【実施例8】
【0258】
次に、実施例8として、ゴルフスイングトレーナーシステムについて説明する。このゴルフスイングトレーナーシステム700は、
図15に示す様に、トレーナー装置710と、モーションセンサ730と、取付ベルト750とから構成され、必要に応じて角度調節ブラケット770を用いる。
【0259】
トレーナー装置710は、
図15(A)に示す様に、正面側に表示画面711、メニューボタン712、及びLEDランプ713を備え、底面に検知センサー部715を備え、側面に電源ボタン716、マイクロUSB端子717、及びマイクロSD挿入口718を備え、充電式のリチウムイオンバッテリを内蔵している。
【0260】
表示画面711には、ウインドウタッチ式3.2インチ超高輝度フルカラー液晶を採用し、検知結果やバッテリ残量などを表示する。メニューボタン712は、各種設定や処理内容の選択等を実行するために、液晶表示装置711にメニュー画面を表示したい、という様なときに押下するボタンである。LEDランプ713は、充電状態を示し、充電中は赤色、充電完了時に青色に点灯する。検知センサー部715は、この面をボールを打つ方向に向けることで、ヘッドスピードなどの各種計測を実行するためのものである。電源ボタン716は、トレーナー装置710の電源をオン/オフするボタンである。マイクロUSB端子717はトレーナー装置710に内蔵されているリチウムイオンバッテリに充電を行う際に付属品のACアダプタを装着するためのものである。また、マイクロSD挿入口718は、検知結果等の記録などに用いるマイクロSDカードを装着するためのものである。これらマイクロUSB端子717、マイクロSD挿入口718は、常にはカバー719で覆われていて、必要なときにカバー719を開くことにより、ACアダプタを接続したり、マイクロSDカードの脱着を行う。
【0261】
モーションセンサ730は、
図15(B)に示す様に、上端面に電源スイッチ731を備え、上部前面の斜めに傾斜した壁面にLEDランプ732を備え、底面にマイクロUSB端子733を備え、充電式のリチウムイオンバッテリを内蔵している。
【0262】
モーションセンサ730には、加速度3軸、角速度3軸のモーション検出用のセンサ類が内蔵されている。電源スイッチ731は、モーションセンサ730の電源をオン/オフするためのスイッチである。LEDランプ732は、後述する様に、その光り方でモーションセンサ730の状態を示す。マイクロUSB端子733はモーションセンサ730に内蔵されているリチウムイオンバッテリに充電を行うときに付属品のACアダプタを装着するためのものであり、常にはカバーで覆われている。
【0263】
取付ベルト750は、合成ゴム製の射出成形体であって、モーションセンサ本体730をゴルフクラブに装着するためのものである。角度調節ブラケット770は、トレーナー装置710を装着して用いるものであり、平坦地ではない場所であってもトレーナー装置710を水平に設置する際に用いる。
【0264】
モーションセンサ730は、実施例1で説明したゴルフスイングセンサ1と同様の内部構造、外面形状等を有している。そして、このモーションセンサ730を取付ベルト750でゴルフクラブの所定位置へと取り付けて本システムを用いることにより、トレーナー装置310にてスイング軌道を表示する処理を実行することができる様になる。本システムは、このスイング軌道の表示において、後ろから見た状態、上から見た状態にも切り替えていろんな方向から見た状態にすることができ、さらに、インパクトの瞬間のヘッドの向きなども記録することができる様に構成されている。
【0265】
取付ベルト750は、
図16に示す様に、元側端752aから自由端752bに向かって上下方向に並ぶ様に3つの横長開口部752c〜752eを備えた形状となっていて、モーションセンサ730をゴルフクラブのシャフトに取り付けたときに引っ張り力を生じる部分として、これら3つの横長開口部752c〜752eの上下に位置する4本の紐状部752f〜752iを備えている。
【0266】
これら3つの横長開口部752c〜752eは、元側端752aから開口長の約1/3の位置で紐状部752fの内面から紐状部752iの内面に達する第1の中仕切部752mと、その右側に開口長の約1/4離れた位置で紐状部752fの内面から紐状部752iの内面に達する第2の中仕切部752nとにより、長手方向において三つの小開口752c1〜752c3,752d1〜752d3,752e1〜752e3に分割された形態となっている。
【0267】
また、上下の横長開口部752c,752eは上下方向寸法(以下、「幅」という。)及び左右方向寸法(以下、「長さ」という。)が互いに等しく同一形状の左右方向に細長い長円形状となっている。中央の横長開口部752dは、長さが上下の横長開口部752c,752eと等しく、幅が上下の横長開口部752c,752eの約2倍となる様な四隅をR取りされた矩形状の開口部となっている。なお、各小開口752c1〜752c3,752d1〜752d3,752e1〜752e3も、四隅をR取りされた矩形状の開口となっている。
【0268】
上下方向に並んでいる4本の紐状部752f〜752iは、円形断面を有する元側端752aの直径の約2倍の長辺を有する長円形断面のものとなっていて、それぞれ、背面を元側端752aと面一にし、正面側へ飛び出す様に実施例1のものよりも肉厚に構成されている。この飛び出し量は、膨出部752kよりも外へ飛び出さない量として見た目に違和感を生じない寸法としている。また、これら紐状部752f〜752iは、元側端752aにおいて元側端725aを構成する部分に連続しつつ各横長開口部252c〜2522eの隣り合うR角の部分を埋める様に一体化されている。
【0269】
各横長開口部752c〜752eは、自由端752b側においても隣り合うR角の部分を埋める様に平板状部752jによって一体化されている。この平板状部752jは、元側端752aの直径と同じ肉厚となっていて、4本の紐状部752f〜752iは、背面を平板状部752jと面一にし、正面側へ飛び出す様に平板状部752jと一体化されている。そして、この平板状部752jの先端である自由端752bには前後方向に膨らむ様に膨出部752kが一体形成されている。なお、平板状部752jは、指で摘むことのできる面積を有し、膨出部752kは平板状部752jの自由端側の端から連続する前後面を有し、自由端に向かって徐々に肉厚が厚くなり、最大約3倍の肉厚となっていて、平板状部752jの前後面を摘んだ指が自由端方向に抜け難くする役割を果たしている。
【0270】
本実施例においては、複合リング状に構成された取付ベルト750の各横長開口部752c〜752eの左端の小開口752c1〜752e3が掛け輪部に相当する。また、本実施例では、後述の様に、第1の中仕切部752mを元側端と見立てた状態として中央の小開口752c2〜752e2を掛け輪部として使用することもできる。なお、右端の小開口752c3〜752e3も場合によっては掛け輪部として使用することもできるが、本実施例では、第2の中仕切部752nは、紐状部752f〜752iの補強を主目的に備えられていて、中央の小開口752d1〜752d3を掛け輪部として用いるときの紐状部752f〜752iの長さ方向への伸び方を安定させるために備えたものである。
【0271】
モーションセンサ730は、
図17に示す様に、実施例1のゴルフスイングセンサ1とほぼ同様の構成からなる。L型のフックなど同様の構成については、実施例1のゴルフスイングセンサ1において説明したのと同じ符号を付し、詳しい説明は省略する。モーションセンサ730は、後部筐体11の裏面側に装着されるゴム製当接部材735が、その背面側を円弧状溝部736とされると共に、背面全体を覆う様に矩形の肉厚5mmで縦横寸法が40.5mm×15mmのスポンジ体737を貼り付けた構造となっている点が異なっている。なお、このゴム製当接部材735は、断面図に示す様に、周囲に高さ1mm肉厚1mmの縁738を備えていて、スポンジ体737はこの縁738の内側に嵌り込み、円弧状溝部736の円弧に沿う様に全面で貼り付けられる。スポンジ体737は、この縁738の内側に収まる様に貼り付けられる結果、使用している内に接着が剥がれても縁が浮き上がり難い。ゴム製当接部材737に縁738を備えさせたことにより、スポンジ体737の機能及び見た目を損なわない効果が発揮される。
【0272】
実施例8は、
図18(A),(B)に示す様に、取付ベルト750を、その元側端752aをモーションセンサ730の後部筐体11の左側面から横方向へ張り出す様に形成されたバンド保持用のフック12a〜12cに対して外れ止めされた状態となる様に取り付け、
図18(C)に示す様に、モーションセンサ730の裏面のスポンジ体742をゴルフクラブのグリップ3bに近い位置のシャフト3aに押し当てる様にしながら、取付ベルト750の自由端752bをまっすぐに引っ張りつつ巻き付ける様にゴルフクラブ3の背面に取り回し、後部筐体11の右側面から横方向へ張り出す様に形成された掛け止め用のフック13a〜13cに対して引っ掛ける様にしてゴルフクラブに装着する。
【0273】
本実施例では、モーションセンサ730のクラブ設置面をスポンジ体737としているので、取付ベルト750に生じる引っ張り力とスポンジ体737に生じる圧縮力とが作用してモーションセンサ730をゴルフクラブ3aに対してしっかりと装着することができる。
【0274】
適切な装着位置は、
図18(C),(D)に示す様に、フェース面の反対側にモーションセンサ730が位置し、グリップ3bから約2cm程度下側となる位置である。なお、後述するセンサ取付位置校正により校正をすることができるけれども、クラブのスイング軌道を計測する上では、グリップ3bから余り下にしない方がよく、最適な取付範囲は、グリップ下端から2〜5cmの範囲である。このとき、電源スイッチ731及びLEDランプ732がグリップ側に位置する様に取り付ける。
【0275】
なお、
図18(B)の下側矢印で示す様に、第1の中仕切部752mをバンド保持用のフック12a〜12cに対して外れ止めされた状態となる様に取り付けて用いることで、よりきつく締め付ける様に装着することもできる。
【0276】
本実施例のトレーナーシステムを利用するに当たっては、まず、
図19(A),(B)に示す様に、トレーナー装置710及びモーションセンサ730を、マイクロUSBコネクタ端子781を有するACアダプタ780を用いて家庭用電源から充電しておく。このとき、トレーナー装置710のLEDランプ713、モーションセンサ730のLEDランプ732は、充電中は赤色、充電完了で青色に点灯する。それぞれ、充電が完了したら、マイクロUSB端子781を抜き取ってカバー719,734をしっかりと閉じる。なお、トレーナー装置710及びモーションセンサ730は、満充電になると自動的に充電を停止する構成を備え、過充電にならない様にされている。
【0277】
また、トレーナー装置710には、
図20(A)に示す様に、カバー719を開き、マイクロSDカード790を装着し、カバー719をしっかりと閉じておく。このマイクロSDカード790にゴルフ練習の記録を保存することができ、取り出してパソコン等にインストールすることもできる。角度調節ブラケット770は、
図20(B)に示す様に、ベース771と、ボール状嵌合部772を有するブラケット773とから構成され、
図20(C)に示す様に、トレーナー装置710の底面に設けた穴710aにブラケット773の突起部774を差し込む様にして装着する。この角度調節ブラケット770を装着することにより、
図20(D)に示す様に、トレーナー装置710を上下方向、左右方向に回動させて本体が水平になる様に角度調節を行うことができる。これにより、平坦でない場所においても正確な計測等を行うことができる。
【0278】
本実施例のゴルフスイングトレーナーシステム700は、
図21に示す様に、トレーナー装置710の表示画面711を用いて、「ヘッドスピード」「推定飛距離」「ボールスピード」「ミート率」の4項目を同時表示することができる「スイングモード」と、「スイング軌道」を表示する「Arcモード」とを備えている。
【0279】
「スイングモード」における表示内容の「ヘッドスピード」はクラブヘッドのスピード、「推定飛距離」は使用クラブとヘッドスピードまたはボールスピードから算出した飛距離、「ボールスピード」はボールのスピードであり、「ミート率」は「ボールスピード÷ヘッドスピード」の数値により、クラブからボールへ 伝わるスイングの効率を表している。また、横1項目の表示や、履歴表示、グラフ表示へと表示を切り替えることができる構成となっている。
【0280】
「Arcモード」は、モーションセンサ730を装着して行うモードであって、「スイング軌道」以外に、「フェース軌道」「ショットデータ」の表示に切り替えることができる構成となっており、さらには「スイング軌道」に対する「お手本」の表示も実行できる構成となっている。
【0281】
本実施例のゴルフスイングトレーナーシステム700は、
図22に示す様に、トレーナー装置710と、モーションセンサ730の間でブルートゥースによる送受信を行うことで、トレーナー装置710の表示画面711に対して、上述の様な「Arcモード」の表示を行うことができるシステム構成となっている。
【0282】
トレーナー装置710は、ドップラセンサ721、アンプ722、コンパレータ723、第1マイクロコントローラ724、第2マイクロコントローラ725、表示制御部726、記録部727、スイッチ群728及び送受信部729を備えている。
【0283】
ドップラセンサ721は、出力周波数が24.15GHzのマイクロ波ドップラーセンサである。ドップラーセンサ721の出力信号(1波がゴルフクラブのヘッドの6mmの移動に相当する信号)は、アンプ722で増幅され、コンパレータ723によって基準値と比較され、ドップラーパルス(基準値以上の場合にハイレベルで基準値より小さい場合にはローレベルの信号)として出力される。このドップラーパルスは、第1マイクロコントローラ724へ入力される。
【0284】
第1マイクロコントローラ724では、このドップラーパルスに基づいてスイング速度(ヘッドスピード)を算出する。また、アンプ722で増幅された信号は、第2マイクロコントローラ725に入力される。
【0285】
第2マイクロコントローラ725では、アンプ722で増幅されたドップラー信号に基づいてボールスピードを算出する。この第2マイクロコントローラ725により算出されたボールスピードは、第1マイクロコントローラ724へと入力される。
【0286】
第1マイクロコントローラ724は、それ自身が算出したヘッドスピード及び第2マイクロコントローラ725が算出したボールスピードに基づいて、推定飛距離やミート率を算出する。そして、第1マイクロコントローラ725は、ヘッドスピード、ボールスピード、推定飛距離、及びミート率のデータに基づいて、表示制御部726への表示、記録部727での記録を行う。なお、第1マイクロコントローラ724は、スイッチ群728からの入力により、表示の切り替えや、モードの切り替えなどを実行する。そして、スイッチ操作でArcモードが選択されているときは、送受信部729で受信したモーションセンサ730からの検出信号に基づいてスイング軌道の算出、表示などを実行する。
【0287】
その他、第1マイクロコントローラ724は、アンプ722に対して増幅率の調節も行う構成となっている。第1マイクロコントローラ742は、さらに、送受信部729を介してモーションセンサ730に対するデータ送信要求等の処理も行う。
【0288】
モーションセンサ730は、マイクロコントローラ741、センサ742、LED制御部743、及び送受信部745を備えている。
【0289】
マイクロコントローラ741は、センサ742の検出信号を入力し、必用な演算処理を実行して送受信部745を介して送信する。この送受信部745から送信さされた信号は、トレーナー装置710の送受信部729で受信されて上述のArcモードにおける各種表示などが実行される。センサ742は、加速度3軸、角速度3軸のモーション検出用のセンサである。マイクロコントローラ741は、送受信部745を介してトレーナー装置710から受信したデータ送信要求に対応するための処理も実行する。また、マイクロコントローラ741は、LED制御部743を介して、LEDランプ732の点灯・点滅状態を制御する。
【0290】
モーションセンサ730のマイクロコントローラ741によるLEDランプ732に対する点灯・点滅制御の内容を
図23(A)に示す。
【0291】
(1)「充電中」の状態においては、「赤色」の点灯を行う。
(2)「充電中(電源オン)」の状態においては、「赤色」「黄色」を交互に点灯させる。この場合の「赤色」「黄色」の点滅パターンは、ブルートゥースの接続状態によって変わる。
(3)「充電完了」の状態になると、「青色」の点灯を行う。
(4)「充電完了(電源オン)」の状態においては、「青色」「水色」を交互に点灯させる。この場合の「青色」「水色」の点滅パターンは、ブルートゥースの接続状態によって変わる。
(5)「充電異常」の状態においては、「ピンク色」に点灯させる。温度異常や過充電の可能性をユーザーに報知するためである。
(6)「電源オン(ブルートゥース・未接続)」の状態においては、「緑色」の速い点滅とする。
(7)「電源オン(ブルートゥース・ペアリング中)」の状態においては、「緑色」の点灯と消灯によるゆっくりとした点滅を行う。
(8)「電源オン(ブルートゥース・接続中)」の状態においては、「緑色」の2回点灯と所定時間の消灯からなるパターンの点滅を行う。
(9)「モーション検知中」の状態においては、「緑色」に点灯する。このパターンは、ブルートゥース接続状態にあってトレーナー装置710が「スイングモード」「Arcモード」又は「練習モード」に起動されているときに実行される。
(10)「モーション演算中」の状態においては、「緑色」の2回点灯と所定時間の消灯からなるパターンの点滅を行う。「モーション演算中」とは、スイングを行った後にスイング軌道等を演算している状態である。(9)の「緑色点灯」の状態になるまで、次のスイングを待たせるための表示である。
【0292】
なお、モーションセンサ730における上述の(9)「緑色点灯継続」の点灯パターンは、トレーナー装置本体710の第1マイクロコントローラ724が、モーションセンサ730からの検出信号(2msのサンプリング間隔で送信される)に基づいて「ユーザーがゴルフクラブを構えてほぼ静止した状態」であると判定したことをモーションセンサ730に対して無線通信によって通知することにより、開始される。また、モーションセンサ730における上述の(10)「緑色2回点灯・消灯」の点滅パターンは、トレーナー装置本体710の第1マイクロコントローラ724が、モーションセンサ730からの検出信号に基づいて「ボールへのインパクトが完了してスイング終了した状態」であると判定したことを無線通信によって通知することにより、開始される。
【0293】
ここで、「ほぼ静止した状態」か否かは、構えた後にクラブを前後に振る癖などのあるユーザーに対しても静止状態の判定に対するチャタリングを起こさない様に、「静止状態解除」についての判定条件には幅を持たせてある。また、「スイング終了」は、「インパクトの衝撃」に対応する検出信号を利用して判定する。従って、「空振り」の場合には「スイング終了」ではなく「静止状態解除」の判定となるが、再度構えて「静止状態」をとれば、「緑色点灯継続」の状態となり、直ちにスイングを計測することが可能となる。
【0294】
なお、本実施例においては、トレーナー装置710において、
図23(B)に示す様に、本体の充電状態を表示するアイコン711aと共に、モーションセンサ730の充電状態を示すアイコン711bを表示画面711に表示する構成も備えている。
【0295】
トレーナー装置710は、
図24(A)に示す様に、電源オフ状態において電源ボタン716を2秒以上長押しすることによって電源オンとなり、電源オン状態において電源ボタン716を2秒以上長押しすることによって電源オフとなる様に構成されている。モーションセンサ730は、
図24(B)に示す様に、電源スイッチ731をオンに切り替えることで電源オンとなる。前述の様に、電源オンに切り替えられた直後は、LEDランプ732が「緑色点滅」の状態となる。なお、
図24(B)は、電源スイッチ731がオフ側に倒された状態を表している。
【0296】
トレーナー装置710を電源オンとした後、
図24(C)に示す様に、メニューボタン712を押すと、表示画面711にはメニュー画面が表示される。図示の様に、本実施例では、「スイングモード」「Arcモード」「設定モード」「練習モード」「Arc再生モード」及び「電源オフ」がメニュー画面から選択できる構成となっている。これらのメニュー画面上のモードボタンに指で触れることで、モード選択を行うことができる。
【0297】
(1)「スイングモード」は、既に説明した様に、「ヘッドスピード」「推定飛距離」「ボールスピード」「ミート率」を検知し、表示するモードである。また、一定基準を満たすと、「ナイスショットアニメーション」を表示する。さらに、スイングデータのクラブ毎の平均値や、各クラブでの数値を表示することもできる。また、各項目をグラフで表示することもできる。
(2)「Arcモード」は、モーションセンサ730でクラブの軌道を検知し、表示するモードである。
(3)「設定モード」は、日時や左利き設定など、本体の設定を変更するモードである。
(4)「練習モード」は、目標距離設定を自動または手動で設定するモードである。このモードにおいては、一定基準を満たすと、「ナイスオンアニメーション」を表示する構成となっている。
(5)「Arc再生モード」は、記録したスイング軌道(Arc)を再生するモードである。
(6)「電源オフ」にタッチすると、電源ボタン716の長押しをしなくても本体の電源をオフにすることができる。
【0298】
本システムを利用するにあたり、まず、日時の設定を行う。日時設定を行うことでゴルフスイングで検知したデータに記録日時を付けることができる。データ管理ソフトで確認を行う際、記録日時を目印として、ファイルの選択やデータの比較を行うことができる。なお、電池を装着した直後は、2013年1月1日0時0分にデフォルト設定されている。
【0299】
操作方法は、
図25(A)に示す様に、メニュー画面の「設定」にタッチし、右スクロールにタッチして「システムタブ」を表示する。次に、「一般」にタッチし、切り替わった画面の「一般」にタッチし、切り替わった画面で「日付と時刻」にタッチする。以下、「テンキー」「clear」「OK」を操作して年、月、日、時、分の順番に入力する。
【0300】
[スイングモード]
次に、「スイングモード」の操作手順について説明する。
図25(B)に示す様に、メニュー画面の「スイング」にタッチし、切り替わった画面のクラブボタンにタッチするとクラブ選択画面が表示される。本実施例では、選択可能なクラブの種類として、「ウッド」「ユーティリティ」「アイアン」「ウェッジ」「パター」を用意している。1番ウッドを選択する場合は、図示の様に、「ウッド」にタッチし、切り替わった画面で「1W」にタッチすればよい。
【0301】
「スイングモード」における「飛距離表示」は、ボールスピードが検知できた場合は、当該ボールスピードから算出する。素振りやロフト角の大きいクラブ(アイアン、ウェッジ)で打った球など、ボールスピードが検知できなかった場合は、ヘッドスピードに基づいて算出する。ボールスピードから算出した飛距離は、ヘッドとボールの反発係数が加味されているため、ヘッドスピードから算出した飛距離と比較して、より正確な数値を算出することができる。
【0302】
ここで、本実施例のシステムでは、「飛距離算出基準」を以下の様に定めた演算処理を行っている。
(1)市販されている一般的なクラブをもとに、数多くのデータ収集から得られた係数をもとに算出する。
(2)飛距離は、平均的なスピン量、無風状態、フラットな地形を想定した、ランを含めた値として算出する。
(3)打球の方向性は加味しない。
なお、使用されるクラブによっては、飛距離表示と実際の飛距離に誤差が生じる場合がある。
【0303】
この様な飛距離算出を行うために、本実施例においては、トレーナー装置710の記憶装置内に、
図25(C)に示す様に、クラブの種類とロフト角度が予め設定されている。
なお、ウェッジについては、初期設定値を変更することもできる構成を採用している。
【0304】
「ミート率」は、「ボールスピード÷ヘッドスピード」として算出する。一般的には1.56が最高値(ボールの最大反発係数)といわれている。本実施例における「ナイスショットアニメーション表示」は、ミート率(ボールスピード÷ヘッドスピード)が1.40以上になると表示される設定を初期設定としている。なお、「ナイスショットアニメーション」は、ウッド系のクラブを選択したときのみ表示される。
【0305】
次に、本実施例のシステムを用いて「スイングモード」を実行するための手順等について説明する。
図26は、ウッド系のクラブを選択する場合の装置の設置位置等を示している。
図26(A)に示す様に、トレーナー装置710の検知センサー部715を、ボールを打ち出す方向に向けて後方約1〜1.5m離れた位置に、トレーナー装置710とボールの間に障害物がないように水平に設置する。このとき、設置場所に起伏があるときは、角度調節ブラケット770を用いる(
図20(D)参照。)。なお、図は、右打ちの場合を示している。
【0306】
本実施例のシステムは、既に述べた様に、4項目同時表示の他に1項目横表示の表示方法も可能となっている。基本は4項目同時表示であり、
図26(B)に示す様に、特に表示したい項目にタッチすると当該項目を大きく横向き表示した画面へと切り替えることができる。これにより、ユーザーは、自分が一番知りたい項目を
図26(A)の立ち位置からもよく見ることができる。
【0307】
ユーザーがスイングをすると、トレーナー装置710は、ドップラセンサ721からの信号に基づいて、ヘッドスピード計測、ボールスピード計測、飛距離算出、ミート率算出の演算処理を実行する。この演算処理を行っている間は、表示画面711に「お待ちください」というメッセージが表示される。検知結果が得られると、当該検知結果が点滅表示され、その後点灯に切り替わり、結果が更新されたことを知らせる。
【0308】
本実施例では、この検知結果を500件まで履歴として保存することができる様に、本体内に記憶領域を備えている。なお、検知結果の表示が点滅から点灯に変わったあと、検知結果画面を2秒間タッチすると、その履歴は削除できる構成となっている。
【0309】
なお、素振りでもヘッドスピードの表示は可能である。上述の様に、ボールスピードが検知されないときもヘッドスピードに基づいて飛距離算出をする機能を有しているが、軽く素振りした様な場合で、ヘッドスピードが遅く、ヘッドスピードに基づいて算出した飛距離が約30ヤード以下の場合は、表示を行わない構成としている。
【0310】
こうして得られた検知結果は、前述の様に「日時の設定」をしておくことにより、検知したデータに取得日と時間を対応付けた記録を行うことができる。
【0311】
なお、次のような場合、正しく表示できないことがある。
(1)ボールの軌道が高い(打ち出し角が大きい)場合や左右に逸れた場合はボールスピードの検知が行えないことがある。
(2)ロフト角の大きいクラブは打ち出し角も大きくなるため、ボールスピードの検知ができないことがある。また、ミート率の値は低くなる。
(3)ゴルフ練習用ネットなどを使用した場合、ボール置き位置からネットまでの距離が3m以下の場合は、ボールスピードの検知が行えないことがある。
(4)ボールスピードが20.0m/s未満の場合は検知できない。
(5)ヘッドスピードが15.0m/s未満の場合は検知できない。
(6)近距離で複数台を使用すると正しく検知できないことがる。従って、複数台を使用する場合は、互いの距離を少なくとも2m程度開けることが望ましい。
【0312】
図26(C)に示す「ナイスショットアニメーション」は、ウッド系のクラブを選択したときのみ表示される構成としている。初期設定においては、ミート率が1.40以上になると「ナイスショットアニメーション」を表示する設定としている。なお、「ナイスショットアニメーション」は、「表示しない」へと設定変更することが可能な構成も採用している。
【0313】
次に、「スイングモード」において「パター」を選択する場合の装置の設置位置等を説明する。この場合、まず、
図27(A)に示す様に、メニュー画面で「スイング」にタッチし、クラブボタンにタッチし、パターを選択する。次に、
図27(B)に示す様に、トレーナー装置710を、ボールの打ち出しラインに対してユーザーの反対側に約20cm離れると共に、ボールの位置から打ち出し方向に約20cm進んだ辺りに後端部が位置し、検知センサー部715を、ボールの打ち出し方向約1m先に向ける様に設置する。このときも、トレーナー装置710とボールの間に障害物がないように水平に設置し、起伏があるときは、角度調節ブラケット770を用いる。この図も、右打ちの場合を示している。
【0314】
ユーザーがパッティングを行うと、トレーナー装置710は、ドップラセンサ721からの信号に基づいて、ボールスピード計測、推定飛距離算出の演算処理を実行し、検知結果として
図27(C)に示す様に、推定飛距離とボールスピードとを表示する。なお、演算処理を行っている間の「お待ちください」メッセージの表示、検知結果が得られたときの点滅から点灯への表示の切り替えは、ウッドの場合と同様である。
【0315】
このパッティングに対する計測・演算においては、次の様な条件等を採用している。
(1)グリーンの速さ(スティンプ)は、7.8フィートを想定して算出している。
(2)ボールの動いた距離が短い(約1m以下)場合は、検知できない。
(3)ヘッドスピードは検知できない。
(4)検知エリア付近に動くものや人がいる場合、正確な検知ができない場合がある。逆に、検知エリア付近に動くものや人がいる場合、それらの動きに基づいて検知・表示することがある。
(5)芝や起伏、その他の条件により、実際の距離とは一致しないことがある。
(6)近距離で複数台を使用すると正しく検知できないことがる。従って、複数台を使用する場合は、互いの距離を少なくとも2m程度開けることが望ましい。
【0316】
こうして「スイングモード」における計測等を行った検知結果は、前述の様に、トレーナー装置710の記憶領域に保存されている。そこで、
図28(A)に示す様に、スイングモード画面の「履歴ボタン」にタッチし、切り替わった画面の「履歴表示」にタッチすることにより、「履歴表示画面」を呼び出すことができる。
【0317】
「履歴表示画面」は、最新の履歴から、7件ずつ表示する構成となっていて、「次頁」にタッチすることで、次の7件の表示に切り替わる。図示の例は、1番ウッドに関するものであり、上段の「No.」は履歴の最新を1とする連続番号、「H/S」はヘッドスピード、「距離」は推定飛距離、「B/S」はボールスピード、「ミート」はミート率を意味する。小さな画面を利用している結果、項目名を省略表記し、一回分を一行に要領よく表示する構成を採用している。
【0318】
また、最上段には、ヘッドスピード、ボールスピード、推定飛距離、ミート率の平均値が表示される。この平均値は、「次頁」「前頁」にタッチしても切り替わらない構成となっていて、平均値と比較することで、スイング毎の出来・不出来を知ることができる。
【0319】
クラブボタンにタッチし、他の種類のクラブを選択すると、選択したクラブに関する履歴を確認することができる。なお、クラブ未選択あるいは全クラブ選択の場合は、
図28(B)の様に、平均値欄に数値の入らない状態で履歴表示を行う。また、素振りなど、ヘッドスピードのみ検知した場合には、ボールスピードやミート率は空欄となる。
【0320】
図28(C)に示す様に、履歴機能選択画面において「グラフ表示」にタッチすると、履歴日付確認画面に切り替わる。「日付と時刻」にタッチすると、日付指定画面に切り替わり、グラフ表示したい日付にタッチして表示対象を選択する。なお、履歴日付確認画面で「全て」にタッチした場合は、日付指定画面には進まない。本実施例では、日付までで管理しており、時分の指定はしない構成としている。
【0321】
こうしてグラフ表示の対象とする日付を選択すると、
図28(D)の上側の欄に示す様に、「履歴表示項目選択画面」を表示する。ユーザーが「ヘッドスピード」「推定飛距離」「ボールスピード」「ミート率」のいずれかにタッチすると、下側の欄に示す様に、タッチした項目に対応するグラフ表示画面に切り替わる。
【0322】
各グラフは、1頁に最大100件のデータをグラフ表示し、戻りボタンにタッチすることで古いデータを、送りボタンにタッチすることで新しいデータを読み出して表示することができる構成となっている。また、クラブ切替ボタンにタッチすることで、このグラフ表示画面からクラブ選択を行うこともできる構成となっている。さらに、縦軸設定ボタンにタッチすることで、縦軸の表示範囲を変更することもできる構成となっている。
【0323】
次に、履歴の保存について説明する。
図29(A)に示す様に、メニュー画面で「スイング」にタッチし、
図29(B)に示す様に、切り替わった画面の「履歴ボタン」にタッチし、履歴機能選択画面で「保存」にタッチすることにより、トレーナー装置710においてSDカードへの履歴保存のための処理が開始する。保存処理を実行している最中は、図示の様に「保存中...SDカードを抜かないで下さい」というメッセージと処理の進行状態を示す記号が表示される。保存が完了すると、「終了しました」というメッセージを表示する。
【0324】
履歴の消去を行うときは、
図29(C)に示す様に、「履歴ボタン」にタッチし、履歴機能選択画面で「消去」にタッチすると、「履歴を消去しますか?」という問いかけメッセージと共に「はい」「いいえ」のボタンを表示して確認を行う。そして、「はい」がタッチされたとき、トレーナー装置710において履歴消去の処理が開始する。履歴消去が完了すると「履歴を消去しました」というメッセージを表示し、2秒後に履歴画面に戻る。なお、確認に対して「いいえ」を選択したときも履歴画面に戻る。履歴消去が完了すると、履歴数は0になる。
【0325】
[練習モード]
次に、本実施例のシステムを用いて「練習モード」を実行するための手順等について説明する。「練習モード」は、設定した目標距離を狙ってショットする練習のためのもので、ランダムに設定された目標距離を狙ってショットする「自動」と、任意に設定した飛距離を狙ってショットする「手動」がある。
図30(A)に示す様に、メニュー画面で「練習」にタッチし、
図30(B),(C)に示す様に、開いた画面で「自動」または「手動」のいずれかにタッチする。
【0326】
「自動」にタッチしたときは、トレーナー装置710の内部処理によって目標距離が、50〜150ヤードの間でランダムに設定される。「手動」にタッチしたときは、テンキーを操作して、目標距離を50〜150ヤードの間で入力し、「OK」にタッチして設定する。目標設定距離の上限と下限、クラブ選択、スピード単位、飛距離単位、グリーン半径、ナイスオンアニメーション表示について、
図30(D)に示す様に、設定可能な範囲、初期設定値が定められている。これら目標設定距離の上限と下限、グリーン半径、スピードと距離の単位は、設定により変更することができる。
【0327】
目標距離の設定が完了したら、
図30(E)に示す様に、クラブボタンにタッチし、クラブ選択を実行する。図示の様に、パターは選択可能なクラブには入っていない。「練習モード」は、トレーナー装置710の推定飛距離演算機能を利用し、目標設定距離と比較して「ナイスオンアニメーション」の表示対象とするか否かを決定する演算処理を行うモードだからである。
【0328】
「練習モード」における装置の設置位置は、
図30(F)に示す様に、「スイングモード」のときと同様で、トレーナー装置710の検知センサー部715を、ボールを打ち出す方向に向けて後方約1〜1.5m離れた位置に、トレーナー装置710とボールの間に障害物がないように水平に設置する。
【0329】
ユーザーがスイングをすると、トレーナー装置710は、ドップラセンサ721からの信号に基づいて、ヘッドスピード計測、ボールスピード計測、飛距離算出、ミート率算出の演算処理を実行し、推定飛距離を検知する。この検知結果が表示画面に点滅表示される。そして、推定飛距離が目標距離の半径±10ヤード以内の場合、表示画面に対して、
図30(G)に示す様な「ナイスオンアニメーション」を表示する。検知結果の点滅が終わると、次のボールについて練習モードの処理が可能となる。なお、前述の様に、ナイスオン判定のためのグリーン半径、ナイスオンアニメーション表示の有無は、設定により変更することができる。
【0330】
[Arcモード]
次に、本実施例のシステムを用いて「Arcモード」を実行するための手順等について説明する。「Arcモード」は、トレーナー装置710とモーションセンサ730とを用いて、スイングしたときのスイング軌道を記録するモードである。モーションはスイングごとに一時記憶するが、保存しないままで次のスイングを行うと消えてしまう構成となっている。保存するには一打ごとに、「保存」ボタンをタッチし保存する構成で、最大30件をトレーナー装置710の記憶装置に保存することができる構成となっている。
【0331】
まず、
図31(A)に示す様に、使用するクラブのグリップ3bの下端から約2cm下側にモーションセンサ730の上端が位置する様に取り付けベルト750を用いてしっかりと取り付ける。このとき、モーションセンサ730がシャフト3aに対してフェース面の反対側に位置し、電源スイッチ731及びLEDランプ732がグリップ側に向いた状態に取り付ける。
【0332】
こうしてモーションセンサ730をクラブシャフトに取り付けたら、次にクラブ選択を行うと共に、センサー取付位置とフェース面の校正を行う。この操作は、
図31(B)に示す様に、メニュー画面で「設定」にタッチし、
図31(C)に示す様に、設定画面の送りスイッチにタッチしてArcタブを表示させ、「クラブ」にタッチしてクラブ設定画面を表示させてクラブの選択を実施した後、「センサー取付位置」にタッチして、テンキー入力によってセンサー取付位置を入力する。センサー取付位置は、ヘッドの先端からモーションセンサ730までの距離で50〜100cmの範囲内で校正することができる構成となっている。
【0333】
センサー取付位置の校正が完了したら、
図31(D)に示す様に、クラブ設定画面に戻り、「フェース面校正」にタッチする。すると、トレーナー装置710は、表示画面にフェース面校正の方法を図と文章で示した画面を表示する。ユーザーは、この画面の図と文章による指示に従って、モーションセンサ730を装着したクラブを水平面にフェースを合わせた状態として「OK」にタッチする操作を行う。「OK」にタッチされると、トレーナー装置710は、モーションセンサ730との間で通信を行い、フェース面の校正を行う。このとき、センサー取付位置のデータとクラブ選択データとを参照し、モーションセンサ730によるモーション検知位置とフェース面との位置関係を検知する処理が実行される。校正が完了したら、その旨を表示画面に表示する。なお、この操作を行う際には、モーションセンサ730の電源もオンの状態としておく。
【0334】
次に、
図31(E)に示す様に、「スイングモード」の場合と同様に、起伏のない平坦な場所に水平となり、ボールとの間に障害物がないようにトレーナー装置710を打点の後方約1〜1.5mの位置に設置する。なお、この様に設置することで、「Arcモード」と「スイングモード」の計測・演算を同時に実行することができる状態となる。なお、モーションセンサ730とトレーナー装置710との間でブルートゥースが接続状態であれば「Arcモード」の計測・演算は可能である。従って、ヘッドスピード等のデータが必用ないユーザーにあっては、
図31(E)の設置方法に限定されず、間に障害物や他の電波を発生するものがない環境でブルートゥース接続可能な位置にトレーナー装置710を設置すれば足りる。
【0335】
以上の様にしてモーションセンサ730の装着と、トレーナー装置710の設置が完了したら、それぞれの電源がオンの状態となっていることを確認し、トレーナー装置710のメニュー画面から「Arc」にタッチし、クラブを構える。このとき、モーションセンサ730のLEDランプ732は、「緑色」の速い点滅、1回点灯と消灯の繰り返し、2回点灯と消灯の繰り返し、継続点灯のいずれかの状態となる。
【0336】
図21(A)の表に示した様に、「緑色」の速い点滅は「ブルートゥース未接続状態」、1回点灯と消灯の繰り返しは「ブルートゥースペアリング中」、2回点灯と消灯を繰り返す状態は「ブルートゥース接続中有」又は「モーション演算中」、点灯継続状態は「モーション検知中」である。スイングを行ってモーション検知を実行できるのは、「緑色」の継続点灯状態である。ユーザーは、この「緑色」の点灯継続状態を確認したら、いつでもスイングを実行することができる。なお、「緑色」の点灯継続状態は、モーションセンサ730からの信号からクラブが静止した状態であって、トレーナー装置710側でのモーション演算処理が行われていない状態である。クラブ静止状態か否かの判定はトレーナー装置710側で行っており、ある程度の範囲でクラブを動かしていても静止状態と判定できる様に判定条件を定めてある。これは、アドレス姿勢をとったときにクラブを微妙に動かす癖のあるユーザーがいることを考慮したものである。
【0337】
ユーザーは、アドレス姿勢をとり、モーションセンサ730のLEDランプ732の緑色点灯継続状態を確認したら、スイングを行う。電源投入直後に初めて使用するときは、
図32(B)の左側の様な人がクラブを構えている状態の画像が表示される。この状態で素振りをしてもモーション演算は実行されない。これは、モーション演算には、ボールへのインパクトが必用な演算条件がトレーナー装置740に設定されているからである。
【0338】
ユーザーがスイングし、ボールへのインパクトが生じると打点が定まり、その前後のモーションセンサ730からのセンサ信号に基づいて、トレーナー装置410がスイング軌道を演算する。そして、
図32(B)の右側の画面の様にクラブを振る様に人の画像が動くと共にスイング軌道が描かれる動画を表示する。この動画の表示は、繰り返し再生されるが、自動的に保存することはしていない。スイング軌道を保存するときは、画面の「保存」ボタンにタッチする。トレーナー装置710は、保存ボタンへのタッチを検知したときに、現在動画表示しているスイング軌道に関するデータを保存する。本実施例における最大保存可能個数は30個である。
【0339】
スイング軌道を繰り返し表示している画面にタッチすると、
図32(C)に示す様に、「正面(やう上から)」、「後方」、「上面」、「正面」とスイング軌道を見せる方向を異ならせた表示に切り替わる。各表示共に、動画で繰り返し再生される。
【0340】
ここで、図では色を表示できないためわかりにくいが、本実施例においては、スイング開始からスイング終了までの軌道の表示色を青から黄色を経て赤へと徐々に変化させ、アップスイングとダウンスイングの区別が色合いによって判断できる表示態様を採用している。なお、ゴルフスイングの場合、アップスイングからダウンスイングへの変極点が生じることから、変極点を算出してアップスイング部分は青色、ダウンスイング部分は赤色という様に、変極点を境にして表示色を変更する表示態様としてもよい。これらの表示態様により、スイング軌道を描き終えた状態の画面においてもアップスイングとダウンスイングとを区別することができ、軌道の修正を行う際の情報をより正確に伝えることができる。なお、本実施例では動画によってスイング軌道を描く処理を行っているから、これによってもアップスイングとダウンスイングの軌道を区別することができている。
【0341】
また、スイング軌道の描画に当たっては、特に、
図32(C)の「後方」「上面」から明瞭に読みとれる様に、人形とボールとを表示画面の中央に対して左右に振り分け、ボールが中央よりも右側にずれて位置する表示態様を採用している。これにより、スイング軌道を表示画面上により大きく描画することができる。
【0342】
また、「切替」にタッチすると、スイング軌道の表示から「フェース軌道」の表示に切り替わる。この「フェース軌道」の表示画面もタッチすることにより、「インパクト時のフェース角」と「インパクト時のロフト角」の間で画面を切り替える。こちらの画面は動画ではなく、静止画である。
【0343】
このフェース軌道の表示は、モーションセンサ730側においてサンプリング間隔2msで検出される3軸加速度及び3軸角速度のデータに基づき、トレーナー装置本体710側において、2ms間隔でのフェースの向きを算出し、フェース面の変化を断続する線の集合とする表示態様で画面に表示している。このとき、画面の中央をフェース軌道の最下点とする表示態様を採用している。2msは、図示の様に、最下点であるインパクトの瞬間のフェース面の向きを描画するサンプリング間隔となっている。上述の後方や上面から見たスイング軌道の表示態様ではボールを右にずらしてスイング軌道を大きく描画できる様にしたのに対し、フェース軌道の場合は、インパクトの前後のフェース面の向きを的確に伝える意味において、最下点(ボールインパクト位置)が中央となる様に表示する態様が適している。なお、サンプリング間隔は、2ms以下、より望ましくは1ms以下とするとよい。
【0344】
「フェース軌道」の表示状態で「切替」にタッチすると、「スイングデータ」の画面に切り替わり、「クラブ種」「アップスイング時間」「ダウンスイング時間」「インパクト時のフェース角」「インパクト時のロフト角」を数値で表示する画面に切り替わる。
【0345】
「スイングデータ」としてフェース角やロフト角を数値で確認できる上に、フェース軌道として2msのサンプリング間隔でのフェース面の軌道をも描くことにより、数値に加えてイメージとして自身のスイングをより的確に把握することが可能となっている。
【0346】
「スイングデータ」の表示状態で「切替」にタッチすると、再び「スイング軌道」の動画表示状態へと戻る。なお、「保存」は、いずれの表示状態からも実行することができる。
【0347】
トレーナー装置710では、「スイング軌道」が繰り返し再生される状態となっているが、既にモーション演算は完了しているので、続けて次のスイングを実行してスイング軌道等を求めることが可能な状態となっている。従って、モーションセンサ730のLEDランプ732は「緑色点灯継続」の状態となっている。ユーザーは、保存する必用があるときは、「保存」にタッチしてから次のスイングを行う。保存する必用がなければ、LEDランプ732の「緑色点灯継続」を確認したら直ちにスイングすることができる。
【0348】
[Arc再生モード]
次に、本実施例のシステムを用いて「Arc再生モード」を実行するための手順等について説明する。「Arc再生モード」は、トレーナー装置710に保存した「Arc(スイング軌道、フェース軌道、スイングデータ)」を再生し、確認するためのモードである。このモードは、トレーナー装置710だけで実行するモードであり、電源オンの後、
図33(A)に示す様に、メニュー画面の「Arc再生」にタッチする。すると、
図33(B)に示す様に、保存されているArcが新しいものから順に時間軸に並べた状態で表示されるので、再生すべきArcにタッチする。すると、
図33(C)に示す様に、スイング軌道、フェース軌道、スイングデータとしてArcが再生される。画面の切替等はArcモードにおける操作と同じである。
【0349】
[お手本表示]
次に、「Arcモード」「Arc再生モード」において、「スイング軌道」の表示に当たって、「お手本」を重ねて表示する機能について説明する。この機能を利用する場合は、
図34(A)に示す様に、メニュー画面で「設定」にタッチし、以下、
図34(B)に示す様に、「Arcタブ」を開いて「表示」にタッチし、「お手本表示しない」にタッチし、開いた画面の「表示する」にタッチして「お手本表示する」に変更した上で「戻る」にタッチする。この操作により、初期設定の「お手本表示しない」から「お手本表示する」へとトレーナー装置710における「スイング軌道」の表示条件が変更される。
【0350】
こうして「お手本表示する」に設定した後に、
図34(C)に示す様に、メニュー画面から「Arc」にタッチして「Arcモード」を起動すれば、
図34(D)に示す様に、スイング軌道の表示の際に、お手本のスイング軌道が重ねて表示される。このお手本は、プロゴルファーが本システムを使用してスイングしたときのデータに基づいていて、予め、トレーナー装置710の記憶装置内に「お手本データ」として記憶させてある。
【0351】
この「お手本表示」においても、画面にタッチすることにより、正面→正面(やや上から)→後方→上面→正面→…と、画面の表示を切り替えることができ、それぞれの画面にお手本が重ねて表示される構成となっている。
【0352】
また、「お手本表示する」に設定して「Arc再生モード」で確認することにより、
図35に示す様に、下段の様に大振りする癖を修正し、上段の様にお手本に近付けるといったトレーニングに活用することができる。
【0353】
[設定モード]
次に、設定モードについて説明する。
図36(A)に示す様に、メニュー画面で「設定」にタッチすると、その右側に示した様に、設定画面が表示される。設定画面においては「送りキー」「戻りキー」にタッチすることにより、設定対象を「スイングタブ」「Arcタブ」「システムタブ」の間で切り替えることができる。
【0354】
この「設定モード」を利用して「スイングモード」における表示態様を変更する操作方法を説明する。
図36(B)に示す様に、「ヘッドスピード」と「推定飛距離」の表示位置を上下で入れ替えたい場合、「スイングタブ」の「表示項目」にタッチし、下段左端に示す画面を表示させる。この画面で最上段表示項目である「ヘッドスピード」にタッチするとその右側の画面に切り替わる。切り替わった画面で「推定飛距離」にタッチすると、さらに右側に示す様に「推定飛距離」「推定飛距離」「ボールスピード」「ミート率」の順に並んだ画面に切り替わる。今度は、2段目の「推定飛距離」にタッチし、切り替わった画面で「ヘッドスピード」にタッチすると、右端の画面に様に、「推定飛距離」「ヘッドスピード」「ボールスピード」「ミート率」と表示位置が変更された画面となる。ここで「戻る」にタッチすることにより、表示の順番を変更した設定が、トレーナー装置710に記憶される。この後、「スイングモード」を起動すると、表示項目の上下が入れ替わった状態の表示とすることができる。この様に表示項目の順番を切り替えることにより、画面タッチによる1項目横表示の対象を変更することが可能となる。
【0355】
次に、「設定モード」を利用して「スイングモード」における表示項目数を変更する操作方法を説明する。「設定」「表示項目」とタッチして、
図36(C)に示す様に、4項目表示状態の画面を表示した後、「ミート率」にタッチし、切り替わった画面で「表示しない」にタッチする。すると、その右側に示す様に、表示項目の一番下が「表示しない」に切り替わり、この状態で「戻る」にタッチすることにより、3項目表示への変更がトレーナー装置710に記憶される。その後、「スイングモード」を起動すると、下段二つ目の様に3項目表示の画面とすることができる。以下、同様に、2項目表示、1項目表示の設定も可能となっている。
【0356】
なお、「スイングタブ」に対する設定変更可能な項目には、
図37に示す様に、「画面」「練習モード」「飛距離係数(ボール)」「飛距離係数(クラブ)」「ウェッジロフト角」がある。
【0357】
「画面」にタッチすると、「ナイスショット表示」についての「する」「しない」の切り替え、「ナイスショットの基準値」の数値入力による設定、「利き手選択」の「右利き」「左利き」の切り替えを設定することができる構成となっている。なお、「基準値」は「1.20〜1.60」の範囲に制限して設定することができる構成としている。
【0358】
「練習モード」にタッチすると、「目標設定距離上限」「目標設定距離下限」「グリーン半径」についての数値入力による設定、「ナイスオン表示」についての「する」「しない」の切り替えを設定することができる構成となっている。なお、「目標設定距離上限」は51〜999ヤード、「目標設定距離下限」は50〜149ヤード、「グリーン半径」は1〜50ヤードの範囲に制限して設定することができる構成としている。
【0359】
「飛距離係数(ボール)」にタッチすると、クラブ選択画面を表示し、クラブを選択した上で飛距離係数を50〜150%の範囲内で数値入力により設定することができる構成となっている。なお、「飛距離係数(ボール)」では、クラブの内、「ウェッジ」は選択不可能としている。
【0360】
「飛距離係数(クラブ)」にタッチしたときもクラブ選択画面を表示し、クラブを選択した上で飛距離係数を50〜150%の範囲内で数値入力により設定することができる構成となっている。なお、「飛距離係数(クラブ)」では、クラブの内、「パター」は選択不可能としている。
【0361】
「ウェッジロフト角」にタッチすると、ウェッジの選択画面を表示し、選択したウェッジについて46〜60°の範囲で数値入力によりロフト角を設定することができる構成となっている。
【0362】
「設定モード」において「Arcタブ」を開くと、
図38に示す様に、「クラブ」と「表示」についての設定を行う画面を表示する。
【0363】
「クラブ」にタッチすると、「クラブ選択」「センサー位置」「フェース面校正」の選択画面に切り替わりる。「Arcモード」では、「クラブ選択」において、「ウッド」「ユーティリティー」「アイアン」「ウェッジ」「パター」のいずれからもクラブ選択が可能に構成されている。
【0364】
なお、「センサー位置」及び「フェース面校正」については、既に述べた通りである。この「センサー位置」及び「フェース面校正」により、スイング軌道、フェース軌道の検知精度の向上が可能となる。
【0365】
「表示」にタッチすると、「人形表示」「お手本表示」について「する」「しない」の切り替えを設定するための画面を表示する。「人形」と「お手本」の「表示する」「表示しない」の組み合わせにより、「Arcモード」におけるスイング軌道の表示態様を図示の4パターンの中のいずれかに変更することができる。
【0366】
「設定モード」において「システムタブ」を開くと、
図39に示す様に、「一般」「省電力」「ウィンドウタッチ補正」「ブルートゥース」「システム情報」「設定初期化」の中から設定項目を選択する画面を表示する。
【0367】
「一般」にタッチすると、「画面輝度」について「明るい」「普通」「暗い」の切り替え、「速度単位」について「m/s」「mph」の切り替え、「距離単位」について「yd」「m」の切り替え、「日付と時刻」の数値入力による設定をすることができる構成となっている。
【0368】
「省電力」にタッチすると、「省電力画面」について「5秒」「10秒」「30秒」「1分」「3分」「OFF」の中から、「オートパワーオフ」について「5分」「10分」「20分」「30分」「60分」「OFF」の中から、ユーザーがそれぞれ所望の設定を選択するための画面を表示する。
【0369】
「ウィンドウタッチ補正」にタッチすると、図示の様に、「左中央」「下中央」「右上角」の順にタッチさせることにより、「ウィンドウタッチ」についての位置補正を実行し、設定のし直しを行う。
【0370】
「ブルートゥース」にタッチすると「新規登録」の設定処理へと進み、「システム情報」にタッチすると本体に組み込まれているプログラムのバージョンを表示し、「初期設定」にタッチすると「はい」「いいえ」を問い合わせる画面を表示し、「はい」にタッチされた場合に初期設定を行う。
【0371】
以上の設定モードによる操作結果は、トレーナー装置710に記憶されてユーザー毎の設定状態となり、初期設定を行うことで初期設定状態に戻すことのできる構成となっている。
【0372】
[ヘッドスピード等の測定]
次に、トレーナー装置710のマイクロコントローラの内部構造、ヘッドスピード、ボールスピードの計測等の演算処理について説明する。
【0373】
図40に示すように、第1マイクロコントローラ724は、16ビットのカウンタ(タイマ)724aと、第一蓄積手段たるメモリ(RAM)724bとを有する。カウンタ724aには、基準パルスとして2.5MHzの信号が入力され、カウントが行われる。カウンタ724aの値は、所定のイベント発生時にキャプチャレジスタ724cに取り込むことができる。メモリ724b内には、周期データを格納する周期データ格納領域が設けられ、この領域は、16ビット幅で110個の配列領域(計220バイト)からなる。
【0374】
第1マイクロコントローラ724には、コンパレータ723から出力されたドップラーパルスが入力される。第1マイクロコントローラ724は、このドップラーパルスの周期を測定する。この周期の測定にはカウンタ724aを利用する。具体的には、所定のイベントとしてドップラーパルスの立下りが発生した場合に、ドップラーパルスの立下り検出割り込みを発生させるとともに、そのときのカウンタ値をキャプチャレジスタ724cに取り込むよう設定しておく。キャプチャレジスタ724cは、蓄積候補データを格納するものである。そして、ドップラーパルスの立下り検出割り込み発生時には、割り込み処理ルーチンでキャプチャレジスタ724cの内容を周期データとしてメモリ724bに記録する。
【0375】
カウンタ724aでカウンタ値のオーバーフローが発生した場合には、カウンタオーバーフロー割り込みが発生する。カウンタオーバーフロー割り込みが発生した場合には、カウンタオーバーフロー割り込み処理を行う。
【0376】
第1マイクロコントローラ724が実行する各処理では、測定状態(処理状態)として「開始待ち」,「測定中」,「完了」,「エラー」を規定しており、それぞれの状態はメモリ724b上に設定された状態記憶領域に記憶し、この記憶された状態に基づいて処理内容をかえる。状態「開始待ち」は、初回ドップラーパルスの立下りを待っている状態である。リセット直後(電源投入直後)はこの状態とし、ドップラーパルスの立下りを検出し、その周期が規定値以下の場合に、状態「測定中」へ移行させる。状態「測定中」は、周期データを蓄積している状態である。状態「完了」は、周期データの蓄積が完了し、有効な測定データ数が規定値を超えている状態である。この状態になったときには、蓄積データを検査して速度の算出を行う速度算出処理を行う。状態「エラー」は、周期データの蓄積が完了したが、蓄積されたデータ数が規定に満たない状態である。この状態になったら直ちに蓄積済みデータを廃棄し、「開始待ち」状態へ戻る図示しない処理を行う。
【0377】
まず、第1マイクロコントローラ724が実行するカウンタオーバーフロー割り込み処理機能を、
図41のフローチャートを参照して説明する。カウンタ724aは16ビットであるので、カウンタ値が65535+1になったときに、カウンタオーバーフロー割り込みが発生し、この処理を開始する。
【0378】
まず、S110(S110はステップ110の略表記であり、以下同様に表記する。)では、メモリ上に保持しているオーバーフロー発生回数を+1する。続くS120では、測定状態が「開始待ち」または「完了」か、「測定中」であるかを判定する。測定状態が「開始待ち」または「完了」の場合には(S120:開始待ちまたは完了)、この処理を終了する。一方、測定状態が「測定中」の場合には(S120:測定中)、S130へ移行する。S130では、オーバーフロー発生回数が規定回数に達したか否かを判定する。この規定回数は16回に設定している。オーバーフローが16回発生するということは、約400msの長時間にわたってパルスの立下りが入力されないということであり、このような場合には、「測定中」の状態を抜ける必要性があるからである。オーバーフロー発生回数が規定回数に達していない場合(S130:No)、カウンタオーバーフロー割り込み処理を終了する。一方、オーバーフロー発生回数が規定回数に達した場合(S130:Yes)、S140へ移行する。S140では、記録済みデータ数(周期データの記録数)が規定数を超えているか否かを判定する。この規定数は“32”に設定している。記録済みデータ数が規定数を超えている場合には(S140:Yes)、S150に移行して、S150で測定状態を「完了」に変更して、この割り込み処理を終了する。一方、記録済みデータ数が規定数を超えていない場合には(S140:No)、S160に移行して、S160で測定状態を「エラー」に変更して、この割り込み処理を終了する。
【0379】
このような処理により、オーバーフロー発生時にオーバーフロー発生回数をカウントするとともに、オーバーフロー発生回数が16回といった異常な状態が発生した場合、そこで測定を中止し、記録済みデータが規定数を超えている場合には測定状態を「完了」に変更して後述する速度算出処理を行うのに対し、記録済みデータが規定数を超えていない場合には測定状態を「エラー」に変更し、蓄積済みデータを廃棄し、「開始待ち」状態へ戻る図示しない処理を行う。
【0380】
次に、ドップラーパルスの立下り割り込み発生時のドップラーパルスの立下り割り込み処理(ドップラーパルス周期の測定と蓄積処理)の内容を、
図42,
図43を参照して説明する。
【0381】
第1マイクロコントローラ724は、ドップラーパルスの立下りを検出すると
図42,
図43に示すドップラーパルスの立下り割り込み処理を開始する。まずS310で、測定状態が、「開始待ち」であるか「完了」であるか「測定中」であるかを判定する。「開始待ち」の場合には(S310:開始待ち)S320へ移行し、「完了」の場合には(S310:完了)S440へ移行し、「測定中」の場合にはS360へ移行する。
【0382】
S320では、周期が規定値より小さいか否かを判定する。規定値としては、たとえばゴルフヘッドのヘッドスピードが20m/sに相当する周期である約0.31msに相当するカウント値である776回に設定している。すなわち、具体的には、キャプチャレジスタ724cの値がこの規定値より小さいか否かを判定する。周期が規定値より小さい場合(カウント値が776回より小さい場合)には(S320:Yes)、S330へ移行し、周期が規定値以上の場合(カウント値が776回以上の場合)には(S320:No)、S440へ移行する。S330では、オーバーフロー発生回数が0か否かを判定する。0の場合(S330:Yes)、S332へ移行し、0でない場合(非0)(S330:No)、S440へ移行する。
【0383】
S332では、Cを“+1”インクリメントし、S334では、そのインクリメントした新たなCの値が4か否かを判断する。Cの値が4でない、つまり、1から3の場合(S334:No)、S440へ移行し、Cの値が4の場合、C=0にリセットし(S336)したのち、S338に移行する。S338では、第1マイクロコントローラ724は、第2マイクロコントローラ725へ蓄積開始信号を出力する。換言すると、周期が測定値より小さい状態(S320がYes)で、オーバーフローが発生していない(S330がYes)ことが4回発生することで、スイングがされたと判断でき、上記の蓄積開始信号が出力される。このS320〜S338の処理ステップを実行する機能が、スイング判別手段を構成する。
【0384】
このスイング判別手段は、ドップラーセンサによって出力されたドップラー信号に基づく当該ドップラー信号の周期がヘッドのスイングに対応する周期パターンになった場合に、ヘッドのスイングあったと判別(最終的にS334でYes)している。そして、ヘッドのスイングに対応する周期パターンは、予め各種のクラブを多数の人でスイングして得た周期パターンと、スイングしていない場合に得られる周期パターンとに基づいて、予め決定しておいてもよいし、例えば、利用者のスイングに対応する周期パターンを学習させて利用するようにしてもよい。
【0385】
第1マイクロコントローラ724は、この蓄積開始信号を出力した後、S340に移行する。このS340では、測定状態を「測定中」に変更して、S350へ移行する。S350では、メモリ724b上に記憶された立下り発生回数を0に変更する。このようにして、ドップラーセンサ721によって出力されたドップラー信号の周期が所定値より小さくなった場合に、メモリ724bへの周期データの蓄積を開始する設定を行う。したがって、次のドップラーパルス立下り時の割り込み処理では、S310で「測定中」と判定され、S360以降の処理を行うこととなる。
【0386】
S360では、メモリ上に記憶された立下り発生回数を+1する。続くS370では、オーバーフロー発生回数は0か否かを判定する。オーバーフロー発生回数が0の場合には(S370:Yes)S400へ移行し、オーバーフロー発生回数が0でない場合には(S370:No)S380へ移行する。
【0387】
カウンタ21は16ビットであるので、カウント値が65535を超えるとオーバーフロー割り込みが発生し、オーバーフロー割り込み処理で、オーバーフロー発生回数がインクリメントされることとなる(S110)。カウント値65535は、約26msに相当し、測定対象の値(周期)よりも十分に長いため、オーバーフローが発生すれば、この周期データの記録は行わなくてよいと判断している。
【0388】
S380では、周期が規定値より小さいか否かを判定する。具体的には、キャプチャレジスタ21aの値がこの規定値より小さいか否かを判定する。この規定値は、S320の規定値と同じ776回に設定している。周期が規定値より小さい場合(カウント値が776回より小さい場合)には(S380:Yes)、S390へ移行し、周期が規定値以上の場合(カウント値が776回以上の場合)には(S380:No)、S400へ移行する。S390では、データをメモリ724bに記録する。すなわち、キャプチャレジスタ724cの値をメモリ(RAM)724b上の配列へ記憶し(前回記録したデータがある場合、前回記憶した配列内の領域の次の領域に記録し)、S400へ移行する。
【0389】
S400では、測定中の立下り発生回数が規定回数に達したか否かを判定し、規定回数に達した場合には(S400:Yes)、S410へ移行し、規定回数に達していない場合には(S400:No)、S440へ移行する。この規定回数(“波数”に相当)は、110回に設定している。この110回は、「測定対象物が前記ドップラーセンサの検知範囲に突入してから測定対象位置に至るまでの距離」として、6mm×110回=66cmに相当する。
【0390】
S410では、メモリ22上の配列への記録済みデータ数が規定数を超えているか否かを判定し、規定数を超えている場合には(S410:Yes)、S420へ移行して、S420で、測定状態を「完了」に変更して、この割り込み処理を終了する。一方、規定数を超えていない場合には(S410:No)、S430へ移行して、S430で、測定状態を「エラー」に変更して、この割り込み処理を終了する。S410での記録済みデータ数の規定数は、“32”に設定している。すなわち、S370の処理においてオーバーフローが発生したと判定された場合(S370:Yes)やS380で周期が規定値以上と判定された場合(S380:No)には、S390の処理は行わず、周期データの配列(メモリ22)への記録をしないので、記録済みデータの個数は110個未満となる場合がある。この場合、後述する
図9の速度算出処理に必要な個数として32個に設定しており、この個数を超えている場合には(S410:Yes)、測定状態を「完了」として、速度算出処理を行わせるのに対し、この個数を超えていない場合には(S410:No)測定状態を「エラー」に変更して蓄積済みデータを廃棄し、「開始待ち」状態へ戻る図示しない処理を行わせるようにする。
【0391】
以上のようなドップラーパルスの立下り検出割り込み処理によって、測定状態が「完了」の場合には、速度の算出対象となる周期に関するデータがメモリ(配列)724bに33個以上蓄積されることとなる。
【0392】
次に、速度算出処理について、
図44を参照して説明する。速度算出処理は、測定状態が「完了」となった場合に開始する。
【0393】
S510では、メモリ724bに蓄積された周期データのうち、先頭から蓄積個数までのデータの移動平均を算出し、メモリ(RAM)724bに算出結果を格納する。具体的には、周期データ1〜周期データ4の4つのデータで相加平均を求めて、メモリ(RAM)724b内の移動平均格納用配列に格納する。つづいて、周期データ2〜周期データ5の4つのデータで相加平均を求めて、メモリ724b内の移動平均格納用配列に移動平均周期データとして格納する。以下同様に周期データの相加平均を求めてRAM内の移動平均格納用配列に順次格納する。
【0394】
次に、ばらつきの大きいデータを除外する。すなわち、S510で移動平均の算出に使用された4つの元データの全てが平均値±n%の範囲内にない場合には、そのデータはばらつきが大きいデータ(すなわち測定値の信用性が低いデータ)とみなして、その元データから算出された移動平均値を以降の処理から除外する。
【0395】
具体的には、S520でまず前記nの値を12.5%として、4つの元データの全てが平均値±12.5%の範囲内にない場合には、そのデータはばらつきが大きいデータとみなして、その元データから算出された移動平均値に対して除外フラグをセットする。除外フラグは、例えば移動平均格納用配列に対応する形式で1つの移動平均周期データについて1ビットのメモリ領域を割り当てる。
【0396】
続くS530では、S520での除外処理の結果、除外フラグがセットされていないデータ数(有効データ数)が10個未満の場合には(S530:Yes)除外フラグを解除した後、S540へ移行する。
【0397】
S540では前記nの値を今度は25%として、4つの元データの全てが平均値±25%の範囲内にない場合には、そのデータはばらつきが大きいデータとみなして、その元データから算出された移動平均値に対して除外フラグをセットする。
【0398】
続くS550では、S520での除外処理の結果、除外フラグセットされていないデータ(有効データ数)が10個未満か否かを判定し、10個未満の場合には(S550:Yes)、S560へ移行する。S560では、測定状態を「エラー」に設定して、この処理を終了する。一方、除外フラグセットされていないデータ(有効データ数)が10個以上の場合には(S550:No)、S570へ移行する。また、S530で、除外フラグセットされていないデータ数(有効データ数)が10個以上の場合にも(S550:No)、S570へ移行する。
【0399】
S570では、最小周期データ(周期の最小値=周波数の最大値=最大速度に相当するもの)を、除外フラグのセットされていない移動平均周期データの中から検索する。続くS580では、S570で得られた最小周期データから速度(ヘッドスピード)を算出する。速度の算出は以下の(式1)に基づいて行う。
【数1】
(v:ヘッド速度、c:光速(299792485m/s)、fb:カウンタの基準パルス周波数、f0:マイクロ波ドップラーセンサ出力周波数(24.15GHz)、nmin:最小周期データの値)
【0400】
続くS590では、S580で求めたヘッドスピードを表示器に表示する。たとえば、50.0m/sのように表示する。このとき表示開始から10秒間は、ヘッドスピードの表示を点滅表示させる。10秒間の点滅表示処理が完了したら、S580で求めたヘッドスピードを点灯表示として、S600へ移行する。
【0401】
続くS600では、測定状態を「開始待ち」に変更する。
【0402】
このような構成により、利用者は表示器を見ることで、ヘッドスピードを知ることができる。すなわち、利用者であるゴルファーは、トレーナー装置710を所定位置にセットすると共にスイッチ群を操作して電源を投入する。次いで、その状態でゴルファーはゴルフクラブのスイングをする。このとき、ボールをティーアップなどして実際に打ってもよいし、ボールをセットせずに素振りを行っても良い。
【0403】
スイングに伴い、ゴルフクラブのヘッドがドップラーセンサ721の検知範囲に入ると、そのヘッド2移動速度に応じた周期のドップラーパルスが第1マイクロコントローラ724に入力され、それに基づき、各周期のデータがメモリ724bに蓄積され、その後、最大速度が計測される。そして、正しく計測が行われた場合、求められたヘッドスピード(瞬間最大速度)が、表示画面711に点滅状態で表示される。一方、何らかの原因により正しく計測できなかった場合には、速度表示がされない。よって、利用者は、スイング後に表示画面711を見ることで、速度が点滅状態で表示されているか否かにより、計測できたか否か並びに計測できた場合にはその速度を知ることができる。
【0404】
次に、第2マイクロコントローラ725の機能を説明する。第2マイクロコントローラ725は、上記のS338の実行に伴い第1マイクロコントローラ724から蓄積開始信号を受けた場合、アンプ722から出力されたドップラー信号(増幅された信号)を第2マイクロコントローラ725に内蔵するA/D変換器によって、デジタル信号に変換して、内蔵するメモリ(RAM)に160ms分取り込んで蓄積する。取り込みが完了したら、蓄積したメモリ内のデータに対してFFTによる演算を行って速度を算出する。FFTによる演算を行って速度を算出する方法としては、スピードガン等に使用されている公知の方法を用いればよい。そして、算出した速度のデータを、第1マイクロコントローラ724へ送る。
【0405】
すなわち、ゴルフクラブのスイングに伴うヘッドの移動速度は、スイング開始から徐々に速度が早くなり、ボールに当たる前後付近で最大速度になり、その後、徐々に遅くなる。一方、ボールは、ゴルフクラブのスイング開始当初は、停止したままであるため移動速度は0となり、ヘッドが当たって打ち出されることで、移動するため速度が増速する。そして、ヘッドスピードの速度変化のピークと、ボールスピードの速度変化のピークとは、ずれがある(ボールスピードのピークが遅れて発生する)。そこで、スイング判定手段(S320からS328を実行する処理アルゴリズム)にて、ゴルフのスイングを検出して第1マイクロコントローラ724が蓄積開始信号を出力してから、第2マイクロコントローラ725にてボール速度の算出に必要なドップラー信号(アンプ722で増幅した信号)を記録する。
【0406】
これにより、ヘッドスピードはドップラーセンサによって出力されたドップラー信号に基づく当該ドップラー信号の周期に関するデータを蓄積したデータ群に基づいて算出する一方、ボールスピードは、ドップラーセンサによって出力されたドップラー信号に基づくA/D変換データを蓄積したA/D変換データ群に基づいて算出する。このようにヘッドの速度とボールの速度を分離することで、ヘッドスピードとボールスピードの双方を正確に測定することができる。
【0407】
さらに第1マイクロコントローラ724は、第2マイクロコントローラ725から速度のデータが送られてきた場合、その速度をボールスピードとして表示画面711に表示するとともに、自己の算出したヘッドスピードでそのボールスピードを除算した値をミート率として表示画面711に表示する。
【0408】
すなわち、第1マイクロコントローラ724は、「ミート率=ボールスピード/ヘッドスピード」によりミート率を算出する。
【0409】
また、推定飛距離は、実際にボールを打った場合には、ボールスピードと使用したクラブ種から飛距離を求め、素振りの場合にはヘッドスピードと使用したクラブ種から飛距離を求める。具体的には、予めクラブ種ごとにボールスピードに対する係数とベッドスピードに対する係数を設定しておき(クラブ種−係数のテーブル等を設ける)、ボールスピード或いはヘッドスピードに、クラブ種に対応する係数を乗じた値を推定飛距離とする。なお、ボールの有無は、マニュアル操作による手動によって指定しても良いし、各種のセンサを設け装置により自動的に認識するようにしてもよい。
【0410】
なお、本実施例では、1周期ごとのデータに基づいて速度を算出しているとともに、誤検出のおそれのあるデータは破棄し、最終的に残った信頼性のあるデータに基づいて速度を求めているので、表示される速度は、周囲の状況等に影響を受けない正確なものとなる。また、実際にボールをヒットした状態でヘッドスピードを測定した場合、ボールはインパクト後に勢いよく飛び出していくため、当該ボールの移動速度はヘッドスピードよりも十分に高速度となり、ドップラーセンサ721の出力は係るボールの移動に基づくものとなるおそれがあるが、ゴルフクラブのヘッドがドップラーセンサ721の検知範囲に突入してからボールにインパクトすると想定される位置までの距離の間に発生するドップラー信号の波数に相当する110回の規定回数分しかメモリ724bに周期データを蓄積しない構成であるため、ボールの有無に関係なく、スイングスピードを正しく測定できる。
【0411】
以上の様にして、トレーナー装置710がドップラセンサー721の検出信号に基づき算出する「ヘッドスピード」「ボールスピード」「推定飛距離」「ミート率」は、「スイングモード」及び「練習モード」におけるデータ表示に用いられると共に、「ミート率」は、設定した「ミート率基準値(初期設定では1.40)」との大小を比較判定して「スイングモード」における「ナイスショットアニメーション」の表示をするか否かに反映され、「推定飛距離」は「練習モード」において設定した「目標設定距離」及び「グリーン半径」との比較判定をして「ナイスオンアニメーション」の表示をするか否かに反映される。
【0412】
なお、このトレーナー装置710における演算処理は、「Arcモード」においても実行されている。従って、「Arcモード」でスイング軌道等を画面確認した後、メニュー画面に戻して「スイング」にタッチすることにより、今回のスイングでの「ヘッドスピード」等を参照することができる。「Arcモード」では、さらに、「お手本表示」ができる結果、「お手本」のスイング軌道に合わせる様にスイング軌道を修正しつつ、そのときの「ヘッドスピード」等を「スイングモード」の表示で確認することにより、コンパクトなスイングによる飛距離アップのためのトレーニングに役立つ。なお、「Arcモード」におけるスイング軌道の計測は、モーションセンサ730から送信される3軸速度及び3軸角速度の2ms間隔での計測値と、設定モードでのセンサ取付位置及びフェース面の校正結果とに基づいて、トレーナー装置710の第1マイクロコントローラ724が所定時間毎の位置情報として記録した結果と、インパクトタイミングの検知結果とに基づいて算出される。設定モードでの校正機能により、このスイング軌道、フェース軌道、アップスイング時間、ダウンスイング時間、インパクト時のフェース角、インパクト時のロフト角を精度良く算出することができている。
【0413】
また、モーションセンサ730をクラブに装着して電源をオンにしてLEDランプ732が緑色点灯継続状態のときに「スイングモード」を実行した場合には、今回のスイングについての「ヘッドスピード」等を確認した後にメニュー画面に戻り、「Arc」にタッチすれば、今回のスイングにおけるスイング軌道、フェース軌道、スイングデータを確認することができる。
【0414】
なお、これは「練習モード」と「Arcモード」との間で表示画面を切り替える操作を行ったときも同様である。
【0415】
この様に、本実施例によれば、ドップラセンサーにより精度よく「ヘッドスピード」「ボールスピード」を計測することができ、それに基づいて精度よく「推定飛距離」を算出することができ、「ミート率」も精度よく検知することができるだけでなく、当該スイング時の「スイング軌道」「フェース軌道」「スイングデータ」をも最初の校正等を行うことで精度よく計測することができる。さらには、「お手本表示」を利用することにより、ユーザーは、より的確なスイングをより適切なヘッドスピードで実行できる様にトレーニングする際に参照すべき情報を正確かつ的確に与えることができる。
【0416】
なお、本実施例における「ヘッドスピード」「ボールスピード」の計測、「推定飛距離」「ミート率」の算出、「スイング軌道」「フェース軌道」「スイングデータ」の算出、モーションセンサ730への通知や通信に関する制御、表示画面のタッチによる画面の切替等のスイッチ操作の検出や表示画面の切替等の各種演算処理は、トレーナー装置本体710のマイクロコントローラ724,725のROMに予めインストールしたコンピュータプログラムによって実現されている。このコンピュータプログラム自体をダウンロード可能なアプリケーションとしてサーバー等にアップロードしておき、ブルートゥース無線通信機能でトレーナー装置本体710に対してダウンロード及びインストールする構成としてもよいし、各種の形態端末機器やパーソナルコンピュータにインストールして用いる構成としても構わない。
【0417】
また、本実施例におけるトレーナー装置本体710の第1のマイクロコントローラ724と第2のマイクロコントローラ725は、一つのコントローラで構成してもよい。逆に、マイクロ波ドップラーセンサ721を備えた速度検出装置と別体の第3の演算処理装置(例えば、携帯通信端末)とを備え、モーションセンサ730を本実施例と同じくゴルフクラブに取り付け、速度検出装置を本実施例におけるトレーナー装置710と同様の設置条件にて設置し、この速度検出装置とモーションセンサ730とから携帯通信端末へと検出データを送信し、携帯端末装置において第1のマイクロコントローラ724及び第2のマイクロコントローラ725におけるのと同様の演算処理を行うシステムとして構成することもできる。この場合、モーションセンサ730の検出データは速度検出装置を経由して携帯端末装置へと受信させる構成としてもよいし、速度検出装置において演算までを行って、演算結果を携帯端末装置に送信し、携帯端末装置の内部処理としてメニュー画面を表示させたり、表示画面の切替を行ったり、設定の変更処理を行う様にしても構わない。
【0418】
以上説明した各実施例によれば、対象物(ゴルフクラブ3)の棒状部(シャフト3a)に締め具(ゴム製バンド20、ゴム製リング120,220、取付ベルト750)に生じる引っ張り力で物体(ゴルフスイングセンサ1,101,201,301,401,501,601、モーションセンサ730)を取り付ける際の取付作業を容易にすることができる。
【0419】
以上、発明を実施するための実施例を説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内における種々の変更が可能である。
【0420】
例えば、テニスのラケットのシャフト、野球のバット、やり投げ用のやり、自転車のフレーム、自動車エンジンのプロペラシャフトやコンロッドなどにセンサを取り付ける場合の取付構造に採用しても構わない。また、センサ以外の物体を取り付ける際の取付構造とすることもできるし、センサを取り付けるためのセンサホルダを取り付けるといった場合の取付構造にも適用することができる。
【0421】
取付に際して、ゴム製当接部20とシャフト3aの間、ゴム製バンド20とシャフト3aの間に、滑り止めシートを介在させる取付構造としても構わない。
【0422】
締め具として、穴あきの帯ゴム、リングを備えたゴム紐などを採用しても構わないし、素材もゴム以外の合成樹脂やコイルスプリングなどであっても構わない。
【0423】
外れ止め状態とする保持用のフックとして茸状のピンを採用してもよいし、筐体の正面側から切り込む様に形成したスリットを採用しても構わない。実施例3のタイプでは、フックではなく茸状ピンで仮掛け部を形成してもよいし、例えば上だけ上向き爪付きの仮掛け部としておいて下側は実施例1の様な前方へ向いた爪を備える様に構成しても構わない。
【0424】
実施例1のタイプで、開口の数を4以上にしたり、逆に2個にしても構わない。
【0425】
実施例2のタイプで、回動式ではなくスライド式のアシスト手段を設けて仮掛けから本掛けへと締め具を引き伸ばす作業における力の軽減を図る様にしても構わないし、大型の物体を取り付ける様な場合に、これらレバーやスライダーを手動操作ではなく電動式にするなどしても構わない。
【0426】
また、実施例1において、実施例4の電池収納構造を採用してもよいし、実施例5の様に端子カバーをシャフト側まで回り込ませて取り付ける構造とすることもできる。
【0427】
図45(A),(B)に示す様に、スポンジ体を備えていない実施例1のゴルフスイングセンサ1に対して取付ベルト750を用いる様にしてもよい。このときも、図示(A)の様に、通常使用時にセンサー本体のフック部へ引っ掛ける部分に用いるだけでなく、図示(A)の状態では、シャフトへの固定が弱く、センサー本体が動いてしまう場合、図示(B)の様に、この部分をセンサー本体のフック部へ引っ掛けることにより、締め付けに利用されるゴムバンドの長さが短くなり、より強い力でセンサー本体をシャフトに固定することになるため、センサー本体が動きにくくなる。この場合、取付ベルト750では、既に説明した様に、フック部を引っ掛ける場所を複数作ることにより、1種類のゴムバンドで2種類(引っ掛ける場所を増やせばそれ以上)の固定方法が可能となり、2種類のゴムバンドを付属するよりコストが安くなる。また、類似形状で長さが違う複数のゴムバンドから選別して使用するより、1個のゴムバンドで引っ掛ける場所を変える方法のほうが単純でわかりやすく、手間もかからない。なお、図示(B)の方法ではゴムバンドを反対側のフック部に引っ掛けるために、大きな力が必要である。センサー本体を図示(B)の方法で固定するよりは弱く、図示(A)の方法で固定するよりは強く固定したい場合は、
図45(C)に示す様に、ゴムチューブ800(片側切れ目入り)をシャフトに嵌めて、その上からセンサー本体を止めることで、ゴムバンドを伸ばす量が増えるため、(A),(B)の中間の力で固定することができる。この場合、ゴムチューブ800の厚さを変更することによって、固定する力を変えることもできる。ゴムチューブ800には切れ目801が入っており、切れ目801を開いてシャフト3aに取り付ければよい。
【0428】
ここで、
図45(C)の変形例においては、ゴムチューブ800としては、内径12mm以下のものとして、ゴルフクラブのシャフト3aに装着したときに、切れ目801が開いた状態となる寸法とすることが望ましい。また、ゴムチューブ800の素材は、合成ゴム、シリコーンゴムのいずれでもよいが、密着性及び摩擦に関する性能面ではシリコーンゴム製の方が優れており、素材の色の面では黒色となる合成ゴム製の方が白色が基本となるシリコーンゴムよりも優れている。ゴムチューブ800の肉厚は3mm程度のものを用いるとよい。
【0429】
また、実施例8の取付ベルト750において、第2の中仕切部752nをフック12a〜12cに引っ掛けて、さらに強く締め付ける様な取り付け方も必用に応じて実施して構わない。
【0430】
また、実施例8のゴルフスイングトレーナーシステム700は、実施例8で説明した取付ベルト750を用いるタイプ以外の実施例1〜7で説明したタイプのセンサと組み合わせる様にしてもよい。
【0431】
実施例8において、スポンジ体737のゴルフクラブ側に位置する表面全体にシリコンゲルシートを両面テープで貼り付けるとよい。シリコンゲルシートは、その表面がスポンジ体737よりもすべりにくく、クラブをスイングした際にさらにすべらず固定することができる。
なお、シリコンゲルシートと両面テープの厚さはあわせて0.25mmとしており、シリコンゲルシートはスポンジ体の厚さである5mmよりも大幅に薄くしている。これは、シリコンジェルシートは、圧縮した場合、スポンジ体737よりも反発力が弱く、例えば押された部分が圧縮されたままとなりシリコンゲルシートの表面が例えば凸凹となって例えば密着性が低下してしまうからである。
このように、ゴルフクラブのシャフト側に接する面には相対的に表面のすべりが起きにくく反発力が弱い素材でその肉厚が薄い第一の部材(上記の例ではシリコンゲルシート)を備え、第一の部材よりもシャフトから離れる側には相対的に表面のすべりが起きやすく相対的に反発力が強い素材でその肉厚が厚い第二の部材(上記の例ではスポンジ体737)を備える構成とするとよい。