【実施例1】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0015】
図1は本発明の実施例に係る自走式の草刈機1の斜視図である。草刈機1は、走行方向に沿って転回または揺動可能に設けられる小径の前輪12a、12b(
図1では12aは見えない)と、駆動輪である大径の後輪13a、13b(
図1では13aは見えない)が左右にそれぞれ設けられ、草刈機1は本体カバー2によって上部全体が覆われる。草刈機1の電源は、着脱可能なバッテリパック(
図2で後述)であって、制御装置に含まれるマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と称する)によって車輪モータ(図示せず)の駆動が制御され、自律的に走行しながら草を刈り取る。本体カバー2の前方下端2cは、地面との間に所定の距離Hの隙間を隔てるように構成され、この隙間から本体カバー2の内部に入りこんだ草が、本体シャーシ10の下側に配置される刈刃(後述)によって刈り取られる。本体カバー2の上側には、前方側の回動軸を中心に開閉可能な開閉カバー3が設けられる。開閉カバー3は例えば透明性を有する樹脂部材により構成され、開閉カバー3を開けることにより
図2にて後述するダイヤル20、キーボード24、ディスプレイ25にアクセス可能となる。本体カバー2の前方には前面視で略長方形の開口部5が設けられ、充電時に開口部5を介して充電ステーション270の送電端子が受電端子41と接触可能となる。開口部5の内側には、本体シャーシ10の先端部分が位置し、その左側側面と右側側面には受電端子41が設けられる。本体カバー2の開口部5の左右両側には、前輪12a(
図2参照)、12bの上部を覆うためのフェンダー2a、2bが形成される。本体カバー2の後方側上部には、手動停止用のストップスイッチ4が設けられる。
【0016】
図2は、本発明の実施例に係る草刈機1の本体カバー2を外した状態の上面図である。本体シャーシ10は先端が凸状に、上面視で三角形に絞り込まれ、その斜面から左右両側には取付アーム11a、11bが伸びるように設けられる。取付アーム11a、11bには前輪12a、12bが軸支され、草刈機1の移動方向に応じて車輪の向きが自在に追従可能なようにそれぞれ保持される。本体シャーシ10の後方側には後輪13a、13bが設けられる。ここでは後輪13a、13bに大径の車輪を用いて、それぞれ独立した走行用の車輪モータ(右車輪モータ16a、左車輪モータ16b)で駆動される。2つの車輪モータは、同期して又は非同期に駆動することによりメイン基板26に搭載されるマイコン(図示せず)による操舵制御を可能としている。車輪モータの回転軸は図示しない減速機構によって所定の減速比にて減速された後に後輪13a、13bを回転させる。例えば、後輪13a、13bを同期して駆動することにより草刈機1が前進又は後進し、後輪13a、13bの回転差を生じさせるように駆動することにより所定方向に草刈機1を転回させることができる。車輪モータは、例えばブラシレスDCモータが用いられ、図示しないインバータ回路を介して駆動される。
【0017】
本体シャーシ10の先端近傍の左右両側の斜面には、2つの受電端子41(正極端子41a、負極端子41b)が設けられる。取付アーム11a、11bの水平部の上側には、本体カバー2を支持するために、本体カバー2の内壁部に設けられる板ばね部(図示せず)の端部を所定範囲内で移動可能に収容する凹部17a、17bが設けられる。本体シャーシ10の後方側端部付近には、本体カバー2の内壁部に設けられる板ばね部(図示せず)の端部を所定範囲内で移動可能に収容する凹部18a(左側端部付近の凹部は図示せず)が設けられる。
【0018】
本体シャーシ10の中央付近には、図示しない刈刃用のモータを上下方向に移動させることにより刈刃の位置を変更して、刈り取り高さを変えるための昇降機構が設けられ、昇降機構のダイヤル20が上部から回転操作可能なように設けられる。ダイヤル20は、後述する刈刃と地面との距離(刈り込み高さ)を“20”、“30”、“40”、“50”“60”と刻印された基台部14により回転可能なように保持される。ダイヤル20をいずれかの数値に合わせることにより、それに対応して後述する刈刃と刈刃モータが上方向又は下方向に移動する。ダイヤル20の前方には、本体シャーシ10と本体カバー2の相対移動等から、草刈機1が障害物への衝突や、本体カバー2の持ち上げ状態、傾斜状態等を検出するリフトセンサ47と接触センサ48が設けられる。リフトセンサ47と接触センサ48と対応する位置であって本体カバー2の内壁側には、マグネット19a、19bが設けられる。リフトセンサ47と接触センサ48は、例えばホールセンサを有する基板を備えて構成される。
【0019】
本体シャーシ10の後方側にはバッテリパック(
図3にて後述)を収容し、マイコンが搭載されるメイン基板を収容する容器部22が設けられ、容器部22の開口部は開閉可能な蓋部23にて覆われる。蓋部23の上面には液晶表示パネル等のディスプレイ25と、キーボード24と、メインスイッチ42が設けられる。作業者はキーボード24を操作して草刈りスケジュールの設定等を行うことができる。
【0020】
図2には図示していないが、地面と平行に所定の距離を隔てて回転するロータリー式の刈刃35(
図3参照)はダイヤル20の回転中心と同軸上で回転し、刈刃モータ30(
図3で後述)は、本体シャーシ10の前後方向に見て前輪12a、12bと後輪13a、13bの間に設けられる。刈刃35の外縁位置は、前輪12a、12bと後輪13a、13bのそれぞれの中心位置を結んだ仮想四角形の範囲内に収まるように配置される。また、点線で示す本体カバー2の外縁位置は、刈刃35の外縁位置よりも十分外側に位置するように設定され、刈刃35と本体カバー2とのクリアランスが十分確保される。
【0021】
図3は
図2のA−A部の断面から右方向を見た図(草刈機1の左右中心位置を通る鉛直断面図)である。本体カバー2は地面側を除いて本体シャーシ10のほぼ全体を覆う形状であって、バネ等によって本体シャーシ10に対して浮いた状態で保持されることにより、前後左右及び上下方向に僅かに移動可能である。本体カバー2は岩や突起、壁などの障害物にぶつかることがあり、その際の本体カバー2の相対的な位置変動を後述する接触センサ等で検出することにより、後述する制御装置が草刈機1の衝突等を検出する。
【0022】
本体シャーシ10の中央付近下側には、複数の刃35bを有し、地面と略平行な面で回転する刈刃35が設けられる。刈刃35を回転させるための駆動装置(刈刃モータ30)は、モータハウジング21の内部に収容される。モータハウジング21はダイヤル20を回転させることによって、本体シャーシ10に対して上下方向に移動可能なように構成とされ、刈刃35の高さを調整する場合は、駆動装置と一体に上下方向に昇降する。
図3では刈刃モータ30及び刈刃35が最上位位置(刈刃高さH2=60mm)にある状態を示している。
【0023】
上方に開口を有するカップ状のモータハウジング21の内側に刈刃モータ30が収容され、刈刃モータ30の回転軸30cは鉛直方向に延びるように配置され、回転軸30cの下端はモータハウジング21に形成される貫通穴を貫通して下側にまで延び、そこに刈刃35が取り付けられる。刈刃35は円盤状に形成された合成樹脂製のフレーム35aの外周側の数カ所に金属製の刃35bを設けたものであり、地面に対して設定された高さH2の水平な面内で回転する。
【0024】
刈刃モータ30はブラシレスDCモータであって、励磁コイルが巻かれたステータコア30bの内側にて、永久磁石を有するロータコア30aが回転する。ステータコア30bの一方側(ここでは上側)には円形のインバータ回路基板31が設けられ、そこにロータコア30aの位置を検出するための複数のホールIC(図示せず)と、FET(電界効果トランジスタ)やIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の複数のスイッチング素子が搭載される。
【0025】
刈刃モータ30の後方側には、バッテリパック28、メイン基板26等を収容するための略直方体状の容器部22が設けられる。容器部22は、プラスチック等の合成樹脂の一体成形にて製造される。容器部22は、上側に開口を有し、蓋部23を開閉するためのヒンジ23aが設けられ、開口は蓋部23にて閉鎖される。容器部22の中に収容されるバッテリパック28は着脱式であって、その内部には複数の二次電池セル(図示せず)が収容される。容器部22の上側後端付近には、ヒンジ23aの反対側で蓋部23の開閉を固定するねじ等からなる蓋の操作部37が設けられる。
【0026】
本体シャーシ10の前端付近には第1のガイドワイヤセンサ45が設けられ、後端付近には第2のガイドワイヤセンサ46が設けられる。ガイドワイヤセンサ45、46はコイルによって、周囲の磁界の変化を電流の変化に変換する。ここでは図示しないコイルの軸方向(磁界の検出方向)が上下方向(鉛直方向)になるようにガイドワイヤセンサ45、46の取り付け向きが設定される。後側のガイドワイヤセンサ46は、その上下中央位置が後輪駆動用のモータ16a、16bの回転軸の高さとほぼ一致するように配置される。このようにガイドワイヤセンサ46の位置を設定することによって、モータ16a、16bによってガイドワイヤセンサ46が受けるノイズの影響を抑制することができる。
【0027】
図4は草刈機1の本体シャーシ10に装備される各種機能部品を示すブロック図である。メイン基板26には草刈機1の動作を制御する制御装置や図示しない電源回路等が搭載される。制御装置は、図示しないマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と称する)や記憶装置、その他の電子素子が含まれる。メイン基板26には、充電ステーション270の2つの送電端子(正極、負極)に接続可能な受電端子41a、41bと、電池取付部に装着されたバッテリパック28の端子(図示しない出力電圧端子及び識別用端子)と着脱自在に接続する電池ターミナル29が接続される。メインスイッチ42は電池ターミナル29とメイン基板26の接続線路に挿入されるもので、草刈機1のメイン基板26やモータ等への電源の供給スイッチである。
【0028】
メイン基板26には、刈刃モータ30、右車輪モータ16a、左車輪モータ16bに接続され、メイン基板26から駆動電力がモータ駆動回路27a〜27cを介して供給されることにより、刈刃35が回転し、後輪13a、13bが独立して駆動される。モータ駆動回路27a〜27cはインバータ回路が含まれ、マイコンによって制御されるPWM制御信号に応じて直流電源から三相交流の励磁電流を生成して刈刃モータ30、右車輪モータ16a、左車輪モータ16bを回転させる。マイコンは刈刃モータ30を回転させる事により、刈刃モータ30の回転軸30cに減速機構無しで直結される刈刃35を回転させる。また、マイコンは、右車輪モータ16aと左車輪モータ16bを連動させて又は非連動で回転させることにより後輪13a、13bを回転させる。
【0029】
メイン基板26にはキーボード24、ディスプレイ25、ストップスイッチ4が接続されるとともに、第1(前方側)のガイドワイヤセンサ45、第2(後方側)のガイドワイヤセンサ46、リフトセンサ47、接触センサ48、傾斜センサ49等の各種センサが接続される。第1及び第2のガイドワイヤセンサ45,46のコイルにより検出された信号は、メイン基板26に出力され、草刈り領域の境界をメイン基板26に搭載されたマイコンにて認識する。この認識結果に応じて、マイコンは草刈機1の方向制御等を左車輪のモータ16bと右車輪のモータ16aを独立して駆動することにより、草刈機1の前進、後退、及び転回をおこなう。リフトセンサ47は、草刈機1の本体シャーシ10が持ち上げられたとき、又は、草刈機1が地面に対して所定角度以上傾斜したときに、これを検知するものであり、その際にマイコンは右車輪モータ16a、左車輪モータ16b、及び、刈刃モータ30を停止させる。接触センサ48は、草刈機1が何かに接触した際の衝撃を検出するものである。傾斜センサ49は、草刈機1が地面に対して所定角度以上傾斜したときに、これを検知して傾斜面に草刈機1が侵入しないように回避する。
【0030】
本体カバー2の後端側上部の操作しやすい位置にストップ用の手動停止手段であるストップスイッチ4(
図1参照)が設けられ、ユーザは手動操作で自動走行中若しくは草刈り中の草刈機1を停止させることができる。キーボード24とそれに搭載されるディスプレイ25は、草刈りに関する情報の入出力装置であり、操作者は本体カバー2に設けられた開閉カバー3を開くことでアクセスできるように配置され、動作開始の指示、タイマ設定、作業領域等の設定を行う。ここではキーボード24を設けたが、ディスプレイ25としてタッチ式の液晶ディスプレイを用いてこれらを一体に形成しても良い。
【0031】
以上の草刈機1の構成において、本体シャーシ10の電池取付部にバッテリパック28を装着し、本体シャーシ10を充電ステーション270に位置付けると、充電ステーション270側の制御装置は草刈機1の接続を判別して、図示しない送電回路から充電用の直流電圧を本体シャーシ10に供給する。充電回路は定格出力電圧にてバッテリパック28を充電する。充電完了後、マイコンは図示しないリレーを制御する事によりバッテリパック28を負荷側(モータ等への電力供給側)から、モータ16a、16b、30に接続する側に切り替える。その後、草刈機1は充電ステーション270から離脱してメイン基板26上のマイコンにより予め定められた自動走行プログラムに沿って草刈り動作を行う。草刈機1は要求された草刈り動作が終了したとき、又はバッテリパック28の残量が低下したときは充電ステーション270に帰還する。
【0032】
次に
図9を用いてガイドワイヤセンサ45を用いた位置検出方法を説明する。本実施例においてループ状に結線されたガイドワイヤ280には、15ミリ秒周期で、5マイクロ秒幅のパルス電流を複数、所定のパターンとなるように流している。
図9のように地表上又は地表近くに配置されたガイドワイヤ280に対して、矢印281の方向に電流を流すと、その周りに同心円を描くように磁界282ができる(右ネジの法則)。この磁界282の向きは、ガイドワイヤ280による閉空間の内側では矢印283のように地面に対して上から下向きとなり、閉空間の外側では矢印284のように地面に対して上から下向きとなる。つまり、草刈機1のガイドワイヤセンサ45が図中の位置Aのようにガイドワイヤ280の内側にいるときは、ガイドワイヤセンサ45が読み取る磁界の向き(矢印283)は、上から下向きとなる。一方、ガイドワイヤセンサ45が図中の位置Bのようにガイドワイヤ280の外側にいるときは、ガイドワイヤセンサ45が読み取る磁界の向き(矢印284)は、下から上向きとなる。この原理を利用して草刈機1は、ガイドワイヤセンサ45、46の双方が読み取る磁界の向きによって草刈機1がガイドワイヤ280によって閉じられた領域の内側(位置A)にいるか、外側(位置B)に出てしまったかを識別することができる。
【0033】
磁界の向きがどちらかになるかによってガイドワイヤ280の位置を検出するには、ガイドワイヤセンサのコイルの軸方向を垂直方向に向けるように配置することが重要である。本実施例では、ガイドワイヤセンサを走行方向の前側端部付近(第1のガイドワイヤセンサ45)と、後側端部付近(第2のガイドワイヤセンサ46)を設け、双方で同じように検出を行うので、草刈機1がガイドワイヤ280を跨いだような状態まで検出が可能となる。さらに草刈機1の左右中心点がガイドワイヤ280の上にあるように、ガイドワイヤ280に沿って移動する場合は、ガイドワイヤセンサ45、46の出力が特徴的に弱くなるが、その状態も検出可能である。尚、電流281の流れる向きが反対になると、ガイドワイヤセンサが読み取る磁界の向き(矢印283、284)も反対になる。従って、ガイドワイヤ280に流す電流の向きを周期的に変えたパルス群(詳細は後述)とすることにより、ガイドワイヤセンサ45、46で検出された電流値からガイドワイヤ280の内側か外側かを正しく識別できるようにしている。
【0034】
図5は草刈機301のガイドワイヤセンサによる検出信号の波形を示す図である。ここでは第1のガイドワイヤセンサ45が、ガイドワイヤ280の内側位置(位置A)にあるときに検出される電流値を示している。ガイドワイヤセンサ45はコイルによって、その位置での磁界の変化を電圧に変換する(ガイドワイヤセンサ46も同じ)。その電圧をマイコンが読み取り、マイコンが記憶していたガイドワイヤ280の電流パターンと一致するか比較し、ガイドワイヤ280による信号を判定する。(1)はモータ等のノイズの影響が無い場合の理想的な読み取り波形(電流値70)である。本実施例のガイドワイヤ280に所定のパターンの電流(ガイドワイヤ信号)を流すもので、ガイドワイヤセンサ45がガイドワイヤ280の内側に位置する場合であって、
図9のように電流の向き281となる時にガイドワイヤセンサ45が+電流を検出し、電流の向きが281と反対方向となる時にガイドワイヤセンサ45が−電流を検出する。誘導信号は、
図9の矢印281の方向に短い電流を流し(+側第1パルス)、次に矢印281と反対方向に短い電流を流し(−側第1パルス)、次に矢印281の方向に短い電流を流し(+側第2パルス)、次に矢印281と反対方向に短い電流を流し(−側第2パルス)、最後に、矢印281の方向に短い電流を流し(+側第3パルス)。このように+側パルス71aを3つ、−側パルス71bを2つとしてパルス群71を形成する。パルス群71〜79は15ミリ秒周期で出現するので、マイコンはガイドワイヤセンサ45によって検出された信号から、+側パルスと−側パルスの数を検出して草刈機1がガイドワイヤ280の内側にいるか、外側にいるかを正しく識別することができる。尚、ガイドワイヤセンサ45がガイドワイヤ280の外側に位置する際には、磁界の方向が逆になるために、(1)の波形を上下反転した形の波形を検出することになるが、3パルス出現した側の極性(外側に位置する際には−側)を識別することで、ガイドワイヤ280の外側(位置B)にいることが正しく識別できる。
【0035】
図5(2)は草刈機301にて実際に草刈り中にガイドワイヤセンサ45にて検出される波形の一例を示すものである。電流値80のうち、パルス群81、82の含まれる矢印61の時点まで、刈刃35を駆動する刈刃モータ30へ通電中である。この区間では、刈刃モータ30からの漏れ磁界の影響を受けてしまい、検出された電流値80は、矢印81a、81b、82a、82bのように大きな波形の乱れ(ノイズ)を検出してしまう。ここではノイズの一例を示したものであるが、通常、ノイズの大きさや向きは一定ではないので予測できない。刈刃モータ30の電流をもとにノイズを打ち消す等の積極的な対応策をとることも考えられる。しかしながら、刈刃モータ30の負荷が決まっていれば予測することができるが、実際には芝の伸び具合や芝の密度によって刈刃モータ30に掛かる負荷がその都度変化する為、刈刃モータ30の電流とその磁界の変化を予測することは困難である。
【0036】
本発明者らが検証したところ、ガイドワイヤセンサ45にノイズを及ぼすのが、刈刃モータ30であって、刈刃モータ30のステータに電流を流す時に漏れ磁束が出て、その磁束の向きがガイドワイヤセンサ45のコイルの向きと近いためであることがわかった。特に、刈刃モータ30は、回転軸30cが鉛直方向を向いており、漏れ磁束の方向が鉛直方向になる。一方、回転軸が水平方向になるモータ(右車輪モータ16a、左車輪モータ16b)では漏れ磁束は横方向が多いので、ガイドワイヤセンサ45、46との高さ方向中心位置を同じにすれば、影響が少ないことがわかった。縦置きの刈刃モータ30のノイズの影響を除去するのは、刈刃モータ30から漏れる磁界を消失させれば良い。この際、刈刃モータ30が回転しているか停止しているかはさほど問題では無くて、漏れ磁界の有無が問題である。これは、電流値80に影響するノイズは、電磁波を拾ったノイズではなくて、磁束の変動に伴うノイズ、つまり刈刃モータ30のステータコアとコイルからの漏れ磁束が問題となるからである。そこで本実施例ではガイドワイヤセンサ45、46にてガイドワイヤ280による誘導信号を検出する際に、刈刃モータ30への電源供給(通電)を一時的に停止して、ノイズの影響がない状態として、刈刃モータ30の停止中に誘導信号を検出するように構成した。この刈刃モータ30への通電停止中のガイドワイヤセンサ45による検出波形を示すのが(2)のパルス群83から87の区間である。
【0037】
刈刃モータ30への通電停止は、草刈機1における草刈り作業中の所定の時間間隔ごとに行い、刈刃モータ30に電流を500ミリ秒流したら、刈刃モータ30への通電を完全に停止させる。この停止はモータ駆動回路27a(
図4参照)に含まれるスイッチング素子の導通を遮断状態とすれば良い。この刈刃モータ30の通電停止中にガイドワイヤセンサ45、46による誘導信号の検出を行う。この検出は誘導信号としてのパルス群83〜87の複数を連続して正しく検出することである。複数連続で検出するようにしたのは、誤動作を防ぎ信頼性を上げるためである。ガイドワイヤセンサ45、46による誘導信号の検出が完了したら、矢印62で示すタイミングにて刈刃モータ30への駆動電流の供給を再開する。従って、刈刃モータ30を停止させる時間は一定ではなくて、検出毎に変わることがある。
【0038】
刈刃モータ30への通電を一時的に停止すると、刈刃35は慣性力により惰性で回転し続け、わずかながら刈刃35の回転速度が脈動するが、連続的に回転を続けることには変わりが無い。従って、草の刈り取り作業の効率の低下を心配する恐れはほとんど無い。また、車輪モータ16a、16bについては停止せずに、駆動したままで良いので、草刈機1の走行制御には何ら影響を与えない。
図5(2)の矢印62において、パルス群87の後に刈刃モータ30への通電を再開したら、同様の処理、即ち、刈刃モータ30への通電、慣性回転、通電、慣性回転を繰り返す。
【0039】
図6は本実施例に係る草刈機1において、ガイドワイヤによる誘導信号を読み取る手順を示すフローチャートである。
図6に示す一連の手順は、マイコンを有する制御装置にあらかじめ格納されたプログラムによってソフトウェア的に実行可能である。芝刈り動作が開始されると、まずマイコンは制御に必要なカウンタの初期設定や、一時記憶メモリの初期化を行う(ステップ101)。ここでは、刈刃モータ30の稼働時間をカウントするためのタイマや、ガイドワイヤセンサ45、46の判定結果を格納するメモリ、草刈り停止命令の有無を格納する停止命令メモリ等を初期化する。次に、マイコンは、刈刃モータ30への通電を開始して、刈刃35を回転させる(ステップ102)。刈刃モータ30は、ブラシレスDCモータであるので、インバータ回路に含まれる複数のFET(電界効果トランジスタ)にゲート信号を供給することにより、刈刃モータ30のコイルへ所定の駆動電流を供給する。また、マイコンは車輪モータ(右車輪モータ16a、左車輪モータ16b)への通電を開始することにより、草刈機1の走行を開始する(ステップ102)。
【0040】
次にマイコンは、停止命令メモリの内容から草刈り動作の停止命令があったかどうかを判定する(ステップ103)。停止命令は、例えば、所定の草刈り動作が終了した場合、何らかの異常の発生が検出された場合、又は、停止用のストップスイッチ4が操作された場合等、様々な要因があり得るが、この停止命令の状態は停止命令メモリの内容にて確認できる。ステップ103にて草刈り停止命令があったら、刈刃モータ30と車輪モータ(右車輪モータ16a、左車輪モータ16b)への通電を停止することにより、草刈機1の動作を停止させ(ステップ114)、草刈り動作を停止する。
【0041】
ステップ103にて草刈り停止命令が無い場合は、刈刃モータ30の起動が完了したかどうかを判定し、完了していない場合や停止中の場合はステップ103に戻る(ステップ104)。ステップ104にて刈刃モータの起動が完了している場合は、ステップ105にて刈刃モータ30への通電が継続しているかどうかを判定し、通電中の場合はステップ112に移行する。ステップ112では刈刃モータへの通電開始から所定時間、ここでは500ミリ秒が経過したかどうかを判定し、経過した場合は刈刃モータ30への通電を停止し(ステップ113)、ステップ103に戻る。尚、刈刃モータ30への通電は停止するだけで、コイル間の短絡などによるブレーキ制御を行うわけではないので、刈刃モータ30は慣性により回転を続けることになる。ステップ112にて500ミリ秒が経過していない場合は、ステップ103に戻る。
【0042】
ステップ105において、刈刃モータ30が通電中でない場合、即ち通電停止中の場合は、マイコンはガイドワイヤセンサ45、46の出力信号からガイドワイヤ280によって発生される誘導信号を検出し、草刈機1が草刈領域290の中にいるか否かの判定処理を行う(ステップ106)。この判定は、プラス又はマイナス側に複数出現するパルス波形において、どちら側に3つ出現するかを検出する。例えば、
図5(2)のパルス群83においては、+側に3つ、−側に2つのパルスが出現するため、マイコンは草刈機1が草刈領域290の内側にいると判定できる。ちなみに、草刈機1が草刈領域290の外側にいる場合は、パルス群は、−側に3つ、+側に2つのパルスが出現する。このようにして周期15ミリ秒ごとに出現するパルス群のうち、連続する数群分の“内側”判定が得られたらマイコンは“草刈領域290の内側”との確定判定をする。逆にパルス群のうち、連続する数群分の“外側”判定が得られたらマイコンは“草刈領域290の外側”との確定判定をする。
【0043】
このように領域の検知が完了して、その結果が正しく得られた時点でステップ107がYESとなり、マイコンは刈刃モータ30への通電を再開する(ステップ108)。次に、判定された結果はメモリに格納される。メモリに格納された判定結果は、車輪モータの制御を行う走行制御プログラム(
図4のフローチャートとは並行して処理されるもので、ここでは図示していない)での制御に用いられる。図示しない走行制御プログラムでは、得られた位置判定結果と、ルート制御プログラムに応じて、車輪モータ(右車輪モータ16a、左車輪モータ16b)を制御し、必要ならば操舵指示を行う。例えば、ガイドワイヤセンサ45が外側で、ガイドワイヤセンサ46が内側との判定の場合は、車輪モータの一方だけを停止して草刈機1を180度反転(Uターン)させるようにしても良い。また、ガイドワイヤセンサ45、46の双方が外側との判定された場合は、草刈機1を後退させても良いし、草刈機1を停止させても良い。
【0044】
ステップ107にて判定が完了しない場合(NOの場合)は、ガイドワイヤセンサ45、46を用いた確定判定がタイムアウト時間内に終了しない場合、つまりタイムアウトになっていないかどうかを判定する(ステップ110)。所定の時間(タイムアウト時間)内に判定ができなかった場合には、判定結果をメモリに格納すると共に、刈刃モータへの通電停止を継続する(ステップ111)。この際、エラーコードをディスプレイ25に表示すると良い。刈刃モータ30は通電が停止時に併せてブレーキ制御が行われる。また、車輪モータは減速機を介して駆動されることから、抵抗により惰性走行が抑制される構成とされているが、併せてブレーキ制御を行うようにしてもよい。ステップ110にて所定の時間内に判定ができたらステップ103に戻る。尚、
図6のフローチャートはガイドワイヤによる誘導信号を読み取る手順だけを示し、
図6の手順とは並列して走行制御プログラムが実行されると説明したが、それ以外にマイコンはバッテリパック28の残量管理と、スケジュール管理やディスプレイ制御等の制御を並列して行う。
【0045】
本実施例によれば、刈刃モータ30を一定の間隔ごとに通電を停止させるように間欠駆動させ、刈刃モータによる駆動を一瞬止めることによって、通電停止中はガイドワイヤセンサ45、46に対するノイズを消失させることができる。本実施例では、このノイズを消失させた状態でガイドワイヤセンサ45、46による誘導信号の検出を主に行うので、誘導信号を正しく読み取ることができる。また、刈刃モータ30の間欠駆動によって刈刃モータ30とガイドワイヤセンサ45を近づけることができる為、本体シャーシ10の小型化が可能になる。さらに、刈刃モータ30によるガイドワイヤセンサ45、46へのノイズの影響を気にしなくてすむので、刈刃モータ30に大きな電流を流すことができる為、よりパワフルな刈り取り作業を行うことができる。