特許第6583902号(P6583902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6583902-使い捨て入れ歯 図000002
  • 特許6583902-使い捨て入れ歯 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6583902
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】使い捨て入れ歯
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/007 20060101AFI20190919BHJP
   A61C 13/107 20060101ALI20190919BHJP
   A61C 13/267 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   A61C13/007
   A61C13/107
   A61C13/267
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-95645(P2019-95645)
(22)【出願日】2019年5月22日
【審査請求日】2019年5月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519065330
【氏名又は名称】株式会社スクリエ
(74)【代理人】
【識別番号】100134050
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 博孝
(72)【発明者】
【氏名】岡本 孝博
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−127665(JP,A)
【文献】 特開2008−168065(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3208731(JP,U)
【文献】 特開2003−116884(JP,A)
【文献】 特開2018−068628(JP,A)
【文献】 特開2018−068629(JP,A)
【文献】 特開2013−165839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/007 − 13/07
A61C 13/107
A61C 13/265 − 13/277
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスピース用の樹脂材料を用いてマウスピースを作るように土台部を形成した後、
当該土台部上に歯茎の色に近い色で着色した疑似歯茎部を載置し、
更に、当該疑似歯茎部上に歯の色に近い色で着色した疑似歯部を載置し、
前記土台部における前記疑似歯茎部よりも歯並び方向の少なくとも一方側に突出した突出部に、噛み合わせを確認しながら既存の歯の歯合面が露出できる露出穴を形成することによって、当該露出穴の周りに輪状に残存するリング部を形成する
ことを特徴とする使い捨て入れ歯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入れ歯に関し、特に短期間の使用を想定した使い捨ての入れ歯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、欠損した歯を補充する方法として、入れ歯(総入れ歯、部分入れ歯)、ブリッジ、インプラントなど様々な手法が用いられている。その中でも「入れ歯」は最もポピュラーな方法として定着している(非特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら最もポピュラーな「入れ歯」であっても、その作成には完成までに何度も通院する必要があり、(保険が適用されたとしても)相当程度に高価である。更にメンテナンスも必要となるが、簡便な修理が難しくメンテナンスコストも高価となる傾向にある。
【0004】
また、入れ歯の安定性を向上させつつ、金属部分が目立たないような種々の工夫も多数行われているが(特許文献1を参照)、そういった工夫がなされた入れ歯になればなる程、より高価となり容易に作成することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−159070号公報
【非特許文献1】ぶじさわ歯科クリニック入れ歯のページ(http://www.kawaguchi-shika.com/denture/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来からの入れ歯(総入れ歯、部分入れ歯)、ブリッジ、インプラント等は、ある程度の長期間に渡って使用することを前提に制作されたものである。それ故に制作には慎重を期すことから、複数回の通院が必要となったり、作成コストやメンテナンスコストが高くなるというデメリットが生じている。
【0007】
また、長期間使用する事による慣れと対局したデメリットも考えられる。慢性疼痛への慣れ、慢性化した義歯性潰瘍。予測される通院困難による不適合のままの使用。自己メンテナンスによる汚染および口腔カンジダ症を始めとする感染症などがその一例である。
【0008】
そこで本発明は、こういった問題点を解決するべくなされたものであって、頻繁な通院を要することなく容易且つ低コストに作成でき、審美的にも優れた入れ歯を提供する事をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するべく、本願発明は、マウスピース用の樹脂材料で形成された土台部と、当該土台部上に載置され、歯茎の色に近い色で着色した疑似歯茎部と、当該疑似歯茎部上に載置され、歯の色に近い色で着色した疑似歯部と、を備え、前記土台部は、前記疑似歯茎部よりも歯並び方向の少なくとも一方側に突出した突出部を有し、当該突出部には、既存の歯の歯合面が露出できる露出穴が形成されると共に、当該露出穴の周りに輪状に残存するリング部が既存の歯の歯合面の周りを取り囲んで位置決め固定されることを特徴とする。
【0010】
発明者は、根本的な発想の転換によって、恰も使い捨てコンタクトレンズのように、短期間の使用を前提とすれば、より簡単且つ低コストで入れ歯を作成できるという着想を得たのである。具体的には、マウスピースを作成するための材料を用いて入れ歯の土台を作り、その土台の上に疑似歯茎部や疑似歯部を載せ、欠損した歯を補充すると共に、隣接して残存する歯に、土台となっているマウスピース材料で輪を作って引っ掛けるようにして固定するのである。更に既存の歯の歯合面は露出しているので、咀嚼等の際の違和感も少なく、「噛み応え」にも影響を与え難い。
【0011】
土台部はマウスピースと同じ手法で作成できるため、短時間且つ低コストで作ることができる。その上に、形状やサイズを調整しつつ疑似歯茎部や疑似歯部を載置し、隣接して残存する歯の歯合面が露出できる露出穴を形成すれば、本発明にかかる使い捨て入れ歯が完成する。よって、即日中に完成させることも可能であり、低コストでの作成が可能となる。特に既存の歯の歯合面を露出させる露出穴は、土台部を形成した後に行えばよいため土台部の作成が簡単で済み、短時間且つ低コストで作成することに寄与している。
【0012】
また、前記土台部を、透明材料で構成することが望ましい。
【0013】
このように構成すれば、入れ歯の存在を目立ち難くさせることができ、審美的に優れた使い捨て入れ歯となる。
【0014】
また、突出部を、前記疑似歯茎部よりも歯並び方向両側に設け、その両方に露出穴を形成してもよい。
【0015】
このように構成すれば、より使い捨て入れ歯の安定性が増し、装着感も向上する。
【0016】
また、疑似歯茎部と前記疑似歯部とは同じ材料で一体成形すると共に、色だけを塗り分けて構成してもよい。
【0017】
このように構成すれば、より一層の低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明を適用することで、頻繁な通院を要することなく容易且つ低コストに作成でき、審美的にも優れた入れ歯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態の一例を示す使い捨て入れ歯と、装着する歯の関係を示した概略構成図である。
図2図1の矢視II-II線に沿う断面図である。
図3】使い捨て入れ歯の一例を示す実物写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例である使い捨て入れ歯100について説明を加える。なお、図面理解容易の為、各部の大きさや寸法を誇張して表現している部分があり、実際の製品と必ずしも一致しない部分があることを付記しておく。また各図面は符号の向きに見るものとし、当該向きを基本に上下左右、手前、奥と表現する。
【0021】
〈使い捨て入れ歯の構成〉
図1に示しているように、本発明の実施形態の一例として示す使い捨て入れ歯100は、マウスピース用の樹脂材料で形成された土台部101(102、103)と、当該土台部101上に載置され、歯茎の色に近い色で着色した疑似歯茎部106と、当該疑似歯茎部106上に載置され、歯の色に近い色で着色した疑似歯部108と、を備える。
【0022】
土台部101は、疑似歯茎部106よりも歯並び方向両側に突出した突出部102、103を有し、当該突出部102、103には、それぞれ既存の歯10、12の歯合面10a、12aが露出できる露出穴102a、103aが形成されている。また、この露出穴102a、103aの周り(上下の歯が接触しない部位)に輪状に残存するリング部102b、103bは、既存の歯10、12の歯合面10a、12aの周りを取り囲み、当該使い捨て入れ歯100を位置決め固定する構造である。特に本発明を適用した土台101は、マウスピース用材料で作られており、そこに柔軟性、弾力性のある素材を用いれば、このリング部102a、102bが既存の歯10、12を弾力によって縛るような効果も発揮され得る。
【0023】
〈使い捨て入れ歯の造り方〉
【0024】
最初に、歯の必要部分の型を取り、当該型を用いて、土台部102をプレス成形等により作成する。
【0025】
続いて土台部102における歯の欠損相当部分に、疑似歯茎部106及び疑似歯部108を順番に載置固定していく。なおこの載置固定は、お互いの部材に凹凸を形成して圧着固定するような手法でもよいし、場合によっては接着材など利用して固定する方法であってもよい。もちろんこの時点でも、必要となる位置やサイズを調整しながら行う。
【0026】
最後に、既存の歯10、12の歯合面10a、12aを露出させるための露出穴102a、103aを実際に装着し噛み合せ状況を確認しながら開ける作業を行う。
【0027】
基本的には、この3つのステップを経て、使い捨て入れ歯100は完成する。
【0028】
使い捨て入れ歯100を装着する際は、当該使い捨て入れ歯100を相当位置に置いて軽く数回噛む(圧接する)だけで完了する。注意すべき点としては、既存の歯10、12の歯合面10a、12aが、それぞれ突出部102、103に形成されている露出穴102a、103aの位置と合っており、正確に歯合面10a、12aが露出しているかを確認する必要がある。位置が正確に合っていない場合はリング部102b、103bを噛むことに繋がり、リング部102b、103bの耐久性を著しく低下させてしまうことになってしまう。
【0029】
上述の通り、本願発明は、マウスピース用の樹脂材料で形成された土台部101と、当該土台部101上に載置され、歯茎の色に近い色で着色した疑似歯茎部106と、当該疑似歯茎部106上に載置され、歯の色に近い色で着色した疑似歯部108と、を備え、土台部101は、疑似歯茎部106よりも歯並び方向の少なくとも一方側に突出した突出部102、103を有し、この突出部102、103には、既存の歯10、12の歯合面10a、12aが露出できる露出穴102a、103aが形成されると共に、露出穴102a、103aの周りに輪状に残存するリング部102b、103bが既存の歯10、12の歯合面10a、12aの周りを取り囲んで位置決め固定される構造であった。
【0030】
土台部101はマウスピースと同じ手法で作成できるため、短時間且つ低コストで作ることができる。その上に、形状やサイズを調整しつつ疑似歯茎部106や疑似歯部108を載置し、隣接して残存する歯10、12の歯合面10a、12aが露出できる露出穴102a、103aを形成すれば、本発明にかかる使い捨て入れ歯100が完成する。よって、即日中に完成させることも可能であり、低コストでの作成が可能となる。特に既存の歯10、12の歯合面10a、12aを露出させる露出穴102a、103aは、土台部101を形成した後に行えばよいため土台部101自体の作成が簡単で済み、短時間且つ低コストで作成することに大きく寄与している。
【0031】
また土台部101を、透明材料で構成すれば、入れ歯の存在を目立ち難くさせることができ、審美的に優れた使い捨て入れ歯となる。
【0032】
また、突出部102、103を、疑似歯茎部よりも歯並び方向両側に設けているので、より使い捨て入れ歯100の安定性が増し、装着感も向上する。
【0033】
また、疑似歯茎部106と疑似歯部108とを同じ材料で一体成形すると共に、色だけを塗り分けて構成すれば、より一層の低コスト化を図ることができる。
【0034】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において示している、「既存の歯」とは、人体にもともと備わっている自然の歯が該当することは勿論であるがこれに限らず、例えばインプラント等によって人体に固定されている疑似歯であってもよい、要するに人体側に強固に固定されている構造物であればよく、自然の歯だけに限定されるものではない。
【0035】
また、土台部101、疑似歯茎部106及び疑似歯部108を例えば3Dプリンタ技術を用いて製造することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
8・・・歯茎
10、12・・・既存の歯
100・・・使い捨て入れ歯
101・・・土台部
102、103・・・突出部
102a、103a・・・露出穴
102b、103b・・・リング部
106・・・疑似歯茎部
108・・・疑似歯部

【要約】      (修正有)
【課題】頻繁な通院を要することなく容易且つ低コストに作成でき、審美的にも優れた入れ歯を提供する。
【解決手段】マウスピース用の樹脂材料で形成された土台部101と、当該土台部上に載置され、歯茎の色に近い色で着色した疑似歯茎部106と、当該疑似歯茎部上に載置され、歯の色に近い色で着色した疑似歯部108と、を備え、土台部は、疑似歯茎部よりも歯並び方向の少なくとも一方側に突出した突出部102、103を有し、この突出部には、既存の歯10、12の歯合面10a、12aが露出できる露出穴102a、103aが形成されると共に、露出穴の周りに輪状に残存するリング部102b、103bが既存の歯の歯合面の周りを取り囲んで位置決め固定する構造で入れ歯を構成する。
【選択図】図1
図1
図2
図3