(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のシーラー塗布要件チェック装置、シーラー塗布要件チェックプログラム、及びシーラー塗布要件チェックを記憶した記憶媒体を具体化した一実施形態を
図1〜
図10を参照して説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のシーラー塗布要件チェック装置10は、コンピュータにより構成されており、CPU100、ROM110、RAM120、記憶装置130を備え、バス150により各構成要素が接続されている。記憶装置130は、不揮発性であって、例えばハードディスク、Flash SSD(Solid State Drive)等の書き込み書き出し可能な記憶手段により構成されている。
【0019】
ROM110は、シーラー塗布要件チェックプログラムが格納されている。前記シーラー塗布要件チェックプログラムは、特に下側部品のシーラーの塗布領域に設けられた穴があるか否かの穴ラップチェックを行うことが可能なプログラムである。前記ROM110は記憶媒体に相当する。また、RAM120は、前記シーラー塗布要件チェックプログラムを実行する際の作業用メモリとなる。
【0020】
また、記憶装置130にはCADに使用されるワーク(すなわち、ワークを構成する複数の部品)の3D(3次元)データを格納する記憶領域と、3次元データのシーラー線、シーラー(シール剤)の仕上げタイプ、及び前記ワークを構成している部品の部品情報を記憶する記憶領域を有する。前記部品は、板部材からなる。前記ワークの3次元データは、固有の識別コードが付与されていて、後述する操作部により識別コートが入力されると、読み出しが可能となっている。
【0021】
なお、前記ワークは、例えば、種々の部品が組み付けられて構成された車体であるが、車体に限定されるものではない。
前記シーラー線は、前記ワーク上の部品間において、シーラーを施すべきラインであり、すなわち、相互に重ね合わせする上側部品の側縁と下側部品間に設定されたラインであって、3次元データからなる。すなわち、前記シーラー線は、前記ワークに施工されるシーラーに関する複数のシーラー線がある。また、ワーク毎に、前記シーラー線が関連付けられている。シーラーの仕上げタイプは、シーラー塗布後に、仕上げ用へら及びハケを使用して仕上げを行うか、否かの情報等のシーラーの仕上げの種類である。
【0022】
部品情報には、例えば部品毎に識別コードである品番、板向き、板厚、及び板厚方向が含まれている。なお、板向きは、部品のシーラーが施される面(例えば表面、或いは裏面)を指す。
【0023】
また、シーラー塗布要件チェック装置10には、表示装置160、キーボード170、マウス180及びプリンタ190が接続されている。キーボード170、及びマウス180は、操作部に相当する。また、本実施形態では、CPU100は、閉塞面形成部、干渉検出子生成部、干渉チェック部、及び出力部に相当する。また、CPU100はラップ量測定部に相当する。また、記憶装置130は、ワークを構成する部品の3次元データ及びシーラー線の3次元データを記憶する記憶部に相当する。
【0024】
(実施形態の作用)
上記のように構成されたシーラー塗布要件チェック装置10の作用を説明する。
図2は、前記シーラー塗布要件チェックプログラムに従ってCPU100が実行する穴ラップチェックのフローチャートであって、シーラーの塗布可否のフローチャートである。シーラー塗布要件チェックプログラムは、上側部品Wb1のシーラー塗布領域には、穴がないワークに対応したシーラー塗布要件チェックプログラムであって、シーラー線の近傍に設けられたシール禁止の穴に対してはシーラーを塗布しないようにすることを目的としている。
【0025】
このプログラムを実行する場合、作業者は、キーボード170、マウス180の操作部を操作して、表示装置160の表示画面160aにメニュー画面を表示させる。そして、このメニュー画面において、チェックするべきワークの3次元データの識別コードを入力する。前記ワークの識別コードが入力されると、CPU100は、当該ワークの各シーラー線に付与された識別コードを読み出して、チェック対象となるシーラー線を選択する図示しない選択ボタンを
図1に示す表示画面160aに表示させる。
【0026】
この選択ボタンは、個別にシーラー線のチェックを行うための選択ボタン、及び、複数(全数を含む)のシーラー線のチェックを行うための選択ボタンを含む。また、メニュー画面には、結果リストの出力が可能な結果リスト出力ボタンが表示される。
【0027】
作業者は、メニュー画面上の穴ラップチェック項目の操作ボタンを操作することにより前記プログラムを起動する。
(S10)
図2に示すようにS10では、CPU100は、記憶装置130から、前記識別コードに対応するワークの3次元データ、すなわち、種々の部品が組み付けられたワーク、並びに、そのワークに関連付けられたシーラー線、シーラーの仕上げタイプ、及び部品情報を読み込む。前記ワークの3次元データは、前記種々の部品の3次元データを、ワークを構成するように組み付けた場合のデータである。
【0028】
(S20)
S20では、CPU100は、前記部品情報に基づいて、前記ワークを構成している部品の3次元データに部品の板厚を、板厚方向に従って作成し前記表示画面160aに表示する。例えば、
図3(a)は、部品Wb1,Wb2の板厚を付与する前の画像を示し、
図3(b)は部品Wb1,Wb2の板厚を付与した後の画像を示している。なお、
図3(a)、
図3(b)において、部品Wb1,Wb2の境界線L(すなわち、両部材の板合わせ部分)を実線で示し、シーラー線SEを一点鎖線で示している。また、
図3(a)及び
図3(b)においては、実際にはシーラー線SEは境界線Lと同じ線上にあるが、説明の便宜上、若干ずらして平行に図示している。ここで、部品Wb1は上側部品に相当し、部品Wb2は下側部品に相当する。すなわち、上側部品は、重ね合わせする部品の中で、シーラーが施される際にシーラーを塗布するシーラーガン(図示しない)に近位に位置する側の部品を指す。また、下側部品は、重ね合わせする部品の中で、前記シーラーガン(図示しない)に遠位に位置する側の部品を指す。
【0029】
シーラーは、前述するように重ね合わせする2つの部品間をシールするために塗布される。このため、シーラー線SEは、前記2つの部品のうち、一方の部品のエッジに沿うように作成されている。なお、一方の部品のエッジに沿うとは、シーラー線SEが一方の部品のエッジに一致して、又は前記一方の部品のエッジに近位の位置を通る場合も含む趣旨である。近位の位置とは、前記一方の部品のエッジの方が、他方の相対する部品よりもシーラー線SEが近いと言う意味である。
【0030】
(S30)
S30では、CPU100は穴の検出を行う。具体的には、まず、CPU100は、上側部品Wb1を除いた下側部品Wb2においては、上側部品Wb1が重ね合っていない側の面に、エッジがあるか否かを判定する。また、CPU100は、下側部品Wb2の裏面側(すなわち、上側部品Wb1が位置する面とは反対側の面側)に重ね合せている裏側部品Wb3(
図4(a)参照)について、穴のエッジがあるか否かを判定する。
【0031】
なお、
図4(a)では、上側部品Wb1、下側部品Wb2、及び後述する裏側部品Wb3が配置された図であり、下側部品Wb2、及び後述する裏側部品Wb3にそれぞれ穴h1、h2があることが示されている。
【0032】
そして、CPU100は、エッジがあった場合は、そのエッジが閉じた形状であって、板厚方向に貫通している場合、穴であると判定し、閉じていない形状の場合、或いは閉じてはいるが、貫通していない場合は、穴でないと判定をする。エッジが閉じた形状とは、例えば、円、楕円、三角、四角、多角形等の形状であり、穴は前述の必ず閉じた形状を有する。
【0033】
そして、CPU100は、検出した穴毎にその穴を区切るエッジ(縁部)の位置データ(3次元データ)をバッファに記憶するとともに、固有のホール名(すなわち、識別コード)を順次付与する。なお、シーラーが施されない穴(すなわち、シール禁止の穴)は、部品を組み付ける際の例えば基準穴、或いは部品の取付穴等に使用されるものである。
【0034】
(S40)
S40では、CPU100は、S30で検出した穴を閉塞する閉塞面haを形成する。
図4(b)の例では、下側部品Wb2の穴h1、及び裏側部品Wb3の穴h2がそれぞれソリッドモデルの閉塞モデルhg1、hg2により閉塞され、その閉塞モデルhg1、hg2の上面を閉塞面ha1、ha2としている。なお、個別の閉塞モデルhg1、hg2でなく、閉塞モデルを代表として説明するときは、符号をhgで説明する。
【0035】
また、CPU100はこの閉塞モデルと、この閉塞モデルにより閉塞された当該穴の識別コード(ホール名)と関連づけして、記憶装置130に記憶し、後述する干渉検出子Knと当該閉塞モデルが干渉している場合には、S60において、この関連づけされた穴の識別コード(ホール名)を読み出す。
【0036】
図4(b)に示すように閉塞面ha(ha1,ha2)を有する閉塞モデルは、穴の周囲における下側部品Wb2の上面と面一が好ましいが、限定するものではない。例えば、閉塞面haが、穴の周囲の面よりも、若干突出した位置でもよく、或いは、穴の周囲の面よりも沈んだ位置でもよい。また、閉塞面haは、穴を閉塞する栓として機能する所定の厚みを有する閉塞モデルhg(hg1,hg2)の上面としてもよく、或いは、下側部品Wb2の板厚よりも薄い薄板状の板の上面としてもよい。なお、下側部品Wb2の上面とは、上側部品Wb1と対向する側の面をいう。
【0037】
(S50〜S80)
図2に示すS50〜S80は、ループ処理であって、前記シーラー線SEの始端から開始して、これらの処理を行い、シーラー線SEの終端に達するとこのループ処理を終了し、S90に移行する。
【0038】
なお、複数のシーラー線がチェック対象に選択されている場合は、選択された順、或いは、シーラー線に付された識別コード順(すなわち、識別コードに付されている記号順、或いは数字等による順等による順)にシーラー線毎に、同様にしてS50〜S80の処理を繰り返す。
【0039】
(S50)
S50では、CPU100は、シーラー幅Sw全体に亘って複数の干渉検出子Kn(nは生成する個数:n=1,2,3,…)のソリッドモデルを等ピッチで生成する。前記ピッチは、例えば、1〜数mmが好ましい。シーラー幅Swは、シーラー線SEに直交しており、シーラー線SEは、シーラー幅Swの中央、または略中央に位置する。なお、複数の干渉検出子Knを配置する場合、等ピッチに配置することに限定するものではない。例えば、上側部品Wb1がない領域であって、下側部品Wb2に対応配置する側の干渉検出子のピッチについては、上側部品Wb1に対応配置する干渉検出子のピッチよりも狭くしてもよい。
【0040】
また、干渉検出子Knの形状は限定するものではなく、下側部品Wb2を貫通する長さを有する形状であればよい。例えば棒状、円錐、三角錐等の形状でもよい。干渉検出子Knの形状が円錐、三角錐等のように一端に行くほど先細りになる形状の場合には、その一端側を下側部品Wb2に対して貫通するように配置することが好ましい。本実施形態では、干渉検出子Knは下端ほど先細りになる逆三角錐状に形成されている。
【0041】
なお、シーラー幅Swにおいて、シーラーが上側部品Wb1に施される側の一端には干渉検出子K1が位置するようにし、シーラーが下側部品Wb2に施される側の端には干渉検出子Kn(nのうち、nが最大値)が位置するようにする。
【0042】
そして、
図4(c)に示すように、干渉検出子Knは、下側部品Wb2の上面から同一の高さで配置され、その下端が下側部品Wb2の下面から下方に位置するように配置される。すなわち、いずれの干渉検出子も、下側部品Wb2の上面からその上端面までの高さは、同一となるように配置されていて、上側部品Wb1、下側部品Wb2に干渉する長さを有する。さらに、干渉検出子Knは、下側部品Wb2に対して単数または複数の裏側部材が重ね合わされているときは該単数または複数の裏側部材も干渉して貫通する長さを有するように設定されている。
【0043】
干渉検出子Knの長さは、操作部により、予め入力してもよく、或いは、予めプログラムにて設定されていてもよい。また、干渉検出子Knの長さは、例えば、シーラー幅Swと同じ長さでもよい。
【0044】
生成したこれらの干渉検出子Knは、上側部品Wb1のエッジに沿って設定されたシーラー線SEと直交するシーラー幅Swの全幅に亘り配置されるため、上側部品Wb1、下側部品Wb2、裏側部品Wb3、或いは閉塞モデルhgのうち、いずれか1つまたは複数のものに干渉することになる。
【0045】
(S60)
S60では、CPU100は、干渉検出子Knと干渉した部品等の識別コードを取得するとともに、当該干渉検出子の上端面から干渉した相手の上面までの距離とを測定する。前記距離は、具体的には、当該干渉検出子が干渉している部品等(上側部品Wb1、下側部品Wb2、裏側部品Wb3、閉塞モデルhg)の上面(閉塞面haを含む)と、干渉検出子の上端面間の距離である。
【0046】
そして、CPU100は得られたこれらの識別コードと前記距離に基づいて干渉検出子毎に閉塞モデルhgの閉塞面haとの干渉があったか否かの判定を行う。
すなわち、CPU100は、干渉検出子Knが部品、或いは閉塞モデルhgと干渉しているか否かの検出を、干渉検出子Knの形状及び位置と、ソリッドモデルの上側部品Wb1、下側部品Wb2、裏側部品Wb3、及び閉塞モデルhgの形状及び位置とに基づいて、例えば、公知のブーリアン演算をすることにより行う。
【0047】
従って、干渉検出子Knと上側部品Wb1との干渉があると、上側部品Wb1の識別コードと、当該上側部品Wb1と当該干渉検出子Knの上端面間の距離が得られる。また、干渉検出子Knと下側部品Wb2との干渉があると、下側部品Wb2の識別コードと、当該下側部品Wb2と当該干渉検出子Knの上端面間の距離が得られる。また、干渉検出子Knと裏側部品Wb3との干渉があると、裏側部品Wb3の識別コードと、当該裏側部品Wb3と当該干渉検出子Knの上端面間の距離が得られる。また、干渉検出子Knと閉塞モデルhgとの干渉があると、閉塞モデルhgの識別コード(ホール名)と、当該閉塞モデルhgの閉塞面haと当該干渉検出子Knの上端面の距離が得られる。この閉塞モデルhgには、下側部品Wb2の穴に設けられたものと、裏側部品Wb3の穴に設けられたものを含む。
【0048】
上記のようにして取得した、部品等の識別コードと、前記距離とに基づいて、CPU100は、干渉検出子Knと、下側部品Wb2の穴に設けられた閉塞モデルhgの閉塞面との干渉があるか否かの判定を行う。
【0049】
ここで、1つの干渉検出子が干渉している相手が複数ある場合には、CPU100は、干渉している相手同士の上下の位置関係を、前記距離の大小関係に応じて決定する。
例えば、1つの干渉検出子が下側部品Wb2と干渉し、かつ裏側部品Wb3の穴に設けられた閉塞モデルhgに干渉している場合、CPU100は、得られた距離の大小関係に基づいて、距離が短い方を下側部品とし、距離が長い方を裏側部品Wb3の穴に設けられた閉塞モデルhgと判定する。従って、このような場合には、閉塞モデルとの干渉によって穴の識別コード(ホール名)が取得されていても、S60の判定を「No」とする。
【0050】
また、1つの干渉検出子が下側部品Wb2と干渉して、1つの、すなわち、「下側部品Wb2」の識別コードのみを取得した場合は、CPU100は、S60の判定を「No」とする。
【0051】
また、2つ以上の、例えば、「上側部品Wb1及び下側部品Wb2」、「上側部品Wb1、下側部品Wb2及び裏側部品Wb3」、「下側部品Wb2及び複数の裏側部品Wb3」ように2つ以上の部品のみの識別コードを取得した場合、CPU100は、S60の判定を「No」とする。
【0052】
また、1つの干渉検出子が下側部品Wb2の穴に設けられた閉塞モデルhgと干渉し、かつ裏側部品Wb3にも干渉している場合、CPU100は、得られた距離の大小関係に基づいて、距離が短い方を下側部品に設けられた閉塞モデルと判定し、距離が長い方を裏側部品Wb3と判定する。従って、このような場合には、下側部品Wb2の穴に設けられた閉塞モデルとの干渉によって穴の識別コード(ホール名)が取得されていたものとして、S60の判定を「YES」とする。
【0053】
また、1つの干渉検出子が下側部品Wb2の穴に設けられた閉塞モデルhgとのみ干渉している場合、CPU100は、閉塞モデルhgの識別コード(ホール穴)が取得され、かつ、その閉塞モデルとの距離が計測される。この場合には、下側部品Wb2の穴に設けられた閉塞モデルとの干渉によって穴の識別コード(ホール名)が取得されていたものとして、S60の判定を「YES」とする。
【0054】
また、1つの干渉検出子が下側部品Wb2の穴に設けられた閉塞モデルhgと、1つ以上の裏側部品Wb3の穴に設けられた閉塞モデルhgと干渉している場合、CPU100は、閉塞モデルhgの識別コード(ホール穴)が複数個取得され、かつ、その閉塞モデルとの距離が複数個計測される。この場合には、CPU100は、得られた距離の大小関係に基づいて、距離が一番短い距離を下側部品Wb2に設けられた閉塞モデルのものと判定し、距離が長い他の閉塞モデルhgに関する距離は、裏側部品Wb3の穴に設けられた閉塞モデルのものであると判定する。従って、このような場合には、下側部品Wb2の穴に設けられた閉塞モデルとの干渉によって穴の識別コード(ホール名)が取得されていたものとして、S60の判定を「YES」とする。
【0055】
上記のようにして、CPU100は、シーラー幅Sw内において、下側部品Wb2に穴がない場合(すなわち、S60の判定で「No」とした場合)は、シーラーガンが移動する方向においてシーラー線SE上を始端から終端側に向けて、所定量(例えば、1〜数mm)移動した上で、S60の処理に戻る。
【0056】
また、CPU100は、上記のようにして、シーラー幅Sw内において、干渉検出子Knと下側部品Wb2の穴に形成した閉塞モデルhgの閉塞面haとが干渉しているのであればシーラー幅Sw内において、下側部品Wb2に穴がある(すなわち、S60の判定で「YES」)と判定してS70に移行する。
【0057】
(S70)
S70では、CPU100は、下側部品Wb2において検出した穴とシーラー幅Swとのラップ量を、穴を区切るエッジ(縁部)の3次元データ、閉塞モデルhgと干渉した干渉検出子の3次元データ等に基づいて測定(算出)する。
【0058】
図4(c)に示す例では、干渉検出子Kn(nのうち、nが最大値)が閉塞モデルhg1と干渉し、シーラー幅Sw内には穴h1の両方のエッジが含まれずに穴h1の一方のエッジが含まれているものである。
図4(c)に示す例では、穴h1のエッジにおいて、シーラー幅Sw内にあるエッジと、干渉検出子Knの軸心との間の距離をラップ量とする。
【0059】
又、
図4(c)の例とは異なり、複数の干渉検出子が、共通の閉塞モデルと干渉し、かつ、シーラー幅Sw内に穴h1の一方のエッジのみが含まれる場合がある。
この場合は、穴h1のエッジにおいて、シーラー幅Sw内にあるエッジと、共通の閉塞モデルに干渉している干渉検出子のうち、前記シーラー幅内にあるエッジから最も遠い位置にある干渉検出子の軸心と、該エッジ間の距離をラップ量とする。
【0060】
また、
図5の例では、干渉検出子Km(m<n)が閉塞モデルhg1と干渉していて、シーラー幅Sw内に穴h1の両方のエッジが含まれている場合であり、この場合のラップ量は、シーラー幅Sw内にある穴h1の両方のエッジ間の距離とする。なお、
図5では、説明の便宜上、干渉検出子Kmを除く他の干渉検出子については省略して図示している。
【0061】
なお、CPU100は、検出した穴に関しては、ループ処理の結果、S60の処理で「YES」が複数回行われた場合は、S70の処理が複数回行われて、算出結果であるラップ量は複数個取得することになるが、取得したラップ量のうち、最大値をここでのラップ量とする。
【0062】
また、CPU100は、NGフラグ(NO GOODフラグ)をセットするとともに、識別番号の付与を行う。なお、識別番号の付与は、昇順に行われる。
(S80)
S80では、CPU100は、NGフラグがセットされるとともに、シーラー幅Swの一部がラップしている穴に関して、前記ワークの3次元データ及び3次元データのシーラー線に基づいて、画像作成を行い、シーラー線毎に関連づけしてバッファに一旦記憶する。画像作成には、
図8に示すワーク全体の画像(すなわち、全体図)の作成を含む。このワーク全体の画像において、太線はシーラー線SEを示している。このようにして、本実施形態では、判定対象のシーラー線SEの全体の画像を作成するようにしている。なお、判定対象のシーラー線SEの全体の画像が作成できるのであれば、ワーク全体の画像は必ずしも必要ではない。例えば、ワークの全体画像を作成すると、帳票作成の時に、判定対象のシーラー線SEの全体が極めて小さくなる場合には、ワーク全体ではなく、そのワークの一部に前記判定対象のシーラー線SEの全体が入るように作成してもよい。
【0063】
また、
図9に示すように、画像作成には前記NGフラグがセットされた穴30a(
図4(a)のh1に相当)を有するシーラー線SE及びワークを拡大した画像作成、すなわち、拡大図の作成を含む。また、画像作成にはさらに
図6に示すように前記NGフラグがセットされたラップしている穴を有するシーラー線の当該穴を拡大した拡大断面図の作成を含む。なお、
図6、
図9において、部品20は、上側部品Wb1であり、部品30は下側部品Wb2であり、穴30aは、部品30に設けられた穴h1に相当する。
【0064】
この後、CPU100は、シーラー線SEの終端まで閉塞面の干渉検出子による干渉の有無判定が終了しない限りS50に戻る。また、CPU100は、シーラー線SEの終端において前記判定が終了した場合は、表示装置160の表示画面160a上に、図示しない資料作成ボタンを表示してS90に移行する。
【0065】
S80において、シーラー線の終端まで閉塞面との干渉の判定が行っていない場合は、CPU100は、所定量(例えば、1〜数mm)移動した上で、S60の処理に戻る。
(S90)
上記ループ処理が終了すると、CPU100はS90の処理を行う。すなわち、CPU100は複数(全数を含む)のシーラー線のチェックを行うための選択ボタンが選択されていた場合、シーラー線毎に、複数(全数を含む)のNGフラグがセットされた穴を、識別番号順に、3D座標を載せて結果リストを作成する。穴の3D座標は、ラップ量(最大値)が得られた座標である。なお、穴の3D座標は、ラップ量(最大値)が得られた座標に限定するものではなく、穴の中心位置、或いは始端位置、或いは終端位置であってもよい。
【0066】
また、個別にシーラー線のチェックを行うための選択ボタンが選択されていた場合に、CPU100は、シーラー線毎に、複数(全数を含む)のNGフラグがセットされた穴を、識別番号順に3D座標を載せて結果リストを作成する。
【0067】
そして、CPU100は、作成した結果リストを
図1に示す表示装置160の表示画面160aに表示する。
図10は、1つのシーラー線毎に作成した結果リストの一例である。
【0068】
図10に示すように、結果リストは、当該シーラー線毎に、シーラーがラップしている穴の識別番号欄C1、穴の3D座標欄C2、チェック項目欄C3、ラップ量欄C4を有する。すなわち、結果リストの識別番号欄C1には識別番号が、3D座標欄C2にはその穴の3D座標が、チェック項目欄C3には「穴ラップチェック」が、ラップ量欄C4にはその穴にラップしたシーラーのラップ量が載る。
【0069】
CPU100は、作成した前記結果リストを表示装置160の表示画面160aに表示する。
(S100)
S100では、CPU100は、操作者が表示画面160a上に表示された資料作成ボタンが、作業者のマウス180等による操作により押下されるまで待機する。前記資料作成ボタンが押下されると、CPU100は、
図2に示すシーラー塗布要件チェックプログラムにおけるS110〜S130の帳票作成のための処理を実行する。
【0070】
(S110〜S130)
S110〜S130は、帳票作成のためのループ処理であり、CPU100は全てのシーラー線毎に繰り返して処理する。
【0071】
(S110)
S110では、CPU100は、S90で、シーラー線毎に作成した結果リストの識別番号順にシーラーがラップした穴があるか否かを、NGフラグに基づいて判定する。NGフラグがない場合には、次のシーラー線について同様に処理を行う。S110で、1つでもNGフラグがある場合には、CPU100はS120に移行する。
【0072】
(S120)
S120では、CPU100は前記結果リストの、シーラーがラップしている穴の識別番号毎に、予め設定されている帳票フォーマットに対してS80で作成した画像(全体図、拡大図、拡大断面図)を組み込む(貼付する)。なお、帳票フォーマットは、前記プログラムに予め記述されている。
【0073】
図8は帳票フォーマットの一例である。
図7の帳票フォーマットでは、例えば、帳票の題名「構造変更提案書」欄P0、「依頼理由」欄P1、「問題」の書き込み欄P2、「変更依頼内容」書き込み欄P3、「設計回答」欄P4、及び管理ナンバー領域P5がレイアウトされている。
【0074】
前記「依頼理由」欄P1には、さらに、ワークの全体図が貼り付けられる領域P11、拡大図が貼り付けられる領域P12、断面図が貼り付けられる領域P13を有する。なお、全体図に対する、当該シーラー線の拡大図の拡大率は、予め設定されている。
【0075】
領域P11に貼り付けられるワークWの全体図の例を
図8に示す。また、領域P12に貼り付けられるシーラー線SEの拡大図の例を
図9に示す。また、領域P13に貼り付けられる拡大断面図を
図6に示す。
【0076】
なお、
図10の帳票フォーマットの各欄、及び領域のレイアウトは一例であって、限定されるものではない。
(S130)
S130では、
図7に示す前記帳票フォーマットにある「問題」の書き込み欄P2に対して、定型文「ラップ量がn mmあります。」を使用して、前記「n」に、当該ラップ量を入れて、コメントを作成する。また、CPU100は、ワークを構成している部品において、当該シーラー線に関係している部品の部品情報に基づいて部材の品番「○○○○○○○○」、「××××××××」すなわち記号作成を行う(
図9参照)。なお、
図9では、説明の便宜上、品番を省略して図示している。
【0077】
また、
図7、
図9に示すように、判定対象となったシーラー線SEにおいて、シーラーがラップしている穴のラップ量が最大値となる部分の断面箇所を示すための切断線であるB−B線を、作成する。前記切断線は、ラップ量が最大値となる部位を通るとともに、シーラー線SEに垂直な平面に含まれる線である。また、CPU100は、前記B−B線で切断された断面図を領域P13に貼り付ける。また、CPU100は領域P13に貼り付けられた図には、ラップ量の最大値である数値を表示する。
【0078】
また、CPU100は、
図7に示す「変更依頼内容」書き込み欄P3には、変更要求のコメントである定型文「穴の位置の変更願います。」のコメントを作成する。前記コメントは一例であって、前記のものに限定されるものではない。
【0079】
シーラー線が複数ある場合は、再び、S110にリターンした同様の処理を繰り返す。このループ処理が終了すると、CPU100はS140に移行する。
(S140)
S140では、CPU100はループ処理で得られた帳票を表示装置160の表示画面160aに表示出力し、このフローチャートを終了する。
【0080】
上記のように表示画面160a上に表示した帳票を、設計者は見て、操作部を操作して、「設計回答」欄P4に設計回答を記述する。
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0081】
(1)本実施形態のシーラー塗布要件チェック装置10は、ワークWを構成する複数の部品20(Wb1)、30(Wb2)の3次元データと、前記部品のうち、重ね合わせする上側部品Wb1と下側部品Wb2間に設定されたシーラー線SEの3次元データを記憶する記憶装置130(記憶部)を有する。また、シーラー塗布要件チェック装置10は、下側部品Wb2に穴h1がある場合に、該穴h1を塞ぐ閉塞面haを形成するCPU100(閉塞面形成部)を有する。また、CPU100は、シーラー線SEと直交するシーラー幅Sw内に位置する干渉検出子Knを生成する干渉検出子生成部として機能する。
【0082】
また、CPU100は、干渉検出子Knをシーラー線SE上に沿わせて所定量移動させる毎に、閉塞面haと干渉検出子Knとの干渉の有無をチェックする干渉チェック部として機能するとともに、干渉チェック部のチェック結果を出力する出力部として機能する。この結果、本実施形態によれば、シーラーが施される下側部材の塗布領域に穴形状を有する場合に、確実に穴形状の検出を行うことができる。
【0083】
(2)本実施形態のシーラー塗布要件チェック装置10では、CPU100(干渉検出子生成部)は、干渉検出子を、シーラー幅内に複数形成する。この結果、本実施形態によれば、複数の干渉検出子により、穴に設けられた閉塞面との干渉検出を行うことができる。
【0084】
(3)本実施形態のシーラー塗布要件チェックプログラムは、コンピュータの記憶装置130を、ワークを構成する複数の部品の3次元データと、前記部品のうち、重ね合わせする上側部品と下側部品間に設定されたシーラー線SEの3次元データを記憶する記憶部として機能させる。また、シーラー塗布要件チェックプログラムは、コンピュータのCPU100を、部品に穴がある場合に、該穴を塞ぐ閉塞面を形成する閉塞面形成部として機能させるとともに、シーラー線SEと直交するシーラー幅Sw内に位置する干渉検出子Knを生成する干渉検出子生成部として機能させる。また、シーラー塗布要件チェックプログラムは、CPU100を、干渉検出子Knをシーラー線SE上に沿わせて所定量移動させる毎に、下側部品Wb2の閉塞面haと干渉検出子Knとの干渉の有無をチェックする干渉チェック部として機能させるとともに、干渉チェック部のチェック結果を出力する出力部として機能させる。また、シーラー塗布要件チェックプログラムは、CPU100を、シーラー線SEと直交するシーラー幅Sw内に位置するとともに、干渉検出子を生成する干渉検出子生成部として機能させる。また、シーラー塗布要件チェックプログラムは、CPU100を、干渉検出子をシーラー線SE上に沿わせて移動させ、閉塞面haと干渉検出子Knとの干渉の有無をチェックする干渉チェック部として機能させるとともに、干渉チェック部のチェック結果を出力する出力部として機能させる。この結果、本実施形態のシーラー塗布要件チェックプログラムによれば、コンピュータにて、シーラーが施される下側部材の塗布領域に穴形状を有する場合に、確実に穴形状の検出を行うことができる。
【0085】
(4)本実施形態のシーラー塗布要件チェックプログラムは、コンピュータに、干渉検出子生成部として機能させる際、干渉検出子Knを、シーラー幅Sw内に複数形成する。この結果、本実施形態のシーラー塗布要件チェックプログラムにより、コンピュータをシーラー塗布要件チェック装置10として複数の干渉検出子により、穴に設けられた閉塞面との干渉検出を行うことができる。
【0086】
(5)本実施形態のROM110は、コンピュータが読み込み可能な記憶媒体として前記シーラー塗布要件チェックプログラムを記憶する。この結果、このシーラー塗布要件チェックプログラムを読込みした、コンピュータを、上記したシーラー塗布要件チェック装置10として機能させることができる。
【0087】
なお、本発明の実施形態は前記実施形態に限定されるものではなく、下記のように変更しても良い。
・前記実施形態では、シーラー塗布要件チェック装置10を単一のコンピュータにより構成した。この構成に代えて、記憶部をサーバーとして分離して構成し、残りの各部を単一のコンピュータにより構成して、該コンピュータとサーバーとをLAN(Local Area Network)等により通信可能に接続してもよい。また、各部をそれぞれコンピュータにて構成し、LAN等により通信可能にできるように構成してもよい。
【0088】
・前記実施形態では、干渉検出子をシーラー幅Sw内において複数配置したが、単数の干渉検出子を生成して、その干渉検出子を、シーラー幅内全体に亘って所定の量を移動させる毎に、閉塞面との干渉検出を行ってもよい。
【0089】
・前記実施形態では、CPU100を、閉塞面形成部、干渉検出子生成部、干渉チェック部、及び出力部とし、さらに、ラップ量の算出(測定)を行うようにしたが、穴のラップ量の測定を省略してもよい。この場合は、シーラー塗布要件チェック装置10とは異なる他の装置において、ラップ量の測定を行うようにしてもよい。
【0090】
・前記実施形態では、出力部が出力する対象は表示装置160としたが、プリンタ190としてもよい。また、出力部が出力する対象としては、前記実施形態のコンピュータに直接接続した表示装置160等に限定されるものではなく、LAN(Local Area Network)、或いはWAN(Wide Area Network)等を介して接続した端末が備える表示装置、或いはプリンタであってもよい。
【0091】
・前記各実施形態では、S100で資料作成ボタンを操作することにより、次のステップに移行するようにしたが、S100を省略して、S110に移行してもよい。
・前記各実施形態ではS80で拡大断面図を作成するようにしたが、拡大が必要でない場合には、単に断面図としてもよい。
【0092】
・前記各実施形態では、前記ROM110を記憶媒体としてシーラー塗布要件チェックプログラムを記憶するようにしたが、記憶装置130に前記シーラー塗布要件チェックプログラムを記憶させてもよい。また、記憶媒体としては、前記記憶装置130に限定するものではなく、USBメモリ等の半導体記憶装置、磁気ディスク、光磁気ディスク等の記憶媒体であってもよい。また、記憶媒体は、ハードディスク、Flash SSDであってもよい。