特許第6583492号(P6583492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社湯山製作所の特許一覧

特許6583492混注管理装置、混注装置、混注管理プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583492
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】混注管理装置、混注装置、混注管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   A61J3/00 310K
   A61J3/00 310C
【請求項の数】4
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2018-126548(P2018-126548)
(22)【出願日】2018年7月3日
(62)【分割の表示】特願2015-5990(P2015-5990)の分割
【原出願日】2014年6月24日
(65)【公開番号】特開2018-143882(P2018-143882A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2018年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-138502(P2013-138502)
(32)【優先日】2013年7月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】吉屋 幸久
【審査官】 村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0125442(US,A1)
【文献】 特開2013−106826(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/021986(WO,A1)
【文献】 特開2007−014463(JP,A)
【文献】 特開2012−250016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処方データに基づいて生成される調製用のデータ又は前記処方データそのものである、調製データに示された薬品情報に対応する薬剤を既定量の前記薬剤が収容された一又は複数の薬剤容器から輸液容器に注入する混注処理の対象となる前記調製データのうち、過去の前記混注処理によって前記薬剤容器に残存した残存薬剤と同種の薬剤に対応する薬品情報を含む調製データに対応する前記混注処理において前記残存薬剤を使用可能であって、当該残存薬剤が不足する場合には当該残存薬剤と未使用の前記薬剤容器との両方を使用可能な残薬使用手段と、
前記混注処理で使用される前記薬剤容器に前記薬剤が残存するか否かを判断する判断手段と、
を備え
前記判断手段は、前記混注処理で使用される前記薬剤容器に前記薬剤が残存すると判断した場合に、前記残存薬剤の開封日時を含む残薬情報を記憶部に記憶し、
前記残薬使用手段は、前記判断手段により過去の前記混注処理で前記薬剤容器に残存すると判断された残存薬剤に対応する前記残薬情報の内容が使用条件を満たす場合に、前記混注処理において前記残存薬剤と未使用の前記薬剤容器との両方を使用可能であり、
前記混注処理では、注射器を用いて前記薬剤容器から前記輸液容器に薬剤が注入され、
前記使用条件は、前記記憶部に記憶されている前記残存薬剤の開封日時から所定時間が経過していないことである、
混注管理装置。
【請求項2】
前記残薬使用手段は、前記混注処理の対象となる前記調製データの情報が表示される画面におけるユーザー操作に応じて前記残薬使用手段における前記残存薬剤の使用の有無を切り替え可能である、
請求項1に記載の混注管理装置。
【請求項3】
前記残存薬剤が使用された後、前記調製データに基づく前記薬剤の払出量に応じて装填された前記薬剤容器のうち未使用の前記薬剤容器を予め定められた返却口から返却する返却処理手段を備える、
請求項1又は2に記載の混注管理装置。
【請求項4】
コンピュータに、
処方データに基づいて生成される調製用のデータ又は前記処方データそのものである、調製データに示された薬品情報に対応する薬剤を既定量の前記薬剤が収容された一又は複数の薬剤容器から輸液容器に注入する混注処理で使用される前記薬剤容器に前記薬剤が残存するか否かを判断する判断ステップと、
前記混注処理の対象となる前記調製データのうち前記判断ステップにより過去の前記混注処理で前記薬剤容器に残存すると判断された残存薬剤と同種の薬剤に対応する薬品情報を含む調製データに対応する前記混注処理において前記残存薬剤を使用可能であって、当該残存薬剤が不足する場合には当該残存薬剤と未使用の前記薬剤容器との両方を使用可能な残薬使用ステップと、
を実行させるための混注管理プログラムであって、
前記判断ステップは、前記混注処理で使用される前記薬剤容器に前記薬剤が残存すると判断した場合に、前記残存薬剤の開封日時を含む残薬情報を記憶部に記憶し、
前記残薬使用ステップは、前記判断ステップにより過去の前記混注処理で前記薬剤容器に残存すると判断された残存薬剤に対応する前記残薬情報の内容が使用条件を満たす場合に、前記混注処理において前記残存薬剤と未使用の前記薬剤容器との両方を使用可能であり、
前記混注処理では、注射器を用いて前記薬剤容器から前記輸液容器に薬剤が注入され、
前記使用条件は、前記記憶部に記憶されている前記残存薬剤の開封日時から所定時間が経過していないことである、
混注管理プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤容器に収容された抗がん剤などの薬剤を輸液容器に注入する混注処理を実行する混注装置の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アンプル又はバイアル瓶などの薬剤容器に収容された抗がん剤などの薬剤を注射器で吸引し、その薬剤を輸液が収容された輸液バッグに注入する混注処理を実行する混注装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の混注装置では、抗がん剤などの薬剤による被爆を防止するため、陰圧に設定された安全キャビネット内で混注処理が実行される。なお、一つの薬剤容器には薬剤ごとに予め定められた既定量の薬剤が収容されており、ユーザーは、調製データに示された薬剤の払出量を満たす一又は複数の薬剤容器を混注装置に装填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−250016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、調製データに示された薬剤の払出量が薬剤容器内の薬剤の既定量の整数倍でなければ、混注処理後に薬剤容器内に薬剤が残存する。従って、本発明の目的は、既定量の薬剤が収容された薬剤容器内の薬剤の効率的な使用を支援することのできる混注管理装置、混注装置、及び混注管理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る混注管理装置は、判断手段及び表示制御手段を備える。前記判断手段は、調製データに示された薬剤を既定量の前記薬剤が収容された一又は複数の薬剤容器から輸液容器に注入する混注処理で使用される前記薬剤容器に前記薬剤が残存するか否かを判断する。前記表示制御手段は、前記混注処理の対象となる前記調製データの選択候補のうち前記判断手段により過去の前記混注処理で前記薬剤容器に残存すると判断された残存薬剤と同種の薬剤を処方薬に含む調製データを優先的に表示手段に表示させる。本発明によれば、ユーザーに前記残存薬剤を使用することが可能な前記調製データを次の前記混注処理の対象として意識させることができ、前記薬剤容器内の薬剤の効率的な使用を支援することができる。
【0006】
また、前記混注管理装置が、前記残存薬剤と同種の薬剤を処方薬に含む前記調製データが前記混注処理の対象として選択され且つ予め設定された使用条件を満たす場合に前記混注処理において前記残存薬剤を使用する残薬使用手段を備える構成が考えられる。これにより、前記使用条件を満たさない場合に前記残存薬剤の使用を自動的に排除することが可能となる。具体的に、前記使用条件が、前記残存薬剤について予め設定された使用期限が経過していないことを少なくとも含むことが考えられる。これにより、例えば前記残存薬剤の使用期限が経過していないことを前記使用条件として設定し、前記使用期限が経過していない前記残存薬剤のみを使用対象とすることが可能となる。さらに、前記混注管理装置が、前記混注処理の実行後の前記薬剤容器内の前記残存薬剤の残量を検出する残量検出手段を備える構成が考えられる。この場合、前記使用条件が、前記調製データ及び前記薬剤容器の前記既定量に基づいて算出される前記薬剤容器内の前記残存薬剤の残量と前記残量検出手段により検出される前記薬剤容器内の前記残存薬剤の残量との差が予め設定された範囲内であることを含むことが考えられる。これにより、実際に前記薬剤容器内に残存している前記残存薬剤の残量と、前記調製データ及び前記薬剤容器の前記既定量に基づく残量の算出値との差が所定の許容量が超える場合に、前記残存薬剤の使用が防止される。
【0007】
また、前記判断手段は、前記混注処理の実行前に前記調製データ及び前記薬剤容器の前記既定量に基づいて前記薬剤容器に前記薬剤が残存するか否かを判断することが考えられる。これにより、前記表示制御手段が、過去の前記混注処理の終了前において、前記調製データの選択候補のうち前記残存薬剤を使用可能な調製データを優先的に表示させることが可能になる。また、前記混注管理装置が、前記混注処理の実行後の前記薬剤容器内の前記残存薬剤の重量を検出する残量検出手段を備える構成において、前記判断手段が、前記残量検出手段により検出される前記薬剤容器内の前記残存薬剤の残量に基づいて前記薬剤容器に前記薬剤が残存するか否かを判断することも考えられる。この場合、前記表示制御手段により、前記混注処理後に実際に前記薬剤容器内に残存している前記残存薬剤の残量に基づいて前記残存薬剤を使用可能な調製データが優先的に表示される。
【0008】
前記表示制御手段は、前記残存薬剤と同種の薬剤を処方薬に含む調製データが上位となる表示順で前記調製データの選択候補を前記表示手段に表示させることが考えられる。これにより、ユーザーは、前記残存薬剤を使用することのできる前記調製データを容易に把握することができる。また、前記表示制御手段は、前記混注処理の対象となる前記調製データの選択候補に前記残存薬剤と同種の薬剤を処方薬として含む調製データを予め設定されたソート条件で並べて表示することが考えられる。これにより、ユーザーは、前記残存薬剤を使用することのできる前記調製データの中でも前記ソート条件に従って更に優先度の高い前記調製データを容易に把握することが可能である。具体的に、前記ソート条件が、前記調製データの処方薬の投薬日時又は調製日時が早い方を上位とする条件であることが考えられる。また、前記ソート条件が、前記調製データの処方箋区分が入院である場合よりも前記調製データの処方箋区分が外来である場合の方を上位とする条件であることも考えられる。これにより、ユーザーは、前記投薬日時、前記調製日時、前記処方箋区分などに応じて優先すべき前記調剤データの順位を容易に把握することができる。また、前記混注管理装置が、薬剤の種類ごとの前記既定量を示す既定量情報が記憶された既定量情報記憶手段を備えることが考えられる。この場合、前記判断手段は、前記調製データに基づく前記薬剤の払出量と前記既定量記憶手段に記憶された前記既定量情報とに基づいて前記薬剤容器に前記薬剤が残存するか否かを判断することが可能である。
【0009】
また、前記混注管理装置が、前記判断手段により前記薬剤容器に残存すると判断された前記残存薬剤の残量が記憶される残量記憶手段と、前記調製データに基づく前記薬剤の払出量と前記残量記憶手段に記憶された前記残存薬剤の残量とに基づいて不足する前記薬剤の量又は前記薬剤容器の数を表示する不足量表示手段とを備えることが考えられる。これにより、ユーザーは、前記残存薬剤を使用する場合に前記薬剤容器の装填の必要の有無及びその数などを容易に把握することができるため、前記残存薬剤を使用する際に不足する前記薬剤容器の数を自分で考える必要がなくなる。一方、前記混注管理装置は、前記残存薬剤が使用された後、前記調製データに基づく前記薬剤の払出量に応じて装填された前記薬剤容器のうち未使用の前記薬剤容器を予め定められた返却口から返却する返却処理手段を備えることが考えられる。これにより、余った前記薬剤容器が自動的に返却されるため、ユーザーは、前記残存薬剤を使用する場合に装填するべき前記薬剤容器の数を意識することなく、常に前記調製データに従って必要な前記薬剤容器の数を判断して装填する通常通りの運用を行うことができる。
【0010】
なお、前記残存薬剤と同種の薬剤を処方薬に含む調製データを優先的に表示させる手法としては、前記表示制御手段が、前記残存薬剤と同種の薬剤を処方薬として含む調製データのみを前記表示手段に表示させるものであることも考えられる。これにより、ユーザーは、前記残存薬剤の使用が可能な前記調製データのみを容易に確認することができる。ところで、前記表示制御手段は、前記残存薬剤が複数の薬剤又は溶媒の混合薬剤である場合には、前記混合薬剤と成分及び混合比率が同じ混合薬剤を処方薬として含む調製データを優先的に表示させることが考えられる。これにより、前記混合薬剤についても前記残存薬剤が生じる場合には、その残存薬剤を無駄にしない効率的な使用を支援することが可能となる。
【0011】
ところで、本発明は、前記混注管理装置と、前記混注処理を実行する混注処理部とを備える混注装置の発明として捉えてもよい。即ち、前記混注装置は、前記判断手段及び前記表示制御手段を備える。前記判断手段は、調製データに示された薬剤を既定量の前記薬剤が収容された一又は複数の薬剤容器から輸液容器に注入する混注処理で使用される前記薬剤容器に前記薬剤が残存するか否かを判断する。前記表示制御手段は、前記混注処理の対象となる前記調製データの選択候補のうち過去の前記混注処理で前記判断手段により前記薬剤容器に残存すると判断された残存薬剤と同種の薬剤を処方薬に含む調製データを優先的に表示手段に表示させる。ここに、前記混注処理部は、前記薬剤容器を保持すると共に前記薬剤容器の任意の位置への搬送が可能な第1ロボットアームと、注射器を保持すると共に前記注射器による前記薬剤容器からの前記薬剤の吸引及び前記輸液容器への前記薬剤の注入が実行可能な第2ロボットアームと、を含むことが考えられる。この場合、前記混注管理装置が、前記判断手段により前記残存薬剤が残存すると判断された前記薬剤容器を前記第1ロボットアームにより予め設定された待機位置に移動させると共に、前記薬剤容器を前記第1ロボットアームにより前記待機位置から取り出すことが可能である。
【0012】
また、本発明は、コンピュータを前記各手段として機能させるための混注管理プログラムとして捉えてもよい。即ち、本発明に係る混注管理プログラムは、コンピュータに、調製データに示された薬剤を既定量の前記薬剤が収容された一又は複数の薬剤容器から輸液容器に注入する混注処理で使用される前記薬剤容器に前記薬剤が残存するか否かを判断する判断ステップと、前記混注処理の対象となる前記調製データの選択候補のうち前記判断ステップにより過去の前記混注処理で前記薬剤容器に残存すると判断された残存薬剤と同種の薬剤を処方薬に含む調製データを優先的に表示手段に表示させる表示制御ステップとを実行させるプログラムである。また、前記混注管理プログラムは、前記コンピュータに、前記残存薬剤と同種の薬剤を処方薬に含む前記調製データが前記混注処理の対象として選択され且つ予め設定された使用条件を満たす場合に前記混注処理において前記残存薬剤を使用する残薬使用ステップを更に実行させるためのプログラムであることが考えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、既定量の薬剤が収容された薬剤容器内の薬剤の効率的な使用を支援することができる混注管理装置、混注装置、及び混注管理プログラムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る混注装置のシステム構成を示すブロック図。
図2】本発明の実施の形態に係る混注装置の外観構成を示す斜視図。
図3図2の混注装置の主扉を開けた状態の斜視図。
図4図2の混注装置の主扉及び前壁の一部を取り外した状態の正面図。
図5図2の混注装置で使用されるコンテナを示す斜視図。
図6図4の混注装置を下方から見た斜視図。
図7図2の混注装置の第1ロボットアームの容器保持部を示す斜視図。
図8図2の混注装置の第2ロボットアームの注射器操作部を示す斜視図。
図9図2の混注装置の第2ロボットアームの注射器操作部を示す斜視図。
図10図2の混注装置のコンテナ搬送部を示す平面模式図。
図11図2の混注装置のコンテナ搬送部が備える機構を示す斜視図。
図12図2の混注装置のアンプルカッターを示す斜視図。
図13図2の混注装置の攪拌装置の内部構成を示す斜視図。
図14図2の混注装置の薬剤読取部を示す斜視図。
図15図2の混注装置の針曲り検知部を示す斜視図。
図16図2の混注装置の注射針着脱装置の内部構造を示す斜視図。
図17図2の混注装置の注射針着脱装置の内部構造を示す斜視図。
図18図2の混注装置の針挿入確認カメラの撮像画像の一例を示す図。
図19図1の混注管理装置により実行される混注管理処理の手順の一例を示すフローチャート。
図20図1の混注管理装置により表示される処方選択画面の一例を示す図。
図21図1の混注管理装置により実行される混注制御処理の手順の一例を示すフローチャート。
図22図1の混注管理装置の動作例を説明するための図。
図23図1の混注管理装置の動作例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0016】
[混注装置1]
図1に示すように、本実施形態に係る混注装置1は、混注管理装置100、薬剤装填部200及び混注処理部300を備える。そして、前記混注装置1では、前記混注管理装置100により前記混注処理部300の動作が制御されることによって、調製データに示された抗がん剤などの薬剤を既定量の前記薬剤が収容された一又は複数の薬剤容器から輸液容器に注入する混注処理が実行される。
【0017】
[混注管理装置100]
まず、図1を参照しつつ前記混注管理装置100の概略構成について説明する。前記混注管理装置100は、LAN又はインターネットなどの通信網を介して双方向通信可能に接続された第1制御部400及び第2制御部500を備える。前記第1制御部400は、前記薬剤装填部200側に設けられ、前記第2制御部500は、前記混注処理部300側に設けられている。また、前記第1制御部400は、前記混注装置1に調製データを入力する電子カルテシステム又は調剤管理システムなどの上位システム600にLAN又はインターネッ トなどの通信網を介して接続されている。
【0018】
なお、前記調製データは、処方データに基づいて生成される調製用のデータ又は前記処方データそのものである。例えば、前記処方データには、処方箋交付年月日、患者ID、患者名、患者生年月日、薬品情報(薬品コード、薬品名、用量など)、剤形情報(内服、外用など)、用法情報(1日3回毎食後など)、診療種別(外来、入院など)、診療科、病棟、及び病室などが含まれる。また、前記調製データには、患者情報、医師情報、薬品情報、薬剤の払出量、薬剤容器の種類(薬液入りアンプル又は散剤入りバイアル瓶など)、調製内容情報(混注処理に使用する薬剤容器、注射器、注射針の種類や本数等)、及び調製手順情報(溶解元/溶解先薬品、作業内容、容量/溶解量、抜取量)、調製日、処方箋区分、投薬日、診療科、病棟、調製時間などが含まれる。
【0019】
前記第1制御部400は、CPU401、ROM402、RAM403、データ記憶部404、及び操作部405などを備えるパーソナルコンピュータである。前記第1制御部400には、前記薬剤装填部200に設けられた後述のディスプレイ203、バーコードリーダ204、及び空気清浄装置205などの各種の電気部品が接続されている。
【0020】
前記CPU401は、各種の制御プログラムに従って処理を実行するプロセッサーである。前記ROM402は、前記CPU401により実行されるBIOS等のプログラムが予め記憶された不揮発性メモリである。前記RAM403は、前記CPU401による各種の制御プログラムの展開及びデータの一時記憶に用いられる揮発性メモリ又は不揮発性メモリである。
【0021】
前記データ記憶部404は、前記CPU401によって実行される各種のアプリケーションプログラム及び各種のデータを記憶するハードディスク等である。具体的に、前記データ記憶部404には、前記上位システム600から入力される前記調製データが記憶される。また、前記データ記憶部404には、例えば医薬品マスター、患者マスター、医師マスター、処方箋区分マスター、診療科マスター、及び病棟マスターなどの各種データベースが記憶されている。例えば、前記医薬品マスターには、薬品コード、薬品名、JANコード(又はRSS)、薬瓶コード、区分(剤形:散薬、錠剤、水剤、外用薬など)、比重、薬品種(普通薬、抗がん剤、毒薬、麻薬、劇薬、抗精神薬、治療薬など)、配合変化、賦形薬品、注意事項、薬剤容器の種別(アンプル、バイアル瓶)、薬剤容器単位の薬剤の収容量(既定量)、及び薬剤容器ごとの空状態の重量などの情報が含まれる。ここに、薬剤の種類ごとに対応する薬剤容器単位の薬剤の収容量(既定量)を示す既定量情報が記憶された前記データ記憶部404が既定量情報記憶手段の一例である。なお、前記医薬品マスターにおいて、同じ薬剤について複数種類の薬剤容器が存在する場合にはその薬剤容器各々に対応する既定量が記憶されている。
【0022】
さらに、前記データ記憶部404には、前記CPU401に後述の混注管理処理(図19参照)などを実行させるための混注管理プログラムが予め記憶されている。なお、前記混注管理プログラムは、前記第1制御部400が備える不図示の読取装置によって、例えばCD、DVD、BD、フラッシュメモリなどの記録媒体から読み取られて前記データ記憶部404にインストールされてもよい。なお、本発明は、前記CPU401に前記混注管理処理を実行させるための前記混注管理プログラム又は前記混注管理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の発明として捉えてもよい。また、本発明は、前記混注装置1において前記混注管理処理の各処理手順を実行する混注管理方法の発明として捉えてもよい。
【0023】
前記操作部405は、前記第1制御部400における各種のユーザー操作を受け付けるキーボード、マウス、又はタッチパネルなどの各種の操作手段を含む。
【0024】
前記第2制御部500は、CPU501、ROM502、RAM503、データ記憶部504、操作部505などを備えるパーソナルコンピュータである。前記第2制御部500には、前記混注処理部300に設けられた後述のロボットアーム21、ロボットアーム22、及びコンテナ搬送部110などの各種の電気部品が接続されている。
【0025】
前記CPU501は、各種の制御プログラムに従って処理を実行するプロセッサーである。前記ROM502は、前記CPU501により実行されるBIOS等のプログラムが予め記憶された不揮発性メモリである。前記RAM503は、前記CPU501による各種の制御プログラムの展開及びデータの一時記憶に用いられる揮発性メモリ又は不揮発性メモリである。
【0026】
前記データ記憶部504は、前記CPU501によって実行される各種のアプリケーションプログラム及び各種のデータを記憶するハードディスク等である。例えば、前記データ記憶部504には、前記CPU501に後述の混注制御処理(図21参照)などを実行させるための混注制御プログラムが予め記憶されている。なお、前記混注制御プログラムは、前記第2制御部500が備える不図示の読取装置によって、例えばCD、DVD、BD、フラッシュメモリなどの記録媒体から読み取られて前記データ記憶部504にインストールされてもよい。
【0027】
前記操作部505は、前記第2制御部500における各種のユーザー操作を受け付けるキーボード、マウス、又はタッチパネルなどの各種の操作手段を含む。
【0028】
[薬剤装填部200]
次に、前記薬剤装填部200の概略構成について説明する。
【0029】
図2及び図3に示すように、前記薬剤装填部200は、扉201、作業テーブル202、ディスプレイ203、バーコードリーダ204、及び空気清浄装置205を備えるクリーンベンチである。なお、図3に示すように、前記薬剤装填部200と前記混注処理部300とは、前記混注処理部300の側面に形成された開口114により連通されている。
【0030】
前記ディスプレイ203は、前記第1制御部400からの制御指示に応じて各種の情報を表示させる液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示手段である。具体的に、前記ディスプレイ203には、前記混注装置1における混注対象の候補となる調製データなどが表示される。また、前記バーコードリーダ204は、処方箋又は調製指示書などに記載されたバーコードを読み取って、前記バーコードの内容を前記第1制御部400に入力する。前記空気清浄装置205は、前記薬剤装填部200内に所定のフィルターを通じて空気を供給する。
【0031】
前記扉201は、前記薬剤装填部200の前面に設けられており、垂直方向に開閉可能である。ユーザーは、図2に示すように、前記扉201を少し開いて手を前記薬剤装填部200内に入れた状態で、前記混注装置1により実行される混注処理の準備作業を行う。具体的に、前記作業テーブル202上に載置されているコンテナ101には、図5に示すように、前記混注装置1で実行される混注処理で使用する薬剤容器10、注射器11、及び輸液バッグ12(輸液容器の一例)などが収容されている。前記準備作業には、例えば前記コンテナ101の所定の位置に前記薬剤容器10、前記注射器11、及び前記輸液バッグ12を載置させ、前記コンテナ101を前記混注処理部300に装填する装填作業が含まれる。以下では、前記薬剤容器10がアンプルである場合には、前記薬剤容器10をアンプル10Aと称し、前記薬剤容器10がバイアル瓶である場合には、前記薬剤容器10をバイアル瓶10Bと称する。
【0032】
図5に示すように、前記コンテナ101には、患者名及び施用などが文字表示される電子ペーパータグ101aと、各種の情報が読み書き可能な不図示のICタグ(例えば、RFID:Radio Frequency Identification)とが設けられている。前記第1制御部400は、前記ICタグ(不図示)に記録された情報を図示しない読取部によって読み取り、その
情報に基づいて、これから開始する混注処理の内容を認識する。例えば、前記第1制御部400は、前記ICタグから読み取った情報で特定される前記調製データを前記データ記憶部404等の記憶部から読み出す。この場合、前記第1制御部400は、前記コンテナ101に装填された薬剤などを前記混注処理の対象となる前記調製データと照合することが可能である。
【0033】
また、前記コンテナ101には、前記薬剤容器10及び前記注射器11が載置される薬剤載置部102(図10図11参照)と、前記輸液バッグ12を保持する輸液バッグ保持部103(図5参照)とが設けられている。前記薬剤載置部102及び前記輸液バッグ保持部103は前記コンテナ101に対して個別に着脱可能である。
【0034】
前記薬剤載置部102には、図5に示すように、前記アンプル10Aを傾斜した状態で支持する支持部102Aが設けられている。そして、前記アンプル10Aは、前記支持部102Aで斜めに立てられた状態でセットされる。これにより、前記アンプル10Aの首部に薬剤が溜まらない。また、前記アンプル10Aの他、前記注射器11の注射針も前記支持部102Aに斜めに立てられた状態でセットされる。
【0035】
一方、前記バイアル瓶10B及び前記注射器11は、図5に示すように、前記薬剤載置部102に寝かせた状態でセットされる。なお、このとき前記注射器11は、注射針が付けられていないシリンジのみの状態である。もちろん、ここで説明する前記薬剤載置部102内の配置形態は例示であり、これに限定されるものではない。
【0036】
また、前記輸液バッグ保持部103には、図5に示すように、前記輸液バッグ12の混注口(首部)を固定するためのチャック部140が設けられている。前記準備作業では、ユーザーが前記輸液バッグ12を前記チャック部140で保持させた状態で前記輸液バッグ保持部103にセットする。また、前記輸液バッグ保持部103には、前記輸液バッグ保持部103を昇降させる際に使用される係合穴部103aが設けられている。
【0037】
そして、前記コンテナ101は、ユーザーにより前記薬剤容器10、前記注射器11及び前記輸液バッグ12がセットされた後、前記開口114を通じて前記混注処理部300に供給される。なお、前記薬剤装填部200が、自動的に前記コンテナ101を前記混注処理部300に搬入させるベルトコンベアなどの搬入機構を備えることも考えられる。
【0038】
[混注処理部300]
続いて、前記混注処理部300の概略構成について説明する。
【0039】
図2〜4に示すように、前記混注処理部300の前面には、主扉301、注射器取出扉302、ゴミ収容室扉13、タッチバネルモニタ14、及びコンテナ排出扉15などが設けられている。
【0040】
前記主扉301は、例えば前記混注処理部300に設けられた混注処理室104内の清掃などの際に、前記混注処理室104内にアクセスするために開閉される。また、前記混注装置1では、薬剤が注入された前記輸液バッグ12を払い出す他に、薬剤が充填された状態で前記注射器11を払い出すことも可能である。前記注射器取出扉302は、前記混注処理室104から前記注射器11を取り出す際に開閉される。
【0041】
前記ゴミ収容室扉13は、前記混注処理室104における混注処理で使用された後の前記薬剤容器10及び前記注射器11などの廃棄物が収容されるゴミ収容室13aから前記廃棄物を除去するために開閉される。また、前記コンテナ排出扉15は、前記混注処理室104における混注処理により薬剤が混注された後の前記輸液バッグ12が載置された前記コンテナ101を取り出すために開閉される。
【0042】
前記タッチパネルモニタ14は、前記第2制御部500からの制御指示に応じて各種の情報を表示させる液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示手段である。前記タッチパネルモニタ14には、例えば後述の各種カメラによって撮像される画像又は映像が表示可能である。
【0043】
[混注処理室104]
図3及び図4に示すように、前記混注処理室104には、多関節構造の第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22、アンプルカッター31、攪拌装置32、載置棚33、薬剤読取部34、秤量計35、針曲り検知部36、混注連通口37、針挿入確認透明窓38、及びゴミ蓋132aなどが設けられている。さらに、図6に示すように、前記混注処理室104の天井側には、トレイ確認カメラ41、注射器確認カメラ42、注射針着脱装置43、針挿入確認カメラ44、殺菌灯45などが設けられている。
【0044】
[第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22]
前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、前記混注処理室104の天井側に基端部を固定して垂下状に設けられている。前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の間接はそれぞれ5〜8軸程度である。そして、前記混注装置1では、双腕型の前記ロボットアーム21、22により混注処理における各作業工程が実行される。具体的に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の各間接に設けられた駆動モーターを個別に駆動させ、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22に前記混注処理における各作業を実行させる。なお、前記混注処理部300は、前記混注処理を実行することができる構造であれば、例えば1本のロボットアームを有する構成、3本以上のロボットアームを含む構成、又はロボットアームを用いない構成であってもよい。
【0045】
図6に示すように、前記第1ロボットアーム21は、前記薬剤容器10を保持する容器保持部25を備え、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を保持し、前記注射器11による薬液の吸引及び注入を行う注射器操作部26を備えている。
【0046】
図7に示すように、前記第1のロボットアーム21の前記容器保持部25は、一対の把持爪25a、モーター251、前記モーター251によって回転される2本のねじシャフト252、253、前記ねじシャフト252、253に螺合されたナットブロック254、255を備える。前記一対の把持爪25aは前記ナットブロック254、255にそれぞれ固定されている。そして、前記ねじシャフト252、253の回転によって前記ナットブロック254、255が移動し、前記一対の把持爪25aが相互に近接及び離間して前記容器保持部25を保持及び解放する。
【0047】
また、前記一対の把持爪25aは、前記バイアル瓶10Bの保持に適した凹部を有すると共に、先端側には前記アンプル10Aの保持に適した凹部を有する。図7では、前記アンプル10A及び前記バイアル瓶10Bの両方が保持されている様子を示しているが、実際には一つの前記アンプル10A又は前記バイアル瓶10Bを保持する。
【0048】
また、前記容器保持部25は、前記一対の把持爪25aによってキャップ付きの注射針又は前記注射器11を保持することも可能である。ところで、前記第2制御部500は、前記容器保持部25の前記一対の把持爪25aで前記注射器11を保持した際の前記モーター251の駆動量に応じて、前記注射器11の直径を計測することが可能である。従って、前記第2制御部500は、前記注射器11が前記調製データの調製内容情報で指定された注射器であるかどうかを判断することができる。
【0049】
図8及び図9に示すように、前記第2のロボットアーム22の前記注射器操作部26は、注射器保持部261、プランジャ保持部262及び移動部263を備える。前記注射器保持部261は、前記注射器11のシリンジ本体部11aを保持する一対の把持爪261aを備えている。前記一対の把持爪261aは、前記容器保持部25で用いられている駆動機構と同様の機構により、相互に近接及び離間して前記注射器11の前記シリンジ本体部11aを保持及び解放する。また、前記一対の把持爪261aにおいては、互いに対向する対向面に、把持爪上端面から前記対向面へ向けて下り傾斜する傾斜部261bが形成されている。
【0050】
前記プランジャ保持部262は、前記注射器11のプランジャ11bの鍔部を保持する一対の把持爪262aを備えている。前記一対の把持爪262aは、前記容器保持部25で用いられている駆動機構と同様の機構により、相互に近接及び離間して前記注射器11の前記プランジャ11bの鍔部を保持及び解放する。前記把持爪262a各々の上面には把持爪262bが固定されている。これにより、前記一対の把持爪262aを近接及び離間させることで前記一対の把持爪262aも近接及び離間し、前記注射器11だけではなく前記薬剤容器10などの他の物品を把持することができる。なお、前記一対の把持爪262aの対向側の上面には前記プランジャ11bの鍔部が入り込むための凹部が形成されている。また、前記一対の把持爪262bの先端は前記一対の把持爪262aよりも前方に突出しており、前記一対の把持爪262bによる前記アンプル10A及び前記バイアル瓶10Bなどの物品の把持が容易である。なお、前記把持爪262bは前記把持爪261aに設けられもよい。
【0051】
前記移動部263は、前記プランジャ保持部262を前記注射器11のプランジャ11bの移動方向に移動させることが可能である。前記移動部263は、例えば、モーター、前記モーターによって回転されるねじシャフト、前記ねじシャフトに螺合されたナットブロック、ガイド等の駆動機構により前記プランジャ11bを移動させる。前記プランジャ保持部262は、前記ナットブロックに固定されており、前記ナットブロックの移動によって移動する。
【0052】
[コンテナ搬送部110]
また、前記混注処理部300には、図6における右側端部の前記連通開口114から供給される前記コンテナ101を、左側端部のコンテナ搬送終端部110aまで搬送するコンテナ搬送部110が設けられている。
【0053】
ここに、図10は、前記コンテナ搬送部110における前記コンテナ101の搬送経路の一例を示す平面模式図である。なお、前記コンテナ搬送部110内は前記混注処理室104内よりも陽圧に設定されている。図10に示すように、前記コンテナ搬送部110は、前記コンテナ101を、前記混注処理室104の下方であって前記ゴミ蓋132aの下に位置する前記ゴミ収容室13aの後方側を通過させて搬送するように設けられている。これにより、前記混注装置1の正面側から前記ゴミ収容室13aにアクセスすることができる。図10では、前記コンテナ搬送部110の搬送経路を示すために、前記コンテナ搬送部110内を移動する前記コンテナ101を二点鎖線で示しており、前記コンテナ搬送部110内に同時に複数の前記コンテナ101が存在するわけではない。
【0054】
前記第2制御部500は、前記コンテナ101が前記連通開口114を通って前記コンテナ搬送部110内の所定位置に達したことを、例えばセンサの出力に基づいて判断すると、前記コンテナ搬送部110及び前記混注処理室104を連通及び遮蔽させるシャッター111を水平方向にスライドさせる。前記シャッター111が開けられると、前記薬剤載置部102が前記混注処理室104内に露出される。図10では、前記薬剤載置部102が前記混注処理室104内に露出された状態が示されている。
【0055】
図11に示されているように、前記コンテナ搬送部110には、前記連通開口114を通って前記コンテナ搬送部110内に移動された前記コンテナ101における前記薬剤載置部102を昇降させるトレイ昇降部112が設けられている。前記トレイ昇降部12は、例えば昇降可能に設けられた4本のシャフト112aの上下方向の駆動により、前記薬剤載置部102を下から上方に持ち上げる。そして、前記第2制御部500は、前記トレイ昇降部112によって前記薬剤載置部102を上昇させた後、前記トレイ確認カメラ41による撮像を行う。前記トレイ確認カメラ41は、前記薬剤載置部102上の前記薬剤容器10及び前記注射器11等を撮像する。前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41の撮像画像を用いて画像認識処理を実行し、前記調製データで示されている数の前記薬剤容器10及び前記注射器11などが前記薬剤載置部102上に存在しているかどうか等の判断を行う。
【0056】
また、図11に示すように、前記コンテナ搬送終端部110aには、前記輸液バッグ保持部103を昇降させるバッグ昇降部113が設けられている。前記第2制御部500は、前記コンテナ101を前記バッグ昇降部113の前まで搬送させた後、前記バッグ昇降部113のフック部113aを前記係合穴部103aに下から引っかける。そして、前記第2制御部500は、前記フック部113aが形成された円弧ギア部113bをモーター113cで回転駆動させることにより、前記輸液バッグ保持部103を上昇させ、前記輸液バッグ12の混注口を前記混注連通口37に位置させる。また、前記第2制御部500は、前記モーター113cを制御することにより、前記バッグ昇降部113を駆動させて前記輸液バッグ保持部103を傾斜させ、前記輸液バッグ12の混注口を上向き又は下向きにすることができる。
【0057】
[アンプルカッター31]
図12に示すように、前記アンプルカッター31には、ヤスリ部31a、屑トレイ31b、頭部差し込み部31c、駆動ボックス31f、屑ボックス31g、及び把持部31hが設けられている。
【0058】
前記ヤスリ部31aは、前記アンプル10Aの首にノッチ加工をするための部材であり、前記屑トレイ31bには前記ヤスリ部31aにおけるノッチ加工で生じる屑が落下する。具体的に、前記混注装置1では、前記第1ロボットアーム21が前記アンプル10Aを保持し、前記薬剤容器10の首を前記ヤスリ部31aに当てた状態で摺動することにより前記アンプル10Aの首にノッチ加工が施される。
【0059】
前記頭部差し込み部31cは、前記ノッチ加工が施された前記薬剤容器10の頭部が下方から差し込まれる孔31dと、前記孔31dから上方に突出された前記薬剤容器10の頭部の側方に位置するプッシャー31eとを有する。一方、前記駆動ボックス31fは、内部に設けられたカム及び前記カムを駆動する駆動モーターを有しており、前記駆動モーターにより前記カムが駆動されると、前記カムによって前記プッシャー31eが前記薬剤容器10の頭部に近接及び離間する方向に往復動作する。
【0060】
そして、前記混注装置1では、前記第1ロボットアーム21が前記把持爪25aにより前記アンプル10Aを保持し、前記薬剤容器10の頭部を前記孔31dに下から差し込んで首部より上の頭部を上方に突出させる。その後、前記第2制御部500により、前記駆動ボックス31fの前記駆動モーターが駆動されて前記プッシャー31eが前記薬剤容器10の頭部を押す方向に移動されると、前記プッシャー31eにより前記頭部が押されて折れられる。このとき、前記プッシャー31eで折られた頭部は前記屑ボックス31g内
に落ちる。なお、前記把持部31hは、前記アンプルカッター31を摺動可能に支持するレール31i(図4参照)に沿って前記アンプルカッター31を摺動させる際にユーザーが把持するために用いられる。
【0061】
[撹拌装置32]
前記攪拌装置32は、前記バイアル瓶10Bに散薬が収容されている場合に、前記バイアル瓶10B内に輸液又は薬剤などを注入して前記散薬を溶解させ、混合薬剤を生成するときに使用される。具体的に、前記攪拌装置32には、図13に示すように、二つのローラー32a、押さえ部32b、回動支持部32c、支持台32d、水平揺動機構32e、支持部32f、及び駆動モーター32gなどが設けられている。
【0062】
二つの前記ローラー32aは、所定の間隔だけ離間して対向配置されている。一方の前記ローラー32aは回動自在に支持され、他方の前記ローラー32aは前記駆動モーター32gに連結されている。なお、前記ローラー32a各々は軸方向に長尺状であり、前記攪拌装置32では、前記ローラー32aの軸方向の両端に載置される二つの前記バイアル瓶10Bを同時に攪拌することが可能である。
【0063】
また、記押さえ部32bは、前記ローラー32aに載置された前記バイアル瓶10Bを上から押さえるために用いられ、前記薬剤容器10の回転に伴って回転する従動ローラーである。前記回動支持部32cは、不図示の駆動モーターによって前記押さえ部32bを前記薬剤容器10に対して接触又は離間する方向に回動させる。
【0064】
前記支持台32dは、前記ローラー32a、前記押さえ部32b、及び前記回動支持部32cなどを支持する。前記水平揺動機構32eは、例えばクランク機構を有しており、前記支持台32dを前記ローラー32aの軸方向に揺動させることが可能である。
【0065】
前記支持部32fは、前記ローラー32aの軸方向の両端部に前記バイアル瓶10Bの首が嵌められるU字状の切り欠きを有する。前記ローラー32aに前記バイアル瓶10Bが載置される場合は、前記薬剤容器10の首が前記切り欠きに係合される。これにより、前記支持台32dが前記水平揺動機構32eによって前記ローラー32aの軸方向に揺動される場合に、前記薬剤容器10が前記ローラー32aの軸方向の揺動に追随して揺動し、前記薬剤容器10内の薬剤が水平方向に攪拌される。
【0066】
一方、二つの前記ローラー32aの間に、前記バイアル瓶10Bが載置され、前記駆動モーター32gが駆動されると、前記駆動モーター32gに連結された前記ローラー32aにより前記薬剤容器10が回転され、前記薬剤容器10内の薬剤が攪拌される。なお、このとき他方の前記ローラー32aは、前記薬剤容器10の回転により前記他方のローラー32aと同方向に回転する。また、前記ローラー32aの少なくとも一方が偏心駆動されるものであれば、前記ローラー32aに載置された前記バイアル瓶10Bを縦方向(上下方向)にも攪拌することが可能である。
【0067】
[載置棚33]
図4に示すように、前記載置棚33は、前記混注装置1において実行される混注処理において前記薬剤容器10及び前記注射器11などを仮置きするために用いられる。また、前記載置棚33は、前記混注処理が実行された後に前記薬剤容器10の内部に薬剤が残存している場合に前記薬剤容器10を待機させるための待機位置としても利用される。もちろん、前記待機位置は、前記載置棚33とは別の位置に設けられていてもよい。
【0068】
前記載置棚33は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の双方がアクセス可能な位置に設けられている。前記載置棚33において、前記バイアル瓶10Bは予め定められた位置に立てた状態で載置される。一方、前記載置棚33には、前記アンプル10Aを傾斜した状態で保持するための傾斜保持部が設けられており、前記アンプル10Aは、前記傾斜保持部に傾斜した状態で載置される。また、前記載置棚33には、前記注射器11の首部が嵌る予め定められた所定径の首保持穴が形成されており、前記注射器11は、注射針が付けられていないシリンジのみの状態で首部を下向きにして仮置きされる。
【0069】
[薬剤読取部34]
前記薬剤読取部34は、前記アンプル10A及び前記バイアル瓶10Bなどの前記薬剤容器10に貼付されたラベルに記載され、収容された薬剤の情報を示すバーコードを読み取る読取手段である。具体的に、前記薬剤読取部34は、図14に示すように、二つのローラー34a、及びバーコードリーダ34bを備える。前記ローラー34aは、所定の間隔だけ離間して対向配置されている。一方の前記ローラー34aは回動自在に支持され、他方の前記ローラー34aは不図示の駆動モーターに連結されている。二つの前記ローラー34aの間に、前記薬剤容器10が載置され、前記駆動モーターにより前記ローラー34aが回転されると前記薬剤容器10が回転する。これにより、前記薬剤容器10が1回転するため、前記薬剤容器10に貼付されたラベルの全域を前記バーコードリーダ34bに向けることができる。従って、前記バーコードリーダ34bは、前記ローラー34aに載置されたときの前記薬剤容器10の向きにかかわらず、前記薬剤容器10のラベルからバーコードを読み取ることが可能である。
【0070】
[秤量計35]
前記秤量計35は、前記混注装置1において実行される混注処理において前記注射器11の重量を計測するために用いられ、前記秤量計35による計測結果は前記第2制御部500に入力される。これにより、前記第2制御部500は、例えば前記薬剤容器10から薬剤を吸引した後の前記注射器11の重量と前記注射器11自体の既知の重量との差分を演算することにより、前記薬剤容器10から吸引した薬液量を取得することができる。
【0071】
[針曲り検知部36]
図15に示すように、前記針曲り検知部36には、前記注射器11の前記注射針11cを挿入して移動させることが可能な長穴36aが形成されている。また、前記針曲り検知部36は、前記長穴36aを挟んで光線を照射及び受光し、互いの光線が非平行となるように配置された第1光センサ361及び第2光センサ362を備える。前記第1光センサ361と第2光センサ362による検知結果は前記第2制御部500に入力される。
【0072】
そして、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11に装着されている前記注射針11cが前記長穴36aに挿入されて上下方向に移動される。このとき、前記第1光センサ361及び前記第2光センサ362各々の光線が前記注射針11cによって遮られると、前記第1光センサ361と第2光センサ362はオフする。これにより、前記第2制御部500では、前記光線を遮るときの前記注射針11cの位置情報を用いて前記注射針11cの曲りを検知することが可能である。なお、前記注射針11cをカメラで撮像し、この撮像した画像に対する画像認識で針曲りを検知することも他の実施形態として考えられる。そして、前記注射針11cに曲りが生じている場合、前記第2制御部500は、前記注射針11cの曲り量に基づいて、前記第2ロボットアーム22により前記注射針11cで前記輸液バッグ12の混注口を穿刺する際の針先位置又は方向などを補正する。
【0073】
また、図6に示すように、前記混注処理室104の左側空間に位置する前記コンテナ搬送終端部110aの上方には、前記コンテナ搬送終端部110aに搬送された前記輸液バッグ12を照明するドーム型ライト120及びカメラ121が設けられている。前記カメラ121は、前記ドーム型ライト120内の中心部に設けられ、前記輸液バッグ12の表面に付されているバーコードを読み取る。これにより、前記第2制御部500では、前記カメラ121により読み取られた前記バーコードの情報に従って前記輸液バッグ12の適否を判断することが可能である。
【0074】
前記混注連通口37は、図3に示すように、前記混注処理室104の側壁における外側に突出するドーム状箇所に形成されており、且つ前記ドーム状箇所には上下方向に前記輸液バッグ12の混注口を通すための切欠きが形成されている。そのため、前記輸液バッグ保持部103が上昇すると、前記輸液バッグ12の混注口が前記混注処理室104内に位置することになる。
【0075】
[注射器確認カメラ42]
また、前記注射器確認カメラ42は、前記注射器11に吸い込まれた薬剤の有無及び量などを確認するために前記注射器11を撮像するために用いられる。前記第2制御部500は、前記注射器確認カメラ42による撮像画像は、例えば前記タッチバネルモニタ14に表示させる。なお、前記撮像画像は、例えば最終監査のために前記混注装置1の内部又は外部に設けられたハードディスク等の記憶部に保存される。
【0076】
[注射針着脱装置43]
前記注射針着脱装置43は、図16及び図17に示すように、切り込み部が形成されたチャック部43aの穴部43bにキャップ付きの注射針11cの針先が上向きで差し込まれる。モーター43cが駆動されると、図示しないカム機構によって前記チャック部43aの穴部43bが拡がって前記キャップ付きの注射針11cを差し込むことができる。前記モーター43cの駆動が停止されると、バネ43dによって前記キャップ付き注射針11cの保持状態が維持される。針回しモーター43eが駆動されると、ギア43f及びギア43gが回転し、前記チャック部43aが回転して、前記キャップ付き注射針11cが
回転される。これにより、前記注射器11に対する前記キャップ付きの注射針11cの着脱や交換が行える。例えば、前記アンプル10Aを使用する際のコマ型フィルターへの付け替えが自動で行うことが可能になる。また、前記注射針着脱装置43は、前記キャップ付きの注射針11cの針先が上に向くので、前記注射針11cが外された前記シリンジ本体11aの先端開口は上向きとなり、前記シリンジ本体11aの首部開口からの液垂れを防止することができる。
【0077】
[針挿入確認カメラ44]
また、前記針挿入確認カメラ44は、前記混注処理室104外に位置する前記輸液バッグ12と、前記混注処理室104内の前記注射器11を1つの画像内に収まるように撮像する。前記第2制御部500は、前記輸液バッグ12の混注口を前記注射針11cで穿刺した際に、前記針挿入確認カメラ44によって前記針挿入確認透明窓38の方向を撮像する。そして、前記針挿入確認カメラ44による撮像画像は、例えば前記タッチバネルモニタ14に表示される。ここに、図18は、前記針挿入確認カメラ44による撮像画像の一例である。これにより、ユーザーは、前記注射針11cの先端側が前記輸液バッグ12内に位置しているか否かを前記撮像画像によって確認することができる。なお、前記撮像画像は、例えば最終監査のために前記混注装置1の内部又は外部に設けられたハードディスク等の記憶部に保存される。そして、前記撮像画像が表示されている前記タッチバネルモニタ14で、ユーザーによりOKボタンが操作されて適切に混注処理が終了したと判断されると、前記輸液バッグ12が前記バッグ昇降部113によって降下され、前記コンテナ101に戻される。
【0078】
[殺菌灯45]
前記殺菌灯45は、例えば前記混注処理の開始の3時間前から点灯される。図6に示すように、二つの前記殺菌灯45のうち1つは前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の間の位置に設けられている。そのため、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22に遮られる殺菌光の量は少なくなり、前記混注処理室14内を満遍なく殺菌することができる。また、前記混注処理部300には、前記混注処理室104内の空気を当該混注処理室104の側壁の下部に形成されたスリット104b(図3図4参照)から吸引して前記混注処理室104の上方に設けられた不図示の排気ファンから排出する排気システムが設けられている。また、前記混注処理室104の天井部に形成された吸気口から外気を清浄にして前記混注処理室104等に導く給気システムも設けられている。
【0079】
[混注処理]
ここで、前記混注装置1において、前記混注処理部300で実行される前記混注処理の手順の一例について説明する。前記混注処理では、以下で説明するように、前記第2制御部500により前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22などが制御されることにより、前記調製データに示された抗がん剤などの薬剤が既定量の前記薬剤が収容された一又は複数の前記薬剤容器10から前記輸液バッグ12に注入される。
【0080】
[アンプル10Aを使用する混注処理]
まず、前記アンプル10Aに収容された薬液を前記輸液バッグ12に注入する際の混注処理について説明する。
【0081】
前記第2制御部500は、前記コンテナ101が前記コンテナ搬送部110に供給されると、前記シャッター111を開く。そして、前記コンテナ搬送部110は、前記コンテナ101の前記薬剤載置部102を前記トレイ昇降部112により上昇させて前記混注処理室104に露出させる。
【0082】
次に、前記第1ロボットアーム21は、前記混注処理室104内に露出された前記薬剤載置部102に載置された前記注射器11を掴み、前記載置棚33に仮置きする。また、前記第1ロボットアーム21は、前記薬剤載置部102に載置された前記アンプル10Aを前記薬剤読取部34にセットする。これにより、前記薬剤読取部34では、前記アンプル10Aに収容された薬剤の種類などの情報が読み取られる。また、前記第1ロボットアーム21は、1本目の前記注射針11cは前記注射針着脱装置43にセットし、2本目の前記注射針11cは前記載置棚33に仮置きする。なお、前記薬剤載置部102に載置されている前記注射針11cにはキャップが付けられており、前記キャップは、前記注射針着脱装置43で着脱される。
【0083】
ところで、前記第2制御部500は、前記薬剤載置部102に載置された前記アンプル10A及び前記注射器11の位置や向きを前記トレイ確認カメラ41の撮像画像に対する画像認識処理により把握する。特に、前記第2制御部500は、前記薬剤載置部102から前記アンプル10A又は前記注射器11を取り出す度に、前記トレイ確認カメラ41で前記薬剤載置部102を撮像し、その撮像画像から最新の前記アンプル10A及び前記注射器11の位置や向きを把握する。
【0084】
そして、前記第2制御部500は、前記薬剤載置部102上の全ての物品が取り出されたかどうかを前記画像認識処理により行う。なお、前記第2制御部500は、前記調製データの調製内容情報に示される薬剤、注射器、注射針のそれぞれ本数又は合計本数だけ、前記アンプル10A、前記注射器11、前記注射針11cが前記薬剤載置部102内に存在しているか否かを、前記トレイ確認カメラ41で撮像した画像に基づいて判断してもよい。存在していない場合、前記第2制御部500は、その旨を前記タッチバネルモニタ14に表示しでもよい。また、前記第1ロボットアーム21で、前記薬剤載置部102内の前記注射器11等を取り出す前に、前記トレイ確認カメラ41で前記薬剤載置部102が撮影されるため、前記アンプル10A、前記注射器11、及び前記注射針11cの不足を早期に報知することができる。
【0085】
続いて、前記薬剤載置部102から全ての前記アンプル10A、前記注射器11及び前記注射針11c等が取り出されると、前記コンテナ搬送部110は、前記薬剤載置部102を前記トレイ昇降部112により下降させて前記コンテナ101に戻す。一方、前記第2制御部500は、前記シャッター111を閉めて、前記コンテナ搬送部110により前記コンテナ101を前記コンテナ搬送終端部110aに搬送させる。前記コンテナ搬送部110は、前記コンテナ101が前記コンテナ搬送終端部110aまで移動させた後、前記コンテナ101の前記輸液バッグ保持部103で保持されている前記輸液バッグ12の混注口を前記混注処理室104に形成された混注連通口37に位置させる。
【0086】
そして、前記第2ロボットアーム22は、前記薬剤読取部34にセットされた前記アンプル10Aを前記載置台33に移動させる。次に、前記第1ロボットアーム21は、前記載置台33から前記注射器11を取り出し、前記第2ロボットアーム22にセットする。続いて、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて前記注射器11に前記注射針11cをセットさせる。その後、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記針曲り検知部36に移動させ、前記注射針11cの曲りの有無を検出させる。
【0087】
次に、前記第1ロボットアーム21は、前記載置台33から前記アンプル10Aを取り出し、前記アンプルカッター31を用いて前記アンプル10Aの頭部を折る。そして、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、前記アンプル10Aと前記注射器11とを接近させて、前記注射器11の前記注射針11cを前記アンプル10A内に挿入する。その後、前記第2ロボットアーム22は、前記プランジャ11bを作動させることにより、前記アンプル10A内の混合薬を前記注射器11で吸引する。
【0088】
このとき、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、前記アンプル10A及び前記注射器11の姿勢を徐々に斜めにする。例えば、前記アンプル10Aの口部が鉛直上方向、前記注射器11の前記注射針11cが鉛直下方向に向けられた状態で、前記アンプル10Aからある程度の薬液を吸い上げ、その後、前記アンプル10Aを、鉛直方向を基準に100度程度傾斜させて前記口部の側(首部)に薬液を移動させた状態を形成させる。これにより、前記注射器11の前記注射針11cの先端を前記アンプル10Aの底に着けないで薬液を極力残さずに吸い上げることが可能になる。
【0089】
次に、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11の前記注射針11cを交換する。具体的に、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて、前記注射針11cに前記キャップを装着させる。そして、前記第1ロボットアーム21は、前記第2ロボットアーム22に前記注射器11が保持された状態で、前記注射針11cを回転させることにより前記注射器11から前記注射針11cを取り外す。このとき、前記第2制御部500は、前記ゴミ蓋132aを開き、前記第1ロボットアーム21は、前記注射針11cを前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。その後、前記第1ロボットアーム21が、前記載置台33から交換後の前記注射針11cを前記注射針着脱装置43にセットさせる。前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて、前記注射器11に前記注射針11cを装着させる。このように、前記アンプル10Aから薬剤を吸引するときと、前記輸液バッグ12に輸液を注入するときとで前記注射針11cが交換されるため、前記アンプル10Aの破片が前記輸液バッグ12に混入することが防止される。
【0090】
そして、前記第2ロボットアーム22は、前記コンテナ搬送終端部110aに搬送された前記輸液バッグ12の混注口に前記注射器11の前記注射針11cを穿刺して、前記注射器11内の混合薬を前記輸液バッグ12に注入する。一方、前記第2制御部500は、前記ゴミ蓋132aを開き、前記第1ロボットアーム21は、前記アンプル10Aを前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。また、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて、前記注射器11の前記注射針11cに前記キャップを装着させた後、前記注射器11を前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。
【0091】
[バイアル瓶10Bを使用する混注処理]
続いて、前記バイアル瓶10Bに収容された散薬を輸液と混合して生成した混合薬剤を前記輸液バッグ12に注入する際の混注処理について説明する。
【0092】
前記第2制御部500は、前記コンテナ101が前記コンテナ搬送部110に供給されると、前記シャッター111を開く。そして、前記コンテナ搬送部110は、前記コンテナ101の前記薬剤載置部102を前記トレイ昇降部112により上昇させて前記混注処理室104に露出させる。
【0093】
次に、前記第1ロボットアーム21は、前記混注処理室104内に露出された前記薬剤載置部102に載置された前記注射器11を掴み、前記載置棚33に仮置きする。また、前記第1ロボットアーム21は、前記薬剤載置部102に載置された前記バイアル瓶10Bを前記薬剤読取部34にセットする。これにより、前記薬剤読取部34では、前記バイアル瓶10Bに収容された薬剤の種類などの情報が読み取られる。
【0094】
続いて、前記薬剤載置部102から全ての前記バイアル瓶10B、前記注射器11及び前記注射針11c等が取り出されると、前記コンテナ搬送部110は、前記薬剤載置部102を前記トレイ昇降部112により下降させて前記コンテナ101に戻す。一方、前記第2制御部500は、前記シャッター111を閉めて、前記コンテナ搬送部110により前記コンテナ101を前記コンテナ搬送終端部110aに搬送させる。前記コンテナ搬送部110は、前記コンテナ101が前記コンテナ搬送終端部110aまで移動させた後、前記コンテナ101の前記輸液バッグ保持部103で保持されている前記輸液バッグ12の混注口を前記混注処理室104に形成された前記混注連通口37に位置させる。
【0095】
そして、前記第2ロボットアーム22は、前記薬剤読取部34にセットされた前記バイアル瓶10Bを前記載置台33に移動させる。一方、この移動処理に並行して、前記第1ロボットアーム21は、前記薬剤載置部102に載置された前記注射器11の前記注射針11cを前記注射針着脱装置43にセットする。
【0096】
次に、前記第1ロボットアーム21は、前記載置台33から前記注射器11を取り出し、前記第2ロボットアーム22にセットする。そして、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて前記注射器11に前記注射針11cをセットさせる。その後、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記針曲り検知部36に移動させ、前記注射針11cの曲りの有無を検出させる。
【0097】
続いて、前記第2ロボットアーム22は、前記コンテナ搬送終端部110aに搬送された前記輸液バッグ12の混注口に前記注射器11の前記注射針11cを穿刺して、前記輸液バッグ12から前記調製データで示された混合量の輸液を吸引する。一方、前記第1ロボットアーム21は、前記載置台33に載置されている前記バイアル瓶10Bを取り出す。
【0098】
そして、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、前記バイアル瓶10Bと前記注射器11とを接近させて、前記注射器11の前記注射針11cを前記バイアル瓶10Bに穿刺する。その後、前記第2ロボットアーム22は、前記プランジャ11bを作動させることにより、前記注射器11内の前記輸液を前記バイアル瓶10B内に注入する。これにより、前記バイアル瓶10B内で混合薬が生成される。このとき、前記注射器11及び前記バイアル瓶10Bの姿勢は、前記注射器11の前記注射針11cが鉛直下方向に向けられ、前記バイアル瓶10Bが口部が鉛直上方向に向けられた状態である。
【0099】
次に、前記第1ロボットアーム22は、前記輸液が注入された前記バイアル瓶10Bを前記攪拌装置32にセットする。これにより、前記攪拌装置32では、前記バイアル瓶10B内の薬剤及び輸液が攪拌される。前記攪拌装置32による攪拌が終了すると、前記第1ロボットアーム21は、前記攪拌装置32から前記バイアル瓶10Bを取り出す。そして、前記第1ロボットアーム21及び前記ロボットアーム22は、前記バイアル瓶10Bと前記注射器11とを接近させて、前記注射器11の前記注射針11cを前記バイアル瓶10Bに穿刺する。その後、前記第2ロボットアーム22は、前記プランジャ11bを作動させることにより、前記バイアル瓶10B内の混合薬を前記注射器11で吸引する。このとき、前記注射器11及び前記バイアル瓶10Bの姿勢は、前記バイアル瓶10Bが口部が鉛直下方向に向けられ、前記注射器11の前記注射針11cが鉛直上方向に向けられた状態である。
【0100】
そして、前記第2ロボットアーム22は、前記コンテナ搬送終端部110aに搬送された前記輸液バッグ12の混注口に前記注射器11の前記注射針11cを穿刺して、前記注射器11内の混合薬を前記輸液バッグ12に注入する。一方、前記第2制御部500は、前記ゴミ蓋132aを開き、前記第1ロボットアーム21は、前記バイアル瓶10Bを前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。また、前記第2ロボットアーム22は、前記注射器11を前記注射針着脱装置43にセットして、前記注射器11の前記注射針11cに前記キャップを装着させた後、前記注射器11を前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。
【0101】
また、前記バイアル瓶10Bに収容された薬液を前記輸液バッグ12に注入する際の混注処理は、前記輸液バッグ12から前記輸液を吸引して前記バイアル瓶10Bに注入して攪拌する混合薬剤を生成するための工程が実行されない点を除いて、前記バイアル瓶10Bに収容された散薬を前記輸液バッグ12に注入する際の混注処理と同様である。
【0102】
以下、図19図21を参照しつつ、前記混注装置1において、前記第1制御部400及び前記第2制御部500によって実行される混注管理処理及び混注制御処理の手順の一例について説明する。ここに、図19に示すステップS11、S12、S13・・・は、前記第1制御部400が実行する前記混注管理処理の手順、図21に示すステップS21、S22、S23・・・は、前記第2制御部500が実行する前記混注制御処理の手順の識別符号を示す。
【0103】
なお、ここで説明する前記第1制御部400及び前記第2制御部500各々の処理分担は一例に過ぎず、前記混注管理処理及び前記混注制御処理の各処理手順は前記第1制御部400及び前記第2制御部500のいずれかによって実行されればよい。また、前記混注管理装置100が、一つの制御部又は三つ以上の制御部を有し、前記制御部によって前記混注管理処理及び前記混注制御処理が実行されることも他の実施形態として考えられる。さらに、前記第1制御部400及び前記第2制御部500で実行される処理の一部又は全部が、ASIC又はDSPなどの電子回路により実行されてもよい。
【0104】
[混注管理処理]
<ステップS11>
まず、図19に示すように、ステップS11において、前記第1制御部400は、前記調製データが入力されたか否かを判断する。例えば前記調製データの入力は、前記上位システム600からの前記調製データの受信、又は前記バーコードリーダ204により前記調製データを示すバーコードが読み取られた場合などである。
【0105】
ここで、前記第1制御部400は、前記調製データが入力されたと判断すると(S11のYes側)、処理をステップS12に移行させ、前記調製データが入力されていなければ(S11のNo側)、処理をステップS13に移行させる。
【0106】
<ステップS12>
ステップS12において、前記第1制御部400は、前記混注装置1における前記混注処理の対象となる前記調製データの選択候補が配置された処方選択画面M1を生成し、前記ディスプレイ203に表示させる。ここで、前記混注装置1における混注処理の対象となる前記調製データの選択候補が複数存在する場合、前記処方選択画面M1では、選択候補の前記調製データが予め設定されたソート条件に従って並べられた状態で表示される。前記ソート条件は、例えば、前記混注装置1による調製日時、投薬日時、処方箋区分、及び調製データの発行日時のいずれか一つ又は複数の組み合わせによって定められたものである。ユーザーは、前記処方選択画面M1を参照し、前記混注装置1で前記処方選択画面M1の最上位に表示された前記調製データで必要な数の前記薬剤容器10及び前記注射器11などを前記コンテナ101に載置し、前記コンテナ101を前記混注処理部300に装填する。
【0107】
ここに、図20は、前記処方選択画面M1の一例を示す図である。図20に示す前記処方選択画面M1には、前記選択候補を絞り込むための検索条件の入力欄が配置された検索条件表示部D1、及び前記選択候補の前記調製データが並べて配置された処方表示部D2などが含まれる。前記検索条件表示部D1には、前記検索条件に従って前記調製データの選択候補を絞り込む抽出処理を開始させるための抽出キーD11が配置されている。
【0108】
また、前記処方表示部D2には、過去に実行された前記混注処理において前記薬剤容器10内に残存した残存薬剤と同種の薬剤を処方薬に含む調製データであるか否かが示される残薬有無表示部D21が配置されている。即ち、前記残薬有無表示部D21には、前記残存薬剤を使用して前記混注処理を実行することが可能な調製データであるか否かが示される。例えば、前記残薬有無表示部D21には、文字、記号、図形、又はイラストなどの情報により、前記残存薬剤が使用可能な調製データであるか否かが示される。
【0109】
ところで、前記残存薬剤を次の前記混注処理で使用するという運用が必要ない場合も考えられる。そのため、前記第1制御部400は、過去の混注処理で生じた残存薬剤を次の混注処理で使用する残薬使用機能のON/OFFを初期設定などにおけるユーザー操作に応じて変更することが可能である。これにより、ユーザーは、前記残存薬剤を次の前記混注処理で使用するための支援を受けるか否かを任意に切り替えることができる。なお、前記第1制御部400が、前記処方選択画面M1におけるユーザー操作に応じて前記残薬使用機能のON/OFFの切り替えることが可能な構成であってもよい。そして、前記第1制御部400は、前記残薬使用機能がONの場合には、後述のステップS16以後の処理を実行し、前記残薬使用機能がOFFの場合には、後述のステップS16以後の処理を実行しないことが考えられる。また、前記第1制御部400が、前記残薬使用機能がOFFの場合には、前記処方選択画面M1における前記残薬有無表示部D21を非表示にすることも考えられる。
【0110】
また、前記第1制御部400は、初期設定などにおける前記操作部405に対するユーザー操作に応じて前記ソート条件を設定するソート条件設定機能を有する。例えば、前記第1制御部400は、前記処方選択画面M1においても前記ソート条件を変更して前記調製データの表示順を変更することが可能である。即ち、前記第1制御部400は、前記処方表示部D2の各表示項目の記載箇所が前記操作部405のマウス又はタッチパネルなどによって操作された場合に、その操作された表示項目について昇順又は降順となるように前記調製データを並べ替えることが可能である。
【0111】
<ステップS13>
そして、ステップS13において、前記第1制御部400は、選択候補の前記調製データから特定の調製データを抽出するための抽出開始操作が行われたか否かを判断する。具体的に、前記第1制御部400は、前記操作部405に対するユーザー操作により、前記検索条件表示部D1において前記検索条件が設定され、前記抽出キーD11が操作されたか否かに応じて前記抽出開始操作の有無を判断する。
【0112】
ここで、前記第1制御部400は、前記抽出開始操作がなされたと判断すると(S13のYes側)、処理をステップS131に移行させ、前記抽出開始操作がなされていなければ(S13のNo側)、処理をステップS14に移行させる。
【0113】
<ステップS131>
ステップS131において、前記第1制御部400は、選択候補となる前記調製データを前記検索条件に従って抽出する。例えば、図20に示す前記処方選択画面M1は、前記混注処理の実行予定日を示す調剤日の入力欄に「2012/07/12」が入力されて前記調製データの抽出が実行された結果が表示された例である。
【0114】
<ステップS132>
ステップS132において、前記第1制御部400は、前記ステップS131で抽出された前記調製データを配置した前記処方選択画面M1を表示させ、処理を前記ステップS11に戻す。例えば、図20に示す前記処方選択画面M1は、前記投薬日が早い順に上位から並べて表示させる旨が予め設定されている場合に、前記ステップS131で抽出された複数の前記調製データが表示された例である。
【0115】
<ステップS14>
一方、ステップS14において、前記第1制御部400は、前記操作部405に対して前記調製データのいずれかを選択するためのユーザー操作が行われたか否かを判断する。ここで、前記第1制御部400は、前記調製データの選択操作が行われたと判断すると(S14のYes側)、処理をステップS15に移行させ、前記調製データの選択操作が行われるまでの間は(S14のNo側)、処理を前記ステップS11に移行させる。
【0116】
<ステップS15>
ステップS15において、前記第1制御部400は、前記ステップS14の選択操作により選択された前記調製データを前記第2制御部500に送信する。なお、前記第1制御部400は、前記調製データそのものに限らず、前記調製データに基づいて前記混注処理部300に混注処理を実行させるための混注制御データを生成し、前記混注制御データを前記第2制御部500に送信するものであってもよい。
【0117】
<ステップS16>
次に、ステップS16において、前記第1制御部400は、前記ステップS14で選択された前記調製データを対象とする前記混注処理が行われた場合に使用される前記薬剤容器10内に薬剤が残存するか否かを判断する。ここに、係る判断処理を実行するときの前記第1制御部400が判断手段に相当する。具体的に、前記第1制御部400は、前記調製データに基づく前記薬剤の払出量と、前記データ記憶部404に前記薬剤容器10に収容された薬剤の既定量とに基づいて、前記薬剤容器10内に前記既定量未満の薬剤が残存するか否かを前記混注処理の終了前に判断する。これにより、前記混注処理が終了する前であっても、後述のステップS181又はステップS19において次の前記混注処理の対象となる選択候補を表示する際に、前記残存薬剤を使用可能な調整データを優先的に表示することが可能である。
【0118】
例えば、前記薬剤の払出量が20mlであり、前記薬剤容器10の既定量が30mlである場合、前記第1制御部400は、1本の前記薬剤容器10の既定量である30mlと前記払出量である40mlとの差分により、前記薬剤容器10に10mlの薬剤が残存すると判断する。また、前記薬剤の払出量が40mlであり、前記薬剤容器10の既定量が30mlである場合、前記第1制御部400は、2本の前記薬剤容器10の合計量である60mlと前記払出量である40mlとの差分により、前記薬剤容器10に20mlの薬剤が残存すると判断する。
【0119】
ここで、前記第1制御部400は、前記薬剤容器10内に薬剤が残存すると判断すると(S16のYes側)、処理をステップS17に移行させ、前記薬剤容器10内に薬剤が残存しないと判断すると(S16のNo側)、処理を前記ステップS11に移行させる。このように、前記第1制御部400は、前記混注処理が終了する前に、当該混注処理が終了したときに前記薬剤容器10内に薬剤が残存するか否かを判断する。従って、ユーザーが次の前記混注処理に必要な薬剤及び器具などの準備を開始する前にステップS17以後の処理が実行される。
【0120】
<ステップS17>
ステップS17において、前記第1制御部400は、前記ステップS16で残存すると判断された残存薬剤に関する残薬情報を前記データ記憶部404に記憶させる。具体的に、前記残薬情報には、例えば前記残存薬剤の種類、残量、開封日時、及び使用期限などの各種の情報が含まれる。また、前記残存薬剤が混合薬剤である場合、前記残薬情報には、例えば前記混合薬剤の成分(薬剤名、溶媒名)、溶媒量、残量、開封日時、使用期限などの各種の情報が含まれる。ここに、前記データ記憶部404が残量記憶手段の一例である。なお、前記混合薬剤では、前記薬剤名及び前記溶媒量に応じて前記混合薬剤における混合比率が特定されるため、前記残存情報として前記溶媒量が記憶される場合を例に挙げて説明するが、前記混合比率が記憶されてもよい。
【0121】
ところで、前記第1制御部400は、前記データ記憶部404に記憶された前記残薬情報各々を、前記残薬情報の前記使用期限が経過したことを条件に削除すると共に、その残薬情報に対応する前記薬剤容器10を廃棄させるための制御信号を前記第2制御部500に入力することが考えられる。これにより、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21又は前記第2ロボットアーム22を制御し、前記使用期限が経過した前記薬剤容器10を廃棄させる。なお、このとき前記第1制御部400は、前記処方選択画面M1に表示された前記処方表示部D2における前記調製データの表示順を、前記使用期限が経過した前記残存薬剤が存在していない場合の表示順に更新する。
【0122】
<ステップS18>
続いて、ステップS18において、前記第1制御部400は、前記薬剤容器10内に残存する残存薬剤が、複数の薬剤又は溶媒が混合された混合薬剤であるか否かを判断する。ここで、前記第1制御部400は、前記残存薬剤が前記混合薬剤であると判断すると(S18のYes側)、処理をステップS19に移行させ、前記残存薬剤が前記混合薬剤ではないと判断すると(S18のNo側)、処理をステップS181に移行させる。
【0123】
<ステップS181>
ステップS181において、前記第1制御部400は、前記混注処理の対象となる前記調製データの選択候補のうち前記ステップS16により過去の前記混注処理で前記薬剤容器10内に残存すると判断された残存薬剤と同種の薬剤が処方薬として含まれる調製データを優先的に表示させる。ここに、前記表示処理を実行するときの前記第1制御部400が表示制御手段に相当する。具体的に、前記第1制御部400は、前記薬剤容器10内に残存する残存薬剤と同種の薬剤が処方薬として含まれる調製データの選択候補が上位となる表示順で前記調製データの選択候補を前記ディスプレイ403の前記処方選択画面M1に表示させる。また、前記第1制御部400は、前記薬剤容器10内に残存する残存薬剤と同種の薬剤が処方薬として含まれる調製データに対応する前記残薬有無表示部D21に前記残存薬剤を使用することが可能である旨を示す情報を表示させる。これにより、ユーザーは、前記残存薬剤を使用することのできる前記調製データを容易に把握することができる。
【0124】
例えば、前記ステップS181において、前記第1制御部400は、前記薬剤容器10内に残存する残存薬剤と同種の薬剤が処方薬として含まれる調製データが存在するか否かを検索する。そして、前記調製データが一件以上検索結果として得られた場合、前記第1制御部400は、その調製データの表示位置が最上位になるように前記処方選択画面M1の表示内容を変更する。また、前記薬剤容器10内に残存する残存薬剤と同種の薬剤が処方薬として含まれる調製データを優先的に表示させる手法としては、前記第1制御部400が、前記薬剤容器10内に残存する残存薬剤と同種の薬剤が処方薬として含まれる調製データのみを前記表示装置26に表示させることも考えられる。これにより、ユーザーは、前記残存薬剤の使用が可能な前記調製データのみを容易に確認することができる。
【0125】
ここで、前記検索結果として抽出された調製データが複数存在する場合、前記第1制御部400は、前記ステップS12と同様に、複数の前記調製データの並び順を前記ソート条件に従って決定する。これにより、前記ソート条件に従って優先するべき前記調製データの候補を最上段に表示させることが可能である。前述したように、前記ソート条件は、例えば前記調製データの処方薬の投薬日時又は調製日時が早い方を上位とする条件である。また、前記ソート条件は、前記調製データの処方箋区分が入院である場合よりも前記調製データの処方箋区分が外来である場合の方を上位とする条件であることも考えられる。これにより、ユーザーは、前記投薬日時、前記調製日時、前記処方箋区分などに応じて優先すべき前記調剤データの順位を容易に把握することができる。
【0126】
なお、前記薬剤容器10内に残存する残存薬剤と同種の薬剤が処方薬として含まれる調製データが抽出されなかった場合、前記第1制御部400は、前記処方選択画面M1の表示内容を変更しないことが考えられる。この場合、前記第1制御部400は、前記残存薬剤を使用することができないと判断し、前記薬剤容器10を前記載置棚33に載置するのではなく、前記薬剤容器10を前記ゴミ収容室13aに廃棄させるための制御信号を前記第2制御部500に送信することも考えられる。
【0127】
<ステップS19>
一方、ステップS19において、前記第1制御部400は、前記薬剤容器10内に残存する残存薬剤である前記混合薬剤と、成分及び混合比率が同じ処方薬が含まれる調製データを優先的に表示させる。ここに、前記表示処理を実行するときの前記第1制御部400が表示制御手段に相当する。このとき、前記第1制御部400は、例えば前記残存情報に記憶された薬剤名及び溶媒量と前記調製データにおける薬剤名及び溶媒量とに応じて前記混合比率が同一であるか否かを判断する。
【0128】
具体的に、前記第1制御部400は、前記ステップS181と同様に、前記薬剤容器10内に残存する残存薬剤と成分及び混合比率が同じ薬剤が処方薬として含まれる調製データが上位となる表示順で前記調製データの選択候補を前記ディスプレイ403の前記処方選択画面M1に表示させる。また、前記第1制御部400は、前記薬剤容器10内に残存する残存薬剤と成分及び混合比率が同じ薬剤が処方薬として含まれる調製データに対応する前記残薬有無表示部D21に前記残存薬剤を使用することが可能である旨を示す情報を表示させる。なお、前記ステップS19においても、前記ステップS181と同様に、前記調製データが複数存在する場合、前記第1制御部400は、複数の前記調製データの並び順を前記ソート条件に従って決定する。
【0129】
ところで、前記混注管理装置100において、前記第2制御部500が、前記ステップS16において、前記混注処理の実行後の前記薬剤容器10の重量に基づいて前記薬剤容器10に薬剤が残存しているか否かを判断することが考えられる。具体的に、前記第2制御部500は、前記混注処理の終了後に前記第1ロボットアーム21又は前記第2ロボットアーム22を用いて前記薬剤容器10を前記秤量計35に載置し、前記薬剤容器10の重量を計測する。そして、前記第2制御部500は、前記医薬品マスターに記憶された前記薬剤容器10の空状態の重量と前記混注処理の実行後の前記薬剤容器10の重量との差分を算出することにより、前記混注処理の実行後の前記薬剤容器10内の薬剤の残量を検出することが可能である。ここに、係る検出処理を実行するときの前記第2制御部500が残量検出手段の一例である。これにより、前記第1制御部400は、前記混注処理後に実際に前記薬剤容器10内に残存している前記残存薬剤の残量に基づいて前記残存薬剤を使用可能な調製データを優先的に表示することが可能である。なお、前記薬剤容器10内の薬剤の残量の検出手法はこれに限らず、例えばカメラを用いて前記薬剤容器10を撮像し、その撮像された画像に基づいて前記薬剤容器10内の薬剤の残量を検出することも考えられる。その他、前記第2制御部500が、前記秤量計35で計測される前記注射器11の重量、又は前記注射器確認カメラ42で撮像された画像に基づいて取得される前記注射器11内の薬剤量(薬剤容器10からの抜取量)と、前記薬剤容器10の前記既定量との差分を算出することにより前記薬剤容器10内の薬剤の残量を検出することも可能である。
【0130】
[混注制御処理]
続いて、図21を参照しつつ、前記第2制御部500によって実行される前記混注制御処理の手順の一例について説明する。
【0131】
<ステップS21>
ステップS21において、前記第2制御部500は、前記第1制御部400から前記調製データが入力されたか否かを判断する。ここで、前記第2制御部500は、前記調製データが入力されたと判断すると(S21のYes側)、処理をステップS22に移行させる。一方、前記第2制御部500は、前記調製データが入力されるまでの間は(S21のNo側)、前記ステップS21の判断処理を繰り返し実行する。
【0132】
<ステップS22>
ステップS22において、前記第2制御部500は、前記調製データを対象とする前記混注処理において、過去に実行された前記混注処理で残存した残存薬剤を使用することが可能であるか否かを判断する。具体的に、前記第2制御部500は、前記第1制御部400によって前記データ記憶部404に記憶されている前記残薬情報に基づいて、前記残存薬剤と同種の薬剤を処方薬に含む前記調剤データが前記混注処理の対象として選択されたか否かを判断する。さらに、前記第2制御部500は、前記残薬情報の内容が予め設定された使用条件を満たすか否かを判断する。前記使用条件は、例えば前記残薬情報に記憶された前記残存薬剤の使用期限が経過していないこと、又は前記残存薬剤の開封日時から所定時間が経過していないこと等である。これにより、例えば前記残存薬剤の使用期限が経過していないことを前記使用条件として設定し、前記使用期限が経過していない前記残存薬剤のみを使用対象とすることが可能となる。
【0133】
即ち、前記第2制御部500は、前記残存薬剤と同種の薬剤を処方薬に含む前記調剤データが前記混注処理の対象として選択され、且つ、前記残薬情報の内容が予め設定された使用条件を満たす場合に、前記残存薬剤を使用することが可能であると判断する。これにより、前記使用条件を満たさない場合に前記残存薬剤の使用を自動的に排除することが可能となる。なお、前記第1制御部400により前記残存薬剤が使用可能であるか否かが判断され、前記第2制御部500が、前記第1制御部400から前記残存薬剤の使用が可能であるかを示す制御信号を受信してもよい。
【0134】
また、前記使用条件が、前記調製データ及び前記薬剤容器10の前記既定量に基づいて算出される前記薬剤容器10内の前記残存薬剤の残量と前記混注処理の実行後に前記第2制御部500により検出される前記薬剤容器10内の前記残存薬剤の残量との差が予め設定された範囲内であることを含むことも考えられる。これにより、実際に前記薬剤容器10内に残存している前記残存薬剤の残量と、前記調製データ及び前記薬剤容器10の前記既定量に基づく残量の算出値(予測値)との差が所定の許容量を超える場合に、前記残存薬剤の使用を防止することが可能である。例えば、前記注射器11によって前記薬剤容器10から薬剤を吸引する際に薬剤が漏れて、実際に前記混注処理後に前記薬剤容器10内に残存した前記残存薬剤の残量が算出値より少なくなっている場合に、次の前記混注処理の開始前にその旨を判断することが可能であるため、前記混注処理の開始後に薬剤の不足が判明するエラーを防止することが可能である。なお、前記使用条件が、前記調製データ及び前記薬剤容器10の前記既定量に基づいて算出される前記薬剤容器10内の前記残存薬剤の残量と、前記混注処理の実行中に前記注射器確認カメラ42で撮像された前記注射器11内に吸い込まれた薬剤量及び前記薬剤容器10の前記既定量に基づいて算出される前記薬剤容器10内の前記残存薬剤の残量との差が予め設定された範囲内であることを含むことも考えられる。
【0135】
ここで、前記第2制御部500は、前記残存薬剤の使用が可能であると判断すると(S22のYes側)、処理をステップS23に移行させ、前記残存薬剤を使用できないと判断すると(S22のNo側)、処理をステップS221に移行させる。
【0136】
<ステップS221>
ステップS221において、前記第2制御部500は、前記第1制御部400から入力された前記調製データに基づいて前記混注処理部300を制御することにより前記薬剤容器10から前記輸液バッグ12に薬剤を注入する通常の前記混注処理を実行する。具体的に、前記混注処理において、前記第2制御部500は、前記調製データに示された薬剤を前記コンテナ101に載置された一又は複数の前記薬剤容器10から前記注射器11によって吸引し、前記注射器11から前記輸液バッグ12に注入する。
【0137】
<ステップS23>
一方、ステップS23において、前記第2制御部500は、前記第1制御部400から入力された前記調製データに基づいて前記混注処理部300を制御することにより、前記残存薬剤を使用して前記輸液バッグ12に薬剤を注入する例外的な前記混注処理を実行する。即ち、前記第2制御部500は、前記残存薬剤と同種の薬剤を処方薬に含む前記調製データが前記混注処理の対象として選択され且つ前記使用条件を満たす場合に前記混注処理において前記残存薬剤を使用する処理を実行する。ここに、係る処理を実行するときの前記第2制御部500が残薬使用手段に相当する。
【0138】
具体的に、前記ステップS23における前記混注処理において、前記第2制御部500は、前記調製データに示された薬剤を、後述のステップS25において前記載置台33に載置された前記薬剤容器10から前記注射器11によって吸引し、前記注射器11から前記輸液バッグ12に注入する。但し、前記第2制御部500は、前記載置台33に載置された前記薬剤容器10内の薬剤の残量で足りない場合には、前記薬剤載置部102に載置された一又は複数の前記薬剤容器10の薬剤を使用して前記混注処理を継続する。
【0139】
<ステップS24>
前記混注処理が終了すると、ステップS24において、前記第2制御部500は、前記薬剤容器10に薬剤が残存したか否かを判断する。前記ステップS24における前記判断処理は、前記第1制御部400で実行される前記ステップS16と同様の処理であってもよいが、前記第1制御部400から前記残存薬剤が生じるか否かを示す制御信号を受信してもよい。
【0140】
ここで、前記第2制御部500は、前記薬剤が残存したと判断すると(S24のYes側)、処理をステップS25に移行させ、前記薬剤が残存しなかったと判断すると(S24のNo側)、処理をステップS241に移行させる。
【0141】
<ステップS25>
前記薬剤容器10に薬剤が残存する場合、続くステップS25において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21を制御することにより、前記薬剤容器10を再度利用可能な状態で前記載置棚33に載置させる。また、前記第2制御部500は、前記薬剤の名称、前記薬剤容器10内の薬剤の残量、前記薬剤容器10の載置位置、前記薬剤容器10の開封日時、及び前記薬剤容器10内の残存薬剤の使用期限などの各種の情報を前記データ記憶部504に記憶させる。
【0142】
<ステップS241>
一方、前記薬剤容器10に薬剤が残存しない場合、前記第2制御部500は、ステップS241において、前記第1ロボットアーム21により前記薬剤容器10を前記ゴミ収容室13aに廃棄する。即ち、前記薬剤容器10内の薬剤を使い切っていない場合は前記薬剤容器10が前記載置棚33に戻され、前記薬剤容器10内の薬剤が使い切られた場合は前記薬剤容器10が廃棄される。
【0143】
以上、説明したように、前記混注装置1では、前記混注制御装置100により前記混注管理処理及び前記混注制御処理が実行されることにより、前の混注処理で残存した残存薬剤を使用することが可能な調製データが次の混注処理の選択候補として優先的に表示される。これにより、前記混注装置1では、ユーザーに前記残存薬剤を使用することが可能な前記調製データを次の前記混注処理の対象として意識させることができ、前記薬剤容器10内の薬剤の効率的な使用を支援することができる。
【0144】
[混注装置1の動作例]
ここに、図22は、前記混注制御装置100により前記混注管理処理及び前記混注制御処理が実行された場合の実際の動作例を説明するための図である。図22(A)は調製データの一例、図22(B)は残薬情報の一例、図22(C)〜(E)は前記処方表示部D2の一部分の表示例を示している。なお、図22で示す情報は説明の便宜上、本件に関わりの少ない情報の項目を省略している。
【0145】
ここでは、図22(A)に示すように、前記混注処理の対象となる前記調剤データの選択候補として調製データRp1〜Rp4が前記第1制御部400に入力されている場合を考える。例えば、前記調製データRp1では、調製する薬剤名が「5ーFU注1000mg」、払出量が「15ml」、前記薬剤名「5ーFU注1000mg」の薬剤が収容された前記アンプル10Aの既定量は「20ml」であることが示されている。また、前記調製データRp2では、調製する薬剤名が「キロサイドN(登録商標)注1g」、払出量が「50ml」、前記薬剤名「キロサイドN注1g」の薬剤が収容された前記アンプル10Aの既定量は「50ml」であることが示されている。なお、前記第1制御部400は、前記データ記憶部404に記憶された前記薬品マスターから前記薬剤名「5ーFU注1000mg」、「キロサイドN注1g」などに対応する既定量を取得してもよい。さらに、前記第1制御部400は、前記バーコードリーダ34bにより前記薬剤容器10のバーコードから前記既定量を取得してもよい。
【0146】
そして、前記第1制御部400において、前記混注処理の対象として前記調製データRp1が選択されると、前記第1制御部400は、前記払出量と前記既定量との差分(5ml)を算出する。これにより、前記第1制御部400は、前記薬剤名「5ーFU注1000mg」が前記アンプル10A内に「5ml」残存すると判断し、その旨を前記残薬情報(図22(B)参照)として前記データ記憶部404に記憶させる。図22(B)に示す前記残薬情報では、前記薬剤名「5ーFU注1000mg」の薬剤が残量「5ml」だけ前記アンプル10Aに残存しており、開封日時が「2013/02/15の11時」、使用期限が「2013/02/15の13時」である旨が示されている。
【0147】
なお、ここでは説明の便宜上、処方量が前記アンプル10Aの既定量以下であり、使用される前記アンプル10Aが1本である場合を例に挙げて説明する。一方、処方量が前記アンプル10Aの既定量を超える場合には、複数の前記アンプル10Aが使用され、結果的に1本の前記アンプル10A内に薬剤が残存することになる。例えば、前記調製データRp1の処方量が「30ml」である場合には、前記コンテナ101に前記アンプル10Aが2本装填される。このとき、前記第1制御部400は、その2本の前記アンプル10Aの合計量である「40ml」と処方量の「30ml」との差分により2本目の前記アンプル10Aに「10ml」の薬剤が残存すると判断する。
【0148】
次に、前記第1制御部400は、前記調製データRp2〜Rp4のうち、前記残薬情報に示された薬剤名「5ーFU注1000mg」の残存薬剤と同種の薬剤を処方薬として含む前記調製データRp3及びRp4を対象とする前記混注処理であれば、前記残存薬剤を使用することが可能であると判断する。
【0149】
そして、前記第1制御部400は、図22(C)に示すように、前記調製データRp2〜Rp4のうち前記調製データRp3及びRp4を前記調製データRp2よりも上位に並べ替えて前記処方選択画面M1(図20参照)に優先的に表示させる。また、前記第1制御部400は、図22(C)に示すように、前記処方選択画面M1における前記残薬有無表示部D21(図20参照)に「○」を表示させることにより、前記調製データRp3及びRp4について前記残存薬剤を使用することが可能である旨を表示する。これにより、ユーザーは、前記処方選択画面M1において上位に表示された前記調製データRp3及びRp4を次の前記混注処理の対象とすることにより前記残存薬剤を使用することが可能である旨を認識することができる。なお、図22(C)に示すように、前記残存薬剤とは異なる種類の薬剤が処方薬である前記調製データRp2については、前記残薬有無表示部D21に「○」が表示されないことにより、前記残存薬剤を使用することができない旨が示される。
【0150】
例えば、前記調製データRp3では、調製する薬剤名が「5ーFU注1000mg」、払出量が「25ml」、前記薬剤名「5ーFU注1000mg」の薬剤が収容された前記アンプル10Aの既定量は「20ml」であることが示されている。そして、前記調製データRp3を対象とする前記混注処理では、2本の前記アンプル10Aが必要となる。しかしながら、前記残存薬剤として薬剤「5ーFU注1000mg」が「5ml」残存しており、その残存薬剤を使用することができれば、前記調製データRp3を対象とする前記混注処理では、1本の前記アンプル10Aだけを新たに装填すればよいことになる。
【0151】
一方、前記調製データRp4では、調製する薬剤名が「5ーFU注1000mg」、払出量が「5ml」、前記薬剤名「5ーFU注1000mg」の薬剤が収容された前記アンプル10Aの既定量は「20ml」であることが示されている。そして、前記調製データRp4を対象とする前記混注処理では、1本の前記アンプル10Aが必要となる。しかしながら、前記残存薬剤として薬剤「5ーFU注1000mg」が「5ml」残存しており、その残存薬剤を使用することができれば、前記調製データRp4を対象とする前記混注処理では、前記アンプル10Aを新たに装填する必要がないことになる。そこで、前記第1制御部400が、前記残存薬剤の残量で払出量が足りる前記調製データ、即ち前記調製データRp4を優先的に上位に表示させることも他の実施形態として考えられる。
【0152】
ところで、前記第1制御部400は、図22(D)に示すように、前記調製データRp2〜Rp4のうち前記調製データRp3及びRp4を優先的に表示させるために、前記調製データRp3及びRp4のみを前記処方選択画面M1に表示させることも考えられる。また、前記第1制御部400は、図22(E)に示すように、前記調製データRp3及びRp4について患者に対する処方日が予め設定されている場合に、前記処方日が早い方、即ち前記調製データRp4を優先的に上位に表示させることも考えられる。
【0153】
なお、一つの前記調製データに複数の混注処理を伴う複数種類の薬剤が存在する場合、前記第1制御部400は、前記混注処理各々において前記残存薬剤の有無を判断し、前記残存薬剤の少なくとも一つと同種の薬剤を処方薬として含む前記調製データを優先的に表示させることが考えられる。また、前記第1制御部400は、複数種類の前記残存薬剤が存在する場合、処方薬として含む前記残存薬剤と同種の薬剤の数が多い調製データを上位に表示させることが考えられる。
【0154】
[混注装置1の他の動作例]
ここに、図23は、前記混注制御装置100により前記混注管理処理及び前記混注制御処理が実行された場合の実際の他の動作例を説明するための図である。図23(A)は調製データの一例、図23(B)は残薬情報の一例、図23(C)は前記処方表示部D2の一部分の表示例を示している。なお、図23で示す情報は説明の便宜上、本件に関わりの少ない情報の項目を省略している。
【0155】
ここでは、図23(A)に示すように、前記混注処理の対象となる前記調剤データの選択候補として調製データRp11〜Rp15が前記第1制御部400に入力されている場合を考える。例えば、前記調製データRp11では、調製する薬剤名が「ジェムザール(登録商標)注射用1g」、払出量が「25ml」、溶媒が「生理食塩液100ml」、溶媒量が「30ml」である。即ち、前記調製データRp11では、前記バイアル瓶10Bで生成される混合薬の成分は薬剤「ジェムザール注射用1g」及び溶媒「生理食塩液100ml」である。同じく、前記調製データRp12では、調製する薬剤名が「マイトマイシン(登録商標)注用2mg」、払出量が「5ml」、溶媒が「生理食塩液100ml」、溶媒量が「5ml」である。また、前記調製データRp15では、調製する薬剤名が「ジェムザール注射用1g」、払出量が「25ml」、溶媒が「ブドウ糖注5%100ml」、溶媒量が「30ml」である。
【0156】
そして、前記第1制御部400において、前記混注処理の対象として前記調製データRp11が選択されると、前記第1制御部400は、前記バイアル瓶10B内に混合薬剤が残存するか否かを判断する。具体的に、前記第1制御部400は、前記溶媒量と前記払出量との差分に応じて前記バイアル瓶10B内に混合薬剤が残存するか否かを判断する。即ち、前記混注処理において、前記薬剤容器10内で混合薬剤が生成される場合、前記第1制御部400は、前記薬剤容器10内で生成された混合薬剤の量を前記薬剤容器10内に収容された薬剤の既定量として捉える。そして、前記第1制御部400は、薬剤「ジェムザール注射用1g」及び溶媒「生理食塩液100ml」の混合薬剤が残存すると判断すると、その旨を前記残薬情報(図23(B)参照)として前記データ記憶部404に記憶させる。図23(B)に示す前記残薬情報では、薬剤名「ジェムザール注射用1g」に溶媒「生理食塩液100ml」が「30ml」混合された混合薬剤が「5ml」だけ前記バイアル瓶10Bに残存する旨が示されている。
【0157】
この場合、前記第1制御部400は、前記調製データRp12〜Rp15のうち、前記残薬情報に示された薬剤「ジェムザール注射用1g」及び溶媒「生理食塩液100ml」の混合薬剤と同じ成分及び混合比率の薬剤を処方薬として含む前記調製データRp14を対象とする前記混注処理であれば、前記残存薬剤を使用することが可能であると判断する。なお、前記混合薬剤の混合比率については薬剤名に含まれた成分量と溶媒の溶媒量とに応じて定まるため、前記第1制御部400は、薬剤名と溶媒量とが同じである場合に前記混合薬剤の混合比率が同じであると判断することが可能である。
【0158】
そして、前記第1制御部400は、図23(C)に示すように、前記調製データRp12〜Rp15のうち前記調製データRp14を前記調製データRp12及びRp13よりも上位に並べ替えて前記処方選択画面M1に優先的に表示させる。また、前記第1制御部400は、図23(C)に示すように、前記処方選択画面M1における前記残薬有無表示部D21(図20参照)に「○」を表示させることにより、前記調製データRp14については前記残存薬剤を使用することが可能である旨を表示する。これにより、ユーザーは、前記処方選択画面M1において上位に表示された前記調製データRp14を次の前記混注処理の対象とすることにより前記残存薬剤を使用することが可能である旨を認識することができる。
【0159】
なお、図23(C)に示すように、前記残存薬剤とは異なる種類の薬剤が処方薬である前記調製データRp12については、前記残薬有無表示部D21に「○」が表示されないことにより、前記残存薬剤を使用することができない旨が示される。また、図23(C)に示すように、前記残存薬剤とは溶媒量が異なる前記調製データRp13については、前記残薬有無表示部D21に「○」が表示されないことにより、前記残存薬剤を使用することができない旨が示される。さらに、図23(C)に示すように、前記残存薬剤とは溶媒が異なる前記調製データRp15については、前記残薬有無表示部D21に「○」が表示されないことにより、前記残存薬剤を使用することができない旨が示される。
【0160】
ところで、前記混合薬剤では、厳密に言えば薬剤及び溶媒の混合により混合薬の容量は、薬剤の質量分だけ溶媒量よりも増加する。そこで、前記第1制御部400が、前記薬剤の質量分を考慮して前記残存薬剤を管理する機能を有することも他の実施形態として考えられる。この場合、前記第1制御部400は、前記薬剤の質量分を考慮する第1の運用モードと前記薬剤の質量分を考慮しない第2の運用モードとを、前記操作部405のユーザー操作に応じて切り替え可能であることが考えられる。なお、この場合、前記第1制御部400の前記データ記憶部404では、例えば前記医薬品マスターに薬剤ごとの単位体積あたりの質量、薬剤ごとの単位質量あたりの体積、又は薬剤名ごとの体積が記憶されている。例えば、前記医薬品マスターにおいて、薬剤名「ジェムザール注射用1g」に対応する体積が記憶されていることが考えられる。そして、前記第1制御部400は、前記医薬品マスターに基づいて薬剤の体積を取得し、前記混合薬剤の実際の容量を導出することが考えられる。
【0161】
[混注装置1が備える他の機能]
以下、前記混注装置1が備える他の機能について説明する。前記機能は、前記混注管理装置100において前記第1制御部400又は前記第2制御部500によって各種の処理が実行されることにより具現される。
【0162】
[不足量表示機能]
前記第1制御部400は、前記調製データに基づく前記薬剤の払出量と前記データ記憶部404に記憶された前記残存薬剤の残量とに基づいて不足する前記薬剤容器10の数を表示する不足量表示機能を有することが考えられる。ここに、係る表示処理を実行するときの前記第1制御部400が不足量表示手段に相当する。
【0163】
具体的に、前記第1制御部400は、前記残存薬剤を使用して前記調製データで示された薬剤を前記輸液バッグ12に注入する際に、前記残存薬剤だけで足りるか否かを判断し、前記薬剤が足りない場合に前記薬剤容器10の必要な数を表示させる。一方、前記第1制御部400は、前記残存薬剤だけで前記薬剤が足りる場合には、前記薬剤容器10の装填が不要である旨を表示させる。このような構成によれば、ユーザーは、前記残存薬剤を使用する場合に前記薬剤容器10の装填の必要の有無及びその数などを容易に把握することができるため、前記残存薬剤を使用する際に不足する前記薬剤容器10の数を自分で考える必要がなくなる。
【0164】
[返却処理機能]
また、前記第2制御部500は、前記残存薬剤が使用された後、前記調製データに基づく前記薬剤の払出量に応じて装填された前記薬剤容器10のうち未使用の前記薬剤容器10を予め定められた返却口から返却する返却処理機能を有することが考えられる。ここに、係る返却処理を実行するときの前記第2制御部500が返却処理手段に相当する。例えば、前記返却口は、前記薬剤装填部200側に連通した開口部である。このような構成であれば、余った前記薬剤容器10が自動的に返却されるため、ユーザーは、前記残存薬剤を使用する場合に装填するべき前記薬剤容器10の数を意識することなく、常に前記調製データに従って必要な前記薬剤容器10の数を判断して装填する通常通りの運用を行うことができる。
【符号の説明】
【0165】
1:混注装置
10:薬剤容器
11:注射器
11a:シリンジ本体
11b:プランジャ
11c:注射針
12:輸液バッグ
13:ゴミ収容室扉
21:第1ロボットアーム
22:第2ロボットアーム
25:容器保持部
26:注射器操作部
31:アンプルカッター
32:攪拌装置
33:載置棚
34:薬剤読取部
35:秤量計
36:針曲り検知部
37:混注連通口
38:針挿入確認透明窓
41:トレイ確認カメラ
42:注射器確認カメラ
43:注射針着脱装置
44:針挿入確認カメラ
45:殺菌灯
100:混注管理装置
101:コンテナ
104:混注処理室
110:コンテナ搬送部
200:薬剤装填部
300:混注処理部
400:第1制御部
401:CPU
402:ROM
403:RAM
404:データ記憶部
500:第2制御部
501:CPU
502:ROM
503:RAM
504:データ記憶部
600:上位システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23