(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コイルに並列に接続され、前記熱電素子を冷却に用いる場合にオフし前記熱電素子を温熱に用いる場合にオンする第1スイッチを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の熱電素子駆動装置。
【背景技術】
【0002】
熱電素子に電流を流した時に生じる熱伝送・発熱吸熱現象であるペルチェ効果やトムソン効果を利用して、部品などを静かに冷却又は温熱、又は冷却及び温熱の両方を行うことができる温度制御装置が用いられている。
【0003】
熱電素子を用いた温度制御装置は、構造も簡単で局所的に冷却と温熱とが行えるので、乗用車の狭い室内で使用される小型冷却温熱庫や、パーソナルコンピュータ等のCPU(中央処理装置)や天体望遠鏡用撮像素子などの電子部品や、手術中の局所部位の冷却に用いられている。
【0004】
さらに、冷媒を循環させる冷蔵庫や恒温槽に対して、動作時に熱電素子自体から音が発生しないため、静穏性が重視される高級ホテルの室内冷却温熱庫にも用いられている。また、熱電素子は、環境汚染物質の排出も抑えられるため、地球環境に優しい素子として注目されている。
【0005】
ペルチェ効果においては、熱電素子に流す電流の平均値に比例した熱の伝送が得られる。これらの装置における熱電素子は、通常、駆動回路部分の発熱を抑えると共に正確に制御可能なPWM(パルス幅変調)やPDM(パルス密度変調)などにより制御されたパルス電流により駆動されている。
【0006】
通常、熱電素子にはアンペアオーダの大きな電流を流す必要があるので、駆動回路部分の発熱を抑えるべくパルス電流により駆動されている。
【0007】
なお、従来の技術として、例えば、特許文献1〜3に記載された技術が知られている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の熱電素子駆動装置を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1に係る熱電素子駆動装置の回路構成図である。
図1において、直流電源Vccの正極にはコイルLの一端とペルチェ素子PLの一端とコンデンサCの一端とが接続されている。ペルチェ素子PLの両端にはコンデンサCが接続されている。
【0016】
ペルチェ素子PLは、熱電素子であり、この熱電素子は、異種金属やP型とN型の半導体を接合して構成され、電流に応じて熱量を移送するペルチェ効果と熱エネルギーを電気エネルギーに変換するゼーベック効果を生じる。上記の接合部を熱伝導性の良好なセラミックスなどを介して冷却・温熱対象物に密着せさることによって熱移送効率を高めている。
【0017】
コイルLの他端にはスイッチSWの一端が接続され、電子的に制御可能なスイッチSWの他端及び直流電源Vccの負極は接地されている。また、コイルLの他端には例えば高速動作可能なショットキーバリアダイオードや高速ダイオードからなる還流ダイオードDのアノードが接続され、還流ダイオードDのカソードにはペルチェ素子PLの他端が接続されている。
【0018】
スイッチSWは、ペルチェ素子PLを駆動するMOSFET或いはIGBT、バイポーラトランジスタなどの電子スイッチ素子からなる駆動素子を構成し、PWM信号などのパルス制御信号により所定の周期でオン/オフすることによりペルチェ素子PLを駆動する。図において、スイッチSWの他端と直流電源Vccの負極は接地されているが、動作上は必ずしも接地する必要がないことは言うまでもない。また、直流電源Vccと還流ダイオードDの極性を共に反転して良いことも言うまでもない。
【0019】
次に、このように構成された実施例1に係る熱電素子駆動装置の動作を
図2に示す各部の電流波形を参照しながら説明する。
図2において、ILはコイルLに流れる電流、IswはスイッチSWに流れる電流、Ipはペルチェ素子PLに流れる電流、IcはコンデンサCに流れる電流を示している。
【0020】
まず、時刻t0において、PWM信号によりスイッチSWをオンすると、直流電源VccからコイルLに電流ILが流れるとともに還流ダイオードDは逆バイアスとなって遮断され、コンデンサCからの放電電流Icがペルチェ素子PLに流れる。そして、時刻t0〜t1において、電流ILは増加し、コンデンサCは電流Icにより放電していく。この時、コンデンサCの容量を十分に大きくしておけば、コンデンサCの電圧変化を抑えることができ、ペルチェ素子PLに流れる電流をほぼ一定値に維持した直流電流にすることができる。
【0021】
次に、時刻t1において、PWM信号によりスイッチSWをオフすると、コイルLの電磁エネルギーが放出されてコンデンサCが充電されることによって、ペルチェ素子PLに流れている直流電流Ipの減少が抑えられてほぼ一定値に維持される。また、コイルLからの電流ILは主にコンデンサCに流れるので、ペルチェ素子PLには略一定の直流電流Ipを流すことができる。
【0022】
即ち、ペルチェ素子PLにコンデンサCを並列に接続したり、直列にコイルLを接続することによって、ペルチェ素子PLの駆動電流の直流成分のみを残して交流成分を低減することによって実効値を抑制して熱電素子自体の発熱を低減することができる。また、ペルチェ素子PLにコンデンサCを並列に接続することによって、従来の簡単な制御回路を用いてスイッチSWをパルス信号によって制御してペルチェ素子PLの平均電流を正確に調節することができる。
【0023】
また、スイッチSWの他端及び直流電源Vccの負極は接地されているので、安定にスイッチSWをパルス制御することができる。さらに、直流電源Vccとペルチェ素子PL、還流ダイオードD、スイッチSWを構成する駆動素子の極性を反転した場合においても、直流電源Vccの正極も交流的には安定な接地点と見なすことができるので、同様な安定性が得られることは言及するまでもない。
【0024】
図3は、本発明の実施例1に係る熱電素子駆動装置の変形例の回路構成図である。
図3に示す変形例に係る熱電素子駆動装置は、
図1に示す熱電素子駆動装置の直流電源Vccに代えて、交流電源VacとダイオードD1〜D4からなる全波整流回路とを用いたことを特徴とする。全波整流回路は整流回路であれば半波整流回路等に置き換え可能であることは言うまでもない。
【0025】
ダイオードD1のアノードは交流電源Vacの一端とダイオードD4のカソードに接続され、ダイオードD1のカソードはダイオードD3のカソードとコイルLの一端に接続されている。ダイオードD2のアノードはスイッチSWの一端とダイオードD4のアノードに接続されている。ダイオードD2のカソードは交流電源Vacの他端とダイオードD3のアノードに接続されている。
【0026】
このように構成された熱電素子駆動装置によれば、交流電源Vacの交流電圧をダイオードD1〜D4により全波整流して整流電圧をコイルLとスイッチSWとの直列回路に供給する。コイルL、ペルチェ素子PL、コンデンサC、還流ダイオードDの動作は、
図2に示すそれらの動作と同様である。
【0027】
本実施例においては、交流電源Vacの交流電圧が0V付近まで下がったタイミングにおいても、コンデンサCの充電電圧からの影響を受けることなくコイルLに交流電源Vacの整流電圧を加えて整流電圧振幅に追従した入力電流とペルチェ素子駆動電流を発生させることができるので、回路の力率を大幅に向上することができる。また、従来の直流安定化電源回路を介して交流電源を使用する熱電素子駆動装置においては、交流電源電流が一般に平滑コンデンサの充電タイミング時のみに集中して流れていた。しかし、本実施例においては常に電源電圧にほぼ比例した波形によって流すことができるので、入力電流の高調波成分を大きく低減して熱電素子駆動装置から発生する高周波ノイズも大幅に抑制することができる。さらに直流安定化電源回路を用いずに交流電源から直接に熱電素子を駆動することができるので、電力効率が高く小形で安価な熱電素子駆動装置が提供できる。
【実施例2】
【0028】
図4は、本発明の実施例2に係る熱電素子駆動装置の回路構成図である。
図4において、直流電源Vccの正極にはペルチェ素子PLの一端とコンデンサCの一端と還流ダイオードDのカソードとが接続されている。ペルチェ素子PLの両端にはコンデンサCが接続されている。
【0029】
ペルチェ素子PLの他端にはコイルLの一端が接続され、コイルLの他端には還流ダイオードDのアノードとスイッチSWの一端とが接続されている。スイッチSWの他端及び直流電源Vccの負極は、接地されている。
【0030】
このように構成された実施例2に係る熱電素子駆動装置によれば、PWM信号によりスイッチSWがオンすると、直流電源Vccから直列に接続されたペルチェ素子PLを介してコイルLに電流が流れるとともに、コンデンサCにも電流が流れる。
【0031】
次に、PWM信号によりスイッチSWがオフすると、並列接続されたコンデンサCに変動する電流成分はバイパスされてコンデンサCからは直流電圧が供給されるので、ペルチェ素子PLには一定値の直流電流が流れる。また、この時、コイルLからは還流ダイオードDを介してコンデンサCとペルチェ素子PLの並列回路に電流が流れて電磁エネルギーが放出されている。
【0032】
ここで、素子自体に時間的に連続値を示す電流を流す特性をあるコイルLがペルチェ素子PLに常に直列接続されている。従って、コンデンサCにはペルチェ素子PLへの印加電圧を平坦化して一定の直流電流を流す作用があるものの、コンデンサCを削除してペルチェ素子PLに並列接続しなくてもコイルLのインダクタンス値を大きく設定することによって、ペルチェ素子PLにほぼ一定の直流電流を流すことができる。
【0033】
ペルチェ素子PLに直列にコイルLを接続することで、精度よく平均値が制御されたパルス駆動電流をペルチェ素子PLに流すことができ、ペルチェ素子PL及びスイッチSWの消費電力を低減することができる。
【実施例3】
【0034】
本実施例による熱電素子駆動装置においては、対象物の冷却と温熱との両方を行うことができる。
図5は、本発明の実施例3に係る熱電素子駆動装置の回路構成図である。
図5に示す実施例3に係る熱電素子駆動装置は、
図4に示す実施例2に係る熱電素子駆動装置に対して、さらに、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4を設け、ペルチェ素子PLを温熱に用いる場合にはペルチェ素子PLにコイルLを直列接続していないことを特徴とする。第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4が手動スイッチによって構成されていても、電子制御可能なスイッチで構成されていても構わない。
【0035】
第1スイッチSW1は、コンデンサCに直列に接続され、ペルチェ素子PLを冷却に用いる場合にはオンし、ペルチェ素子PLを温熱に用いる場合にはオフする。
図4に示した実施例と同様にコンデンサCは削除することもできる。
【0036】
第2スイッチSW2は、コイルLに並列に接続され、ペルチェ素子PLを冷却に用いる場合にオフし、ペルチェ素子PLを温熱に用いる場合にオンする。
【0037】
第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4は、本発明の切替部に対応しており、ペルチェ素子PLを冷却に用いる場合に流す電流方向に対して、ペルチェ素子PLを温熱に用いる場合に流す電流方向を反転するスイッチである。
【0038】
第3スイッチSW3は、共通端子a1、冷却切替端子b1、温熱切替端子c1を有し、ペルチェ素子PLを冷却に用いる場合には、冷却切替端子b1に切り替えられ、ペルチェ素子PLを温熱に用いる場合には、温熱切替端子c1に切り替えられる。
【0039】
共通端子a1は、ペルチェ素子PLの一端に接続され、冷却切替端子b1は、直流電源Vccの正極及び第1スイッチSW1の一端に接続されている。温熱切替端子c1は、スイッチSWの一端とコイルLの他端とに接続されている。
【0040】
第4スイッチSW4は、共通端子a2、冷却切替端子b2、温熱切替端子c2を有し、ペルチェ素子PLを冷却に用いる場合には、冷却切替端子b2に切り替えられ、ペルチェ素子PLを温熱に用いる場合には、温熱切替端子c2に切り替えられる。
【0041】
共通端子a2は、ペルチェ素子PLの他端に接続され、冷却切替端子b2は、コイルLの一端と第2スイッチSW2の一端とコンデンサCの一端に接続されている。温熱切替端子c2は、直流電源Vccの正極に接続されている。
【0042】
このように構成された実施例3に係る熱電素子駆動装置の動作を
図5を参照しながら説明する。スイッチSWは電子的にオン・オフ制御されている。
【0043】
まず、ペルチェ素子PLを対象物の冷却に用いる場合には、第1スイッチSW1をオンし、第2スイッチSW2をオフし、第3スイッチSW3を冷却切替端子b1に切り替え、第4スイッチSW4を冷却切替端子b2に切り替える。スイッチSWがオンの時にはコイルLがペルチェ素子PLに直列接続されている。
【0044】
すると、ペルチェ素子PLに並列にコンデンサCが接続され、このとき、第3スイッチSW3、ペルチェ素子PL、第4スイッチSW4を介してコイルLから電流がペルチェ素子PLに流れ冷却動作が継続するとともに、コンデンサCにも電流が流れる。即ち、対象物を冷却する場合には、ペルチェ素子PLの駆動電流を平坦化して実効値を抑制して素子自体の消費電力を低減し、冷却効果を向上させることができる。第1スイッチSW1を介してコンデンサCをペルチェ素子PLに並列接続することで駆動電流の平坦性は向上できるが、コイルLのインダクタンス値を十分に大きくすることで上記の通りコンデンサCは削除することもできる。
【0045】
次に、ペルチェ素子PLを対象物の温熱に用いる場合には、第1スイッチSW1をオフしてコンデンサCを非接続とし、第2スイッチSW2をオンしてコイルLの両端を短絡してコイルLに電流が流れないようにする。また、第3スイッチSW3を温熱切替端子c1に切り替え、第4スイッチSW4を温熱切替端子c2に切り替える。
【0046】
すると、ペルチェ素子PLからコンデンサCが切り離される。このとき、直流電源Vccから第4スイッチSW4、ペルチェ素子PL、第3スイッチSW3を介してスイッチSWに電流が流れてペルチェ素子PLが温熱動作をする。即ち、対象物を温熱する場合には、ペルチェ素子PLの駆動電流の凹凸を大きくして実効値を増加させ素子自体の発熱を低減せず増やすことで温熱効率を向上することができる。
【実施例4】
【0047】
図6は、本発明の実施例4に係る熱電素子駆動装置の回路構成図である。
図6に示す実施例4に係る熱電素子駆動装置は、
図5に示す実施例3に係る熱電素子駆動装置に対して、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2を削除したことを特徴とする。
【0048】
このように構成された実施例4に係る熱電素子駆動装置の動作を
図6を参照しながら説明する。
【0049】
まず、ペルチェ素子PLを対象物の冷却に用いる場合には、第3スイッチSW3を冷却切替端子b1に切り替え、第4スイッチSW4を冷却切替端子b2に切り替える。
【0050】
すると、ペルチェ素子PLに直列にコイルLが接続される。このとき、直流電源Vccから第3スイッチSW3、ペルチェ素子PL、第4スイッチSW4を介してコイルLから平坦化された駆動電流が流れてペルチェ素子PLが冷却動作する。即ち、対象物を冷却する場合には、ペルチェ素子PLの駆動電流を平坦化して実効値を抑制して素子自体の消費電力を低減し、冷却効果を向上させることができる。
【0051】
次に、ペルチェ素子PLを対象物の温熱に用いる場合には、第3スイッチSW3を温熱切替端子c1に切り替え、第4スイッチSW4を温熱切替端子c2に切り替える。
【0052】
すると、ペルチェ素子PLからコイルLが切り離される。このとき、直流電源Vccから第4スイッチSW4、ペルチェ素子PL、第3スイッチSW3を介してスイッチSWによりパルス制御された駆動電流が流れてペルチェ素子PLが温熱動作する。即ち、対象物を温熱する場合には、ペルチェ素子PLの駆動電流の凹凸を大きくして実効値を増加させ素子自体の発熱を増やすことで効率を向上することができる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施例1乃至4に係る熱電素子駆動装置に限定されるものではない。
図5に示す実施例3に係る熱電素子駆動装置、
図6に示す実施例4に係る熱電素子駆動装置においては、
図4に示す実施例2に係る熱電素子駆動装置に対して、スイッチSW1〜SW4を設けることにより、ペルチェ素子PLを冷却に用いる場合にコイルLを直列接続し、ペルチェ素子PLを温熱に用いる場合にコイルLの影響を排除していた。
図6に示す実施例においては、
図5に示した実施例に対してスイッチ数を削減することにより、より低コストに実現されている。
【0054】
例えば、
図1に示す実施例1に係る熱電素子駆動装置に対して、スイッチSW1〜SW4に相当するスイッチを設けることにより、ペルチェ素子PLを冷却に用いる場合にペルチェ素子PLにコンデンサCを並列接続しペルチェ素子PLを温熱に用いる場合にペルチェ素子PLからコンデンサCを切り離しても良い。具体的な実施例を
図7に示す。
【0055】
また、
図4に示した実施例においても、ペルチェ素子PLを冷却に用いる場合にコイルLを接続し、ペルチェ素子PLを温熱に用いる場合にコイルLを短絡して、還流ダイオードDとコンデンサCを削除しても良い。
【0056】
本発明の実施例においては、直流電源Vccとペルチェ素子PL、還流ダイオードD、スイッチSWを構成する駆動素子の極性を反転した場合においても、同様の効果が得られることは言うまでもない。