(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、列車の進行や停止等の各種運行を行うための運行管理のための制御において、停止信号や進行許可信号といった各種信号を信号機によって表示しているが、表示物としては、運行に直接的に関与するもののほかに、運行を支援するものとして、例えば駅における列車の停止位置を運転士に示すための停止位置標識が設置されていた。
【0003】
なお、列車の各種運行の運行管理の手法については、種々のものが知られており、例えば、進行許可情報や列車識別情報、車載機器故障情報といった各種信号について、列車に搭載された車載制御装置と運行管理装置との間で無線により情報を交換することで列車の運行管理を行うものがある(例えば特許文献1、2等参照)。
【0004】
しかしながら、従来の技術では、上記運行管理装置に基づく列車の運行管理の制御に関しては信号機の点灯・消灯や点灯色の切替等によって進行の可否を示す視覚的な表示動作がなされているものの、運行管理の制御以外の制御である運行を支援する制御に関しては、通常の運行制御とは異なり、例えば積極的に停止位置を明示するようなものがなかった。具体的に例えば、停止位置標識として、数字等が記載されただけのものを線路上や線路脇等に単に設置しているに過ぎなかった。このため、例えば車両数や列車の種類等に応じて停止位置が異なる駅において、上記のような数字等が記載されただけの停止位置標識が複数設置されている場合、どの停止位置で列車を停止させるかは、運転士自らが運行管理装置等を介して取得した運行に関する情報や、運転している列車の車両数等に基づいて、その都度判断する必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、複数の停止位置がある場合に、運転手に停止位置を明示して、列車の運行が円滑になされるように運行の支援(すなわち運行の補助)をするための停止位置表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る停止位置表示システムは、停止位置に対応して複数箇所に配置され視覚的な表示を行う複数の表示部と、列車の運行管理に関する情報を有する運行管理装置と、運行管理装置から取得した運行関連情報に基づいて形成した信号を送信する送信装置と、送信装置からの信号を受ける無線受信部と、複数の表示部のうち1つの表示部を選択的に表示状態とする表示回路と、を備える。
【0008】
上記停止位置表示システムでは、表示回路によって、複数の表示部のうち、上記1つの表示部を選択的に表示状態とすることで、運転手に停止位置を明示できる。すなわち、列車の運行が円滑になされるように運行の支援をすることができる。
【0009】
本発明の具体的な側面では、表示回路は、無線受信部から得た信号に基づいて上記1つの表示部を表示状態とする。
【0010】
本発明の別の側面では、表示回路は、上記1つの表示部のみを点灯させることによって表示状態とする。この場合、上記1つの表示部のみを点灯させることで、運転手に停止位置を明示できる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、表示回路は、列車がホームトラックに進入を完了した段階で上記1つの表示部を表示状態とする。この場合、列車のホームトラックへの進入完了を契機として、停止位置表示を行うことができる。なお、ホームトラックへの進入完了とは、原則、列車の後端部がホームトラック内に入ったことを意味するが、表示回路による表示動作のための情報が入手可能な状態であればよく、上記の場合に限らず、例えば列車の先端部がホームトラック内に入ったことを意味するものとしてもよい。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、送信装置は、列車がホームトラックに進入を完了したときに、運行関連情報に基づいて形成した信号を無線受信部に送信する。この場合、運行関連情報を利用しつつ停止位置表示のタイミングを適切にできる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、表示回路は、列車がホームトラックに進入を完了したときから所定時間後に、上記1つの表示部を非表示状態とする。この場合、停止位置の表示を適切に行いつつ、例えば表示に伴う消費電力を抑えることができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、無線受信部に付随して当該無線受信部を動作させる発電機をさらに備える。この場合、発電機により、停止位置の表示の動作に必要な電力を確保することができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、運行管理装置から送信装置に渡される運行関連情報には、列車編成、走行種別、及び入車番線が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明に係る一実施形態の停止位置表示システム100が組み込まれた駅の一例を示す図である。図示の例では、矢印A1で示すように、列車TRが図面右から左に向かって進入してくるものとなっている。また、図示の駅の形態では、線路が駅の手前で分岐して、駅のプラットホームPFの両端側に対して、列車TRがそれぞれ停止可能となっている。すなわち、線路を構成するレーンROが駅の手前で2つのレーンRO1,RO2に分岐し、各レーンRO1,RO2において停車が可能となっている。なお、停車に関しては、2つのレーンRO1,RO2のそれぞれに列車を同時に停止することを許容するものであっても、いずれか一方にしか停車させないものであってもよい。また、駅及びその周辺には、軌道回路のうち、駅に所属する部分の軌道回路の範囲に相当するホームトラックTCが定められている。ホームトラックTCは、駅に進入する列車TRを認識する上での基準となるものであり、例えば、駅内における通常の列車の運行管理を行う上で、各種信号処理を開始するための契機を、ホームトラックTCへの列車TRの進入によって定めるものとなっている。なお、ホームトラックTCの長さについては、駅や列車の規模等によって種々の態様が考えられるが、例えば、駅の中心(例えばプラットホームPFの真ん中)を中央位置として全長300メートルほどで設定される。なお、ホームトラックTCへの列車TRの進入に関して、進入完了とは、原則、列車TRの後端部がすなわち列車TRの全体がホームトラックTC内に入ったことを意味するが、これに限らず、例えば列車TRの先端部がホームトラックTC内に入ったことを意味するものとしてもよい。
【0018】
図1及び
図2に示すように、本発明に係る一実施形態の停止位置表示システム100は、運行管理装置(TCC)10と、列車情報処理装置20と、送信装置である無線送信装置30と、複数の停止位置表示装置50と、発電機である発電部70とを備える。特に、本実施形態では、各レーンRO1,RO2にそれぞれ設けられた各停止位置表示装置50は、停止位置に対応して複数箇所に配置され視覚的な表示を行う複数の表示部60を有している。
【0019】
停止位置表示システム100は、駅において進入してくる列車TRに対して停止位置に対応する箇所に複数設置された表示部60のうち1つの表示部60を点灯表示させる、すなわち表示部60を選択的に表示状態とすることで、運転手に停止位置を明示し、列車TRをプラットホームPFに対して正しい位置に停止させて列車の運行が円滑になされるように支援するためのシステムである。なお、詳しくは後述するが、駅には、通常の運行管理に関する信号を送信するための各種信号機SS,SS1,SS2や、案内表示板(図示略)等が設置されており、これらについて各種の動作制御がなされることで、運行管理がなされている。これに対して、停止位置表示システム100は、各種信号機SS等のように運行に影響のある動作制御に関与するものではなく、列車の運行を円滑に行うための支援的・補助的動作として、列車の停止位置を示す表示部の点灯表示の動作に関する制御を担うものである。ここで、詳しくは後述するが、停止位置表示システム100を構成するもののうち、運行管理装置10や列車情報処理装置20は、既存のシステムとして通常の運行管理に関する処理を行うものである。上述のように、支援的・補助的動作を行うものであり通常の運行管理には関与しない停止位置表示システム100としては、運行管理装置10や列車情報処理装置20を、通常の運行管理を行うシステムを構成するものとしてではなく、もっぱら支援的・補助的動作をするための情報を取得する手段として用いている。つまり、構成上、停止位置表示システム100は、運行管理装置10や列車情報処理装置20を通常の運行管理システムと共用あるいは流用するものとなっているにすぎず、停止位置表示システム100が通常の運行管理に関与することはないものとなっている。
【0020】
上記のような停止位置表示システム100を利用して複数の停止目標のうち正しい位置に停止させるという運行支援の動作において、表示する停止位置というものは、あくまで目安であり、例えば運転士の運転技術の熟達度によって多少停止位置からはみ出してしまった、といった事態が生じても直ちには運行管理上問題が生じない。この点において、停止位置表示システム100が担う制御については、列車の停止や進入の可否を厳格に守らなくてはいけない通常の運行管理下での動作制御とは意味合いが大きく異なる。しかしながら、例えば運転士が停止位置を間違えて本来の停止位置から大きく外れてしまうと、停止位置の再調整等が必要になり、延いては運行に影響を及ぼす場合がある。したがって、支援的・補助的動作を行う停止位置表示システム100を利用することで、かかる事態を未然に抑止することには大きな意味がある。
【0021】
なお、
図1では、上記のように図面右から左に向かって進行する列車TRに関してのみ示しているが、対向して左から右に向かって進行する列車(対向車両)がある場合、対向車両のためにも、同様の停止位置表示システム100が設けられるものとする。
【0022】
運行管理装置10は、列車の運行管理に関する情報を有する装置である。運行管理装置10は、駅内における線路の状況等の各種情報を管理するとともに、例えば運行上における全ての列車と全駅とに関する情報を管理する中央管理システム(図示略)や他の駅における運行管理装置と通信可能となっており、中央管理システムや他の駅における運行管理装置からの情報に対応して駅内における運行のための各種信号制御の処理を行っている。すなわち、運行管理装置10は、進入する列車に関する各種情報や、駅の状況に関する各種情報といった運行に関係する情報である運行関連情報を有しており、駅に進入する列車TRの運行管理の全般について制御を行うものである。運行管理装置10は、当該駅の列車発車時刻や発車番線情報などの運行関連情報を列車情報処理装置20に送信するように構成されている。ただし、本実施形態では、既述のように、停止位置表示システム100は、運行管理に関する制御を行うシステムではなく、運転士に列車の停止位置を示すためのシステムであり、運行の支援をするものである。したがって、停止位置表示システム100としては、構成要素である運行管理装置10をもっぱら列車の停止位置を確定するに際して必要な情報を得るための装置としてのみ利用するものとなっている。
【0023】
列車情報処理装置20は、運行管理装置10から取得した運行関連情報に基づいて列車情報に関する各種処理を行う。例えば、
図2に示すように、列車情報処理装置20は、列車運行に関する表示動作をする表示制御部21と、運行関連情報に関する各種情報を格納する記憶部22と、記憶部22に格納された情報を外部への信号送信を行うためのインターフェース部23とを有する。列車情報処理装置20は、例えば運行管理装置10からの運行関連情報の一部として送信されるダイヤ情報に基づいて駅のプラットホームPFに設置された案内表示板(図示略)にダイヤ情報を表示させる列車運行表示装置として機能する。つまり、運行管理装置10から列車情報処理装置20に送信される運行関連情報には、列車編成、走行種別、及び入車番線が含まれている。ただし、本実施形態では、既述のように列車の停止位置を示すためのシステムである停止位置表示システム100としては、列車情報処理装置20は、運行関連情報に関する各種情報を格納するとともに後述する無線送信装置30に当該情報を伝達する装置としてのみ利用するものとする。言い換えると、停止位置表示システム100を構成するものとしての列車情報処理装置20は、列車の運行のための制御以外の制御として、すなわち列車の運行を支援する補助的な動作として、列車の停止位置を表示する表示部の点灯消灯の動作に必要となる情報に関する信号送信のために用いられるものとなっている。
【0024】
無線送信装置30は、列車情報処理装置20において形成された信号、すなわち列車編成、走行種別、及び入車番線が含まれた運行関連情報に基づいて形成された信号を、インターフェース部23介して受け取るととともに停止位置表示装置50に対して送信する無線タイプの送信装置である。
【0025】
停止位置表示装置50は、列車の停止位置を表示するための装置であり、図示の例では、複数設けられている。これは、例えば
図1に示すように、各レーンに1つずつ停止位置表示装置50を設けるという態様を想定しているためである。
図2に示すように、各停止位置表示装置50は、制御部51と、無線受信部である無線通信部52と、LED駆動部53と、電源部54とをそれぞれ有する。既述のように、本実施形態では、停止位置表示装置50は、停止位置に対応して複数箇所に配置され視覚的な表示を行う複数の表示部60をさらに有する。より具体的には、図示の例では、1つの停止位置表示装置50に対して2つの表示部60が設けられている。制御部51は、無線通信部52を介して無線送信装置30から取得した運行関連情報に基づいて列車の停止位置の表示に関する情報を形成するとともに当該情報に従って、LED駆動部53を介して複数の表示部60の駆動動作を制御する表示回路である。なお、1つの停止位置表示装置50に対して3つ以上の表示部60を設ける構成とすることも可能である。
【0026】
以下、
図3(A)等を参照して、表示部60の構成例について詳しく説明する。
図3(A)及び3(B)に一例を示すように、各表示部60は、三角形状の部材であり、中央に配置された発光部60aがLED素子で構成されている。発光部60aは、LED駆動部53(
図2等参照)から送信される駆動信号に従って点灯・消灯する。複数の表示部60は、例えば、
図3(C)に一例を示すように、運転士に視認されやすいように枕木TIの中央側に配置され、線路に沿って複数の表示部60が異なる枕木TIの上に配置されることで、異なる停止位置をそれぞれ示すものとなっている。例えば、複数の表示部60のうち、線路の進行方向に沿って手前側に位置する表示部60の発光部60a表面には、数字で「6」と付されており、奥側に位置する表示部60の発光部60a表面には、数字で「8」と付されている。これは、「6」と付された表示部60が6両編成の列車における停止位置を示し、「8」と付された表示部60が8両編成の列車における停止位置を示している。以上の例では、1つのレーンに2つの表示部60を設置しているが、1つのレーンにおいて表示部60をいくつ配置するかは、種々の態様が考えられ、上記のような車両数によるもののほか、例えば急行列車であるか、各駅停車の列車であるか等に応じて停止位置が異なるといった態様も生じ得る。なお、各表示部60は、列車の運行の妨げとならないようにレールRLの高さに対して十分低くなる程度のサイズとなっている。
【0027】
また、
図3(A)等に示す例では、1つの表示部60において、発光部60aが1つであり、この場合、例えば1個のLED(例えば白色のLED)によって構成することが可能であるが、
図3(D)に変形例として示すように、複数のLEDを用いて複数の発光部分Pa(図示の場合は3つの発光部分で構成)で発光部60aを構成してもよい。この場合、例えば、停止しようとする列車と表示部60との距離に応じて発光部分Paの点灯個数を変化させるといった点灯状態を変化させる態様が可能になる。なお、いずれの例においても、発光部60aにおける点灯色を赤、青、黄以外の色とすることで、通常の運行管理において信号機に用いられる色と区別させることができる。
【0028】
図2に戻って、発電部70は、無線受信部である無線通信部52を含む停止位置表示装置50に付随する発電機であり、ここでは特に、振動発電によって発電を行うものとなっている。
図1に示すように、発電部70は、例えば線路内あるいは線路近傍等に設置され、線路を介して伝わる列車の振動によって蓄電するシステムとなっている。停止位置表示装置50の電源部54が発電部70に接続されていることで、停止位置表示装置50は、発電部70から電力を供給され、無線通信部52等の構成要素に対して給電を可能となっている。つまり、停止位置表示装置50は、電力を外部から受けるための接続ケーブルを要することなく表示部60を設置すべき列車の停止位置あるいはその近傍に設置可能となっている。この場合、特に、信号送信を無線タイプとする場合に好適なものとなる。なお、発電部70を停止位置表示装置50の近傍に配置するようにすれば、電力のロスを極力抑えることができる。
【0029】
ここで、
図1等を参照して、運行管理装置(TCC)10による制御に基づく列車の通常の運行管理について簡単に説明する。既述のように、運行管理装置10は、運行関連情報に基づいて、駅における列車の運行管理のための各種制御動作を行う。例えば、
図1に示すように、駅には、例えばホームトラックTC内への進入の可否を表示する場内信号用として駅の入り口側に設けられた場内信号機SSや、駅からの出発を表示する出発信号用として分岐したレーンRO1,RO2にたいしてそれぞれ設けられた出発信号機SS1,SS2等の各種信号機があり、運行管理装置10は、これらに対して、動作を確定させるための各種信号を送信し、列車の運行管理を統括している。また、既述のように、駅構内へ列車に関する情報を提供するための各種情報を列車情報処理装置20に送信している。なお、これらの信号の送信処理の開始については、例えば適宜定められたホームトラックTCへの列車TRの進入の有無を基準とすることができる。
【0030】
これに対して、本実施形態の停止位置表示システム100では、上記のような運行管理装置10による列車の通常の運行管理以外の動作の1つとして、列車に対して停止位置を表示する、すなわち、運行の支援を行うものである。この停止位置表示システム100による動作においては、列車の通常の運行管理における各種情報を利用している。言い換えると停止位置表示システム100を構成するものとしての運行管理装置10や列車情報処理装置20は、もっぱら列車の停止位置の表示のために必要な情報を提供するものとしてのみ機能する。より具体的には、停止位置表示システム100による停止位置表示の動作では、運行管理装置10で管理される運行関連情報をもっぱら取得して利用するのみであり、運行管理装置10による列車の運行管理の動作には影響を及ぼさないものとなっている。なお、停止位置表示システム100は、運行管理装置10で管理される運行関連情報を利用することによって、列車に対して停止位置を表示する動作を列車の運行管理に合わせて適切なタイミングで行うことが可能となっている。
【0031】
以下、
図4のフローチャート等を参照して、停止位置表示システム100による停止位置表示の動作の一例の詳細について、主に停止位置表示システム100を構成する複数の停止位置表示装置50の動作を説明することにより説明する。なお、各停止位置表示装置50における停止位置表示の動作は同様であるので、ここでは、主として1つの停止位置表示装置50による動作について説明する。
【0032】
まず、停止位置表示装置50のうち、制御部51は、無線通信部52を介して運行管理装置10から取得可能である列車の進入に関する情報を確認し(ステップS1)、列車TRがホームトラックTCへの進入完了の情報を取得するまで、列車進入確認を続ける(ステップS2)。列車TRのホームトラックTCへの進入完了を確認すると(ステップS2:Yes)、制御部51は、無線送信装置30を介して運行管理装置10から運行関連情報に基づいて形成された表示すべき停止位置を確定する情報を含む信号を取得し(ステップS3)、取得した信号に基づいて、LED駆動部53を介して、複数の表示部60に駆動信号を送信し(ステップS4)、複数の表示部60のうち1つの表示部60を点灯させ、他の表示部60を点灯させないように制御する表示部点灯の処理を行う(ステップS5)。さらに、制御部51は、列車のホームトラック進入完了後、20秒が経過したか否かを確認し(ステップS6)、経過していなければ(ステップS6:No)、ステップS5の表示部点灯の処理を続け、20秒が経過したら(ステップS6:Yes)、点灯させていた1つの表示部60を消灯させ(ステップS7)、停止位置表示の動作を終了する。
【0033】
以上の動作処理のうち、例えばステップS2では、ホームトラックTCへの進入完了を契機として、表示部60の点灯動作のための処理を開始している。これは、運行管理装置10において、例えば列車のホームトラックTCへの進入が完了した段階で、列車編成や急行・各駅停車等の種別、入車番線等の列車情報である運行関連情報が揃い、この情報の出力が可能となり、これらの情報に基づく運行管理のための各種信号制御の開始がなされることに起因する。つまり、ステップS2において、ホームトラックTCへの進入完了を表示部60の点灯動作のための処理を開始する契機とすることで、表示すべき停止位置を確定可能な情報を含む運行関連情報に基づいて通常の運行管理の処理のタイミングに合わせて停止位置の表示動作を行うことができる。
【0034】
また、上記のうち、ステップS2及びステップS3における処理について、見方を変えると、列車TRがホームトラックTCに進入を完了したときに、無線送信装置30が運行関連情報に基づいて形成した信号を無線受信部である無線通信部52に送信していると言える。
【0035】
また、上記のうち、ステップS4及びステップS5では、1つの表示部60を点灯させ、他の表示部60を点灯させないように制御する、すなわち複数の表示部60のうち1つの表示部60を選択的に表示状態とするものとしているが、このような制御のための送信信号としては、例えば処理対象となる複数の表示部60を特定するために、予め対象となる複数の停止目標である複数の表示部60をそれぞれ特定するためのナンバー(チャンネルID)を付しておき、各ナンバーについてオンまたはオフの信号を送信するものが考えられる。すなわち、点灯させるべきものに該当する1つの表示部60にのみオン信号を送信し、他の表示部60にオフ信号を送信するという態様が可能である。また、予め対象となる複数の表示部60のうち点灯させるべきものに該当する1つの表示部60に対応するナンバーをオンにする旨の信号を送信するという態様も可能である。
【0036】
また、上記のうち、ステップS6及びステップS7において、列車のホームトラック進入完了後一定の時間(上記の例では20秒)が経過したら、点灯させていた表示部60を消灯する、すなわち非表示状態とするように制御している。これにより、発電部70として例示した振動発電によって発電を行う発電機を利用する場合において、停止位置の表示を適切に行いつつ、例えば表示に伴う消費電力を抑えることができる。
【0037】
なお、上記の動作を駅に設置された全ての停止位置表示装置50に対して行うが、
図1に示す例の場合、2つのレーンRO1,RO2のうちいずれか一方のみでの停止を許可するのであれば、図中の全ての停止位置表示装置50にそれぞれ設けられた全ての表示部60のうち、1つの列車に対して、対応する1つの表示部60のみが上記のような点灯及び消灯の動作をし、他の表示部60は、消灯したままとなるように制御されることで、運転士に停止位置を確実に報知することができる。
【0038】
なお、
図1のように、2つのレーンRO1,RO2が存在し、各レーンのそれぞれに対して列車の停止を許容する、すなわち2つの列車の同時停止を許容するような場合には、各レーンRO1,RO2ごとにおいて、複数の表示部60のうち1つの表示部60を点灯及び消灯動作させるものとなる。すなわち、第1のレーンRO1上に配置された第1停止位置表示装置50に設けられた複数の表示部60のうち、レーンRO1に停止する1つの列車に対して、対応する1つの表示部60が点灯及び消灯の動作をし、第2のレーンRO2上に配置された第2停止位置表示装置50に設けられた複数の表示部60のうち、レーンRO2に停止する1つの列車に対して、対応する1つの表示部60が点灯及び消灯の動作をする。
【0039】
以上のように、本実施形態では、停止位置表示システム100が、駅に進入する1つの列車TRに対して、列車TRがホームトラックTCに進入を完了した段階で複数の表示部60のうち当該列車の停止位置に対応する1つの表示部60のみを点灯させる、すなわち選択的な表示状態とするように点灯動作を行う。つまり、当該列車の運転士に対して視覚的な表示を行っている。以上により、運転手に停止位置が明示され、列車の運行が円滑になされるように運行の支援をすることができる。
【0040】
この発明は、上記の実施形態又は実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0041】
上記では、表示部60を三角形状であり、また、枕木TI上に配置するものとしているが、表示部60は、列車のTRの進行を妨げることなく、停止位置を運転士に対して視認可能とするものであれば、種々の形状とすることが可能であり、また、種々の箇所に配置することが可能である。また、列車TRの停止に際して目的の停止位置を示すように設置されていればよく、例えば線路に沿って移動可能なものであるとすることも可能である。
【0042】
また、上記では、表示部60における1つの発光部を単色(例えば白色)で点灯表示するものとしているが、発光部の色を変化させることも可能である。この場合、例えば、信号示す赤、青、黄以外の色(例えばオレンジ)で点灯させておき、列車が停止位置に近づくに従って白色に変化していくようにするといった態様も考えられる。また、列車が表示部60に近づくに従って運転士が表示部60を見る角度が変化することを利用して、例えば発光部60aの手前にレンチキュラーレンズを配置すること等により、表示部60の見え方が変化するようにしてもよい。
【0043】
また、上記では、表示部60については、LED光源を用いているが、他の光源を利用することも可能であり、また、点灯・消灯以外の方法によって視覚的な表示を行うものとしてもよい。例えば、回転可能な物体を各表示部60に設け、停止位置に該当する表示部60のみを回転させるものとしてもよい。また、回転可能な物体とLED光源とを組み合わせてもよい。
【0044】
また、
図1の例示では、レーンROが、第1レーンRO1と第1レーンRO1とに分岐するものとしているが、分岐しない場合や分岐が3つ以上あるような場合であっても、複数の表示部を設けた際に、上記と同様の装置を設けて停止位置を表示することが可能である。
【0045】
また、上記では、例えばダイヤ情報を表示させる列車運行表示装置として機能する列車情報処理装置20が運行管理装置10からの情報を取得しているため、この情報を利用することで、停止位置表示装置50が表示する停止位置を確定するための情報を得ている。しかし、表示する停止位置を確定するための情報を取得する態様は、上記に限らない。例えば、列車の運行管理に関する情報を取得可能な装置として、独自に列車情報取得のための装置を、ホームトラックTCの範囲に合わせて駅の中央から数百メートル離れた位置(例えば駅の中央から250メートルの位置)に設置しておき、当該装置から表示する停止位置を確定するための情報を取得するということも考えられる。なお、この態様の場合、当該装置が列車の運行管理に関する情報を有する運行管理装置に相当することになる。
【0046】
また、上記では、運行管理に関するシステムとしては、運行管理装置10や列車情報処理装置20によって構成されるものとしているが、運行管理システムについては、上記のほか種々の態様が可能であり、本実施形態においては、停止位置表示システム100が、運行管理システムから停止位置を確定するために必要な情報、すなわち複数の表示部60のうちどの表示部60を点灯させるべきかを確定可能にするための情報が取得できれば、どのような態様の運行管理システムであっても利用可能である。