【課題を解決するための手段】
【0015】
電力変換回路の制御(典型的にはPWM制御)においては、出力電流ioが減少すればスイッチのオンタイムも減少する(スイッチのオフタイムが増加する)。
また、当該制御において、出力電流ioが増加すればスイッチのオンタイムも増加する(スイッチのオフタイムが減少する)。
すなわち、電力変換回路のPWM制御においては、出力電流ioとスイッチのオンタイム(または、オフタイム、スイッチング周期)には、ある相関関係がある。
一方、スイッチのオンタイムやオフタイムは、電力変換回路の出力電圧から計算される。
本発明者は、これらの事実に着目し、ゲインの切換えをスイッチのオンタイムやオフタイムの値に基づき行うことができれば、出力電流の検出をすることなく、ゲインの切り換えやゲインの値の設定ができる、との知見を得て本発明を完成するに至った。
【0016】
(1)
スイッチのオン・オフにより、入力エネルギーのリアクトルへの蓄積と、前記リアクトルに蓄積したエネルギーの放出を繰り返えし行う電力変換回路の制御装置において:
前記制御装置は、
前記電力変換回路の出力電圧を検出する出力検出部と、
前記電力変換回路をスイッチング制御するための制御量Tを、前記出力電圧の値と、ゲイン関数Kに基づき計算する制御量計算部と、
前記制御量計算部により計算された制御量Tに基づき、前記ゲイン関数Kを、第2値T
2より大きい領域で定義された第1ゲイン関数K
1(T)または第1値T
1より小さい領域で定義された第2ゲイン関数K
2(T)に設定するゲイン設定部と、
を備え、
第1ゲイン関数K
1(T)はゲイン要素としてk
1x(x=1,2,・・・,M)を含み、かつ第2ゲイン関数K
2(T)はゲイン要素としてk
2x(x=1,2,・・・,M)を含み、
前記第1ゲイン関数K
1のゲイン要素k
1xと前記第2ゲイン関数K
2のゲイン要素k
2xとの間には、次の関係が成立し、
k
2x≧k
1x(ただし、xは1,2,・・・,Mの全て)
k
2x>k
1x(ただし、xは1,2,・・・,Mの少なくとも1つ)
前記ゲイン設定部は、
前記制御量Tが前記第1値T
1より大きい場合においては、現在のゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数K
1に維持または変更し、
前記制御量Tが前記第2値T
2より小さい場合においては、現在のゲイン関数Kを、前記第2ゲイン関数K
2に維持または変更し、
前記制御量Tが前記第2値T
2より大きく、かつ前記第1値T
1より小さい場合においては、現在のゲイン関数Kを、前記第1ゲイン関数K
1に維持しまたは前記第2ゲイン関数K
2に維持する、
電力変換回路の制御装置。
【0017】
(2)
スイッチのオン・オフにより、入力エネルギーのリアクトルへの蓄積と、前記リアクトルに蓄積したエネルギーの放出を繰り返えし行う電力変換回路の制御装置において:
前記制御装置は、
前記電力変換回路の出力電圧を検出する出力検出部と、
前記電力変換回路をスイッチング制御するための制御量Tを、前記出力電圧の値と、ゲイン関数Kに基づき計算する制御量計算部と、
前記制御量計算部により計算された制御量Tに基づき、前記ゲイン関数Kを、第2値T
2より小さい領域で定義された第1ゲイン関数K
1(T)または第1値T
1より大きい領域で定義された第2ゲイン関数K
2(T)に設定するゲイン設定部と、
を備え、
第1ゲイン関数K
1(T)はゲイン要素としてk
1x(x=1,2,・・・,M)を含み、かつ第2ゲイン関数K
2(T)はゲイン要素としてk
2x(x=1,2,・・・,M)を含み、
前記第1ゲイン関数K
1のゲイン要素k
1xと前記第2ゲイン関数K
2のゲイン要素k
2xとの間には、次の関係が成立し、
k
2x≧k
1x(ただし、xは1,2,・・・,Mの全て)
k
2x>k
1x(ただし、xは1,2,・・・,Mの少なくとも1つ)
前記ゲイン設定部は、
前記制御量Tが前記第1値T
1より小さい場合においては、現在のゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数K
1に維持または変更し、
前記制御量Tが前記第2値T
2より大きい場合においては、現在のゲイン関数Kを、前記第2ゲイン関数K
2に維持または変更し、
前記制御量Tが前記第2値T
2より小さく、かつ前記第1値T
1より大きい場合においては、現在のゲイン関数Kを、前記第1ゲイン関数K
1に維持しまたは前記第2ゲイン関数K
2に維持する、
電力変換回路の制御装置。
(1)の制御装置は、電力変換回路をスイッチのオンタイムにより制御する場合やスイッチング周期により制御する場合(デューティ比が固定であることもあるし、デューティ比が変化することもある)に適用される。一方、(2)の制御装置は、電力変換回路をスイッチのオフタイムにより制御する場合に適用される。
なお、ゲイン要素(第1ゲイン要素k
1xおよび第2ゲイン要素k
2x)は、全てが定数であってもよいし、少なくとも1つが過去の制御量Tの値により変化する変数(すなわち、Tの関数)であってもよい。
過去の制御量Tの値は、たとえば、ゲインが設定されるスイッチング周期(インデックス:n)より数周期前の値であってもよい。
また、後述するように、過去の制御量Tの値は、ゲインが設定されるスイッチング周期(インデックス:n)より前の、複数周期の値の平均値であってもよい。
この複数周期の値の平均値は、移動平均であってもよい。
【0018】
(3)
前記設定に際して、
前記ゲイン設定部は、
(i) 前記ゲイン関数Kが前記第1ゲイン関数K
1に設定されている場合において、前記制御量Tが前記第2値T
2より大きい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数K
1に維持し、
(ii) 前記ゲイン関数Kが前記第1ゲイン関数K
1に設定されている場合において、前記第2値T
2より小さい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第2ゲイン関数K
2に変更し、
(iii) 前記ゲイン関数Kが前記第2ゲイン関数K
2に設定されている場合において、前記制御量Tが前記第1値T
1より小さい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第2ゲイン関数K
2に維持し、
(iv) 前記ゲイン関数Kが前記第2ゲイン関数K
2に設定されている場合において、前記制御量Tが前記第1値T
1より大きい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数K
1に変更する、
(1)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0019】
(4)
前記設定に際して、
前記ゲイン設定部は、
(i) 前記ゲイン関数Kが前記第1ゲイン関数K
1に設定されている場合において、前記制御量Tが前記第2値T
2より小さい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数K
1に維持し、
(ii) 前記ゲイン関数Kが前記第1ゲイン関数K
1に設定されている場合において、前記第2値T
2より大きい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第2ゲイン関数K
2に変更し、
(iii) 前記ゲイン関数Kが前記第2ゲイン関数K
2に設定されている場合において、前記制御量Tが前記第1値T
1より大きい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第2ゲイン関数K
2に維持し、
(iv) 前記ゲイン関数Kが前記第2ゲイン関数K
2に設定されている場合において、前記制御量Tが前記第1値T
1より小さい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数K
1に変更する、
(2)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0020】
(5)
前記制御量Tがフィードバック制御量、前記ゲイン関数Kを構成するゲイン要素がフィードバックゲインである(1)または(2)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0021】
(6)
さらに、PWM信号生成部を備え、
前記PWM信号生成部は、前記制御量計算部からの制御量Tに基づきPWM信号を生成する(1)または(2)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0022】
(7)
前記制御量計算部により計算された制御量Tが、スイッチのオンタイム値、オフタイム値またはスイッチング周期である(1)または(2)に記載の電力変換回路の制御装置。 本実施形態では、電力変換回路の制御方式が、オンタイム制御のときはスイッチのオンタイム値が制御量Tとなり、オフタイム制御のときはスイッチのオンタイム値が制御量Tとなり、たとえばデューティ比固定のスイッチング周期制御のときはスイッチング周期が制御量Tとなる。
【0023】
(8)
前記制御量計算部により計算された制御量Tが、過去の制御量Tの平均値である(1)または(2)に記載の電力変換回路の制御装置。
すなわち、過去の制御量Tの値は、ゲインが設定されるスイッチング周期(インデックス:n)より前の、複数周期の値の平均値であってもよい。この複数周期の値の平均値は、移動平均であってもよい。
【0024】
(9)
前記第1ゲイン関数K
1および前記第2ゲイン関数K
2のうち、前記の関係、
k
2x(T)>k
1x(T)
を満足するゲイン要素が、
PID制御、PI制御またはPD制御における比例ゲイン、積分ゲインまたは微分ゲイン、または、
IIRフィルタ,FIRフィルタにおけるフィルタ係数、
を含む(1)または(2)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0025】
(10)
前記第1値T
1は、リアクトル電流臨界モードの制御点に対応する(1)または(2)に記載の電力変換回路の制御装置。
(11)
前記「第1値T
1より小さい」は「第1値T
1以下」を含み、
前記「第1値T
1より大きい」は「第1値T
1以上」を含み、
前記「第2値T
2より小さい」は「第2値T
2以下」を含み、
前記「第2値T
2より大きい」は「第2値T
2以上」を含む、
(1)または(2)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0026】
なお、第1値T
1や第2値T
2は、現在の制御量Tに対応して動的に変化してもよい。
たとえば、直前の制御量Tの値が、リアクトル電流の臨界モード点に対応する点から離れている場合には、第2値T
2を第1値T
1に近い値とすることができ、直前の制御量Tの値が、リアクトル電流の臨界モード点に対応する点に近い場合には、第2値T
2を第1値T
1から離れた値とすることができる。
【0027】
第1ゲイン関数K
1および第2ゲイン関数K
2として、種々の関数を使用することができる。
すなわち、本発明において、制御量Tが第1値T
1と第2値T
2との間にあるときは、第1ゲイン関数K
1および第2ゲイン関数K
2とによりループ(閉じた図形)が形成される。
この閉じた図形は、ひし形、三角形とすることができる。
たとえば、第1ゲイン関数K
1を定数とし、第2ゲイン関数K
2を単調減少関数とすることもできる。
【0028】
本発明では、リアクトル電流が連続モードから不連続モードに遷移すると想定される制御量Tを第1値T
1とした。
制御量Tがスイッチのオンタイムであるとき(制御量T
on)は、第1値T
1よりも小さい値を第2値T
2とし、制御量Tがスイッチのオフタイムであるとき(制御量T
off)は、第1値T
1よりも大きい値を第2値T
2とする。