特許第6583909号(P6583909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583909
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/228 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   C08J9/228CFD
【請求項の数】2
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-110220(P2015-110220)
(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-222807(P2016-222807A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100109601
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 邦則
(72)【発明者】
【氏名】千葉 琢也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀浩
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/058056(WO,A1)
【文献】 特開2009−062502(JP,A)
【文献】 特開2010−235835(JP,A)
【文献】 特開2001−164027(JP,A)
【文献】 特開2013−14681(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/047075(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00− 42/00
B29C44/00− 44/60
67/20
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリ乳酸系樹脂を含む発泡粒子を型内成形してなる、見掛け密度15〜68kg/m発泡粒子成形体において、
該発泡粒子成形体を構成する発泡粒子の平面視における数が、単位面積[cm]当たり15個以上であり、該発泡粒子の1個当たりの平均重量が0.1〜1.5mgであり、発泡粒子成形体の見掛け密度[kg/m]に対する引張強さ[kPa]の比(引張強さ/見掛け密度)が10[kPa・m/kg]以上であり、型内成形に用いられる該発泡粒子が、該発泡粒子1〜2mgを測定試料として、JIS K7122−1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、加熱速度10℃/minにて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られる1回目のDSC曲線と、次いで該融解ピーク終了時よりも30℃高い温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/minにて40℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られる2回目のDSC曲線において、該1回目のDSC曲線には、2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度を基準に、該基準の頂点温度よりも高温側(該基準の頂点温度を含まず)に頂点温度を有する融解ピークが現れない結晶構造を有する、又は該基準の頂点温度よりも高温側(該基準の頂点温度を含まず)に頂点温度を有する融解ピークが現れ、かつ該融解ピーク熱量が1J/g未満である結晶構造を有すると共に、該発泡粒子の結晶化度が20%以上であり、且つ発泡粒子の表面に融着性向上層を有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体。
【請求項2】
前記発泡粒子成形体が厚み10mm以下の薄肉部を有することを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境に対する意識が高まっており、従来の石油資源を原料とする汎用樹脂に代わる、カーボンニュートラルな材料としてポリ乳酸が注目されている。ポリ乳酸は、とうもろこし等の植物を出発原料として作られるものであり、カーボンニュートラルの観点から環境低負荷型の熱可塑性樹脂である。かかるポリ乳酸は、環境に優しい植物由来の発泡用汎用樹脂として用いられることが期待されており、ポリ乳酸を原料とする発泡体の研究が行われている。其の中でも、ポリ乳酸発泡粒子成形体は、従来のポリスチレン発泡粒子成形体やポリオレフィン発泡粒子成形体と同様に形状的な制約を受けずに所望の形状の発泡体を型内成形により得ることができ、軽量性、緩衝性、断熱性などの目的に応じた物性設計も容易にできる可能性を有するものとして特に有望である。
【0003】
しかし、実用に供されるポリ乳酸発泡粒子成形体には耐熱性が要求されることから、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体の基材樹脂として結晶性のポリ乳酸系樹脂を用いる必要がある。しかし、結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、ポリスチレン系樹脂発泡粒子などと比較すると、型内成形時に融着させることが難しく、融着性について課題を有していた。
【0004】
結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の融着性を向上させるための技術として、特許文献1〜4のような発明がなされている。特許文献1には、結晶化が十分に進んでいない状態のポリ乳酸系樹脂からなる発泡粒子が開示されている。特許文献2には、結晶構造の制御により二次発泡性を最適化したポリ乳酸系樹脂発泡粒子が開示されている。特許文献3及び4には、発泡粒子表面を融着性に優れる樹脂で被覆した発泡粒子が開示されている。これらの技術により、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の融着性は向上し、型内成形性が大幅に改善された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−83890号公報
【特許文献2】国際公開WO2012/086305
【特許文献3】国際公開WO2011/145391
【特許文献4】特表2010−525099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発泡粒子成形体には、薄肉部や嵌合部などを有する様々な形状のものがある。薄肉部や嵌合部を形成するには、狭い金型空間に発泡粒子を充填しなければならないことから、粒子径の小さな発泡粒子を用いる必要がある。しかし、上記特許文献1〜4では、小粒子径のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の型内成形性については何ら検討されていなかった。
【0007】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑み、微小なポリ乳酸系樹脂発泡粒子の型内成形体において、発泡粒子相互が十分に融着しておりかつ発泡粒子間に空隙がなく平滑な表面を有するポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体を提供することを、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示すポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体が提供される。
[1]結晶性ポリ乳酸系樹脂を含む発泡粒子を型内成形してなる、見掛け密度15〜68kg/m発泡粒子成形体において、
該発泡粒子成形体を構成する発泡粒子の平面視における数が、単位面積[cm]当たり15個以上であり、該発泡粒子の1個当たりの平均重量が0.1〜1.5mgであり、発泡粒子成形体の見掛け密度[kg/m]に対する引張強さ[kPa]の比(引張強さ/見掛け密度)が10[kPa・m/kg]以上であり、型内成形に用いられる該発泡粒子が、該発泡粒子1〜2mgを測定試料として、JIS K7122−1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、加熱速度10℃/minにて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られる1回目のDSC曲線と、次いで該融解ピーク終了時よりも30℃高い温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/minにて40℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られる2回目のDSC曲線において、該1回目のDSC曲線には、2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度を基準に、該基準の頂点温度よりも高温側(該基準の頂点温度を含まず)に頂点温度を有する融解ピークが現れない結晶構造を有する、又は該基準の頂点温度よりも高温側(該基準の頂点温度を含まず)に頂点温度を有する融解ピークが現れ、かつ該融解ピーク熱量が1J/g未満である結晶構造を有すると共に、該発泡粒子の結晶化度が20%以上であり、且つ発泡粒子の表面に融着性向上層を有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体。
[2]前記発泡粒子成形体が厚み10mm以下の薄肉部を有することを特徴とする前記1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体は、結晶性ポリ乳酸系樹脂を含む発泡粒子を型内成形して得られるものであり、発泡粒子成形体を構成する発泡粒子の平面視における数が特定数以上であると共に、見掛け密度[kg/m]に対する引張強さ[kPa]の比(引張強さ/見掛け密度)が特定値以上であることにより、発泡粒子相互が十分に融着しておりかつ発泡粒子間に空隙(ボイド)がないことから平滑な表面を有する。その結果、小粒子径のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を用いて、十分な機械的強度を示す薄肉部や、滑らかに嵌めこむことが可能な嵌合部を有する発泡粒子成形体の形成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、熱流束示差走査熱量測定により求められる発泡粒子の1回目のDSC曲線(I)の例示である。
図2図2は、熱流束示差走査熱量測定により求められる発泡粒子の2回目のDSC曲線(I)の例示である。
図3図3は、熱流束示差走査熱量測定により求められる測定試料の吸熱量(Br:endo)を示す2回目のDSC曲線(II)の例示である。
図4図4は、熱流束示差走査熱量測定により求められる測定試料の吸熱量(Br:endo)を示す2回目のDSC曲線(II)の例示である。
図5図5は、熱流束示差走査熱量測定により求められる測定試料の発熱量(Bf:exo)及び吸熱量(Bf:endo)を示す1回目のDSC曲線(II)の例示である。
図6図6は、熱流束示差走査熱量測定により求められる測定試料の発熱量(Bf:exo)及び吸熱量(Bf:endo)を示す1回目のDSC曲線(II)の例示である。
図7図7は、熱流束示差走査熱量測定により求められる測定試料の発熱量(Bf:exo)及び吸熱量(Bf:endo)を示す1回目のDSC曲線(II)の例示である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体について詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体(以下、単に「発泡粒子成形体」ともいう。)は、結晶性ポリ乳酸系樹脂を含む発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体であり、粒子径が小さな発泡粒子から形成されている。
【0012】
本発明の発泡粒子成形体を構成するポリ乳酸系樹脂発泡粒子(以下、単に発泡粒子ともいう。)はポリ乳酸系樹脂を基材樹脂とするものである。
該ポリ乳酸系樹脂は、乳酸に由来する成分単位を50モル%以上含むポリマーであることが好ましい。該ポリ乳酸系樹脂としては、例えば(a)乳酸の重合体、(b)乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(c)乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(d)乳酸と脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(e)乳酸と脂肪族多価アルコールとのコポリマー、(f)これら(a)〜(e)の何れかの組合せによる混合物等が包含される。また、該ポリ乳酸には、ステレオコンプレックスポリ乳酸、ステレオブロックポリ乳酸と呼ばれるものも包含される。なお、乳酸の具体例としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの環状2量体であるL−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド又はそれらの混合物が挙げられる。
【0013】
前記(b)における他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられる。また、前記(c)及び(e)における脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等が挙げられる。また、前記(c)及び(d)における脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0014】
本発明で用いられるポリ乳酸の製造方法の具体例としては、例えば、乳酸又は乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の混合物を原料として、直接脱水重縮合する方法(例えば、米国特許第5310865号に示されている製造方法)、乳酸の環状二量体(ラクチド)を重合する開環重合法(例えば、米国特許2758987号に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状2量体、例えば、ラクチドやグリコリドとε−カプロラクトンを、触媒の存在下、重合する開環重合法(例えば、米国特許4057537号に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸の混合物を、直接脱水重縮合する方法(例えば、米国特許第5428126号に開示されている製造方法)、乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸とポリマーを、有機溶媒存在下に縮合する方法(例えば、欧州特許公報第0712880 A2号に開示されている製造方法)、乳酸重合体を触媒の存在下、脱水重縮合反応を行うことによりポリエステル重合体を製造するに際し、少なくとも一部の工程で、固相重合を行う方法、等を挙げることができるが、その製造方法は、特に限定されない。また、少量のグリセリンのような脂肪族多価アルコール、ブタンテトラカルボン酸のような脂肪族多塩基酸、多糖類等のような多価アルコール類を共存させて、共重合させても良く、又ポリイソシアネート化合物等のような結合剤(高分子鎖延長剤)を用いて分子量を上げてもよい。また、ペンタエリスリット等の多価脂肪族アルコールに代表される分岐化剤にて分岐化させたものであってもよい。
【0015】
本発明で用いられる発泡粒子を構成するポリ乳酸系樹脂は、結晶性ポリ乳酸系樹脂を含むものである。具的には、(i)結晶性のポリ乳酸のみからなるもの、(ii)結晶性ポリ乳酸と非結晶性ポリ乳酸とのポリ乳酸混合物からなるものが挙げられる。
ここで結晶性ポリ乳酸とは、L−ラクチドまたはD−ラクチドを主成分とすることにより結晶性構造を有するものであって、下記測定方法により熱処理後に測定される吸熱量(Br:endo)が好ましくは25J/g以上のものをいい、より好ましくは30J/g以上、更に35J/g以上である。また、(Br:endo)の上限は、概ね70J/g、好ましくは60J/gである。
【0016】
前記吸熱量(Br:endo)の測定は、JIS K7122−1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、1〜2mgの吸熱量測定用ポリ乳酸系樹脂を融解ピーク終了温度より30℃高い温度まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度2℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度2℃/minにて40℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度2℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られるDSC曲線(以下、2回目のDSC曲線(II)ともいう。)に基づいて求められる値とする。2回目のDSC曲線(II)の一例を図3に示す。
【0017】
なお、吸熱量(Br:endo)は、図3に示すように、2回目のDSC曲線(II)の融解ピークの低温側のベースラインから融解ピークが離れる点を点aとし、融解ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点bとして、点aと点bとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から求められる値とする。また、ベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することとし、どうしても図4に示すようにベースラインが湾曲してしまう場合には、融解ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから融解ピークが離れる点を点a、融解ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ融解ピークが戻る点を点bとする。
【0018】
なお、(Br:endo)の測定において、測定試料のDSC曲線の測定条件として、110℃での120分間の保持、2℃/minの冷却速度および2℃/minの加熱速度を採用する理由は、ポリ乳酸系樹脂からなる測定試料の結晶化を極力進ませた状態での吸熱量(Br:endo)を求めることを目的としている為である。
【0019】
また、本発明において上記ポリ乳酸には、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において他の樹脂を混合することができる。ポリ乳酸と他の樹脂との混合樹脂中にはポリ乳酸が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上含まれる。
尚、ポリ乳酸と混合できる他の樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂以外のポリエステル系樹脂等が挙げられ、中でも脂肪族エステル成分単位を少なくとも35モル%含む生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。この場合の脂肪族ポリエステル系樹脂には、上記ポリ乳酸以外のヒドロキシ酸重縮合物、ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物、及びポリブチレンサクシネート,ポリブチレンアジペート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸との重縮合物等が挙げられる。
【0020】
また、本発明で用いられるポリ乳酸は、分子鎖末端が封鎖されていることが好ましい。これにより、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造過程での加水分解をより一層確実に抑制することができ、後述する分散媒放出発泡が容易になることから、樹脂の物性低下に繋がる加水分解に大きく囚われることなく、高温ピークの発生を確実に抑え、型内成形時の樹脂の加水分解にも耐え得る前記ポリ乳酸系樹脂発泡粒子が得られやすくなる。更には型内成形により得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体の耐久性が向上する。
【0021】
前記末端封鎖剤としては、例えばカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物等を用いることができる。これらの中でも、カルボジイミド化合物が好ましい。
具体的には、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミドなどの芳香族モノカルボジイミド(例えば、ラインケミー社製Stabaxol 1−LF)、芳香族ポリカルボジイミド(例えば、ラインケミー社製Stabaxol P、ラインケミー社製Stabaxol P400など)、ポリ(4−4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)などの脂肪族ポリカルボジイミド(例えば、日清紡ケミカル(株)製カルボジライトLA−1)などが挙げられる。
これらの末端封鎖剤は単独で使用しても良く、あるいは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
また、末端封鎖剤の配合量は、ポリ乳酸100重量部あたりに0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。
【0022】
このように、本発明で用いられるポリ乳酸は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、及びイソシアナート化合物等から選ばれる1種以上の改質剤にて改質された変性ポリ乳酸系樹脂であることが好ましく、カルボジイミド化合物にて改質された変性ポリ乳酸であることがより好ましい。
【0023】
また、本発明の発泡粒子を構成する基材樹脂には、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において前記のとおり他の樹脂を混合することができる。なおこの場合、本発明における後述する吸熱量や発熱量についての構成は、他の樹脂を混合することにより値が変動するため、ポリ乳酸と他の樹脂との混合樹脂を基材樹脂とする場合の本発明における吸熱量や発熱量の構成に関しては、混合樹脂からなる基材樹脂ではなく、基材樹脂を構成しているポリ乳酸と他の樹脂の内、ポリ乳酸のみが本発明における後述する吸熱量や発熱量の構成を満足していればよい。
【0024】
また、本発明の発泡粒子に配合することのできる添加剤としては、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、耐候剤、導電性付与剤等が挙げられる。
【0025】
また、基材樹脂に添加剤を配合する場合には、添加剤をそのまま基材樹脂に練り込むこともできるが、通常は添加剤の基材樹脂中での分散性等を考慮して添加剤のマスターバッチを作製し、それと基材樹脂とを混練することが好ましい。
前記添加剤の配合量は、添加剤の種類によっても異なるが、通常、基材樹脂100重量部に対して0.001〜20重量部、更に0.01〜5重量部とすることが好ましい。
【0026】
本発明の発泡粒子成形体においては、発泡粒子の平面視における数は、単位面積[cm]当たり10個以上である。すなわち、本発明の発泡粒子成形体は、微小な発泡粒子から構成されている。厚み10mm以下、更に5mm以下の薄肉部を有する発泡粒子成形体を得るためには、12個以上が好ましく、15個以上がより好ましい。なお、その上限は概ね100個程度であり、好ましくは50個である。
【0027】
本明細書において、発泡粒子の平面視における数とは、発泡粒子成形体を外部から観察した場合に単位面積[cm]当たりの表面に現れている発泡粒子の数をいう。その測定方法は、4cm×4cmの平面に現れている発泡粒子数を数え、1cm当たりに換算して求める。4cm×4cmの平面がとれない場合は、最低でも1cm以上の面積について測定する。測定面の各辺と交差している発泡粒子については、隣合う2辺については数え、他の隣合う2辺については数えないこととする。例えば、上辺と右辺との2片について、これらの片と交差している発泡粒子の数を計測した場合には、下辺と左辺との2片について、これらの片と交差している発泡粒子の数は計測しない。表面に現れている発泡粒子の数を数えられない場合には、切断面について測定することもできる。
【0028】
本発明で用いられる発泡粒子は前記のとおり微小なものであり、その1個当たりの平均重量は0.1mg以上2mg未満であることが好ましく、より好ましい下限は0.3mg、さらに好ましくは0.5mgであり、より好ましい上限は1.5mg、さらに好ましくは1.2mgである。
なお、発泡粒子は後記ポリ乳酸系樹脂粒子を発泡させることにより得られるものであり、発泡粒子の1個当たりの平均重量は樹脂粒子1個当たりの平均重量と等しくなる。

【0029】
通常、熱可塑性樹脂発泡粒子の型内成形は、発泡粒子を成形キャビティに充填してスチームなどの加熱媒体により加熱し、発泡粒子の表面を溶融させ、その後に圧力開放することで二次発泡させて発泡粒子相互を融着させることにより行なわれる。発泡粒子の粒子径が小さい場合、発泡粒子の比表面積が大きくなるため、圧力解放時に発泡粒子内の熱媒体散逸速度が速くなるため、二次発泡速度が遅くなる傾向にあり、発泡粒子間の間隙が大きくなりやすく、発泡粒子群を均一に融着させることが難しくなる。
結晶性ポリ乳酸系樹脂を含む発泡粒子においては、小粒子化した場合、二次発泡性と融着性とのバランスを両立することが特に難しく、二次発泡性を抑制しすぎると、発泡粒子は融着しても発泡粒子間に空隙が多く残ってしまい、二次発泡性が良すぎても、発泡粒子群を均一に加熱できず、また、成形可能な温度まで発泡粒子を加熱してしまうと気泡が破泡してしまうため、従来の技術では、小粒子径の結晶性ポリ乳酸系樹脂を含む発泡粒子を型内成形して、良好な発泡粒子成形体を得ることは困難であった。
【0030】
本発明の発泡粒子成形体においては、発泡粒子成形体の見掛け密度[kg/m]に対する引張強さ[kPa]の比(引張強さ/見掛け密度)が10[kPa・m/kg]以上であり、12[kPa・m/kg]以上であることが好ましく、14[kPa・m/kg]以上であることがより好ましい。前記範囲の比(引張強さ/見掛け密度)は、発泡粒子同士が十分に融着しており、かつ発泡粒子成形体の表面に発泡粒子間の空隙が少ないことにより達成される。一方、その上限は、概ね20[kPa・m/kg]程度である。
【0031】
発泡粒子成形体の見掛け密度は、軽量性と機械的強度とのバランスから、15〜250kg/mであることが好ましい。その下限は20kg/mが好ましく、30kg/mがより好ましく、その上限は150kg/mが好ましく、100kg/mがより好ましい。
【0032】
また、発泡粒子成形体の引張強さは、390〜2800kPaであることが好ましい。その下限は450kPaがより好ましく、500kPaがさらに好ましく、その上限は1800kPaがより好ましく、1200kPaがさらに好ましい。
【0033】
本明細書における発泡粒子の嵩密度は、次のようにして算出する。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置する。次に、同恒温室内にて、10日間放置した約500mlの発泡粒子群の重量W1(g)を測定し、重量を測定した発泡粒子群を金網などの道具を使用して温度23℃の水の入ったメスシリンダー中に沈める。次に、金網等の道具の体積を差し引いた、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積V1(L)を測定し、メスシリンダーに入れた発泡粒子群の重量W1を容積V1で割り算(W1/V1)することにより見掛け密度を求める。この見掛け密度を1.6で割算して発泡粒子の嵩密度を求める。
【0034】
引張強さは、JIS K6767:1999に記載の引張試験方法に基づき、切断にいたるまでの最大荷重を試験片の断面積(試験片の幅×試験片の厚さ)で割算することにより求める。
【0035】
本発明で用いられる発泡粒子は、該発泡粒子1〜2mgを測定試料として、JIS K7122−1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、加熱速度10℃/minにて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られる1回目のDSC曲線と、次いで該融解ピーク終了時よりも30℃高い温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/minにて40℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られる2回目のDSC曲線において、該1回目のDSC曲線には、2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度を基準に、該基準の頂点温度よりも高温側(該基準の頂点温度を含まず)に頂点温度を有する融解ピーク(以下、「高温ピーク」ともいう。)を実質的に有しない結晶構造を有するものである。具体的には、高温ピークが現れても高温ピーク熱量が1J/g未満であることが好ましく、より好ましくは0.5J/g以下であり、高温ピークが現れないことが特に好ましい。
【0036】
本発明で用いられる発泡粒子は、後述するように型内成形時の耐熱性を向上させて破泡することを防いで型内成形時に良好に発泡させつつ、さらに熱成形後の収縮を防いで所望される寸法の発泡粒子成形体を得るために、発泡粒子の結晶化度を高める必要がある。結晶化度を高めた上に、高温ピークが存在すると、型内成形時の二次発泡が過度に阻害され、型内成形時に発泡粒子同士を押圧する力が弱くなるため発泡粒子同士の融着性が低下してしまうおそれがある。また、発泡粒子を十分に二次発泡させようと、発泡粒子をさらに加熱すると、発泡粒子の気泡が破壊されてしまい、やはり良好な発泡粒子成形体が得られなくなるおそれがある。
【0037】
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子は、前記の通り、高温ピークを実質的に現れない結晶構造を有するものである。次に、高温ピークについて詳しく説明する。発泡粒子を、JIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで10℃/minで昇温して求められる1回目のDSC曲線(以下、1回目のDSC曲線(I)ともいう。)と、次いで該融解ピーク終了時よりも30℃高い温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/minにて40℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られる2回目のDSC曲線(以下、2回目のDSC曲線(I)ともいう。)において、2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度(但し、2回目のDSC曲線(I)に、複数の融解ピークが現れる場合や融解ピークの高温側にショルダー部が現れる場合は、それらの融解ピークの頂点やショルダー部の変曲点のうち、最も高温側の、融解ピークの頂点温度またはショルダー部の変曲点温度を、2回目のDSC曲線(I)の融解ピークの頂点温度とする。)を基準に、該基準の頂点温度よりも高温側(該基準の頂点温度を含まず)に頂点温度を有する融解ピークが高温ピークである。なお、該基準の頂点温度よりも低温側(該基準の頂点温度を含む)に頂点温度を有する融解ピークを低温ピークともいう。高温ピークと低温ピークとが、各々1つ以上現れる。
【0038】
なお、前記高温ピークは、前記示差走査熱量測定によって得られる発泡粒子の1回目のDSC曲線(I)にのみに現れ、2回目のDSC曲線(I)には、現れることがないものである。高温ピークの出現の有無は、後述する熱処理を行ってポリ乳酸系樹脂の結晶を成長させれば発泡粒子の1回目のDSC曲線(I)に出現し、結晶の成長を抑えるように熱処理を行えば出現しなくなる。なお、発泡粒子の1回目のDSC曲線(I)に現れる低温ピークは、ポリ乳酸系樹脂の普通の成形加工において出現する、固有の結晶構造に起因する融解ピークである。
このような発泡粒子の1回目のDSC曲線(I)に高温ピークが現れたり、現れなくなったりする現象は、樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得る際の熱履歴により形成される二次結晶に起因するものであると考えることができる。
【0039】
前記1回目のDSC曲線(I)の一例を図1に、2回目のDSC曲線(I)の一例を図2に示す。図1図2の対比から、図2の二つの融解ピークの最も高温側の融解ピークの頂点温度を基準にして、図1において該基準の頂点温度よりも高温側に頂点温度を有する融解ピークが高温ピークであり、該基準の頂点温度よりも低温側に頂点温度を有する融解ピークが低温ピークということになる。したがって、図1において、融解ピークaが低温ピークであり、融解ピークbが高温ピークである。
また、本明細書において前記2回目のDSC曲線(I)における最も面積の大きな融解ピークの頂点温度、即ち融解ピークcの頂点温度をポリ乳酸系樹脂の融点(Tm)、融解ピークの高温側の裾がベースラインに戻った点の温度を融解終了温度(Te)とする。
【0040】
なお、図1には2つの融解ピークa,bが滑らかな曲線で描かれているが、DSC曲線は必ずしもこのように滑らかな曲線になるとは限らず、複数の融解ピークの重なりがDSC曲線に現れ、全体として、複数の低温ピークや複数の高温ピークが、DSC曲線上に現れる場合もある。
【0041】
高温ピーク熱量(J/g)は、図1に示すように、1回目のDSC曲線(I)の融解ピークの低温側のベースラインから融解ピークが離れる点を点αとし、融解ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点βとし、低温ピークaと高温ピークbとの間の谷部にあたるDSC曲線上の点γから、点αと点βを結ぶ直線へ、グラフの縦軸に平行な線を引き、その交点を点δとした場合、点γと点δとを結ぶ直線、点δと点βとを結ぶ直線、およびDSC曲線(I)によって囲まれる部分(図1の斜線部分)の面積に対応する吸熱量である。なお、図1には現れてはいないが、融解ピークaの低温側に該融解ピークaと連続して発熱ピークが現れる場合があり、そのような場合は、前記のように、融解ピークの低温側のベースラインから融解ピークが離れる点として点αを定めることが困難となる為、その場合は、低温側のベースラインから該発熱ピークが離れる点を点αとする。
【0042】
本発明で用いられる発泡粒子は、結晶化度が20%以上であることが好ましく、より好ましくは25%以上である。その上限は、概ね35%であり、好ましくは30%である。
結晶化度が小さすぎると、型内成形時にスチーム加熱により破泡しやすくなったり、発泡粒子成形体が得られても型内成形後の収縮が大きくなり、所望される寸法精度のものが得られないおそれがある。
【0043】
結晶化度は、下記(1)式により求められる。
結晶化度=[(Bf:endo)−(Bf:exo)]/93×100 (1)
ここで、(Bf:endo)は発泡粒子についての1回目のDSC曲線における総吸熱量であり、(Bf:exo)は発泡粒子についての1回目のDSC曲線における総発熱量である。
【0044】
なお、前記[(Bf:endo)−(Bf:exo)]は、熱流束示差走査熱量測定を行う際に既に発泡粒子が有していた結晶部分と、該測定時の昇温過程において発泡粒子が結晶化した部分とが融解する際に吸収するエネルギーである吸熱量(Bf:endo)と、熱流束示差走査熱量測定の昇温過程において発泡粒子が結晶化することにより放出されるエネルギーである発熱量(Bf:exo)との差を表し、該差が大きくて吸熱量(Bf:endo)の値に近いほど、発泡粒子の結晶化が該測定前において進んでいた(結晶化度が大きい)ことを意味する。
【0045】
前記吸熱量(Bf:endo)は20〜50J/gであることが好ましい。この吸熱量(Bf:endo)が大きいほど発泡粒子を構成するポリ乳酸系樹脂が熱処理によって結晶化度が高くなるものであり、最終的に発泡粒子成形体の機械的強度が高いものに調整することが出来る。一方、該吸熱量(Bf:endo)が小さすぎる場合には、最終的に発泡粒子成形体の機械的強度、特に高温条件下での機械的強度が不十分なものとなる虞がある。この観点から、(Bf:endo)は、更に25J/g以上、特に30J/g以上が好ましい。また、(Bf:endo)の上限は、概ね45J/g、好ましくは40J/gである。
【0046】
尚、本明細書において発泡粒子の発熱量(Bf:exo)および吸熱量(Bf:endo)は、前記条件によって求められる値であり、発熱量(Bf:exo)および吸熱量(Bf:endo)の測定は次の基準で行なわれる。
発泡粒子の発熱量(Bf:exo)は1回目のDSC曲線(II)の発熱ピーク(結晶化ピークと同義)の低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点cとし、発熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点dとして、点cと点dとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる発熱量を示す部分の面積から求められる値とする。また、発泡粒子の吸熱量(Bf:endo)は、1回目のDSC曲線(II)の融解ピーク(吸熱ピークと同義)の低温側のベースラインから融解ピークが離れる点を点eとし、融解ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点fとして、点eと点fとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から求められる値とする。但し、1回目のDSC曲線(II)におけるベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することとする。また、どうしてもベースラインが湾曲してしまう場合は、発熱ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点c、発熱ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ発熱ピークが戻る点を点dとする。更に、融解ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから融解ピークが離れる点を点e、融解ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ融解ピークが戻る点を点fとする。
【0047】
例えば、図5に示す場合には、前記のとおり定められる点cと点dとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる発熱量を示す部分の面積から発泡粒子の発熱量(Bf:exo)を求め、前記のとおり定められる点eと点fとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から発泡粒子の吸熱量(B:endo)を求める。また、図6に示すような場合には、前記のように点dと点eを定めることが困難である為、前記のとおり定められる点cと点fとを結ぶ直線とDSC曲線との交点を、点d(点e)と定めることにより、発泡粒子の発熱量(Bf:exo)及び吸熱量(Bf:endo)を求める。また、図7に示すように、融解ピークの低温側にも小さな発熱ピークが発生するような場合には、発泡粒子の発熱量(Bf:exo)は、図7中の第1の発熱ピークの面積Aと第2の発熱ピークの面積Bとの和から求められる。即ち、該面積Aは第1の発熱ピークの低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点cとし、第1の発熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点dとして、点cと点dとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる発熱量を示す部分の面積Aとする。そして、該面積Bは第2の発熱ピークの低温側のベースラインから第2の発熱ピークが離れる点を点gとし、融解ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点fとして、点gと点fとを結ぶ直線とDSC曲線との交点を、点eと定め、点gと点eとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる発熱量を示す部分の面積Bとする。一方、図7において、発泡粒子の吸熱量(Bf:endo)は点eと点fとを結ぶ直線とDSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から求められる値とする。
【0048】
本発明で用いられる発泡粒子の嵩密度は、15〜250kg/mであることが好ましい。
【0049】
また、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、型内成形性、得られる発泡粒子成形体の外観が更に向上するという観点から、30〜500μmであることが好ましく、50〜250μmであることがより好ましい。
【0050】
発泡粒子の平均気泡径は、次のようにして測定される。
発泡粒子を略二等分した切断面を顕微鏡で撮影した拡大写真に基づき、以下のとおり求めることができる。発泡粒子の切断面拡大写真において発泡粒子の一方の表面から他方の表面に亘って、気泡切断面の略中心を通る4本の線分を引く。ただし、該線分は、気泡切断面の略中心から切断粒子表面へ等間隔の8方向に伸びる放射状の直線を形成するように引くこととする。次いで前記4本の線分と交わる気泡の数の総数N(個)を求める。4本の各線分の長さの総和L(μm)を求め、総和Lを総和Nで除した値(L/N)を発泡粒子1個の平均気泡径とする。この作業を10個の発泡粒子について行い、各発泡粒子の平均気泡径を相加平均した値を発泡粒子の平均気泡径とする。
【0051】
また、発泡粒子の独立気泡率は、80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。独立気泡率が小さすぎると、発泡粒子の二次発泡性が劣るとともに、得られる発泡粒子成形体の機械的物性も劣ったものとなりやすい。
【0052】
発泡粒子の独立気泡率は、次のようにして測定される。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置し養生する。次に同恒温室内にて、嵩体積約20cmの養生後の発泡粒子を測定用サンプルとし下記の通り水没法により正確に見かけの体積Vaを測定する。見かけの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM−D2856−70に記載されている手順Cに準じ、東芝・ベックマン株式会社製空気比較式比重計930により測定される測定用サンプルの真の体積Vxを測定する。そして、これらの体積Va及びVxを基に、下記の(2)式により独立気泡率を計算し、N=5の平均値を発泡粒子の独立気泡率とする。

独立気泡率(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ) (2)
ただし、
Vx:上記方法で測定される発泡粒子の真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(cm
Va:発泡粒子を、水の入ったメスシリンダーに沈めて、水位上昇分から測定される発泡粒子の見かけの体積(cm
W:発泡粒子測定用サンプルの重量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm
【0053】
本発明で用いられる発泡粒子は表面に融着性向上層を有することが好ましい。本発明の発泡粒子において、融着性向上層を有しない発泡粒子と比べて、融着性が向上していれば、該融着性向上層が発泡粒子全体を覆っている必要はない。
なお、融着性向上層は、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエステルアミド等の、発泡粒子を構成している結晶性ポリ乳酸系樹脂よりも、融点又は軟化温度の低い重合体により構成されていることが好ましい。発泡粒子への融着性向上層の形成方法は特に限定されるものではなく、発泡粒子の表面を融着性向上層で被覆してもよく、発泡前の樹脂粒子の表面を融着性向上層で被覆し、その樹脂粒子を発泡することにより発泡粒子の表面に融着性向上層を形成してもよい。
【0054】
次に、ポリ乳酸系樹脂から構成される融着性向上層で表面を被覆した結晶性ポリ乳酸を含む樹脂粒子を発泡させることにより得られる、表面に融着性向上層を有する発泡粒子(以下、多層発泡粒子ともいう。)について詳しく説明する。
【0055】
該多層発泡粒子においては、該融着性向上層を構成するポリ乳酸系樹脂の軟化点(B)[℃]は、多層発泡粒子の発泡層部分(以下、発泡芯層ともいう。)を構成するポリ乳酸系樹脂の軟化点(A)[℃]よりも低く、かつ該軟化点(A)と該軟化点(B)との差[(A)−(B)]が0℃を超え105℃以下であることが好ましく、より好ましくは該差が15〜105℃であり、更に好ましくは20〜105℃である。該差がこの範囲内である発泡粒子は、融着性向上層と発泡芯層とを構成する軟化点(B)と軟化点(A)を示すポリ乳酸系樹脂を共押出法する等の後述する方法にて得ることができ、該方法により、多層発泡粒子を効率良く得ることができ、このようにして得られた発泡粒子は一層安定して型内成形時に優れた熱融着性を示す発泡粒子となる。
なお、融着性向上層を構成するポリ乳酸系樹脂の軟化点(B)は、発泡粒子の取り扱い性および得られる発泡粒子成形体の高温時の機械的強度の観点から、芯層を構成するポリ乳酸系樹脂の軟化点(A)との関係が上記範囲であると共に、50℃以上、更に55℃以上、特に65℃以上が好ましい。
【0056】
本明細書における軟化点とは、JIS K7206(1999年)に基づく、A50法で測定されたビカット軟化温度を意味する。測定試験片としては、ポリ乳酸系樹脂を、真空オーブンを使用して充分に乾燥させた後、200℃、20MPaの条件下で加圧し、必要に応じて空気抜き操作を行い気泡が混入しないようにして縦20mm×横20mm×厚み4mmの試験片を作製し、該試験片を80℃のオーブン内で24時間アニーリング処理した後に測定に用いる。測定装置としては、株式会社上島製作所製「HDT/VSPT試験装置 MODEL TM−4123」などを使用することができる。
【0057】
本発明の発泡芯層と融着性向上層とからなる発泡粒子においては、発泡芯層を形成している樹脂と融着性向上層を形成している樹脂の重量比が99.9:0.1〜80:20であることが好ましく、より好ましくは99.7:0.3〜90:10、更に好ましくは99.5:0.5〜92:8である。
発泡粒子の芯層を形成している樹脂と融着性向上層を形成している樹脂との重量比が前記範囲内にあることにより、発泡粒子間の融着強度が強くなることから、得られる発泡粒子成形体は機械的物性に特に優れたものとなり、また、発泡粒子の物性向上に寄与する発泡芯層の割合が大きくなることにより更に機械的物性に優れたものとなる。
なお、発泡粒子における発泡芯層を形成している樹脂と融着性向上層を形成している樹脂の重量比の調整は、後記ポリ乳酸系樹脂粒子(以下、樹脂粒子ともいう。)の芯層を形成している樹脂と融着性向上層を形成している樹脂の重量比を調整することにより行なわれる。
【0058】
本発明では、発泡粒子を構成するポリ乳酸系樹脂への前記末端封鎖剤は、少なくとも発泡芯層に添加されていることが好ましく、発泡芯層及び融着性向上層の双方に添加されていることがより好ましい。少なくとも発泡芯層、好ましくは発泡芯層及び融着性向上層の双方を構成するポリ乳酸系樹脂が末端封鎖処理されていることで、該樹脂の発泡粒子製造時の加水分解が抑制でき、安定して発泡粒子を製造できるようになる。更には、発泡粒子成形体製造時の加水分解も抑制でき、発泡粒子成形体の安定生産にも繋がるとともに、製品として使用される際においても高温多湿下での使用に耐え得るようになるなど、耐久性の向上が期待できる。
【0059】
発泡粒子の融着性向上層の厚みについては、融着性向上層に気泡が生じ難くなること、また、発泡粒子成形体の機械的物性が向上することから、厚みが薄い方が好ましい。発泡粒子の融着性向上層の平均厚みは、0.1〜20μm、更に0.2〜10μm、特に0.3〜5μmであることが好ましい。発泡粒子の融着性向上層の平均厚みが前記範囲となるように調整するには、樹脂粒子の段階での融着性向上層と芯層の重量比を調整して樹脂粒子の融着性向上層の平均厚みを調整すればよい。なお、樹脂粒子の融着性向上層の平均厚みは、樹脂粒子の重量、発泡倍率などによっても異なるが、2〜100μm、更に3〜70μm、特に5〜50μmが好ましい。なお、本発明においては、融着性向上層を形成している樹脂が発泡していることを必ずしも排除するものではない。
【0060】
前記発泡粒子の融着性向上層の平均厚みは以下により測定される。発泡粒子を略二等分し、その拡大断面の写真から、該断面の上下左右の4箇所の融着性向上層の厚みを求め、その平均を一つの発泡粒子の融着性向上層の厚さとする。この作業を10個の発泡粒子について行い、各発泡粒子の融着性向上層の厚さを相加平均した値を発泡粒子における融着性向上層の平均厚みとする。樹脂粒子の融着性向上層の平均厚みにおいても、同様の方法で測定する。なお、融着性向上層が発泡芯層の周囲に部分的に形成されている場合は、上記4箇所の融着性向上層の厚みをどうしても測定できない場合があるが、その場合は無作為に測定できる4箇所の融着性向上層厚みを求め、その平均を一つの発泡粒子、或いは樹脂粒子の融着性向上層の厚さとする。また、発泡粒子の融着性向上層の厚みが分かり難いときには、予め融着性向上層を構成する樹脂に着色剤を添加して樹脂粒子を製造することが好ましい。
【0061】
本発明の発泡粒子を用いて型内成形をすることにより、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体が得られる。その形状は特に制約されず、板状、柱状、容器状、ブロック状は、もとより三次元の複雑な形状のものや、特に厚みの薄い薄肉部を有するものや嵌合部を有するものを安定して得ることができる。
【0062】
該発泡粒子成形体は、熱処理して、ポリ乳酸系樹脂の結晶化をさらに進めることにより剛性、高温時の圧縮強さ、寸法安定性などの耐熱性に優れる発泡粒子成形体となる。
【0063】
前記のようにして得られる発泡粒子成形体は、前記の通り、軽量であると共に機械的物性に優れるものであり、微小な発泡粒子を用いることから、薄肉部や勘合部を設けることができる。薄肉部の厚みは、10mm以下であることが好ましく、より好ましくは5mm以下である。
【0064】
圧縮物性などの機械的強度の観点から、該発泡粒子成形体の独立気泡率は、60%以上が好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。
【0065】
発泡粒子成形体の独立気泡率測定は、発泡粒子成形体中央部より25×25×30mmのサンプルを切出し(スキンはすべて切り落とす)、測定用サンプルとする他は、前記発泡粒子の独立気泡率の測定と同様にして求めることができる。なお、上記サイズのサンプルが切り出せない場合には、サンプルの体積の合計が18750mmに近づくように、複数のサンプルを切り出して測定に用いればよい。
【0066】
本発明の発泡粒子成形体は発泡粒子同士の融着性に優れるものであり、その融着率は50%以上更に60%以上、特に80%以上であることが好ましい。融着率が高い発泡粒子成形体は機械的物性、特に曲げ強度に優れる。
なお、該融着率は、発泡粒子成形体を破断した際の破断面発泡粒子の個数に基づく材料破壊率を意味し、融着していない部分は材料破壊せず、発泡粒子の界面で剥離する。なお、融着率の測定方法については後述する。
【0067】
次に、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体の製造方法について説明する。
まず、本発明における発泡粒子の製造方法としては、押出発泡方法、ガス含浸予備発泡方法、分散媒放出発泡方法、或いはこれらの方法、原理を基本としたその他の発泡方法が挙げられる。
【0068】
押出発泡方法は、例えば、ポリ乳酸系樹脂を押出機内で溶融混練し、更に物理発泡剤を押出機内に圧入して混練することにより発泡性溶融樹脂を得、該発泡性溶融樹脂を多孔ダイより押出すことにより得られるストランド状発泡体を切断して、発泡粒子を製造する方法である。この方法においては、樹脂粒子製造工程、発泡剤含浸工程、発泡工程が一の押出装置を用いて、一の工程として行なわれる。該方法については、特開2007−100025号公報や国際公開公報WO2008/123367等を参照されたい。なお、本発明における発泡粒子を押出発泡方法にて得る場合は、共押出発泡方法により発泡粒子の表面に融着性向上層を形成することが出来る。
【0069】
ガス含浸予備発泡方法は、例えば、ポリ乳酸系樹脂を押出機にて溶融混練した後、ストランド状に押出して切断するなどして樹脂粒子を作製し、耐圧密閉容器内に該樹脂粒子を充填し、物理発泡剤を上記耐圧容器内に圧入することにより樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を作製し、該発泡性樹脂粒子を予備発泡機に投入し、水蒸気、熱風、或いはそれらの混合物などの加熱媒体にて加熱することにより発泡性樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得る方法である。物理発泡剤を上記耐圧容器内に圧入することにより樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程においては、液相含浸法や気相含浸法を適宜選択できる。ガス含浸予備発泡方法においては、樹脂粒子製造工程、発泡剤含浸工程、発泡工程が別々の工程として行なわれる。該方法については、特開2000−136261号公報、特開2006−282750号公報等を参照されたい。なお、本発明における発泡粒子をガス含浸予備発泡方法にて得る場合は、後述する共押出成形法により芯層の表面に融着性向上層が形成された樹脂粒子を作製し、該樹脂粒子を発泡させることにより、発泡粒子の表面に融着性向上層を形成することが出来る。
【0070】
分散媒放出発泡方法は、例えば、上記と同様にして樹脂粒子を製造し、該樹脂粒子を、密閉容器中で水性媒体中に分散、加熱して物理発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とし、該発泡性樹脂粒子を発泡適性温度で、密閉容器から水性媒体と共に放出して、発泡粒子を製造する方法である。この方法においては、樹脂粒子製造工程、発泡剤含浸工程、発泡工程をそれぞれ別の工程として行なうこともできるが、通常では、発泡剤含浸工程と発泡工程は一の工程として行なわれる。以下、ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法について、分散媒放出発泡方法を中心として詳細に説明する。
【0071】
樹脂粒子製造工程においては、樹脂粒子は、基材樹脂に必要な添加剤等を配合して押出成形してペレタイズする、ストランドカット法、アンダーウォーターカット法等により製造することが可能である。
該芯層と融着性向上層とからなる樹脂粒子は、例えば、特公昭41−16125号公報、特公昭43−23858号公報、特公昭44−29522号公報、特開昭60−185816号公報等に記載された共押出成形法技術を利用して製造することができる。
【0072】
該樹脂粒子の1個当りの平均重量は、前記発泡粒子を得ることができることから0.1mg以上2mg未満が好ましい。
該平均重量が軽すぎる場合には、樹脂粒子の製造が特殊なものになる。一方、該平均重量が重すぎる場合には、所望される薄肉部や嵌合部を得ることができなくなるおそれがある。
該樹脂粒子の形状は、円柱状、球状、角柱状、楕円球状、円筒状等を採用することができる。かかる樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子は、発泡前の樹脂粒子形状に略対応した形状となる。
【0073】
前記基材樹脂を上記のように押出機で溶融混練しストランド状に押出して樹脂粒子を得る工程においては、基材樹脂の構成成分であるポリ乳酸系樹脂を予め乾燥させておくことが好ましい。この場合には、ポリ乳酸系樹脂の加水分解による劣化を抑制することができる。また、ポリ乳酸系樹脂の加水分解による劣化を抑制するために、ベント口付き押出機を使用して、真空吸引を行ってポリ乳酸系樹脂から水分を除去する方法も採用することができる。ポリ乳酸系樹脂の水分を除去することにより、樹脂粒子中に気泡が発生することを抑制し、押出製造時の安定性を向上させることができる。
【0074】
次に、分散媒放出発泡方法における発泡剤含浸工程と発泡工程について説明する。
分散媒放出発泡方法においては例えば前記樹脂粒子を耐圧容器内で分散媒及び物理発泡剤と共に分散させて加熱したり、或いは樹脂粒子を耐圧容器内で分散媒と共に分散させて加熱し、次いで物理発泡剤を上記耐圧容器内へ圧入したりすることにより、樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とする。次いで、該発泡性樹脂粒子を耐圧容器内よりも低い圧力下に分散媒と共に放出することにより発泡性樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得ることができる。
【0075】
また、前記樹脂粒子中には、発泡助剤を予め添加しておくことができる。該発泡助剤としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、シリカ等の無機物や、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンワックス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、シリコーン、メタクリル酸メチル系共重合体及び架橋ポリスチレン等の高分子量体を採用することができる。
上記発泡助剤のうち、本発明では、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンワックス、架橋ポリスチレン等が好ましく、更に、疎水性のポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
【0076】
基材樹脂に発泡助剤を添加する場合には、発泡助剤をそのまま基材樹脂に練り込むこともできるが、分散性等を考慮して通常は発泡助剤のマスターバッチを作製し、それと基材樹脂とを混練することが好ましい。
【0077】
本発明の発泡粒子の見掛け密度及び気泡径は発泡助剤の添加量によっても変化するため、それらの調整効果が期待できる。通常、基材樹脂100重量部に対して、発泡助剤を0.001〜5重量部添加することが好ましく、より好ましくは0.005〜3重量部、さらに好ましくは0.01〜2重量部である。
【0078】
ポリ乳酸系樹脂は加水分解し易いことから、基材樹脂に配合する添加剤としては極力親水性の物質を避け、疎水性物質を選択して添加することが好ましい。発泡助剤として疎水性発泡助剤を採用することにより、ポリ乳酸系樹脂の加水分解による劣化を抑えながら発泡助剤としての効果が得られる。
この場合には、ポリ乳酸系樹脂の加水分解を十分に抑制しつつ、見掛け密度の低下(発泡倍率の向上)及び気泡径の均一化を図ることができる。
【0079】
分散媒放出発泡方法においては、前記の通り、例えば樹脂粒子を加圧可能な密閉容器(例えば、オートクレーブ)中の水などの分散媒に分散させ、分散剤を添加し、所要量の発泡剤を圧入し加圧し所要時間加温下に撹拌して発泡剤をポリ乳酸系樹脂粒子に含浸させた後、容器内容物を容器内圧力より低圧域下に放出して樹脂粒子を発泡させることにより、発泡粒子が得られる。この放出時には容器内に背圧をかけて放出することが好ましい。また、特に低い見掛け密度(高発泡倍率)の発泡粒子を得るにあたっては、上記の方法で得られた発泡粒子を通常行われる大気圧下での養生工程を経て、再度、加圧可能な密閉容器に充填し、空気などの加圧気体により例えば0.01〜0.10MPa(G)の圧力にて加圧処理して発泡粒子内の圧力を高める操作を行った後、該発泡粒子を発泡機内にて、熱風やスチームや空気とスチームとの混合物などの加熱媒体を用いて加熱することにより、更に低い見掛け密度の発泡粒子を得ることができる(この工程を以下、二段発泡という)。
なお、押出発泡法と比較して見掛け密度が低い発泡粒子を得ることができ、型内成形性に優れ、物性の良好な発泡粒子が得られるという観点から、発泡粒子の製法としては、上記のガス含浸予備発泡方法や分散媒放出発泡方法が好ましく、特に分散媒放出発泡方法が好ましい。
【0080】
前記樹脂粒子を分散させる分散媒としては、上記した水以外にも、上記ポリ乳酸系樹脂粒子を溶解させないものであればこれを使用することができる。水以外の分散媒としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられる。好ましくは水がよい。
【0081】
また、樹脂粒子を分散媒に分散させるに際しては、必要に応じて分散剤を分散媒に添加することができる。
該分散剤としては、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、カオリン、マイカ、及びクレー等の無機物質や、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの水溶性高分子保護コロイド剤が挙げられる。また、分散助剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤などを分散媒に添加することもできる。
これら分散剤は、樹脂粒子100重量部あたり0.05〜3重量部使用することができ、これら分散助剤は、樹脂粒子100重量部あたり0.001〜0.3重量部使用することができる。
【0082】
前記発泡剤としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、テトラクロロジフルオロエタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素などの有機系物理発泡剤、二酸化炭素、窒素、空気等の無機ガス、水などの無機系物理発泡剤を、単独で又は2種以上併用して用いることができる。これらの物理発泡剤のなかでも、二酸化炭素、窒素、空気等の無機系物理発泡剤を主成分とする物理発泡剤を用いることが好ましい。より好ましくは二酸化炭素がよい。
なお、無機系物理発泡剤を主成分とするとは、全物理発泡剤100モル%中の無機系物理発泡剤が50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含まれることを意味する。
【0083】
前記物理発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、添加剤等の配合量、目的とする発泡粒子の見掛け密度等に応じて適宜調整することができる。例えば無機系物理発泡剤は、基材樹脂100重量部あたり概ね0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜15重量部、更に好ましくは1〜10重量部使用することがよい。
【0084】
本発明においては、前記の通り、前記DSC曲線において高温ピークが現れない発泡粒子を得る必要がある。そのための方法としては、ポリ乳酸の二次結晶化が生じないような条件で樹脂粒子を発泡させることが好ましい。上記分散媒放出発泡方法により発泡粒子を製造する場合には、発泡温度を発泡粒子を構成する結晶性ポリ乳酸の融点−22℃〜+10℃の範囲とし、その発泡温度における保持時間を60分以内とすることが好ましい。
【0085】
次に、本発明の発泡粒子成形体の製造方法について説明する。該発泡粒子成形体の製造にあたっては、公知の型内成形方法を採用することができる。
例えば、従来公知の発泡粒子成形金型を用いる、圧縮成形法、クラッキング成形法、加圧成形法、圧縮充填成形法、常圧充填成形法(例えば、特公昭46−38359号公報、特公昭51−22951号公報、特公平4−46217号公報、特公平6−22919号公報、特公平6−49795号公報等参照)などが挙げられる。
【0086】
通常好ましく行なわれる型内成形法としては、加熱及び冷却が可能であって且つ開閉し密閉できる従来公知の熱可塑性樹脂発泡粒子型内成形用の金型のキャビティー内に発泡粒子を充填し、飽和蒸気圧が0.01〜0.25MPa(G)、好ましくは0.01〜0.20MPa(G)の水蒸気を供給して金型内で発泡粒子同士を加熱することにより発泡粒子を膨張、融着させ、次いで得られた発泡粒子成形体を冷却して、キャビティー内から取り出すバッチ式型内成形法や、後述する連続式の型内成形法等が挙げられる。
【0087】
前記水蒸気の供給方法としては、一方加熱、逆一方加熱、本加熱などの加熱方法を適宜組み合わせる従来公知の方法を採用できる。特に、予備加熱、一方加熱、逆一方加熱、本加熱の順に発泡粒子を加熱する方法が好ましい。
【0088】
また、前記発泡粒子成形体は、発泡粒子を通路内の上下に沿って連続的に移動するベルトによって形成される型内に連続的に供給し、水蒸気加熱領域を通過する際に飽和蒸気圧が0.01〜0.25MPa(G)の水蒸気を供給して発泡粒子を膨張、融着させ、その後冷却領域を通過させて冷却し、次いで得られた発泡粒子成形体を通路内から取り出し、適宜長さに順次切断する連続式型内成形法(例えば特開平9−104026号、特開平9−104027号及び特開平10−180888号等参照)により製造することもできる。
【0089】
前記型内成形に先立ち、前記方法で得られた発泡粒子を加圧可能な密閉容器に充填し、空気などの加圧気体により加圧処理して発泡粒子内の圧力を高める操作を行って発泡粒子内の圧力を0.01〜0.15MPa(G)に調整した後、該発泡粒子を容器内から取り出して型内成形を行なうことにより、発泡粒子の型内成形性をより一層向上させることが出来る。
【実施例】
【0090】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0091】
発泡粒子の作製に用いた原料を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
実施例1〜7、比較例1、2
多層樹脂粒子製造用の装置として、内径65mmの芯層形成用押出機および内径30mmの融着性向上層形成用押出機の出口側に多層ストランド形成用の共押ダイを付設した押出機を用いた。
芯層形成用押出機および融着性向上層形成用押出機に、それぞれ表1に示す芯層および融着性向上層を形成するための基材樹脂、末端封止剤としてのカルボジイミド(Bioamide100、ラインケミー製)を、表2に示す割合で、夫々の押出機に供給し、200〜220℃で溶融混練した。その溶融混練物を前記の共押ダイに導入してダイ内で合流して押出機先端に取り付けた口金の細孔から、芯層の側面に融着性向上層が形成された多層ストランドとして共押出し、共押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーで重量が表2に記載の重量となるように切断し、乾燥して多層樹脂粒子を得た。
なお、芯層のポリ乳酸系樹脂には気泡調整剤としてポリテトラフルオロエチレン粉末(商品名:TFW−1000、(株)セイシン企業製)を含有量が1000重量ppmとなるようにマスターバッチで供給した。融着性向上層のポリ乳酸系樹脂にはフタロシアニングリーン系顔料を含有量が100重量ppmとなるようにマスターバッチで添加した。また、実施例7においては、融着性向上層に、ポリブチレンサクシネート(品名:ビオノーレ#1001、昭和電工(株)製、融点114℃)を30重量%配合した。
原料の結晶化度は前記方法により(1)式により算出した。
【0094】
次に、前記多層樹脂粒子を用いてポリ乳酸系樹脂発泡粒子を作製した。
まず、前記のようにして得られた樹脂粒子1kgを分散媒としての水3Lと共に撹拌機を備えた5Lのオートクレーブ内に仕込み、更に分散媒中に、分散剤として酸化アルミニウム0.45重量部、界面活性剤(商品名:ネオゲンS−20F、第一工業製薬社製、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を有効成分量として0.01重量部を添加した。次いで、二酸化炭素をオートクレーブ内の圧力が1.0MPa(G)となるまでオートクレーブ内に圧入した。そして、撹拌下で表1に示す発泡温度まで昇温し、表2に示す圧力になるまで二酸化炭素をさらに圧入し、表2に示す発泡温度で15分間保持した。その後、窒素にて背圧を加えながらオートクレーブ内の内容物を大気圧下に放出して表2に示す見掛け密度のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。なお、分散剤、界面活性剤の添加量(重量部)は、ポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対する量である。
【0095】
ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造条件(密閉容器内圧力、及び発泡温度)を表2に示す。
また、得られた発泡粒子の諸物性を測定した。結果を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
次に、発泡粒子を用いて発泡粒子成形体を作製した。
得られた発泡粒子を250mm×200mm×20mmの平板状成形体を成形するための型に充填し(クラッキング4mm)、スチーム加熱による加圧成形により型内成形を行なって平板状の発泡粒子成形体を得た。なお、実施例5においては、0.05MPa(G)の内圧を付与した発泡粒子を用いた。
加熱方法は両面の型のドレン弁を開放した状態でスチームを8秒間供給して予備加熱(排気工程)を行ったのち、両面のドレン弁を閉止した状態で両面より8秒間、表3に記載の圧力のスチームにより加熱した。
【0098】
加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.02MPa(G)に低下するまで水冷したのち、型を開放し成形体を型から取り出した。得られた成形体は40℃のオーブン内にて15時間養生した後、次いで70℃のオーブンにて15時間養生し、その後、室温まで徐冷した。このようにして、発泡粒子成形体を得た。
また、同様にして、5mmの薄肉部を有する筐型成形体(外形寸法40mm×60mm×85mm)を成形するための型を用いて、発泡粒子成形体を得た。
このようにして得られた発泡粒子成形体について、諸物性を測定、評価した。結果を表3に示す。
【0099】
【表3】
【0100】
各項目については以下のように測定、評価した。
【0101】
[発泡粒子の嵩密度]
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置して養生する。次に、同恒温室内にて、約500mlの養生後の発泡粒子群の重量W1(g)を測定し、重量を測定した発泡粒子群を金網などの道具を使用して温度23℃の水の入ったメスシリンダー中に沈めた。次に、金網等の道具の水面下の体積を差し引いた、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の体積V1(L)を測定し、メスシリンダーに入れた発泡粒子群の重量W1を体積V1で割り算(W1/V1)することにより見掛け密度(kg/cm)を求めた。この見掛け密度を1.6で割算した値を発泡粒子の嵩密度(kg/cm)とした。
【0102】
[吸熱量(Bf:endo)および発熱量(Bf:exo)、結晶化度]
前記の方法により測定した。
【0103】
[独立気泡率]
前記の方法により測定した。
【0104】
[平均気泡径]
前記の方法により測定した。
【0105】
「1cmあたりの発泡粒子の数」
発泡粒子成形体の表面を観察し、4cm×4cmの正方形内に存在する発泡粒子数を求め、単位換算した。
これを5回繰り返して、1cm2内に存在する発泡粒子の相加平均値を求めた。
【0106】
「成形体の表面平滑性」
発泡粒子成形体の表面を肉眼で観察し以下の基準にて評価した。
◎:発泡粒子成形体の表面に粒子間隙が少なく凹凸がなく良好な表面状態を示す。
○:発泡粒子成形体の表面に粒子間隙および/又は凹凸がやや認められる。
△:発泡粒子成形体の表面に粒子間隙及び/又は凹凸が明らかに認められる。
×:発泡粒子成形体の表面に粒子間隙および/又は凹凸が著しい。
【0107】
[融着率]
融着率は下記の方法により測定し評価した。発泡粒子成形体を折り曲げて破断し、破断面に存在する発泡粒子の数(C1)と破壊した発泡粒子の数(C2)とを求め、上記発泡粒子に対する破壊した発泡粒子の比率(C2/C1×100)を材料破壊率として算出した。異なる試験片を用いて前記測定を5回行いそれぞれの材料破壊率を求め、それらの算術平均値を融着率とした。
【0108】
「収縮率」
平板成形型の寸法に対する養生後の発泡粒子成形体の横方向の寸法変化を、下式にて求めた。
収縮率(%)=(1−(養生後の発泡粒子成形体の横方向の最小寸法(mm)/250mm))×100
【0109】
「成形体の見掛け密度」
発泡粒子成形体の重量を発泡粒子成形体の体積で割算することにより求めた。なお、発泡粒子成形体の体積は水没法によって求めた。
【0110】
[回復性]
得られた発泡粒子成形体表面に皺、収縮があり、金型形状を保持していないものを不合格と判定し、×と記載した。発泡粒子成形体表面に皺や収縮がなく、金型形状を保持しているものを合格と判定し、○と記載した。
【0111】
[引張強さ]
平板状の発泡粒子成形体から切出した測定試料(JIS K6251に規定するダンベル状1号、厚み10mm(片面に成形スキン付))を23℃、湿度50%の条件下、24時間放置後、JIS K6767(1999年)に準拠し、試験速度500mm/minで引張試験を5回実施し、切断にいたるまでの最大荷重から各試験片における引張強さを求め、それらの相加平均値として記載した。
【0112】
[引張強さ/見掛け密度]
引張強さ/見掛け密度は、引張強さ[kPa]を前記見掛け密度[kg/m]で割算して求めた。
【0113】
前記表2から、実施例1〜7の発泡粒子成形体は、引張強さ/見掛け密度の比が本発明で特定する範囲を満足し、表面平滑性、回復性、融着性、機械的強度、寸法安定性に優れた発泡粒子成形体であることが確認された。
【0114】
一方、比較例1は発泡粒子成形体の製造に用いた発泡粒子の高温ピークの熱量が高すぎる例であり、得られた発泡粒子成形体は、引張強さ/見掛け密度の比が本発明で特定する範囲を満足せず、融着性に劣ると共に、発泡粒子間の間隙が大きく表面平滑性に劣るものとなった。なお、型内成形時の二次発泡性を高めるために、成形スチーム圧を高めて型内成形を行なったが、発泡粒子成形体が大きく収縮してしまい、やはり良好な発泡粒子成形体を得ることはできなかった。
【0115】
比較例2は発泡粒子成形体の製造に用いた発泡粒子の結晶化度が低い例であり、得られた発泡粒子成形体は、引張強さ/見掛け密度の比が本発明で特定する範囲を満足せず、融着性、表面平滑性に劣り、寸法収縮率が大きく、良好な発泡粒子成形体を得ることが出来なかった。





図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7