特許第6583811号(P6583811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583811
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ランドセル用カバー
(51)【国際特許分類】
   A45F 3/04 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   A45F3/04 400S
   A45F3/04 400C
   A45F3/04 400Z
   A45F3/04 400N
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-124671(P2015-124671)
(22)【出願日】2015年6月22日
(65)【公開番号】特開2016-154832(P2016-154832A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2018年3月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-31825(P2015-31825)
(32)【優先日】2015年2月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515047792
【氏名又は名称】平田 紀文
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 浩文
(72)【発明者】
【氏名】平田 紀文
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−043001(JP,A)
【文献】 特開2007−222446(JP,A)
【文献】 特開2007−098055(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3137958(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3106687(JP,U)
【文献】 特開2011−030986(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3193541(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3157591(JP,U)
【文献】 特開2004−267687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ンドセルの冠せ部に装着されるシート体から形成された本体片と、
前記本体片の第1端部に設けられ、且つランドセルの冠せ部の端部に係止される係止部と、
前記本体片の第2端部に連結され、且つ前記本体片をランドセルの冠せ部に装着した際にランドセルの背当て部の上方外面に添って装着されるシート体から形成された副え片と、
前記本体片の第2端部に連結され、且つ前記本体片をランドセルの冠せ部に装着した際にランドセルの肩紐部を立ち上げるシート体から形成された起立保持片と、を有し、
前記副え片の面内には、ランドセルの肩紐部を挿通するための窓部が形成されており、
前記起立保持片が、前記窓部を塞ぐようにして前記副え片に積層され、前記副え片の両側縁に前記起立保持片が連結されており、
前記起立保持片の第1端縁と前記副え片の間に、開口を有し、
前記開口と前記窓部が、前記起立保持片と副え片の層間を通じて連通されている、ランドセル用カバー。
【請求項2】
前記起立保持片の剛性が、前記本体片の剛性よりも大きい、請求項1に記載のランドセル用カバー。
【請求項3】
さらに、前記本体片に設けられた収納部を有し、
前記収納部が設けられた部分が前記起立保持片から分離可能に構成されている、請求項1または2に記載のランドセル用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランドセルの重心が使用者の背中から離れ難く、ランドセルの重みを感じ難くできるランドセル用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ランドセルは、ランドセル本体の背当て部の上方に、2つの背かん部を介して肩紐部が取り付けられている。使用者は、左右一対の肩紐部に腕を通し、背当て部を背中に当ててランドセルを背負うが、その使用中に、ランドセルの重量により、肩紐部が肩から次第にずれ、ランドセル本体が背中から離れていくことが多い。ランドセル本体が背中から離れるに従い、使用者は、ランドセルを背負い難くなると共に、その重みを感じやすくなる。
特許文献1には、ランドセルの背当て部が使用者の背中に密着し易い肩紐部構造を有するランドセルが開示されている。
しかしながら、かかる公報の考案では、その肩紐部構造を有するランドセルを使用した場合には、使用者が重みを感じ難くなるかもしれないが、かかる構造を有さない一般的なランドセルを使用した場合には、その効果を享受できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3106687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、様々なランドセルに使用できるカバーであって、ランドセルの重心が使用者の背中から離れ難く、ランドセルの重みを感じ難くできるランドセル用カバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ランドセルそのものの構造ではなく、ランドセルに装着するカバーを用いて肩紐部を起立させるという着想の下、本発明を完成した。
【0006】
本発明のランドセル用カバーは、ンドセルの冠せ部に装着されるシート体から形成された本体片と、前記本体片の第1端部に設けられ、且つランドセルの冠せ部の端部に係止される係止部と、前記本体片の第2端部に連結され、且つ前記本体片をランドセルの冠せ部に装着した際にランドセルの背当て部の上方外面に添って装着されるシート体から形成された副え片と、前記本体片の第2端部に連結され、且つ前記本体片をランドセルの冠せ部に装着した際にランドセルの肩紐部を立ち上げるシート体から形成された起立保持片と、を有し、前記副え片の面内には、ランドセルの肩紐部を挿通するための窓部が形成されており、前記起立保持片が、前記窓部を塞ぐようにして前記副え片に積層され、前記副え片の両側縁に前記起立保持片が連結されており、前記起立保持片の第1端縁と前記副え片の間に、開口を有し、前記開口と前記窓部が、前記起立保持片と副え片の層間を通じて連通されている
【0007】
本発明の好ましいランドセル用カバーは、前記起立保持片の剛性が、前記本体片の剛性よりも大きい。
本発明の好ましいランドセル用カバーは、さらに、前記本体片に設けられた収納部を有し、前記収納部が設けられた部分が前記起立保持片から分離可能に構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のランドセル用カバーをランドセルの冠せ部に装着することにより、ランドセルの重心が使用者の背中から離れ難くなる。
本発明のランドセル用カバーを使用することにより、ランドセルの重みを感じ難くなり、例えば、低学年の小学生でもランドセルを背負い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るランドセル用カバーの斜視図。ランドセル用カバーの各図において、隠れ線を示す破線以外の太破線は、縫製の縫い目を示す。
図2】同ランドセル用カバーを外面側から見た平面図。
図3】同ランドセル用カバーを内面側から見た背面図。
図4図3のIV−IV線で切断した拡大断面図。ただし、長手方向中途部を省略している。
図5図3のV−V線で切断した拡大断面図。
図6図3のVI−VI線で切断した拡大断面図。
図7】同ランドセル用カバーの分解斜視図。
図8】一般的なランドセルの参考斜視図。ただし、全ての図において、ランドセルを二点鎖線で示している。
図9】ランドセル用カバーをランドセルに装着する手順を示す斜視図。
図10】同手順を示す斜視図。
図11】ランドセル用カバーがランドセルに装着された状態を示す斜視図。
図12図11のXII−XII線で切断した断面図。
図13】本発明のランドセル用カバーを装着せずにランドセルを背負ったときの状態を示す参考側面図。
図14】第2実施形態に係るランドセル用カバーの斜視図。
図15】同ランドセル用カバーの第1本体片と第2本体片の連結状態及び分離状態を示す参考側面図。
図16】第2実施形態のランドセル用カバーがランドセルに装着された状態を示す斜視図。
図17図16のXVII−XVII線で切断した断面図。
図18】ランドセルに装着されたカバーから収納部が設けられた部分を取り外す手順を示す参考斜視図。
図19】第2実施形態の第1変形例に係るランドセル用カバーの斜視図。
図20】第2実施形態の第2変形例に係るランドセル用カバーの斜視図。
図21】第3実施形態に係るランドセル用カバーを内面側から見た背面図。
図22図21のXXII−XXII線で切断した拡大断面図。ただし、長手方向中途部を省略している。
図23】同ランドセル用カバーをランドセルに装着し、冠せ部を外した状態を示す斜視図。
図24】第4実施形態に係るランドセル用カバーを外面側から見た平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1乃至図6において、ランドセル用カバー1は、ランドセルの冠せ部に装着される本体片2と、ランドセルの肩紐部を立ち上げ且つその立ち上げ状態を保持する起立保持片3と、を有する。本体片2は、ランドセルの冠せ部の端部に係止される係止部を有する。
本発明のランドセル用カバー1は、前記係止部を有する本体片2及び起立保持片3以外に、他の構成を有していてもよい。他の構成としては、後述する収納部などが挙げられる。
【0011】
具体的には、ランドセル用カバー1は、ランドセルの冠せ部の外面に添って装着される本体片2と、ランドセルの冠せ部の端部に係止可能な係止部4と、前記本体片2をランドセルの冠せ部に装着した際にランドセルの背当て部の上方外面に添って装着される副え片5と、前記本体片2をランドセルの冠せ部に装着した際にランドセルの肩紐部の内側から肩紐部を立ち上げる起立保持片3と、文具などの物品を入れる収納部6と、本体片2がランドセルの冠せ部から離れないように取り付けられる取付けバンド部7と、を有する。
なお、図7は、ランドセル用カバー1を、各構成要素(本実施形態では、本体片2、係止部4、副え片5、起立保持片3、収納部6及び取付けバンド部7)に分解した斜視図である。
【0012】
前記本体片2は、平面視略長方形状のシート体から形成されている。なお、本明細書において、略長方形状は、本発明の属する技術分野において許容される形状を意味する。例えば、前記略長方形状は、角部が角取りされている形状、辺の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、辺が若干湾曲している形状などが含まれる。
本体片2は、柔軟なシート体Aからなる。なお、柔軟なシート体とは、そのシート体の一端部を持ち且つ反対側の端部を自由端とした場合に、それ自身の重量によってシート体が湾曲するほどに柔らかいシート体をいう。前記柔軟なシート体Aとしては、例えば、天然繊維、合成繊維又はこれらの混合繊維などからなる織り布又は編み布;合成樹脂シート;天然皮革又は合成皮革などが挙げられる。
平面視略長方形状の本体片2の長手方向の長さは、ランドセルの冠せ部の長さよりも小さくてもよいが、好ましくは、冠せ部の長さと略同じである。また、本体片2の短手方向の長さは、ランドセルの冠せ部の幅よりも大きくてもよいが、好ましくは、冠せ部の幅と同じ又はそれよりも小さい。図示例では、本体片2は、ランドセルの冠せ部の長さと略同じで且つ冠せ部の幅と略同じの平面視略長方形状に形成されている。ただし、本体片2の四隅部は、図示例のように、角取りされてアール化されていることが好ましい。
図示例では、本体片2は、例えば、厚み0.3mm〜2mm程度の1枚の合成繊維製の織り布から形成されている。なお、本体片2は、積層した2枚以上の柔軟なシート体から形成されていてもよい。
【0013】
係止部4は、本体片2の長手方向の一方側の端部(以下、第1端部という)の内面に設けられている。係止部4は、例えば、2枚の柔軟なシート体Aと、そのシート体の間に介装された芯シートBと、からなる係止片から形成されている。例えば、前記2枚のシート体Aと芯シートBは、2枚のシート体Aの間に芯シートBを挟み込み、周縁部を縫製する又は周縁部若しくは全体を接着剤で接着するなどの方法によって一体化されている。
係止片の柔軟なシート体Aとしては、上記本体片2を構成する柔軟なシート体と同様なものを用いることができる。係止片の芯シートBとしては、後述する起立保持片3の芯シートとして例示したようなものを用いることができ、好ましくは、厚紙が用いられる。もっとも、係止部4(係止片)は、芯シートを有さず、柔軟なシート体Aのみから形成されていてもよい。前記係止片は、例えば、本体片2の長手方向の長さよりも十分に小さく且つ本体片2の短手方向の長さと略同じの帯状に形成されている。
係止部4(係止片)は、本体片2の第1端部の両隅部を含む両側縁に、縫製などの方法によって連結されている。従って、係止部4の第1端縁4aの中央部と本体片2の第1端縁の中央部の間、及び、係止部4の第2端縁4bと本体片2の間は、連結されておらず、それぞれの間には開口41,42を有する。係止部4の第2端縁4bと本体片2の間の開口42から、ランドセルの冠せ部の端部を差入れ、係止部4の第1端縁4aの中央部と本体片2の第1端縁の中央部の間の開口41から、ランドセル用カバー1のベロ部を引き出すことにより、ランドセルの冠せ部の端部の2つの角部が本体片2の2つの隅部と係止部4の間に係止される。
【0014】
副え片5は、本体片2の長手方向の反対側の端部(以下、第2端部という)に連結されている。副え片5は、例えば、2枚の柔軟なシート体Aと、そのシート体の間に介装された芯シートBと、から形成されている。例えば、前記2枚のシート体Aと芯シートBは、2枚のシート体Aの間に芯シートBを挟み込み、周縁部を縫製する又は周縁部若しくは全体を接着剤で接着するなどの方法によって一体化されている。副え片5の柔軟なシート体Aとしては、上記本体片2を構成する柔軟なシート体と同様なものを用いることができる。副え片5の芯シートBとしては、後述する起立保持片3の芯シートとして例示したようなものを用いることができ、好ましくは、厚紙が用いられる。もっとも、副え片5は、芯シートを有さず、柔軟なシート体Aのみから形成されていてもよい。
副え片5は、例えば、本体片2の長手方向の長さよりも小さく且つ本体片2の短手方向の長さと略同じの平面視略長方形状に形成されている。
副え片5と本体片2は、別々のシート体から形成され、それらの端部を縫製などの方法によって連結してもよいし、副え片5と本体片2は、一体的に形成されていてもよい。
図示例では、本体片2と副え片5の一方のシート体とが、1枚の柔軟なシート体Aから一体的に形成され、副え片5は、それに芯シートBともう一方の柔軟なシート体Aを積層することによって構成されている。
【0015】
また、副え片5の面内には、ランドセルの肩紐部を挿通するための窓部59が開口されている。この窓部59は、本体片2の短手方向を長手とし且つ本体片2の長手方向を短手とする平面視細長い長方形状に形成されている。
【0016】
起立保持片3は、本体片2の第2端部に連結されている。起立保持片3は、本体片2よりも剛性の大きいシート体から形成されている。例えば、起立保持片3は、2枚の柔軟なシート体Aと、そのシート体の間に介装された芯シートBと、から形成されている。起立保持片3の柔軟なシート体Aとしては、上記本体片2を構成する柔軟なシート体と同様なものを用いることができる。起立保持片3の芯シートBとしては、例えば、厚紙、硬質合成樹脂板、木質板、金属板、セラミック板などが挙げられる。好ましくは、芯シートBとしては、厚紙又は硬質合成樹脂板が用いられる。柔軟なシート体Aと一緒に縫製できることから、厚紙がより好ましい。厚紙の厚みとしては、例えば、1mm〜8mmが好ましく、さらに、1.5mm〜4mmが好ましい。厚み1mm未満の厚紙では、剛性が小さく、肩紐部の起立状態を保持することが困難となるおそれがあり、厚み8mmを超えると加工が困難となる上、重量的に重くなる。坪量では、例えば、芯シートBは、500g/m以上の厚紙が好ましく、700g/m以上の厚紙がより好ましい。
厚紙は、一般的な製造方法で得られた単層又は多層構造の紙質材である。厚紙の製造方法は、特に限定されず、木材パルプ(化学パルプ、機械パルプ)、非木材パルプ、古紙パルプと、必要に応じて添加した填料やその他薬品等を水に分散した紙料を抄紙機のワイヤー上に噴射し、ワイヤーパートで脱水、ドライヤーパートで乾燥して製造する。また、必要に応じて、厚紙に強度や耐水性を付与するためにPVA、デンプンなどの薬品を添加してサイズプレス等で紙表面を処理してもよい。
また、硬質合成樹脂板としては、例えば、厚み0.5mm〜3mmのアクリル板などが挙げられる。
起立保持片3は、前記芯シートBを含むので、起立保持片3の剛性は本体片2の剛性よりも大きい。なお、剛性は、曲げの力に対する変形し難さをいう。
【0017】
起立保持片3は、例えば、本体片2の長手方向の長さよりも小さく且つ本体片2の短手方向の長さと略同じの平面視略長方形状に形成されている。例えば、起立保持片3は、副え片5と略同形同大に形成されている。
起立保持片3は、窓部59を塞ぐようにして副え片5の外面に積層され、起立保持片3の両側縁及び第2端縁3bは、それぞれ副え片5の両側縁及び第2端縁5bに、縫製などの方法によって連結されている。従って、起立保持片3の第1端縁3aと副え片5の間は、連結されておらず、その間には開口31を有する。この開口31と副え片5の窓部59は、起立保持片3と副え片5の層間を通じて連通している。このため、ランドセルの肩紐部を窓部59を通じて開口31から引き出すことができる。
なお、副え片5は、本体片2の第2端部に連結されているので、起立保持片3は、副え片5を介して本体片2に連結されているとも言える。
【0018】
収納部6は、例えば、柔軟なシート体Aを袋状に形成したものであり、その内部に様々な物品を収納できる。また、収納部6の出し入れ口には、例えば、ファスナーが取り付けられている。なお、図示例の収納部6は、大小2つの収納部6から構成されているが、1つでもよく、3つ以上でもよい。収納部6は、本体片2の外面に縫製などの方法によって取り付けられている。
取付けバンド部7は、本体片2の長手方向の中途部の内面に設けられている。取付けバンド部7は、例えば、2枚の柔軟なシート体Aと、そのシート体の間に介装された芯シートBと、からなるバンド片から形成されている。前記2枚のシート体Aと芯シートBは、2枚のシート体Aの間に芯シートBを挟み込み、周縁部を縫製する又は周縁部若しくは全体を接着剤で接着するなどの方法によって一体化されている。バンド片の柔軟なシート体Aとしては、上記本体片2を構成する柔軟なシート体と同様なものを用いることができ、バンド片の芯シートBとしては、上記起立保持片3の芯シートとして例示したようなものを用いることができ、好ましくは、厚紙が用いられる。もっとも、バンド片は、芯シートを有さず、柔軟なシート体Aのみから形成されていてもよい。取付けバンド部(バンド片)は、例えば、本体片2の長手方向の長さよりも十分に小さく且つ本体片2の短手方向の長さと略同じの帯状に形成されている。
取付けバンド部7(バンド片)は、本体片2の中途部の両側縁に、縫製などの方法によって連結されている。従って、取付けバンド部7の第1端縁7a及び第2端縁7bと本体片2の間は、それぞれ連結されておらず、それらの間には開口71,72を有する。取付けバンド部7の第2端縁7bと本体片2の間の開口72からランドセルの冠せ部の端部を差入れ、取付けバンド部7の第1端縁7aと本体片2の間の開口71から冠せ部を引き出すことにより、ランドセルの冠せ部が、本体片2と取付けバンド部7の間に挟持される。
なお、各図の符号Cは、本体片などの周縁の解れ防止又は補強のための端処理用の布地を示す。
【0019】
次に、本発明のランドセル用カバー1の使用方法を説明する。
図8は、一般的なランドセルを表した斜視図である。
図8において、ランドセル9は、ランドセル本体91と、ランドセル本体91の背当て部92の上方から延設され、且つランドセル本体91の収納空間を塞ぐ帯状の冠せ部93と、冠せ部93の端部から延設されたベロ部94(ただし、図8には、ベロ部は表されていない)と、背当て部92の上方に取り付けられた2つの背かん部95を介して背当て部92に取り付けられた肩紐部96と、を有する。肩紐部96の後端部は、背かん部95に対して着脱不能に取付けられているが、肩紐部96の先端部は、バックルなどによってランドセル本体91の底面部97に着脱可能に取り付けられている。
【0020】
このランドセル9の肩紐部96の先端部961をランドセル本体91から外し、図9に示すように、ランドセル用カバー1の内面側から窓部59に差入れる。続いて、肩紐部96を起立保持片3の第1端縁と副え片5の間の開口31から引き出す。
次に、ランドセル9の冠せ部93のベロ部94をランドセル本体91から外し、ベロ部を取付けバンド部7の第2端縁7bと本体片2の間の開口に差入れた後、取付けバンド部7の第1端縁7aと副え片5の間の開口31から引き出すことにより、冠せ部93を取付けバンド部7と本体片2の間に挿通する(図10参照)。さらに、冠せ部93のベロ部94を、係止部4の第2端縁と本体片2の間の開口から差入れた後、係止部4の第1端縁の中央部と本体片2の第1端縁の中央部の間の開口から引き出すことにより、図10に示すように、ランドセル9の冠せ部93の2つの角部が本体片2の2つの隅部と係止部4の間に係止される。
ランドセル用カバー1の本体片2の第1端部を冠せ部93の端部に係止させることにより、ランドセル用カバー1の本体片2が冠せ部93から離れないように冠せ部93に装着される。
【0021】
そして、図11に示すように、本体片2が取り付けられた冠せ部93を、ランドセル本体91の収納空間を覆うように元の位置に戻し、ベロ部94をランドセル本体91の底面部97に取り付ける。
本体片2を伴った冠せ部93を元の位置に戻すと、図12に示すように、ランドセル用カバー1の本体片2の全部と副え片5の一部51は、冠せ部93の湾曲に従って湾曲する。また、副え片5の残りの部分52は、ランドセル9の背当て部92に添うようになる。本体片2が冠せ部93に装着された状態で、起立保持片3の第1端縁3aは、肩紐部96の背当て部92に対する取付け部分(例えば、背かん部95)よりも上方に突出するようになる。なお、本体片2の第1端部は、係止片4を介して冠せ部93の第1端部に係止されているので、本体片2を伴った冠せ部93を元に戻すと、起立保持片3は本体片2に引っ張られる。このため、起立保持片3は、ランドセル9の背当て部92と略平行となって上方に起立し且つその起立状態が保持される。
そして、ランドセル用カバー1の窓部59に差入れられたランドセル9の肩紐部96は、起立保持片3の内面側から起立保持片3の第1端縁3aを越えて外部に延出され、冠せ部93とは反対側に湾曲する。かかる肩紐部96は、起立保持片3によって内側から支持されるので、背当て部92への取付け部分から背当て部92に添って上方に立ち上がった後、冠せ部93とは反対側に湾曲する。
【0022】
本発明のランドセル用カバー1をランドセル9に装着すると、図12に示すように、2つの肩紐部96が背当て部92に添って立ち上がるので、使用者の背中からランドセル9が離れ難くなる。このため、ランドセル9の重心が使用者の背中から離れ難くなり、使用者は、ランドセル9の重みを感じ難くなる。特に、剛性の大きい起立保持片3を用いることにより、起立保持片3が曲がり難くなるので、ランドセル用カバー1を装着したランドセル9を長時間背負っていても、肩紐部96の立ち上がりを維持できるようになる。
図13は、本発明のランドセル用カバーを装着していない、ランドセルを背負ったときの肩紐部96の状態を表した参考側面図である。図12図13を比べると明らかなように、本発明のランドセル用カバー1を装着したランドセル9は、肩紐部96が背当て部92に添って立ち上がっている。
本発明のランドセル用カバー1は、肩紐部96と冠せ部93を有する一般的なランドセル9に簡単に装着でき、且つ、その装着によって上記効果を奏する。つまり、本発明のランドセル用カバー1は、新たにランドセルを購入しなくても、既存のランドセルに装着することにより、そのランドセルを使用感に優れたものに変化させることができる。
【0023】
なお、ランドセル用カバー1には、上述のように、収納部6を適宜具備させることができるので、ランドセル9の付随的な収納バッグとして利用することもできる。
収納部6に、例えば、ノート、体操着、体育館シューズ、小物類、学校からの連絡ノート、防犯ブザー、GPS機能を有する電子機器などを入れることが挙げられる。
また、収納部6などのランドセル用カバー1の適宜な箇所に、光を反射する反射シートを取り付けることにより、夕暮れ時や夜間時の安全も確保できる。
さらに、収納部6の外面に、その外面との間に隙間を開けて透明なシート材(図示せず)を取付け、そのシート材と収納部6の外面との隙間に、適宜な表示が印刷された印刷シートを挿入してもよい。例えば、学校名を表示した印刷シート、安全を呼びかけるフレーズが表示された印刷シートなどを前記隙間に挿入することにより、地域住民が使用者(児童)の登下校時の安全を監視することを期待できる。
【0024】
なお、本発明のランドセル用カバーは、上記第1実施形態に限られず、本発明の意図する範囲で様々に設計変更できる。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記第1実施形態と同様の構成及び効果については、その説明を省略し、用語及び符号をそのまま援用する場合がある。
【0025】
[第2実施形態]
第2実施形態のランドセル用カバー1は、収納部が設けられた部分が起立保持片から分離可能とされている点で上記第1実施形態と異なっている。
具体的には、図14及び図15に示すように、本実施形態の本体片2は、第1本体片21と第2本体片22の2つに分割されている。第1本体片21と第2本体片22は、着脱可能であり、第1本体片21と第2本体片22を連結することによって本体片2が構成される。なお、符号84は、本体片2に設けられた吊り下げ環部である。
第1本体片21の外面には、収納部6が設けられている。また、第1本体片21の第2端部の外面には、手提げ部81が設けられている。手提げ部81は、例えば、バンドの両端部を第1本体片21の外面に固着することによって形成されている。また、第1本体片21の第2端部の内面には、面ファスナーの第1面82が設けられている。第2本体片22の第1端部の内面には、面ファスナーの第2面83が設けられている。面ファスナーの第1面と第2面は、互いに係合し合って接合するものであり、例えば、第1面が、無数のループ部を有し、第2面が、無数のフック部を有する(又は、第1面が、無数のフック部を有し、第2面は、無数のループ部を有する)。
なお、第1本体片21の第1端部の内面には、上記係止部4が設けられている。また、第2本体片22の内面には、上記取付けバンド部7が設けられている。さらに、第2本体片22の第2端部には、上記副え片5及び起立保持片3が連結されている。
本実施形態のランドセル用カバー1は、図15に示すように、係合手段である面ファスナーの第1面82と第2面83の係合を解除することにより、収納部6が設けられた第1本体片21を起立保持片3を含む第2本体片22から分離できる。また、分離した第1本体片21の第1面82と第2本体片22の第2面83を重ね合わすことにより、面ファスナーが係合し、ランドセル用カバー1を構成できる。
【0026】
本実施形態のランドセル用カバー1も、図16及び図17に示すように、上記第1実施形態と同様にしてランドセル9に装着される。
そして、図18に示すように、ランドセル9の冠せ部93のベロ部94をランドセル本体91から外し、第1本体片21を第2本体片22から分離することにより、収納部6を有する第1本体片21(収納部が設けられた部分)をランドセル9から取り外すことができる。つまり、上記第1実施形態では、起立保持片3をランドセル9の肩紐部96から外さなければランドセル用カバー1をランドセル9から取り外すことができないが、本実施形態のランドセル用カバー1によれば、必要に応じて、収納部6が設けられた部分のみをランドセルから容易に分離して持ち運びできる。特に、手提げ部81が設けられているので、収納部6が設けられた部分を手提げ鞄のように携帯できる。なお、収納部6が設けられた部分を分離した後、再びランドセル9に取り付けることも容易に行うことができる。
【0027】
上記では、第1本体片21と第2本体片22が面ファスナーを介して着脱可能とされているが、係合手段は面ファスナーに限定されず、例えば、図19に示すように、ボタン85とボタン穴86(図示例の場合には、第1本体片21にボタン穴86が形成され、第2本体片22にボタン85が取り付けられている)によって第1本体片21と第2本体片22が着脱可能とされていてもよく、或いは、図20に示すように、ファスナー87(図示例の場合には、第1本体片21の縁と第2本体片22の縁がファスナー87によって連結される)によって第1本体片21と第2本体片22が着脱可能とされていてもよい。その他、図示しないが、第1本体片21と第2本体片22を紐結びで連結する、ハトメホックで連結する、バックルなどの金具で連結するなどの係合手段を用いてもよい。
さらに、上記では、本体片2が、収納部6を有する第1本体片21と、第2本体片22とから構成されているが、収納部6を有する本体片2そのものが起立保持片3に分離可能で且つ着脱可能な構成とされていてもよい。
【0028】
[第3実施形態]
また、上記各実施形態では、収納部6は本体片2の外面のみに設けられているが、図21及び図22に示すように、収納部61を本体片2の内面側に設けてもよい。図示例では、この収納部61は、2枚の柔軟なシート体Aを重ね合わせ且つその3方を塞いだ上面開口型の袋体からなる。この収納部61は、例えば、連結片62を介して取付けバンド部7に連結されている。なお、図示例では、本体片2の外面に収納部6が設けられ且つ本体片2の内面に収納部61が設けられているが、本体片2の外面又は内面の何れか一方だけに収納部が設けられていてもよい。
本体片2の内面側に収納部61が設けられたランドセル用カバー1も、上記各実施形態と同様の手順でランドセル9に装着される。このランドセル用カバー1は、ランドセル9に装着すると、図23に示すように、収納部61がランドセル本体91の収納空間内に納まるようになる。
また、本発明のランドセル用カバー1は、収納部を有することが好ましいが、収納部は必ず設けられていなければならないわけではない。
【0029】
[第4実施形態]
上記各実施形態では、起立保持片3の第1端縁3aは、本体片2の短手方向に延びる直線状に形成されているが、これに限定されず、例えば、図24に示すように、起立保持片3の第1端縁3aが、中央部が本体片2の短手方向に延びる直線状で且つ両側部が本体片2の短手方向に対して傾斜状に延びている形態であってもよい。
また、上記実施形態では、ランドセル用カバー1は、副え片5、収納部6及び取付けバンド部7を有するが、本発明のランドセルカバー1は、これらの構成要素から選ばれる少なくとも1つを有さなくてもよい。例えば、副え片を有さない場合、本体片2と起立保持片3との間に2つの肩紐部を挿通可能な開口31を確保しつつ、本体片2の第2端部に起立保持片3を連結することにより、ランドセルの重心が使用者の背中から離れ難い本発明のランドセル用カバーを構成できる。
その他、本発明のランドセル用カバーは、上記各実施形態に限られず、適宜な構成要素を付加、変更、又は省略できる。
【符号の説明】
【0030】
1 ランドセル用カバー
2 本体片
3 起立保持片
4 係止部
5 副え片
6 収納部
9 ランドセル
91 ランドセル本体
93 ランドセルの冠せ部
96 ランドセルの肩紐部
図1
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