特許第6583663号(P6583663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583663
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ガラス基板の研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/00 20060101AFI20190919BHJP
   C03B 33/023 20060101ALI20190919BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20190919BHJP
   B24B 9/08 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   B24B9/00 601G
   C03B33/023
   C03C19/00 Z
   B24B9/08 C
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-104640(P2015-104640)
(22)【出願日】2015年5月22日
(65)【公開番号】特開2016-215339(P2016-215339A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】片山 裕貴
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−117546(JP,A)
【文献】 特開2007−44853(JP,A)
【文献】 特開2008−18502(JP,A)
【文献】 特開2007−48780(JP,A)
【文献】 特開2001−030149(JP,A)
【文献】 特開2002−283201(JP,A)
【文献】 特開2000−042887(JP,A)
【文献】 特開平06−024776(JP,A)
【文献】 特開2006−205661(JP,A)
【文献】 特開平07−205001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/00 − 9/20
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削ツールを回転させることで円盤状ガラス基板の外周端部を研削する方法であって、
前記研削ツールとして、前記円盤状ガラス基板の厚み方向に延びる軸線を回転中心として回転するツールを用いると共に、
前記外周端部を研削した後、
記円盤状ガラス基板の厚み方向に延びる軸線を回転中心として回転し、且つ前記研削ツールとは異なる第二の研削ツールを用いて、
前記円盤状ガラス基板の位置決めを行うために前記外周端部の一部が除去されてなる位置決め部を、前記外周端部に形成し、
前記位置決め部が、前記円盤状ガラス基板の中心側から外周側に向かって漸次に形成幅が拡大するノッチであり、
該ノッチを形成するに際し、形成を予定した前記ノッチの最大幅よりも径の小さい前記第二の研削ツールを用い、
前記ノッチを形成する際に、前記円盤状ガラス基板を静止させた状態に固定し、
形成を予定した前記ノッチの形状に倣うV字状の軌道に沿って前記第二の研削ツールを移動させることで、前記ノッチを形成することを特徴とするガラス基板の研削方法。
【請求項2】
前記外周端部を研削する際に、
前記円盤状ガラス基板を、その中心で厚み方向に延びる軸線を回転中心として回転させると共に、
前記研削ツールに、前記円盤状ガラス基板の回転方向に逆らって該円盤状ガラス基板の周りを旋回させることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の研削方法。
【請求項3】
前記第二の研削ツールとして、前記研削ツールよりも径の小さいツールを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス基板の研削方法。
【請求項4】
前記第二の研削ツールとして、径が2mm以下のツールを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラス基板の研削方法。
【請求項5】
前記外周端部の研削に伴って該外周端部に面取り加工を施すと共に、前記ノッチを形成する際に該ノッチに面取り加工を施すに際し、
前記第二の研削ツールとして、研削のために該第二の研削ツールの外周部に形成された研削溝の形状及び寸法が、前記研削ツールの外周部に形成された研削溝の形状及び寸法と同一であるツールを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガラス基板の研削方法。
【請求項6】
前記研削ツールと前記第二の研削ツールとが、その回転軸を共有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガラス基板の研削方法。
【請求項7】
前記ノッチを形成した後、前記外周端部にエッチング処理を施すことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガラス基板の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削ツールを回転させることで円盤状ガラス基板の外周端部を研削する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェハーのバック・グラインド工程において、半導体ウェハーを支持する支持体として円盤状ガラス基板が採用される場合がある。このような円盤状ガラス基板の製造工程では、その外周端部にオリエンテーションフラットやノッチが形成される。そして、形成したオリエンテーションフラットやノッチに対しては、R面取りやC面取り等に代表される面取り加工を施すことが通例となっている。
【0003】
ここで、円盤状ガラス基板ではなく、半導体ウェハーを加工の対象とするものであるが、研削ツールで半導体ウェハーの外周端部にノッチを形成する手法、及び、形成されたノッチを研削することで、当該ノッチに面取り加工を施す手法の一例が特許文献1に開示されている。同手法では、研削ツールを半導体ウェハーの主面(表裏面)と平行に延びる軸線を回転中心として回転させることで、ノッチの研削を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−180554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、靱性の高い半導体ウェハーを想定した上記の手法を脆性材料である円盤状ガラス基板の外周端部に形成されたノッチの加工に適用した場合には、以下のような解決すべき問題が発生している。すなわち、同手法を適用した場合、円盤状ガラス基板に形成されたノッチは、研削ツールによって円盤状ガラス基板の厚み方向に沿って研削されることになる。これにより、ノッチが形成された外周端部は、研削ツールから常に厚み方向に力が作用した状態に置かれる。その結果、研削ツールから作用する力で外周端部が厚み方向に沿って不当に揺動し、これに起因して割れや欠けが発生する等、円盤状ガラス基板が破損してしまう不具合が生じていた。
【0006】
なお、このような問題は、上記の手法をノッチの面取り加工に適用した場合にのみ発生しているものではない。例えば、同手法と同様な態様で研削ツールを回転させることにより、円盤状ガラス基板の外周端部に形成されたオリエンテーションフラットを研削して面取り加工を施す場合のように、円盤状ガラス基板の外周端部の研削を伴う際に、上記の手法を適用した場合には同様に生じている問題である。
【0007】
上記の事情に鑑みなされた本発明の目的は、研削ツールを回転させることで円盤状ガラス基板の外周端部を研削する場合に、当該円盤状ガラス基板の破損を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、研削ツールを回転させることで円盤状ガラス基板の外周端部を研削するガラス基板の研削方法であって、研削ツールを、円盤状ガラス基板の厚み方向に延びる軸線を回転中心として回転させることに特徴付けられる。
【0009】
このような方法によれば、研削ツールを、円盤状ガラス基板の厚み方向に延びる軸線を回転中心として回転させることから、円盤状ガラス基板の外周端部は、研削ツールによって円盤状ガラス基板の主面(表裏面)と平行な方向に沿って研削されることになる。そのため、研削ツールから外周端部へと作用する力が、円盤状ガラス基板の厚み方向に作用することを可及的に防止できる。これにより、研削ツールによる外周端部の研削中に、当該外周端部が厚み方向に沿って揺動するような事態の発生が回避される。その結果、割れや欠けが発生する等、円盤状ガラス基板の破損を防止することが可能となる。
【0010】
上記の方法において、円盤状ガラス基板を、その中心で厚み方向に延びる軸線を回転中心として回転させると共に、研削ツールに、円盤状ガラス基板の回転方向に逆らって円盤状ガラス基板の周りを旋回させることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、自転した状態の円盤状ガラス基板の回転方向に逆らって、研削ツールが円盤状ガラス基板の周りを旋回するため、研削ツールによる外周端部の研削中に、研削ツールの進行方向と、外周端部の進行方向とが相互に逆向きとなる。これにより、研削ツールが外周端部を研削するのに要する時間を短縮することができる。
【0012】
上記の方法において、外周端部を研削した後、上記研削ツール、又は、円盤状ガラス基板の厚み方向に延びる軸線を回転中心として回転し、且つ上記研削ツールとは異なる第二の研削ツールを用いて、円盤状ガラス基板の位置決めを行うために外周端部の一部が除去されてなる位置決め部を、外周端部に形成してもよい。
【0013】
位置決め部は、円盤状ガラス基板の外周端部の一部が除去されてなるため、外周端部への位置決め部の形成時には、外周端部の研削時と比較して円盤状ガラス基板が破損しやすくなる。しかしながら、外周端部への位置決め部の形成に、上記研削ツール、又は、第二の研削ツールを用いれば、両者がいずれも円盤状ガラス基板の厚み方向に延びる軸線を回転中心として回転することから、位置決め部の形成時においても、外周端部が厚み方向に沿って揺動するような事態の発生が回避される。その結果、円盤状ガラス基板を破損させることなく、外周端部に位置決め部を形成することが可能となる。また、外周端部を研削した後で、当該外周端部に位置決め部を形成することから、外周端部の研削によって円盤状ガラス基板の概形が定まった後で、位置決め部が形成されることになる。このため、外周端部に位置決め部を有した円盤状ガラス基板を量産するような場合に、生産された円盤状ガラス基板の相互間で、その形状にバラつきが生じるような事態の発生を防止することができる。
【0014】
上記の方法において、第二の研削ツールとして、上記研削ツールよりも径の小さいツールを用いることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、円盤状ガラス基板の外周端部の研削時には、相対的に径の大きい上記研削ツールを用いることで、外周端部を高速に研削することが可能となる。一方、円盤状ガラス基板の破損が生じやすい外周端部への位置決め部の形成時には、相対的に径の小さい第二の研削ツールを用いることにより、円盤状ガラス基板の破損を可及的に防止することができる。また、相対的に径の小さい第二の研削ツールを用いることで、位置決め部を高精度に形成することも可能である。
【0016】
上記の方法において、位置決め部が、円盤状ガラス基板の中心側から外周側に向かって漸次に形成幅が拡大するノッチである場合には、当該ノッチを形成するに際し、形成を予定したノッチの最大幅よりも径の小さい第二の研削ツールを用いることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、形成を予定したノッチの最大幅よりも径の小さい第二の研削ツールを用いてノッチを形成することから、ノッチの形成時における円盤状ガラス基板の破損を可及的に防止できると共に、ノッチを高精度に形成することが可能となる。
【0018】
上記の方法において、第二の研削ツールとして、径が2mm以下のツールを用いることが好ましい。
【0019】
第二の研削ツールとして、径が小さいツールを用いる程、位置決め部の形成時における円盤状ガラス基板の破損を防止する効果、及び、位置決め部を高精度に形成できる効果を高めることが可能となる。そして、第二の研削ツールとして、径が2mm以下のツールを用いれば、上記の両効果を好適に発現させることができる。
【0020】
上記の方法において、外周端部の研削に伴って当該外周端部に面取り加工を施すと共に、位置決め部を形成する際に当該位置決め部に面取り加工を施すに際し、第二の研削ツールとして、研削のために当該第二の研削ツールの外周部に形成された研削溝の形状及び寸法が、上記研削ツールの外周部に形成された研削溝の形状及び寸法と同一であるツールを用いることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、上記研削ツールによって研削して面取り加工を施した位置決め部を除く部位と、第二の研削ツールによって研削して面取り加工を施した位置決め部との間で、面取り加工後の断面形状(円盤状ガラス基板を仮想的に厚み方向に切断した場合の断面形状)が略同一なものとなる。つまり、位置決め部と、当該位置決め部に連なる部位との間で、断面形状が急激に変化することを回避することができる。ここで、断面形状が急激に変化している場合、円盤状ガラス基板に何らかの外力が作用した際に応力集中が発生しやすくなり、円盤状ガラス基板が破損するおそれが高まってしまう。しかしながら、本方法によれば、位置決め部と、当該位置決め部に連なる部位との間で、断面形状を略同一とすることができるため、上記のようなおそれを的確に排除することが可能である。また、本方法では、円盤状ガラス基板の外周端部を、研削ツールによって円盤状ガラス基板の主面と平行な方向に沿って研削することから、円盤状ガラス基板の表面側と裏面側との双方に対して同時に面取り加工を施すことも可能である。これにより、面取り加工に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0022】
上記の方法において、上記研削ツールと第二の研削ツールとが、その回転軸を共有していることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、上記研削ツールを動作させるための駆動源と、第二の研削ツールを動作させるための駆動源とを別々に設ける必要が無くなる。そのため、低コスト化、及び省スペース化を図ることが可能となる。
【0024】
上記の方法において、位置決め部を形成する際に、円盤状ガラス基板を静止させた状態に固定することが好ましい。
【0025】
このようにすれば、円盤状ガラス基板を静止させた状態の下で、位置決め部を形成することから、当該位置決め部を更に高精度に形成することができる。
【0026】
上記の方法において、位置決め部を形成した後、外周端部にエッチング処理を施すことが好ましい。
【0027】
円盤状ガラス基板の外周端部に位置決め部を形成した場合、位置決め部を形成しない場合と比較して外周端部の強度が低下する。しかしながら、位置決め部を形成した後、外周端部にエッチング処理を施せば、当該外周端部に含まれた微小クラック等の欠陥を取り除くことが可能となる。その結果、円盤状ガラス基板の外周端部の強度を向上させることができる。
【0028】
上記の方法において、外周端部を研削した後、スクライブホイールの転動、又は、レーザーの照射によって外周端部にスクライブラインを形成すると共に、このスクライブラインに沿って割断を行うことで、オリエンテーションフラットを形成してもよい。
【0029】
このようにすれば、外周端部を研削した後で、当該外周端部にオリエンテーションフラットを形成することから、外周端部の研削によって円盤状ガラス基板の概形が定まった後で、オリエンテーションフラットが形成されることになる。このため、外周端部にオリエンテーションフラットを有した円盤状ガラス基板を量産するような場合に、生産された円盤状ガラス基板の相互間で、その形状にバラつきが生じるような事態の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るガラス基板の研削方法によれば、研削ツールを回転させることで円盤状ガラス基板の外周端部を研削する場合に、当該円盤状ガラス基板の破損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係るガラス基板の研削方法を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係るガラス基板の研削方法を示す縦断側面図である。
図3図2におけるE部を拡大して示す縦断側面図である。
図4】本発明の実施形態に係るガラス基板の研削方法によって研削された円盤状ガラス基板を示す縦断側面図である。
図5】本発明の実施形態に係るガラス基板の研削方法を示す平面図である。
図6】本発明の他の実施形態に係るガラス基板の研削方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態に係るガラス基板の研削方法について、添付の図面を参照して説明する。
【0033】
本発明の実施形態に係るガラス基板の研削方法においては、まず、研削ツール1を用いて、円盤状ガラス基板2の外周端部2aを研削して面取り加工を施すための面取工程を実行する(図1図3)。次に、研削ツール1とは異なる第二の研削ツール3を用いて、面取り加工が施されたノッチ4を円盤状ガラス基板2の外周端部2aに形成するためのノッチ形成工程を実行する(図5)。最後に、円盤状ガラス基板2の外周端部2aにエッチング処理を施して、当該外周端部2aの強度を向上させるための処理工程を実行する。
【0034】
このガラス基板の研削方法では、研削ツール1及び第二の研削ツール3を、それぞれ円盤状ガラス基板2の厚み方向(以下、単に厚み方向と表記する)に延びる軸線5,6を回転中心として回転させる。ここで、本実施形態で研削の対象となる円盤状ガラス基板2は、半導体ウェハーのバック・グラインド工程において半導体ウェハーを支持する支持体となるガラス基板である。
【0035】
まず、面取工程について説明する。
【0036】
図1及び図2に示すように、円盤状ガラス基板2は、厚み方向に沿って延びる軸線7を回転中心としてA方向に回転(自転)することが可能なテーブル8の上に平置き姿勢で載置されている。なお、円盤状ガラス基板2は、平面視で当該円盤状ガラス基板2の中心2bの位置と、軸線7の位置とが一致するようにテーブル8上に載置されている。
【0037】
テーブル8は円盤状ガラス基板2を下方から支持する支持部8aを有し、この支持部8aは平面視で円盤状ガラス基板2よりも一回り径の小さい円形に形成されている。これにより、テーブル8上に載置された円盤状ガラス基板2の外周端部2aが、支持部8aの外周端から食み出した状態となっている。また、支持部8aには多数の孔8aaが形成されており、多数の孔8aaの各々は、図示省略の負圧発生手段(例えば、真空ポンプ等)と接続されている。これにより、負圧発生手段が多数の孔8aaを介して円盤状ガラス基板2に負圧を発生させることで、支持部8aが円盤状ガラス基板2を吸着することが可能となっている。
【0038】
以上のことから、支持部8aに円盤状ガラス基板2を吸着させた状態で、テーブル8をA方向に回転させると、テーブル8上に載置された円盤状ガラス基板2が、軸線7を回転中心として偏心することなくA方向に回転(自転)する。
【0039】
研削ツール1は、軸線5を回転中心としてB方向に回転(自転)すると共に、円盤状ガラス基板2の回転方向(A方向)に逆らって円盤状ガラス基板2の周りをC方向に旋回することが可能となっている。この研削ツール1は、ダウンカット方式によって円盤状ガラス基板2の外周端部2aを研削する向きに回転(自転)している。なお、変形例として、研削ツール1を、アップカット方式で円盤状ガラス基板2の外周端部2aを研削する向きに回転(自転)させてもよい。
【0040】
図3図2において丸で囲ったE部を拡大して示した図)に示すように、研削ツール1の外周部1aは、接着剤(例えば、メタルボンド等)によって固着された多数の砥粒で構成されている。この外周部1aには、円盤状ガラス基板2の外周端部2aを研削するための研削溝9が上下複数段に亘って形成されている。各研削溝9は、円盤状ガラス基板の外周端面2aaを研削するための底部9aと、当該底部9aに連なり、且つ円盤状ガラス基板2の上面2c及び下面2dをそれぞれ研削するための一対の側壁部9bとを有している。各研削溝9は、研削ツール1の外周側に移行するに連れて、その溝幅が漸次に拡大するように形成されている。底部9aと側壁部9bとの両者は、一定の曲率で湾曲した湾曲面によって滑らかに連なっている。同様に、側壁部9bと研削ツール1の外周端面1aaとの両者は、一定の曲率で湾曲した湾曲面によって滑らかに連なっている。
【0041】
以上のことから、研削ツール1が円盤状ガラス基板2の周りを旋回しながら外周端部2aを研削することで、図4に示すように、研削ツール1の外周部1aに形成された研削溝9に対応した断面形状に外周端部2aが形成され、面取工程が完了する。
【0042】
次に、ノッチ形成工程について説明する。
【0043】
面取工程が完了すると、テーブル8の回転を停止させることにより、円盤状ガラス基板2の回転(A方向への回転)を停止させ、円盤状ガラス基板2を静止させた状態に固定する。なお、テーブル8の支持部8aによる円盤状ガラス基板2の吸着は継続して行う。
【0044】
そして、図5に示すように、第二の研削ツール3をF方向に回転(自転)させると共に、予め設定した軌道Sに沿って移動させることにより、円盤状ガラス基板2の中心2b側から外周側に向かって漸次に形成幅が拡大するノッチ4を外周端部2aに形成する。このノッチ4は、円盤状ガラス基板2の外周端部2aの一部が除去されてなると共に、円盤状ガラス基板2を平面視した場合に、その向きを判別して位置決めを行うための位置決め部である。
【0045】
ノッチ4の形成には、第二の研削ツール3として、形成を予定したノッチ4の最大幅Wよりも径D2が小さいツールを用いる。また、この第二の研削ツール3の径D2は、面取工程に用いた研削ツール1の径D1よりも小さくなっており、径D2が2mm以下のツールを用いている。なお、好ましくは、第二の研削ツール3としては、その径D2が1.5mm以下のツールを用いる。
【0046】
第二の研削ツール3の外周部3aは、面取工程に用いた研削ツール1と同様にして、接着剤(例えば、メタルボンド等)によって固着された多数の砥粒で構成されている。さらに、外周部3aには、円盤状ガラス基板2の外周端部2aを研削して面取り加工が施されたノッチ4を形成するための研削溝が上下複数段に亘って形成されている。この研削溝の形状及び寸法は、研削ツール1の外周部1aに形成された研削溝9と同一な形状及び寸法に形成されている。
【0047】
以上のことから、第二の研削ツール3が軌道Sに沿って移動しながら円盤状ガラス基板2の外周端部2aを研削することにより、軌道Sに倣った形状のノッチ4が形成されると共に、当該ノッチ4に面取り加工が施され、ノッチ形成工程が完了する。
【0048】
最後に、処理工程について説明する。
【0049】
ノッチ形成工程が完了すると、円盤状ガラス基板2の外周端部2aの全周に対してエッチング処理を施す。このエッチング処理は、例えば、フッ化水素(HF)を外周端部2aに噴き付けることで行う。この処理工程が完了することにより、本実施形態に係るガラス基板の研削方法の全工程が完了する。
【0050】
以下、上記のガラス基板の研削方法による主たる作用・効果について説明する。
【0051】
上記のガラス基板の研削方法によれば、研削ツール1及び第二の研削ツール3を円盤状ガラス基板2の厚み方向に延びる軸線5,6を回転中心として回転させることから、円盤状ガラス基板2の外周端部2aは、研削ツール1、或いは、第二の研削ツール3によって円盤状ガラス基板2の主面(上面2c、下面2d)と平行な方向に沿って研削されることになる。そのため、研削ツール1、或いは、第二の研削ツール3から外周端部2aへと作用する力が、円盤状ガラス基板2の厚み方向に作用することを可及的に防止できる。これにより、研削ツール1による外周端部の研削中、及び、第二の研削ツール3によるノッチ4の形成中に、外周端部2aが厚み方向に沿って揺動するような事態の発生が回避される。その結果、割れや欠けが発生する等、円盤状ガラス基板2の破損を防止することが可能となる。
【0052】
ここで、本発明に係るガラス基板の研削方法は、上記の実施形態で説明した態様に限定されるものではない。上記の実施形態では、面取工程の実行に研削ツールを用い、ノッチ形成工程の実行に上記研削ツールとは異なる第二の研削ツールを用いているが、面取工程の実行とノッチ形成工程の実行とに同一の研削ツールを用いてもよい。また、上記の実施形態では、位置決め部として、円盤状ガラス基板の外周端部にノッチを形成する態様となっているが、図6に示すように、位置決め部として円盤状ガラス基板2の外周端部2aにオリエンテーションフラット10を形成する態様としてもよい。
【0053】
さらに、上記の実施形態では、円盤状ガラス基板の外周端部を研削して面取り加工を施す面取工程を実行した後、ノッチ形成工程を実行しているが、この限りではない。面取工程を実行した後、スクライブホイールの転動、又は、レーザーの照射によって円盤状ガラス基板の外周端部にスクライブラインを形成すると共に、このスクライブラインに沿って割断を行うことで、オリエンテーションフラットを形成してもよい。この場合、形成後のオリエンテーションフラットを研削ツールで研削して面取り加工を施すことが好ましい。なお、この面取り加工に用いる研削ツールとしては、上記研削ツールや第二の研削ツールを用いてもよいし、これら以外の研削ツールを用いてもよい。そして、この面取り加工を実行する際にも、研削ツールを円盤状ガラス基板の厚み方向に延びる軸線を回転中心として回転させることが好ましい。
【0054】
加えて、上記の実施形態の変形例として、上記研削ツールと第二の研削ツールとが、その回転軸を共有していてもよい。すなわち、両研削ツールが、例えば、軸方向に相互に離間した状態で同一の回転軸に取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 研削ツール
1a 外周部
1aa 外周端面
2 円盤状ガラス基板
2a 外周端部
2aa 外周端面
2b 中心
2c 上面
2d 下面
3 第二の研削ツール
3a 外周部
4 ノッチ
5 軸線
6 軸線
7 軸線
8 テーブル
8a 支持部
8aa 孔
9 研削溝
9a 底部
9b 側壁部
10 オリエンテーションフラット
A 回転方向
B 回転方向
C 旋回方向
D1 径
D2 径
F 回転方向
S 軌道
W 最大幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6