モジュール1が2個の第1トランジスタTr1及び2個の第2トランジスタTr2を有する形態について例示しているが、第1トランジスタTr1及び第2トランジスタTr2のそれぞれの個数は2個に限定されない。
【0026】
複数のダイオードDiは、回路基板10に搭載され、電力変換回路3において還流ダイオードとして機能する。複数のダイオードDiは、第1トランジスタTr1に対応した第1ダイオードDi1と、第2トランジスタTr2に対応した第2ダイオードDi2とを含む。第1ダイオードDi1の個数は、例えば第1トランジスタTr1の数と同数であってもよいし、異なってもよい。同様に、第2ダイオードDi2の個数は、第2トランジスタTr2の数と同数であってもよいし、異なってもよい。
【0027】
次に、回路基板10について説明する。
【0028】
図2に模式的に示したように、回路基板10は、基板11と、Pパッド(第1入力用配線パターン)12と、Nパッド(第2入力用配線パターン)13と、Oパッド(出力用配線パターン)14とを有する。
図2は、回路基板10の構成を説明するための模式図であり、見やすさの観点から導線W1〜W8を省略している。回路基板10は、第1制御用パッド15及び第2制御用パッド16を有してもよく、第1補助パッド17及び第2補助パッド18を有してもよい。以下では、回路基板10が、第1制御用パッド15、第2制御用パッド16、第1補助パッド17及び第2補助パッド18を有する形態について説明する。
【0029】
基板11は、
図2〜
図6に示したように、絶縁性の本体部111と、その内部に設けられた導電層112を有する。基板11の裏面には、放熱層RLが形成されてもよい。放熱層RLの材料の例は、Pパッド12、Nパッド13などのパッド材料と同じで有り得る。断らない限り、本実施形態では基板11の裏面には放熱層RLが形成されている。
【0030】
本体部111は板状を呈する。本体部111の材料の例は、AlN、SiN、Al
2O
3などのセラミックスである。導電層112は、本体部111の厚さ方向において、表面と裏面との間にそれらに平行に配置されている。説明の便宜上、本体部111のうち、導電層112より裏面側の部分を第1絶縁層(第1絶縁部)111aと称し、導電層112より表面側の部分を第2絶縁層(第2絶縁部)111bと称する場合もある。この場合、基板11は、第1絶縁層111a上に、導電層112及び第2絶縁層111bが順に設けられた積層体である。
図3は、導電層112を説明するために、基板11から第2絶縁層111bを取り除いた状態に対応する図面である。
図4〜
図6では、第1絶縁層111aと第2絶縁層111bとを示すために、第1絶縁層111aと第2絶縁層111bとの境を便宜的に二点鎖線で示している。
【0031】
図2に示したように、Pパッド12は、基板11の表面11a上(換言すれば、第2絶縁層111b上)に設けられており、電力変換回路3に、正電圧といった正電力(第1電力)を供給するための電極パターン(又は配線パターン)である。Pパッド12の材料の例は、銅である。Pパッド12は、第1領域121と第2領域122とを有する。
図2では、第1領域121と第2領域122との境界を便宜的に二点鎖線で示している。これは、他の図(例えば
図1)でも同様である。
【0032】
第1領域121は、複数の第1トランジスタTr1が搭載されるトランジスタ搭載領域である。第1領域121には、各第1トランジスタTr1に対応する第1ダイオードDi1も搭載される。第1領域121は、複数の第1トランジスタTr1及び複数の第1ダイオードDi1を搭載可能な面積を有すればよい。第1領域121の形状は限定されないが、例えば矩形又は正方形といった四角形である。
【0033】
各第1トランジスタTr1は、下部電極DPが第1領域121に対向し、それらが電気的に接続されるように、第1領域121に搭載される。第1ダイオードDi1は、カソードCP(
図6参照)が第1領域121に対向し、それらが電気的に接続されるように、第1領域121に搭載される。下部電極DP及びカソードCPは、例えば半田又は焼結材により第1領域121に固定され得る。
【0034】
第1領域121における複数の第1トランジスタTr1及び複数の第1ダイオードDi1の配置状態は限定されない。例えば複数の第1トランジスタTr1は、
図2に示したようにX方向に沿って配置され、複数の第1ダイオードDi1は、対応する第1トランジスタTr1に対して第2領域122寄りに隣接して配置され得る。
【0035】
第2領域122は、半導体モジュール1に正電力を供給するためのP端子(第1入力用端子)21が接続される領域である。P端子21の一端は、例えば半田又は焼結材により第2領域122に固定され得る。P端子21の他端は、ケース2(
図1参照)の外側に位置し、外部機器(又は外部回路)が接続される。よって、第2領域122は、P端子21を介して外部機器(又は外部回路)に接続されるので、外部接続領域として機能する。
【0036】
第2領域122は、P端子21が接続され得る面積を有すればよい。第2領域122は、第1領域121に連続的に繋がっている。第2領域122は、基板11の縁部近傍に形成され得る。
図2は、第2領域122が、基板11の縁部11b近傍に形成された例を示している。
【0037】
Nパッド13は、基板11の表面11a上(換言すれば、第2絶縁層111b上)に設けられている。Nパッド13には、電力変換回路3に負電圧といった負電力(第2電力)を供給するためのN端子(第2入力用端子)22が接続される。よって、Nパッド13は、電力変換回路3に負電力を供給するための電極パターン(又は配線パターン)である。Nパッド13の材料の例は、銅である。N端子22の一端は、例えば半田又は焼結材によりNパッド13に固定され得る。N端子22の他端は、ケース2の外側に位置し、外部機器(又は外部回路)が接続される。よって、Nパッド13は、N端子22を介して外部機器(又は外部回路)に接続される。Nパッド13は、N端子22が接続可能であるとともに、後述する配線(ワイヤリング)が可能である面積を有すればよい。Nパッド13は、例えば回路基板10の縁部近傍に配置される。
図2は、Nパッド13が、基板11の縁部11b近傍に配置されている例を示している。
【0038】
Oパッド14は、基板11の表面11a上(換言すれば、第2絶縁層111b上)に設けられている。Oパッド14の少なくとも一部は、Pパッド12とNパッド13の間に配置されている。Oパッド14は、電力変換回路3からの出力電力(例えば、交流電圧)を取り出すための電極パターン(又は配線パターン)である。Oパッド14の材料の例は、銅である。Oパッド14は、第1領域141と、第2領域142とを有する。
図2では、第1領域141と第2領域142との境界を便宜的に二点鎖線で示している。これは、他の図(例えば
図1)でも同様である。
【0039】
第1領域141は、複数の第2トランジスタTr2が搭載されるトランジスタ搭載領域である。第1領域141には、各第2トランジスタTr2に対応する第2ダイオードDi2も搭載される。第1領域141は、複数の第2トランジスタTr2及び複数の第2ダイオードDi2が搭載可能な面積を有していればよい。第1領域141の形状は限定されないが、例えば矩形又は正方形といった四角形である。
【0040】
各第2トランジスタTr2は、下部電極DPが第1領域141に対向し、それらが電気的に接続されるように、第1領域141に搭載される。各第2ダイオードDi2は、カソードCP(
図5参照)が第1領域141に対向し、それらが電気的に接続されるように、第1領域141に搭載される。下部電極DP及びカソードCPは、例えば半田又は焼結材により第1領域141に固定され得る。
【0041】
第1領域141における複数の第2トランジスタTr2及び複数の第2ダイオードDi2の配置状態は限定されない。例えば複数の第2トランジスタTr2は、
図2に示したようにX方向に沿って配置され、複数の第2ダイオードDi2は、対応する第2トランジスタTr2に対し第2領域142寄りに隣接して配置され得る。
【0042】
第2領域142は、電力変換回路3からの出力電力を取り出すためのO端子(出力用端子)23が接続される領域である。O端子23の一端は、例えば半田又は焼結材により第2領域142に固定され得る。O端子23の他端は、ケース2の外側に位置し、外部機器(又は外部回路)が接続される。よって、第2領域142は、O端子23を介して外部機器(又は外部回路)に接続されるので、外部接続領域として機能する。第2領域142は、O端子23が接続され得るとともに、後述する配線(ワイヤリング)が可能である面積を有すればよい。第2領域142は、通常、回路基板10の縁部近傍に形成され得る。
図2は、第2領域142が、基板11の縁部11b近傍に形成された例を示している。
図2に示した形態では、第2領域142は、Pパッド12の第2領域122とNパッド13の間に位置しており、第2領域122、第2領域142及びNパッド13は、X方向に沿って配置されている。
【0043】
第1制御用パッド15は、第1トランジスタTr1の第2上部電極GPに制御信号(ゲート信号又はゲート電圧)を供給するための第1制御端子24が接続される電極パターン(又は配線パターン)であり、ゲートパッドとして機能する。第1制御用パッド15の材料の例は、銅である。第1制御端子24の一端は、例えば半田又は焼結材により第1制御用パッド15に固定され得る。第1制御端子24の他端は、ケース2の外側に位置し、外部機器(又は外部回路)が接続される。よって、第1制御用パッド15は、第1制御端子24を介して外部機器(又は外部回路)に電気的に接続される。第1制御用パッド15は、第1制御端子24が接続可能であるとともに、後述する配線(ワイヤリング)が可能である面積を有していればよい。第1制御用パッド15は、第1トランジスタTr1の第2上部電極GPへの配線が容易なように、基板11上に配置されていればよい。
図2は、第1制御用パッド15が、基板11の縁部11bと反対側の縁部11c近傍に配置されている例を示している。
【0044】
第2制御用パッド16は、第2トランジスタTr2の第2上部電極GPに制御信号(ゲート信号又はゲート電圧)を供給するための第2制御端子25が接続される電極パターン(又は配線パターン)であり、ゲートパッドとして機能する。第2制御用パッド16の材料の例は、銅である。第2制御端子25の一端は、例えば半田又は焼結材により第2制御用パッド16に固定され得る。第2制御端子25の他端は、ケース2の外側に位置し、外部機器(又は外部回路)が接続される。よって、第2制御用パッド16は、第2制御端子25を介して外部機器(又は外部回路)に電気的に接続される。第2制御用パッド16は、第2制御端子25が接続可能であるとともに、後述する配線(ワイヤリング)が可能である面積を有していればよい。第2制御用パッド16は、第2トランジスタTr2の第2上部電極GPへの配線が容易なように、基板11上に配置されていればよい。
図2は、第2制御用パッド16が、基板11の縁部11c近傍に配置されている例を示している。
【0045】
第1補助パッド17は、第1トランジスタTr1の第1上部電極SPの電位を取り出すための第1補助端子26が接続される電極パターン(又は配線パターン)である。第1補助パッド17の材料の例は、銅である。第1補助端子26の一端は、例えば半田又は焼結材により第1補助パッド17に固定され得る。第1補助端子26の他端は、ケース2の外側に位置し、外部機器(又は外部回路)が接続される。よって、第1補助パッド17は、第1補助端子26を介して外部機器(又は外部回路)に電気的に接続される。第1上部電極SPがソース電極である場合、第1補助パッド17は、半導体モジュール1における上アーム側ソースパッドとして機能する。第1補助端子26から取り出された第1上部電極SPの電位は、例えば、第1トランジスタTr1の第2上部電極GPに供給する制御信号の生成に利用され得る。第1補助パッド17は、第1トランジスタTr1の第1上部電極SPへの配線が容易なように、基板11上に配置されていればよい。
図2は、第1補助パッド17が、基板11の縁部11c近傍に配置されている例を示している。第1補助パッド17は、第1補助端子26が接続可能であるとともに、後述する配線(ワイヤリング)が可能である面積を有していればよい。
【0046】
第2補助パッド18は、第2トランジスタTr2の第1上部電極SPの電位を取り出すための第2補助端子27が接続される電極パターン(又は配線パターン)である。第2補助パッド18の材料の例は、銅である。第2補助端子27の一端は、例えば半田又は焼結材により第2補助パッド18に固定され得る。第2補助端子27の他端は、ケース2の外側に位置し、外部機器(又は外部回路)が接続される。よって、第2補助パッド18は、第2補助端子27を介して外部機器(又は外部回路)に電気的に接続される。第1上部電極SPがソース電極である場合、第2補助パッド18は、半導体モジュール1において下アーム側ソースパッドとして機能する。第2補助端子27から取り出された第1上部電極SPの電位は、例えば第2トランジスタTr2の第2上部電極GPに供給する制御信号の生成に利用され得る。第2補助パッド18は、第2トランジスタTr2の第1上部電極SP(ソース電極)への配線が容易なように、回路基板10上に配置されていればよい。
図2は、第2補助パッド18が、基板11の縁部11c近傍に配置されている例を示している。第2補助パッド18は、第2補助端子27が接続可能であるとともに、後述する配線(ワイヤリング)が可能である面積を有していればよい。
【0047】
P端子21、N端子22、O端子23、第1制御端子24、第2制御端子25、第1補助端子26及び第2補助端子27は、半導体モジュール1が、
図1に示したように、ケース2を有する形態では、半導体モジュール1の構成要素であり得る。
【0048】
導電層112は、
図2及び
図3に示したように、第1領域112aと、第2領域112bと、中間領域112cとを有する。導電層112の材料の例は、銅である。
【0049】
第1領域112aは、
図2及
図4に示したように、導電層112においてPパッド12と対向する領域である。
図2及び
図3に示したように、基板11の厚さ方向からみた第1領域112aの形状は、Pパッド12と実質的に同じであり得る。
【0050】
第2領域112bは、
図2及び
図5に示したように、導電層112においてNパッド13と対向する領域である。
図2及び
図3に示したように、基板11の厚さ方向からみた第2領域112bの形状は、Nパッド13と実質的に同じであり得る。
【0051】
中間領域112cは、
図2及び
図3に示したように、第1領域112aと第2領域112bとを繋ぐ領域であり、第1領域112aと第2領域112bに一体的に接続されている。これにより、第1領域112aと第2領域112bとは電気的に接続されている。
図3では、第1領域112aと中間領域112cとの境界及び第2領域112bと中間領域112cとの境界を便宜的に二点鎖線で示している。一実施形態において、基板11の厚さ方向からみて、中間領域112cは、
図2及び
図6に示したように、Oパッド14と重ならないように配置され得る。
【0052】
導電層112のうち第2領域112bは、
図5に示したように、Nパッド13と電気的に接続されている。具体的には、第2絶縁層111bに第2絶縁層111bを貫通するように形成された少なくとも一つのビア(導電部)Bにより、第2領域112bとNパッド13とが電気的に接続されている。導電層112は、第2絶縁層111b上に設けられた種々のパッドのうちNパッド13以外のパッドに対して第2絶縁層111bによって電気的に絶縁されている。したがって、第1領域112aは、Pパッド12及びOパッド14の何れとも第2絶縁層111bによって絶縁されており、中間領域112cも、Pパッド12及びOパッド14の何れとも第2絶縁層111bによって絶縁されている。よって、導電層112の電位は、Nパッド13の電位と同じである。
【0053】
回路基板10の作製方法の例を
図7及び
図8を利用して説明する。
図7及び
図8は、
図2のV−V線に沿った位置での断面に対応する。
【0054】
図7に示したように、導電膜付き絶縁性生シート30を作製する。導電膜付き絶縁性生シート30は、第1絶縁層111aとなる絶縁材料(例えばセラミックス)を用いて絶縁性生シート(セラミックス生シート)31を作製した後、絶縁性生シート31の表面に導電層112となる導電膜32を形成すると共に、裏面に放熱層RLとなる導電膜33を形成することで作製され得る。導電膜32及び導電膜33は、例えば導電層112及び放熱層RLとなる材料を含む導電性ペーストを導電層112及び放熱層RLに応じたパターンでそれぞれ表面及び裏面に印刷することで得られる。
【0055】
導電膜付き絶縁性生シート30の作製と並行して、
図8に示したように、導電膜付き絶縁性生シート40を作製する。具体的には、第2絶縁層111bとなる絶縁材料(例えばセラミックス)を用いて絶縁性生シート41を作製する。その絶縁性生シート41にビアBのための貫通孔41aを形成する。その後、絶縁性生シート41の表面上に、Pパッド12、Nパッド13、Oパッド14、第1制御用パッド15、第2制御用パッド16、第1補助パッド17及び第2補助パッド18となる導電膜42を形成する。
図8は、
図2のV−V線に沿った位置での断面に対応するため、
図8では、Oパッド14となるパッド用膜部42aと、Nパッド13となるパッド用膜部42bと、第2制御用パッド16となるパッド用膜部42cを示している。導電膜42は、導電層112の場合と同様に、それらのパッドとなる材料を含む導電性ペーストを絶縁性生シート41上に、各パッドのパターンで印刷することで形成され得る。この際、貫通孔41aにも導電性ペーストを充填しておく。これにより、導電膜付き絶縁性生シート40が作製される。
【0056】
その後、導電膜付き絶縁性生シート30の表面(導電膜32側の面)と、導電膜付き絶縁性生シート40の裏面とが対向するように、導電膜付き絶縁性生シート40を、導電膜付き絶縁性生シート30上に積層する。導電膜付き絶縁性生シート30と導電膜付き絶縁性生シート40の積層体を、一括焼成することによって、回路基板10が得られる。
【0057】
次に、
図1及び
図9を参照して、半導体モジュール1における配線構造を含む電気的接続関係について説明する。
図9は、半導体モジュール1の等価回路を示す図面である。
図9では、半導体モジュール1の構成要素と対応する要素には、同様の符号を付している。半導体モジュール1では、
図9に示した等価回路を実現するように、配線が施されている。
【0058】
複数の第1トランジスタTr1の下部電極DP及び第1ダイオードDi1のカソードCPは、Pパッド12を介して電気的に接続されており、Pパッド12には、P端子21が接続されている。よって、複数の第1トランジスタTr1の下部電極DP及び第1ダイオードDi1のカソードCPは、P端子21に電気的に接続されている。更に、複数の第1トランジスタTr1の第1上部電極SPのそれぞれは、導線W1により対応する第1ダイオードDi1のアノードAPと接続されている。よって、第1トランジスタTr1と第1ダイオードDi1は逆並列接続されており、第1ダイオードDi1が還流ダイオードとして機能する。導線W1の例は、ワイヤ、リボンなどであり、導線W1の材料の例は、銅、アルミニウムなどである。導線W1の数は、1本でもよいし又は複数本でもよい。
【0059】
第1トランジスタTr1の第2上部電極GPは、導線W2により第1制御用パッド15に接続されている。導線W2の例は、ワイヤ、リボンなどであり、導線W2の材料の例は、銅、アルミニウムなどである。第1制御用パッド15には、第1制御端子24が接続されているので、第1トランジスタTr1の第2上部電極GPは、第1制御端子24に電気的に接続されている。よって、第1制御端子24を介して、第1トランジスタTr1の第2上部電極GPに制御信号が入力され得る。
【0060】
第1トランジスタTr1の第1上部電極SPは、導線W3により第1補助パッド17に接続されている。導線W3の例は、ワイヤ、リボンなどであり、導線W3の材料の例は、銅、アルミニウムなどである。第1補助パッド17には、第1補助端子26が接続されているので、第1トランジスタTr1の第1上部電極SPは、第1補助端子26に電気的に接続されている。よって、第1補助端子26を介して、第1トランジスタTr1の第1上部電極SPの電位を取り出すことができ、取り出された電位は、第1トランジスタTr1を制御するための制御信号の生成に利用され得る。
【0061】
第1ダイオードDi1のアノードAPは、導線W4によりOパッド14に接続されている。よって、第1ダイオードDi1のアノードAP及び導線W4を介して、複数の第1トランジスタTr1の第1上部電極SPは、Oパッド14に電気的に接続されている。したがって、複数の第1トランジスタTr1は、電気的に並列接続されている。
図1に示した形態では、導線W4は、例えばOパッド14の第2領域142に一端が接続されている。導線W4の例は、ワイヤ、リボンなどであり、導線W4の材料の例は、銅、アルミニウムなどである。導線W4の数は、1本でもよいし又は複数本でもよい。
【0062】
複数の第2トランジスタTr2の下部電極DP及び第2ダイオードDi2のカソードCPは、Oパッド14を介して電気的に接続されており、Oパッド14には、O端子23が接続されている。よって、複数の第2トランジスタTr2の下部電極DP及び第2ダイオードDi2のカソードCPは、O端子23に電気的に接続されている。更に、複数の第2トランジスタTr2の第1上部電極SPのそれぞれは、導線W5により対応する第2ダイオードDi2のアノードAPと接続されている。よって、第2トランジスタTr2と第2ダイオードDi2は逆並列接続されており、第2ダイオードDi2が還流ダイオードとして機能する。導線W5の例は、ワイヤ、リボンなどであり、導線W5の材料の例は、銅、アルミニウムなどである。導線W5の数は、1本でもよいし又は複数本でもよい。
【0063】
第2トランジスタTr2の第2上部電極GPは、導線W6により第2制御用パッド16に接続されている。導線W6の例は、ワイヤ、リボンなどであり、導線W6の材料の例は、銅、アルミニウムなどである。第2制御用パッド16には、第2制御端子25が接続されているので、第2トランジスタTr2の第2上部電極GPは、第2制御端子25に電気的に接続されている。よって、第2制御端子25を介して、第2トランジスタTr2の第2上部電極GPに制御信号が入力され得る。
【0064】
第2トランジスタTr2の第1上部電極SPは、導線W7により第2補助パッド18に接続されている。導線W7の例は、ワイヤ、リボンなどであり、導線W7の材料の例は、銅、アルミニウムなどである。第2補助パッド18には、第2補助端子27が接続されているので、第2トランジスタTr2の第1上部電極SPは、第2補助端子27に電気的に接続されている。よって、第2補助端子27を介して、第2トランジスタTr2の第1上部電極SPの電位を取り出すことができ、取り出された電位は、第2トランジスタTr2を制御するための制御信号の生成に利用され得る。
【0065】
第2ダイオードDi2のアノードAPは、導線W8によりNパッド13に接続されている。導線W8の例は、ワイヤ、リボンなどであり、導線W8の材料の例は、銅、アルミニウムなどである。導線W8の数は、1本でもよいし又は複数本でもよい。よって、第2ダイオードDi2のアノードAP及び導線W8を介して、複数の第2トランジスタTr2の第1上部電極SPは、Nパッド13に接続されている。したがって、複数の第2トランジスタTr2は、電気的に並列接続されている。
【0066】
上記配線構造では、並列接続された複数の第1トランジスタTr1の第1上部電極SPは、Oパッド14に電気的に接続されており、並列接続された複数の第2トランジスタTr2の下部電極DPは、Oパッド14に電気的に接続されている。よって、並列接続された複数の第1トランジスタTr1の第1上部電極SPと、並列接続された複数の第2トランジスタTr2の下部電極DPとが電気的に接続されている。更に、並列接続された複数の第1トランジスタTr1の下部電極DPはP端子21に電気的に接続されており、並列接続された複数の第2トランジスタTr2の第1上部電極SPはN端子22に電気的に接続されている。したがって、
図9に示したように、並列接続された複数の第1トランジスタTr1の群と、並列接続された複数の第2トランジスタTr2の群とは、P端子21とN端子22の間に直列接続されている。よって、回路基板10上の構成が電力変換回路3を構成している。
【0067】
回路基板10の基板11には、導電層112が設けられており、導電層112の第2領域112bはビアBを介してNパッド13と電気的に接続されている。導電層112の第1領域112aは、中間領域112cを介して第2領域112bに繋がっているので、導電層112の電位は、Nパッド13の電位と同じである。第1領域112aは、Pパッド12と対向する第1領域112aとPパッド12は、第2絶縁層111bを介して絶縁されている。よって、Pパッド12及び第1領域112aとそれらの間の第2絶縁層111bによりコンデンサ50(
図9参照)が形成されている。例えば、35mm□のエリアで、Pパッド12及び第1領域112aの間の距離を0.1mmの場合、約1nF程度のキャパシタンスが得られる。
【0068】
このコンデンサ50は、
図9に示したように、並列接続された第1トランジスタTr1の群と並列接続された第2トランジスタTr2の群とからなる直列回路に対して、P端子21とN端子22との間に、並列接続されており、サージ電圧を吸収するサージ電圧吸収用コンデンサとして機能する。したがって、半導体モジュール1の構成では、サージ電圧を抑制できる。上記コンデンサ50の容量は、抑制すべきサージ電圧の大きさに応じたものであればよく、Pパッド12及び第1領域112aの大きさ及びPパッド12及び第1領域112aの間の距離で調整され得る。
【0069】
半導体モジュール1の構成では、第1制御端子24及び第2制御端子25を介して、第1トランジスタTr1及び第2トランジスタTr2に制御信号を供給し、第1トランジスタTr1及び第2トランジスタTr2を交互にオン/オフ動作させることで、P端子21及びN端子22の間に印加される直流電力(例えば、直流電圧)を、交流電力(例えば、交流電圧)に変換して、O端子23から取り出し得る。
【0070】
P端子21とN端子22に、直列接続された第1トランジスタTr1及び第2トランジスタTr2を含む電力変換回路3では、第1トランジスタTr1及び第2トランジスタTr2のそれぞれをターンオン又はターンオフしたときに、サージ電圧が生じる。
【0071】
サージ電圧の大きさは、電流をiとし、インダクタンスをLとしたとき、L×di/dtで定まる。サージ電圧の大きさを規定するインダクタンスには、電流iが流れる経路の配線インダクタンスも含まれる。di/dtは、第1トランジスタTr1及び第2トランジスタTr2のスイッチング速度に依存する。スイッチング速度は高速化が図られてきているので、di/dtは大きくなる傾向にある。特に、第1トランジスタTr1及び第2トランジスタTr2の材料にワイドバンドギャップ半導体を使用している場合、スイッチング速度がSiの場合に比べて速いことから、di/dtが大きくなりやすい。よって、サージ電圧を効果的に抑制するには、インダクタンスLに含まれる配線インダクタンスを小さくすることが重要である。
【0072】
半導体モジュール1では、Pパッド12及び第1領域112aと、それらの間の第2絶縁層111bと、によってサージ電圧吸収用のコンデンサ50が形成されていることから、少なくとも第1トランジスタTr1近傍にサージ電圧吸収用のコンデンサ50が配置されている。そのため、配線インダクタンスを低減されているので、サージ電圧をより確実に抑制できる。
【0073】
Oパッド14の電位は、スイッチングによって時々刻々と変動する。そのため、仮に、Oパッド14の直下に、導電層112(例えば中間領域112c)が存在すると、Oパッド14と導電層112間に寄生容量が形成される。そのため、形成された寄生容量をCとすると、C×(dv/dt)で定まる変位電流がOパッド14から導電層112を介してNパッド13に流れ、Nパッド13に電位分布が生じる傾向にある。
【0074】
これに対して、導電層112(例えば中間領域112c)が、Oパッド14と重なっていない形態では、Nパッド13及び導電層112の電位変動を防止できる。
【0075】
半導体モジュール1では、並列接続された複数の第1トランジスタTr1の群及び並列接続された複数の第2トランジスタTr2の群が直列接続されている。これにより、半導体モジュール1に大電流を流すことが可能である。
【0076】
半導体モジュール1が、複数の第1トランジスタTr1を有することから、複数の第1トランジスタTr1が搭載される第1領域121の面積は、例えば一つの第1トランジスタTr1を搭載するために要する面積より大きい。
【0077】
半導体モジュール1では、Pパッド12のうち第1トランジスタTr1が搭載される第1領域141と、導電層112の第1領域112aと、第2絶縁層111bとによってサージ電圧吸収用のコンデンサ50が形成されていることから、コンデンサ50は、複数の第1トランジスタTr1の近傍に配置されている。そのため、第1領域121の面積が大きくても配線インダクタンスの低減が図れられており、サージ電圧を効果的に抑制できる。
【0078】
(変形例)
図10は、半導体モジュール1の変形例である半導体モジュール1Aの一例を示す模式図である。
図10では、ケース2の図示は省略しているが、半導体モジュール1Aはケース2を備えてもよい。
【0079】
半導体モジュール1Aは、回路基板10の代わりに回路基板10Aを備える点で主に半導体モジュール1の構成と相違する。回路基板10A上における第1トランジスタTr1、第2トランジスタTr2、P端子21、N端子22、O端子23、第1制御端子24、第2制御端子25、第1補助端子26及び第2補助端子27の配置状態及び配線構造は、半導体モジュール1の場合と同様とし得る。
【0080】
図11は、回路基板10Aの模式図である。回路基板10Aは、第3補助パッド(補助配線パターン)19を備える点及び第3補助パッド19とPパッド12とがコンデンサ(サージ電圧吸収素子)51で接続される点で、回路基板10の構成と主に相違する。この相違点を中心にして回路基板10Aについて説明する。
【0081】
第3補助パッド19は、Pパッド12に隣接し、Pパッド12及びOパッド14と絶縁された状態で基板11上(具体的には第2絶縁層111b上)に設けられている。第3補助パッド19は、ビア(導電部)B1を介して導電層112に接続されることによって、Nパッド13に電気的に接続される。よって、第3補助パッド19の電位は、Nパッド13の電位と同じである。
【0082】
一実施形態において、第3補助パッド19は、
図11に示したように、Pパッド12の縁部12a以外の縁部に沿って配置されている。第3補助パッド19の一部は、Pパッド12とOパッド14の間に配置されると共に、基板11の厚さ方向からみて、導電層112の中間領域112cと重なるように、形成されている。基板11の厚さ方向からみて、中間領域112cと第3補助パッド19との重複領域において中間領域112cと第3補助パッド19とがビアB1により接続され、そのビアB1により、中間領域112cと第3補助パッド19とが電気的に接続されている。
【0083】
第3補助パッド19と、Pパッド12とは、少なくとも一つのコンデンサ51を介して接続されている。コンデンサ51の例は、セラミックコンデンサである。第3補助パッド19の電位は、Nパッド13の電位と同じであることから、上記構成は、Pパッド12に接続されるP端子21とNパッド13に接続されるN端子22との間に、コンデンサ50と並列にコンデンサ51が接続された回路に等価である。したがって、コンデンサ51もサージ電圧吸収素子として機能する。
【0084】
回路基板10Aは、回路基板10の場合と同様に、Pパッド12において第1トランジスタTr1が搭載される第1領域141と、導電層112の第1領域112aと、それらの間の第2絶縁層111bとによってサージ電圧吸収用のコンデンサ50が形成されている。よって、半導体モジュール1Aは、半導体モジュール1と少なくとも同様の作用効果を有する。
【0085】
半導体モジュール1Aでは、回路基板10Aを有し、第3補助パッド19とPパッド12とはコンデンサ51を介して接続されている。このコンデンサ51も前述したように、サージ電圧吸収素子として機能する。この場合、コンデンサ50の容量をコンデンサ51で補えるので、サージ電圧をより確実に吸収できる。
【0086】
変形例では、第3補助パッド19とPパッド12とを接続するサージ電圧吸収素子としてコンデンサを例示した。しかしながら、上記サージ電圧吸収素子は、サージ電圧を吸収する素子であればよい。例えば、コンデンサと他の回路素子(例えば、抵抗又はバリスタ)とを組み合わせた素子であってもよい。
【0087】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、これまで説明した種々の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0088】
電力変換回路は、単相インバータ回路といった単相の電力変換回路に限定されず、二相又は三相の電力変換回路でもよい。トランジスタの数は、図面に示されている数に限定されない。半導体モジュールは、第1トランジスタ及び第2トランジスタをそれぞれ少なくとも一つずつ備えていればよい。
【0089】
第1トランジスタ及び第2トランジスタの配置状態、第1トランジスタ及び第2トランジスタと種々のパッド(Pパッド、Nパッド、Oパッドなど)との配線構造などは、例示したものに限定されないが、サージ電圧を低減する観点から配線インダクタンスを最小にするように最適化されていることが好ましい。
【0090】
第2入力用配線パターンと導電層との電気的接続方法の例として、ビアを用いた方法を説明したが、第2入力用配線パターンと導電層との電気的接続方法はビアを用いた方法に限定されない。例えば第2絶縁部の側面に導電膜(例えば金属膜)を形成し、その導電膜を介して第2入力用配線パターンと、導電層(具体的には第2領域)とが電気的に接続されていればよい。上記変形例における第3補助パッドと導電層との接続についても同様である。上記例では、第2絶縁部の側面のみに導電膜を形成したが、基板11の側面に導電膜を形成し、その導電膜を介して第2入力用配線パターンと、導電層とを電気的に接続してもよい。なお、第2絶縁部の側面などに形成した導電膜を利用して第2入力用配線パターンと、導電層とを電気的に接続する場合、第1入力用配線パターン、出力用配線パターン、放熱層(
図4に例示した放熱層RL)などは、側面に形成した導電膜と絶縁されるように形成すればよい。
【0091】
第1電力として正電力(例えば正電圧)を例示し、第2電力として負電力(例えば負電圧)を例示したが、第1電力及び第2電力は、第2電力が第1電力より低ければよい。例えば、第1電力が所定の電圧を有する場合、第2電力としては、上記所定の電圧より低い電圧であればよい。