特許第6583670号(P6583670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583670
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】亜鉛を含有する非晶質炭素膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/27 20060101AFI20190919BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20190919BHJP
   A61K 6/027 20060101ALI20190919BHJP
   A61C 8/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   C23C16/27
   C23C14/06 B
   A61K6/027
   A61C8/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-165304(P2015-165304)
(22)【出願日】2015年8月24日
(65)【公開番号】特開2016-47962(P2016-47962A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2018年8月24日
(31)【優先権主張番号】特願2014-170907(P2014-170907)
(32)【優先日】2014年8月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592031444
【氏名又は名称】ナノテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591136528
【氏名又は名称】株式会社ニチオン
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【弁理士】
【氏名又は名称】奥原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100178571
【弁理士】
【氏名又は名称】関本 澄人
(72)【発明者】
【氏名】中森 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】平塚 傑工
(72)【発明者】
【氏名】平栗 健二
(72)【発明者】
【氏名】大越 康晴
(72)【発明者】
【氏名】本田 宏志
(72)【発明者】
【氏名】馬目 佳信
【審査官】 井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−004166(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/035634(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C14/00−14/58
C23C16/00−16/56
A61K 6/027
A61L27/00
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空炉内に、被加工材を保持する基板と、該基板に対向配置される亜鉛ターゲット基板を設置し、
該真空炉内への所定量の希ガス導入下で、両基板間に、基板電圧印加手段により、所定のパルス幅を有する高出力インパルス電圧からなるスパッタ電圧を印加することで、亜鉛ターゲット基板でのスパッタリングを行い、
該真空炉内へ所定量の希ガス及び炭化水素系原料ガスを導入しつつ、両基板間に、所定のパルス幅を有する高出力インパルス電圧からなる電圧を印加することで、前記基板に保持された被加工材の表面に、所望の亜鉛量を含有する非晶質炭素膜を成膜する方法。
【請求項2】
前記パルス幅のいずれもが500マイクロ秒以上1000マイクロ秒未満であることを特徴とする請求項1に記載の非晶質炭素膜を成膜する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定量の亜鉛を含有することで、所望する量の亜鉛を溶出する非晶質炭素膜の製造方法及び該製造方法によって製造された非晶質炭素膜に関する。
【背景技術】
【0002】
非晶質炭素膜とは、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜とも呼ばれ、ダイヤモンド構造に対応するsp結合を有する炭素と、グラファイト構造に対応するsp結合を有する炭素が不規則に混在したアモルファス構造の膜である。高硬度・低摩擦、表面が不活性といった特性を有するため、金属やセラミックス等の無機材料及び高分子樹脂等の有機系材料等からなる基材表面のコーティング材として利用することにより、基材表面に耐摩耗性、耐蝕性及び摺動性等の性質をもたらすことが知られている。
【0003】
非晶質炭素膜は更に生体適合性や化学的安定性といった特性も有することから、医療用デバイスへの表面改質手段としても期待されている。即ち、これらの特性に加え、上記の様に、金属、セラミック、高分子樹脂など、様々な材にコーティングすることで表面硬度や摺動性が向上するため、例えばインプラントへの応用が提案されている(特許文献1)。
【0004】
一般にインプラントとは、体内に埋め込まれる器具の総称であり、医療目的で広く用いられている。その中で特に、失われた歯根に代えて顎骨に埋め込む人工歯根(デンタルインプラント)や、外傷や疾病などにより生じた骨欠損部の再建修復に寄与する人工骨や人工関節といった、周囲の骨に長期に亘って安定に固定されなければならないものは、機械的強度や適切な弾性特性などの物理的特性に加え、埋め込み部位に長期間安定に固定する特性と周囲の骨組織を短期間で回復させる特性、外界からの感染を阻止する特性を持つことが必要である。以上のことから、1)機械的強度及び適切な弾性特性、2)表面硬度及び摺動性、3)骨組織との結合機能、4)骨組織自身の回復促進機能、5)菌の増殖を抑える抗菌特性、を持つインプラント用材料の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−4166
【特許文献2】特開2005−118131
【特許文献3】WO2010/150788
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】近藤和夫、2005年発行、セラミックス基盤工学研究センター年報、vol.5、pp.25−32
【非特許文献2】高玉博朗ら他4名、2010年発行、中部大学生命健康科学研究所紀要、vol.7、pp.61−66
【非特許文献3】小澤修ら他4名、2007年発行、公益財団法人ソルト・サイエンス研究財団 平成17年度助成研究報告集II、pp.79−84
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、生体内に埋め込むインプラントの基材としては、セラミック、高分子樹脂、金属などが用いられている。この内、セラミックについては、生体内で安定であり、生体組織との親和性が良く、腐食や拒絶反応がほとんど認められないという長所はあるものの(非特許文献1)、強度が必ずしも十分ではない(特許文献2)。一方、チタン、ステンレスなどに代表される金属材料は、機械的強度や適切な弾性特性を有する為、インプラント用材料として幅広く利用されているが、患者の回復能力を積極的に推進する機能は持っていない。
【0008】
こうした問題点を克服するべく、これまで様々な取り組みがなされてきた。例えば、セラミックにおいては、生体活性を更に高めたもの(非特許文献1)や機械的強度を増す工夫がなされ(特許文献2)、比較的生体親和性の高い金属であるチタン及びその合金では、酸やアルカリ処理後、適度な温度で加温することで骨結合能を発現させ、銀イオンを導入することで抗菌作用を付与している(非特許文献2)。更に、チタン金属に対して積極的に自己組織の回復促進機能や抗菌性を付与すべく、骨形成及び石灰化、抗菌効果が知られている亜鉛(非特許文献3)の官能基をチタン又はその合金に付加する方法等(特許文献3)が検討されてきている。
【0009】
しかしながら、こうした取り組みをもってしても、上述した1)−5)からなるインプラント用材料に求められる要件のすべてを満たすものは未だ見出されていない。特に、4)及び5)の機能については、該機能を付与すべく、チタン又はその合金に亜鉛を付加する取り組みは行われているものの、未だ、骨形成や石灰化、抗菌効果等の生物学的活性に適した亜鉛濃度の溶出を制御出来るに至っていない。
【0010】
上記事情に鑑みて、本発明は、1)機械的強度及び適切な弾性特性、2)表面硬度及び摺動性、3)骨組織との結合機能、4)骨組織自身の回復促進機能、5)菌の増殖を抑える抗菌特性、を兼ね備えたインプラント用材料を提供することを目的とする。特に4)及び5)といった生物学的活性を制御しうるインプラント用材料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、非晶質炭素膜をインプラント用基材、特に1)の要件である機械的強度及び適切な弾性特性を有しているチタン、ステンレスなどの金属の被膜として用いることで、上記1)−5)の全ての要件を満たすことを可能にするべく、該炭素膜の成膜に対する様々な条件につき、鋭意研究を行った。その結果、骨形成及び石灰化に関与し、尚且つ、著しい抗菌作用をも有することが知られている亜鉛を、該炭素膜に含有させることにより、要件4)及び要件5)を実現することが可能であることを見出した。本来、非晶質炭素膜は、その物性として、2)表面硬度及び摺動性と、生物学的親和性、即ち3)骨組織との結合機能を有しているため、以上の結果から、亜鉛を含有する非晶質炭素膜を適当な基材に成膜することにより、要件1)−5)の全てを満たすインプラントを開発することが可能となった。
【0012】
ここで、非晶質炭素膜に含有される亜鉛は、基本的に極微量のイオンの形で該炭素膜から溶出され、特定の濃度範囲において、骨形成及び石灰化といった要件4)の自己骨組織の回復促進機能を実現し、要件5)の著しい抗菌作用を発揮することが知られている。発明者らは、更に研究を進めることにより、非晶質炭素膜の成膜において、所定のパルス幅を有する高出力インパルスからなる電圧を印加することによって、所望する量の亜鉛を非晶性炭素膜に含有させることが出来、それにより所望する量の亜鉛を溶出することに成功した。この様に、生物学的活性に適した亜鉛量を溶出させることで、高い骨形成促進効果を発揮し、尚且つ抗菌作用を有するインプラントを製造することが可能となった。
【0013】
以上の知見に基づいて、本発明は完成されるに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(5)に関するものである。
(1)真空炉内に、被加工材を保持する基板と、該基板に対向配置される亜鉛ターゲット基板を設置し、
該真空炉内への所定量の希ガス導入下で、両基板間に、基板電圧印加手段により、所定のパルス幅を有する高出力インパルス電圧からなるスパッタ電圧を印加することで、亜鉛ターゲット基板でのスパッタリングを行い、
該真空炉内へ所定量の希ガス及び炭化水素系原料ガスを導入しつつ、両基板間に、所定のパルス幅を有する高出力インパルス電圧からなる電圧を印加することで、前記基板に保持された被加工材の表面に、所望の亜鉛量を含有する非晶質炭素膜を成膜する方法。
(2)前記パルス幅のいずれもが500マイクロ秒以上1000マイクロ秒未満であることを特徴とする(1)に記載の非晶質炭素膜を成膜する方法。
(3)(1)又は(2)に記載の方法により成膜された非結晶質炭素膜。
(4)(3)に記載の非結晶炭素膜中の亜鉛の含有量が、該炭素膜を構成する炭素原子数に対する亜鉛原子数の比率で0.5以下であることを特徴とする非晶質炭素膜。
(5)基材と、
該基材の表面を覆う、(3)又は(4)に記載の非晶質炭素膜より構成されることを特徴とするインプラント。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非晶質炭素膜に所望の量の亜鉛を含有させることにより、所望する量の亜鉛を溶出する非晶質炭素膜を製造することが出来る。該炭素膜は、本来炭素膜が有する表面硬度と摺動性、及び骨組織との結合機能に加え、溶出する亜鉛イオンによる骨組織自身の回復促進機能及び菌の増殖を抑える抗菌特性を有するため、該炭素膜を、機械的強度及び適切な弾性特性を有する適当な基材上に成膜することによって、望まれる要件1)−5)の全ての性質を備えたインプラントを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】亜鉛を含有する非晶性炭素膜の成膜装置概略図。
図2】炭素原子数に対する亜鉛原子数の比率と高出力インパルス電圧のパルス幅との関係。
図3】炭素原子数に対する亜鉛原子数の比率と非晶質炭素膜からの亜鉛溶出量の関係。
図4】マウス頭蓋冠由来細胞株における塩化亜鉛(ZnCl)濃度と骨形成促進効果との関係。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の形態は、真空炉内に、被加工材を保持する基板と、該基板に対向配置される亜鉛ターゲット基板を設置し、該真空炉内への所定量の希ガス導入下で、両基板間に、基板電圧印加手段により、所定のパルス幅を有する高出力インパルス電圧からなるスパッタ電圧を印加することで、亜鉛ターゲット基板でのスパッタリングを行い、該真空炉内へ所定量の希ガス及び炭化水素系原料ガスを導入しつつ、両基板間に、所定のパルス幅を有する高出力インパルス電圧からなる電圧を印加することで、前記基板に保持された被加工材の表面に、所望の亜鉛量を含有する非晶質炭素膜を成膜する方法である。該成膜方法は、どの様な装置にて実施してもよいが、例えば、本願出願の実施例において用いた、亜鉛を含有する非晶性炭素膜の成膜装置でもよい(図1)。
【0017】
スパッタリングとは、プラズマ化した原子核をターゲットに当てて、はね返った原子や分子を基盤に付着させる方法であり、本発明においては、亜鉛をターゲット基板として、これにプラズマ化した希ガスを衝突させ、該ターゲット基板より跳ね飛ばされた亜鉛が、対向配置された基板上の被加工材表面に付着する。ここで亜鉛ターゲットの組成は、特に限定はしないが、亜鉛含有率10〜100重量% +炭素含有率0〜90重量%であってもよく、好ましくは亜鉛含有率70〜100重量% +炭素含有率0〜30重量%であってもよい。
【0018】
本発明においては、亜鉛ターゲット基板へのスパッタリングと、希ガス及び炭素水素系原料ガスの導入及び両基板間への電圧印加を同時に行ってもよく、先に該スパッタリングを行った後、希ガス及び炭素水素系原料ガスの導入及び両基板間への電圧印加を行ってもよい。
【0019】
本発明に係る基板電圧印加手段とは、両基板間に電圧を印加する手段であり、所定のパルス幅を有する高出力インパルス電圧を印加できるものをいう。ここでインパルス電圧とは、過渡的に短時間出現する電圧で、急激に最高値まで上昇し、それを緩やかに降下するものをいい、高出力とは、特に限定はしないが、好ましくは0.06〜14.55kWであってもよい。該基板電圧印加手段として、具体的には、高出力インパルス・マグネトロン・スパッタリング(HiPIMS)電源や大電力パルススパッタリングが挙げられる。
【0020】
真空炉とは、チャンバー内の空気を排気し、真空状態で加熱処理を行う装置であり、真空とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされている特定の空間の状態をいう。特に限定はしないが、0.27Pa以下でもよく、好ましくは0.05Pa以下でもよく、さらに好ましくは5x10−3Pa以下でもよい。
【0021】
本発明に係る希ガスには、アルゴンを用いることが一般的であるが、その他にクリプトン及びキセノン等の他の希ガスを用いてもよい。
【0022】
本発明に係る炭化水素系原料ガスとは、炭素原子と水素原子だけで出来た化合物の総称である炭化水素から構成された原料ガスのことであり、その分子構造によりアルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン、芳香族炭化水素などに区分される。特に限定はしないが、具体的にはメタン(CH4)、エタン(C26)、プロパン(C38)、ブタン(C410)、ペンタン(C512)、ヘキサン(C614)、ヘプタン(C716)、オクタン(C818)、ノナン(C920)、デカン(C1022)、エチレン(C24)、プロピレン(C36)、ブテン(C48)、ペンテン(C510)、ヘキセン(C612)、アセチレン(C22)、プロピン(C34)、ベンゼン(C66)、トルエン(C65CH3)、ジメチルベンゼン(C6426)、トリメチルベンゼン(C6339)などが挙げられる。また、複数の2重結合、複数の3重結合及び複数のベンゼン環を含んでもよく、これらを組み合わせた炭化水素を用いてもよい。また、これらの炭化水素は単独で用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。好ましくはアセチレン、メタン、ベンゼンであってもよい。
【0023】
本発明に係る希ガス及び炭化水素系原料ガスの流量比は、特に限定はしないが、[炭化水素系原料ガス/希ガス]で表されるガス流量比として、0.1〜3であり、好ましくは0.6〜1であってもよい。
【0024】
本発明に係る両基板間に印加するスパッタ電圧及び/又は被加工材の表面に非晶質炭素膜を成膜する為の電圧は、特に限定はしないが、好ましくは500V〜1200Vであってもよく、特に好ましくは750Vであってもよい。また、該電圧に周波数がある場合は、特に限定はしないが、500Hz〜2000Hzであってもよく、特に好ましくは1000Hzであってもよい。
【0025】
本発明の両基板間に印加するスパッタ電圧及び/又は被加工材の表面に非晶質炭素膜を成膜する為の電圧に係るパルス幅と、成膜された該炭素膜を構成する炭素原子数に対する亜鉛原子数の比率(Zn/C原子数濃度比)の関係を、両電圧750V、周波数1000Hz、ガス流量比(アセチレン/アルゴン)の条件下にて測定したところ、パルス幅が250マイクロ秒から500マイクロ秒までの範囲でZn/C原子数濃度比の変化はなく、DC電源をパルス幅1000マイクロ秒(Duty 100%)と捉えると、500マイクロ秒から1000マイクロ秒の範囲で、パルス幅の長さに応じてZn/C原子数濃度比が増加する結果となった(図2)。このことより、該パルス幅の長さを調整することで所望のZn/C原子数濃度比を有する非晶質炭素膜を成膜することが可能であることが明らかとなった。
【0026】
本発明を完成させるために、発明者らは様々な成膜条件での検討を行った結果([0037]〜[0047]参照)、両基板間に印加するスパッタ電圧及び/又は被加工材の表面に非晶質炭素膜を成膜する為の電圧に直流(DC)電圧を用いる条件においては、Zn/C原子数濃度比を制御することが困難であり、所望する以上の、Zn/C原子数濃度比を有する非晶質炭素膜となってしまうことを見出した。
【0027】
更に発明者らは、本発明により成膜した、亜鉛を含有する非晶質炭素膜から如何なる量の亜鉛が溶出しているかを測定したところ、非晶質炭素膜中の亜鉛含量(Zn/C原子数濃度比)に応じて亜鉛の溶出量が上昇することを見出した(図3)。一般に、高い骨形成促進効果を有する亜鉛イオン濃度は、骨形成がなされる基質表面近傍での濃度で、およそ1ppb(=1x10−3mg/L)〜5ppm(=5mg/L)であることが知られており(山口正義、1990年発行、衛生化学、vol.36、pp.85−99等)、非晶質炭素膜からの亜鉛の溶出量は、該亜鉛濃度に対応する程度の溶出量であることが望ましい。本件出願に係る溶出試験では,生理食塩水(20mL,90度)に対し、10mm角のステンレス基板の片面のみにコーティングした非晶質炭素膜を、3日間浸漬した後、該生理食塩水20mL中の亜鉛濃度を測定している。DC電源により成膜した非晶質炭素膜は、いずれも高いZn/C原子数濃度比を有する為、該炭素膜からの亜鉛溶出量は、該炭素膜近傍での濃度に換算した場合、生物学的活性に有効な範囲を大きく上回ることが予想され、インプラントの表面被膜としては不適当である。これに対し、本発明に係る成膜の方法においては、両基板間に印加するスパッタ電圧及び/又は被加工材の表面に非晶質炭素膜を成膜する為の電圧として、所定のパルス幅を有する高出力インパルス電圧を用い、該パルス幅を調整することで、所望のZn/C原子数濃度比を有する非晶質炭素膜を成膜することが可能である為、結果として、所望の亜鉛量(例えば、炭素膜近傍で、生物学的活性を有する濃度となる亜鉛量)を溶出する非晶性炭素膜を成膜することを実現している。
【0028】
発明者らは、亜鉛濃度と骨形成促進効果との関係性を明らかにする為に、マウス頭蓋冠由来細胞株を培養し、該細胞培養の培地中に、様々な濃度の塩化亜鉛(0,0.005,0.01,0.05,0.1,0.5,1mM;それぞれ0,0.33,0.65,3.27,6.54,32.69,65.38mg/Lに該当)を添加したまま4週間培養を維持したところ、0.05mM(=3.27mg/L)までは用量依存的な骨形成促進効果を認めたが、上記文献にある通り、5mg/Lを超える濃度(0.1mM=6.54mg/L)から骨形成の減少が認められ、それ以上の亜鉛濃度においては顕著な骨形成阻害を確認した(図4)。
【0029】
本発明の第2の形態は、前記第1の形態に記載の方法により成膜された非結晶質炭素膜である。
【0030】
本発明に係る非晶質炭素膜は、アモルファスカーボン膜ともいい、上述したように、ダイヤモンド構造に対応するsp結合を有する炭素と、グラファイト構造に対応するsp結合を有する炭素が不規則に混在したアモルファス構造の膜である。該膜の膜厚は特に限定しないが、0.01〜1μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜0.78μmの範囲である。
【0031】
ここで非晶質炭素膜に含有される亜鉛は、炭素のいかなる結合手に結合していてもよく、非晶性炭素膜を構成するダイヤモンド構造及びグラファイト構造のいかなる部位に含有されていてもよい。また、非晶質炭素膜に含有される亜鉛の含有量は、該炭素膜を構成する炭素原子数に対する亜鉛原子数の比率によって規定され、特に限定はしないが、例えば、エネルギー分散型X線分析(EDX)、電子線マイクロアナライザ(EPMA)、オージェ電子分光(AES)などで測定してもよく、好ましくはEDXによって測定してもよい。
【0032】
亜鉛を含有する非晶質炭素膜については、特許文献1の[0059]に「DLC膜に亜鉛が添加されていてもよい」という記載がある。しかしながら、該記述には、亜鉛を添加する目的及び効果について何ら記述も示唆もなく、また、該炭素膜に含有される亜鉛の含有量についても何ら記述されていない。発明者らは、様々な条件にて、亜鉛を含有する非晶質炭素膜を成膜し、該炭素膜に含有される亜鉛の含有量を測定すると共に、該炭素膜からの亜鉛溶出量を測定することで(実施例参照)、生体に対して有効な亜鉛溶出量を実現する、非晶質炭素膜中の亜鉛含有量を見出した。具体的には、非晶質炭素膜での亜鉛の含有量が、該炭素膜を構成する炭素原子数に対する亜鉛原子数の比率で0.5以下であることを特徴とする。
【0033】
亜鉛の溶出とは、亜鉛を含有する非晶質炭素膜から、該炭素膜に含有された亜鉛が該炭素膜内に留まらず、膜外に遊離していく状態をさす。この時、溶出する亜鉛はどの様な状態であってもよいが、好ましくは亜鉛イオンの状態であってもよい。また、亜鉛と共に他の物質が溶出されてもよいが、好ましくは主に亜鉛のみが溶出されるのでもよい。更に、非晶質炭素膜からの亜鉛の溶出量は、一定条件の液体に該炭素膜を浸漬し、浸漬後の該液体中の亜鉛濃度を測定し、mg/mLやppb、ppmなどによって規定する。特に限定はしないが、例えば、規定温度かつ規定量の生理食塩水に一定期間浸漬した後、該食塩水中の亜鉛濃度をICP発光分析法にて測定してもよい。
【0034】
本発明の第3の形態は、基材と、該基材の表面を覆う、前記第2の形態に記載の非晶質炭素膜より構成されることを特徴とするインプラントである。
【0035】
本実施形態に係るインプラントとは、体内に埋め込まれる器具全般を指し、例えば、人工骨、人工関節、人工歯根、義歯、歯冠修復物などが挙げられる。また、前記第2の形態に記載の非晶質炭素膜により覆われる基材は、特に限定はしないが、金属、高分子樹脂又はセラミックなどやこれらの複合体とすることが出来る。本願発明においては、機械的強度及び適切な弾性特性を有する金属が好ましく、ステンレス、チタン又はチタン合金などが特に好ましい。
【0036】
本非晶質炭素膜が基材を覆う範囲は、体内に埋め込まれた際に、該基材と体内の骨とが接触する面を含んでいればよく、また、骨と接触する面以外の部分を覆っていてもよい。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を示す。これらは、あくまでも例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更を行ってもよい。
【0038】
1.亜鉛を含有する非晶質炭素膜の成膜実験
1−1.概要
真空炉にアルゴンとアセチレンのガスを導入し、亜鉛のターゲットを用いて亜鉛をドーピングした非晶質炭素膜の成膜実験を行った。ガス流量比とスパッタ電源の電圧・パルス幅を操作し、該炭素膜中の亜鉛含有量の制御を試みた。またスパッタ電源には、DC電源とHiPIMS電源を用いた。シリコンのウエハを成膜サンプルとし、段差測定とEDX測定で評価した。
【0039】
1−2.使用装置
真空炉は日本真空技術株式会社のIPB−450VHSを用いた。DC電源はKYOSANのHPK06Gを使用し、HiPIMS電源はナノテック株式会社のICF−500 plus SIを使用した。
【0040】
1−3.装置概略図
図1に本実験で使用した成膜装置の概略図を示す。真空炉内に、被加工材を保持する基板と、該基板に対向配置される亜鉛ターゲット基板を100mmの間隔を空けて設置し、両基板間にスパッタ電源を用いることで、所定の電圧の印加が可能な構成となっている。
【0041】
1−4.評価方法
段差測定と、EDX測定を行いサンプルの膜厚と組成を評価した。段差測定には東京精密のE−RA−SO1Aを使用した。EDX測定にはHITACHIのSwift ED3000を用い、観察視野は700nm×800nm、収集時間は100秒、定性元素を炭素(C)、酸素(O)、亜鉛(Zn)とした。
【0042】
1−5.成膜条件と測定結果
1−5−1.実験1:DC電源を使用し、スパッタ電源電圧を変化させる。
[実験手順]
・真空炉にサンプルをセットし、真空度を5x10−3Pa以下にする。
・真空炉にアルゴンガスを導入し、亜鉛ターゲットのスパッタリングを行う。
・真空炉にアルゴンガスとアセチレンガスを導入し、ターゲットに電圧を印加することで、アルゴンイオンによる亜鉛のスパッタとアセチレンガスのプラズマCVDを進行させ、基板にセットしたサンプルに成膜を行う。
[成膜条件]
・DC電源の電圧をそれぞれ400、500、600、700、800Vとして、基板は接地し、アセチレン/アルゴンガス流量比を1とした。
[測定結果]
・段差測定によりサンプルの膜厚を測定し成膜レートを算出した。また、EDX測定によりサンプルの組成を評価した。結果を表1に示す。
【表1】
表1. 実験1のサンプル評価
【0043】
1−5−2.実験2:DC電源を使用しガス流量比を変化させる。
[実験手順]
・真空炉にサンプルをセットし、真空度を5x10−3Pa以下にする。
・真空炉にアルゴンガスを導入し、亜鉛ターゲットのスパッタリングを行う。
・真空炉にアルゴンガスとアセチレンガスを導入し、ターゲットに電圧を印加することで、アルゴンイオンによる亜鉛のスパッタとアセチレンガスのプラズマCVDを進行させ、基板にセットしたサンプルに成膜を行う。
[成膜条件]
・DC電源の電圧を700Vとして、基板は接地し、アセチレン/Arガス流量比を1、0.8、0.6、0.4、0.2とした。
・追加でアセチレン/アルゴンガス流量比が1.05、1、0.95、0.9、0.85の実験も行った。
[測定結果]
・段差測定によりサンプルの膜厚を測定し成膜レートを算出した。また、EDX測定によりサンプルの組成を評価した。結果を表2に示す。
【表2】
表2.実験2のサンプル評価(空欄は未測定)
【0044】
1−5−3.実験3:HiPIMS電源を使用し、スパッタ電圧を変化させる。
[実験手順]
・真空炉にサンプルをセットし、真空度を5x10−3Pa以下にする。
・真空炉にアルゴンガスを導入し、亜鉛ターゲットのスパッタリングを行う。
・真空炉にアルゴンガスとアセチレンガスを導入し、ターゲットに電圧を印加することで、アルゴンイオンによる亜鉛のスパッタとアセチレンガスのプラズマCVDを進行させ、基板にセットしたサンプルに成膜を行う。
[成膜条件]
・HiPIMS電源の電圧を550、600、650、700、750Vとして、周波数を1000Hz、パルス幅を100マイクロ秒とし、基板は接地した。アセチレン/アルゴンガス流量比を1とした。
[測定結果]
・段差測定によりサンプルの膜厚を測定し成膜レートを算出した。また、EDX測定によりサンプルの組成を評価した。結果を表3に示す。
【表3】
表3.実験3のサンプル評価
【0045】
1−5−4.実験4:パルス幅が100マイクロ秒のHiPIMS電源を使用し、ガス流量比を変化させる。
[実験手順]
・真空炉にサンプルをセットし、真空度を5x10−3Pa以下にする。
・真空炉にアルゴンガスを導入し、亜鉛ターゲットのスパッタリングを行う。
・真空炉にアルゴンガスとアセチレンガスを導入し、ターゲットに電圧を印加することで、アルゴンイオンによる亜鉛のスパッタとアセチレンガスのプラズマCVDを進行させ、基板にセットしたサンプルに成膜を行う。
[成膜条件]
・HiPIMS電源の電圧を750Vとして、周波数を1000Hz、パルス幅を100マイクロ秒とし、基板は接地した。アセチレン/アルゴンガス流量比を1、0.8、0.6とした。
[測定結果]
EDX測定によりサンプルの組成を評価した。結果を表4に示す。
【表4】
表4.実験4のサンプル評価(空欄は未測定)
【0046】
1−5−5.実験5:HiPIMS電源を使用しパルス幅が500マイクロ秒で固定条件として設定し、ガス流量比を変化させた。
[実験手順]
・真空炉にサンプルをセットし、真空度を5x10−3Pa以下にする。
・真空炉にアルゴンガスを導入し、亜鉛ターゲットのスパッタリングを行う。
・真空炉にアルゴンガスとアセチレンガスを導入し、ターゲットに電圧を印加することで、アルゴンイオンによる亜鉛のスパッタとアセチレンガスのプラズマCVDを進行させ、基板にセットしたサンプルに成膜を行う。
[成膜条件]
・HiPIMS電源の電圧を750Vとして、周波数を1000Hz、パルス幅を500マイクロ秒とし、基板は接地した。アセチレン/アルゴンガス流量比を1、0.8、0.6、0.4とした。
[測定結果]
EDX測定によりサンプルの組成を評価した。結果を表5に示す。
【表5】
表5.実験5のサンプル評価(空欄は未測定)
【0047】
1−5−6.実験6:DC電源、及びHiPIMS電源を使用し、パルス幅を変化させる。
[実験手順]
・真空炉にサンプルをセットし、真空度を5x10−3Pa以下にする。
・真空炉にアルゴンガスを導入し、亜鉛ターゲットのスパッタリングを行う。
・真空炉にアルゴンガスとアセチレンガスを導入し、ターゲットに電圧を印加することで、アルゴンイオンによる亜鉛のスパッタとアセチレンガスのプラズマCVDを進行させ、基板にセットしたサンプルに成膜を行う。
[成膜条件]
・HiPIMS電源、及びDC電源の電圧を750Vとして、HiPIMS電源は周波数を1000Hz、パルス幅を250、500、750マイクロ秒とし、基板は接地した。アセチレン/アルゴンガス流量比を1とした。
[測定結果]
段差測定によりサンプルの膜厚を測定し成膜レートを算出した。また、EDX測定によりサンプルの組成を評価した。結果を表6に示す。
【表6】
表6.実験6のサンプル評価(空欄は未測定)
【0048】
1−5−7.パルス幅とZn/C原子数濃度比の関係
上記実験1〜6において検討した成膜条件及びその測定結果の中から、スパッタ電圧750V、周波数1000Hz、ガス流量比(アセチレン/アルゴン)が1におけるパルス幅とZn/C原子数濃度比を選択し、両者の関係を図示した(図2)。
本成膜条件において、パルス幅が250マイクロ秒から500マイクロ秒までの範囲でZn/C原子数濃度比の変化はなかったが、DC電源をパルス幅1000マイクロ秒(Duty 100%)と捉えると、500マイクロ秒から1000マイクロ秒の範囲で、パルス幅が大きくなるに従い、Zn/C原子数濃度比が増加する結果となった。
【0049】
2.亜鉛を含有する非晶質炭素膜からの亜鉛溶出量測定実験
2−1.概要
亜鉛含有量が既知の亜鉛含有非晶質炭素膜からの亜鉛溶出量を測定することにより、非晶質炭素膜への亜鉛含有量と、該炭素膜からの亜鉛の溶出量の関係を明らかにすることを目的とする。
2−2.方法
サンプル(各条件にて10mm角のステンレス基板に片面のみコーティングしたもの)ごとに、生理食塩水(0.9%NaCl、pH7.4、20mL)に浸漬し、恒温槽(90℃)にて、72時間保持した。その後、各サンプルから溶出したZnイオン濃度を、該生理食塩水を希釈せずに、ICP発光分析装置(ICPS−8100、株式会社島津製作所)により測定した。なお、測定には202.551nmの輝線を用いた。
2−3.結果
上記実験1〜6において成膜した非晶質炭素膜(一部)からの亜鉛溶出量を、上記方法に従って測定し、以下に纏めた(表7)。
【表7】
表7.実験1〜6のサンプル(一部)と亜鉛溶出量
本データに基づき、非晶質炭素膜の亜鉛含有量と、該炭素膜から溶出される亜鉛量の関係を図示したところ(図3)、非晶質炭素膜中のZn/C原子数濃度比に応じて亜鉛の溶出量が上昇しており、特にDC電源を用いて成膜した亜鉛を含有する非晶質炭素膜は、そのほとんどが、Zn/C原子数濃度比、亜鉛溶出量共に高値を示していた。
【0050】
3.マウス頭蓋冠由来細胞株における亜鉛濃度と骨形成促進効果の相関性評価
3−1.概要
本件発明に係る非晶質炭素膜の成膜方法により成膜された、所望のZn/C原子数濃度比を有する非晶質炭素膜から溶出される亜鉛量により、該炭素膜近傍で実現されるレベルの亜鉛濃度が、マウス頭蓋冠由来細胞株の骨形成に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。
【0051】
3−2.方法
3−2−1.細胞の培養条件
マウス頭蓋冠由来細胞株MC3T3−E1を、MEM−alpha培地(Lifetechnologies)−10%ウシ胎児血清−100Units/mL penicillin−100マイクロg/mL streptomycin(Gibco)を用いて、細胞密度10.4×10(個/well)にて24wellプレートに播種し、インキュベータ(温度37℃、5%CO)内で培養を開始した。
播種から4日後に培養液を除去し、塩化亜鉛を0,0.005,0.01,0.05,0.1,0.5,1mMの濃度で含有するMEM−alpha培地を培養液として加え、3〜4日毎に各亜鉛濃度を含有したMEM−alpha培地にて培地交換を行いつつ、インキュベータ内で培養を継続した。
培養開始から4週間後に、以下に示す方法により、染色実験を行った。
【0052】
3−2−2.アリザリンレッド染色
上記培養細胞に対して、骨芽細胞の骨形成指標であるアリザリンレッド染色を以下の手順にて実施した;
各亜鉛濃度条件にて培養した培養プレートから培地を除去し、1wellごとにPBSで洗浄後、メタノールを添加し、細胞を固定した。
メタノール除去し、精製水で1回洗浄した後、コスモバイオ社製の石灰化染色キットAK21付属の染色液をwellに添加し、室温で5分間静置することで反応を行った。
該染色液を除去後、付属の緩衝液でwellを洗浄すると、骨形成の指標である、カルシウムの沈着が生じている細胞のみが赤く染色された。
本染色像を光学顕微鏡にて画像化し、当該画像の細胞部分を線で囲み、「WinROOF 2013」を用いて当該細胞部分の面積を定量、wellの全面積中で、該染色細胞が占める面積の割合を、亜鉛濃度条件ごとに測定・算出した。
【0053】
3−3.結果
培地に含まれる塩化亜鉛の含有量(mM)に対する細胞染色面積率(%)を纏めた(図4)。
0.05mMまでは用量依存的な骨形成促進効果が認められたが、0.1mMから骨形成の減少が認められ、それ以上の亜鉛濃度(0.5mM、1mM)においては顕著な骨形成阻害を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る所定量の亜鉛を含有する非晶質炭素膜の成膜方法は、これにより、所望する量の亜鉛を溶出する非晶質炭素膜を製造することを可能とする。該炭素膜は、本来炭素膜が有する表面硬度と摺動性、及び骨組織との結合機能に加え、溶出する亜鉛イオンによる骨組織自身の回復促進機能及び菌の増殖を抑える抗菌特性を有するため、該炭素膜を、機械的強度及び適切な弾性特性を有する適当な基材上に成膜することによって、インプラントに望まれる5つの要件、即ち、1)機械的強度及び適切な弾性特性、2)表面硬度及び摺動性、3)骨組織との結合機能、4)骨組織自身の回復促進機能、5)菌の増殖を抑える抗菌特性、の全ての性質を備えたインプラントの提供等に大いに貢献するものである。
図1
図2
図3
図4