(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したシュラウドに形成された冷却通路によるフィルム冷却だけでは、高温の燃焼ガスに曝される翼の冷却としては、冷却効果が不足する場合がある。そのため、翼を効率良く冷却するために、フィルム冷却用の冷却媒体を有効に利用することが望まれている。
【0008】
本発明は、上記要望を応じるためになされたものであって、フィルム冷却を行うための冷却媒体を有効に利用して、効率的に冷却することが可能な翼及びこれを備えるガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様における翼は、冷却媒体を流通させる冷却流路が内部に形成された翼体を備え、前記翼体は、外面が燃焼ガスに曝され、前記外面と反対側を向く内面が前記冷却流路に面する外壁部を有し、前記外壁部は、前記冷却流路から流入する前記冷却媒体を流通させ、前記翼体の翼高さ方向と交差する仮想平面内で広がる第一流路及び第二流路が内部に形成され、前記第一流路は、前記外面に沿って延びる第一主流路と、前記外面に対して傾斜して形成されて前記外面で開口する第一出口流路と、
前記第一主流路と異なる傾きで形成されて前記内面で開口する第一入口流路と、前記第一入口流路と前記第一主流路とを繋ぐ第一入口遷移部と、前記第一出口流路と前記第一主流路とを繋ぐ第一出口遷移部と、を有し、前記第二流路は、前記第一主流路に対して前記外面に沿った方向に並んで配置されて前記外面に沿って延びる第二主流路と、
前記第二主流路と異なる傾きで形成されて前記内面で開口する第二入口流路と、前記第二入口流路と前記第二主流路とを繋ぐ第二入口遷移部と、を有し、前記第一出口流路及び前記第二入口流路は、前記仮想平面において、前記外面に沿った方向の位置が前記第一出口遷移部と前記第二入口遷移部との間で互いに少なくとも一部が重なるように配置されている。
【0010】
このような構成によれば、第一主流路内及び第二主流路内に冷却媒体が流通することで、対流冷却によって翼体の外面を冷却することができる。また、第一出口流路が外面に対して傾斜していることで、対流冷却後の冷却媒体を翼体の外面に沿って流すことができる。これにより、外面をフィルム冷却によって冷却することができる。また、第一出口流路が、外面に対して傾斜していることで、対流冷却後の冷却媒体を外面に沿って流すことができる。これにより、外面をフィルム冷却によって冷却することができる。加えて、第二主流路が形成されている領域に比べて外面から距離が遠くなることで冷却効率が低下する第二入口流路の開口が形成されている領域に対応する外面を、第一出口流路によって補って冷却することができる。したがって、複雑な曲面を有する翼体に対して、広範囲にわたって効率的に対流冷却を行いながら、対流冷却後の冷却媒体によってフィルム冷却を行うことができる。
【0011】
また、本発明の第二の態様における翼では、前記第一の態様において、前記第二入口流路は、前記第一出口流路と平行に形成されていてもよい。
【0012】
このような構成によれば、外壁部に対して第一流路と第二流路とを翼高さ方向と交差する仮想平面における外面に沿った方向に効率良く配置することができる。
【0013】
また、本発明の第三の態様における翼では、前記第一または前記第二の態様において、前記第二入口流路は、前記内面に対して鈍角をなして延びていてもよい。
【0014】
このような構成によれば、内面に対して第二入口流路が直角や鋭角をなして延びている場合に比べて、鈍角をなして延びていることで、圧損を低減することができる。
【0015】
また、本発明の第四の態様における翼では、前記第一から第三の態様のいずれか一つにおいて、前記翼体の内部に配置されて前記外壁部の内面に向かって前記冷却媒体を噴射する噴射孔が形成されたインピンジメント板を備え、前記第一流路及び前記第二流路は、前記噴射孔から噴射された冷却媒体が流通していてもよい。
【0016】
このような構成によれば、外壁部の内面に噴射されてインピンジメント冷却に利用された冷却媒体を再利用することができる。これにより、冷却媒体をより効率的に利用することができる。
【0017】
また、本発明の第五の態様における翼では、第四の態様において、前記翼は、前記外壁部と前記インピンジメント板とを接続する仕切りとを備え、前記仕切りは、前記仮想平面において、前記外面に沿った方向における前記第一出口遷移部と前記第二入口遷移部との間に配置されていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、リブを第一出口流路及び第二入口流路によって冷却することができる。
【0019】
また、本発明の第六の態様における翼では、第五の態様において、前記仕切りは、前記外壁部と前記インピンジメント板の間で延びるリブであってもよい。
【0020】
また、本発明の第七の態様におけるガスタービンは、前記燃焼ガスを生成する燃焼器と、第一から第六の態様のいずれか一つの翼を有するタービンとを備える。
【0021】
このような構成によれば、翼を効率的に冷却することができるため、冷却媒体を効率的に利用することができる。そのため、冷却媒体として圧縮空気の一部をタービンに供給する量を減少でき、ガスタービンとして効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第一流路及び第二流路に冷却媒体を流通させることで広範囲にわたって対流冷却を行うことができ、フィルム冷却を行うための冷却媒体を有効に利用して、効率的に冷却することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態について
図1から
図5を参照して説明する。
本実施形態のガスタービン100は、
図1に示すように、外気Aoを圧縮して圧縮空気Aを生成する圧縮機110と、燃料Fを圧縮空気A中で燃焼させ燃焼ガスGを生成する複数の燃焼器120と、燃焼ガスGにより駆動するタービン130と、を備えている。
【0025】
圧縮機110は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ111と、圧縮機ロータ111を回転可能に覆う圧縮機車室112と、を有する。タービン130は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ140と、タービンロータ140を回転可能に覆うタービン車室150と、を有する。圧縮機ロータ111の軸線Arとタービンロータ140の軸線Arとは、同一直線上に位置している。圧縮機ロータ111とタービンロータ140とは、互いに連結されてガスタービンロータ101を成している。また、圧縮機車室112とタービン車室150とは、互いに連結されてガスタービン車室102を成している。
【0026】
なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸方向Daとし、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。
【0027】
ガスタービンロータ101には、例えば、発電機GENのロータが連結されている。複数の燃焼器120は、軸線Arを中心として周方向Dcに並んで、ガスタービン車室102に収納されている。燃焼器120は、ガスタービン車室102に固定されている。
【0028】
タービンロータ140は、
図2に示すように、軸線Arを中心として軸方向Daに延びるロータ軸141と、このロータ軸141に取り付けられている複数の動翼段142と、を有する。複数の動翼段142は、軸方向Daに並んでいる。各動翼段142は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼142aで構成されている。複数の動翼段142の各上流側には、静翼段143が配置されている。各静翼段143は、タービン車室150の内側に設けられている。各静翼段143は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼1で構成されている。
【0029】
タービン車室150は、その外殻を構成する筒状の外側車室151と、外側車室151の内側に固定されている内側車室152と、内側車室152の内側に固定されている複数の分割環153とを有する。複数の分割環153は、いずれも、複数の静翼段143の相互の間の位置に設けられている。従って、各分割環153の径方向Dr内側には、動翼段142が配置されている。
【0030】
軸方向Daで静翼1及び動翼142aが配置されている環状の空間は、燃焼器120からの燃焼ガスGが流れる燃焼ガス流路Pgを成している。この燃焼ガス流路Pgは、軸線Arを中心として環状を成している。燃焼ガス流路Pgは、ロータ軸141が延びる軸方向Daに延在している。
【0031】
ロータ軸141には、冷却媒体として圧縮空気Aの一部が通るロータ冷媒通路141aが形成されている。ロータ冷媒通路141aを通った冷却媒体は、動翼142a内に導入されて、動翼142aの冷却に利用される。
【0032】
タービン車室150の内側車室152には、径方向Drに貫通する車室冷媒通路152aが形成されている。車室冷媒通路152aを通った冷却媒体は、静翼1内及び分割環153内に導入されて、静翼1及び分割環153の冷却に利用される。
【0033】
なお、静翼段143によっては、ガスタービン車室102内の空気が、冷却媒体として、車室冷媒通路152aを経ずにこの静翼段143を構成する静翼1に供給される場合もある。
【0034】
以下、本発明に係る翼の実施形態について説明する。
本実施形態の翼は、ガスタービン100の静翼1である。静翼1は、燃焼ガス流路Pg内に配置されている。静翼1は、
図2に示すように、翼体10と、内側シュラウド20と、外側シュラウド30とを有する。
【0035】
内側シュラウド20は、翼体10の径方向Dr内側に形成されている。内側シュラウド20は、環状の燃焼ガス流路Pgの径方向Dr内側の位置を画定する。
外側シュラウド30は、翼体10の径方向Dr外側に形成されている。外側シュラウド30は、環状の燃焼ガス流路Pgの径方向Dr外側の位置を画定する。
【0036】
翼体10は、ロータ軸141に対して径方向Drに延びている。翼体10は、
図3に示すように、翼高さ方向Zと直交する断面形状が翼型に形成されている。翼体10は、筒状をなしている。翼体10は、冷却媒体を流通させる冷却流路200が内部に形成されている。本実施形態の翼体10は、外壁部2と、インピンジメント板600と、リブ(仕切り)700とを有している。
【0037】
なお、本実施形態では、翼体10の翼高さ方向Zは、翼体10の延びている方向であって、本実施形態における径方向Dr(
図3紙面奥行方向)である。また、翼体10の翼弦方向Xは、本実施形態における翼高さ方向Zと直交する方向であって、翼体10の翼弦の延びる方向(
図3紙面左右方向)である。翼体10の翼厚方向Yは、本実施形態における翼高さ方向Z及び翼弦方向Xと直交する方向であって、翼体10の厚み方向(
図3紙面上下方向)である。
【0038】
また、翼体10の翼面方向Wは、外面3に沿った方向であって、翼弦方向X成分を含む方向である。つまり、翼面方向Wは、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、翼体10の翼面(外壁部2の外面3)が延びている方向である。
【0039】
外壁部2は、翼体10の外郭を形成している。外壁部2は、外面3が燃焼ガス流路Pgに面していることで燃焼ガスGに曝されている。外壁部2は、外面3と反対側を向く内面4が冷却流路200に面している。つまり、外壁部2は、冷却流路200を取り囲むように配置されている。外壁部2は、
図3に示すように、翼弦方向Xの前方側の端部が前縁部11を成している。外壁部2は、翼弦方向Xの後方側の端部が後縁部12を成している。この外壁部2の表面であって、翼体10の翼厚方向Yを向く外面3のうち、凸状の外面3が背側外面32(=負圧面)を成している。翼体10の翼厚方向Yを向く外面3のうち、凹状の外面3が腹側外面31(=正圧面)を成している。
【0040】
外壁部2は、内部に冷却媒体を流通させる複数のメイン壁部流路300(第一流路または第二流路)とサブ壁部流路301とが形成されている。本実施形態の外壁部2の内部に形成される複数の冷却媒体を流通させる流路は、全てメイン壁部流路300又はサブ壁部流路301である。メイン壁部流路300及びサブ壁部流路301は、冷却流路200から冷却媒体が流入する。
【0041】
サブ壁部流路301は、翼高さ方向Zと交差する仮想平面内において、外面3に沿って翼面方向Wに複数並んで形成されている。本実施形態のサブ壁部流路301は、翼弦方向Xの中心よりも前縁部11側に複数形成されている。本実施形態においける翼弦方向Xの中心よりも前縁部11側とは、前縁部11よりもわずかに腹側にずれた位置αであり、翼体10の周囲を流れる燃焼ガスGの流れが淀む領域に面した部位である。サブ壁部流路301は、翼高さ方向Zと交差する仮想平面内において、内面4から外面3に向かって直線状をなして延びているフィルム孔である。
【0042】
メイン壁部流路300は、翼高さ方向Zと交差する仮想平面内において、外面3に沿って翼面方向Wに複数並んで形成されている。本実施形態のメイン壁部流路300は、翼弦方向Xの中心よりも前縁部11側で、前縁部11から背側及び腹側にわたって形成されている。複数のメイン壁部流路300は、
図4に示すように、位置αを境界として、背側と腹側とで冷却媒体を流通させる方向が異なっている。複数のメイン壁部流路300は、複数のサブ壁部流路301を、背側と腹側とからそれぞれ挟み込むように形成されている。複数のメイン壁部流路300は、翼高さ方向Zと交差する仮想平面において外面3に沿って形成される主流路310と、内面4で開口する入口流路320と、主流路310と入口流路320とを繋ぐ入口遷移部330と、外面3で開口する出口流路340と、主流路310と出口流路340とを繋ぐ出口遷移部350とをそれぞれ有している。
【0043】
具体的には、
図4及び
図5を利用して、翼体10の背側に形成された隣接するメイン壁部流路300を例に挙げて説明する。本実施形態のメイン壁部流路300は、
図5に示すように、翼高さ方向Zと直交する仮想平面内に広がっている。ここで、翼体10の背側に形成された隣接するメイン壁部流路300のうち、翼面方向Wの前側である前縁部11側に配置されたメイン壁部流路300を第一流路である第一壁部流路400と称する。また、翼体10の背側に形成された隣接するメイン壁部流路300のうち、翼面方向Wの後側である後縁部12側に配置されたメイン壁部流路300を第二流路である第二壁部流路500と称する。
【0044】
なお、翼体10の腹側に形成された隣接するメイン壁部流路300の場合には、翼面方向Wの後縁部12側が第一壁部流路(第一流路)400となり、翼面方向Wの前縁部11側が第二壁部流路(第二流路)500となる。
【0045】
第一壁部流路400は、外面3に沿って延びる第一主流路410と、内面4で開口する第一入口流路420と、第一入口流路420と第一主流路410とを接続する第一入口遷移部430と、外面3で開口する第一出口流路440と、第一主流路410と第一出口流路440とを接続する第一出口遷移部450と、を有する。
【0046】
第一主流路410は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、背側外面32に沿って湾曲して延びている。本実施形態の第一主流路410は、外壁部2の内部において、背側外面32からの距離と内面4からの距離とが同程度の位置に形成されている。第一主流路410は、第一入口流路420や第一出口流路440よりも長く形成されている。第一主流路410は、第一入口流路420と接続されている位置から第一出口流路440と接続されている位置まで、断面流路面積が一定となるように形成されている。第一主流路410は、外面3及び内面4からそれぞれ一定の距離を保った状態で延びている。
【0047】
第一入口流路420は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、内面4で開口している。第一入口流路420は、この開口から冷却流路200を流通する冷却媒体が流れ込む。第一入口流路420では、内面4に形成される開口が第一主流路410よりも背側外面32に沿った方向の後縁部12側に形成されている。つまり、第一入口流路420では、内面4に形成された開口が翼面方向Wの位置が第一主流路410と重ならないように、第一主流路410よりも翼面方向Wの前側に形成されている。これにより、第一入口流路420は、内面4に対して傾斜して延びている。したがって、第一入口流路420は、第一主流路410と異なる傾きで形成されている。本実施形態の第一入口流路420は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、第一主流路410が延びていない側の内面4に対して鈍角に傾斜するように第一主流路410に向かって延びている。第一入口流路420は、開口から第一主流路410までの断面流路面積が一定となるように形成されている。
【0048】
第一入口遷移部430は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、第一入口流路420と第一主流路410とを繋ぐ接続部分である。第一入口流路420を流通する冷却媒体は、第一入口遷移部430を介して第一主流路410に送られることで流通方向が変化している。
【0049】
第一出口流路440は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、背側外面32で開口している。第一出口流路440は、この開口から冷却媒体を外壁部2の外部に排出する。第一出口流路440は、背側外面32に対して傾斜して形成されている。したがって、第一出口流路440は、第一主流路410と異なる傾きで形成されている。第一出口流路440では、背側外面32に形成される開口が第一主流路410よりも背側外面32に沿った方向の後縁部12側に形成されている。本実施形態の第一出口流路440は、第一主流路410から翼面方向Wに離れるにしたがって、背側外面32に近づくように傾斜した方向に延びている。つまり、本実施形態の第一出口流路440は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、第一主流路410が延びている側の背側外面32に対して鈍角に傾斜するように第一主流路410から延びている。第一出口流路440は、開口から第一主流路410までの断面流路面積が一定となるように形成されている。
【0050】
第一出口遷移部450は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、第一主流路410と第一出口流路440とを繋ぐ接続部分である。第一主流路410を流通する冷却媒体は、第一出口遷移部450を介して第一出口流路440に送られることで流通方向が変化している。第一出口遷移部450は、第一壁部流路400と第二壁部流路500との間に配置されたリブ700よりも翼面方向Wの前縁部11側に配置されている。
【0051】
第二壁部流路500は、外面3に沿って延びる第二主流路510と、内面4で開口する第二入口流路520と、第二入口流路520と第二主流路510とを接続する第二入口遷移部530と、外面3で開口する第二出口流路540と、第二主流路510と第二出口流路540とを接続する第二出口遷移部550と、を有する。
【0052】
第二主流路510は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、背側外面32に沿って湾曲して延びている。第二主流路510は、第一主流路410に対して背側外面32に沿った方向である翼面方向Wに並んで配置されている。本実施形態の第二主流路510は、外壁部2の内部において、背側外面32からの距離と内面4からの距離とが同程度の位置に形成されている。つまり、本実施形態の第二主流路510は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面における外壁部2の板厚方向の位置が第一主流路410と同じ位置に形成されている。第二主流路510は、第二入口流路520や第二出口流路540よりも長く形成されている。第二主流路510の長さは、第一主流路410と同じ長さである必要はなく、冷却する領域に合わせて適宜設定されることが好ましい。第二主流路510は、第二入口流路520と接続されている位置から第二出口流路540と接続されている位置まで、断面流路面積が一定となるように形成されている。第二主流路510は、外面3及び内面4からそれぞれ一定の距離を保った状態で延びている。
【0053】
第二入口流路520は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、内面4で開口している。第二入口流路520は、この開口から冷却流路200を流通する冷却媒体が流れ込む。第二入口流路520で、内面4に形成された開口が第二主流路510よりも翼面方向Wの後縁部12側であって、第一主流路410よりも翼面方向Wの前縁部11側に形成されている。つまり、第二入口流路520では、内面4に形成された開口が第二主流路510に対して翼面方向Wの前側の重ならない位置であって、翼面方向Wにおいて第一主流路410と第二主流路510とに挟まれる位置に形成されている。これにより、第二入口流路520は、内面4に対して傾斜して延びている。したがって、第二入口流路520は、第二主流路510と異なる傾きで形成されている。本実施形態の第二入口流路520は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、第二主流路510が延びていない側の内面4に対して鈍角に傾斜するように第二主流路510に向かって延びている。第二入口流路520は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、第一出口流路440と平行に延びている。第二入口流路520は、開口から第二主流路510までの断面流路面積が一定となるように形成されている。
【0054】
第二入口遷移部530は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、第二入口流路520と第二主流路510とを繋ぐ接続部分である。第二入口流路520を流通する冷却媒体は、第二入口遷移部530を介して第二主流路510に送られることで流通方向が変化している。本実施形態の背側に形成されたメイン壁部流路300では、第二入口遷移部530は、第一出口遷移部450に対して翼面方向Wに間隔を空けて、第一出口遷移部450よりも後縁部12側に配置されている。第二入口遷移部530は、第一壁部流路400と第二壁部流路500との間に配置されたリブ700よりも後縁部12側に配置されている。
【0055】
第二出口流路540は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、背側外面32で開口している。第二出口流路540は、この開口から冷却媒体を外壁部2の外部に排出する。第二出口流路540は、背側外面32に対して傾斜して形成されている。したがって、第二出口流路540は、第二主流路510と異なる傾きで形成されている。第二出口流路540では、背側外面32に形成される開口が第二主流路510よりも背側外面32に沿った方向の後縁部12側に形成されている。本実施形態の第二出口流路540は、第二主流路510から翼面方向Wに離れるにしたがって、背側外面32に近づくように傾斜した方向に延びている。つまり、本実施形態の第二出口流路540は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、第二主流路510が延びている側の背側外面32に対して鈍角に傾斜するように第二主流路510から延びている。第二出口流路540は、開口から第二主流路510までの断面流路面積が一定となるように形成されている。
【0056】
第二出口遷移部550は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、第二主流路510と第二出口流路540とを繋ぐ接続部分である。第二主流路510を流通する冷却媒体は、第二出口遷移部550を介して第二出口流路540に送られることで流通方向が変化している。
【0057】
第一出口流路440及び第二入口流路520は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、第一出口遷移部450と第二入口遷移部530との間で互いに外面3に沿った方向の位置の少なくとも一部が重なるように配置されている。具体的には、
図5の模式図に示すように、第一出口流路440及び第二入口流路520は、第一出口遷移部450と第二入口遷移部530との間で、翼面方向Wの位置が互いに重なるように配置されている。つまり、背側外面32に形成された第一出口流路440の背側外面32の開口は、翼面方向Wの位置が重なるように、内面4に形成された第二入口流路520の内面4の開口の裏側に形成されている。
【0058】
インピンジメント板600は、
図3及び
図4に示すように、外壁部2よりも翼体10の内部に配置されている。インピンジメント板600は、冷却流路200内に配置されている。インピンジメント板600は、径方向Drに延びる筒状をなしている。本実施形態におけるインピンジメント板600は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、外壁部2の内面4の輪郭線に対応する形状をなしている。インピンジメント板600は、外壁部2の内面4と間隔をあけて配置されている。これにより、インピンジメント板600の外側を向く板外周面610と、外壁部2の内面4との間には間隙が形成される。この間隙は、冷却流路200の一部を画成しており、冷却媒体が流通する。また、インピンジメント板600は、内部も冷却流路200の一部を画成しており、冷却媒体が流通する。インピンジメント板600は、部分的に外側シュラウド30における凹部の底で開口している。さらに、インピンジメント板600は、部分的に内側シュラウド20で開口している。静翼1の径方向Dr外側又は径方向Dr内側に存在する冷却媒体の一部は、この開口からインピンジメント板600の内部に流入する。インピンジメント板600は、内部を流れる冷却媒体を外壁部2の内面4に向かって噴出する噴射孔620が複数形成されている。噴射孔620は、翼面方向W及び翼高さ方向Zに間隔を空けて複数形成されている。つまり、噴射孔620は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、板外周面610に沿って複数並んで形成されている。
【0059】
リブ700は、インピンジメント板600と外壁部2とを接続している。リブ700は、インピンジメント板600の板外周面610と外壁部2の内面4との間の空間を区画している。リブ700は、インピンジメント板600の板外周面610と外壁部2の内面4とを接続するよう一体をなして延びている。リブ700は、板外周面610に沿った方向に複数配置されている。本実施形態のリブ700は、平板状をなして、翼高さ方向Zに延びている。リブ700は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、外面3に沿った方向における第一出口遷移部450と第二入口遷移部530との間に配置されている。具体的には、リブ700は、
図4に示すように、出口遷移部350と入口遷移部330と翼面方向Wの間に配置されている。具体的には、第一壁部流路400と第二壁部流路500との間に配置されたリブ700を例に挙げて説明すると、リブ700は、
図5に示すように、第一出口遷移部450と第二入口遷移部530との翼面方向Wの間に配置されている。より具体的には、第一壁部流路400と第二壁部流路500との間に配置されたリブ700は、第一出口遷移部450と内面4に形成された第二入口流路520の開口との間に配置されている。
【0060】
本実施形態のガスタービン100によれば、
図1に示すように、圧縮機110からの圧縮空気Aは、ガスタービン車室102内に入り、燃焼器120内に流れ込む。燃焼器120では、この圧縮空気Aと共に外部から供給される燃料Fを燃焼して、燃焼ガスGが生成される。この燃焼ガスGは、燃焼ガスG流路を通る過程で、動翼142aに接して、タービンロータ140をロータ軸141回りに回転させる。
【0061】
図2に示すように、圧縮機110からの圧縮空気Aの一部は冷却媒体として、動翼142aや静翼1を冷却するために、ロータ冷媒通路141aや車室冷媒通路152aに流れこむ。ロータ冷媒通路141aに流れ込んだ冷却媒体は、動翼142aを内部から冷却する。
【0062】
車室冷媒通路152aに流れ込んだ冷却媒体は、その径方向Dr内側に配置されている外側シュラウド30や分割環153の径方向Dr外側に流れ込み、外側シュラウド30や分割環153を冷却する。外側シュラウド30の径方向Dr外側に流れ込んだ冷却媒体は、インピンジメント板600の内部に流れ込む。その後、冷却媒体は、
図3に示すように、インピンジメント板600の噴射孔620から外壁部2の内面4に向かって噴射されて、外壁部2に対してインピンジメント冷却を行う。その後、噴射孔620から噴射された冷却媒体は、外壁部2の内面4に形成された開口から流入して、メイン壁部流路300内を流通する。
【0063】
具体的には、第一壁部流路400を例に挙げて説明する。噴射孔620から噴射された冷却媒体は、外壁部2の内面4に形成された開口から第一入口流路420に流入する。第一入口流路420に流入した冷却媒体は、第一入口遷移部430を経て、第一主流路410を流れる。第一主流路410を冷却媒体が流通することで、外壁部2の背側外面32と冷却媒体との間で対流冷却が行われる。その後、冷却媒体は、第一出口遷移部450を経て背側外面32に形成された第一出口流路440の開口から排出される。排出された冷却媒体は、周囲の燃焼ガスとともに背側外面32に沿って流れ、フィルム冷却を行うことで外面3を冷却する。
同様に、他のメイン壁部流路300においても、噴射孔620から噴射された冷却媒体が流入し、翼体10の外部に排出される。
【0064】
上記のような第一実施形態の翼である静翼1によれば、外壁部2の内部に外面3に沿って第一流路及び第二流路である複数のメイン壁部流路300が形成されている。例えば、第一壁部流路400では、背側外面32に沿って延びる第一主流路410が形成されている。また、第二壁部流路500では、背側外面32に沿って延びる第二主流路510が形成されている。そのため、第一主流路410内及び第二主流路510内に冷却媒体が流通することで、対流冷却によって翼体10の背側外面32を冷却することができる。
【0065】
また、第一出口流路440や第二出口流路540が、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、背側外面32に対して鈍角に傾斜していることで、対流冷却後の冷却媒体を背側外面32に沿って流すことができる。これにより、背側外面32をフィルム冷却によって冷却することができる。したがって、複雑な曲面を有する翼体10に対して、広範囲にわたって効率的に対流冷却を行いながら、対流冷却後の冷却媒体によってフィルム冷却を行うことができる。
【0066】
加えて、第一出口流路440及び第二入口流路520が、第一出口遷移部450と第二入口遷移部530との間で翼面方向Wの位置が互いに重なるように配置されている。そのため、第二主流路510が形成されている領域に比べて背側外面32から距離が遠くなることで冷却効率が低下する第二入口流路520の開口が形成されている領域に対応する背側外面32を、第一出口流路440によって補って冷却することができる。
【0067】
また、第一出口流路440を流れる冷却媒体は、第一主流路410を流通して外壁部2を冷却した後のために冷却能力が落ちている。ところが、第一出口流路440と第二入口流路520とが第一出口遷移部450と第二入口遷移部530との間で翼面方向Wの位置が互いに重なるように配置されている。これにより、冷却能力の高い冷却媒体が流れる第二入口流路520によって、第一出口流路440だけでは十分に外壁部2を冷却できなかった場合であっても、冷却能力を補って外壁部2を冷却することができる。
【0068】
したがって、複雑な曲面を有する翼体10に対して、翼体10の外部の燃焼ガスGの流れの状態に関係なく、広範囲にわたって、均一に冷却することができる。これにより、フィルム冷却を行うための冷却媒体を利用して、広範囲にわたって対流冷却を行うことができる。
【0069】
また、第二入口流路520が第一出口流路440と平行に形成されていることで、第一壁部流路400と第二壁部流路500とを翼面方向Wに隣接させ、効率良く外壁部2内に配置することができる。
【0070】
また、第一入口流路420や第二入口流路520が、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、内面4に対して鈍角に傾斜して第一主流路410や第二主流路510まで延びている。そのため、第一入口流路420や第二入口流路520が、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、内面4に対して直角に傾斜して第一主流路410や第二主流路510まで延びている場合と比べて、第一入口遷移部430や第二入口遷移部530を冷却媒体が流通する際の冷却媒体の圧損を低減することができる。つまり、第一入口遷移部430や第二入口遷移部530において、冷却媒体が大きく流通方向を変更する必要が無いため、圧損を低減することができる。これにより、第一壁部流路400及び第二壁部流路500を流通する冷却媒体の圧損を低減することができる。
【0071】
また、第一入口流路420及び第一出口流路440が、開口から第一主流路410までの断面流路面積が一定となるように形成されていることで、ピンフィン等で冷却せずとも、断面流路面積を小さくして開口と第一主流路410との間で流速を早くすることができる。同様に、第二入口流路520及び第二出口流路540が、開口から第二主流路510までの断面流路面積が一定となるように形成されていることで、断面流路面積を小さくして開口と第二主流路510との間で流速を早くすることができる。
【0072】
また、翼体10の周囲を流れる燃焼ガスGの流速は、腹側よりも背側の方が速くなっている。その結果、背側外面32の方が腹側外面31よりも熱伝導率が高くなってしまい、腹側外面31に比べて背側外面32をより低温まで冷却する必要がある。そのため、背側外面32に面してメイン壁部流路300を形成することで、背側外面32を効果的に冷却することができる。
【0073】
また、インピンジメント板600に形成された噴射孔620から噴射された冷却媒体が、第一壁部流路400及び第二壁部流路500内を流通する。そのため、外壁部2の内面4に噴射されてインピンジメント冷却に利用された冷却媒体を再利用することができる。これにより、冷却媒体をより効率的に利用することができる。
【0074】
また、インピンジメント板600と外壁部2とを接続する仕切りであるリブ700を有している。そのため、インピンジメント板600の板外周面610と外壁部2の内面4との間の空間を仕切ることができる。通常、翼体10の外面3の周囲を流れる燃焼ガスの圧力は、翼面である外面3に沿って一定ではない。このため、第一入口流路420や第二入口流路520において、必要とされる圧力は配置されている位置によって異なってくる。ところが、インピンジメント板600と外壁部2との間の空間がリブ700によって仕切られていることで、噴射孔620の位置を調整するだけで、内面4の開口における第一入口流路420や第二入口流路520に流入する冷却媒体の入口圧力を調整することができる。
【0075】
さらに、リブ700を設けつつ、本実施形態のように第一主流路410及び第二主流路510の長さを長くすることで、冷却媒体の入口と出口との距離を離すことができる。したがって、リブ700によって仕切られた任意の空間から冷却媒体を供給することができる。これにより、冷却媒体が流入する入口側の開口と、冷却媒体が流出する出口側の開口との差圧の設計の自由度を上げることができる。
【0076】
また、第一壁部流路400と第二壁部流路500との間に配置されてインピンジメント板600と外壁部2とを繋ぐリブ700が、第一出口遷移部450と第二入口遷移部530との間に配置されている。そのため、リブ700を第一出口流路440及び第二入口流路520によって冷却することができる。
【0077】
また、上記のようなガスタービン100によれば、メイン壁部流路300に冷却媒体を流通させることで、冷却媒体を効率的に利用して翼を冷却することができる。そのため、冷却媒体として圧縮空気Aの一部をタービン130に供給する量を減少でき、ガスタービン100として効率を向上させることができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0079】
なお、本実施形態では翼として、静翼1を例に挙げて説明したが、本発明の翼は静翼1に限定されるものではない。例えば、翼は、動翼142aであってもよい。
【0080】
また、本実施形態では、メイン壁部流路300のうち、背側に形成された二つのメイン壁部流路300を例に挙げて説明されたが、第一流路及び第二流路はこれに限定されるものではない。例えば、上述した第一壁部流路400よりも翼面方向Wの前側に別のメイン壁部流路300が形成されている場合、別のメイン壁部流路300が第一流路となり、第一壁部流路400が第二壁部流路500となる。同様に、例えば、上述した第二壁部流路500よりも翼面方向Wの後側に別のメイン壁部流路300が形成されている場合、別のメイン壁部流路300が第二流路となり、第二壁部流路500が第一壁部流路400となる。
【0081】
また、第一入口流路420及び第二入口流路520は、本実施形態のように内面4に対して鈍角に傾斜して第一主流路410及び第二主流路510に向かって延びていることに限定されるものではなく、内面4に対して反対側の鋭角に傾斜して第一主流路410に向かって延びていなければよい。したがって、第一入口流路420及び第二入口流路520は、内面4に対して直交する方向に延びていてもよい。
【0082】
仮に、第一入口流路420や第二入口流路520が、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、内面4に対して直角に第一主流路410や第二主流路510まで延びている場合であっても、内面4に対して鋭角に傾斜して第一主流路410や第二主流路510まで延びている場合と比べて、冷却媒体の圧損を低減することができる。具体的には、本実施形態のようにインピンジメント板600の噴射孔620から内面4に向かって噴射された冷却媒体に対して、開口から冷却媒体が流入する際の圧損を低減することができる。
【0083】
したがって、第一入口流路420や第二入口流路520が、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、内面4に対して鋭角をなすように形成されなければ、内面4に対して直角をなすように形成された場合であっても、冷却媒体の圧損を低減することができる。これにより、第一壁部流路400及び第二壁部流路500を流通する冷却媒体の圧損を低減することができる。
【0084】
また、メイン壁部流路300は、本実施形態のように翼体10の前縁部11のみに形成されることに限定されるものではない。例えば、メイン壁部流路300は、翼体10の全域にわたって形成されていてもよく、後縁部12のみに形成されていてもよい。
【0085】
また、第一主流路410及び第二主流路510は、翼高さ方向Zと直交する仮想平面において、開口から内面4に対して傾斜して形成されることに限定されるものではなく、翼高さ方向Zに傾斜していてもよい。
【0086】
また、メイン壁部流路300は、本実施形態のように、翼高さ方向Zと直交する仮想平面内で広がって設けられることに限定されるものではなく、翼高さ方向Zと交差する仮想平面内で広がっていればよい。したがって、例えば、メイン壁部流路300は、翼高さ方向Zに対して傾いて交差する仮想平面内で広がって設けられていてもよい。
【0087】
また、本実施形態では、インピンジメント板600はリブ700と一体に形成されているがこのような構造に限定されるものではなく、外壁部2とインピンジメント板600とを接続する仕切りを有していればよい。例えば、インピンジメント板600として、翼体10の外壁部2の内部にインサートが配置されており、このインサートと外壁部2とを接続する仕切りが設けられていてもよい。