特許第6583797号(P6583797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583797
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】正珪酸含有水溶液の安定化方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/12 20060101AFI20190919BHJP
   C05D 9/00 20060101ALN20190919BHJP
【FI】
   C01B33/12 Z
   !C05D9/00
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2017-16172(P2017-16172)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-111641(P2018-111641A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2018年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】503106432
【氏名又は名称】有限会社グリーン化学
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 由一
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 ゆかり
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−067996(JP,A)
【文献】 特表2010−505042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 33/193
C05D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に、酸を添加後、次の一般式(1)
Si(OR)・・・・(1)
(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す)
で表される正珪酸アルキル(テトラアルコキシシラン)を添加し、正珪酸アルキル(テトラアルコキシシラン)を加水分解することによって得られる正珪酸含有水溶液に炭素数1〜3のアルコールを添加することを特徴とする正珪酸含有水溶液の安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は正珪酸アルキル(テトラアルコキシシラン)を加水分解することによって得られる正珪酸含有水溶液の安定化方法を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
本発明者の一人は、水あるいは無機物及び/又は有機物を含有するする水溶液に一般式Si(OR)(Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す)で表される正珪酸アルキル(テトラアルコキシシラン)を添加し、酸性状態下、正珪酸アルキル(テトラアルコキシシラン)を加水分解することによって正珪酸含有水溶液が得られることを見出した。当該正珪酸含有水溶液は、稲、小麦、イチゴ、トマト、キュウリ、ネギ、カボチャなどの様々な農作物や芝生などの根張り向上、耐病性の向上、品質向上、収量アップなどの目的で主として葉面散布方式で使用されている。そして、上記の作物等において散布する正珪酸の濃度が高いほど、根張りの向上、耐病性の向上、品質向上、収量アップなどの効果が顕著に現れることから、高濃度の正珪酸が望まれている。しかしながら、正珪酸濃度が高くなるにつれて正珪酸水溶液が増粘次いでゲル化する日が早まり、また、気温が高くなるにつれてその現象が促進されることから正珪酸濃度が2%以上の正珪酸含有水溶液の商品化は困難であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4449030号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はSi(OR)(Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す)で表される正珪酸アルキル(テトラアルコキシシラン)を加水分解することによって得られる正珪酸を含有する水溶液の安定化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するべき鋭意研究を重ねた結果、水に一般式Si(OR)(Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す)で表される正珪酸アルキル(テトラアルコキシシラン)を添加し、酸性状態下、正珪酸アルキル(テトラアルコキシシラン)を加水分解することによって得られる正珪酸を含有する水溶液に炭素数1〜3のアルコールを添加することによって、正珪酸の縮重合によって生じるゲル化が抑制され正珪酸水溶液の安定性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、従来品より珪酸供給量を増加させるこができることから植物の珪酸含有量が顕著に高くなり光合成能力、耐病性が向上する。特に本発明品は、代表的な珪酸植物である水稲に対しては珪酸吸収量が増加することにより倒伏抵抗性や耐病性、品質が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の正珪酸を含有する水溶液の安定化方法について詳しく述べる。
【0008】
本発明において使用される正珪酸アルキル(テトラアルコキシシラン)は正珪酸メチル(テトラメトキシシラン)、正珪酸エチル(テトラエトキシシラン)、又は正珪酸プロポキシ(テラプロポキシシラン)あるいはこれらの混合物であり、例えば多摩化学工業株式会社から販売されている正珪酸エチル(テトラエトキシシラン)を適用することができる。
【0009】
本発明において使用されるアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、変性アルコールであり、例えば変性アルコールとして日本アルコール販売株式会社から販売されているエキネンF−1を適用することができる。
【0010】
本発明において正珪酸含有水溶液を得るには先ず、水にリン酸、硫酸、硝酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸などの一種類または二種類以上の酸を添加してpHを1〜4の範囲に調整する。pHが4以上では正珪酸アルキルの加水分解が緩慢となるので好ましない。次に正珪酸アルキル(テトラアルコキシシラン)を添加し40〜80℃で1〜2時間攪拌することによって正珪酸アルキル(テトラアルコキシシラン)の加水分解が起こり、正珪酸含有水溶液が得られる。正珪酸アルキル(テトラアルコキシシラン)の使用量は水に対して4〜15重量%の範囲である。
【0011】
本発明では次にアルコールを添加する。アルコールの添加量は正珪酸含有水溶液に対して5〜50重量%好ましくは10〜40重量%の範囲である。5重量%以下では正珪酸の安定性即ち正珪酸が縮重合することによって生じるゲル化防止に効果が少なく、また、50重量%以上ではコストの面で好ましくない。
【実施例1】
【0012】
以下、実施例を示すことによって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0013】
水375gに85%リン酸6gと多摩化学工業株式会社製正珪酸エチル(テトラエトキシシラン)37.5gを添加し50〜60℃で1時間、攪拌することによって4.1%濃度の正珪酸(Si(OH))を含有する正珪酸含有水溶液を得た。この水溶液を、それぞれ83.7gを採取しこれに表1に示したアルコール濃度に準じて日本アルコール販売株式会社製変性アルコール(商品名エキネンF−1)と水を添加して3.4%濃度の正珪酸(Si(OH))を含有する水溶液を調整し平成27年8月15日より室温に放置しゲル化の有無を調べることによってアルコール添加による正珪酸の安定性効果を調べた。
【表1】
表2に示したように対照区と比較してアルコール添加によって正珪酸の安定性が著しく向上することが判る。また、アルコール濃度が高いほど正珪酸の安定性に寄与することも判る。
【表2】
【実施例2】
【0014】
水6,058gに85%リン酸126gと実施例1と同様の正珪酸エチル(テトラエトキシシラン)1,166gを添加し50〜60℃で1時間、攪拌することによって7.3%濃度の正珪酸(Si(OH))を含有する正珪酸含有水溶液を得た。この水溶液700gに実施例1と同様の変性アルコール(商品名エキネンF−1)300gを添加しアルコール濃度30%、正珪酸濃度5.1%の水溶液を調製した。また、対照区として上記7.3%濃度の正珪酸(Si(OH))を含有する正珪酸含有水溶液700gに水300gを添加し正珪酸濃度 5.1 %の水溶液を調製した。これらのアルコール濃度30%と対照区の正珪酸水溶液を平成28年5月31日より室温にて放置しゲル化の有無を調べることによってアルコール添加による正珪酸の安定性効果を調べた。その結果アルコールを添加していない対照区は1ヶ月放置でゲル化が見られたがアルコール濃度30%のものは6ヶ月経過してもゲル化は見られず春から秋にかけて高い期間でも安定であり実用上問題ないことが判った。