特許第6583635号(P6583635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6583635新規カチオン性グラフト重合体を用いた標的物分離濃縮方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583635
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】新規カチオン性グラフト重合体を用いた標的物分離濃縮方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/24 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   C12Q1/24
【請求項の数】11
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2016-510174(P2016-510174)
(86)(22)【出願日】2015年2月27日
(86)【国際出願番号】JP2015055892
(87)【国際公開番号】WO2015146487
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2018年1月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-60419(P2014-60419)
(32)【優先日】2014年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-60420(P2014-60420)
(32)【優先日】2014年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年9月1日日本臨床検査自動化学会会誌掲載の日本臨床検査自動化学会第46回大会抄録集で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年10月9日及び10日神戸で開催された日本臨床検査自動化学会第46回大会ならびに同技術セミナーで発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年9月1日JSBMS Letters掲載の第39回日本医用マススペクトル学会年会抄録集で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年10月17日千葉で開催された第39回日本医用マススペクトル学会年会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2014年10月4日第13回HUPO(Human Proteome Oraganization)世界大会抄録集(http://www.hupo2014.com/schedule.html)で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2014年10月6日マドリッドで開催された第13回HUPO(Human Proteome Oraganization)世界大会で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 一穂
(72)【発明者】
【氏名】野田 健太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 晃司
(72)【発明者】
【氏名】照内 洋子
(72)【発明者】
【氏名】文屋 勝
【審査官】 鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/144554(WO,A1)
【文献】 特開昭57−189692(JP,A)
【文献】 特開2002−125695(JP,A)
【文献】 特開2013−231145(JP,A)
【文献】 特開2009−235185(JP,A)
【文献】 特開2001−161356(JP,A)
【文献】 J. Biomater. Sci. Polym. Ed., 1994, Vol.5, No.6, pp.569-590
【文献】 人工臓器, 1991, Vol.20, No.2, p.314-317
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−1/70
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性グラフト重合体を用いた、標的物を分離濃縮する方法であって;
(1)塩基性条件下でカチオン性グラフト重合体と標的物を含む試料と接触させ、標的物をカチオン性グラフト重合体に結合させるステップ;
(2)カチオン性グラフト重合体と標的生体分子との結合体を分離するステップ;及び
(3)前記結合体から標的物を溶出するステップ;を
含む方法
[ここで前記カチオン性グラフト重合体は、少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られるポリアミン誘導体と、エチレン性不飽和単量体(c)とを重合して得られる、ポリアミングラフト重合体である;及び
前記少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)は下記一般式(7)で表される化合物であって、

下記(1)〜(14)からなる群より選ばれる:
(1)式中R、R、R、及びRが、水素原子である、エチレンオキサイド;
(2)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中に水酸基を含む炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物;
(3)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または置換若しくは非置換の1価の炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)エポキシ化合物;
(4)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にエーテル結合を含む炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物;
(5)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子またはハロゲンである(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物;
(6)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または不飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物;
(7)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または脂環式または不飽和結合を有する環式炭化水素基を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物;
(8)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または芳香環もしくは複素環を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物;
(9)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子またはエポキシ環を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、多官能エポキシ化合物、;
(10)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にアルコキシシリルを含む炭素数3〜12の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物;
(11)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にフッ素を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物;
(12)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にカルボキシル基を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物;
(13)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にエステル結合もしくはアミド結合を含む炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物;並びに
(14)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にスルホン酸エステル基を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物。]。
【請求項2】
ステップ(1)において、さらに二価又は三価の金属イオンを添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(2)において、結合体を洗浄する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記カチオン性グラフト重合体が固相面に固定されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(3)において、標的物と結合していないカチオン性グラフト重合体を凝集させるステップを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法のために用いられるキットであって、請求項1において定義されたカチオン性グラフト重合体を含むキット。
【請求項7】
さらに、二価又は三価の金属イオン塩を含む請求項6に記載のキット。
【請求項8】
さらに、塩基性溶液と二価又は三価の金属イオン塩を含む反応液を含む請求項6に記載のキット。
【請求項9】
さらに、洗浄液を含む請求項6〜8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項10】
さらに、酸性溶液又はキレート剤を含む分散液を含む請求項6〜9のいずれか一項に記載のキット。
【請求項11】
さらに、凝集液を含む請求項6〜10のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2014年3月24日に出願された日本特許出願2014−60419号及び2014−60420号明細書に対する優先権を主張し、前記日本出願は、全体を参照により本明細書に組み込む。
本願明細書及び上記2つの日本出願で引用する全ての文献の記載を全て明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、導入コストが低く、簡便な操作で、安全に且つ安定して製造することができるグラフト重合体を用いた標的生体分子分離濃縮方法及びその方法に用いるキットに関する。
【背景技術】
【0003】
イオン交換ポリマーは、合成樹脂の一種で分子構造の一部にイオン基として電離する構造を持つ。水などの溶媒中のイオンとイオン交換作用を示すが、その挙動はイオンに対する選択性に従い、イオン基の性質により、陽イオン交換ポリマーと陰イオン交換ポリマーに大別される。ポリマー中の固定イオンと様々な溶液中の対立イオン(交換されるイオン)との吸着の差を利用することによって、溶液に含まれた各イオンを分離することができる。
【0004】
生体分子の電荷特性は分子全体の電荷や電荷密度、表面電荷の分布の仕方、溶液のpHなどさまざまな要因によって決定される。たとえばタンパク質の場合は、弱酸性や弱塩基性など多種類のイオン性のアミノ酸を含み、正の電荷と負の電荷の両方を分子表面に持つ。この電荷の総和を有効表面電荷と呼び、アミノ酸の荷電状態がpHによって変化するため、タンパク質分子の有効表面電荷も溶液のpHに依存して正や負へ変化する。
【0005】
イオン交換クロマトグラフィーは、このような生体分子の荷電状態(有効表面電荷)のpHや塩濃度による変化を利用し、反対の電荷を有する担体と可逆的に結合・溶出させて回収する手法である(たとえば特許文献1、2及び非特許文献1)。
【0006】
しかしながらかかる回収操作をした場合、溶出の際、界面活性剤や高濃度塩などを使用しているため、目的物の立体構造の維持や生存した状態で回収することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開1996−173194号公報
【特許文献2】特開2002−125695号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Microbiology 152(2006),3575−3583
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既存のカチオン性ポリマーの代わりに、新規のカチオン性グラフト重合体を用いて、標的物を分離濃縮する方法及びそのためのキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は本発明の構成は以下の[1]から[11]の通りである。
[1]カチオン性グラフト重合体を用いた、標的物を分離濃縮する方法であって;
(1)塩基性条件下でカチオン性グラフト重合体と標的物を含む試料と接触させ、標的物をカチオン性グラフト重合体に結合させるステップ;
(2)カチオン性グラフト重合体と標的生体分子との結合体を分離するステップ;及び
(3)前記結合体から標的物を溶出するステップ;を
含む方法
<ここで前記カチオン性グラフト重合体は、少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られるポリアミン誘導体と、エチレン性不飽和単量体(c)とを重合して得られる、ポリアミングラフト重合体である>;
[2]ステップ(1)において、さらに二価又は三価の金属イオンを添加することを含む、上記[1]に記載の方法;
[3]ステップ(2)において、結合体を洗浄する工程をさらに含む、上記[1]又は[2]に記載の方法;
[4]前記カチオン性グラフト重合体が固相面に固定されている、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の方法。
【0011】
[5]ステップ(3)において、標的物と結合していないカチオン性グラフト重合体を凝集させるステップを含む、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の方法。
【0012】
[6]上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の方法のために用いられるキットであって、カチオン性グラフト重合体を含むキット;
[7]さらに金属イオン塩を含む上記[6]に記載のキット;
[8]さらに、塩基性溶液と金属イオン塩を含む反応液を含む上記[6]に記載のキット;
[9]さらに、洗浄液を含む上記[6]〜[8]のいずれか一項に記載のキット;
[10]さらに、酸性溶液又はキレート剤を含む分散液を含む上記[6]〜[9]のいずれか一項に記載のキット。
【0013】
[11]さらに、凝集液を含む上記[6]〜[10]のいずれか一項に記載のキット。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によって、試料中の標的物を効率よく分離濃縮可能であり、かつ分離濃縮の過程で、標的物は既知の方法よりダメージを受けていないため、その後の解析が容易である。より詳しくは質量分析装置を用いた解析にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】大腸菌とカチオン性グラフト重合体との結合体との沈殿凝集塊 左のチューブは大腸菌(無)、右のチューブは大腸菌(有)。
図2】GFP発現大腸菌とカチオン性グラフト重合体との結合体の蛍光顕微鏡観察 レーザー波長(488nm)により大腸菌に発現させたGFPを検出、可視光によりカチオン性グラフト重合体と大腸菌を検出。レーザー波長および可視光を用いて画像を連続取得し、疑似カラー表示でスーパーインポーズした。左図は大腸菌がカチオン性グラフト重合体により捕獲されている状態、右図はその凝集塊を分散液により分散させた状態。
図3】分離した大腸菌の生存確認 カチオン性グラフト重合体と大腸菌を反応させ、遠心後の上清と、凝集塊を分散液により分散した溶液をそれぞれ培養した。半分の画像が上清、半分が分散液。
図4】分離回収した核酸を用いた電気流動 レーン1がカチオン性グラフト重合体処理なしサンプル、レーン2がカチオン性グラフト重合体処理後サンプルの電気泳動画像。
図5】回収した細胞の検出 (1)細胞とカチオン性グラフト重合体を反応させ遠心後の上清(左)と凝集塊(右)。 (2)その凝集塊を分散液で分散させた状態。 (1),(2)ともに、レーザー波長350nmにより細胞の核を検出、可視光によりカチオン性グラフト重合体を検出。レーザー波長および可視光を用いて画像を連続取得。疑似カラー表示でスーパーインポーズし、凝集状態、および分散状態を観察。
図6】回収した細胞の蛍光顕微鏡観察 カチオン性グラフト重合体により捕獲し、分散液で分散後に免疫染色を行った。レーザー波長350nmで細胞の核を検出し、細胞表面に発現している抗原(MCAM)と反応する抗体を488nmで検出。2種類のレーザー波長を用いて画像を連続取得。疑似カラー表示でスーパーインポーズし、細胞表面抗原を観察。
図7】回収したベシクルの検出 (1)ベシクルとカチオン性グラフト重合体を反応させて遠心後の上清(左)及び凝集塊(右)。 (2)その凝集塊を分散液で分散した状態。(1),(2)ともに、レーザー波長488nmによりベシクルを検出、可視光によりカチオン性グラフト重合体を検出。レーザー波長および可視光を用いて画像を連続取得。疑似カラー表示でスーパーインポーズし、凝集状態、及び分散状態を確認。
図8】回収したベシクルの蛍光顕微鏡観察 カチオン性グラフト重合体により捕獲したベシクルを分散液にて分散後、免疫染色を行った。レーザー波長488nmにてベシクルを検出し、レーザー波長594nmにて抗体を検出。2種類のレーザー波長を用いて画像を連続取得。疑似カラー表示でスーパーインポーズし、ベシクル表面の抗原の状態を確認。
図9】界面活性剤入り溶液を用いて回収した大腸菌の検出(電気泳動)
図10】界面活性剤入り溶液を用いて回収した大腸菌の検出(質量分析)
図11】バクテリオファージの分離検出
図12】分離した大腸菌の生存確認 エポキシオクタン変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体(PAAEpo−g−DADMAC)、およびグリシジルブチレート変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体(PAAGB−g−DADMAC)を用いて、大腸菌の分離を行った。グラフト重合体をラテックスビーズと混合した後、菌体と反応させた。
図13】分離した大腸菌の生存確認 エポキシオクタン変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体(PAAEpo−g−DADMAC)を用いて、大腸菌の分離を行った。グラフト重合体を菌体と反応させた後、ラテックスビーズを添加した。
図14】分離した大腸菌の生存確認 グリシドール変性ポリジアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体(DAAGly−g−DADMAC)を用いて、大腸菌の分離を行った。グラフト重合体をラテックスビーズと混合した後、菌体と反応させた。
図15】分離した大腸菌の生存確認 グリシドール変性ポリジアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体(DAAGly−g−DADMAC)を用いて、大腸菌の分離を行った。グラフト重合体を菌体と反応させた後、ラテックスビーズを添加した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「カチオン性グラフト重合体」とは、少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られるポリアミン誘導体と、エチレン性不飽和単量体(c)とを重合して得られる[前記少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)が、以下の一般式(1)で表されるエチレンイミン系重合体、一般式(2)で表されるビニルアミン系重合体、一般式(3)で表されるアリルアミン系重合体、一般式(4)で表されるジアリルアミン系重合体、及び一般式(5)で表されるアクリルアミン系重合体からなる群より選ばれてもよい(ただし、下記一般式中、nは10から200,000の整数であり、mは5から3,000の整数であり、lは5から5,000の整数であり、oは10から10,000の整数であり、pは1から100の整数である]。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】
【0017】
「少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)」は、少なくとも1のアミノ基を有すればよいものであり、その構成単位中にアミノ基を有さない構成単位を含んでいてもよい。従って、上記一般式(1)から(5)で表される構造を有する各重合体も、それぞれ上記一般式(1)から(5)で表される構造の構成単位に加えて、アミノ基を有さない構成単位を含んでいてもよく、また含んでいなくともよい。アミノ基を有さない構成単位としては二酸化硫黄、アクリルアミド、アリルアルコール、アクリル酸等を挙げることができるが、これらには限定されない。
【0018】
「少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)」における「アミノ基」は、一級アミノ基、二級アミノ基、及び三級アミノ基のいずれであってもよく、一級アミノ基、又は二級アミノ基であることが特に好ましい。
「少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)」における「アミノ基」の数には、特に制限はないが、反応性、使いやすさ等の観点から、1高分子あたり5〜15000個であることが好ましく、8〜3000個であることが特に好ましい。また、高分子化合物の分子量あたりの個数に換算すると、分子量10000あたり、5個から230個であることが好ましく、10個から130個であることが特に好ましい。
【0019】
「少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)」の分子量には特に制限は無いが、反応性、粘度、ハンドリング、歩留などの観点から、数平均分子量で500〜10000000であることが好ましく、500〜1000000であることが特に好ましい。
また、本願第1発明において用いられる少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)が有する繰り返し単位の数にも特に制限は無いが、反応性、粘度、ハンドリング、歩留などの観点から、10〜150000個であることが好ましく、10〜3000個であることが特に好ましい。
【0020】
「少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)」は「さらに少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)」であってもよい。その構造中に少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基を有とする重合性の化合物であれば、いかなる化合物をも使用することが可能であるが、一般式(a1)で表される構造を有するアリルアミン系化合物であることが好ましい。
【化6】

一般式(a1)中、R及びR10はその少なくとも一方が水素原子であり、他方が水素又は炭素数1から8の炭化水素基であり、水素原子又は炭素数1から3のアルキル基であることが好ましい。
また、一般式(a1)において、R及びR10のいずれか一方もアリル基であること、すなわち2のアリル基を有するジアリルアミン系単量体であることが、重合性等の観点から特に好ましい。
高い重合性を得る観点からは、アリルアミン系単量体(a’)のうち少なくとも一部は、2のアリル基を有するジアリルアミン系単量体であることが好ましく、該アリルアミン系単量体(a’)の30モル%以上がジアリルアミン系単量体であることがより好ましく、50モル%以上がジアリルアミン系単量体であることが特に好ましい。
【0021】
一般式(a1)において、R及びR10の一方(例えばR)が水素原子である場合、他方(この場合R10)は、水素原子、メチル基、エチル基、アリル基、又はベンジル基であることが好ましい。すなわち、一般式(a1)で表される構造を有するアリルアミン系化合物は、好ましくは、アリルアミン、メチルアリルアミン、エチルアリルアミン、ジアリルアミン、又ベンジルアリルアミンである。
【0022】
また、一般式(a1)で表される構造を有するアリルアミン系化合物の有機酸塩又は無機酸塩も、本願第1発明において、少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)として好ましく用いることができる。上記有機酸塩又は無機酸塩におけるカウンターイオンとしては、ハロゲンイオン(さらに好ましくは、Cl、Br、若しくはI)、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、メタンスルホン酸イオン、2−ヒドロキシ−1−エタンスルホン酸イオン、酢酸イオン又はヒドロキシ酢酸イオンが好ましい。
【0023】
カチオン性グラフト重合体は上記定義において、
前記少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)が、一般式(6)で表される化合物である、ポリアミングラフト重合体(ただし、一般式(6)中のRは、置換又は非置換の1価の炭化水素基である。)であってよい。
【化7】
【0024】
カチオン性グラフト重合体は上記定義において、
前記少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)が、一般式(7)で表される化合物であって、(1)式中R、R、R、及びRが、水素原子である、エチレンオキサイド、(2)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中に水酸基を含む炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(3)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または置換若しくは非置換の1価の炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)エポキシ化合物、(4)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にエーテル結合を含む炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(5)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子またはハロゲンである(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(6)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または不飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(7)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または脂環式または不飽和結合を有する環式炭化水素基を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(8)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または芳香環もしくは複素環を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(9)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子またはエポキシ環を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、多官能エポキシ化合物、(10)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にアルコキシシリルを含む炭素数3〜12の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(11)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にフッ素を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(12)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にカルボキシル基を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(13)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にエステル結合もしくはアミド結合を含む炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、並びに(14)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にスルホン酸エステル基を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、からなる群より選ばれる、ポリアミングラフト重合体であってよい。
【化8】
【0025】
また、「少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)」としては、エチレンオキサイド(構造は、下式参照)、
【化9】
【0026】
グリシドール(構造は、下式参照)、
【化10】
【0027】
プロピレンオキサイド(構造は、下式参照)、
【化11】

ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、1,2−エポキシヘキサン、及び1,2−エポキシヘキサデカン、
【0028】
グリシジルメチルエーテル(構造は、下式参照)、
【化12】

エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、及びトリグリシジルイソシアヌレート
【0029】
エピクロリヒドリン(構造は、下式参照)、
【化13】

エピブロモヒドリン、及び2−(クロロメチル)−1,2−エポキシブタン
【0030】
1,3−ブタジエンモノオキサイド(構造は、下式参照)、
【化14】

1,2−エポキシ−5−ヘキセン、及びアリルグリシジルエーテル
【0031】
1,2−エポキシシクロペンタン(構造は、下式参照)、
【化15】

1,2−エポキシシクロヘキサン、及び1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン3,4−エポキシテトラヒドロフラン
【0032】
スチレンオキサイド(構造は、下式参照)、
【化16】

グリシジルフェニルエーテル、及び4−グリシジルオキシカルバゾール
【0033】
1,2:3,4−ジエポキシブタン(構造は、下式参照)、
【化17】

1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、及びエチレングリコールジグリシジルエーテル
【0034】
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(構造は、下式参照)、
【化18】

及び3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン
【0035】
1,2−エポキシ−1H,1H,2H,3H,3Hヘプタデカフルオロウンデカン(構造は、下式参照)
【化19】
【0036】
エポキシコハク酸(構造は、下式参照)
【化20】
【0037】
グリシジルブチレート(構造は、下式参照)、
【化21】

及びN−グリシジルフタルイミド、並びに、
【0038】
グリシジルニトロベンズスルホネート(構造は、下式参照)、
【化22】

及びグリシジル−p−トルエンスルホネートなどを挙げることができるが、これらには限定されない。
【0039】
カチオン性グラフト重合体は上記定義において、
前記エチレン系不飽和単量体(c)が、ビニル系単量体、スチレン系単量体、メタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、アクリルアミド系単量体、アリル系単量体、ジアリル系単量体、及び不飽和カルボン酸からなる群より選ばれる、ポリアミングラフト重合体であってよい。
エチレン系不飽和単量体(c)の分子量には特に制限はないが、グラフト効率などの観点から、分子量28から1100であることが好ましく、28から500であることが特に好ましい。
エチレン系不飽和単量体(c)の炭素原子数にも特に制限はないが、2個から50個であることが好ましく、2個から30個であることが特に好ましい。
【0040】
エチレン系不飽和単量体(c)のうち本発明において好ましく用いられる単量体のより具体的な例としては、スチレン、ジビニルベンゼン、p−スチレンスルホン酸ナトリウム水和物、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、酢酸ビニル、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、アクリロニトリル、アリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン塩酸塩、ジメチルジアミン塩酸塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、特にその60%水溶液、ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、などを挙げることができる。これらのうち、幹ポリマー上のヒドロキシ基と隣接した炭素との反応性、グラフト後の側鎖末端の基の有用性などの観点から、ジメチルアクリルアミド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、スチレン、アクリロニトリルなどが特に好ましい。
これらの単量体の化学構造、CAS番号等は、当業者において自明であるので、その記載を省略する。
【0041】
エチレン系不飽和単量体(c)は、本発明の目的に応じて、1種類のみを単独で使用することもできるし、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。2種類以上のエチレン系不飽和単量体(c)を組み合わせて使用する場合、その全てが上記の好ましい例に該当するものであってもよいし、その一部のみが上記の好ましい例に該当するものであってもよい。
【0042】
カチオン性グラフト重合体に含まれる単位重量当たりのアミノ基の量は、0.1〜17mmol/gであることが好ましく、1〜10mmol/gであることが特に好ましい。また平均粒子径はカチオン性グラフト重合体を固相面に固定しない場合は250nm以下が好ましく、100nm〜200nmがより好ましい。
【0043】
「カチオン性グラフト重合体」の一態様として以下のグラフト重合体が挙げられる。
【0044】
(1)プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジメチルアクリルアミドとのグラフト重合体
20質量%のポリアリルアミン(重量平均分子量3000)を氷水で冷却及び撹拌しながらプロピレンオキシド(アミンに対し2当量)を滴下した。20℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
上記に従い調製した42質量%のプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに、14質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH10であった。次に65質量%のジメチルアクリルアミド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液12.01g(モノマーに対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジメチルアクリルアミドのグラフト重合体を水溶液として得た(重量平均分子量120000)。
【0045】
(2) プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体
(1)と同様に調製した50質量%のプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに、30質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH10であった。次に65質量%ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)を加えた。さらに28.5質量%のAPS水溶液96.08g(モノマーに対して20モル%)を分割して加え72時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た(重量平均分子量24000)。
【0046】
(3) プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンとのグラフト重合体
20質量%のポリアリルアミンを氷水で冷却及び撹拌しながらプロピレンオキシド(アミンに対し0.1当量)を滴下した。20℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに20質量%となるように水を加え、次にスチレン (アミンに対し0.3当量)を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12で あった。その後、28.5質量%のAPS水溶液12.01g(モノマーに対して20モル%)を滴下し、24時間重合させた。その後70℃で24時間加温し、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンの以下に推定される構造のグラフト重合体を得た(ただし、下記一般式中、qは0から3,000の整数であり、rは0から3,000の整数であり、sは0から3,000の整数であり、tは0から10,000の整数であり、uは0から10,000の整数であり、wは0から10,000の整数である)。平均粒径は、120nmであった。
【化23】

【0047】
(4) プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジメチルアクリルアミドとのグラフト重合体の製造(pH7での製造)
(1)と同様に調製した42質量%のプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに、14質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。次に35質量%の塩酸を加えpHを7に調整し、ジメチルアクリルアミド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液12.01g(モノマーに対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジメチルアクリルアミドのグラフト重合体を水溶液として得た(重量平均分子量210000)。
【0048】
(5)エポキシオクタン変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体
20質量%のポリアリルアミンに13質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらエポキシオクタン(アミンに対し0.1当量)を滴下した。滴下終了後40℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、エポキシオクタン変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
上記に従い調製した30質量%のエポキシオクタン変性ポリアリルアミンに、19質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液14.42g(モノマーに対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液14.42g(モノマーに対して10モル%)を分割してさらに追加し、エポキシオクタン変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
【0049】
(6)エチレングリコールジグリシジルエーテル変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体
20質量%のポリアリルアミンに13質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらエチレングリコールジグリシジルエーテル(アミンに対し0.05当量)を滴下した。滴下終了後40℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、エチレングリコールジグリシジルエーテル変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
上記に従い調製した30質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル変性ポリアリルアミンに、19質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液14.42g(モノマーに対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させ、エチレングリコールジグリシジルエーテル変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を黄色ゲルとして得た。
【0050】
(7)スチレンオキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体
20質量%のポリアリルアミンに13質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらスチレンオキシド(アミンに対し0.1当量)を滴下した。滴下終了後40℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、スチレンオキシド変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
上記に従い調製した30質量%のスチレンオキシド変性ポリアリルアミンに、19質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液14.42g(モノマーに対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液14.42g(モノマーに対して10モル%)を分割してさらに追加し、スチレンオキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
【0051】
(8)グリシジルブチレート変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体
20質量%のポリアリルアミンに13質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらグリシジルブチレート(アミンに対し0.1当量)を滴下した。滴下終了後40℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、グリシジルブチレート変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
上記に従い調製した30質量%のグリシジルブチレート変性ポリアリルアミンに、19質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液14.42g(モノマーに対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液14.42g(モノマーに対して10モル%)を分割してさらに追加し、グリシジルブチレート変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
【0052】
(9)プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンとのグラフト重合体
(3)と同様に調製したプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに20質量%となるように水を加え、次にスチレン (アミンに対し0.3当量)を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。その後、28.5質量%のSPS水溶液12.53g(モノマーに対して20モル%)を滴下し、24時間重合させた。その後70℃で24時間加温し、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンのグラフト重合体を得た。平均粒径は、135nmであった。
【0053】
(10)プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンとのグラフト重合体
(3)と同様に調製したプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに20質量%となるように水を加え、次にスチレン (アミンに対し0.3当量)を加え、80℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。その後、28.5質量%のAPS水溶液12.01g(モノマーに対して20モル%)を滴下し、24時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンのグラフト重合体を得た。平均粒径は、144nmであった。
【0054】
(11)グリシドール変性ポリジアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体
ジアリルアミンに79質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらグリシドール(アミンに対し1当量)を滴下した。滴下終了後45℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、グリシドール変性ジアリルアミンを水溶液として得た。
78質量%のグリシドール変性ジアリルアミンに35質量%の塩酸(アミンに対し1当量)を加えた。その後、50質量%となるように水を加え、60℃に加温し、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩(モノマーに対し6モル%)を分割して加え、24時間重合させた。得られた溶液を電気透析によって精製し、グリシドール変性ポリジアリルアミンを水溶液として得た。
上記に従い調製した、43質量%のグリシドール変性ポリジアリルアミンに30質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH11であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液36.04g(モノマーに対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液36.04g(モノマーに対して10モル%)を分割してさらに追加し、50℃で24時間重合させ、グリシドール変性ポリジアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た(重量平均分子量84000)。
【0055】
(12)プロピレンオキシド変性ポリエチレンイミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体
47質量%のポリエチレンイミン(重量平均分子量2000)を撹拌しながらプロピレンオキシド(アミンに対し0.1当量)を滴下した。20℃にて24時間反応させ、プロピレンオキシド変性ポリエチレンイミン水溶液を得た。
上記に従い調製した50質量%のプロピレンオキシド変性ポリエチレンイミンに、14質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液31.23g(モノマーに対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリエチレンイミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
【0056】
(13)プロピレンオキシド変性ポリビニルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体
15質量%のポリビニルアミン(重量平均分子量150000)を撹拌しながらプロピレンオキシド(アミンに対し0.1当量)を滴下した。20℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、23質量%のプロピレンオキシド変性ポリビニルアミン水溶液を得た。
上記に従い調製した23質量%のプロピレンオキシド変性ポリビニルアミンに、15質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液31.23g(モノマーに対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリビニルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
【0057】
(14)プロピレンオキシド変性ポリジアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体
ジアリルアミンに78質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらプロピレンオキシド(アミンに対し0.1当量)を滴下した。20℃にて24時間反応させ、プロピレンオキシド変性ジアリルアミンを水溶液として得た。
79質量%のプロピレンオキシド変性ジアリルアミンに35質量%の塩酸(アミンに対し1当量)を加え、59質量%のプロピレンオキシド変性ジアリルアミン塩酸塩を水溶液として得た。得られた59質量%のプロピレンオキシド変性ジアリルアミン塩酸塩41.33gに7質量%となるように水を加え、60℃に加温した。その後、59質量%のプロピレンオキシド変性ジアリルアミン塩酸塩123.99gと2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩(単量体に対し5.6モル%)を分割して加え、24時間重合させた。得られた溶液を電気透析によって精製し、プロピレンオキシド変性ポリジアリルアミンを水溶液として得た。
上記に従い調製した30質量%のプロピレンオキシド変性ポリジアリルアミンに、24質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)を分割してさらに追加し、60℃で24時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリジアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た(重量平均分子量19000)。
【0058】
(15)プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体(重量平均分子量2000、アミンに対してプロピレンオキシド0.1当量添加したプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンを使用)
15質量%のポリアリルアミン(重量平均分子量1600)を氷水で冷却及び撹拌しながらプロピレンオキシド(アミンに対し0.1当量)を滴下した。20℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
上記に従い調整した30質量%のプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに、18質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH10であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)を分割してさらに追加し、60℃で24時間重合させ、プロピレンキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た(重量平均分子量16000)。
【0059】
(16)プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンと2−ビニルピリジンとのグラフト重合体
(3)と同様にして調整したプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに20質量%となるように水を加えた。次に2−ビニルピリジン (アミンに対し0.3当量)を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。その後、28.5質量%のAPS水溶液12.01g(単量体に対して20モル%)を滴下し、24時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンと2−ビニルピリジンのグラフト重合体を得た。平均粒径は、225nmであった。
出発原料等から、得られたグラフト重合体は下式の構造を有するものと推定された(ただし、下記一般式中、qは0から3,000の整数であり、rは0から3,000の整数であり、sは0から3,000の整数であり、tは0から10,000の整数であり、uは0から10,000の整数であり、wは0から10,000の整数である)。
【化24】
【0060】
「試料」とは検出対象となる「対象物」を含むと考えられる混合物である。「試料」はヒトを含む生体(例えば血液、唾液、体液、体組織等)、環境(例えば、土壌、海水、環境水(温泉水、浴槽水、冷却塔水等))、あるいは人工物又は自然物(例えば、パンなどの加工食品、ヨーグルトなどの発酵食品、或いは米や小麦などの栽培植物、微生物、ウィルス)に由来するものである。
必要に応じてこれらを精製分離処理操作した後のものであってもかまわない。たとえば、血液から得られる血漿(blood plasma)ないし血清(blood serum)がこれにあたる。
また、金属イオン塩を加えたものであってもかまわない。
【0061】
さらに「試料」には界面活性剤が含まれていてよく、「対象物」を検出する前に界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、Triton(登録商標)系界面活性剤(ポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテルなど)、Tween(登録商標)系界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなど)、Brij(登録商標)系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルなど)、スクロースラウレート(同仁化学)、サポニン(シグマ・アルドリッチ)、BPSH(NIKKOL)、ノイゲンTDS−70(第一工業製薬)、TritonX−705(シグマ・アルドリッチ)などがこれにあたる。
【0062】
「対象物」とは本発明により検出すべき物である。限定されないが、マイナスチャージを持ちうる物であることが好ましい。たとえば、細胞、真菌、細菌、ウィルス及びこれらの分解物、ならびにペプチド、核酸などが含まれる。
細胞とは生体内に存在するものだけでなく、培養細胞であってもかまわない。また正常な細胞だけでなく、がん細胞(たとえば血中循環がん細胞(CTC))であってもよい。
真菌とは一般にキノコ・カビ・酵母と呼ばれる生物の総称であり、白癬菌、カンジダ、ならびにアスペルギルスなどがこれにあたる。
細菌とは細胞膜を持つ原核生物である。ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、結核菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、ならびにレンサ球菌などがこれにあたる。
ウィルスとは、他の生物の細胞を利用して、自己を複製させることのできる微小な構造体で、タンパク質の殻とその内部に入っている核酸からなるものである。ノロウイルス、ロタウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、ならびにHIVなどがこれにあたる。
細胞、真菌、細菌及びウィルスの分解物とは、これらを構成する因子であり、各オルガネラ(核、ゴルジ体、ミトコンドリアなど)、細胞、真菌、細菌の膜画分などのリン酸脂質を含むもの(反転小胞を含む)、細胞、真菌、細菌及びウィルスを構成する因子の複合体などであってもかまわない。また正常な細胞などには存在しないが、アポトーシスによって生じる微小な膜小胞(たとえばEndotherialMicroparticle:EMP)やベクシルであってもよい。
ペプチドとは様々なアミノ酸がつながってできた分子の系統群を指す、生体内で機能している完全なたんぱく質を含み、様々ないわゆる翻訳後修飾(たとえばグリコシル化:糖鎖修飾)を含んでもよい。
核酸とはデオキシリボヌクレオチド(DNA)、リボヌクレオチド(RNA)及びこれらの混合物及び結合物であってもよい。またその構成塩基は天然に存在するヌクレオチド、例えばグアニン(G),アデニン(A),チミン(T),シトシン(C)、ウラシル(U)であるが、それ以外の天然及び人工の修飾塩基を含んでいてもよい。ここで「修飾塩基」とは、上記5つのヌクレオチドが化学的修飾を受けた塩基を意味する。これに限定されないが、メチルシチジン、シュードウリジン、4−チオウリジン、ジヒドロウリジン、キューオシン、ヒポキサンチン(イノシン(I))等がこれにあたる。RNAを鋳型とした逆転写反応により作製されるcDNAも含まれる。
【0063】
「塩基性条件下」とは、pH8以上、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、さらに好ましいのはpH11以上を指す。塩基性溶液を用いて、塩基性条件にするのが好ましい。塩基性溶液として弱塩基、NaOH水溶液などの強塩基、あるいはpH8以上で緩衝能をもつbuffer(例えば、グリシンbuffer、CHES、CAPS)などがあげられる。
【0064】
カチオン性グラフト重合体と標的物を含む試料と「接触」させるとは、カチオン性グラフト重合体溶液を試料に加える態様以外に、該試料にカチオン性グラフト重合体を加える態様も含まれる。
【0065】
「結合」とはカチオン性グラフト重合体と対象物が配位結合及び/又はイオン結合にて相互作用している状態を指す。
【0066】
結合体を「分離」するとは、結合体を酸性条件下または、キレート剤存在下、カチオン性グラフト重合体と対象物との上記「結合」をほどくことを指す。
酸性条件下とは、pH7以下、好ましくはpH6以下、より好ましくはpH5以下を指す。酸性溶液を用いて、酸性条件にするのが好ましい。酸性溶液としてはグリシンbuffer、ギ酸溶液、酢酸溶液などがあげられる。
キレート剤としてはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)などがこれにあたる。キレート剤のプロトンが乖離しているpHであれば限定されないが、pHは6.0からpH8.0が好ましい。
【0067】
「標的物を溶出する」とは、上記「分離」反応後、標的物を適当な溶液中に可溶化することを指す。標的物が生きている細胞である場合は、細胞膜を壊すことなく回収することを指す。
【0068】
二価又は三価の金属イオンとは、Mg2+、Ba2+、Ca2+、Sr2+、Ni2+,Zn2+、Mn2+、Co2+,Fe2+、Fe3+、Al3+、Cr3+、Cu2+、Cd2+、Sn2+などがこれにあたる。
【0069】
「固相面に固定」とは、「カチオン性グラフト重合体」を偏在させることを指す。これに限定されないが、具体的にはガラス、ナイロンメンブレン、半導体ウェハー、マイクロビーズ、ラテックスビーズ、磁気ビーズやコロイド粒子などの表面に「カチオン性グラフト重合体」を固定又はコーティングすることを意味する。固定の方法は公知の技術を用いて、直接「カチオン性グラフト重合体」をガラス等の表面に固定してもよいし、あるいはリンカー分子を介して間接的に固定させてもよい。また、モノマーを固相面で重合させて固相面に固定されたカチオン性グラフト重合体を合成してもよい。
また、カラムなどに「カチオン性グラフト重合体」を充填した状態であってもよい。
【0070】
「結合体を洗浄する」とは「カチオン性グラフト重合体」と「標的物」の結合を維持したまま、非特異的にカチオン性グラフト重合体に結合している、不純物を取り除く操作を指す。洗浄には、結合反応に用いた溶液と同じ溶液を使ってもよいし、他の溶液であってもかまわない。生理食塩水やアルコール類であってもかまわない。
【0071】
「標的物と結合していないカチオン性グラフト重合体を凝集させる」とは、疎水的相互作用によって、カチオン性グラフト重合体を分離する、またはカウンターとなるポリアニオンやアニオン性界面活性剤によって、イオン性相互作用によりカチオン性グラフト重合体を凝集させ分離する方法等が挙げられる。より詳細には凝集液(非プロトン性極性溶媒(アセトニトリルなど)もしくは、アニオン性界面活性剤(オクタンスルホン酸Naやデカンスルホン酸Naなど)や、ポリアニオン(カルボキシメチル化ポリアリルアミン:CMPAA)などを含む)を用いて、アセトニトリルの疎水性相互作用や、ポリアニオン、イオン性界面活性剤とのイオン性相互作用によりカチオン性グラフト重合体を凝集させる。
【0072】
上記「カチオン性グラフト重合体」、「反応液」、「洗浄液」、「分散液」及び「凝集液」には液体状(「カチオン性グラフト重合体」にあっては乳化状)のものだけでなく、その液体を乾燥させたものを含んでもよい。
【実施例】
【0073】
以下の実施例、比較例及び参考例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
<実施例1>
大腸菌の分離、および回収率の確認
1.方法
カチオン性グラフト重合体を用いて回収した大腸菌の回収率を血球分析装置(シスメックス)を用いて求めた。
試料、および試薬は以下の通りである。
1)試料
大腸菌はバイオラッド社製のGFP発現Kitを用いて作製した。
作製した大腸菌をノーマルヒト血清中に必要量(1〜2×10cell/μL) 添加したものを試料として用いた。
2)試薬
I : 反応液:1M グリシン−NaOH pH11.0、3M 塩化マグネシウム
II: 分散液:500mM グリシン-HCl pH5.0
3)カチオン性グラフト重合体
20質量%のポリアリルアミン(重量平均分子量3000)を氷水で冷却及び撹拌しながらプロピレンオキシド(アミンに対し0.1当量)を滴下した。20℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに20質量%となるように水を加え、次にスチレン (アミンに対し0.3当量)を加え、20℃で撹拌した。その後、濃度28.5質量%の過硫酸アンモニウム(APS)水溶液12.01g(モノマーに対して20モル%)を滴下し、24時間重合させた。その後70℃で24時間加温し、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンのカチオン性グラフト重合体を得た(平均粒径120nm)(上記(3)プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンとのグラフト重合体)。
4)血球分析装置
大腸菌は血球分析装置で血小板(PLT)に検出される。
測定は血球分析装置のプロトコルに従い行った。
【0075】
大腸菌の分離、および回収率の確認は以下のようにして行った。
試料500μLと20%カチオン性グラフト重合体50μL、および反応液100μLを混合し、1分間反応させた。その後、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、沈殿凝集塊を得た。上清を回収し、得られた沈殿凝集塊を分散液500μLで完全に分散し分散溶液を得た。上清、および分散溶液は血球分析装置を用いて大腸菌の回収率を求めた。また、対照としてカチオン性グラフト重合体と反応させる前の大腸菌を用いた。
【0076】
2.結果
血球分析装置の測定結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1の結果から回収率は約70%であり、良好な回収率を得た。
【0079】
<実施例2>
分離した大腸菌の生存確認
1.方法
カチオン性グラフト重合体を用いて血液中の大腸菌を分離し、分離した大腸菌の生存を培養にて確認した。
試料、および試薬は以下の通りである。
1)試料
実施例1と同様にバイオラッド社製のGFP発現Kitを用いて作製した大腸菌をノーマルヒト血清中に必要量添加し試料として用いた。
2)試薬
I : 反応液:1M グリシン−NaOH pH11.0、3M 塩化マグネシウム
II: 分散液:500mM グリシン−HCl pH5.0
3)カチオン性グラフト重合体
実施例1と同様に調製した。
【0080】
大腸菌の分離、および生存確認は以下のようにして行った。
試料500μLと20%カチオン性グラフト重合体50μL、および反応液100μLを混合し、1分間反応させた。その後、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、沈殿凝集塊を得た。上清を除去し、得られた沈殿凝集塊を分散液500μLで完全に分散し分散溶液を得た(図2)。上清、および分散溶液の5000分の1量をLB細菌培養寒天培地を用いて37℃で18時間培養し、生存を確認した(図3)。
また、比較例として実施例と同様の方法で凝集沈殿塊を得た後、1.5M NaCl溶液500μL(比較例1)と1.5%TritonX−100 500μL(比較例2)をそれぞれ添加し、凝集塊を完全に分散させた。それぞれの上清、および分散溶液を実施例と同様の方法で培養し生存を確認した。
【0081】
2.結果
培養結果を表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
表2の結果より、本発明方法を用いることにより細菌を溶菌することなく生存した状態で回収可能といえる。
【0084】
<実施例3>
質量分析器での測定
1.方法
カチオン性グラフト重合体を用いて回収した大腸菌をMALDI TOF (マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型)質量分析器MALDI BioTyper(登録商標)(ブルカー・ダルトニクス)を用いて細菌同定を行った。
試料、および試薬は以下の通りである。
1)試料
大腸菌はバイオラッド社製のGFP発現Kitを用いて作製した。
作製した大腸菌を生理食塩水中に必要量添加したものを試料として用いた。
2)試薬
I :反応液:1M グリシン−NaOH pH11.0、3M 塩化マグネシウム
II :分散液:70% ギ酸
III:凝集液:100% アセトニトリル
3)カチオン性グラフト重合体
実施例1と同様に調製した。
4)質量分析器
マトリクスはブルカー・ダルトニクス社のmatrix HCCA portionedを用いた。
測定はMALDI BioTyper(登録商標)のプロトコルに従い行った。細菌同定の判定はBioTyper(登録商標)に指定するスコアにより評価した。
【0085】
大腸菌の分離、および質量分析器の測定は以下のようにして行った。
試料500μLと20%カチオン性グラフト重合体50μL、および反応液100μLを混合し、1分間反応させた。その後、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、沈殿凝集塊を得た(図1)。上清を除去し、得られた沈殿凝集塊を分散・抽出液50μLで完全に分散させ、菌体中のタンパク質を抽出した。その後、凝集液200μLを添加し、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、カチオン性グラフト重合体を沈殿させた。上清を回収し、質量分析器の測定用試料とした。
【0086】
2.結果
質量分析器の測定結果を表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
表3の結果から同定スコアが1.7以上であり、良好な同定精度を得た。この結果から、大腸菌中のタンパク質の抽出、および質量分析器での測定が可能といえる。
【0089】
<実施例4及び5>
血清中の核酸の分離、および回収率の確認
1.方法
カチオン性グラフト重合体を用いて血清中に添加した核酸を分離し、得られた核酸はアガロース電気泳動を行い、SYBR Safe(invitrogen)を用いて染色し、LAS4000(GE)により検出した。回収率はスポットの蛍光強度から求めた。
試料、および試薬は以下の通りである。
1)試料
核酸はプラスミドとゲノムを対象とした。プラスミドは大腸菌から抽出し(実施例4)、ゲノムはHela細胞から抽出した(実施例5)。抽出したプラスミド溶液はLB細菌培養寒天培地を用い培養し、コロニーが形成されなかったことから大腸菌の混入がないことを確認した。また、抽出したゲノム溶液は蛍光顕微鏡にて、細胞が混入していないことを確認した。
抽出したDNAをノーマルヒト血清中に必要量添加し試料とした。また、対照としてDNA未添加のノーマルヒト血清を用いた。
2)試薬
I : 反応液:1M グリシン−NaOH pH11.0、3M 塩化マグネシウム
II: 分散液:500mM EDTA−2Na pH8.0
3)カチオン性グラフト重合体
実施例1と同様に調製した。
4)電気泳動
1.0%アガロースゲルを用いた。
電気泳動用のサンプル調整は6×Loading Dye(TOYOBO)を用いた。
【0090】
核酸の分離、および検出方法は以下のようにして行った。
試料500μLと20%カチオン性グラフト重合体50μL、および反応液100μLを混合し、1分間反応させた。その後、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、沈殿凝集塊を得た。上清、および分散溶液にnacalai tesqueの核酸抽出用試薬フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール(25:24:1)500μL添加し、フェノール相、および水相に分離した。水相中のDNAを300μL回収し、エタノールを600μLおよび酢酸ナトリウム水溶液30μLを混合し、エタノール沈殿によりDNAを沈殿させた。沈殿物は蒸留水100μLで懸濁し、Loading Dyeと混合し電気泳動用の試料とした。1%アガロースゲルを用いて電気泳動を行ない、SYBR Safeにより染色した後、LAS4000にて蛍光検出した(図4)。
【0091】
2.結果
DNA回収量を表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
表4の結果からプラスミドDNAの回収率は60%、ゲノムDNA回収率は40%であった。
【0094】
<実施例6>
血清中の細胞の分離、回収率、および立体構造・表面構造の確認
1.方法
カチオン性グラフト重合体を用いて血清中に添加した細胞を分離した。細胞の回収率は血球分析装置(シスメックス)を用いて確認した。さらに細胞表面の抗原抗体反応を蛍光顕微鏡(Life technologies)を用いて確認した。
試料、および試薬は以下の通りである。
1)試料
細胞はHela細胞を用い、ノーマルヒト血清中に必要量(1〜2×10cell/mL)添加したものを試料として用いた。
2)試薬
I : 反応液:1M グリシン−NaOH pH11.0、3M 塩化マグネシウム
II: 分散液:500mM EDTA−2Na pH8.0
3)カチオン性グラフト重合体
実施例1と同様に調製した。
4)血球分析装置
細胞はWBCとして測定される。
測定は実施例1同様に血球分析装置のプロトコルに従い行った。
5)抗体
一次抗体は抗ヒトCD146(MCAM)、モノクローナル抗体(N1238)(MONOSAM)を50倍希釈し用いた。
二次抗体はAnti−Mouse IgG Alexa Fluor 594(ライフテクノロジー)を500倍希釈し用いた。
一次抗体、および二次抗体を遮光状態で1時間転倒混和により反応させ、蛍光標識抗体を調製した。
【0095】
細胞の分離方法、および検出方法は以下のようにして行った。
試料500μLと20%カチオン性グラフト重合50μL、および反応液100μLを混合し、1分間反応させた。その後、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、沈殿凝集塊を得た。上清を回収し、得られた沈殿凝集塊を分散液500μLで完全に分散した(図5)。回収した上清、および得られた分散溶液は血球分析装置を用いて回収率を測定した。対照としてカチオン性グラフト重合体と反応させていない細胞を用いた。
次いで、分散溶液を蛍光標識抗体と混合し、遮光状態で1時間転倒混和により反応させ、蛍光顕微鏡にて抗原抗体反応を確認した(図6)。
【0096】
2.結果
血球分析装置でのWBC測定値を表5に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
表5の結果から細胞の回収率は98%であり、良好な回収率を得た。
血球分析装置は核を持つ物質をWBCとして測定することから、本発明方法を用いることで、細胞は立体構造を維持した状態で回収可能といえる。
また、Hela細胞とMCAM抗体の抗原抗体反応を蛍光顕微鏡により確認した。この結果から、細胞の表面構造を維持した状態で回収可能といえる。
【0099】
<実施例7>
血清中のベシクルの分離、回収率、および立体構造・表面構造の確認
1.方法
カチオン性グラフト重合体を用いて血清中に添加したベシクルを分離した。ベシクルの回収率は血球分析装置を用いて確認した。また、分離したベシクルの立体構造、および表面構造を維持しているかは蛍光顕微鏡(Life technologies)を用いて確認した。
試料、および試薬は以下の通りである。
1)試料
ベシクルはHela細胞をソニケータで破砕し作製した。
ベシクルを蛍光顕微鏡で観察するために、細胞破砕はDyLight 488 Antibody Labeling kit(Thermo)付属の蛍光色素(DyLight,Ex/Em:493/518)水溶液中で行ないベシクル内部に蛍光色素を取り込ませた。
作製したベシクルをノーマルヒト血清中に必要量添加し試料として用いた。
2)試薬
I : 反応液:1M グリシン−NaOH pH11.0、3M 塩化マグネシウム
II: 分散液:500mM EDTA−2Na pH8.0
3)カチオン性グラフト重合体
実施例1と同様に調製した。
4)血球分析装置
ベシクルはWBCとして測定される。
測定は実施例1と同様に血球分析装置のプロトコルに従い行った。
5)抗体
一次抗体は抗ヒトCD146(MCAM)、モノクローナル抗体(N1238)(MONOSAM)を50倍希釈し用いた。
二次抗体はAnti−Mouse IgG Alexa Fluor 594(ライフテクノロジー)を500倍希釈し用いた。
一次抗体、および二次抗体を遮光状態で1時間転倒混和により反応させ、蛍光標識抗体を調製した。
【0100】
ベシクルの分離方法、および検出方法は以下のようにして行った。
試料500μLと10%カチオン性グラフト重合体100μL、および反応液50μLを混合し、1分間反応させた。その後、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、沈殿凝集塊を得た。上清を回収し、得られた沈殿凝集塊を分散液500μLで完全に分散し、分散溶液を得た(図7)。回収した上清、および得られた分散溶液は血球分析装置を用いて回収率を測定した。対照としてカチオン性グラフト重合体と反応させていないベシクルを用いた。
次いで、分散溶液を蛍光標識抗体と混合し、遮光状態で1時間転倒混和により反応させ、蛍光顕微鏡にて抗原抗体反応を確認した(図8)。
【0101】
2. 結果
血球分析装置でのベシクル測定値を表6に示す。
【0102】
【表6】
【0103】
表6の結果からベシクルの回収率は82%であり、良好な回収率を得た。
また、分散溶液中のベシクルが蛍光色素を取り込んだままの状態であり、そのベシクルの淵に蛍光標識抗体が取り囲んでいる様子を蛍光顕微鏡で確認した。この結果から、ベシクルの立体構造、および表面構造を維持した状態で回収可能といえる。
【0104】
<参考例1>
ウィルス粒子の分離、回収確認
1.方法
タンパク質の殻とその内部に入っている核酸からなるウィルスのモデルとして、バクテリオファージを用いる。一定力価(titer)のファージ溶液を調整し、本発明の方法でバクテリオファージを回収し、回収後力価を大腸菌を溶菌させたプラークをカウントすることにより計算する。
1)試料
バクテリオファージ
宿主大腸菌
2)試薬
I : 反応液:1M グリシン−NaOH pH11.0、3M 塩化マグネシウム
II: 分散液:500mM グリシン−HCl pH5.0
3)カチオン性グラフト重合体
実施例1と同様に調製した。
【0105】
バクテリオファージの分離方法、および検出方法は以下のようにして行った。
バクテリオファージ試料500μLと10%カチオン性グラフト重合体100μL、および反応液50μLを混合し、1分間反応させた。その後、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、沈殿凝集塊を得た。上清を回収し、得られた沈殿凝集塊を分散液500μLで完全に分散し、分散溶液を得た。得られた溶液を段階希釈し、希釈した溶液を宿主大腸菌培養液と混合し、軟寒天に加えて、寒天プレート上で一晩培養し、そのプラーク数から回収できたファージの力価を計算する。
【0106】
<実施例8>
界面活性剤入り溶液にて回収した細菌の生存確認
1.方法
採血管の分離剤上に沈殿した大腸菌を非イオン性界面活性剤入り溶液を用いて、生存した状態で大腸菌を回収させる。
試料、および試薬は以下の通りである。
1)試料
大腸菌はバイオラッド社製のGFP発現Kitを用いて作製した。
生 理食塩水中に作製した大腸菌2×10cell/mLを添加したものを試料として用いた。
2)試薬
I :1% 界面活性剤溶液
界面活性剤は実験1〜6として、スクロースラウレート(同仁化学)、サポニン(シグマ・アルドリッチ)、BPSH(NIKKOL)、ノイゲンTDS−70(第一工業製薬)、TritonX−705(シグマ・アルドリッチ)、またはCHAPS(同仁化学)を用いた。
【表7】

II :反応液:1M グリシン pH11.0、3M 塩化マグネシウム
III:分散液:500mM グリシン pH5.0
3)カチオン性グラフト重合体
実施例1と同様に調製した。
【0107】
菌体の回収と生存確認は以下のようにして行った。
生理食塩水中に大腸菌を分散させた菌液3mLを採血管に加え、遠心3000rpm、5分間遠心を行った後、上清を除去する。つぎに1%界面活性剤溶液0.5mLを採血管に添加し、分離剤表面に沈殿した菌体を分散させる。
菌体分散液は20℃で30分間、および3時間静置後、10%カチオン性グラフト重合体100μL、および反応液100μLを混合し、1分間反応させた。その後、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、沈殿凝集塊を得た。上清を除去し、得られた沈殿凝集塊を分散液500μLで完全に分散し分散溶液を得た。分散溶液の100分の1量をLB細菌培養寒天培地を用いて37℃で18時間培養し、コロニー数にて生菌数を確認した。
対照として、界面活性剤溶液の代わりに生理食塩水を用いた(対照1)。
【0108】
2.結果
培養後の試料におけるコロニー数を表8に示す。
【表8】
【0109】
実験1〜5で用いた非イオン性界面活性剤、特にスクロースラウレートを用いた際に細菌を生きたまま回収することが可能である。
【0110】
<実施例9>
界面活性剤入り溶液を用いて回収した大腸菌の質量分析器での測定
1.方法
採血管の分離剤上に沈殿した大腸菌を界面活性剤入り溶液用いて回収し、カチオン性ポリマーと反応後、70%アセトニトリルにより反応物を洗浄することにより血液成分の影響を抑え、かつ質量分析器での測定が可能な試料を調製した。
試料、および試薬は以下の通りである。
1)試料
大腸菌はバイオラッド社製のGFP発現Kitを用いて作製した。
全血と作製した大腸菌を細菌培養用の培養ボトル(BD社)に2×10cell/mL添加したものを試料として用いた。
2)試薬
I :回収液:0.1% 界面活性剤
II :反応液1:1M グリシン pH11.0
III:反応液2:3M 塩化マグネシウム
IV :洗浄液:70% アセトニトリル
V :抽出液:70% ギ酸
VI :分離液:100% アセトニトリル
3)カチオン性グラフト重合体
実施例1と同様に調製した。
4)電気泳動
E−R155e−パジェル 15%ゲル(ATTO)を用いた。
ゲル染色は2D−銀染色試薬II(コスモ・バイオ)を用いた。
5)質量分析
Auto FlexII(Bruker)のflexControl 2.0を用い取扱い説明書に従って測定をおこなった。
マススペクトル解析は、flexAnalysisを用いた。
【0111】
血液成分除去の確認は以下のようにして行った。
採血し、得られた血液10mLを培養ボトルに加え、そこから3mLを採血管に移す。採血管は3000rpm、5分間の遠心を行い、血球成分と菌体を分離する。採血管中の分離剤表面に吸着した大腸菌は回収液500μLを添加し、1.5mLチューブに回収した。ここで回収液に含まれる界面活性剤として実験7〜12ではスクロースラウレート、ノイゲンXL60、サポニン、BPSH、TritonX−705、CHAPSを用いた。
また対照2として、回収液に加える界面活性剤の代わりに蒸留水を用いて回収を検討した。回収溶液の入ったチューブに10%カチオン性グラフト重合体100μL、反応液1、および反応液2をそれぞれ100μL混合し、1分間反応させた。その後、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、凝集沈殿塊を得た。上清を除去し、得られた凝集沈殿塊を洗浄液500μLで完全に分散し、卓上遠心機にて30秒間遠心し、凝集沈殿塊を得た。上清は1.5チューブに回収し、試料1とした。凝集沈殿塊は抽出液50μLに完全に分散後、凝集沈殿液150μLを加え、卓上遠心機にて30秒間遠心した。その上清を新しい1.5チューブに移し、試料2とした。
これらはAuto FlexIIにてマススペクトルを測定した。
また、夾雑物の影響を確認するため電気泳動による確認を実施した。測定に用いた試料は対照2、および実験7〜12のそれぞれから得られる試料1および2を15000rpm、30分間遠心し、その上清を回収し、さらにその上清は濃縮するために凍結乾燥を一晩行った。乾燥させた試料をSDS sample Buffer 50μLで溶解し、電気泳動用の試料とした。E−R155e−パジェル 15%ゲルを用いて、電気泳動を行った。
【0112】
2.結果
電気泳動結果を図9に示す。
試料1は分子量10000、および30000付近にメジャーバンドが確認された。この結果から、洗浄液により、カチオン性ポリマーに吸着した血液成分を除去可能であることが分かった。また、試料2は対照2に対して、30000以下のバンド数が多い。この結果から、洗浄液により血液成分が除去されたことで、菌体由来のタンパク質バンドが検出された。
【0113】
Auto FlexIIにて得られたマススペクトルを図10に示す。
用いた界面活性剤により質量分析器でのイオン化を阻害しないかどうかを判定するために、得られたマススペクトルからデータ処理用ソフトウェアflexAnalysisのFind Mass List機能によりマスピーク数をカウントした。その結果を表9に示す。カウント条件は、表10に示す。
また、血液成分の影響回避効果を確認するために、菌体由来のマスピークに対する血液成分由来のマスピークのピーク強度の比率を求めた。菌体由来のマスピークはコロニーをサンプルとした場合に検出されたマスピークから6250、9740m/zを選んだ。血液成分由来のマスピークはヘモグロビンのマスピークである15130m/zを選んだ。その結果を表11に示す。
【0114】
【表9】
【0115】
【表10】
【0116】
【表11】
【0117】
表9より、対照2に比べ実験7,8においてはカウントされたマスピーク数が増大していることから、イオン化が促進され、一方、実験9〜11においてはカウントされたマスピーク数が減少していることから、イオン化が阻害されている可能性が高い。
表11より、実験7、8は菌体由来と血液由来のマスピーク比率が1.0以上であり、菌体由来ピークが血液由来ピークよりも高い強度で検出されている。それに対して、実験9〜12は菌体由来と血液由来のマスピーク比率が1.0以下であり血液由来ピークが菌体由来ピークよりも高い強度で検出されており、血液成分の影響回避効果が低かった。
この結果から、実験7、8の方法は、血液成分の影響を抑え、かつ質量分析器での測定が可能である。
【0118】
<実施例10>
ウィルス粒子の分離、回収確認(参考例1の追試)
1.方法
1)試料
NBRC(独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター)より購入したEscherichia coli phage T7 (コード:20007)を用い、NBRC指定プロトコルおよび一般的な実験手順、例えば「無敵のバイオテクニカルシリーズ・遺伝子工学実験ノート(上)・2.バクテリオファージの項(羊土社)」に従ってバクテリオファージを調製した。
復水液(10% polypepton、2% Yeast extract、1% MgSO4)200μLで乾燥菌体を懸濁させた後、大腸菌10cell程度を含んだ0.6%寒天培地(10% polypepton、5% Yeast extract、2.5% NaCl、1% 寒天)上に重層した。この培地プレートを37℃、一晩培養し、コロニーのできていない部分の寒天を削り取り(数cm 程度)、1.5mLチューブに移した。10mM Tris−HCl (pH7.5) 1mLを入れ、90分間20℃にて振盪した後、3000rpm、15分間遠心し上清を回収し、バクテリオファージサンプルとした(冷蔵保存)。
2)試薬
I :反応液1:1M グリシン−NaOH pH11.0
II :反応液2:3M 塩化マグネシウム溶液
III:分散液:1M グリシン−HCl pH5.0
3)カチオン性グラフト重合体
実施例1と同様に調製した。
【0119】
バクテリオファージの分離、および力価確認は以下のようにして行った。
試料500μLと20%カチオン性グラフト重合体100μL、反応液1:100μL、および反応液2:100μLを混合した。その後、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、沈殿凝集塊を得た。上清を除去し、得られた沈殿凝集塊を分散液100μLで完全に分散し分散溶液を得た。分散溶液を大腸菌10cell程度を含む寒天培地と混合し、37℃、18時間培養し、大腸菌の溶菌を確認した(図11)。
また、ポジティブコントロールとしてカチオン性グラフト重合体と反応させる前のバクテリオファージ試料を大腸菌に感染させた。
【0120】
2.結果
グラフト重合体により、バクテリオファージが分離できることがわかった。
【0121】
<実施例10>
分離した大腸菌の生存確認
1.方法
1)試料
実施例1と同様にバイオラッド社製のGFP発現Kitを用いて作製した大腸菌をノーマルヒト血清中に必要量添加し試料として用いた。大腸菌10cell程度。
2)試薬
I: 反応液1:1M グリシン−NaOH pH11.0
II: 反応液2:3M 塩化マグネシウム溶液
III:分散液:1M グリシン−HCl pH5.0
3)カチオン性グラフト重合体
上記(5)エポキシオクタン変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体(PAAEpo−g−DADMAC)、および上記(8)グリシジルブチレート変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体(PAAGB−g−DADMAC)を用いた。
具体的には、20質量%のポリアリルアミンに13質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらエポキシオクタン(アミンに対し0.1当量)を滴下した。滴下終了後40℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、エポキシオクタン変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。調製した30質量%のエポキシオクタン変性ポリアリルアミンに、19質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液14.42g(モノマーに対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液14.42g(モノマーに対して10モル%)を分割してさらに追加し、エポキシオクタン変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
あるいは、20質量%のポリアリルアミンに13質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらグリシジルブチレート(アミンに対し0.1当量)を滴下した。滴下終了後40℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、グリシジルブチレート変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。調製した30質量%のグリシジルブチレート変性ポリアリルアミンに、19質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液14.42g(モノマーに対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液14.42g(モノマーに対して10モル%)を分割してさらに追加し、グリシジルブチレート変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
上記グラフト重合体を終濃度8%、公知方法にて製造されるラテックスビーズ、例えばポリスチレンラテックスLE(平均粒径:120nm、ニットーボーメディカル社製)を終濃度5%となるように両者を混合させ、グラフト重合体溶液とした。
さらに実施例1で用いた上記プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンとのグラフト重合体(PAA−g−PSt)もポジティブコントロールとして用いた。
【0122】
大腸菌の分離、および生存確認は以下のようにして行った。
試料500μLと上記グラフト重合体溶液100μL、反応液1:100μL、および反応液2:200μLを混合した。その後、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、沈殿凝集塊を得た。上清は別の遠心チューブに移し、さらに15000rpm、5分間遠心し、得られた沈殿物を分散液500μLに分散させた。
上清を除去することにより得られた沈殿凝集塊は、分散液500μLで完全に分散し分散溶液を得た。
上清由来、および沈殿凝集塊由来の分散溶液100μLを別々のLB液体培地5mLに加え、37℃、18時間培養し、大腸菌の生存を確認するために培養前後の培養液試料の吸光度を分光光度計により測定し、その変化量を大腸菌量とした。
また、上記の上清由来、および沈殿凝集塊由来の分散溶液50μLをLB細菌培養寒天培地上に塗布し、37℃、18時間培養し、コロニーの形成によって大腸菌の生存を確認した(図12)。
また、ネガティブコントロールとして、ポリスチレンラテックスLEを含み上記グラフト重合体を含まない場合についても検討した。
【0123】
2.結果
以下の表12にあるように、粒子を形成しないグラフト重合体でも標的物を分離濃縮できることがわかった。
【表12】
【0124】
<実施例11>
分離した大腸菌の生存確認
1.方法
1)試料
実施例1と同様にバイオラッド社製のGFP発現Kitを用いて作製した大腸菌をノーマルヒト血清中に必要量添加し試料として用いた。大腸菌10cell程度
2)試薬
I :反応液1:1M グリシン−NaOH pH11.0
II :反応液2:3M 塩化マグネシウム溶液
III:分散液:1M グリシン−HCl pH5.0
3)カチオン性グラフト重合体
上記(5)エポキシオクタン変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体(PAAEpo−g−DADMAC)を用いた。
【0125】
大腸菌の分離、および生存確認は以下のようにして行った。
試料500μLと上記グラフト重合体溶液100μL、反応液1:100μL、および反応液2:200μLを混合した。試料と上記グラフト重合体を混合させた後、公知方法にて製造されるラテックスビーズ、例えばポリスチレンラテックスLE(平均粒径:120nm、ニットーボーメディカル社製)20μLを添加しよく混合させてから、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、沈殿凝集塊を得た。上清は別の遠心チューブに移し、さらに15000rpm、5分間遠心し、得られた沈殿物を分散液500μLに分散させた。
上清を除去することにより得られた沈殿凝集塊は、分散液500μLで完全に分散し分散溶液を得た。
上記の上清由来、および沈殿凝集塊由来の分散溶液50μLをLB細菌培養寒天培地上に塗布し、37℃、18時間培養し、コロニーの形成によって大腸菌の生存を確認した。
【0126】
2.結果
グラフト重合体ははじめにラテックスビーズと混合しておいても、菌体と反応させた後にラテックスビーズを添加しても同じように菌体捕獲した(図13)。
【0127】
<実施例12>
分離した大腸菌の生存確認
1.方法
1)試料
実施例1と同様にバイオラッド社製のGFP発現Kitを用いて作製した大腸菌をノーマルヒト血清中に必要量添加し試料として用いた。大腸菌10cell程度
2)試薬
I : 反応液1:1M グリシン−NaOH pH11.0
II : 反応液2:3M 塩化マグネシウム溶液
III: 分散液:1M グリシン−HCl pH5.0
3)カチオン性グラフト重合体
上記(11)グリシドール変性ポリジアリルアミンとシアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体を用いた。
具体的には ジアリルアミンに79質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらグリシドール(アミンに対し1当量)を滴下した。滴下終了後45℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、グリシドール変性ジアリルアミンを水溶液として得た。
78質量%のグリシドール変性ジアリルアミンに35質量%の塩酸(アミンに対し1当量)を加えた。その後、50質量%となるように水を加え、60℃に加温し、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩(モノマーに対し6モル%)を分割して加え、24時間重合させた。得られた溶液を電気透析によって精製し、グリシドール変性ポリジアリルアミンを水溶液として得た。調製した43質量%のグリシドール変性ポリジアリルアミンに30質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液36.04g(モノマーに対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液36.04g(モノマーに対して10モル%)を分割してさらに追加し、50℃で24時間重合させ、グリシドール変性ポリジアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
上記グラフト重合体を終濃度8%、公知方法にて製造されるラテックスビーズ、例えばポリスチレンラテックスLE(平均粒径:120nm、ニットーボーメディカル社製)を終濃度5%となるように両者を混合させ、グラフト重合体溶液とした。
さらに実施例1で用いた上記(3)プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンとのグラフト重合体(PAA−g−PSt)もポジティブコントロールとして用いた。
【0128】
大腸菌の分離、および生存確認は以下のようにして行った。
試料500μLと上記グラフト重合体溶液100μL、反応液1:100μL、および反応液2:200μLを混合した。その後、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、沈殿凝集塊を得た。上清は別の遠心チューブに移し、さらに15000rpm、5分間遠心し、得られた沈殿物を分散液500μLに分散させた。
上清を除去することにより得られた沈殿凝集塊は、分散液500μLで完全に分散し分散溶液を得た。
上清由来、および沈殿凝集塊由来の分散溶液100μLを別々のLB液体培地5mLに加え、37℃、18時間培養し、大腸菌の生存を確認するために培養前後の培養液試料の吸光度を分光光度計により測定し、その変化量を大腸菌量とした。
また、上記の上清由来、および沈殿凝集塊由来の分散溶液50μLをLB細菌培養寒天培地上に塗布し、37℃、18時間培養し、コロニーの形成によって大腸菌の生存を確認した(図14)。
また、対照として、ポリスチレンラテックスLEを含み上記グラフト重合体を含まない場合についても検討した。
【0129】
2.結果
【表13】
【0130】
<実施例13>
質量分析器での測定
1.方法
1)試料
実施例1と同様にバイオラッド社製のGFP発現Kitを用いて作製した大腸菌をノーマルヒト血清中に必要量添加し試料として用いた。大腸菌10cell程度
2)試薬
I : 反応液1:1M グリシン−NaOH pH11.0
II : 反応液2:3M 塩化マグネシウム溶液
III: 分散液:70%ギ酸
IV : 凝集液:100%アセトニトリル
3)カチオン性グラフト重合体
実施例12で用いた上記(11)グリシドール変性ポリジアリルアミンとシアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体を用いた。
上記グラフト重合体を終濃度8%、公知方法にて製造されるラテックスビーズ、例えばポリスチレンラテックスLE(平均粒径:120nm、ニットーボーメディカル社製)を終濃度5%となるように両者を混合させ、グラフト重合体溶液とした。
さらに実施例1で用いた上記(3)プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンとのグラフト重合体(PAA−g−PSt)もポジティブコントロールとして用いた。
【0131】
大腸菌の分離、および質量分析器による測定は以下のようにして行った。
試料500μLと上記グラフト重合体溶液50μL、反応液1:100μL、および反応液2:200μLを混合した。その後、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、沈殿凝集塊を得た。
上清を除去し、得られた沈殿凝集塊を分散液30μLで完全に分散させた。続いて、凝集液100μLを混合した後、卓上小型遠心機にて60秒間遠心した。得られた上清を質量分析器の測定試料とした。質量分析器の取り扱いについては、実施例3と同様に行った。
また、対照として、ポリスチレンラテックスLEを含み上記グラフト重合体を含まない場合についても検討した。
【0132】
2.結果
【表14】
【0133】
また、グリシドール変性ポリジアリルアミンとシアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体とラテックスビーズの混合液を用いる場合には、反応液2(マグネシウムイオン)を添加せずとも大腸菌を捕捉/回収できることが質量分析器による測定から判明した。
【表15】
【0134】
<実施例14>
分離した大腸菌の生存確認
1.方法
1)試料
実施例1と同様にバイオラッド社製のGFP発現Kitを用いて作製した大腸菌をノーマルヒト血清中に必要量添加し試料として用いた。大腸菌10cell程度
2)試薬
I : 反応液1:1M グリシン−NaOH pH11.0
II : 反応液2:3M 塩化マグネシウム溶液
III: 分散液:1M グリシン−HCl pH5.0
3)カチオン性グラフト重合体
実施例12で用いた上記(11)グリシドール変性ポリジアリルアミンとシアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体を用いた。
【0135】
大腸菌の分離、および生存確認は以下のようにして行った。
試料500μLと上記グラフト重合体溶液100μL、反応液1:100μL、および反応液2:200μLを混合した。試料と上記グラフト重合体を混合させた後、公知方法にて製造されるラテックスビーズ、例えばポリスチレンラテックスLE(平均粒径:120nm、ニットーボーメディカル社製)20μLを添加しよく混合させてから、卓上小型遠心機にて30秒間遠心し、沈殿凝集塊を得た。上清は別の遠心チューブに移し、さらに15000rpm、5分間遠心し、得られた沈殿物を分散液500μLに分散させた。
上清を除去することにより得られた沈殿凝集塊は、分散液500μLで完全に分散し分散溶液を得た。
上記の上清由来、および沈殿凝集塊由来の分散溶液50μLをLB細菌培養寒天培地上に塗布し、37℃、18時間培養し、コロニーの形成によって大腸菌の生存を確認した。
【0136】
2.結果
グラフト重合体ははじめにラテックスビーズと混合しておいても、菌体と反応させた後にラテックスビーズを添加しても同じように菌体捕獲した(図15)。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明方法及びそのためのキットは従来のイオン交換ポリマーを用いた方法より、対象物を効率よく分離精製することが可能であり、試料中の対象物の存在量が極めてすくなくとも、検出することを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15