【文献】
Shang WU et al.,Biopolymer-metal complex wool-Pd as a highly active heterogeneous catalyst for Heck reaction in aqueous media,Tetrahedron,Elsevier,2011年,Volume 67,pp. 250-256
【文献】
MA Hengchang et al.,Nanoparticulate palladium catalyst stabilized by supported on feather keratin for Suzuki coupling reaction,Chinese Journal of Catalysis,2013年,Volume 34,pp. 578-584
【文献】
Fang-Ying Li et al.,Karatin films from chicken feathers for controlled drug release,Journal of Controlled Release,2011年,Volume 152 supplement 1,pp. e92-e93
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る動物組織加工物、動物組織加工物の製造方法、金属ナノ粒子触媒及び金属ナノ粒子触媒の製造方法の実施形態について説明する。
【0031】
[実施形態1]
実施形態1においては、有機化学反応の触媒として使用する動物組織加工物及び当該動物組織加工物を製造するための動物組織加工物の製造方法について説明する。
【0032】
1.動物組織加工物について
実施形態1に係る動物組織加工物は、ケラチンを主成分とする動物組織から、水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除くことによって得られる動物組織加工物であって、有機化学反応の触媒として使用するものである。
「水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除く」ための好ましい形態は、後述する「2.動物組織加工物の製造方法について」で記載する。
【0033】
実施形態1に係る動物組織加工物は、後述する実験例1に示すように、第1級アミンからのイミン(第2級イミン)の合成に好適に用いることができる。また、例えば、アルコールからのケトンの合成、3成分(アルデヒド、アルキン及びアミン)のカップリングによるプロパルギルアミンの合成、アジ化物の1,3双極子付加環化反応による1,2,3トリアゾールの合成、ハロゲン化アリルのアミノ化によるアミンの合成等、他の用途にも用いることができる。
【0034】
本発明の動物組織加工物は、入手容易性及び取り扱いの容易さの観点から、ケラチンを主成分とする動物組織の中でも、毛状の動物組織から得られたものであることが好ましい。
具体的には、実施形態1に係る動物組織加工物は、人間の頭髪から得られたものである(詳しくは後述。)。
【0035】
実施形態1に係る動物組織加工物は、粉末状の形態を有する。本発明の動物組織加工物の細かさは用途によって適宜決定することができる。例えば、動物組織加工物の最大長さ(動物組織加工物が球状であれば直径、繊維状であれば繊維の長さ)は、0.1〜50μmとすることができる。
【0036】
2.動物組織加工物の製造方法について
実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法は、実施形態1に係る動物組織加工物を製造するための動物組織加工物の製造方法であって、細分物準備工程と、第1溶出工程と、第2溶出工程とをこの順序で含む。
実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法では、ケラチンを主成分とする動物組織(原料)として毛状のもの、具体的には人間の頭髪を用いる。
【0037】
細分物準備工程は、ケラチンを主成分とする動物組織を細分したものを準備する工程である。
本明細書において「細分」とは、切断や破砕等により対象物(動物組織)を細かくすることをいう。動物組織を細分する方法の具体例としては、刃物(例えば、ハサミ)や裁断機等による切断、各種ミル(例えば、ボールミル)やミキサーによる破砕及びメカニカルアロイング法による破砕を挙げることができる。
「細分物」とは、細分により細かくした動物組織である。
動物組織をどの程度まで細かくするかは、用途によって適宜決定することができる。例えば、動物組織の最大長さ(動物組織が球状であれば直径、繊維状であれば繊維の長さ)は、0.1〜50μmとすることができる。
【0038】
なお、実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法においては、細分の直後に、動物組織を水と有機溶媒との両方で洗浄する。洗浄に用いる有機溶媒としては、例えば、アセトン、ヘキサン、エーテル等、種々の有機溶媒を用いることができる。
【0039】
第1溶出工程は、主成分が有機溶媒である有機液に動物組織を浸す処理を行う工程である。有機液に動物組織を浸すことにより、有機液に溶出可能な成分を有機液に溶出させ、動物組織から取り除く。
本明細書における「有機液」とは、有機溶媒を主成分とする液体である。具体的には、単一の有機溶媒からなる単一有機溶媒、複数の溶媒からなる混合有機溶媒及び有機溶媒に非溶媒成分(例えば、溶出を促進する物質)を溶解させた有機溶液を挙げることができる。
「ある成分を主成分とする」とは、全体の重量のうち「ある成分」の重量が半分以上を占めることをいう。
【0040】
第1溶出工程では、非極性有機溶媒及び極性有機溶媒を含有する混合溶媒に動物組織を浸す処理を行う。
本明細書において「非極性有機溶媒」とは、非極性(無極性)の有機溶媒のことをいう。
本明細書において「極性有機溶媒」とは、極性を有する有機溶媒のことをいう。
非極性有機溶媒及び極性有機溶媒の種類や含有比率は、動物組織の種類や形態、温度、処理時間等、状況に応じて決定することができる。
【0041】
実施形態1においては、非極性有機溶媒であるクロロホルム2体積に対して極性有機溶媒であるメタノール1体積を混合して調製した混合溶媒を用いる。
なお、メタノールはプロトン性の有機溶媒である。
また、クロロホルム及びメタノールは、ともに沸点が70℃以下であり、比較的低沸点である。
本明細書においては、「比較的低沸点」とは、常圧における沸点が100℃以下であることをいう。なお、非極性有機溶媒及び極性有機溶媒の沸点は、70℃以下であることが一層好ましい。
【0042】
なお、本発明の動物組織加工物の製造方法においては、第1溶出工程では、動物組織ごと混合溶媒を撹拌することが好ましい。
また、本発明の動物組織加工物の製造方法においては、第1溶出工程では、混合溶媒に動物組織を12時間以上浸すことが好ましく、18時間以上浸すことが一層好ましい。
さらに、本発明の動物組織加工物の製造方法においては、第1溶出工程では、混合溶媒を30℃以上に加温することが好ましく、40℃以上に加温することが一層好ましい。
【0043】
実施形態1における第1溶出工程では、動物組織ごと混合溶媒を撹拌する。撹拌には、例えば、汎用のスターラーを用いることができる。
また、実施形態1における第1溶出工程では、混合溶媒に動物組織を24時間浸す。
さらに、実施形態1における第1溶出工程では、混合溶媒を50℃に加温する。
【0044】
第2溶出工程は、主成分が水である水系液に動物組織を浸す処理を行う工程である。水系液に動物組織を浸すことにより、水系液に溶出可能な成分を水系液に溶出させ、動物組織から取り除く。
本明細書における「水系液」とは、水を主成分とする液体である。具体的には、純粋な水、有機溶媒を含む水及び水に非溶媒成分(例えば、溶出を促進する物質)を溶解させた水溶液を挙げることができる。
第2溶出工程では、トリス塩酸、チオ尿素、尿素及び2−メルカプトエタノールを含有する水溶液に動物組織を浸す処理を行う。
【0045】
本発明の動物組織加工物の製造方法においては、水溶液は、濃度1〜50mM(一層好ましくは5〜25mM)のトリス塩酸、濃度0.5〜5.0M(一層好ましくは1.0〜2.6M)のチオ尿素、濃度1.0〜10.0M(一層好ましくは2.0〜5.0M)の尿素及び濃度1〜10wt%(一層好ましくは2〜5wt%)の2−メルカプトエタノール(2−ME)を含有することが好ましい。
実施形態1においては、濃度25mMのトリス塩酸、濃度2.0Mのチオ尿素、濃度5.0Mの尿素及び濃度5wt%の2−メルカプトエタノール(2−ME)を含有する水溶液を用いる。
【0046】
なお、本発明の動物組織加工物の製造方法においては、第2溶出工程では、動物組織ごと水溶液を撹拌することが好ましい。
また、本発明の動物組織加工物の製造方法においては、第2溶出工程では、水溶液に動物組織を1日以上浸すことが好ましく、2日以上浸すことが一層好ましい。
さらに、本発明の動物組織加工物の製造方法においては、第1溶出工程では、水溶液を30℃以上に加温することが好ましく、40℃以上に加温することが一層好ましい。
【0047】
なお、実施形態1における第2溶出工程では、動物組織ごと水溶液を撹拌する。撹拌には、例えば、汎用のスターラーを用いることができる。
また、実施形態1における第2溶出工程では、3日、水溶液に動物組織を浸す。
さらに、上記第2溶出工程では、水溶液を50℃に加温する。
【0048】
以下、実施形態1に係る動物組織加工物及び動物組織加工物の製造方法の効果を説明する。
【0049】
実施形態1に係る動物組織加工物は、ケラチンを主成分とする動物組織から、水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除くことによって得られる動物組織加工物であるため、後述する実験例1に示すように、反応を促進する能力を高くすることが可能となる。
【0050】
また、実施形態1に係る動物組織加工物によれば、後述する実験例1に示すように、生成物の選択性を高くすることが可能となる。
【0051】
また、実施形態1に係る動物組織加工物によれば、「ケラチンを主成分とする動物組織」という一般的な物質を材料として製造でき、かつ、製造に複雑な工程を必要としないため、製造コストを低くすることが可能となり、その結果、トータルコストを低くすることが可能となる。
また、実施形態1に係る動物組織加工物によれば、後述する実験例1に示すように、反応後の分離、回収及び再利用が容易であるため、この観点からもトータルコストを低くすることが可能となる。
【0052】
また、実施形態1に係る動物組織加工物によれば、もともと空気中で安定なケラチンを主成分とする動物組織から水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除いて得られるため、当然空気中で安定なものとすることが可能となる。
【0053】
また、実施形態1に係る動物組織加工物によれば、重金属や特殊な物質を材料として使用せず、かつ、反応後の回収及び再利用が容易であるため、環境負荷を低くすることが可能となる。
【0054】
つまり、実施形態1に係る動物組織加工物は、反応を促進する能力を高くすることが可能であること、生成物の選択性を高くすることが可能であること、トータルコストが低いこと、空気中でも安定であること、及び、環境負荷が低いことという条件を全て満たす触媒となる。
【0055】
実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法によれば、動物組織から水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除いて、実施形態1に係る動物組織加工物を製造することが可能となる。
【0056】
また、実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法によれば、細分の直後に、動物組織を水と有機溶媒との両方で洗浄するため、不純物やきわめて溶出が容易な成分を減らし、後の工程における溶出の効率を高くすることが可能となる。
【0057】
また、実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法によれば、細分物準備工程と、第1溶出工程と、第2溶出工程とをこの順序で含むため、細分物準備工程を行った後に第1溶出工程及び第2溶出工程を行うことで動物組織と溶媒との接触面積を大きくして、水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分の溶出を促進することが可能となる。
【0058】
また、実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法によれば、動物組織は、人間の頭髪であるため、理髪店等において大量に発生し、焼却処分等されている人間の頭髪を有効利用することで、製造コストを低くし、かつ、環境負荷も低くすることが可能となる。
【0059】
また、実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法によれば、第1溶出工程では、非極性有機溶媒及び極性有機溶媒を含有する混合溶媒に動物組織を浸す処理を行うため、有機溶媒に溶出可能な成分(特に脂肪や色素)を良好に取り除き、有用な動物組織加工物を製造することが可能となる。
【0060】
また、実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法によれば、極性有機溶媒(メタノール)は、プロトン性の有機溶媒であるため、有機溶媒に溶出可能な成分(特に脂肪や色素)を一層良好に取り除き、一層有用な動物組織加工物を製造することが可能となる。
【0061】
また、実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法によれば、非極性有機溶媒(クロロホルム)及び極性有機溶媒(メタノール)は、比較的低沸点であるため、有機溶媒の除去を容易なものとすることが可能となる。
【0062】
また、実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法によれば、第2溶出工程では、トリス塩酸、チオ尿素、尿素及び2−メルカプトエタノールを含有する水溶液に動物組織を浸す処理を行うため、水に溶出可能な成分(一部のタンパク質のように、変性、分解等により溶出可能とした成分を含む)を良好に取り除き、有用な動物組織加工物を製造することが可能となる。
【0063】
また、実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法によれば、水溶液は、濃度1〜50mMのトリス塩酸、濃度0.5〜5.0Mのチオ尿素、濃度1.0〜10.0Mの尿素及び濃度1〜10wt%の2−メルカプトエタノール(2−ME)を含有するため、水に溶出可能な成分を一層良好に取り除き、一層有用な動物組織加工物を製造することが可能となる。
【0064】
[実施形態2]
実施形態2においては、金属ナノ粒子触媒の構成要素である担体として使用する動物組織加工物、当該動物組織加工物を製造するための動物組織加工物の製造方法、金属ナノ粒子触媒、及び、当該金属ナノ粒子触媒を製造するための金属ナノ粒子触媒の製造方法について説明する。
【0065】
1.動物組織加工物について
実施形態2に係る動物組織加工物は、ケラチンを主成分とする動物組織から、水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除くことによって得られる動物組織加工物であって、金属ナノ粒子触媒の構成要素である担体として使用するものである。
実施形態2に係る動物組織加工物は、物質としては実施形態1に係る動物組織加工物と同様の構成及び性質を有するため、詳しい説明は省略する。
【0066】
2.動物組織加工物の製造方法について
実施形態2に係る動物組織加工物の製造方法は、実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法と同様であるため、説明は省略する。
【0067】
3.金属ナノ粒子触媒について
実施形態2に係る金属ナノ粒子触媒は、実施形態2に係る動物組織加工物と、動物組織加工物に担持されている金属ナノ粒子とを備える。
金属ナノ粒子触媒には、触媒能を有する任意の金属を用いることができる。代表例としては、金、銀、銅、ニッケル、ルテニウム及び白金を挙げることができる。
【0068】
実施形態2に係る金属ナノ粒子触媒は、後述する実験例2,3に示すように、アルコールの酸化、第1級アミンからのイミンの合成、アルコール及びアミンからのイミンの合成、アミンの酸化、アミンのエノン又はアクリロニトリルへの付加等に好適に用いることができる。また、実施形態2に係る金属ナノ粒子触媒は、例えば、アルコールからのケトンの合成、3成分(アルデヒド、アルキン及びアミン)のカップリングによるプロパルギルアミンの合成、アジ化物の1,3双極子付加環化反応による1,2,3トリアゾールの合成、ハロゲン化アリルのアミノ化によるアミンの合成等、他の用途にも用いることができる。
【0069】
金属ナノ粒子触媒は、粉末状の形態を有する。金属ナノ粒子触媒の細かさは用途によって適宜決定することができる。例えば、金属ナノ粒子触媒の最大長さ(金属ナノ粒子触媒が球状であれば直径、繊維状であれば繊維の長さ)は、0.1〜50μmとすることができる。
【0070】
4.金属ナノ粒子触媒の製造方法について
実施形態2に係る金属ナノ粒子触媒の製造方法は、実施形態2に係る金属ナノ粒子触媒を製造するための金属ナノ粒子触媒の製造方法であって、ケラチンを主成分とする動物組織から水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除くことによって得られる動物組織加工物(つまり、実施形態2に係る動物組織加工物)を準備する動物組織加工物準備工程と、実施形態2に係る動物組織加工物に金属ナノ粒子を担持する金属ナノ粒子担持工程を含む。
【0071】
実施形態2における動物組織加工物準備工程は、実施形態2に係る動物組織加工物の製造方法と同様であるため、説明は省略する。
【0072】
実施形態2における金属ナノ粒子担持工程では、金属ナノ粒子源として、所定の溶媒に可溶な金属塩を用いる。
上記金属ナノ粒子担持工程では、金属塩を所定の溶媒に溶解させて所定の溶液とし、所定の溶液に動物組織加工物を投入して所定の分散液とし、その後、所定の分散液中で還元処理を行って前記金属ナノ粒子を析出させることで、動物組織加工物に金属ナノ粒子を担持する。実施形態2においては、所定の溶媒は水である。また、還元処理では、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いる。
【0073】
以下、実施形態2に係る動物組織加工物、動物組織加工物の製造方法、金属ナノ粒子触媒及び金属ナノ粒子触媒の製造方法の効果を説明する。
【0074】
実施形態2に係る動物組織加工物によれば、ケラチンを主成分とする動物組織から、水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除くことによって得られる動物組織加工物であるため、後述する実験例2,3に示すように、金属ナノ粒子を担持して触媒としたときに反応を促進する能力を高くすることが可能となる。
【0075】
また、実施形態2に係る動物組織加工物によれば、後述する実験例2,3に示すように、金属ナノ粒子を担持して触媒としたときに生成物の選択性を高くすることが可能となる。
【0076】
また、実施形態2に係る動物組織加工物によれば、「ケラチンを主成分とする動物組織」という一般的な物質を材料として製造でき、かつ、製造に複雑な工程を必要としないため、製造コストを低くすることが可能となり、その結果、トータルコストを低くすることが可能となる。
【0077】
また、実施形態2に係る動物組織加工物によれば、後述する実験例2に示すように、金属ナノ粒子を担持して触媒としたときにも、反応後の分離、回収及び再利用が容易であるため、この観点からもトータルコストを低くすることが可能となる。
【0078】
また、実施形態2に係る動物組織加工物によれば、もともと空気中で安定なケラチンを主成分とする動物組織から水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除いて得られるため、当然空気中で安定なものとすることが可能となる。
【0079】
また、実施形態2に係る動物組織加工物によれば、重金属や特殊な物質を材料として使用せず、かつ、反応後の回収及び再利用が容易であるため、環境負荷を低くすることが可能となる。
【0080】
つまり、実施形態2に係る動物組織加工物は、本発明の動物組織加工物は、触媒としたときに反応を促進する能力を高くすることが可能であること、触媒としたときに生成物の選択性を高くすることが可能であること、トータルコストが低いこと、空気中でも安定であること、及び、環境負荷が低いことという条件を全て満たす担体となる。
【0081】
実施形態2に係る動物組織加工物の製造方法は、実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法と同様であるため、実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0082】
実施形態2に係る金属ナノ粒子触媒は、実施形態2に係る動物組織加工物を担体として用いているため、後述する実験例2,3に示すように、反応を促進する能力を高くすることが可能であること、生成物の選択性を高くすることが可能であること、反応後の分離、回収及び再利用が容易であることという条件を全て満たす触媒となる。
【0083】
実施形態2に係る金属ナノ粒子触媒の製造方法によれば、実施形態2に係る動物組織加工物を用いて金属ナノ粒子触媒を製造するため、有用な金属ナノ粒子触媒を製造することが可能となる。
【0084】
また、実施形態2に係る金属ナノ粒子触媒の製造方法によれば、金属ナノ粒子担持工程では、金属ナノ粒子源として、所定の溶媒に可溶な金属塩を用いるため、金属塩を所定の溶媒に溶解した後に還元処理を行うことにより、比較的容易に金属をナノ粒子化することが可能となる。
【0085】
また、実施形態2に係る金属ナノ粒子触媒の製造方法によれば、金属ナノ粒子担持工程では、金属塩を所定の溶媒に溶解させて所定の溶液とし、所定の溶液に動物組織加工物を投入して所定の分散液とし、その後、所定の分散液中で還元処理を行って金属ナノ粒子を析出させることで、動物組織加工物に金属ナノ粒子を担持するため、比較的容易に、金属をナノ粒子化し、かつ、動物組織加工物に担持することが可能となる。
【0086】
また、実施形態2に係る金属ナノ粒子触媒の製造方法によれば、所定の溶媒は、水であり、還元処理では、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いるため、安価な溶媒である水と一般的な還元試薬である水素化ホウ素ナトリウムとを用いて、比較的低コストかつ比較的容易に本発明の金属ナノ粒子触媒を製造することが可能となる。
【0087】
[実験例1]
実験例1においては、実験例1に係る動物組織加工物を実施形態1に係る動物組織加工物の製造方法に沿って実際に製造し、第1級アミンからイミンを合成する反応における触媒としての効果を確認した。
【0088】
まず、実験例1で用いた試薬と装置について説明する。
人間の毛髪は、日本国長野県上田市の理髪店から入手した。
実験例1で用いた全ての試薬は、シグマアルドリッチ社を通じて購入したものをそのまま用いた。また、実験例1で用いた全ての試薬は、和光純薬工業株式会社を通じて購入したものをそのまま用いた。
【0089】
ボールミルとしては、フリッチュ社の遊星型ボールミル クラシックラインP−7を用いた。
透過型電子顕微鏡(TEM)としては、日本電子株式会社(JEOL)のJEM−2100F TEMを用いた。加速電圧は120kVとした。
走査型電子顕微鏡(SEM−EDS)としては、日立製作所の3000H SEMを用いた。
X線光電子分光装置(XPS)としては、クラトス・アナリティカル リミテッドのKratos Axis−Ultra DLDを用いた。X線光電子分光法による測定においては、Mg Kα線を励起光源とした。
【0090】
核磁気共鳴分光計としては、Bruker社のAVANCE−400(400MHz分光計)を用いた。核磁気共鳴分光法による測定においては、テトラメチルシラン(TMS)を標準物質として添加した重クロロホルム(CDCl
3)を溶媒として用いた。
【0091】
ガスクロマトグラフィー装置として、島津製作所のShimazu GC−2010を用いた。ガスクロマトグラフィーに関しては、5%のジフェニル及び95%のジメチルシロキサンを充填したRestek−5 capillary column(0.32mm dia,60m in length)及びflame ionization detector(FID)を装着し、キャリアーガスとして窒素ガスを用いた。カラム温度は60℃から150℃までは10℃/分のペースで上昇させ、150℃から220℃までは40℃/分のペースで上昇させた。分析の間、FID及びインジェクションポートの温度は、それぞれ150℃及び250℃に保った。
【0092】
次に、実験例1に係る動物組織加工物の製造方法について説明する。
図1は、実験例1における動物組織及び動物組織加工物の写真である。
図1(a)は実験例1における動物組織(人間の頭髪)の写真であり、
図1(b)は切断した後の動物組織の写真であり、
図1(c)は実験例1に係る動物組織加工物の写真である。
実験例1に係る動物組織加工物の製造方法は、細分物準備工程と、第1溶出工程と、第2溶出工程とをこの順序で含む。
【0093】
(1)細分物準備工程
まず、ケラチンを主成分とする動物組織である人間の頭髪を500mg準備した(
図1(a)参照。)。次に、およそ0.2〜0.5cmの細かさになるように、ハサミを用いて頭髪を切断した(
図1(b)参照。)。その後、切断した頭髪をボールミルに投入して破砕した。ボールミルによる破砕時間は12〜20時間とし、回転速度は200〜400rpmとした。
上記のようにして粉末化した頭髪を蒸留水及びアセトンで洗浄し、続いて減圧乾燥を行った。
【0094】
(2)第1溶出工程
まず、前処理として粉末化した頭髪をエタノールで洗浄した。次に、クロロホルム2体積に対してメタノール1体積を混合して調製した混合溶媒に頭髪を浸す処理を、24時間、50℃で撹拌しながら行った。
【0095】
(3)第2溶出工程
まず、濃度25mMのトリス塩酸、濃度2.0Mのチオ尿素、濃度5.0Mの尿素及び濃度5wt%の2−メルカプトエタノール(2−ME)を含有するpH8.5の酸性水溶液15mLに、第1溶出工程で得られた頭髪を浸す処理を、3日、50℃で撹拌しながら行った。次に、加工された頭髪、つまり、動物組織加工物を濾過及び遠心分離で採取した。
【0096】
このようにして、実験例1に係る動物組織加工物を製造した(
図1(c)参照。)。
なお、本発明の発明者らは、人間の頭髪から得られた当該動物組織加工物を「e−HHP(extracted−Human Hair Powderの略)」と呼称している。
【0097】
次に、実験例1に係る動物組織加工物(e−HHP)について説明する。
まず、高分解能透過型電子顕微鏡を用いて、動物組織加工物の大きさ及び形態について分析を行った。
図2は、実験例1に係る動物組織加工物を透過型電子顕微鏡で撮影した写真である。
図2(a)〜(f)は、それぞれ撮影箇所又は倍率が異なる写真である。
図3は、実験例1に係る動物組織加工物を透過型電子顕微鏡で撮影した写真である。
図3(a),(b)は、撮影箇所が異なる写真である。
【0098】
その結果、動物組織加工物の形状は不規則であるが、おおよその動物組織加工物は繊維状又は球状の形状からなることが確認できた(
図2参照。)。
また、動物組織加工物には結晶性の性質を有する部分もあることが確認できた(
図3参照。)。
【0099】
次に、元素マッピングによる分析を行った。
図4は、実験例1に係る動物組織加工物を元素マッピング法で分析した結果の画像である。
図4(a)は炭素、
図4(b)は酸素、
図4(c)はアルミニウム、
図4(d)は硫黄、
図4(e)は鉄、
図4(f)はカルシウム、
図4(g)はケイ素に関する画像である。
【0100】
その結果、動物組織加工物は炭素、酸素、カリウム、ナトリウム、アルミニウム、硫黄、カルシウム、鉄及びケイ素を含有すること、中でも炭素及び酸素を多く含有することを確認できた(
図4参照。)。また、動物組織加工物に元素が均一に分布していることも確認できた。
【0101】
次に、エネルギー分散型X線分光器を備える走査型電子顕微鏡(SEM−EDS)で分析を行った。
図5は、実験例1に係る動物組織加工物を走査型電子顕微鏡で分析した結果を示す図である。
図5(a)は走査型電子顕微鏡で撮影した写真であり、
図5(b)はエネルギー分散型X線分光器で分析した結果を示すグラフである。なお、
図5(b)の縦軸はカウント数(単位:10
3個)を示し、横軸はX線のエネルギー(単位:keV)を示す。
【0102】
その結果、実験例1に係る動物組織加工物は、炭素、酸素、ナトリウム、アルミニウム、ケイ素、硫黄、カルシウム、パラジウム及び鉛を主な元素として含有することが判明した(
図5(b)参照。)。なお、分析結果から各元素の重量比率を求めた結果、炭素は53.77wt%、酸素は25.02wt%、ナトリウムは0.48wt%、アルミニウムは1.18wt%、ケイ素は5.87wt%、硫黄は3.72wt%、カルシウムは1.06wt%、パラジウムは3.21wt%、鉛は5.68wt%であった。
【0103】
走査型電子顕微鏡による観察においても、動物組織加工物は主に炭素及び酸素を含有することが確認できた。
また、多くの動物組織加工物は0.5μm〜5μm程度の大きさであることが確認できた(
図5(a)参照。)。観察できた中で最大の動物組織加工物は、繊維状の形状からなり、長さ10μm以下、直径2μm以下の大きさであった。
【0104】
次に、X線光電子分光装置による観察を行った。
図6,7は、実験例1に係る動物組織加工物をX線光電子分光装置で分析した結果のグラフである。
図6(a)は酸素及び炭素、
図6(b)は酸素、
図6(c)は炭素、
図6(d)はカルシウム、
図6(e)はアルミニウム、
図6(f)はカリウム、
図7(a)はナトリウム、
図7(b)は硫黄、
図7(c)は珪素、
図7(d)はジルコニウムに関するグラフである。なお、
図6及び
図7のグラフの縦軸は強度(単位:a.u.)を示し、横軸は結合エネルギー(単位:eV)を示す。
【0105】
その結果、やはり動物組織加工物は炭素及び酸素を主要な元素として含有し、その他の元素(ナトリウム、硫黄、鉄、カリウム等)を少量含有するということが確認できた。
【0106】
次に、実験例1に係る動物組織加工物を用いて第1級アミンからイミンを合成する反応について説明する。
【0107】
まず、実験例1に係る動物組織加工物を用いて第1級アミンからイミンを合成する反応について、好適な反応条件を求めるための予備実験を行った。反応物としては、フェニルメタンアミンを用いた。詳細は省略するが、溶媒、温度、反応時間、触媒(実験例1に係る動物組織加工物、e−HHP)の量等、反応条件を変えて多くの実験を行った結果、実験例1の反応においては、溶媒をトルエンとし、温度を100℃とし、反応時間を10時間とし、触媒の量を50mgとするのが好ましいことが判明した。
【0108】
次に、予備実験に基づく実験の基本条件について説明する。
まず、実験例1に係る動物組織加工物(e−HHP)50mg、反応物2.0mmol及びトルエン4mLの混合物を100℃、空気存在下で撹拌して混合した。反応の具合は定法によるTLCによりモニターした。反応終了後、動物組織加工物と生成物とを遠心分離した。その後、生成物及び未反応の反応物をガスクロマトグラフィー及び核磁気共鳴分光装置により分析した。また、選択性についても計算した。分離した動物組織加工物はジエチルエーテルで洗浄し、3時間、60℃で乾燥して再び実験に用いた。
【0109】
ガスクロマトグラフィーで得られた収率は、そのまま反応の収率とした(単位:%)。反応率(目的の生成物とは異なる生成物も含めた収率。単位:%)は、100%から反応物の残存量(単位:%)を差し引いたものとした。選択性(単位:%)は、100%から反応率と収率との差を差し引いたものとした。
【0110】
まず、反応物をフェニルメタンアミンとした場合、目的の生成物は(E)−N−ベンジリデン−1−フェニルメタンアミンとなる(以下の化学反応式(1)参照。)。この場合、収率は89%、選択性は97%となった。
【化1】
【0111】
次に、反応物をペンタン−1−アミンとした場合、目的の生成物は(Z)−N−ペンチリデンペンタン−1−アミンとなる(以下の化学反応式(2)参照。)。この場合、収率は84%、選択性は96%となった。
【化2】
【0112】
なお、詳細な記載は省略するが、上記反応で使用した動物組織加工物は、生成物と物性が異なり、かつ、ポリマー化も起こさないために回収が容易であった。また、回収した動物組織加工物は、少なくとも2回は再利用しても良好な結果が得られた。
【0113】
以上の実験例1の結果から、本発明の動物組織加工物の製造方法により、本発明の動物組織加工物が確かに製造可能であることが確認できた。
【0114】
また、実験例1の結果から、本発明の動物組織加工物は、反応を促進する能力が高いこと、生成物の選択性が高いこと、及び、使用後の分離、回収及び再利用が容易であることが確認できた。
【0115】
[実験例2]
実験例2においては、実験例2に係る金属ナノ粒子触媒を実施形態2に係る金属ナノ粒子触媒の製造方法に沿って実際に製造し、アルコールを酸化する反応における触媒としての効果を確認した。また、第1級アミンからイミンを合成する反応における触媒としての効果も確認した。さらに、アルコール及びアミンからイミンを合成する反応における触媒としての効果も確認した。
【0116】
実験例2で用いた試薬、溶媒及び装置については、実験例1と基本的に共通するので説明を省略する。
【0117】
また、実験例2に係る動物組織加工物(担体として用いるもの。e−HHP。)及び動物組織加工物の製造方法は、実験例1に係る動物組織加工物及び動物組織加工物の製造方法とそれぞれ同様であるため、説明を省略する。
【0118】
次に、実験例2に係る金属ナノ粒子触媒の製造方法について説明する。
図8は、実験例2に係る金属ナノ粒子触媒の写真である。
図8(a)は銀を用いた金属ナノ粒子触媒の写真であり、
図8(b)は金を用いた金属ナノ粒子触媒の写真であり、
図8(c)は銅を用いた金属ナノ粒子触媒の写真であり、
図8(d)はニッケルを用いた金属ナノ粒子触媒の写真であり、
図8(e)はルテニウムを用いた金属ナノ粒子触媒の写真である。
【0119】
実験例2に係る金属ナノ粒子触媒の製造方法は、実験例2に係る動物組織加工物に金属ナノ粒子を担持する金属ナノ粒子担持工程を含む。
【0120】
まず、金属塩及び動物組織加工物(e−HHP)を準備した。実験例2においては、金属塩として、硝酸銀(AgNO
3)、塩化金(AuCl
3)、塩化銅(CuCl
2)、塩化ニッケル(NiCl
2)及び塩化ルテニウム(RuCl
3)を準備した。
【0121】
次に、50mlの蒸留水に0.25gの金属塩(ただし、ルテニウムの場合のみ0.1g)を溶解させて所定の溶液とした。当該所定の溶液に動物組織加工物(e−HHP)を0.5g投入して所定の分散液とした。その後、所定の分散液に濃度0.25Mの水素化ホウ素ナトリウム溶液を滴下し、3時間、80℃で還元処理を行って金属ナノ粒子を析出させた。反応終了後、濾過により実験例2に係る金属ナノ粒子触媒を分離し、減圧乾燥を行った。
【0122】
このようにして、実験例2に係る金属ナノ粒子触媒を製造した(
図8参照。)。
なお、本発明の発明者らは、人間の頭髪から得られた動物組織加工物を用いて製造した金属ナノ粒子触媒を「MNPs/e−HHP(Metal Nano Particles/extracted−Human Hair Powderの略)」と呼称している。
【0123】
次に、実験例2に係る金属ナノ粒子触媒について説明する。
まず、高分解能透過型電子顕微鏡を用いて、金属ナノ粒子触媒について観察した。
図9〜13は、実験例2に係る金属ナノ触媒を透過型電子顕微鏡で撮影した写真である。
図9は銀を用いた金属ナノ粒子触媒の写真であり、
図10は金を用いた金属ナノ粒子触媒の写真であり、
図11は銅を用いた金属ナノ粒子触媒の写真であり、
図12はニッケルを用いた金属ナノ粒子触媒の写真であり、
図13はルテニウムを用いた金属ナノ粒子触媒の写真である。
図9〜13の(a)〜(d)は倍率が異なる写真であり、(a),(b),(c),(d)の順番に倍率が大きくなる。
【0124】
その結果、動物組織加工物の表面に金属ナノ粒子が均一に分散していることが確認できた。金属ナノ粒子の粒子直径は0.1〜25nmであった。
【0125】
銀を用いた金属ナノ粒子触媒の場合、銀ナノ粒子の粒子直径は0.5〜25nmであり、平均粒子直径は17nmであった(
図9参照。)。
金を用いた金属ナノ粒子触媒の場合、金ナノ粒子はとても均一に分散し、粒子直径は1〜7n、平均粒子直径は5nmであった(
図10参照。)。
銅を用いた金属ナノ粒子触媒の場合、銅ナノ粒子は均一に分散し、粒子直径は11nm以下であった(
図11参照。)。
ニッケルを用いた金属ナノ粒子触媒の場合、ニッケルナノ粒子は高度に分散し、粒子直径はとても小さく、0.1〜2nmであった(
図12参照。)。
ルテニウムを用いた金属ナノ粒子触媒の場合、ルテニウムナノ粒子は均一に分散し、粒子直径は2nm以下であった(
図13参照)。
【0126】
次に、エネルギー分散型X線分光器を備える走査型電子顕微鏡(SEM−EDS)を用いて分析を行った。
図14〜18は、実験例2に係る金属ナノ触媒を走査型電子顕微鏡で分析した結果を示す図である。
図14は銀を用いた金属ナノ粒子触媒に関するものであり、
図15は金を用いた金属ナノ粒子触媒に関するものであり、
図16は銅を用いた金属ナノ粒子触媒に関するものであり、
図17はニッケルを用いた金属ナノ粒子触媒に関するものであり、
図18はルテニウムを用いた金属ナノ粒子触媒に関するものである。
図14〜18の(a)は元素マッピング法で分析した結果を示す画像であり、(b)はエネルギー分散型X線分光器で分析した結果を示すグラフであり、(c)は走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。なお、
図14〜18の(b)における縦軸はカウント数(単位:10
3個)を示し、横軸はX線のエネルギー(単位:keV)を示す。
図14〜
図18の(b)に示すように、銀のピークは3.0keV付近にあり、金のピークは2.1keV付近にあり、銅のピークは0.8,0.9keV付近にあり、ニッケルのピークは0.7,0.8keV付近にあり、ルテニウムの主なピークは2.6,2.7keV付近にある。
【0127】
まず、元素マッピング法を用いて分析を行った。その結果、金属ナノ粒子触媒中の金属ナノ粒子が均一に担持されていることが確認できた(
図14〜
図18の(a)参照。)。
次に、エネルギー分散型X線分光器を用いて分析を行った。その結果、各金属ナノ粒子触媒にはそれぞれ、銀、金、銅、ニッケル、ルテニウムが含まれていることが確認できた(
図14〜
図18の(b)及び(c)参照。)。分析結果から各金属元素の重量比率を求めた結果、銀は48.0wt%、金は47.3wt%、銅は49.7wt%、ニッケルは47.8wt%、ルテニウムは5.2wt%であった。
なお、ルテニウム以外の金属では重量比率がほぼ横並びであり、ルテニウムのみ重量比率が少ないという上記結果は、本発明の担体に金属ナノ粒子を担持する処理を行うときの金属の濃度により、触媒としたときの金属ナノ粒子の量を制御できるということを示している。
【0128】
次に、X線光電子分光装置による観察を行った。
図19〜
図23は、実験例2に係る金属ナノ触媒をX線光電子分光装置で分析した結果のグラフである。
図19は銀を用いた金属ナノ粒子触媒に関するグラフであり、
図20は金を用いた金属ナノ粒子触媒に関するグラフであり、
図21は銅を用いた金属ナノ粒子触媒に関するグラフであり、
図22はニッケルを用いた金属ナノ粒子触媒に関するグラフであり、
図23はルテニウムを用いた金属ナノ粒子触媒に関するグラフである。
図19〜23の(b)に示すグラフは、(a)のグラフの要部を示すものである。なお、
図19〜23に示すグラフの縦軸は強度(単位:a.u.)を示し、横軸は結合エネルギー(単位:eV)を示す。
【0129】
銀を用いた金属ナノ粒子触媒の場合には、銀の3d領域に368.3,374.2eVの主ピークが確認できた。これは、金属状態の銀が存在することを示している(
図19参照。)。
金を用いた金属ナノ粒子触媒の場合には、金の4f領域に91.2eV,94.9eVの二重ピークが確認できた。このため、イオン状態の金は存在しないものと考えられる(
図20参照。)。
銅を用いた金属ナノ粒子触媒の場合には、銅の2p領域に934.2,954.1eVの2つのピークが確認できた。これは酸化銅(II)からの光電子放出と一致する(
図21参照。)。
ニッケルを用いた金属ナノ粒子触媒の場合には、ニッケルの2p領域の854eV〜885eVまでの範囲内に、金属ニッケルに特有のピーク(855.2,870.5eV及び862.5,882.3eV)が確認できた(
図22参照。)。
ルテニウムを用いた金属ナノ粒子触媒の場合には、ルテニウムの3p領域に469.3,490.5eVの2つのピークが確認できた(
図23参照。)。この2つのピークは、通常463.0,484.2eVで観測されるピークに相当する。
【0130】
次に、実験例2に係る金属ナノ粒子触媒を用いてアルコールを酸化する反応について説明する。実験例2では、ルテニウムを用いた金属ナノ粒子触媒の反応について検証すべく実験を行った。
【0131】
まず、実験例2に係る金属ナノ粒子触媒を用いてアルコールを酸化する反応について、好適な反応条件を求めるための予備実験を行った。反応物としては、1−フェニルエタノールを用いた。詳細は省略するが、溶媒、温度、反応時間、触媒(ルテニウムを用いた金属ナノ粒子触媒)の量等、反応条件を変えて多くの実験を行った結果、実験例2のアルコールを酸化する反応においては、溶媒をトルエンとし、温度を110℃とし、反応時間を12時間とし、触媒の量を25mg(ルテニウムからなる金属ナノ粒子のモル百分率は0.13mol%)とするのが好ましいことが判明した。
【0132】
次に、予備実験に基づく実験の基本条件について説明する。
まず、実験例2に係る金属ナノ粒子触媒(ルテニウムを用いたもの。RuNPs/e−HHP。)25mg及びトルエン3mLを、スターラーバー及び凝縮器をセットした丸底フラスコに入れ、撹拌した。次に、反応物1mmolを溶液に加え、110℃、大気圧、空気存在下で還流させた。反応の具合は定法によるTLCによりモニターした。反応終了後、金属ナノ粒子触媒と他の混合物とを遠心分離した。その後、生成物及び未反応の反応物をガスクロマトグラフィーにより分析した。
収率、反応率、選択性の算出方法については実験例1と同様であるため、記載を省略する。
【0133】
反応物を1−フェニルエタノールとした場合、目的の生成物はアセトフェノンとなる(以下の化学反応式(3)参照。)。この場合、収率は94%、選択性は100%となった。
【化3】
【0134】
なお、反応を行った後に回収した金属ナノ粒子触媒を用いて同様の反応を行ったところ、92%の良い収率が得られた。
【0135】
反応物をベンジルアルコールとした場合、目的の生成物はベンズアルデヒドとなる(以下の化学反応式(4)参照。)。この場合、収率は98%、選択性は100%となった。
【化4】
【0136】
次に、実験例2に係る金属ナノ粒子触媒を用いて第1級アミンからイミンを合成する反応について説明する。
【0137】
まず、好適な反応条件を求めるための予備実験を行った。反応物としては、フェニルメタンアミンを用いた。詳細は省略するが、触媒、溶媒、温度、反応時間、触媒(ルテニウムを用いた金属ナノ粒子触媒)の量等、反応条件を変えて多くの実験を行った結果、実験例2の第1級アミンからイミンを合成する反応においては、溶媒をトルエンとし、温度を80℃とし、反応時間を3.5時間とし、触媒の量を25mg(ルテニウムからなる金属ナノ粒子のモル百分率は0.13mol%)とするのが好ましいことが判明した。
【0138】
次に、予備実験に基づく実験の基本条件について説明する。
まず、実験例2に係る金属ナノ粒子触媒(ルテニウムを用いたもの。RuNPs/e−HHP。)25mg、反応物2.0mmol及びトルエン3mLの混合物を80℃で撹拌した。反応の具合は定法によるTLCによりモニターした。反応終了後、金属ナノ粒子触媒と他の混合物とを遠心分離した。その後、生成物及び未反応の反応物をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0139】
反応物をフェニルメタンアミンとした場合、目的の生成物は(E)−N−ベンジリデン−1−フェニルメタンアミンとなる(以下の化学反応式(5)参照。)。この場合、収率は93%、選択性は100%となった。
【化5】
【0140】
反応物をペンタン−1−アミンとした場合、目的の生成物は(Z)−N−ペンチリデンペンタン−1−アミンとなる(以下の化学反応式(6)参照。)。この場合、収率は91%、選択性は100%となった。
【化6】
【0141】
次に、実験例2に係る金属ナノ粒子触媒を用いてアルコール及びアミンからイミンを合成する反応について説明する。
【0142】
まず、好適な反応条件を求めるための予備実験を行った。反応物としては、フェニルメタンアミン及びフェニルメタノールを用いた。詳細は省略するが、溶媒、温度、反応時間、触媒(ルテニウムを用いた金属ナノ粒子触媒)の量等、反応条件を変えて多くの実験を行った結果、実験例2のアルコール及びアミンからイミンを合成する反応においては、溶媒をトルエンとし、温度を110℃とし、触媒の量を25mg(ルテニウムからなる金属ナノ粒子のモル百分率は0.13mol%)とし、反応時間を28時間とするのが好ましいことが判明した。また、全ての実験は、第1級アミン同士が反応するのを防ぐために、アルゴン雰囲気下で行った。
【0143】
次に、予備実験に基づく実験の基本条件について説明する。
まず、実験例2に係る金属ナノ粒子触媒(ルテニウムを用いたもの。RuNPs/e−HHP。)25mg、アルコール1.0mmol、アミン1.2mmol及びトルエン3mLの混合物を110℃、アルゴン雰囲気下で撹拌した。反応の具合は定法によるTLCによりモニターした。反応終了後、金属ナノ粒子触媒と他の混合物とを遠心分離した。その後、生成物及び未反応の反応物をガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0144】
反応物をフェニルメタンアミン及びフェニルメタノールとした場合、目的の生成物は(E)−N−ベンジリデン−1−フェニルメタンアミンとなる(以下の化学反応式(7)参照。)。この場合、収率は87%、選択性は95%となった。
【化7】
【0145】
反応物をペンタン−1−アミン及びフェニルメタノールとした場合、目的の生成物は(E)−N−ベンジリデンペンタン−1−アミンとなる(以下の化学反応式(8)参照。)。この場合、収率は91%、選択性は97%となった。
【化8】
【0146】
なお、詳細な記載は省略するが、上記反応で使用した金属ナノ粒子触媒は、生成物と物性が異なり、かつ、ポリマー化も起こさないために回収が容易であった。また、回収した動物組織加工物は、少なくとも2回は再利用しても良好な結果が得られた。
【0147】
以上の実験例2の結果から、本発明の金属ナノ粒子触媒の製造方法により、本発明の金属ナノ粒子触媒を確かに製造できることを確認できた。
【0148】
また、実験例2の結果から、本発明の金属ナノ粒子触媒は、反応を促進する能力が高いこと、生成物の選択性が高いこと、及び、使用後の分離、回収及び再利用が容易であることが確認できた。
【0149】
[実験例3]
実験例3においては、実験例2で製造した金属ナノ粒子触媒についてさらなる実験を行い、触媒としての効果を確認した。具体的には、銀を用いた金属ナノ粒子触媒(AgNPs/e−HHP)により第1級アミンからイミンを合成する実験、金を用いた金属ナノ粒子触媒(AuNPs/e−HHP)によりアミンを酸化する実験、銅を用いた金属ナノ粒子触媒(CuNPs/e−HHP)によりアミンをエノン又はアクリロニトリルに付加する実験、ニッケルを用いた金属ナノ粒子触媒(NiNPs/e−HHP)によりアミン及びアルコールからイミンを合成する実験、及び、ルテニウムを用いた金属ナノ粒子触媒(RuNPs/e−HHP)によりアルコールを酸化する実験を行った。なお、各実験において特に記載しない事項や条件については、実験例2におけるアルコールを酸化する反応のそれに準じるものとする。
【0150】
実験例3で用いた試薬、溶媒及び装置については、実験例1及び2と共通するので説明を省略する。
また、実験例3に係る動物組織加工物(担体として用いるもの。e−HHP。)及び動物組織加工物の製造方法は、実験例1に係る動物組織加工物及び動物組織加工物の製造方法とそれぞれ同様であるため、説明を省略する。
【0151】
さらに、実験例3に係る金属ナノ粒子触媒は、実験例2に係る金属ナノ粒子触媒の製造方法と同様の製造方法により製造されたものであるため、実験例3に係る金属ナノ粒子触媒の製造方法についても説明を省略する。
【0152】
まず、第1級アミンからイミンを合成する反応について説明する。当該反応には、銀を用いた金属ナノ粒子触媒(AgNPs/e−HHP)を用いた。
図24は、実験例3に係る金属ナノ粒子触媒(AgNPs/e−HHP)により第1級アミンからイミンを合成する実験の結果を説明するために示す表である。
【0153】
ここで、実験の基本条件について説明する。
まず、銀を用いた金属ナノ粒子触媒(AgNPs/e−HHP。銀からなる金属ナノ粒子のモル百分率は6.7mol%。)15mgとトルエン1mLとの混合物をスターラーバー及び凝縮器をセットした丸底フラスコに入れ、撹拌した。次に、反応物であるアミン1mmolを溶液に加え、110℃、空気存在下で還流させた。その後、生成物及び未反応の反応物をガスクロマトグラフィーにより分析した。収率、反応率、選択性の算出方法については実験例1と同様であるため、記載を省略する。
【0154】
上記実験の結果は、
図24に示す表の通りである。
図24に示すように、金属ナノ粒子触媒により、様々な種類の第1級アミンからイミンを合成可能であることが確認できた。特に、ベンジルアミン(N−ベンジリデン−1−フェニルメタンアミン、
図24の反応番号1参照。)、ペンチルアミン(
図24の反応番号3参照。)及びブチルアミン(
図24の反応番号4参照。)については、高い収率及び高い生成物の選択性を示すことが確認できた。
なお、当該実験は反応物をベンジルアミンとしたときの実験結果を元に、かつ、実験を行いやすいことを念頭に反応条件を決定したため、収率及び目的物の選択性についてはさらなる改善の余地があると考えられる。
【0155】
次に、アミンを酸化する(アミンオキシドを生成する)反応について説明する。当該反応には、金を用いた金属ナノ粒子触媒(AuNPs/e−HHP)を用いた。
図25は、実験例3に係る金属ナノ粒子触媒(AuNPs/e−HHP)によりアミンを酸化する実験の結果を説明するために示す表である。
【0156】
ここで、実験の基本条件について説明する。
まず、金を用いた金属ナノ粒子触媒(AuNPs/e−HHP。金からなる金属ナノ粒子のモル百分率は1mol%。)2mgとアセトニトリル5mLとの混合物をスターラーバー及び凝縮器をセットした丸底フラスコに入れ、撹拌した。次に、反応物であるアミン1mmolを溶液に加え、82℃、空気存在下で還流した。その後、生成物及び未反応の反応物を核磁気共鳴(NMR)により分析した。収率、反応率、選択性の算出方法については実験例1と同様であるため、記載を省略する。
【0157】
上記実験の結果は、
図25に示す表の通りである。
図25に示すように、金属ナノ粒子触媒により、様々な種類のアミンを酸化することが可能であることが確認できた。また、実験を行った全ての反応物について、比較的短い反応時間(2〜6時間)で、高い収率及び高い生成物の選択性を示すことが確認できた。
なお、当該実験は反応物をトリエチルアミン(
図25の反応番号1参照。)としたときの実験結果を元に、かつ、実験を行いやすいことを念頭に反応条件を決定したため、収率及び目的物の選択性についてはさらなる改善の余地があると考えられる。
【0158】
次に、アミンをエノン又はアクリロニトリルに付加する反応(いわゆるアザマイケル付加反応)について説明する。当該反応には、銅を用いた金属ナノ粒子触媒(CuNPs/e−HHP)を用いた。
図26は、実験例3に係る金属ナノ粒子触媒(CuNPs/e−HHP)によりアミンをエノン又はアクリロニトリルに付加する実験の結果を説明するために示す表である。
【0159】
ここで、実験の基本条件について説明する。
まず、銅を用いた金属ナノ粒子触媒(CuNPs/e−HHP。銅からなる金属ナノ粒子のモル百分率は5.0mol%。)12.8mgとメタノール3mLとの混合物をスターラーバー及び凝縮器をセットした丸底フラスコに入れ、撹拌した。次に、反応物であるアミン1mmol及び反応物であるエノン又はアクリロニトリル1mmolを溶液に加え、室温(25℃)、空気存在下で反応させた。その後、生成物及び未反応の反応物をガスクロマトグラフィーにより分析した。収率、反応率、選択性の算出方法については実験例1と同様であるため、記載を省略する。
【0160】
上記実験の結果は、
図26に示す表の通りである。
図26に示すように、金属ナノ粒子触媒により、様々な種類のアミンをエノン又はアクリロニトリルに付加することが可能であることが確認できた。また、実験を行った全ての反応物について、比較的短い反応時間(2時間)で、高い収率及び非常に高い生成物の選択性を示すことが確認できた。特筆すべきことに、全ての反応物について副生成物の生成は確認できなかった。
なお、当該実験は反応物を1−フェニルピペラジン及びメチルアクリレートとしたときの反応(
図26の反応番号1参照。)の実験結果を元に、かつ、実験を行いやすいことを念頭に反応条件を決定したため、収率についてはさらなる改善の余地があると考えられる。
【0161】
次に、アミン及びアルコールからイミンを合成する反応について説明する。当該反応には、ニッケルを用いた金属ナノ粒子触媒(NiNPs/e−HHP)を用いた。
図27は、実験例3に係る金属ナノ粒子触媒(NiNPs/e−HHP)によりアミン及びアルコールからイミンを合成する実験の結果を説明するために示す表である。
【0162】
ここで、実験の基本条件について説明する。
まず、ニッケルを用いた金属ナノ粒子触媒(NiNPs/e−HHP。ニッケルからなる金属ナノ粒子のモル百分率は10.0mol%。)13mgとトルエン3mLとの混合物をスターラーバー及び凝縮器をセットした丸底フラスコに入れ、撹拌した。次に、反応物であるアミン1mmol及び反応物であるアルコール1mmolを溶液に加え、110℃、窒素雰囲気下で還流させた。その後、生成物及び未反応の反応物をガスクロマトグラフィーにより分析した。収率、反応率、選択性の算出方法については実験例1と同様であるため、記載を省略する。
【0163】
上記実験の結果は、
図27に示す表の通りである。
図27に示すように、金属ナノ粒子触媒により、様々な種類のアミン及びアルコールからイミンを合成することが可能であることが確認できた。ベンジルアミンとベンジルアルコールとの反応(
図27の反応番号1参照。)、ベンジルアミンとペンタノールとの反応(
図27の反応番号3参照。)、ブチルアミンとベンジルアルコールとの反応(
図27の反応番号5参照。)については、高い収率及び高い生成物の選択性を示すことが確認できた。
なお、当該実験は反応物をベンジルアミン及びベンジルアルコールとしたときの実験結果を元に、かつ、実験を行いやすいことを念頭に反応条件を決定したため、収率及び目的物の選択性についてはさらなる改善の余地があると考えられる。
【0164】
次に、アルコールを酸化する反応について説明する。当該反応には、ルテニウムを用いた金属ナノ粒子触媒(RuNPs/e−HHP)を用いた。なお、実験例3で製造・使用した金属ナノ粒子触媒(RuNPs/e−HHP)は、実験例2で製造・使用した金属ナノ粒子触媒(RuNPs/e−HHP)とは、ルテニウムからなる金属ナノ粒子のモル百分率が異なる。また、実験例3における反応は、実験例2におけるアルコールを酸化する反応と同様の反応であるが、実験例2で用いたアルコールとは異なる種類のアルコールを用いて実験を行った(後述する
図28参照。)。
図28は、実験例3に係る金属ナノ粒子触媒(RuNPs/e−HHP)によりアルコールを酸化する実験の結果を説明するために示す表である。
【0165】
ここで、実験の基本条件について説明する。
まず、ルテニウムを用いた金属ナノ粒子触媒(RuNPs/e−HHP。ルテニウムからなる金属ナノ粒子のモル百分率は5.0mol%。)96.7mgとトルエン3mLとの混合物をスターラーバー及び凝縮器をセットした丸底フラスコに入れ、撹拌した。次に、反応物であるアルコール1mmolを溶液に加え、110℃、窒素雰囲気下で還流させた。その後、生成物及び未反応の反応物をガスクロマトグラフィーにより分析した。収率、反応率、選択性の算出方法については実験例1と同様であるため、記載を省略する。
【0166】
上記実験の結果は、
図28に示す表の通りである。
図28に示すように、金属ナノ粒子触媒により、実験例2に示した以外の様々な種類のアルコールを酸化することが可能であることが確認できた。全ての反応で高い生成物の選択性を示すことが確認でき、反応物がイソボルネオール(
図28の反応番号2参照。)、1−シクロヘキシルエタノール(
図28の反応番号3参照。)及び1−(フラン−2−イル)エタノール(
図28の反応番号4参照。)の場合には高い収率を示すことも確認できた。
なお、当該実験は実験例2の反応条件を基にした反応条件を用いたため、収率及び目的物の選択性についてはさらなる改善の余地があると考えられる。
【0167】
以上、本発明を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の様態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0168】
(1)上記各実施形態及び各実験例において記載した構成要素等(動物組織、動物組織加工物、金属ナノ粒子等)の大きさ及び形状、用いる試薬、用いる溶媒、反応物及び生成物等は例示又は具体例であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0169】
(2)上記実施形態1においては、細分の直後に、動物組織を水と有機溶媒との両方で洗浄したが、本発明はこれに限定されるものではない。細分の直前に、動物組織を洗浄してもよい。また、動物組織を水又は有機溶媒の一方のみで洗浄してもよい。このような方法とすることによっても、不純物やきわめて溶出が容易な成分を減らし、後の工程における溶出の効率を高くすることが可能となる。
【0170】
(3)本発明の動物組織加工物の製造方法における第1溶出工程においては、動物組織の一部(タンパク質の一部)を分解することで有機溶媒により溶出可能な成分の溶出を促進してもよい。
【0171】
(4)上記実験例3においては、1種類の反応に1種類の金属ナノ粒子触媒のみを用いて実験を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。上記実験例3で示した以外の反応に本発明の金属ナノ粒子触媒を用いることもできる。