特許第6583919号(P6583919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583919
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】折板屋根施工用タイトフレーム
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/36 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   E04D3/36 A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-89509(P2016-89509)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-197968(P2017-197968A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 克也
(72)【発明者】
【氏名】染矢 友英
【審査官】 前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−068499(JP,A)
【文献】 特開平09−111965(JP,A)
【文献】 特開2008−255621(JP,A)
【文献】 実開昭56−051918(JP,U)
【文献】 特開2014−040720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/30−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に固定され、該基材における固定状態で自立姿勢を維持する少なくとも一対の脚部と、該脚部の上端部を相互に連結する連結部材と、該連結部材に設けられ、折板屋根材の膨出部に連係部を引っ掛けて該折板屋根材を抜け止め保持する係止部材とを備えた折板屋根施工用タイトフレームであって、
前記係止部材は、その上面が水平かつ平坦で、前記折板屋根材を抜け止め保持する際に該折板屋根材を支える天面壁を有し、
該天面壁に、該天面壁の縁部領域を残して形成された区画凹所を設け、該区画凹所の底壁と前記連結部材とを締結手段を介して接続してなることを特徴とする折板屋根施工用タイトフレーム。
【請求項2】
前記区画凹所は、前記底壁および該底壁と前記天面壁との相互をつなぐ周壁の少なくとも一方に1つまたは複数の開孔を有することを特徴とする請求項1に記載した折板屋根施工用タイトフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場、倉庫、大型店舗等の大面積の屋根において幅広く使用される折板屋根につき、その屋根を施工する際に用いて好適なタイトフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
折板屋根材は、本来、鋼板コイルを素材として、これを施工現場に設置されたロール成形機で所望の形状、長さに成形される製品であって、施工性、耐風圧強度、止水性を経済的に確保できる屋根材として広く普及している。
【0003】
この種の屋根材は、その施工に際しては、タイトフレームの頂部に吊子を設け、該吊子を介して屋根材をタイトフレームに固定、保持するのが一般的であるが、吊子を介して屋根材を固定、保持するタイトフレームは、部品点数が多く、施工作業に手間がかかるとともに、吊子を設置するスペースの分だけ屋根の高さが高くなる不具合を有している。
【0004】
かかる不具合の解消を図ったものとして、近年では、タイトフレームのフレーム本体の上部に該フレーム本体と一体になる屋根材取付け部(吊子の代わりをするもの)を設け、この屋根材取付け部に屋根材の係止部を引っ掛けるとともに下ハゼ、上ハゼを巻締めすることによって該取付け部に抜け止め保持する、いわゆる嵌合式タイトフレームが使用されるようになってきており、この点に関する先行文献として、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】意匠登録第1384419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記文献に開示されたタイトフレームは、屋根材の下ハゼと上ハゼを巻締めする際に、屋根材が取付け部に強く押し付けられるため、図11に示すように屋根材が局所的に膨らむ形状変形を引き起こすことがあり、これにより屋根の美観を損なうことが指摘されている。
【0007】
また、折板屋根の施工に当たっては、折板屋根材を、タイトフレームの上に一旦、仮敷きすることになるが、下ハゼ、上ハゼの巻締め作業においては、仮敷きした屋根板材の上に作業者が乗る必要があるため、その重みで仮敷きした折板屋根材が図12に示すように屋根材取付け部からずり落ちることがあり(屋根板材の溝板部分と母屋等の取付け部分との間には10mm以上の隙間があるのが普通)、効率的な作業が行えない不具合もある。
【0008】
本発明の目的は、下ハゼ、上ハゼを巻締めして屋根材同士をつなぎ合わせる際に生じていた折板屋根材の局所的な変形を回避しながらも効率的な施工を実現することができ、かつ構造のより簡素化されたタイトフレームを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材に固定され、該基材における固定状態で自立姿勢を維持する少なくとも一対の脚部と、該脚部の上端部を相互に連結する連結部材と、該連結部材に設けられ、折板屋根材の膨出部連係部引っ掛けて該折板屋根を抜け止め保持する係止部材とを備えた折板屋根施工用タイトフレームであって、前記係止部材は、その上面が水平かつ平坦で、前記折板屋根材を抜け止め保持する際に該折板屋根材を支える天面壁を有し、該天面壁に、該天面壁の縁部領域を残して形成された区画凹所を設け、該区画凹所の底壁と前記連結部材とを締結手段を介して接続してなることを特徴とする折板屋根施工用タイトフレームである。
【0010】
上記の構成からなるタイトフレームにおいて、前記区画凹所は、前記底壁および該底壁と前記天面壁との相互をつなぐ周壁の少なくとも一方に1つまたは複数の開孔を有すること、が本発明の課題解決のための具体的手段として好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイトフレームによれば、折板屋根材を支える係止部材の天面壁の上面を水平でかつ平坦なものとしたため、下ハゼと上ハゼとを巻締めする際に折板屋根材の係止部材への接触圧が平均化され全体として低減するため、折板屋根材の形状変形を防止することができる。また、巻締め作業を行う際に、仮敷き状態の折板屋根材の上に作業者が乗ったとしても、天面壁が水平に張り出しているので、折板屋根材の回転が抑えられてタイトフレーム(係止部材)から折板屋根材が簡単にずり落ちることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)〜(c)は、本発明にしたがうタイトフレームの実施の形態を模式的に示した図であり、(a)は、正面図、(b)は右側面図、(c)は平面図である。
図2図1(a)〜(c)に示したタイトフレームの外観斜視図である。
図3】本発明にしたがうタイトフレームに用いて好適な折板屋根材の外観斜視図である。
図4図3に示した折板屋根材の正面を示した図である。
図5図3、4に示した折板屋根材をタイトフレームに組み付けた状態を示した図である。
図6図3、4に示した折板屋根材をタイトフレームに組み付けた状態を示した外観斜視図である。
図7】下ハゼ、上ハゼの巻締め要領を示した図である。
図8】(a)〜(c)は、本発明にしたがうタイトフレームの他の実施の形態を模式的に示した図であり、(a)は、正面図、(b)は右側面図、(c)は平面図である。
図9図8(a)〜(c)に示したタイトフレームの外観斜視図である。
図10図3、4に示した折板屋根材を図9に示したタイトフレームに組み付けた状態を示した図である。
図11】巻締め作業において生じる局所的形状変形の発生部位を示した図である。
図12】巻締め作業時における折板屋根材のずり落ち状況を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1(a)〜(c)は、本発明にしたがうタイトフレームの実施の形態を模式的に示した図であり、(a)は正面図、(b)は、右側面図、(c)は平面図(脚部は表示せず)である。また、図2は、図1(a)〜(c)に示したタイトフレームの外観を斜視図で示した図ある。
【0014】
本発明にしたがうタイトフレームは、厚さが2.5mm程度になる金属製部材を用い、プレス成形、溶接等の工程を経て製作される。タイトフレームを構成する部材の厚さや材質、製作方式についてはとくに限定されない。また、図1では、一対の脚部を有するタイトフレームを代表例として示しているが、図1に示したタイトフレームを横並び状態で2組以上連接した多連タイプのものも本発明に含むものとする。
【0015】
図における符号1A、1Bは、タイトフレームの脚部である。この脚部1A、1Bは、例えば、板状体、溝形あるいはC型断面を有するチャンネル材にて構成することができるものであって、その下端にはそれぞれ板状片(舌片)1a、1bが設けられている。脚部1A、1Bは、板状片1a、1bを通してビスや釘等の締結手段を母屋等の基材に打込むことにより基材の上に固定され、自立姿勢を維持する。
【0016】
また、2は、脚部1A、1Bの上端部を相互に連結する連結部材である。この連結部材2は、脚部1A、1Bとは別部材で構成し溶接等の接合手段によって脚部1A、1Bと一体連結することができるが、一つの部材に曲げ加工を施して脚部1A、1Bおよび連結部材2を構成してもよい。連結部材2は、脚部1A、1Bと同様に、板状体、溝形あるいはC型断面を有するチャンネル材を適用することができる。
【0017】
上記脚部1A、1B、連結部材2は、タイトフレームのフレーム本体を構成するものであり、このフレーム本体は、脚部1A、1Bそのものを傾斜させ、上端部が相互に接近するハの字状配置とされており連結部材2との連結により、折板屋根材の複数枚をつなぎ合わせた際に形成される山部に対応する山型形状となっている。
【0018】
また、3は、連結部材2の上面に設けられた係止部材である。この係止部材3は、連結部材2の両端部で外方へ向けそれぞれ逆向きに張り出した連係部3a、3bを有しており、該連係部3a、3bを折板屋根材に設けられた膨出部に引っ掛けることにより該折屋根材をタイトフレームに抜け止め保持する。
【0019】
係止部材3は、連結部材2の長手方向に沿って配置される一対の台形状の側壁3c、3dと、この台形状の側壁3c、3dの各幅方向の端部にアール(R1)を介して連なる一対の傾斜側壁3e、3fと、該台形状の側壁3c、3dの上端および傾斜側壁3e、3fの上端にアール(R2、R3)を介して連なる天面壁3gから構成されており、その平面形状は、台形状の側壁3c、3d側が長尺で、傾斜側壁3e、3f側が短尺な矩形状になっている。
【0020】
天面壁3gは、その上面が水平かつ平坦であり、折板屋根材を抜け止め保持する際に該折板屋根材を支える。天面壁3gと連結部材2とは、例えば、溶接等によって相互に接合される。係止部材3は、1枚の板材をプレス成型することによって製作してもよいが、各部材を組み合せて製作することも可能であり、この点については限定されない。
【0021】
図3、4は、本発明のタイトフレームを用いて折板屋根を施工するのに好適な折板屋根材を1枚について示した図であり、図5、6は、図3、4に示した折板屋根材を本発明にしたがうタイトフレームに取り付けた状態を示した図である。折板屋根の施工に際しては、かかる折板屋根材は複数枚使用されることになるが、図5では、2枚の折板屋根材をつなぎ合わせた状態を、また、図6では、3枚の折板屋根材を繋ぎ合わせた状態を示している。
【0022】
折板屋根材は、矩形形状をなす溝板4aと、該溝板4aの幅方向の端部の全長にわたって一体的につながり幅方向外方へ向け角度をつけて立ち上がる傾斜壁4b、4cと、該傾斜壁4b、4cの上端部に外方へ向けてそれぞれ突き出した膨出部4d、4eを介して一体連結する傾斜の付された頂面壁4f、4gと、該頂面壁4f、4gに設けられた上ハゼ4h、下ハゼ4iから構成された厚さ0.6〜1.0mmの例えば、溶融亜鉛めっき鋼板やカラー鋼板等の防錆処理鋼板、あるいはステンレス鋼板、アルミニウム合金板、亜鉛板等を、ロール成形、プレス成形によって成形される定尺部材からなるものが適用される。
【0023】
上記の折板屋根材をタイトフレームに組み付けるには、まず、タイトフレームを母屋等の基材Sに固定し、折板屋根材の下ハゼ4iがタイトフレームの係止部材3の上に載るように折板屋根材を仮敷きする。そして、仮敷きされた該折板屋根材に隣接配置される別の折板屋根材の上ハゼ4hを被せたのち図7に示す要領で巻締め作業を行なえばよい。
【0024】
これにより、折板屋根材の膨出部4d、4eがタイトフレームの係止部材3の連係部3a、3bに引っ掛かることになり、折板屋根材は、タイトフレームに抜け止め保持されることになる。タイトフレームを基材Sの長手方向に沿って複数個配置するとともに、折板屋根材の複数枚を該基材に上記の要領で組み付けていくことにより、溝部と山部が交互に配置された波形形状をなす折板屋根が構築される。
【0025】
本発明にしたがうタイトフレームは、係止部材3の天面壁3gの上面が水平かつ平坦であることから、折板屋根材の頂面壁4f、4gに傾斜が付されている場合においては、その相互間には隙間が形成され、上ハゼ4h、下ハゼ4iの巻締め作業に際して該頂面壁4f、4gが係止部材3に強く接触することがないため、折板屋根材の局所的な変形は回避される。
【0026】
また、本発明のタイトフレームでは、天面壁3gが張り出していることから、折板屋根材を仮敷きした状態で溝板4aの上に作業者が乗ったとしても折板屋根材の回転が抑えられるため折板屋根材が係止部材3から簡単にずり落ちることがない。
【0027】
図8(a)〜(c)、図9図10は、本発明にしたがうタイトフレームの他の実施の形態を示した図である。
【0028】
この例は、係止部材3の天面壁3gに、該天面壁3gの縁部領域3g′を残して区画凹所5を形成し、この区画凹所5の底壁5aと連結部材2とをリベットの如き締結手段6を介して接続した構造のものである。
【0029】
かかる構造のタイトフレームにおいても、天面壁3gの縁部領域3g′は、水平かつ平坦であるため、折板屋根材が局所的な変形を起こしにくく、しかも、折板屋根材の回転が抑えられるため折板屋根材が係止部材3から簡単にずり落ちることはない。
【0030】
とくに、天面壁3gに区画凹所5を設けたタイトフレームにおいては、底壁5aおよび底壁5aと天面壁3gとをつなぐ周壁5bの少なくとも一方に1つまたは複数の開孔5cを設けるのが好ましく、この開孔5cにより、例えば、区画凹所5に雨水等が侵入しても該雨水等は区画凹所5から速やかに排出されることになる。区画凹所5の平面形状は、長円状のものを例として示したが、水平、かつ平坦な縁部領域3g′が残存するものであればとくに平面形状については限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、下ハゼと上ハゼを巻締めする際に従来生じていた折板屋根材の局所的な形状変形を回避しながら効率的な施工が行えるタイトフレームが提供できる。
【0032】
また、本発明によれば、構造の簡素化されたタイトフレームが提供できる。
【符号の説明】
【0033】
1A、1B 脚部
1a、1b 板状片
2 連結部材
3 係止部材
3a、3b 連係部
3c、3d 台形状の側壁
3e、3f 傾斜側壁
3g 天面壁
3g′ 縁部領域
4 折板屋根材
4a 溝板
4b、4c 傾斜壁
4d、4e 膨出部
4f、4g 頂面壁
4h 上ハゼ
4i 下ハゼ
5 区画凹所
5a 底壁
5b 周壁
5c 開孔
S 基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12