特許第6583821号(P6583821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人山口大学の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583821
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/10 20060101AFI20190919BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20190919BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20190919BHJP
   C08L 25/06 20060101ALI20190919BHJP
   C09J 201/10 20060101ALI20190919BHJP
   C09J 11/02 20060101ALI20190919BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   C08L101/10
   C08K5/36
   C08L23/26
   C08L25/06
   C09J201/10
   C09J11/02
   C09K3/10 G
   C09K3/10 Z
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-234907(P2015-234907)
(22)【出願日】2015年12月1日
(65)【公開番号】特開2017-101141(P2017-101141A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】安達 健太
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 鈴子
(72)【発明者】
【氏名】豊村 祥子
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/096566(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/102979(WO,A1)
【文献】 特表2017−521538(JP,A)
【文献】 特表2015−509995(JP,A)
【文献】 特開2006−199730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00−101/16
C08K3/00−13/08
C09J11/02
C09J4/00−201/10
C09K3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基を有する硬化性樹脂(A);
β−ジチオケトン金属錯体(a)にアミン化合物(b)が配位した複合錯体(B);
を含有し、前記β−ジチオケトン金属錯体の中心金属が、亜鉛(II)、銅(I)及び銅(II)からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
硬化性樹脂(A)100質量部当たり、複合錯体(B)を0.01〜10質量部含有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
アミン化合物が、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
硬化性樹脂(A)の加水分解性シリル基が、同一又は異なるアルコキシ基を有する、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、又はトリアルコキシシリル基であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
硬化性樹脂(A)の主鎖骨格が、エチレン重合体、プロピレン重合体、ブテン重合体、スチレン重合体又はそれらの共重合体であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とする湿気硬化型接着剤又はシーリング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関し、より詳細には、短時間で硬化することが可能な硬化性樹脂組成物、及び、かかる硬化性樹脂組成物を含有する湿気硬化型接着剤又はシーリング材に関する。
【背景技術】
【0002】
分子内に加水分解性シリル基等の含ケイ素基を有する樹脂は、空気中の水分と反応して硬化するため、湿気硬化性樹脂としての利用が研究されている。例えば、湿気硬化性粉体塗料用の硬化性樹脂として、加水分解性シリル基を有する樹脂を用いることが知られている(特許文献1)。上記粉体塗料は、加熱により加水分解反応を促進する熱潜在性触媒を含有し、粉末状の硬化性樹脂が加熱により溶融すると共に硬化して塗膜が形成される。また、表面を加水分解性シラン化合物で処理した粉末状熱可塑性ポリウレタン樹脂と、一定温度でシリル基の加水分解反応を促進する熱潜在触媒とを含有する樹脂組成物が、加熱した金型で成形され、粉体の溶融及び湿気によって表面架橋が進行することもまた知られている(特許文献2)。上記粉体塗料及び樹脂組成物の硬化には加熱を必要とし、常温では硬化しない。
【0003】
一方、常温で硬化する接着剤やシーリング材の硬化性樹脂として加水分解性シリル基を有する樹脂を用いることも試みられており、かかる硬化性樹脂は常温で液状であり、空気中の湿分による加水分解反応が触媒によって促進されて樹脂が硬化する。上記のような含ケイ素基を有する硬化性樹脂を用いた従来の接着剤及びシーリング材は、硬化速度が遅く、より速く硬化するものが望まれており、硬化速度を上げる改善が試みられている。
【0004】
従来、分子末端に加水分解性ケイ素基を有する湿気硬化型の変成シリコーン樹脂の硬化触媒として、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機錫化合物が汎用されている。上記有機錫化合物は、変成シリコーン樹脂を速やかに硬化させるため重宝されているが、有機錫化合物は重金属である錫を含有しているため、近年、人体に対する危険性や有害性が指摘されており、環境負荷も大きい。また、硬化触媒として、有機酸やアミン化合物を用いることも知られているが、含ケイ素基を有する硬化性樹脂の硬化速度は遅い。そしてまた、近年、硬化触媒として三フッ化ホウ素錯体が有用であることが報告された(特許文献3、非特許文献1)。しかし、硬化性樹脂の溶融時に有毒なフッ化水素ガスが発生することから、使用用途が限定され、実用性が乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−1635号公報
【特許文献2】特開平11−228833号公報
【特許文献3】特開2006−199730号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Macromol. React. Eng., 2007, 1, 313-320
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、含ケイ素基を有する硬化性樹脂を用いて、危険性、有害性及び環境負荷が小さく、常温において空気中の湿分により極めて速く硬化する硬化性樹脂組成物、及び、かかる硬化性樹脂組成物を含有する湿気硬化型接着剤、シーリング材を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究の結果、含ケイ素基を有する硬化性樹脂と、金属錯体に塩基性化合物が配位した複合錯体を含有する硬化性樹脂組成物が、常温において空気中の湿分により極めて速く硬化することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)加水分解性シリル基を有する硬化性樹脂(A);
金属錯体(a)に塩基性化合物(b)が配位した複合錯体(B);
を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
(2)硬化性樹脂(A)100質量部当たり、複合錯体(B)を0.01〜10質量部含有する(1)に記載の硬化性樹脂組成物。
(3)金属錯体(a)が、β−ジチオケトン金属錯体であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の硬化性樹脂組成物。
(4)金属錯体(a)が、中心金属としてカルシウム(II)、マグネシウム(II)、バリウム(II)、ストロンチウム(II)、バナジウム(III)、亜鉛(II)、コバルト(II)、コバルト(III)、銅(I)、銅(II)、チタン(III)、鉄(II)、鉄(III)、クロム(II)、マンガン(II)、アルミニウム(III)、ガリウム(II)、パラジウム(II)、ルテニウム(II)、白金(II)、ニッケル(II)、鉛(II)、カドミウム(II)及びジルコニウム(II)からなる群から選択される少なくとも1種を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
(5)塩基性化合物(b)が、アミン化合物であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
(6)アミン化合物が、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である(5)に記載の硬化性樹脂組成物。
(7)硬化性樹脂(A)の加水分解性シリル基が、同一又は異なるアルコキシ基を有する、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、又はトリアルコキシシリル基であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
(8)硬化性樹脂(A)の主鎖骨格が、エチレン重合体、プロピレン重合体、ブテン重合体、スチレン重合体又はそれらの共重合体であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
(9)(1)〜(8)のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とする湿気硬化型接着剤又はシーリング材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物は、含ケイ素基を有する硬化性樹脂硬化の硬化触媒として、有機錫化合物に替えて、金属錯体とアミン化合物からなる複合錯体を用いるため、環境負荷等が小さい。また、かかる硬化性樹脂組成物は、空気中の湿分により常温で極めて速く硬化する。したがって、速硬化性の湿気硬化型接着剤やシーリング材等に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の硬化性樹脂組成物は、加水分解性シリル基を有する硬化性樹脂(A);金属(ただしホウ素は含まない)錯体(a)に塩基性化合物(b)が配位した複合錯体(B);を含有するものあれば特に制限されず、上記硬化性樹脂(A)を100質量部としたとき、上記複合錯体(B)を0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜2質量部含む。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、上記硬化性樹脂(A)を40〜250℃、好ましくは60〜200℃に加熱して溶融及び脱水を1〜120分間、好ましくは1〜60分間行った後、上記複合錯体(B)を加えて40〜250℃、好ましくは60〜200℃の温度で1〜120分間、好ましくは1〜60分間攪拌混合する方法によって製造することができる。
そしてまた、本発明の硬化性樹脂組成物は、空気中等に存在する水分の存在下で、加水分解性シリル基同士が縮重合することによって硬化する。
【0012】
(硬化性樹脂(A))
上記硬化性樹脂(A)の主鎖骨格は、本発明の硬化性樹脂組成物の奏する機能を阻害しない限り特に制限されないが、エチレン、プロピレン、ブテン等のアルケンを原料とするオレフィン系重合体;スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、p−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、o−1−エトキシエトキシスチレン等のスチレン又はその誘導体を原料とするスチレン系重合体;又はそれらの共重合体が好ましく、特に、エチレン重合体、プロピレン重合体、ブテン重合体、スチレン重合体、又はそれらの共重合体が好ましい。
そして、加水分解性シリル基を、上記主鎖骨格の一方又は両方の末端に、あるいは側鎖として有する。上記重合体1モルあたりの加水分解性シリル基のモル数は、任意に設定できるが、1〜500モルが好ましく、1〜50モルがより好ましい。
【0013】
当該加水分解性シリル基は、以下の一般式(1)で表される。
【0014】
【化1】
【0015】
上記式中、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、nは0〜2の整数を表す。
【0016】
上記炭素数1〜5のアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状または分岐状のアルキル基を意味し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等を挙げることができる。
【0017】
上記炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基等を挙げることができる。
【0018】
硬化性樹脂の主鎖骨格となる重合体は、特に制限されないが、好ましくは、GPCによる数平均分子量は、1,000〜1,000,000であり、好ましくは、10,000〜100,000である。
【0019】
加水分解性シリル基を分子内に有する硬化性樹脂において、上記一般式(1)で表される化合物のうち、n=0のトリアルコキシシリル基である硬化性樹脂は、反応性が高く、硬化速度が速いため、かかる硬化性樹脂を使用することが好ましく、さらに、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基を使用することが好ましく、さらに、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基を1〜20重量%、特に5〜7重量%含有する硬化性樹脂中を使用することが特に好ましい。このような範囲の加水分解性シリル基を分子内に有する硬化性樹脂を使用することで、より硬化速度と耐熱性のバランスに優れた硬化物を形成することができる。
【0020】
n=1のジアルコキシシリル基である硬化性樹脂は、n=0のトリアルコキシシリル基である硬化性樹脂が共存すると、n=1のジアルコキシシリル基である硬化性樹脂が単独である場合より反応性が向上する。したがって、トリアルコキシシリル基とジアルコキシシリル基とを有する硬化性樹脂(A)は、好ましい形態の1つである。また、トリアルコキシシリル基を有する硬化性樹脂とジアルコキシシリル基を有する樹脂とを混合して用いてもよい。
【0021】
上記硬化性樹脂(A)としては、具体的には、例えば特公平4−69659号、特公平7−108928号、特許公報第2512468号、特開昭64−22904号、特許公報第2539445号等に記載される加水分解性シリル基含有飽和炭化水素重合体が挙げることができる。また、硬化性樹脂(A)として、飽和炭化水素重合体タイプの市販の飽和炭化水素重合体から適したものを選択して用いてもよく、例えば、鐘淵化学工業社製製品(商品名:エピオンシリーズ)、デグサジャパン社製製品(商品名:VESTOPLAST 206,VESTOPLAST EP204,VESTOPLAST EP2303、VESTPLAST EP2403,VESTOPLAST EP2606,VESTPLAST EP2412,VESTPLAST EP2315)、クラリアントジャパン社製(商品名:PPSi1362)等を挙げることができる。
【0022】
また、上記硬化性樹脂(A)は、Macromol. React. Eng., 2007, 1, 313-320に記載の方法を参考に、有機合成手法により製造することもできる。具体的には、ラジカル開始剤の存在下、上記主鎖骨格となるオレフィン系重合体、スチレン系重合体、又はそれらの共重合体等に、加水分解性シリル基を有するビニル化合物をラジカル付加反応させることにより、硬化性樹脂(A)が製造される。
【0023】
上記重合体の中でも、アモルファスプロピレン・エチレン共重合体(アモルファスポリアルファオレフィン(APAO)とも称す)が好ましい。
【0024】
加水分解性シリル基を有するビニル化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0025】
一実施形態として、アモルファスプロピレン・エチレン共重合体と加水分解性シリル基を有するビニル化合物とのラジカル反応のスキームを以下に示す。
【0026】
【化2】
【0027】
上記式中、R、R及びnは、前記一般式(1)におけるR、R及びnと同じ定義である。m、lは、1以上の整数である。
【0028】
ラジカル開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、ジクミルペルオキシド等の有機過酸化物等を挙げることができ、好ましくは有機過酸化物であり、さらに好ましくはジクミルペルオキシドである。
【0029】
(複合錯体(B))
上記複合錯体(B)における金属錯体(a)は、中心金属に配位子が配位しているものであれば特に制限されない。
【0030】
上記中心金属としては、例えば、カルシウム(II)、マグネシウム(II)、バリウム(II)、ストロンチウム(II)、バナジウム(III)、亜鉛(II)、コバルト(II)、コバルト(III)、銅(I)、銅(II)、チタン(III)、鉄(II)、鉄(III)、クロム(II)、マンガン(II)、アルミニウム(III)、ガリウム(II)、パラジウム(II)、ルテニウム(II)、白金(II)、ニッケル(II)、鉛(II)、カドミウム(II)、ジルコニウム(II)等を挙げることができ、中でも、亜鉛(II)、銅(I)及び銅(II)が好ましく、亜鉛(II)及び銅(II)がより好ましい。
【0031】
上記配位子としては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル等のβ−ケトエステル類;アセチルアセトン、ヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、ヘプタン−3,5−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、ノナン−2,4−ジオン、5−メチル−ヘキサン−2,4−ジオン等のβ−ジケトン類;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸類;エチレングリコール等のグリコール類;オキシ酢酸等のグリコール酸類;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びそのナトリウム塩、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリ(ピリジニルメチル)アミン等の含窒素化合物;フランカルボン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、フェナントロリン、ジフェナントロリン、置換フェナントロリン、2,2’,6’,2”−ターピリジン、ピリジンイミン、架橋脂肪族ジアミン、4,4’−ジ(5−ノニル)−2,2’−ビピリジン、O,S,Se,Teの配位したビピリジン、アルキルイミノピリジン、アルキルビピリジニルアミン、アルキル置換トリピリジン、ジ(アルキルアミノ)アルキルピリジン、エチレンジアミンジピリジン、その他の複素環化合物;2−メルカプトエタノール等のメルカプトアルコール類;エタンジチオール等のジチオール類;2−メルカプトエチルアミン等のメルカプトアミン類;2,4−ペンタンジチオン、2,4−ヘキサンジチオン、2,4−ヘプタンジチオン、3,5−ヘプタンジチオン、o−メチル−3−チオキソブタンチオエート、o−エチル−3−チオキソブタンチオエート、o−n−プロピル−3−チオキソブタンチオエート、o−イソプロピル−3−チオキソブタンチオエート等のβ−ジチオケトン類等を挙げることができ、中でも、β−ジチオケトン類が好ましく、2,4−ペンタンジチオンがより好ましい。
【0032】
塩基性化合物(b)は、塩基性を示し、且つ、上記の金属錯体(a)に配位して、硬化性樹脂の硬化を触媒する能力を有するものであれば特に制限されず、例えば、アミン化合物等を挙げることができる。
【0033】
アミン化合物としては、1又は2以上の第一級、第二級又は第三級アミンであれば特に制限されず、複素環状第二級又は第三級アミン化合物やアミノシラン化合物も使用でき、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、イコシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジノナデシルアミン、ジイコシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリトリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリペンタデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリヘプタデシルアミン、トリオクタデシルアミン、トリノナデシルアミン、トリイコシルアミン、アンモニア、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、グアニジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、N−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ペンタエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,9−ジアミノノナン、ATU(3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)、CTUグアナミン、ドデカン酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアニシジン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、トリジンベ−ス、m−トルイレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、メラミン、1,3−ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エ−テル、サンテクノケミカル社製ジェファ−ミン、ピペラジン、シス−2,6−ジメチルピペラジン、シス−2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)−プロパン、4−アミノプロピルアニリン、ホモピペラジン、N,N’−ジフェニルチオ尿素、N,N’−ジエチルチオ尿素、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、メチルアミノプロピルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノエチルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、3−アミノピロリジン、1−o−トリルビグアニド、2−アミノメチルピペラジン、N−アミノプロピルアニリン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジラウリルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、式:HN(CH)Hで表される化合物(n≒5、商品名:ポリエイト、東ソ−社製)、N−アルキルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4,0]ウンデカ−7−エン、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン、N−アルキルピペリジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4,0]デカ−5−エン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン,N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジリエトキシシラン、N−3−[アミノ(ジプロピレンオキシ)]アミノプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0034】
アミン化合物の中でも、第一級アミン、第二級アミン又は第三級アミンが好ましく、第一級アミンがより好ましく、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、イコシルアミンが特に好ましい。
【0035】
上記複合錯体(B)としては、β−ジチオケトン類と銅(II)との金属錯体に第一級アミノ基を有する化合物が配位した複合錯体、β−ジチオケトン類と亜鉛(II)との金属錯体に第一級アミノ基を有する化合物が配位した複合錯体が好ましく、2,4−ペンタンジチオンと銅(II)との金属錯体にオクタデシルアミンが配位した複合錯体、2,4−ペンタンジチオンと亜鉛(II)錯体との金属錯体にオクタデシルアミンが配位した複合錯体がより好ましい。
【0036】
上記複合錯体(B)は、金属錯体(a)を有機溶媒に溶解させて溶液とし、かかる溶液に塩基性化合物(b)を添加し、1分〜24時間、好ましくは1〜12時間反応させた後、上記有機溶媒を減圧留去することによって得ることができる。有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、プロピレンジクロリド等のハロゲン系溶媒;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸のアルキルエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン;ジエチルエーテル、エチルn−プロピルエーテル、エチルn−ブチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、メチルセロソルブ、ジメトキシエタン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル等のニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、アニソール等の芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。上記溶媒の中でも、ハロゲン系溶媒が好ましく、クロロホルムがより好ましい。
【0037】
(任意の成分)
本発明に係る硬化性樹脂組成物中には、従来公知の任意の成分を配合することができる。例えば、本発明で用いる硬化性樹脂(A)以外の各種の樹脂、複合錯体(B)以外の酸性触媒等の硬化触媒、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、親水性又は疎水性シリカ系粉体、炭酸カルシウム等の充填剤、フェノール樹脂等の粘着付与剤、アマイドワックス等の揺変剤、酸化カルシウム等の脱水剤、希釈剤、可塑剤、難燃剤、オリゴマー、老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、乾性油等を配合することができる。
【0038】
(硬化性樹脂組成物の用途)
本発明の硬化性樹脂組成物は、水分の存在下で、加水分解性シリル基同士が縮重合することによって硬化するものであり、保管や搬送中は、空気(空気中の水分)と接触しないよう、気密に密封した状態で取り扱われる。そして、使用時には開封して任意の箇所に適用すれば、空気中の水分と接触して硬化性樹脂が硬化する。本発明の硬化性樹脂組成物は、従来の硬化性樹脂が適用されていた全ての用途に用いることができ、例えば、シーリング材、接着剤、粘着剤、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができ、上記の用途の中でもシーリング材、接着剤が好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
【0040】
(加水分解性シリル基を有する硬化性樹脂の合成)
以下の表1に示す配合割合にて合成報告例(Macromol. React. Eng., 2007, 1, 313-320)に従い、フリーラジカル反応により加水分解性シリル基を分子内に有する硬化性樹脂(反応物1〜3)を得た。
【0041】
【表1】
【0042】
(β−ジチオケトン金属錯体とアミン化合物との複合錯体の合成)
表2の配合割合にて、複合錯体1及び2を得た。具体的には、反応容器に2,4−ペンタンジチオオン亜鉛(II)錯体327.8g(1モル当量)、又は2,4−ペンタンジチオオン銅(II)錯体326.0g(1モル当量)を投入し、その後常温にて乾燥クロロホルム1000mLを加え完全に溶解させた。クロロホルム溶液中にn−オクタデシルアミン269.5g(1モル当量)を加え、常温にて60分間攪拌した後、クロロホルムをエバポレートすることで、それぞれ複合錯体1及び2を得た。複合錯体1及び2の分析結果を以下に示す。
【0043】
複合錯体1
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ0.88(-CH2CH3, 3H), 1.25(-CH2-, 30H), 1.46(H2N-CH2-CH2-, 2H), 2.30(C-CH3, 12H), 5.27(C=CH-C, 2H).
元素分析 Anal. Calcd for C28H58NS4Zn: C, 56.30; H, 8.94; N, 2.34%. Found: C, 56.25; H, 8.79; N, 2.25%.
【0044】
複合錯体2
元素分析 Anal. Calcd for C28H58NS4Cu: C, 56.47; H, 8.97; N, 2.35%. Found: C, 56.11; H, 9.18; N, 2.49%.
【0045】
【表2】
【0046】
(硬化性樹脂組成物の調製)
下記の手順に従って硬化性樹脂組成物(1)〜(24)を調製し、軟化温度を測定することによって硬化性樹脂組成物の速硬化性を評価した。
【0047】
[実施例1] 硬化性樹脂組成物(1)の調製
反応容器に表1記載の反応物1(500g)を投入し、その後150℃に加熱し、樹脂の溶融ならび脱水を30分間行った。反応物1に表2記載の複合錯体1(0.5g)を加えて150℃の温度で30分間攪拌混合して硬化性樹脂組成物(1)を得た。
【0048】
[実施例2] 硬化性樹脂組成物(2)の調製
複合錯体1に代えて表2記載の複合錯体2(0.5g)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(2)を得た。
【0049】
[比較例1] 硬化性樹脂組成物(3)の調製
複合錯体1を加えなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(3)を得た。
【0050】
[比較例2] 硬化性樹脂組成物(4)の調製
複合錯体1に代えて2,4−ペンタンジチオオン亜鉛錯体(0.5g)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(4)を得た。
【0051】
[比較例3] 硬化性樹脂組成物(5)の調製
複合錯体1に代えてn−オクタデシルアミン(0.5g)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(5)を得た。
【0052】
[比較例4] 硬化性樹脂組成物(6)の調製
複合錯体1に代えて2,4−ペンタンジチオオン亜鉛錯体(0.3g)とn−オクタデシルアミン(0.2g)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(6)を得た。
【0053】
[比較例5] 硬化性樹脂組成物(7)の調製
複合錯体1に代えてジブチル錫(II)ジラウレート(0.5g)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(7)を得た。
【0054】
[比較例6] 硬化性樹脂組成物(8)
複合錯体1に代えて三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(0.5g)を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(8)を得た。
【0055】
[実施例3] 硬化性樹脂組成物(9)の調製
反応容器に表1記載の反応物2(500g)を投入し、その後150℃に加熱し、樹脂の溶融ならび脱水を30分間行った。反応物2に表2記載の複合錯体1(0.5g)を加えて150℃の温度で30分間攪拌混合して硬化性樹脂組成物(9)を得た。
【0056】
[実施例4] 硬化性樹脂組成物(10)の調製
複合錯体1に代えて表2記載の複合錯体2(0.5g)を用いたこと以外は実施例3と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(10)を得た。
【0057】
[比較例7] 硬化性樹脂組成物(11)の調製
複合錯体1を加えなかったこと以外は実施例3と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(11)を得た。
【0058】
[比較例8] 硬化性樹脂組成物(12)の調製
複合錯体1に代えて2,4−ペンタンジチオオン亜鉛錯体(0.5g)を用いたこと以外は実施例3と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(12)を得た。
【0059】
[比較例9] 硬化性樹脂組成物(13)
複合錯体1に代えてn−オクタデシルアミン(0.5g)を用いたこと以外は実施例3と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(13)を得た。
【0060】
[比較例10] 硬化性樹脂組成物(14)の調製
複合錯体1に代えて2,4−ペンタンジチオオン亜鉛錯体(0.3g)とn−オクタデシルアミン(0.2g)を用いたこと以外は実施例3と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(14)を得た。
【0061】
[比較例11] 硬化性樹脂組成物(15)の調製
複合錯体1に代えてジブチル錫(II)ジラウレート(0.5g)を用いたこと以外は実施例3と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(15)を得た。
【0062】
[比較例12] 硬化性樹脂組成物(16)
複合錯体1に代えて三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(0.5g)を用いたこと以外は実施例3と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(16)を得た。
【0063】
[実施例5] 硬化性樹脂組成物(17)
反応容器に表1記載の反応物3(500g)を投入し、その後150℃に加熱し、樹脂の溶融ならび脱水を30分間行った。反応物3に表2記載の複合錯体1(0.5g)を加えて150℃の温度で30分間攪拌混合して硬化性樹脂組成物(17)を得た。
【0064】
[実施例6] 硬化性樹脂組成物(18)
複合錯体1に代えて表2記載の複合錯体2(0.5g)を用いたこと以外は実施例5と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(18)を得た。
【0065】
[比較例13] 硬化性樹脂組成物(19)
複合錯体1を加えなかったこと以外は実施例5と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(19)を得た。
【0066】
[比較例14] 硬化性樹脂組成物(20)
複合錯体1に代えて2,4−ペンタンジチオオン亜鉛錯体(0.5g)を用いたこと以外は実施例5と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(20)を得た。
【0067】
[比較例15] 硬化性樹脂組成物(21)
複合錯体1に代えてn−オクタデシルアミン(0.5g)を用いたこと以外は実施例5と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(21)を得た。
【0068】
[比較例16] 硬化性樹脂組成物(22)
複合錯体1に代えて2,4−ペンタンジチオオン亜鉛錯体(0.3g)とn−オクタデシルアミン(0.2g)を用いたこと以外は実施例5と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(22)を得た。
【0069】
[比較例17] 硬化性樹脂組成物(23)
複合錯体1に代えてジブチル錫(II)ジラウレート(0.5g)を用いたこと以外は実施例5と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(23)を得た。
【0070】
[比較例18] 硬化性樹脂組成物(24)
複合錯体1に代えて三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(0.5g)を用いたこと以外は実施例5と同様の操作を行って、硬化性樹脂組成物(24)を得た。
【0071】
(軟化温度の測定)
150℃で調製(溶融状態)した上記硬化性樹脂組成物(1)〜(24)のそれぞれについて、1対の帆布を貼り合わせて所定時間放置(経過)した後の軟化温度を測定した。具体的には、25℃、相対湿度50%の雰囲気下で、2.5cm幅の帆布に溶融状態の硬化性樹脂組成物を塗布し、直ちにもう一方の帆布を貼り合わせ(貼り合わせ面積2.5×2.5cm)、10分(測定A)または2時間(測定B)放置した。一方の帆布を固定して他方の帆布に200gの重りを取り付けて温度を徐々に上昇させ、重りが落下した温度を硬化性樹脂組成物の軟化点とした。測定結果を表3〜5に示す。なお測定は3回行ってその平均値を使用した。表中の「×」は、硬化性樹脂組成物が十分に硬化しておらず、上記測定の温度上昇前室温条件下で重りが落下したことを示す。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
硬化後の硬化性樹脂組成物の軟化温度が60℃に達している場合、耐熱性が実用的に十分であると判断される。表3から明らかなように、硬化触媒として複合錯体1、複合錯体2を用いた硬化性樹脂組成物(1)及び(2)(実施例1及び2)は、塗布後10分後で硬化しているのに対し、他の硬化触媒を用いた硬化性樹脂組成物(4)〜(8)(比較例1〜6)では硬化に長時間を必要とすることがわかった。表4の結果から、加水分解性シリル基が2官能である反応物2の硬化において、複合錯体1及び複合錯体2が硬化触媒として作用し、硬化速度を速めていると理解できる。表5の結果から、複合錯体1及び複合錯体2による硬化促進が、2官能及び3官能の加水分解性シリル基が混在する反応物3に対しても発揮されることがわかった。
【0076】
上述したように、硬化後の硬化性樹脂組成物の軟化温度が60℃に達するか否かは、耐熱性が実用的に十分であるかを判断する上で重要な温度である。上記硬化性樹脂組成物の中で硬化物の軟化温度が60℃を越えるものは硬化触媒として複合錯体1、複合錯体2を用いた硬化性樹脂組成物(1)、(2)、(9)、(10)、(17)及び(18)(実施例1〜実施例6)だけであり、この軟化温度は、従来には見られない非常に高い温度である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の硬化性樹脂組成物は、含ケイ素基を有する硬化性樹脂硬化の硬化触媒として、有機錫化合物を使用することなく、環境負荷等が小さい。また、かかる硬化性樹脂組成物は、空気中の湿分により常温で極めて速く硬化するため、速硬化性の湿気硬化型接着剤やシーリング材等に適用できる。