特許第6583640号(P6583640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583640
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】電力変換回路の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   H02M3/155 P
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-548936(P2016-548936)
(86)(22)【出願日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】JP2015076453
(87)【国際公開番号】WO2016043262
(87)【国際公開日】20160324
【審査請求日】2018年9月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-192040(P2014-192040)
(32)【優先日】2014年9月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591143021
【氏名又は名称】イサハヤ電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黒川 不二雄
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−043057(JP,A)
【文献】 特開2007−151320(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/048796(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0253058(US,A1)
【文献】 米国特許第8593125(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチのオン・オフにより、入力エネルギーのリアクトルへの蓄積と、前記リアクトルに蓄積したエネルギーの放出を繰り返えし行う電力変換回路の制御装置において:
前記制御装置は、
前記電力変換回路の出力電圧を検出する出力検出部と、
前記電力変換回路をスイッチング制御するための制御量Tを、前記出力電圧の値と、ゲイン関数Kに基づき計算する制御量計算部と、
前記制御量計算部により計算された制御量Tに基づき、前記ゲイン関数Kを、第2値Tより大きい領域で定義された第1ゲイン関数K(T)または第1値Tより小さい領域で定義された第2ゲイン関数K(T)に設定するゲイン設定部と、
を備え、
第1ゲイン関数K(T)はゲイン要素としてk1x(x=1,2,・・・,M)を含み、かつ第2ゲイン関数K(T)はゲイン要素としてk2x(x=1,2,・・・,M)を含み、
前記第1ゲイン関数Kのゲイン要素k1xと前記第2ゲイン関数Kのゲイン要素k2xとの間には、次の関係が成立し、
2x≧k1x(ただし、xは1,2,・・・,Mの全て)
2x>k1x(ただし、xは1,2,・・・,Mの少なくとも1つ)
前記ゲイン設定部は、
前記制御量Tが前記第1値Tより大きい場合においては、現在のゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数Kに維持または変更し、
前記制御量Tが前記第2値Tより小さい場合においては、現在のゲイン関数Kを、前記第2ゲイン関数Kに維持または変更し、
前記制御量Tが前記第2値Tより大きく、かつ前記第1値Tより小さい場合においては、現在のゲイン関数Kを、前記第1ゲイン関数Kに維持しまたは前記第2ゲイン関数Kに維持する、
電力変換回路の制御装置。
【請求項2】
スイッチのオン・オフにより、入力エネルギーのリアクトルへの蓄積と、前記リアクトルに蓄積したエネルギーの放出を繰り返えし行う電力変換回路の制御装置において:
前記制御装置は、
前記電力変換回路の出力電圧を検出する出力検出部と、
前記電力変換回路をスイッチング制御するための制御量Tを、前記出力電圧の値と、ゲイン関数Kに基づき計算する制御量計算部と、
前記制御量計算部により計算された制御量Tに基づき、前記ゲイン関数Kを、第2値Tより小さい領域で定義された第1ゲイン関数K(T)または第1値Tより大きい領域で定義された第2ゲイン関数K(T)に設定するゲイン設定部と、
を備え、
第1ゲイン関数K(T)はゲイン要素としてk1x(x=1,2,・・・,M)を含み、かつ第2ゲイン関数K(T)はゲイン要素としてk2x(x=1,2,・・・,M)を含み、
前記第1ゲイン関数Kのゲイン要素k1xと前記第2ゲイン関数Kのゲイン要素k2xとの間には、次の関係が成立し、
2x≧k1x(ただし、xは1,2,・・・,Mの全て)
2x>k1x(ただし、xは1,2,・・・,Mの少なくとも1つ)
前記ゲイン設定部は、
前記制御量Tが前記第1値Tより小さい場合においては、現在のゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数Kに維持または変更し、
前記制御量Tが前記第2値Tより大きい場合においては、現在のゲイン関数Kを、前記第2ゲイン関数Kに維持または変更し、
前記制御量Tが前記第2値Tより小さく、かつ前記第1値Tより大きい場合においては、現在のゲイン関数Kを、前記第1ゲイン関数Kに維持しまたは前記第2ゲイン関数Kに維持する、
電力変換回路の制御装置。
【請求項3】
前記設定に際して、
前記ゲイン設定部は、
(i) 前記ゲイン関数Kが前記第1ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記制御量Tが前記第2値Tより大きい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数Kに維持し、
(ii) 前記ゲイン関数Kが前記第1ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記第2値Tより小さい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第2ゲイン関数Kに変更し、
(iii) 前記ゲイン関数Kが前記第2ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記制御量Tが前記第1値Tより小さい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第2ゲイン関数Kに維持し、
(iv) 前記ゲイン関数Kが前記第2ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記制御量Tが前記第1値Tより大きい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数Kに変更する、
請求項1に記載の電力変換回路の制御装置。
【請求項4】
前記設定に際して、
前記ゲイン設定部は、
(i) 前記ゲイン関数Kが前記第1ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記制御量Tが前記第2値Tより小さい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数Kに維持し、
(ii) 前記ゲイン関数Kが前記第1ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記第2値Tより大きい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第2ゲイン関数Kに変更し、
(iii) 前記ゲイン関数Kが前記第2ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記制御量Tが前記第1値Tより大きい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第2ゲイン関数Kに維持し、
(iv) 前記ゲイン関数Kが前記第2ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記制御量Tが前記第1値Tより小さい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数Kに変更する、
請求項2に記載の電力変換回路の制御装置。
【請求項5】
前記制御量Tがフィードバック制御量、前記ゲイン関数Kを構成するゲイン要素がフィードバックゲインである請求項1または2に記載の電力変換回路の制御装置。
【請求項6】
さらに、PWM信号生成部を備え、
前記PWM信号生成部は、前記制御量計算部からの制御量Tに基づきPWM信号を生成する請求項1または2に記載の電力変換回路の制御装置。
【請求項7】
前記制御量計算部により計算された制御量Tが、スイッチのオンタイム値、オフタイム値またはスイッチング周期である請求項1または2に記載の電力変換回路の制御装置。
【請求項8】
前記制御量計算部により計算された制御量Tが、過去の制御量Tの平均値である請求項1または2に記載の電力変換回路の制御装置。
【請求項9】
前記第1ゲイン関数Kおよび前記第2ゲイン関数Kのうち、前記の関係、
2x(T)>k1x(T)
を満足するゲイン要素が、
PID制御、PI制御またはPD制御における比例ゲイン、積分ゲインまたは微分ゲイン、または、
IIRフィルタ,FIRフィルタにおけるフィルタ係数、
を含む請求項1または2に記載の電力変換回路の制御装置。
【請求項10】
前記第1値Tは、リアクトル電流臨界モードの制御点に対応する請求項1または2に記載の電力変換回路の制御装置。
【請求項11】
前記「第1値Tより小さい」は「第1値T以下」を含み、
前記「第1値Tより大きい」は「第1値T以上」を含み、
前記「第2値Tより小さい」は「第2値T以下」を含み、
前記「第2値Tより大きい」は「第2値T以上」を含む、
請求項1または2に記載の電力変換回路の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータ等の電力変換回路の制御に際して、出力電流を検出することなく、制御状態に応じてゲインを切り換える電力変換回路の制御装置に関する。
具体的には、最新または過去の制御量Tに基づき、前記ゲインの切り換えの判断を行う電力変換回路の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、電力変換回路(DC/DCコンバータ)8および電力変換回路8に接続された制御装置9の構成を示す図である。
図1において、電力変換回路8は、スイッチ(Tr)81、リアクトル(L)82、転流用のダイオード(D)83およびキャパシタ(C)84とからなる。
図1の電力変換回路8では、スイッチ81がオンのときにはリアクトル82を介して、直流電源51からのエネルギーが負荷52に供給される。
スイッチ81がオフのときにはリアクトル82に蓄えられたエネルギーが負荷(R)52に供給される。
なお、ゲインを変更する技術については、特許文献1を参照されたい。
【0003】
電力変換回路8の制御装置9は、出力検出部91、制御量計算部92、ゲイン設定部93およびPWM信号生成部94からなる。
出力検出部91は、電力変換回路8の出力端子b,bに現れる電圧値(アナログ出力電圧e)を取り込む。
出力検出部91は、図示しないプリアンプとA/D変換器とからなり、取り込んだアナログ出力電圧eをデジタル出力電圧値E変換する。
【0004】
制御量計算部92は、電力変換回路8をスイッチング制御するための制御量Tonを計算する。
制御量Tonは、図1ではPIDフィードバック制御量NPID,nであり、以下の式で表される。
PID,n=N−K(N−N)−K(N−Nn−1)−KΣ(N−N
n:サンプリング回数(時間)を表すインデックス
:バイアス値
:基準値
:比例ゲイン
:微分ゲイン
:積分ゲイン
【0005】
制御量計算部92の計算結果NPID,n(Ton)は、PWM信号生成部94に送られる。
PWM信号生成部94は、PWM信号SPWMを生成し、このPWM信号SPWMをドライブ回路95に送出する。ドライブ回路95は、PWM信号SPWMに基づき駆動信号ON/OFFを生成し、これを電力変換回路8のスイッチ81に送出する。
【0006】
電力変換回路8では、リアクトル電流iのモードには、リアクトル電流iが連続するモード(リアクトル電流連続モード:CCM)と、リアクトル電流iが不連続となるモード(リアクトル電流不連続モード:DCM)とがある。
リアクトル電流iが連続モードである場合に、出力電流iが減少すると、リアクトル電流iは連続モード(図2(A))から不連続モード(図2(B))に遷移する。
また、リアクトル電流iが不連続モードである場合に、出力電流iが増加すると、リアクトル電流iは不連続モード(図2(B))から連続モード(図2(A))に遷移する。
【0007】
ところが、フィードバックゲイン(比例ゲインK,微分ゲインK,積分ゲインK)を固定値とした制御の場合には、図3(A)の特性図に示すように、出力電流iが小さい領域(リアクトル電流iが不連続となる領域)では、出力電圧Eが異常に上昇することがある。
【0008】
リアクトル電流iが不連続となる領域では、フィードバックゲイン(通常、積分ゲイン関数K)を大きくすれば、図3(B)の特性図に示すように、出力電圧の異常上昇を抑制することができる。
しかし、フィードバックゲインを大きくしたまま、リアクトル電流連続モードでの制御を行うと、電力変換回路8の動作が不安定になるという問題が生じる。
【0009】
そこで、リアクトル電流連続モードと、リアクトル電流不連続モードとで異なるフィードバックゲインを適用する技術が提案されている。
この技術では、図4に示すように、出力電圧検出部911が、電力変換回路8の出力電圧eを図示しないプリアンプおよびA/D変換器を介してデジタル電流値Eとして取り込む。
また、出力電流検出部912が、電力変換回路8の出力電流iを、出力電流検出用抵抗(r)85における電圧降下として検出する。すなわち、出力電流検出部912は、上記の電圧降下を図示しないプリアンプおよびA/D変換器を介してデジタル電流値EIoとして取り込む。
【0010】
ゲイン設定部93は、現在、リアクトル電流iが連続モードにあるのか不連続モードにあるのかを、出力電流iの値(I)に基づいて推定する。
そして、ゲイン設定部93は、リアクトル電流iが連続モードにあると判断した場合(i>I)には、積分ゲイン関数Kの値を小さい値KI1に設定する。
逆に、リアクトル電流が不連続モードにあると判断した場合(i<I)にはPID制御における積分ゲイン関数Kの値を大きい値KI2に設定することができる。
【0011】
ところが、出力電流iの変化状態によっては、リアクトル電流iは、連続モードと不連続モードとの間で、交互に頻繁に遷移する場合があり、制御が不安定になる。
このため、フィードバックゲイン(積分ゲイン関数K)を切り換える場合には、通常、図5にも示すように、ヒステリシス特性を持つ制御が行われ、制御は安定に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−43057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、図4に示した電力変換回路8では、出力電流検出用抵抗(r)85における電圧降下のために、電力損失が増大するという問題がある。
また、図4に示した電力変換回路8では、出力電流iを検出するために出力電流検出部912(プリアンプおよびA/D変換器)が必要となり、部品点数が増大するという問題もある。
【0014】
本発明は、DC/DCコンバータ等の電力変換回路の制御に際して、出力電流を検出することなく、制御状態に応じてゲインを切り換えることを目的とする。
本発明は、具体的には、生成された最新または過去の制御量に基づき、ゲインの設定を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
電力変換回路の制御(典型的にはPWM制御)においては、出力電流ioが減少すればスイッチのオンタイムも減少する(スイッチのオフタイムが増加する)。
また、当該制御において、出力電流ioが増加すればスイッチのオンタイムも増加する(スイッチのオフタイムが減少する)。
すなわち、電力変換回路のPWM制御においては、出力電流ioとスイッチのオンタイム(または、オフタイム、スイッチング周期)には、ある相関関係がある。
一方、スイッチのオンタイムやオフタイムは、電力変換回路の出力電圧から計算される。
本発明者は、これらの事実に着目し、ゲインの切換えをスイッチのオンタイムやオフタイムの値に基づき行うことができれば、出力電流の検出をすることなく、ゲインの切り換えやゲインの値の設定ができる、との知見を得て本発明を完成するに至った。
【0016】
(1)
スイッチのオン・オフにより、入力エネルギーのリアクトルへの蓄積と、前記リアクトルに蓄積したエネルギーの放出を繰り返えし行う電力変換回路の制御装置において:
前記制御装置は、
前記電力変換回路の出力電圧を検出する出力検出部と、
前記電力変換回路をスイッチング制御するための制御量Tを、前記出力電圧の値と、ゲイン関数Kに基づき計算する制御量計算部と、
前記制御量計算部により計算された制御量Tに基づき、前記ゲイン関数Kを、第2値Tより大きい領域で定義された第1ゲイン関数K(T)または第1値Tより小さい領域で定義された第2ゲイン関数K(T)に設定するゲイン設定部と、
を備え、
第1ゲイン関数K(T)はゲイン要素としてk1x(x=1,2,・・・,M)を含み、かつ第2ゲイン関数K(T)はゲイン要素としてk2x(x=1,2,・・・,M)を含み、
前記第1ゲイン関数Kのゲイン要素k1xと前記第2ゲイン関数Kのゲイン要素k2xとの間には、次の関係が成立し、
2x≧k1x(ただし、xは1,2,・・・,Mの全て)
2x>k1x(ただし、xは1,2,・・・,Mの少なくとも1つ)
前記ゲイン設定部は、
前記制御量Tが前記第1値Tより大きい場合においては、現在のゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数Kに維持または変更し、
前記制御量Tが前記第2値Tより小さい場合においては、現在のゲイン関数Kを、前記第2ゲイン関数Kに維持または変更し、
前記制御量Tが前記第2値Tより大きく、かつ前記第1値Tより小さい場合においては、現在のゲイン関数Kを、前記第1ゲイン関数Kに維持しまたは前記第2ゲイン関数Kに維持する、
電力変換回路の制御装置。
【0017】
(2)
スイッチのオン・オフにより、入力エネルギーのリアクトルへの蓄積と、前記リアクトルに蓄積したエネルギーの放出を繰り返えし行う電力変換回路の制御装置において:
前記制御装置は、
前記電力変換回路の出力電圧を検出する出力検出部と、
前記電力変換回路をスイッチング制御するための制御量Tを、前記出力電圧の値と、ゲイン関数Kに基づき計算する制御量計算部と、
前記制御量計算部により計算された制御量Tに基づき、前記ゲイン関数Kを、第2値Tより小さい領域で定義された第1ゲイン関数K(T)または第1値Tより大きい領域で定義された第2ゲイン関数K(T)に設定するゲイン設定部と、
を備え、
第1ゲイン関数K(T)はゲイン要素としてk1x(x=1,2,・・・,M)を含み、かつ第2ゲイン関数K(T)はゲイン要素としてk2x(x=1,2,・・・,M)を含み、
前記第1ゲイン関数Kのゲイン要素k1xと前記第2ゲイン関数Kのゲイン要素k2xとの間には、次の関係が成立し、
2x≧k1x(ただし、xは1,2,・・・,Mの全て)
2x>k1x(ただし、xは1,2,・・・,Mの少なくとも1つ)
前記ゲイン設定部は、
前記制御量Tが前記第1値Tより小さい場合においては、現在のゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数Kに維持または変更し、
前記制御量Tが前記第2値Tより大きい場合においては、現在のゲイン関数Kを、前記第2ゲイン関数Kに維持または変更し、
前記制御量Tが前記第2値Tより小さく、かつ前記第1値Tより大きい場合においては、現在のゲイン関数Kを、前記第1ゲイン関数Kに維持しまたは前記第2ゲイン関数Kに維持する、
電力変換回路の制御装置。
(1)の制御装置は、電力変換回路をスイッチのオンタイムにより制御する場合やスイッチング周期により制御する場合(デューティ比が固定であることもあるし、デューティ比が変化することもある)に適用される。一方、(2)の制御装置は、電力変換回路をスイッチのオフタイムにより制御する場合に適用される。
なお、ゲイン要素(第1ゲイン要素k1xおよび第2ゲイン要素k2x)は、全てが定数であってもよいし、少なくとも1つが過去の制御量Tの値により変化する変数(すなわち、Tの関数)であってもよい。
過去の制御量Tの値は、たとえば、ゲインが設定されるスイッチング周期(インデックス:n)より数周期前の値であってもよい。
また、後述するように、過去の制御量Tの値は、ゲインが設定されるスイッチング周期(インデックス:n)より前の、複数周期の値の平均値であってもよい。
この複数周期の値の平均値は、移動平均であってもよい。
【0018】
(3)
前記設定に際して、
前記ゲイン設定部は、
(i) 前記ゲイン関数Kが前記第1ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記制御量Tが前記第2値Tより大きい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数Kに維持し、
(ii) 前記ゲイン関数Kが前記第1ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記第2値Tより小さい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第2ゲイン関数Kに変更し、
(iii) 前記ゲイン関数Kが前記第2ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記制御量Tが前記第1値Tより小さい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第2ゲイン関数Kに維持し、
(iv) 前記ゲイン関数Kが前記第2ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記制御量Tが前記第1値Tより大きい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数Kに変更する、
(1)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0019】
(4)
前記設定に際して、
前記ゲイン設定部は、
(i) 前記ゲイン関数Kが前記第1ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記制御量Tが前記第2値Tより小さい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数Kに維持し、
(ii) 前記ゲイン関数Kが前記第1ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記第2値Tより大きい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第2ゲイン関数Kに変更し、
(iii) 前記ゲイン関数Kが前記第2ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記制御量Tが前記第1値Tより大きい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第2ゲイン関数Kに維持し、
(iv) 前記ゲイン関数Kが前記第2ゲイン関数Kに設定されている場合において、前記制御量Tが前記第1値Tより小さい値に変化したときは、前記ゲイン関数Kを前記第1ゲイン関数Kに変更する、
(2)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0020】
(5)
前記制御量Tがフィードバック制御量、前記ゲイン関数Kを構成するゲイン要素がフィードバックゲインである(1)または(2)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0021】
(6)
さらに、PWM信号生成部を備え、
前記PWM信号生成部は、前記制御量計算部からの制御量Tに基づきPWM信号を生成する(1)または(2)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0022】
(7)
前記制御量計算部により計算された制御量Tが、スイッチのオンタイム値、オフタイム値またはスイッチング周期である(1)または(2)に記載の電力変換回路の制御装置。 本実施形態では、電力変換回路の制御方式が、オンタイム制御のときはスイッチのオンタイム値が制御量Tとなり、オフタイム制御のときはスイッチのオンタイム値が制御量Tとなり、たとえばデューティ比固定のスイッチング周期制御のときはスイッチング周期が制御量Tとなる。
【0023】
(8)
前記制御量計算部により計算された制御量Tが、過去の制御量Tの平均値である(1)または(2)に記載の電力変換回路の制御装置。
すなわち、過去の制御量Tの値は、ゲインが設定されるスイッチング周期(インデックス:n)より前の、複数周期の値の平均値であってもよい。この複数周期の値の平均値は、移動平均であってもよい。
【0024】
(9)
前記第1ゲイン関数Kおよび前記第2ゲイン関数Kのうち、前記の関係、
2x(T)>k1x(T)
を満足するゲイン要素が、
PID制御、PI制御またはPD制御における比例ゲイン、積分ゲインまたは微分ゲイン、または、
IIRフィルタ,FIRフィルタにおけるフィルタ係数、
を含む(1)または(2)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0025】
(10)
前記第1値Tは、リアクトル電流臨界モードの制御点に対応する(1)または(2)に記載の電力変換回路の制御装置。
(11)
前記「第1値Tより小さい」は「第1値T以下」を含み、
前記「第1値Tより大きい」は「第1値T以上」を含み、
前記「第2値Tより小さい」は「第2値T以下」を含み、
前記「第2値Tより大きい」は「第2値T以上」を含む、
(1)または(2)に記載の電力変換回路の制御装置。
【0026】
なお、第1値Tや第2値Tは、現在の制御量Tに対応して動的に変化してもよい。
たとえば、直前の制御量Tの値が、リアクトル電流の臨界モード点に対応する点から離れている場合には、第2値Tを第1値Tに近い値とすることができ、直前の制御量Tの値が、リアクトル電流の臨界モード点に対応する点に近い場合には、第2値Tを第1値Tから離れた値とすることができる。
【0027】
第1ゲイン関数Kおよび第2ゲイン関数Kとして、種々の関数を使用することができる。
すなわち、本発明において、制御量Tが第1値Tと第2値Tとの間にあるときは、第1ゲイン関数Kおよび第2ゲイン関数Kとによりループ(閉じた図形)が形成される。
この閉じた図形は、ひし形、三角形とすることができる。
たとえば、第1ゲイン関数Kを定数とし、第2ゲイン関数Kを単調減少関数とすることもできる。
【0028】
本発明では、リアクトル電流が連続モードから不連続モードに遷移すると想定される制御量Tを第1値Tとした。
制御量Tがスイッチのオンタイムであるとき(制御量Ton)は、第1値Tよりも小さい値を第2値Tとし、制御量Tがスイッチのオフタイムであるとき(制御量Toff)は、第1値Tよりも大きい値を第2値Tとする。
【発明の効果】
【0029】
ゲインの適切な切換えが、出力電流を検出せずに行われるので、出力電流検出用の抵抗が不要となり、電力損失が大幅に低減される。
また、出力電流を検出するためのプリアンプおよびA/D変換器が不要となる。
【0030】
本発明は、DC/DCコンバータ等の電力変換回路の制御に際して、出力電流を検出することなく、制御状態に応じてゲインを切り換えることができる。
本発明は、具体的には、生成された最新または過去の制御量に基づき、ゲインの設定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、電力変換回路(DC/DCコンバータ)および従来の制御装置を示す図である。
図2図2(A)はリアクトル電流が連続モードであるときの電流波形を示す図である。 図2(B)はリアクトル電流が不連続モードであるときの電流波形を示す図である。
図3図3(A)は出力電流が小さくリアクトル電流が不連続となる領域で、出力電圧が異常上昇する様子を示す特性図である。 図3(B)はリアクトル電流が不連続となる領域で、フィードバックゲインを大きくしたことにより電圧上昇が生じていない様子を示す特性図である。
図4図4は、リアクトル電流の連続モードと、リアクトル電流の不連続モードで異なるゲインを適用する従来の電力変換装置の説明図である。
図5図5は、図4のゲイン設定部により設定されるゲインの特性を示す図である。
図6図6は電力変換回路(DC/DCコンバータ)および当該電力変換回路に本発明の制御装置が接続された様子を示す説明図である。
図7図7図6に示した制御装置の詳細説明図である。
図8図8は、出力電圧e、K決定タイミング、K反映タイミングおよびオンタイムTonを示すタイミング図である。
図9図9は、ヒステリシスが矩形である積分ゲイン関数Kの例を示す図である。
図10図10は、ヒステリシスが単調減少関数と定数との組み合わせである積分ゲイン関数Kの例を示す図である。
図11図11は、降圧型の出力電流とオンタイムとの関係を示す図である。
図12図12は、ヒステリシス特性が矩形である積分ゲイン関数Kによる制御を行ったときのオンタイムTon、積分ゲイン関数K、出力電圧e、アクトル電流iの時間推移を示す図である。
図13図13は、ヒステリシス特性が定数と単調減少関数の組み合わせである積分ゲイン関数Kによる制御を行ったときのオンタイムTon、積分ゲイン関数K、出力電圧e、アクトル電流iの時間推移を示す図である。
図14図14は、ヒステリシス特性が矩形である積分ゲイン関数Kによる制御を行ったときのオンタイムTon、積分ゲイン関数K、出力電圧e、アクトル電流iの時間推移を示す図である。
図15図15は、ヒステリシス特性が定数と単調減少関数の組み合わせである積分ゲイン関数Kによる制御を行ったときのオンタイムTon、積分ゲイン関数K、出力電圧e、アクトル電流iの時間推移を示す図である。
図16図16は、ヒステリシス特性が矩形である積分ゲイン関数Kを示す図である。
図17図17は、ヒステリシス特性が定数と単調減少関数の組み合わせである積分ゲイン関数Kを示す図である
【発明を実施するための形態】
【0032】
図6は本発明の制御装置1および制御装置1が接続された電力変換回路(DC/DCコンバータ)2を示す説明図である。
図6において、電力変換回路2は、スイッチ(Tr)21、リアクトル(L)22、転流用のダイオード(D)23およびキャパシタ(C)24を備えている。
スイッチ21とリアクトル22は直列に接続されている。
ダイオード23のカソード端子は、スイッチ21とリアクトル22との接続点に接続され、ダイオード23のアノード端子は、グランドGNDに接続されている。
キャパシタ24は、リアクトル22の出力端子とグランドGNDとの間(b1,b2間)に接続されている。
【0033】
電力変換回路2の入力端子(a1,a2)には直流電源51が接続され、電力変換回路2の出力端子(b1,b2)には負荷(R)52が接続されている。
図6では、スイッチ21のオンにより、直流電源51から供給されたエネルギーは負荷52に供給されるとともにリアクトル23に蓄積される。また、スイッチ21のオフにより、リアクトル23に蓄積したエネルギーは、負荷52に供給(放出)される。
【0034】
図6において、制御装置1は出力検出部11と、制御量計算部12と、ゲイン設定部13、PWM信号生成部14とを備えている。
図6では、制御装置1の出力側(PWM信号生成部14の出力側)には、ドライブ回路3が接続されている。
【0035】
図7図6に示した制御装置1の詳細説明図である。
図7において、出力検出部11はプリアンプ111とA/D変換器112とからなる。 電力変換回路2のアナログ出力電圧eはプリアンプ111により増幅され、増幅された信号は、A/D変換器112によりデジタル信号Eに変換される。
A/D変換器112は、デジタル信号Eをオンオフ周期ごとにサンプリングしている。
図7では、デジタル信号Eは、デジタル値N(nはインデックス)でも示されている。
【0036】
制御量計算部12は、PD制御要素計算部121と、I制御要素計算部122と、PID制御量計算部123とからなる。
オンタイム値Tonは、電力変換回路2をスイッチング制御するための制御量(フィードバック制御量)であり、以下では、NPID,nとしても表される。
PID制御量計算部123は、制御量NPID,nを、デジタル値Nとゲイン関数Kとに基づき計算する。
ゲイン関数Kは、第1ゲイン関数Kまたは第2ゲイン関数Kの何れかに設定される。
本実施形態では、第1ゲイン関数Kおよび第2ゲイン関数Kは、それぞれ3つのフィードバックゲイン要素からなる。
すなわち、第1ゲイン関数Kは、フィードバックゲインKP1,KD1,KI1を持ち、KI1のみが変数である。
また、第2ゲイン関数Kは、フィードバックゲインKP2,KD2,KI2を持ち、KI2のみが変数である。
本実施形態では、KP1=KP2、KD1=KD2である。
したがって、以下、第1ゲイン関数Kを、K(K,K,KI1)で表し、第2ゲイン関数KをK(K,K,KI2)で表す。
本実施形態では、I制御要素計算部122が後述するゲイン決定部131から積分ゲイン関数K(KI1またはKI2)を受け取り、積分制御要素を計算する。
PID制御量計算部123がPD制御要素計算部121からの計算結果と、I制御要素計算部122からの計算結果を受け取り、PID制御量をPWM信号生成部14に渡す。
【0037】
本実施形態では、ゲイン設定部13は、ゲイン決定部131と、ゲイン設定記憶部132と、過去制御量記憶部133とを有している。ゲイン設定記憶部132は、レジスタとすることができ、直前のゲイン関数Kが第1ゲイン関数Kであるか第2ゲイン関数Kであるかの情報が記録される。
ゲイン決定部131は、ゲイン設定記憶部132を参照して現在のゲイン関数Kが、第1ゲイン関数Kであるのか、第2ゲイン関数Kであるのかを知ることができる。
ゲイン決定部131は、制御量計算部12により計算されたインデックス(n)の制御量(オンタイム値TON,n)を取得し、次のスイッチング周期(インデックス:n)において使用される制御量(オンタイム値TON,n)と現在のゲイン関数Kとから、次回のスイッチング周期(インデックス:n+1)のゲイン関数Kを、第1ゲイン関数Kに設定するのか、第2ゲイン関数Kに設定するのかを決定する。
【0038】
ゲイン決定部131は、次に記載したテーブル([表1]および[表2])により、次回(インデックス:n+1)のゲイン関数Kを、第1ゲイン関数Kまたは第2ゲイン関数Kの何れに設定するのかを決定することができる。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
表1と表2とは、実質上の同一の内容である。
【0041】
前述したように、出力電流ioが減少すると、リアクトル電流iが連続モード(CCM)から不連続モード(DCM)に遷移する。
本実施形態では、リアクトル電流iが連続モード(CCM)から不連続モード(DCM)に遷移すると想定される制御量Tonを第1値Tとしている。
そして、制御量Ton(NPID,n)はスイッチのオンタイムであるので、第1値よりも小さい値を第2値Tとした。
【0042】
ゲイン決定部131により設定されたゲイン関数Kは、次回(インデックス:n+1)のスイッチング周期において、制御装置1による制御に反映される。
すなわち、ゲイン関数Kがゲイン関数Kに設定されたときは、Kは次式となる。
K=K(K,K,KI1
また、TONはデジタル値NPID,nで表される。
PID,n
=N−K(N−N
−K(N−Nn−1
−KI1Σ(N−N
【0043】
ゲイン関数Kがゲイン関数Kに設定されたときは、Kは次式となる。
=K(K,K,KI2
また、TONはデジタル値NPID,nで表される。
PID,n
=N−K(N−N
−K(N−Nn−1
−KI2Σ(N−N
ここで、KI1とKI2との間には次の関係が成立する。
I1<KI2
【0044】
ゲイン決定部131は、オンタイム値Tの第1値Tを、リアクトル電流iの臨界値(リアクトル電流連続モードCCMとリアクトル電流不連続モードDCMとの境界)に対応させることができる。
ゲイン決定部131は、オンタイム値Tの第2値Tは、T<Tであれば適宜に設定できる。
第2値Tは、現在の制御量に対応して動的に変化してもよい。
【0045】
ゲイン決定部131がゲイン関数を決定するに際して、制御量Tは過去の制御量の平均値とすることができる。
本実施形態では、過去制御量記憶部133には過去の制御量Tが記憶されている。
ゲイン決定部131は、過去制御量記憶部133を参照して制御量Tを、過去の制御量
の移動平均として算出している。
【0046】
図8により、図7に示した制御装置1の動作を詳細に説明する。
図8は、出力電圧e、K決定タイミング、K反映タイミングおよびオンタイムTon,zを示すタイミング図である。
なお、以下の説明において、n−1回のスイッチング周期においてサンプリングした出力電圧eについての処理を(a1)−(a5)で示す。
n−2回のスイッチング周期においてサンプリングした出力電圧eについての処理の一部を(z4)−(z5)で示し、n回のスイッチング周期においてサンプリングした出力電圧eについての処理の一部を(b1)−(b3)で示してある。
【0047】
(a1) まず、n−1回のスイッチング周期(インデックスn−1)において、出力電圧eが検出される。図には表されていないが、eのデジタル値はEo,n−1である。(a2) 次に、n回のスイッチング周期におけるオンタイムTon,nが計算される。
(a3) オンタイムTon,nは制御に反映される。なお、オンタイムTon,nの計算には、
n−2回のスイッチング周期におけるオンタイムTon,nに基づき決定されたゲイン関数(積分ゲイン関数K)が採用されている(図8における(z5)も参照)。
(a4) (n+1)回のスイッチング周期におけるKが決定される。
(a5) オンタイムTon,n+1に、決定された最新のKが反映される(図8における(b3)も参照)。
【0048】
図9および図10に、ゲイン関数Kの例を示す。本実施形態では、ゲイン関数Kのゲイン要素のうち変化するゲイン要素は積分ゲイン関数Kのみである。したがって、図9および図10では、積分ゲイン関数Kのみを示す。
【0049】
図9において、ヒステリシスは矩形であり、積分ゲイン関数Kは、第1値Tより大きい領域では第1ゲイン関数K(定数)に設定され、第2値Tより小さい領域では第2ゲイン関数K(定数)に設定されている。
また、第1値Tより小さくかつ第2値Tより大きい領域では、積分ゲイン関数Kは、第1ゲイン関数Kまたは第2ゲイン関数Kに設定される。
【0050】
図10において、ヒステリシス特性は単調減少関数と定数との組み合わせであり、積分ゲイン関数Kは、第1値Tより大きい領域では第1ゲイン関数K(定数)に設定され、第2値Tより小さい領域では第2ゲイン関数K(変数)に設定されている。
また、積分ゲイン関数Kは、第1値Tより小さくかつ第2値Tより大きい領域では、第1ゲイン関数K(定数)または第2ゲイン関数K(変数)に設定される。
【0051】
《出力電流とオンタイムとの関係》
図11は、降圧型の出力電流とオンタイムとの関係を示す図である。
CCMにおけるTonとIの関係式は以下の式で表される。
【数1】
リアクトル電流iの連続モード(CCM)と不連続モード(DCM)との臨界におけるオンタイムTonと出力電流(ディジタル値I)との関係は、以下の式で表される。
【数2】
さらに、不連続モード(DCM)における制御量(オンタイムTon)と出力電流Iの関係は、以下の式で表される。
【数3】
以上から、出力電流Iに基づき設定していたゲイン関数Kの設定(または変更)は、オンタイムTonに基づき設定できることがわかる。
【0052】
《シミュレーション例》
図12は、ヒステリシス特性が矩形である積分ゲイン関数Kによる制御を行ったときのオンタイムTon、積分ゲイン関数K、出力電圧e、リアクトル電流iの時間推移を示す図である。
ここでは、K=6,K=3,C=470μF、移動平均50回、出力電流が臨界点におけるリアクトル電流iが(5V/50Ω)から(5V/71.5Ω)に変化させている。
ゲインは、急激に切り替えられており、出力波形にやや悪影響が現れている。
【0053】
図13は、ヒステリシス特性が定数と単調減少関数の組み合わせである積分ゲイン関数Kによる制御を行ったときのオンタイムTon、積分ゲイン関数K、出力電圧e、アクトル電流iの時間推移を示す図である。
ここでは、K=6,K=3,C=470μF、移動平均50回、出力電流が臨界点におけるリアクトル電流iが(5V/50Ω)から(5V/71.5Ω)に変化させている。
ゲインは、緩やかに切り替えられており、出力波形には良好な応答が現れていることがわかる。
【0054】
図14は、ヒステリシス特性が矩形である積分ゲイン関数Kによる制御を行ったときのオンタイムTon、積分ゲイン関数K、出力電圧e、アクトル電流iの時間推移を示す図である。
ここでは、K=6,K=3,C=470μF、移動平均50回、出力電流が臨界点におけるリアクトル電流iが(5V/100Ω)から(5V/50Ω)に変化させている。
ゲインは、急激に切り替えられており、出力波形にやや悪影響が現れている。
【0055】
図15は、ヒステリシス特性が定数と単調減少関数の組み合わせである積分ゲイン関数Kによる制御を行ったときのオンタイムTon、積分ゲイン関数K、出力電圧e、アクトル電流iの時間推移を示す図である。
ここでは、K=6,K=3,C=470μF、移動平均50回、出力電流が臨界点におけるリアクトル電流iが(5V/100Ω)から(5V/50Ω)に変化させている。
ゲインは、緩やかに切り替えられており、出力波形には良好な応答が現れていることがわかる。
【0056】
《制御量Tがスイッチのオフタイム値である場合》
制御量計算部12により計算された制御量Tは、スイッチのオフタイム値とすることができる。
【0057】
図16は、ヒステリシス特性が矩形である積分ゲイン関数Kを示している。図16では、オフタイム値Toffが増加した場合に第1値Tと第2値Tとの間でヒステリシスループが形成されている。
【0058】
図17は、ヒステリシス特性が定数と単調減少関数の組み合わせである積分ゲイン関数Kを示している。図17では、オフタイム値Toffが増加した場合に第1値Tと第2値Tとの間でヒステリシスループが形成されている。第1値Tは、リアクトル電流臨界モードの制御点に対応する。
【0059】
《ヒステリシスループの態様》
本発明において、制御量Tが第1値Tと第2値Tとの間にあるときは、第1ゲイン関数Kおよび第2ゲイン関数Kとによりループ(閉じた図形)が形成される。
この閉じた図形は、ひし形、三角形等とすることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 制御装置
2 電力変換回路(DC/DCコンバータ)
3 ドライブ回路
11 出力検出部
12 制御量計算部
13 ゲイン設定部
14 PWM信号生成部
21 スイッチ
22 リアクトル
23 転流用のダイオード
24 キャパシタ
51 直流電源
52 負荷
111 プリアンプ
112 A/D変換器
121 PD制御要素計算部
122 I制御要素計算部
123 PID制御量計算部
131 ゲイン決定部
132 ゲイン設定記憶部
133 過去制御量記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17