【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
[実施例1]
PVDF−TrFE(呉羽化学社製)を、アセトンに溶解して、PVDF−TrFEを含む溶液を調製した。
PVDF−TrFEを含む溶液の濃度は、0.5mg/mLであった。
次いで、ヘキサン6mLを容れた密閉容器内の中央に、PVDF−TrFEを含む溶液3mLを容れた容器を配置し、恒温漕の中に、25℃で7日静置した。このとき、密閉容器内に配置する容器は、蓋をすることなく、開放しておいた。
密閉容器内では、ヘキサンの蒸気が、容器内のPVDF−TrFEを含む溶液に徐々に移行して、溶液中に、PVDF−TrFEからなる、実施例1の構造体が析出した。
得られた構造体を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)(商品名:JSM−5610、日本電子社製)で観察した。その走査型電子顕微鏡像を
図4に示す。
図4の結果から、粒子径が200nm〜2μmの球体の構造体が得られていることが確認された。
【0043】
[比較例1]
ヘキサンの代わりに、トルエンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、PVDF−TrFEからなる、比較例1の構造体を作製した。
得られた構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その走査型電子顕微鏡像を
図5に示す。
図5の結果から、不定形の構造体が得られていることが確認された。
【0044】
[比較例2]
ヘキサンの代わりに、メタノールを用いたこと以外は実施例1と同様にして、PVDF−TrFEからなる、比較例2の構造体を作製した。
得られた構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その走査型電子顕微鏡像を
図6に示す。
図6の結果から、不定形の構造体が得られていることが確認された。
【0045】
[比較例3]
ヘキサンの代わりに、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、PVDF−TrFEからなる、比較例3の構造体を作製した。
得られた構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その走査型電子顕微鏡像を
図7に示す。
図7の結果から、不定形の構造体が得られていることが確認された。
【0046】
[比較例4]
ヘキサンの代わりに、ジクロロメタンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、PVDF−TrFEからなる、比較例4の構造体を作製した。
得られた構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その走査型電子顕微鏡像を
図8に示す。
図8の結果から、不定形の構造体が得られていることが確認された。
【0047】
[比較例5]
ヘキサンの代わりに、クロロホルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、PVDF−TrFEからなる、比較例5の構造体を作製した。
得られた構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その走査型電子顕微鏡像を
図9に示す。
図9の結果から、不定形の構造体が得られていることが確認された。
【0048】
[比較例6]
ヘキサンの代わりに、アセトニトリルを用いたこと以外は実施例1と同様にして、PVDF−TrFEからなる、比較例6の構造体を作製した。
得られた構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果から、不定形の構造体が得られていることが確認された。
【0049】
[比較例7]
ヘキサンの代わりに、水を用いたこと以外は実施例1と同様にして、PVDF−TrFEからなる、比較例7の構造体を作製した。
得られた構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果から、不定形の構造体が得られていることが確認された。
【0050】
以上の結果から、蒸気拡散法において、密閉容器に容れる貧溶媒として、無極性溶媒のヘキサンを用いることにより、極性ポリマーであるPVDF−TrFEが接触面積を最小にするように集合化し、球状構造体を形成したものと考えられる。
また、球状構造体の粒子径を制御するために、貧溶媒のヘキサンの使用量を10mLに増加すると、球状構造体の粒子径を2μmまで増大できることが分かった。
【0051】
[実施例2]
PVDF−TrFEと、蛍光色素のローダミン6Gとを、アセトンに溶解して、PVDF−TrFEとローダミン6Gを含む溶液を調製した。
PVDF−TrFEとローダミン6Gを含む溶液におけるPVDF−TrFEの濃度は、0.5mg/mLであった。
PVDF−TrFEとローダミン6Gを含む溶液におけるローダミン6Gの濃度は、0.1mg/mLであった。
次いで、容器内に水の上に、PVDF−TrFEとローダミン6Gを含む溶液を徐々に加えた。ここで、水の量とPVDF−TrFEとローダミン6Gを含む溶液の量を、体積比で、2:1とした。
すると、PVDF−TrFEとローダミン6Gを含む溶液と水の界面にて、PVDF−TrFEからなる、実施例2の構造体が析出した。
【0052】
得られた構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その走査型電子顕微鏡像を
図10に示す。
図10の結果から、粒子径が500nm〜8μmの球体の構造体が得られていることが確認された。
また、
図10の結果から、実施例2の球状の構造体は、実施例1の球状の構造体よりも、粒子径が2倍以上になっていることが確認された。これは、溶液中における、PVDF−TrFEとローダミン6Gの相互作用により、PVDF−TrFEの溶解性が変化して、球状の構造体が形成するプロセスに変化が生じたものと推察できる。
【0053】
得られた球体の構造体を蛍光顕微鏡(商品名:BX53、オリンパス社製)で観察した。その蛍光顕微鏡像を
図11に示す。
図11の結果から、球体の構造体は緑色に発光していることが確認された。なお、
図11(a)は、球状の構造体に励起光を入射していない状態を示し、
図11(b)は、球状の構造体に励起光を入射し、その励起光によって蛍光体が発光している状態を示す。
【0054】
得られた球状の構造体について、
図12に示すようなマイクロフォトルミネッセンスの装置200を用いて評価した。
【0055】
装置200は、球状の構造体100を載置する載置面210aを有するXYステージ210と、XYステージ210の載置面210aに載置された発光素子10にレーザー光α´を照射するCWレーザー(Continuous Wave Laser)220と、球状の構造体100から発光した光β´のスペクトルを測定する分光器230と、発光素子10からの光β´を観察(撮影)するCCDカメラ240と、を備えている。
CCDカメラ240は、XYステージ210の載置面210aと間隔を置いて対向するように配置されている。また、CCDカメラ240は、球状の構造体100からの光β´の出射方向と、撮像素子(図示略)の光入射面とが垂直となるように配置されている。
【0056】
XYステージ210の載置面210aとCCDカメラ240との間、すなわち、球状の構造体100からCCDカメラ240へ至る光β´の光路上には、XYステージ210側から順に所定の間隔を置いて、第1のハーフミラー251と第2のハーフミラー252が配置されている。第1のハーフミラー251と第2のハーフミラー252は、それぞれの反射面251a、252aが発光素子10からCCDカメラ240へ至る光β´の光路に対して45度傾くように配置されている。
また、XYステージ210の載置面210aと第1のハーフミラー251との間には、Z軸方向(XYステージ210の載置面210aと垂直方向)の位置を調整することが可能な対物レンズ260が配置されている。
【0057】
CWレーザー220は、第1のハーフミラー251と間隔を置いて対向するように配置されている。また、CWレーザー220は、レーザー光α´の出射方向と、球状の構造体100からCCDカメラ240へ至る光β´の光路とが垂直となる位置に配置されている。
CWレーザー220と第1のハーフミラー251との間には、CWレーザー220側から順に所定の間隔を置いて、レーザーフィルター270と強度調整フィルター280が配置されている。
【0058】
分光器230は、第2のハーフミラー252と間隔を置いて対向するように配置されている。また、分光器230は、第2のハーフミラー252で反射した光β´の反射方向と、球状の構造体100からCCDカメラ240へ至る光β´の光路とが垂直となる位置に配置されている。
分光器230と第2のハーフミラー252との間には、ロングパスフィルター290が配置されている。
【0059】
XYステージ210は、マニピュレーターにより、X軸方向(XYステージ210の載置面210aと平行な方向)およびY軸方向(XYステージ210の載置面210aと平行な方向)に可動するようになっている。
対物レンズ260は、CWレーザー220からのレーザー光α´(波長532nm)を直径1μm以下のスポットに絞ることができるようになっている。これにより、球状の構造体100において、部分的に光励起が可能である。
【0060】
次に、装置200の動作の概略を説明する。
まず、XYステージ210の載置面210aに、球状の構造体100を載置する。球状の構造体100において、光励起させたい位置にレーザー光α´が照射されるように、XYステージ210を動かし、対物レンズ260に対して、球状の構造体100を位置合わせする。
CWレーザー220からのレーザー光α´を出射すると、レーザー光α´はレーザーフィルター270と強度調整フィルター280を透過して、第1のハーフミラー251の反射面251aに至る。レーザー光α´は、第1のハーフミラー251の反射面251aで、XYステージ210の載置面210a側に反射し、対物レンズ260に入射する。対物レンズ260に入射したレーザー光α´は、XYステージ210の載置面210aに載置された球状の構造体100に入射する。このとき、対物レンズ260をZ軸方向に動かして、対物レンズ260と発光素子10の距離(間隔)を調整して、レーザー光α´をスポットに絞ることにより、球状の構造体100における任意の位置にレーザー光α´を照射する。すると、レーザー光α´が照射された位置にあるパイ共役系高分子が励起して、レーザー光α´よりも長波長の光β´を発光する。光β´は、対物レンズ260と第1のハーフミラー251を透過して、第2のハーフミラー252にて一部が分光器230側に反射して、分光器230に入射し、残りが第2のハーフミラー252を透過して、CCDカメラ240の撮像素子に入射する。そして、分光器230により、光β´のスペクトルを測定し、CCDカメラ240により、光β´を観察(撮影)する。
【0061】
ここでは、レーザー光α´の強度を1μW、球状の構造体100に対するレーザー光α´の照射時間を0.001秒とした。
球状の構造体100にレーザー光α´を照射した場合について、上記の装置200の分光器230により、球状の構造体100からの光β´のスペクトルを測定した結果を
図13に示す。
図13の結果から、球状の構造体100に入射した光は、構造体100の内部に閉じ込められて共鳴することで発生する、WGM発光と呼ばれるスパイク状の発光ピークを示すことが確認された。
【0062】
[実施例3]
水の代わりに、体積比で1:1の水とエタノールからなる混合溶媒を用いたこと以外は実施例2と同様にして、PVDF−TrFEからなる、実施例3の構造体を作製した。
得られた構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その走査型電子顕微鏡像を
図14に示す。
図14の結果から、粒子径が200nm〜500nmの球体の構造体が得られていることが確認された。
【0063】
[実施例4]
水の代わりに、体積比で1:1の水とテトラヒドロフランからなる混合溶媒を用いたこと以外は実施例2と同様にして、PVDF−TrFEからなる、実施例4の構造体を作製した。
得られた構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その走査型電子顕微鏡像を
図15に示す。
図15の結果から、粒子径が200nm〜2μmの球体の構造体が得られていることが確認された。
【0064】
[実施例5]
水の代わりに、体積比で1:1の水とアセトニトリルからなる混合溶媒を用いたこと以外は実施例2と同様にして、PVDF−TrFEからなる、実施例5の構造体を作製した。
得られた構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その走査型電子顕微鏡像を
図16に示す。
図16の結果から、粒子径が200nm〜2μmの球体の構造体が得られていることが確認された。
【0065】
[実施例6]
アセトンの代わりに、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、PVDF−TrFEからなる、実施例6の構造体を作製した。
得られた構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その走査型電子顕微鏡像を
図17に示す。
図17の結果から、粒子径が100nm〜300nmの球体の構造体が得られていることが確認された。