【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、靱性の高い半導体ウェハーを想定した上記の手法を脆性材料である円盤状ガラス基板の外周端部に形成されたノッチの加工に適用した場合には、以下のような解決すべき問題が発生している。すなわち、同手法を適用した場合、円盤状ガラス基板に形成されたノッチは、研削ツールによって円盤状ガラス基板の厚み方向に沿って研削されることになる。これにより、ノッチが形成された外周端部は、研削ツールから常に厚み方向に力が作用した状態に置かれる。その結果、研削ツールから作用する力で外周端部が厚み方向に沿って不当に揺動し、これに起因して割れや欠けが発生する等、円盤状ガラス基板が破損してしまう不具合が生じていた。
【0006】
なお、このような問題は、上記の手法をノッチの面取り加工に適用した場合にのみ発生しているものではない。例えば、同手法と同様な態様で研削ツールを回転させることにより、円盤状ガラス基板の外周端部に形成されたオリエンテーションフラットを研削して面取り加工を施す場合のように、円盤状ガラス基板の外周端部の研削を伴う際に、上記の手法を適用した場合には同様に生じている問題である。
【0007】
上記の事情に鑑みなされた本発明の目的は、研削ツールを回転させることで円盤状ガラス基板の外周端部を研削する場合に、当該円盤状ガラス基板の破損を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、研削ツールを回転させることで円盤状ガラス基板の外周端部を研削するガラス基板の研削方法であって、研削ツールを、円盤状ガラス基板の厚み方向に延びる軸線を回転中心として回転させることに特徴付けられる。
【0009】
このような方法によれば、研削ツールを、円盤状ガラス基板の厚み方向に延びる軸線を回転中心として回転させることから、円盤状ガラス基板の外周端部は、研削ツールによって円盤状ガラス基板の主面(表裏面)と平行な方向に沿って研削されることになる。そのため、研削ツールから外周端部へと作用する力が、円盤状ガラス基板の厚み方向に作用することを可及的に防止できる。これにより、研削ツールによる外周端部の研削中に、当該外周端部が厚み方向に沿って揺動するような事態の発生が回避される。その結果、割れや欠けが発生する等、円盤状ガラス基板の破損を防止することが可能となる。
【0010】
上記の方法において、円盤状ガラス基板を、その中心で厚み方向に延びる軸線を回転中心として回転させると共に、研削ツールに、円盤状ガラス基板の回転方向に逆らって円盤状ガラス基板の周りを旋回させることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、自転した状態の円盤状ガラス基板の回転方向に逆らって、研削ツールが円盤状ガラス基板の周りを旋回するため、研削ツールによる外周端部の研削中に、研削ツールの進行方向と、外周端部の進行方向とが相互に逆向きとなる。これにより、研削ツールが外周端部を研削するのに要する時間を短縮することができる。
【0012】
上記の方法において、外周端部を研削した後、上記研削ツール、又は、円盤状ガラス基板の厚み方向に延びる軸線を回転中心として回転し、且つ上記研削ツールとは異なる第二の研削ツールを用いて、円盤状ガラス基板の位置決めを行うために外周端部の一部が除去されてなる位置決め部を、外周端部に形成してもよい。
【0013】
位置決め部は、円盤状ガラス基板の外周端部の一部が除去されてなるため、外周端部への位置決め部の形成時には、外周端部の研削時と比較して円盤状ガラス基板が破損しやすくなる。しかしながら、外周端部への位置決め部の形成に、上記研削ツール、又は、第二の研削ツールを用いれば、両者がいずれも円盤状ガラス基板の厚み方向に延びる軸線を回転中心として回転することから、位置決め部の形成時においても、外周端部が厚み方向に沿って揺動するような事態の発生が回避される。その結果、円盤状ガラス基板を破損させることなく、外周端部に位置決め部を形成することが可能となる。また、外周端部を研削した後で、当該外周端部に位置決め部を形成することから、外周端部の研削によって円盤状ガラス基板の概形が定まった後で、位置決め部が形成されることになる。このため、外周端部に位置決め部を有した円盤状ガラス基板を量産するような場合に、生産された円盤状ガラス基板の相互間で、その形状にバラつきが生じるような事態の発生を防止することができる。
【0014】
上記の方法において、第二の研削ツールとして、上記研削ツールよりも径の小さいツールを用いることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、円盤状ガラス基板の外周端部の研削時には、相対的に径の大きい上記研削ツールを用いることで、外周端部を高速に研削することが可能となる。一方、円盤状ガラス基板の破損が生じやすい外周端部への位置決め部の形成時には、相対的に径の小さい第二の研削ツールを用いることにより、円盤状ガラス基板の破損を可及的に防止することができる。また、相対的に径の小さい第二の研削ツールを用いることで、位置決め部を高精度に形成することも可能である。
【0016】
上記の方法において、位置決め部が、円盤状ガラス基板の中心側から外周側に向かって漸次に形成幅が拡大するノッチである場合には、当該ノッチを形成するに際し、形成を予定したノッチの最大幅よりも径の小さい第二の研削ツールを用いることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、形成を予定したノッチの最大幅よりも径の小さい第二の研削ツールを用いてノッチを形成することから、ノッチの形成時における円盤状ガラス基板の破損を可及的に防止できると共に、ノッチを高精度に形成することが可能となる。
【0018】
上記の方法において、第二の研削ツールとして、径が2mm以下のツールを用いることが好ましい。
【0019】
第二の研削ツールとして、径が小さいツールを用いる程、位置決め部の形成時における円盤状ガラス基板の破損を防止する効果、及び、位置決め部を高精度に形成できる効果を高めることが可能となる。そして、第二の研削ツールとして、径が2mm以下のツールを用いれば、上記の両効果を好適に発現させることができる。
【0020】
上記の方法において、外周端部の研削に伴って当該外周端部に面取り加工を施すと共に、位置決め部を形成する際に当該位置決め部に面取り加工を施すに際し、第二の研削ツールとして、研削のために当該第二の研削ツールの外周部に形成された研削溝の形状及び寸法が、上記研削ツールの外周部に形成された研削溝の形状及び寸法と同一であるツールを用いることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、上記研削ツールによって研削して面取り加工を施した位置決め部を除く部位と、第二の研削ツールによって研削して面取り加工を施した位置決め部との間で、面取り加工後の断面形状(円盤状ガラス基板を仮想的に厚み方向に切断した場合の断面形状)が略同一なものとなる。つまり、位置決め部と、当該位置決め部に連なる部位との間で、断面形状が急激に変化することを回避することができる。ここで、断面形状が急激に変化している場合、円盤状ガラス基板に何らかの外力が作用した際に応力集中が発生しやすくなり、円盤状ガラス基板が破損するおそれが高まってしまう。しかしながら、本方法によれば、位置決め部と、当該位置決め部に連なる部位との間で、断面形状を略同一とすることができるため、上記のようなおそれを的確に排除することが可能である。また、本方法では、円盤状ガラス基板の外周端部を、研削ツールによって円盤状ガラス基板の主面と平行な方向に沿って研削することから、円盤状ガラス基板の表面側と裏面側との双方に対して同時に面取り加工を施すことも可能である。これにより、面取り加工に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0022】
上記の方法において、上記研削ツールと第二の研削ツールとが、その回転軸を共有していることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、上記研削ツールを動作させるための駆動源と、第二の研削ツールを動作させるための駆動源とを別々に設ける必要が無くなる。そのため、低コスト化、及び省スペース化を図ることが可能となる。
【0024】
上記の方法において、位置決め部を形成する際に、円盤状ガラス基板を静止させた状態に固定することが好ましい。
【0025】
このようにすれば、円盤状ガラス基板を静止させた状態の下で、位置決め部を形成することから、当該位置決め部を更に高精度に形成することができる。
【0026】
上記の方法において、位置決め部を形成した後、外周端部にエッチング処理を施すことが好ましい。
【0027】
円盤状ガラス基板の外周端部に位置決め部を形成した場合、位置決め部を形成しない場合と比較して外周端部の強度が低下する。しかしながら、位置決め部を形成した後、外周端部にエッチング処理を施せば、当該外周端部に含まれた微小クラック等の欠陥を取り除くことが可能となる。その結果、円盤状ガラス基板の外周端部の強度を向上させることができる。
【0028】
上記の方法において、外周端部を研削した後、スクライブホイールの転動、又は、レーザーの照射によって外周端部にスクライブラインを形成すると共に、このスクライブラインに沿って割断を行うことで、オリエンテーションフラットを形成してもよい。
【0029】
このようにすれば、外周端部を研削した後で、当該外周端部にオリエンテーションフラットを形成することから、外周端部の研削によって円盤状ガラス基板の概形が定まった後で、オリエンテーションフラットが形成されることになる。このため、外周端部にオリエンテーションフラットを有した円盤状ガラス基板を量産するような場合に、生産された円盤状ガラス基板の相互間で、その形状にバラつきが生じるような事態の発生を防止することができる。