(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サクション定着工程は、前記一対のコンベアのうち少なくとも一方に設けられ吸引孔を有するサクションコンベアで前記吸収マットを吸引して、前記パターンを定着させる
ことを特徴とする請求項1に記載された吸収性物品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一段階目よりも二段階目で深く吸収マットをプレスしてパターンを成形する技術では、一段階目のプレスによってやや硬化した浅いパターンが成形され、二段階目のプレスによって更に硬化した所定形状のパターンが成形される。また、二段階目のプレスにおいて一段階目よりも大きい圧力で吸収マットがプレスされることによって、所定形状のパターンがますます硬化する。このように所定形状のパターンが硬直することで、吸収マットのごわつきや硬化を招き、フィット性の低下や着用者への違和感を招くおそれがある。
【0006】
本件で示す吸収性物品の製造方法および製造装置は、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、着用者の快適性を確保した吸収性物品の製造を目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示する吸収性物品の製造方法は、吸液性を有する吸収マットにパターンを成形工程で成形する。
前記成形工程は、前記吸収マットに前記パターンをプレスして成形するプレス成形工程と、前記プレス成形工程で成形された前記パターンを、前記吸収マットを吸引して定着させるサクション定着工程とを有することを特徴としている。
【0008】
(2)前記サクション定着工程は、一対のコンベアで挟持された状態の前記吸収マットに前記パターンを定着させることが好ましい。
【0009】
(3)前記サクション定着工程は、前記一対のコンベアのうち少なくとも一方に設けられ吸引孔を有するサクションコンベアで前記吸収マットを吸引して、前記パターンを定着させることが好ましい。
【0010】
(4)本吸収性物品の製造方法は、前記吸収マットにシートを積層する積層工程を有することが好ましい。この場合の前記成形工程は、前記積層工程で前記シートが積層された前記吸収マットに前記パターンを成形することが好ましい。
(5)さらに、前記積層工程は、前記プレス成形工程で前記パターンがプレスされた後の前記吸収マットに前記シートを積層することが好ましい。
【0011】
(6)または、前記積層工程は、前記プレス成形工程で前記パターンがプレスされる前の前記吸収マットに前記シートを積層することが好ましい。
(7)前記サクション工程は、前記積層工程で前記シートが積層された側とは反対側に前記吸収マットを吸引して、前記パターンを定着させることが好ましい。
【0012】
(8)本吸収性物品の製造方法は、前記吸収マットを形成するマット形成工程を有することが好ましい。この場合の前記成形工程は、前記マット形成工程で形成された前記吸収マットに前記パターンを成形することが好ましい。
(9)さらに、前記マット形成工程は、繊維材料に高吸水性樹脂を混合することが好ましい。
【0013】
(10)ここで開示する吸収性物品の製造装置は、吸収性を有する吸収マットにパターンを成形部で成形する。
前記成形部は、前記吸収マットに前記パターンをプレスして成形するプレス成形部と、前記プレス成形部で成形された前記パターンを、前記吸収マットを吸引して定着させるサクション定着部とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本件で示す吸収性物品の製造方法によれば、吸収マットにパターンをプレスして成形した後に、吸収マットを吸引して定着させることで、プレスされた吸収マットの復元が抑えられる。そのため、吸収マットに対して成形されたパターンを、その硬化を抑制しつつ定着させることができる。したがって、着用者への違和感を抑えるとともに、着用者へのフィット性,液体の拡散性,通気性を向上させることができる。よって、快適性を確保した吸収性物品を製造することができる。
同様に、本件の吸収性物品の製造装置によれば、着用者の快適性を確保した吸収性物品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、実施形態としての吸収性物品の製造方法および製造装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0017】
本実施形態の方法および装置で製造される吸収性物品は、着用者に装着され、尿や経血といった液体を吸収するものである。この吸収性物品としては、テープ型やパンツ型の紙おむつ(いわゆる「使い捨ておむつ」),尿パッド,生理用ナプキン,パンティーライナーなどが挙げられる。以下の実施形態では、吸収性物品としてテープ型の紙おむつを例示する。
【0018】
本実施形態では、紙おむつについて、着用者の腹部に位置する前身頃と背部に位置する後身頃とを結ぶ方向を長手方向とし、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とし、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向および厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。また、紙おむつを製造する方法および装置について、製造工程を基準に上流および下流を定める。
【0019】
[I.一実施形態]
[1.紙おむつ]
まず、
図1を参照して、紙おむつの基本的な構成を説明する。ここでは、紙おむつにおいて着用者の股下に位置する股下部9の構成を主に述べる。
紙おむつの股下部9は、長手方向中央に位置する。この股下部9には、非肌面側をカバーシート95で被覆された吸収体90が設けられる。
【0020】
吸収体90は、複数のシート状あるいはマット状の部材からなる吸液性の部材である。この吸収体90では、ラップシート92によって被包(ラップ)された吸収マット(「コア」とも称される)910に対して、肌面側にトップシート(「センターシート」とも称される)93が配置され、非肌面側にバックシート94が配置される。なお、トップシート93の幅方向側方のそれぞれにはサイドシート96が設けられている。
【0021】
吸収マット910は、液体を吸収して保持するマット状の部材である。この吸収マット910では、繊維材料としてパルプを用いており、粉砕あるいは解繊されたパルプ(いわゆる「フラッフパルプ」)に高吸水性樹脂(いわゆるSAP〈Superabsorbent polymer〉,高吸水性高分子あるいは高吸水性ポリマーとも称される)が混合されている。たとえば、パルプによって拡散された液体を高吸水性樹脂が吸収し保持する。なお、繊維材料としてレーヨンを用いてもよい。
【0022】
ラップシート92は、吸収マット910を被包するシート状の部材である。ラップシート92によって吸収マット910が被包されることで、吸収マット910の定形性が確保される。このラップシート92としては、ティッシュや不織布を用いることができる。なお、ティッシュのほうが不織布よりも形状の追従性がよいことから、ティッシュをラップシート92に用いることが好ましい。
【0023】
ここでは、二種のラップシート921,922によって吸収マット910が被包される。具体的には、吸収マット910の非肌面側および幅方向側方が第一ラップシート921で被包され、吸収マット910の肌面側が第二ラップシート922で被包される。これらのラップシート921,922は互いに接着されている。
【0024】
トップシート93は、吸収体90で最も肌面側に配置され、ラップシート92で被包された吸収マット910(以下「被包吸収マット911」という)を肌面側から被覆するシート状の部材である。このトップシート93は、液透過性を有する。そのため、紙おむつが装着された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触しうるトップシート93を通って吸収マット910に吸収される。たとえば、織布,不織布や多孔質フィルムがトップシート93に用いられる。さらに、トップシート93が親水性を有していてもよい。
【0025】
バックシート94は、吸収体90で最も非肌面側に配置され、被包吸収マット911を非肌面側から被覆するシート状の部材である。このバックシート94は、吸収体90の非肌面側に排泄物が漏れるのを防ぐために設けられる。そのため、バックシート94は、液不透過性を有する。たとえば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)といった熱可塑性の樹脂シートがバックシート94に用いられる。さらに、バックシート94が疎水性を有していてもよい。
【0026】
カバーシート95は、紙おむつで最も非肌面側に配置され、バックシート94を非肌面側から被覆するシート状の部材である。このカバーシート95は、バックシート94の補強や手触りの向上のために設けられる。たとえば、バックシート94と同様の熱可塑性樹脂からなる不織布がカバーシート95に用いられる。
熱可塑性樹脂がバックシート94およびカバーシート95に用いられることで、排泄物の遺漏を抑制することができる。そのうえ、たとえばシート94,95どうしの熱溶着(いわゆるヒートシール)性を向上させることができる。
【0027】
このように構成された紙おむつにおける股下部9の幅方向中央では、非肌面側から肌面側へ向けて、カバーシート95,バックシート94,第一ラップシート921,吸収マット910,第二ラップシート922,トップシート93の順に各部材が積層されている。
【0028】
さらに、吸収体90には、所定形状のパターン7が設けられる。ここでの所定形状は、吸収体90の厚み方向に凹設された溝状の形状である。
パターン7を具体的に説明すれば、トップシート93が積層された被包吸収マット911(以下「積層吸収マット912」という)に対して、肌面側に第一パターン71が成形され、非肌面側に第二パターン72が成形される。ここでは、格子(グリッド)状のパターン7を例示する。ただし、その他のさまざまなパターン――単数または複数の直線状もしくは曲線状または多角形もしくは円形を配置したパターンなど――を採用することができる。そのほか、パターン7は、溝状に連続して延びる線条の凹部に限られず、たとえば点状(断続的)に設けられた凹部であってもよい。
【0029】
吸収体90にパターン7を成形することで、着用者に対する紙おむつのフィット性,吸収体90に排泄される液体の拡散性,紙おむつの通気性が向上し、着用者の快適性が向上する。たとえば、肌面側の第一パターン71によって、液体の拡散性,通気性を特に向上させることができ、非肌面側の第二パターン72によって、フィット性を向上させることができる。
【0030】
そのほか、紙おむつには、幅方向側方に排泄物が漏れるのを防ぐための立体ギャザー97や着用者の脚部への追従性を向上させるためのレッグギャザー98などが設けられる。立体ギャザー97は、吸収体90に対して肌面側の各側縁に沿って立設され、レッグギャザー98は、股下部9の幅方向端部に延設されている。糸ゴム99によってシート95,96に皺をよせることで、ギャザー97,98が設けられる。
【0031】
[2.製造装置]
つぎに、
図2を参照して、本実施形態の方法で紙おむつを製造する装置について述べる。この製造装置では、シート状あるいはマット状の部材の形成,積層,被包,貼合,成形,プレス(圧縮),切断といったさまざまな工程が実施されるが、ここでは、吸収マット910のマット形成工程とパターン7の成形工程に着目して、紙おむつの製造装置を説明する。
【0032】
紙おむつの製造装置には、吸収マット910を形成するマット形成部10と、マット形成部10で形成された吸収マット910にパターン7を成形する二種の成形部23とが設けられる。二種の成形部23のうち一方は、吸収マット910に所定形状のパターン7をプレスして成形するプレス成形部20であり、他方は、プレス成形部20で成形されたパターン7を吸収マット910に定着させる定着部30である。ここでは、サクション定着部32が定着部30として設けられている。
【0033】
そのほか、ラップシート92で吸収マット910を被包するラップ部15と、被包吸収マット911にトップシート93を積層する積層部25とが設けられる。ここでは、マット形成部10よりも下流であってプレス成形部20よりも上流にラップ部15が配置され、プレス成形部20よりも下流であってサクション定着部32よりも上流に積層部25が配置される。
したがって、上流から下流へ向けて、マット形成部10,ラップ部15,プレス成形部20,積層部25,サクション定着部32がこの順に設けられる。
以下、紙おむつの製造装置を上流から順に説明する。
【0034】
〈マット形成部〉
マット形成部10では、供給されたパルプおよび高吸水性樹脂から吸収マット910を形成する。このマット形成部10には、吸収マット910を形成するフォーミングドラム11と、フォーミングドラム11へのパルプの供給路を形成するダクト12と、ダクト12内部への高吸水性樹脂の供給路を形成する供給管13とが設けられる。
ここでは、ダクト12,供給管13,フォーミングドラム11の順に説明する。
【0035】
ダクト12には、フォーミングドラム11の外周の一部(
図2では右上の外周縁部)を覆うように配置された下流端部12aに開口が設けられる。このダクト12は、下流端部12aに向けて広げられた形状に設けられる。また、ダクト12の内部では、粉砕あるいは解繊されたパルプが分散した状態でフォーミングドラム11に向けて空気流で吹き付けられる。
【0036】
供給管13には、ダクト12の内部に配置された下流端部13aに開口が設けられる。この下流端部13aの開口から排出された高吸水性樹脂は、ダクト12の内部で分散した状態のパルプに混合され、フォーミングドラム11に供給される。このとき、高吸水性樹脂の一部が凝集する場合がある。たとえば、凝集した高吸水性樹脂は、たとえば400μmあるいは600μm程度の外寸となってパルプに混合される。
【0037】
フォーミングドラム11は、供給されたパルプおよび高吸水性樹脂を内周側へ吸引して積重することで、吸収マット910を外周に形成する回転体である。このフォーミングドラム11の外周には、吸収マット910の概形に応じた形状の金型が設けられており、金型の内部に積重されたパルプおよび高吸水性樹脂が吸収マット910として形成される。
図2では、右上の外周縁部にパルプおよび高吸水性樹脂が供給され、反時計回りに回転するフォーミングドラム11を例示する。ここでは、フォーミングドラム11の下部において、搬送される帯状の第一ラップシート921上に吸収マット910が受け渡されて載置される。
【0038】
〈ラップ部〉
ラップ部15では、第一ラップシート921とこの第一ラップシート921に載置された吸収マット910の肌面側(
図2では上側)に供給された第二ラップシート922とを互いに接着することで、吸収マット910を被包する。
【0039】
〈プレス成形部〉
プレス成形部20では、被包吸収マット911にパターン7を所定形状にプレスしてプレス成形する。このプレス成形部20には、一対の成形プレスロール21が設けられる。ここでは、搬送される被包吸収マット911に対して上方に配置されたアッパ成形プレスロール22と、搬送される被包吸収マット911に対して下方に配置されたロア成形プレスロール23とが一対の成形プレスロール21として配置される。
【0040】
また、成形プレスロール21の外周には、パターン7を成形する金型21aが設けられる。金型21aには、溝状のパターン7に対応して所定形状に設けられた突条のパターンが形成されている。
成形プレスロール22,23によって上下に挟まれる被包吸収マット911が金型21aによって部分的にプレスされることで、被包吸収マット911にパターン7が所定形状に成形される。
【0041】
ここでは、二つの成形プレスロール22,23のそれぞれに金型21aが設けられる。そのため、被包吸収マット911には、肌面側の第一パターン71と非肌面側の第二パターン72とが成形される。ただし、成形プレスロール22,23の何れか一方だけに金型21aが設けられてもよい。この場合には、金型21aが設けられる側(肌面側または非肌面側)だけにパターン7が成形される。
【0042】
〈積層部〉
積層部25では、供給されたトップシート93を被包吸収マット911の肌面側(
図2では上側)に積層する。このようにトップシート93が積層された積層吸収マット912においては、トップシート93にパターン7が成形されていない。
ここでは、非肌面側にホットメルト接着剤が塗布されたトップシート93が供給される。そのため、積層吸収マット912では、被包吸収マット911の肌面側のラップシート92にトップシート93が貼合されている。
【0043】
〈サクション定着部〉
サクション定着部32では、積層吸収マット912を吸引してパターン7を定着させる。このとき、被包吸収マット911には、プレス成形部20でパターン7が成形されていることから、成形されたパターン7が再び成形されるものと言える。一方、トップシート93には、プレス成形部20でパターン7が成形されていないことから、新たにパターン7が成形されるものと言える。
【0044】
すなわち、サクション定着部32では、搬送される積層吸収マット912を吸引することで、被包吸収マット911に対して成形されたパターン7を引き締めるとともに、トップシート93に対して付加的にパターン7を成形することで、パターン7が定着される。
このサクション定着部32には、一対のコンベア320が設けられる。一対のコンベア320として、搬送される積層吸収マット912を吸引するサクションコンベア321と、積層吸収マット912の搬送を案内するガイドコンベア322とが設けられる。ここでは、搬送される積層吸収マット912に対して下方にサクションコンベア321が配置され、搬送される積層吸収マット912に対して上方にガイドコンベア322が配置される。すなわち、サクション定着部32では、一対のコンベア320によって積層吸収マット912が挟持された状態となる。
【0045】
サクションコンベア321には、多数の吸引孔が設けられたコンベアベルトが用いられる。このコンベアベルトの内側(吸収マット910に対してトップシート93が配置される側とは反対側,ここでは下側)を負圧にすることで、搬送される積層吸収マット912が吸引される。すなわち、サクション定着部32は、積層部25でトップシート93が積層された側とは反対側に積層吸収マット912を吸引して、パターン7を定着させる。なお、ガイドコンベア322には、通気性のないコンベアベルトが用いられる。
【0046】
そして、プレス定着部34よりも下流では、積層吸収マット912に対してバックシート94,カバーシート95,サイドシート69,糸ゴム99(何れも
図1参照)が供給され、立体ギャザー97,レッグギャザー98(何れも
図1参照)などが設けられて、紙おむつが製造される。
【0047】
[3.製造方法]
つづいて、
図3を参照して、紙おむつの製造方法を説明する。この製造方法は、上述した製造装置によって紙おむつを製造する方法である。
この製造方法では、マット形成工程(ステップA10),成形工程(ステップA20,A30)の順に各工程が実施される。さらに、成形工程には、パターン7を成形するためにプレス成形工程(ステップA20)および定着工程(ステップA30)の二種の工程が設けられる。この成形工程では、プレス成形工程(ステップA20),定着工程(ステップA30)の順に実施される。この定着工程では、サクション定着工程(ステッA32)が実施される。そのほか、マット形成工程と成形工程との間にラップ工程(ステップA15)が実施され、プレス成形工程と定着工程との間に積層工程(ステップA25)が実施される。
【0048】
したがって、マット形成工程(ステップA10),ラップ工程(ステップA15),プレス成形工程(ステップA20),積層工程(ステップA25),サクション定着工程(ステッA32)の順に各工程が実施される。
以下、順を追って各工程を説明する。
【0049】
はじめに、ステップA10のマット形成工程(
図2に符号「I」で示す)では、マット形成部10で吸収マット910を形成する。
それから、ステップA15のラップ工程では、ラップ部15で吸収マット910をラップシート92で被包する。
【0050】
つづいて、ステップA20のプレス成形工程(
図2に符号「II」で示す)では、プレス成形部20で被包吸収マット911にパターン7を所定形状にプレスして成形する。
それから、ステップA25の積層工程では、プレス成形工程でパターン7がプレスされた後の被包吸収マット911に積層部25でトップシート93を積層する。
【0051】
その後、ステップA30の定着工程では、定着部30で積層吸収マット912にパターン7を定着させる。
具体的には、ステップA32のサクション定着工程(
図2に符号「III」で示す)において、サクション定着部32で積層吸収マット912を吸引してパターン7を定着させる。
詳細に言えば、サクション定着工程では、積層工程でトップシート93が積層された側とは反対側に、一対のコンベア320のうち一方のサクションコンベア321で積層吸収マット912を吸引してパターン7を定着させる。このとき、パターン7が定着させられる積層吸収マット912は、一対のコンベア320で挟持された状態で搬送される。
【0052】
[4.作用および効果]
本実施形態で例示する紙おむつの製造方法および製造装置は、上述のように構成されるため、以下のような作用および効果を得ることができる。
【0053】
(1)本実施形態で例示する紙おむつの製造方法の成形工程では、プレス成形工程で被包吸収マット911に成形されたパターン7を、積層吸収マット912を吸引して定着工程で定着させる。そのため、定着工程によって、プレス成形工程で成形されたパターン7の更なる硬化を抑えつつ、パターン7を定着させることができる。パターン7の硬化が抑えられることで、着用者に与える違和感を抑えることができ、また、パターン7が確実に成形されることで、着用者へのフィット性,液体の拡散性,通気性を向上させることができる。よって、快適性を確保した紙おむつを製造することができる。
【0054】
(2)具体的に言えば、吸引孔の設けられたサクションコンベア321とガイドコンベア322とで挟持された状態の積層吸収マット912が搬送される。そのため、積層吸収マット912を安定して搬送することができる。
(3)さらに、積層吸収マット912の搬送および吸引をサクション定着部32,サクション定着工程で並列的(同時)に実施することができる。
そのうえ、吸引された積層吸収マット912は、引き締められることで保形性が高まる。よって、紙おむつの安定的な製造に寄与する。
【0055】
(4)積層工程でトップシート93が積層された被包吸収マット911(すなわち積層吸収マット912)には、成形工程でパターン7が成形される。そのため、パターン7は、被包吸収マット911だけでなくトップシート93にも成形される。よって、特に紙おむつの通気性や液体の拡散性が更に向上し、着用者の快適性を向上させた紙おむつを製造することができる。
【0056】
(5)この積層工程では、プレス成形工程でパターン7がプレス成形された後の被包吸収マット911にトップシート93を積層するため、プレス成形工程ではトップシート93にパターン7がプレス成形されない。このトップシート93には、定着工程でパターン7が定着される。よって、トップシート93のプレスは一回のみとなり、トップシート93の破損を抑えて、パターン7をトップシート93に成形することができる。
【0057】
(6)具体的に言えば、被包吸収マット911に対してトップシート93が配置される側とは反対側に積層吸収マット912が吸引されるため、積層吸収マット912の肌面側に配置されたトップシート93に対して溝状のパターン7を確実に成形することができる。
(7)吸収マット910を形成するマット形成工程,積層吸収マット912にパターン7を成形する成形工程の順に紙おむつの製造ラインが設けられることで、製造効率を向上させることができる。
【0058】
(8)マット形成工程で繊維材料に高吸水性樹脂を混合して形成される吸収マット910には、凝集した高吸水性樹脂が含まれうる。このように凝集した高吸水性樹脂を含む吸収マット910がプレスされる場合には、ラップシート92やトップシート93が凝集した高吸水性樹脂によって突き破られるおそれがある。延いては、シート92,93の破損した紙おむつは、不良品となるおそれがある。
【0059】
これに対し、本実施形態の成形工程では、プレス成形工程および定着工程の二種の工程でパターン7を成形することにより、プレス成形工程だけでパターンを成形する従来技術のプレス圧に比較して、プレス成形工程の第一プレス圧P
1を抑えることができる。抑えられた第一プレス圧P
1でパターン7を成形することにより、凝集した高吸水性樹脂によるシート92,93の破損を抑えることができる。延いては、紙おむつの歩留まりを抑えることができ、製造効率を向上させることができる。
(9)本実施形態で例示する紙おむつの製造装置によれば、紙おむつの製造方法と同様の作用および効果を得ることができる。
【0060】
[II.その他]
最後に、本実施形態のその他の変形例について述べる。
たとえば、ラップ部15よりも下流であってプレス成形部20よりも上流に積層部25を配置してもよい。すなわち、ラップ工程の後であってプレス成形工程の前に積層工程が実施されてもよい。言い換えれば、積層工程は、プレス成形工程でパターン7がプレスされる前の被包吸収マット911にトップシート93を積層してもよい。この場合には、プレス成形工程で積層吸収マット912にパターン7が成形されるうえに、定着工程で積層吸収マット912にプレス成形されたパターン7が定着される。そのため、トップシート93には、定着工程においてパターン7が成形されるだけでなく、プレス成形工程においてもパターン7が成形される。このようにトップシート93に対してパターン7が確実に成形されることによって、紙おむつの通気性や液体の拡散性を更に高めて、快適性をいっそう向上させることができる。