(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記引掛け部が前記開口部から突出し、かつ、前記フック部材の被支持部が前記ケース部材の支持部に係合していない状態における、前記フック部材の被支持部の背面側、及び/又は、前記ケース部材の支持部の正面側に、前記フック部材と前記ケース部材との組み付けを容易にするテーパ部が設けられている請求項1又は2記載のフック装置。
前記フック部材の被支持部は、前記基部の両側から突出した一対の軸部であり、前記ケース部材の支持部は、前記収容部の内面両側に形成された、前記軸部が挿入される一対の軸受け部であり、
前記軸部の少なくとも一方は、前記基部から突出した大径部と、該大径部に連設し、大径部よりも小径の小径部とからなり、
前記軸受け部の少なくとも一方は、前記軸部の小径部が挿入される孔部と、前記軸部の大径部を受け入れる凹部とからなる請求項1〜3のいずれか1つに記載のフック装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係るフック装置の一実施形態について説明する。
【0014】
図1及び
図2に示すように、この実施形態のフック装置10は、正面側に開口部27を有する収容部21を設けたケース部材20と、該ケース部材20に回動可能に取付られるフック部材50と、フック装置10をパネル等の被取付部材1(
図10参照)に取付けるための、本体70及びピン部材80からなるクリップ60とを有している。
【0015】
前記被取付部材1(
図10〜12参照)としては、車両の座席シートのフレームや、車室や荷室の側面パネル、床面パネル等が挙げられ、特に限定はされない。また、被取付部材1には、
図5に示すような、トリムボードやガーニッシュ等の取付部材5を、フック装置10を介して取付けるようにしてもよい(これについては後述する)。なお、被取付部材1にトリムボード等を取付けなくても、フック装置10のみを取付けてもよい(この場合、フック装置10自体が「取付部材」となる)。
【0016】
まず、フック部材50について説明する。
【0017】
図1及び
図2に示すように、このフック部材50は、ケース部材20に回動可能に支持される基部51と、該基部51から延出して、基部51の回動に伴って、ケース部材20の収容部21の開口部27から出没する引掛け部52と、基部51の両側にそれぞれ設けられた軸部54,55と、基部51の、前記引掛け部52の延出方向とは異なる方向に設けられた第1回動規制部53とを有している。
【0018】
この実施形態における前記基部51は略台形状をなしているが、この基部51の角部端部から、略L字状をなした前記引掛け部52が突出している。また、
図11に示すように、引掛け部52を収容部21内に収容した状態で、収容部21の開口部27から露出する、基部51及び引掛け部52の一部を意匠面Dとしたとき、該意匠面Dは平坦面状をなしている。なお、基部51の形状は特に限定されず、また、引掛け部52は、略U字状やコ字状等でもよく、袋の持ち手やロープ等を引掛け可能であればよい。また、
図11〜13においては、ケース部材20やクリップ60等は断面形状をなしているが、フック部材50は、分かりやすくするため、便宜上断面形状とはなっていない(ハッチングを入れていない)。
【0019】
図11に示すように、フック部材50の引掛け部52の一側面には、成形時のヒケ防止用の肉抜き凹部52aが形成されている。また、引掛け部52の他側面には、上記のような肉抜き凹部52aが形成されていない(
図1参照)。このため、フック部材50の引掛け部52を開口部27から突出させたとき、使用状態で引掛け部52の見えやすい側を肉抜き凹部52aがない側にして配置することが外観上好ましい。
【0020】
更に
図9(b)に示すように、基部51の一側面から前記軸部54が突設されている。この軸部54は、基部51の一側面から突出した大径部54aと、該大径部54aに連設し、大径部54aよりも小径の小径部54bとからなる。一方、基部51の他側面からは、前記軸部54の大径部54aよりも短い大径部55aと、該大径部55aに連設し、大径部55aよりも小径の小径部55bとからなる、軸部55が突設されている。なお、これらの軸部54,55は、引掛け部52に近接し且つ意匠面D寄りの位置から突設している(
図11参照)。そして、軸部54,55が、収容部21の後述する軸受け部30,31(
図1参照)に挿入され、基部51が回動可能に支持される。これらの軸部54,55が、本発明における「被支持部」をなしている。なお、基部両側から突設した一対の軸部は、両方が同じ長さであってもよく、また、他方の軸部にのみ大径部及び小径部を設けてもよく、特に限定はない。
【0021】
また、
図3に示すように、フック部材50の引掛け部52が、収容部21の開口部27から突出し、かつ、フック部材50の被支持部(軸部54,55)がケース部材20の支持部(軸受け部30,31)に係合していない状態における、軸部54の小径部54bの先端部の背面側、及び、軸部55の小径部55bの先端部の背面側には、フック部材50とケース部材20との組み付けを容易にするためのテーパ部56が、軸部54の小径部54bの先端部の背面側、又は、軸部55の小径部55bの先端部の背面側に向けて、次第に高さが低くなるように傾斜した形状でそれぞれ設けられている(すなわち、「被支持部」の背面側にテーパ部56が設けられている)。
【0022】
更に、基部51の、引掛け部52の延出方向とは異なる方向、ここでは、
図1及び
図12に示すように、基部51を回動させて引掛け部52が収容部21の開口部27から突出したときに、上方側に位置する面の中央から前記第1回動規制部53が突設されている。
図12に示すように、この第1回動規制部53は、引掛け部52が収容部21の開口部27から突出した状態で、ケース部材20の後述する第2回動規制部35に当接して、フック部材50の回動規制を図るものである。この実施形態の第1回動規制部53は、略L字状をなすと共に、その内側中央が板体で補強された凸状をなしているが(
図2及び
図11参照)、第1回動規制部としては、第2回動規制部に当接可能な形状であればよく、例えば、凹状をなしていてもよい(この場合、第2回動規制部は凸状をなす)。
【0023】
また、
図2及び
図11に示すように、基部51の、引掛け部52が設けられた面とは反対側の面、すなわち、基部51が回動して引掛け部52が収容部21内に収容された状態で、下方側に位置する面に、保持突起57が突設されている。
図11に示すように、この保持突起57は、ケース部材20の後述する弾性保持片37に係合して、引掛け部52が収容部21内に収容された状態を保持するものである。
【0024】
次に、ケース部材20について説明する。
【0025】
図1及び
図2に示すように、前記収容部21は、一対の側壁22,23と、その上下に配置された上壁24及び下壁25と、これらの各壁の背面側に配置された背面壁26とからなる、正面側が開口した有底箱状をなしている。また、収容部21の正面側は、拡径した枠状をなしており、その内周に前記開口部27が設けられている。
【0026】
なお、収容部21としては、背面壁のない枠状をなしていてもよく、少なくとも正面側に開口部を有する形状であればよい。また、この発明において、収容部の開口部の「正面側」とは、フック部材の引掛け部を突出させて、袋等を引掛けることが可能となる向きを意味する。
【0027】
更に、収容部21の側壁22,23及び上壁24からは、固定片28がそれぞれ延設されており、これらの複数の固定片28を介して、ケース部材20がトリムボード等の取付部材5に固定されるようになっている(
図5参照)。
【0028】
また、背面壁26には、クリップ固定解除孔26aが、後述する空隙41に連通して形成されている(
図2及び
図13参照)。
図13に示すように、このクリップ固定解除孔26aは、後述するクリップ60と被取付部材1の取付孔3との係合を解除すべく、マイナスドライバー等の工具7の先端部を、クリップ60のピン部材80の溝部82に差し込むためのものである。
【0029】
収容部21の一対の側壁22,23には、その長さ方向中央よりもやや下壁25側に、フック部材50の軸部54,55が挿入されて、これらを回動可能に支持する軸受け部30,31が形成されている。これらの軸受け部30,31が、フック部材50の被支持部である軸部54,55に係合して基部51を回動可能に支持する、本発明における「支持部」をなしている。また、
図1、
図9及び
図11に示すように、前記側壁22,23の内面側であって、前記軸受け部30,31に整合した位置には、薄肉突起状のガイド壁22a,23aが、ケース正面側から背面側に向けて延設されている。
【0030】
なお、この実施形態では、フック部材側の「被支持部」が軸部をなし、ケース部材側の「被支持部」が軸部が挿入される軸孔となっているが、例えば、「被支持部」を軸孔とし「支持部」を軸部としたり、「被支持部」及び「支持部」ともに突起状としたりしてもよく、「被支持部」と「支持部」とが互いに係合して、ケース部材に対してフック部材の基部を回動可能に支持できる構造であれば、特に限定はされない。
【0031】
図1及び
図9(a)に示すように、前記軸受け部30は、前記軸部54の小径部54bが挿入される孔部30aと、該孔部30aに隣接した位置であって、側壁22の内側周縁部に形成された、軸部54の大径部54aを受け入れる凹部30bとからなる。一方、前記軸受け部31は、前記軸部55の小径部55bが挿入される孔部31aと、該孔部31aに隣接した位置であって、側壁23の内側周縁部に形成された、軸部55の大径部55aを受け入れる凹部31bとから構成されている(
図1及び
図9(a)参照)。
【0032】
また、
図9(a)に示すように、「支持部」である軸受け部30,31の正面側には、テーパ部32,32が設けられている。すなわち、側壁22の、孔部30aが形成された箇所の正面側、及び、側壁23の、軸受け部31が形成された箇所の正面側は、円弧状にやや盛り上がった形状をなしており(
図1参照)、この盛り上がった部分の、収容部内面側の周縁に、フック部材50とケース部材20との組み付けを容易にするためのテーパ部32が、収容部奥側に向けて傾斜してそれぞれ形成されている。
【0033】
ところで、この実施形態においては、フック部材50とケース部材20との組み付けを容易にするための「テーパ部」が、上記のようにケース部材20側に設けられていると共に(テーパ部32)、前述したように、フック部材50側にも設けられているが(テーパ部56)、フック部材50又はケース部材20のいずれか一方に設けられているだけでもよく、特に限定はされない。
【0034】
また、
図2及び
図11に示すように、収容部21の背面壁26の、上壁24側との境界部分は、円弧状に屈曲した形状をなし、その幅方向中央に切欠き部34が形成されている。そして、この切欠き部34を介して、収容部21の開口部27の上縁部に、
図12に示すように、引掛け部52が開口部27から突出した状態で第1回動規制部53に当接して、フック部材50を回動規制する、第2回動規制部35が形成されている。この実施形態では、切欠き部34によって、上壁24の内面側の幅方向中央部分が、開口部27近傍に至るまで溝状に切り欠かれており、この溝状をなした第2回動規制部35の内面に、第1回動規制部53が当接するようになっている(
図12参照)。
【0035】
なお、上記第2回動規制部は、例えば、収容部内方に向けて突出した突片状をなしていてもよい。また、本発明において、ケース部材側の「第2回動規制部」、及び、前述したフック部材側の「第1回動規制部」は、フック部材を回動させて、その引掛け部が収容部の開口部から突出したときに、互いに当接してフック部材の回動を規制できる形状であれば、どのような形状であってもよく、特に限定はされない。
【0036】
そして、このフック装置10においては、
図3に示すように、フック部材50の第1回動規制部53を、ケース部材20の第2回動規制部35に係合するように当接させた状態で、フック部材50の被支持部(ここでは軸部54,55)が、ケース部材20の支持部(ここでは軸受け部30,31)に正面側から当接し、その状態でフック部材50の引掛け部52を収容部21の開口部27の正面側から押し込むと、フック部材50の被支持部(ここでは軸部54,55)が、ケース部材20の支持部(ここでは軸受け部30,31)に係合して、フック部材50がケース部材20に組み付け可能とされている。
【0037】
図2に示すように、収容部21の下壁25には、コ字状のスリット37aを介して、弾性保持片37が撓み可能に形成されており、その自由端が収容部21の開口部27側に向けて配置されている。この弾性保持片37は、収容部21内にフック部材50の引掛け部52が収容された状態で、フック部材50の保持突起57に係合して、引掛け部52が収容部21内に収容された状態を保持する(
図11参照)。
【0038】
図2及び
図5〜7に示すように、ケース部材20の背面側には、パネル等の被取付部材1に係合するクリップ60を装着するための台座部40が設けられている。
【0039】
図2に示すように、この台座部40は、前記収容部21の背面壁26に対して、空隙41を介して設けられており、下方側が開口し上方側が閉塞した枠状をなしている。また、台座部40には、下方開口側が幅狭とされた鍵溝状をなした差込溝42が形成されており、後述するクリップ60の脚部71が差し込まれるようになっている。
【0040】
また、
図6に示すように、台座部40の内面側(収容部21の背面壁26との対向面側)には、複数の係止突起43が突設されている。これらの係止突起43は、差込溝42に脚部71が差し込まれたクリップ60の、後述する頭部73やフランジ77に係止して、台座部40の下方開口部からクリップ60が脱落することを防止する。
【0041】
更に
図7に示すように、台座部40の、上方閉塞部側であって、かつ、幅方向両側には、切欠き44,44が形成されている。これらの切欠き44,44の内側には、両端が支持された両持ち梁状の撓み可能な弾性片45,45がそれぞれ配置されている。この弾性片45は、クリップ60のフランジ77の裏面側(被取付部材1に近い方の面側)に配置される(
図7参照)。また、
図7及び
図14に示すように、各弾性片45の外面側には、クリップ60の脚部71が取付孔3に係合した状態で、被取付部材1の表側に当接して、弾性片45を撓ませてフランジ77に圧接させる、突部46がそれぞれ設けられている。
【0042】
上記突部46の形状や位置等は特に限定されないが、この実施形態における突部46は、弾性片45の略中央に設けられた細長い突起状をなし、台座部40の外面(被取付部材1の表側との対向面)よりも外方に突出しており、前述したように脚部71が取付孔3に係合したときに、被取付部材1の表側に当接するようになっている。
【0043】
更に
図7に示すように、台座部40の外面の幅方向両側であって、前記突部46,46から所定間隔をあけた位置には、薄肉の円形突起状をなした当接部47,47が突設されている。この当接部47,47は、クリップ60の脚部71が被取付部材1の取付孔3に係合した状態で、被取付部材1の表側に当接する(
図11〜14参照)。
【0044】
次に、フック装置10を被取付部材1に取付けるためのクリップ60について説明する。このクリップ60は、前述したように、本体70及びピン部材80からなる。
【0045】
図8(a),(b)に示すように、本体70は、被取付部材1の取付孔3に挿入されて係合する脚部71と、該脚部71に連設されて前記台座部40に保持される頭部73と、該頭部73に設けられたフランジ77とを有している。脚部71は有底筒状をなしており、その周方向両側には、取付孔3の裏側周縁に係合する撓み可能な弾性係合片72,72が設けられている。また、各弾性係合片72の先端部72aは、頭部73側に向けて延びており、その外周面はテーパ状をなしている。
【0046】
前記頭部73は、ピン部材80の基部81(後述)を収容する、両端部が丸みを帯びた長枠状をなしている。この頭部73の底部には、ピン部材80の押圧部83(後述)が挿入される挿入孔76が、脚部71の内部に連通して形成されている(
図8(a)参照)。また、頭部73の長手方向両側の壁部74,74の外周面からは、薄肉板状のフランジ77,77が延設されている。なお、前記壁部74の内側には、ピン部材80の、後述する基部81の側縁部81aに係止する、ピン係止片75が形成されている。
【0047】
一方、前記ピン部材80は、上記本体70の頭部73内に押込み可能に配置される基部81と、該基部81の裏面側に設けられた押圧部83とからなる。基部81の長手方向両側の側縁部81a,81aは、一段低い形状となっており、本体70のピン係止片75,75が係止する。また、基部81の表面には、マイナスドライバー等の工具7の先端部が差し込まれる、溝部82が形成されている。
【0048】
図8(b)に示すように、前記押圧部83は、先端側が二股状に枝分れした形状をなしており、枝分れした部分の先端内面には、外側に向けて次第に広がるテーパ面84がそれぞれ形成されている。また、押圧部83の先端外側面には、本体70の挿入孔76の周縁に係止する係止突部85が突設されている(
図8(a)参照)。
【0049】
そして、本体70の挿入孔76にピン部材80の押圧部83を挿入して、本体70に対してピン部材80を所定距離押し込むと、ピン部材80の係止突部85が、本体70の挿入孔76の周縁に係合して、本体70にピン部材80が抜け止め保持されて組付けられるようになっている。この状態では、
図10(a)に示すように、本体70の弾性係合片72,72の先端部72a,72aの外周面に、ピン部材80の押圧部83のテーパ面84,84が配置され、一対の弾性係合片72,72が内方に撓み可能となっている。
【0050】
したがって、取付孔3にクリップ60の脚部71を挿入すると、一対の弾性係合片72,72が取付孔3の内周に押圧されて撓み、各弾性係合片72の頂部(外径側に最も出っ張った部分)が取付孔3の裏側を通り越えると、各弾性係合片72が弾性復帰して、取付孔3の裏側周縁に一対の弾性係合片72,72が係合するようになっている(
図10(b)参照)。
【0051】
また、上記状態で、本体70に対してピン部材80を更に押し込むと、押圧部83のテーパ面84,84によって、一対の弾性係合片72,72の先端部72a,72aを押圧して、一対の弾性係合片72,72を、取付孔3の裏側周縁に係合しない程度に、内方に撓ませることができるようになっている(
図10(c)参照)。なお、この状態では、ピン部材80の基部81の側縁部81a,81aに、本体70のピン係止片75,75が係止して、ピン部材80の押込み状態が保持されるようになっている。
【0052】
次に上記構成からなるフック装置10の使用方法及び作用効果について説明する。
【0053】
まず、ケース部材20とフック部材50との組付け方法について説明する。すなわち、
図3に示すように、フック部材50の引掛け部52を、ケース部材20の収容部21の開口部27の正面側から突出する方向となるように向けると共に、フック部材50の軸部54,55のテーパ部56,56を、収容部21の開口部27の正面側に近接する方向に向ける。この状態で、フック部材50の第1回動規制部53を、ケース部材20の第2回動規制部35に係合するように当接させると共に、軸部54の大径部54aを軸受け部30の凹部30bに配置し、軸部55の大径部55aを軸受け部31の凹部31bに整合させる。そして、第1回動規制部53を第2回動規制部35に当接させた状態を維持しつつ、収容部21の開口部27の正面側から、フック部材50の引掛け部52を収容部21の背面側に向けて押し込んでいく。
【0054】
すると、互いに当接した第1回動規制部53と第2回動規制部35を支点として、フック部材50が押し込まれて、フック部材50の軸部54,55の大径部54a,55aが、ケース部材20の軸受け部30,31の凹部30b,31bにそれぞれ入り込むと共に、ケース部材20のテーパ部32,32に軸部54,55のテーパ部56,56が当接してガイドされつつ、軸部54,55の先端部が側壁22,23の内面に当接しながら収容部背面側に移動していく。そして、軸部54の小径部54bが軸受け部30の孔部30aに挿入され、軸部55の小径部55bが軸受け部31の孔部31aに挿入されると、軸部54,55が軸受け部30,31に回動可能に支持されて、ケース部材20にフック部材50を組み付けることができる。
【0055】
このように、このフック装置10においては、上記のように、第1回動規制部53を第2回動規制部35に当接させて、この互いに当接した第1回動規制部53と第2回動規制部35とを支点として、フック部材50を押し込むという、いわゆる梃子の原理を利用してフック部材50を組み付けることができるので、フック部材50の押し込み力を軽減させて、ケース部材20にフック部材50を容易に組み付けることができる。
【0056】
また、第1回動規制部53及び第2回動規制部35を支点として、フック部材50を押し込むことで、フック部材50の軸部54,55がケース部材20の軸受け部30,31に挿入される前に、フック部材50が回動してしまうことを防止できるので、フック部材50の押し込み力をケース部材20にしっかりと伝達することができ、ケース部材20にフック部材50を容易に組み付けることができる。
【0057】
更に、この実施形態においては、引掛け部52が収容部21の開口部27から突出し、かつ、フック部材50の軸部54,55がケース部材20の軸受け部30,31に係合していない状態における、フック部材50の軸部54,55の背面側、及び、ケース部材20の軸受け部30,31の正面側に、フック部材50とケース部材20との組み付けを容易にするテーパ部56,32がそれぞれ設けられている(
図1及び
図9参照)。そのため、上述したように、第1回動規制部53を第2回動規制部35に当接させて、フック部材50を押し込んでいくときに、フック部材50の軸部54,55(被支持部)を、テーパ部56,32を介して、ケース部材20の軸受け部30,31(支持部)に容易に係合させることができ、ケース部材20に対してフック部材50を、より容易に組み付けることができる。
【0058】
更に、この実施形態においては、
図1及び
図9(a)に示すように、フック部材50の基部51に設けた軸部54,55が、大径部54a,55aと、これよりも小径の小径部54b,55bとからなり、これに対応して、ケース部材20の軸受け部30,31にも、大径部54a,55aを受け入れる凹部30b,31bと、小径部54b,55bが挿入される孔部30a,31aとが設けられている。そのため、
図3に示すように、ケース部材20に対してフック部材50を組み付けるべく、第1回動規制部53に第2回動規制部35を当接させてフック部材50を押し込むと、フック部材50の軸部54,55の大径部54a,55aが、ケース部材20の軸受け部30,31の凹部30b,31bに入り込んでガイドされつつ、フック部材50を押し込むことができるので、フック部材50をスムーズに組み付けることができる。
【0059】
また、この実施形態においては、フック部材50の基部51の一側に、長い大径部54aを有する軸部54を設けると共に、基部51の他側に、軸部54の大径部54aよりも短い大径部55aを有する軸部55を設け(
図9(b)参照)、これに対応してケース部材20にも、軸受け部30に、軸部54の長い大径部54aを受け入れる凹部30bを設けると共に、軸受け部31に、軸部55の短い大径部55aを受け入れる凹部31bを設けた構造をなしているので(
図1及び
図9(a)参照)、ケース部材20に対してフック部材50を組み付ける際には、
図3に示すように、軸部54を軸受け部30に整合させ、軸部55を軸受け部31に整合させる必要がある。そのため、ケース部材20に対してフック部材50を、取付け方向を誤って組み付けてしまうことを確実に防止することができる(誤組付けの防止)。
【0060】
また、ケース部材20の背面側の台座部40にクリップ60を組み付ける際には、次のようにする。すなわち、本体70の挿入孔76にピン部材80の押圧部83を挿入して、ピン部材80の係止突部85を本体70の挿入孔76周縁に係合させて、本体70にピン部材80を予め組み付けておく。そして、このクリップ60の頭部73を、収容部21の台座部40に設けられた空隙41の下方開口側から挿入して押し込むことで、差込溝42にクリップ60の脚部71が差し込まれると共に、
図6に示すように、空隙41内に頭部73やフランジ77が入り込んで、これらに台座部40の内面側の複数の係止突起43が係止するので、台座部40にクリップ60を抜け止めした状態で装着することができる。なお、枠状の台座部40に抜け止め状態で装着されたクリップ60は、台座部40に対して上下左右方向に微少距離だけ移動させることが可能となっており、脚部71の位置を修正可能となっている。
【0061】
そして、
図5に示すように、フック装置10の複数の固定片28の孔に、トリムボード等の取付部材5から突出したピン6を挿入して溶着や接着等することで、取付部材5にフック装置10を固定することができる。その後、
図10(a)に示すように、取付部材5に固定されたクリップ60の脚部71の先端側を、パネル等の被取付部材1の取付孔3に挿入して押し込むことで、取付孔3の内周に一対の弾性係合片72,72が押圧されていき、その頂部が取付孔3の裏側を通過すると、各弾性係合片72が弾性復帰して、取付孔3の裏側周縁に一対の弾性係合片72,72が係合し、これによってクリップ60を介して、取付部材5を被取付部材1に取付けることができる(
図10(b)参照)。
【0062】
このとき、クリップ60は台座部40に対して上下左右に微少距離移動可能とされ、脚部71の位置を修正できるので、取付孔3の寸法精度や位置がずれている場合であっても、脚部71を適宜移動させてしっかりと取付孔3に挿入することができ、取付け作業性を向上させることができる。
【0063】
なお、
図14に示すように、この実施形態においては、台座部40の外面側に、一対の当接部47,47が設けられているので、クリップ60の脚部71が被取付部材1の取付孔3に係合した状態で、一対の当接部47,47が被取付部材1の表側に当接して、被取付部材1に対してフック装置10がやや傾いた状態で取付けられるようになっている。
【0064】
そして、上記のように本実施形態においては、ケース部材20の背面側にクリップ60を装着するための台座部40を設けると共に、クリップ60を、取付孔3に挿入されて係合する脚部71と、それに連設されて台座部40に保持される頭部73とを有する構造としたので、頭部73を台座部40に保持させてケース部材20にクリップ60を装着した状態で、脚部71を被取付部材1の取付孔3に挿入して係合させるだけの簡単な作業で、クリップ60を介してフック装置10を被取付部材1に取付けることができる。
【0065】
また、
図14に示すように、クリップ60の脚部71が被取付部材1の取付孔3に固定された状態では、台座部40の弾性片45に設けられた突部46が、被取付部材1の表側に当接して弾性片45を撓ませて(
図14の想像線参照)、該弾性片45をクリップ60のフランジ77の裏面に圧接させるため、例えば、車両走行時の振動や取付時のガタツキ等を抑制することができ、異音の発生を防止することができる。
【0066】
更にこの実施形態においては、上述したように、フック装置10をトリムボード等の取付部材5に固定しておき、該取付部材5を、フック装置10に装着したクリップ60を介して、パネル等の被取付部材1に取付けるようにしたので、フック部材50の引掛け部52に作用する袋や荷物等の荷重を、被取付部材1のみならず、取付部材5によっても負担することができ、より高い荷重に耐えることができる(被取付部材1だけにフック装置10を取付けた場合には、被取付部材1のみで荷重を受けることになり、高荷重に耐えにくくなる)。
【0067】
そして、フック部材50の引掛け部52に、袋や荷物等を引掛けたい場合には、引掛け部52が、収容部21の開口部27の正面側から突出する方向となるように、フック部材50を回動させる。すると、
図12に示すように、フック部材50の第1回動規制部53が、ケース部材20の第2回動規制部35に当接して、フック部材50の回動が規制される。そして、フック部材50の引掛け部52に、袋や荷物等の持ち手を引き掛けることで、袋や荷物を吊り下げた状態で保持することができる。
【0068】
また、上記のフック使用状態では、引掛け部52が収容部21の開口部27の正面下方側から突出しており、フック部材50の基部51及び引掛け部52の意匠面Dが、収容部21の開口部27に向けて斜め下方に位置して、収容部21の内面には当接しないようになっているので(
図12参照)、フック使用時に意匠面Dが傷つくことを防止することでき、フック未使用時に意匠面Dの外観が損なわれることを防止することができる。
【0069】
更に、上記のフック使用時においては、
図12に示すように、フック部材50の第1回動規制部53が、ケース部材20の第2回動規制部35に当接して、フック部材50の回動が規制されるので、荷物の荷重Gによって、第1回動規制部53と第2回動規制部35との当接部を支点にして、ケース部材20の軸受け部30,31に支持されたフック部材50の軸部54,55を、ケース部材20の収容部21の奥方に押し付ける力Fが作用して、フック部材50の軸部54,55がケース部材20の軸受け部30,31から外れにくくなり、重い荷物であっても安定して引掛けることができる。
【0070】
また、フック部材50の引掛け部52に、荷物等を引き掛けると、軸部54,55には、ケース部材20の背面側に向かう力Fが作用することとなる(
図12参照)。このとき、この実施形態においては、
図9に示すように、フック部材50の基部51の軸部54,55が大径部54a,55aを有すると共に、ケース部材20の軸受け部30,31に、大径部54a,55aを受け入れる凹部30b,31bが設けられているので、軸部54,55の大径部54a,55aが、軸受け部30,31の凹部30b,31bによってそれぞれ支持されることとなり、袋や荷物等の荷重を側壁22及び側壁23でも受けることができるため、高荷重に耐えることができ、重い荷物であっても安定して引掛けることができる。
【0071】
更に、メンテナンスや部品交換等の理由によって、フック装置10を被取付部材1の取付孔3から取外したい場合がある。この場合は、
図13に示すように、フック部材50を回動させて、その意匠面Dを工具7の先端部を差し込み可能な程度まで持ち上げ(ここでは意匠面Dがほぼ水平となるように)、工具7の先端部を、収容部21のクリップ固定解除孔26aを通して、クリップ60のピン部材80の溝部82に差し込む。この状態で工具7を押し込むと、
図10(c)に示すように、押圧部83のテーパ面84,84によって、一対の弾性係合片72,72の先端部72a,72aが押圧されて、一対の弾性係合片72,72が、取付孔3の裏側周縁に係合しない程度に内方に撓ませると共に、ピン部材80の基部81の側縁部81a,81aに、本体70のピン係止片75,75が係止して、ピン部材80の押込み状態が保持される。その後、工具7の先端部を溝部82から抜いて、被取付部材1から取付部材5を引き離すことによって、取付孔3から一対の弾性係合片72,72が引き抜かれて、取付孔3からクリップ60が取外されて、フック装置10を取外すことができる。
【0072】
一方、フック部材50を使用しない場合には、引掛け部52を持ち上げて基部51を回動させることで、
図11に示すように、フック部材50の保持突起57が、ケース部材20の弾性保持片37にクリック感を伴って係合して、引掛け部52が収容部21内に収容した状態を保持することができ、また、前記クリック感によって引掛け部52が収容部21内に収容されたことを確実に把握することができる。
【0073】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。