特許第6583921号(P6583921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583921
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】コンポジット材用チップソー
(51)【国際特許分類】
   B23D 61/04 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   B23D61/04
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-130950(P2016-130950)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-1335(P2018-1335A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2017年11月27日
【審判番号】不服2018-14284(P2018-14284/J1)
【審判請求日】2018年10月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594054841
【氏名又は名称】株式会社谷テック
(74)【代理人】
【識別番号】100121418
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 修
(72)【発明者】
【氏名】谷 康平
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 智一
【合議体】
【審判長】 刈間 宏信
【審判官】 中川 隆司
【審判官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−168008(JP,A)
【文献】 実開昭59−132723(JP,U)
【文献】 特開昭61−203219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D61/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状台金の外周に台座が所定間隔をあけて形成され、各台座に単体のチップが固着されたチップソーにおいて、前記チップは、その逃げ面が、当該チップソーの回転方向側から見て、左端から右端へ下る傾斜面と右端から左端に下る傾斜面とで構成された左端と右端が交互に先鋭状の千鳥刃となされ、且つすくい面が、当該チップソーの径方向側から見て、左端から右端へ下る傾斜面と右端から左端に下る傾斜面とで構成された左端と右端が交互に先鋭状の千鳥刃なされ、前記逃げ面と前記すくい面とが複合千鳥状となされており、各チップのすくい面は台金の中心から外周方向に伸びる中心線を基準として当該チップソーの回転方向と反対方向へ傾いたマイナス角度となされ、且つチップの逃げ面がその全長にわたって同一幅となされている、コンポジット材用チップソー。
【請求項2】
台座は、側面から見て凹弧状であり、チップは、側面から見て略扇形であって、前側の半径部がすくい面となされ、後側の半径部が逃げ面となされ、両半径部をつなぐ凸弧部が前記台座に固着されている、請求項1記載のコンポジット材用チップソー。
【請求項3】
台座は、側面から見て略L字状であって、円板状台金の外周に所定間隔をあけて一体に延成された鋸刃に設けられており、チップは、側面から見て略方形であって、前側部がすくい面となされ、頂部が逃げ面となされ、チップ後側部およびチップ底部が前記台座に固着されている、請求項1記載のコンポジット材用チップソー。
【請求項4】
外周部分に一定幅の脱水素型DLCコーティングが施された、請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載のコンポジット材用チップソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムコア材とその両面に展着された面板とからなるサンドイッチパネルや、樹脂をマトリックスとし、炭素繊維やガラス繊維等をフィラーとするCFRPやFRPといった繊維強化プラスチック等を切断するためのコンポジット材用チップソーに関する。
【背景技術】
【0002】
サンドイッチパネルは、より詳細には、六角形のセルの集合体である蜂の巣構造のハニカムコア材とその両面に接着剤等を介して展着された平らな面板とからなる軽量高強度の構造材であり、自動車や航空機等の輸送機器、住宅および各種施設における建築構造材等、種々の分野で使用されている。
【0003】
繊維強化プラスチックは、ガラス繊維等のフィラーを、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等のマトリックスに混入させて成形した複合材料であり、比較的安価である一方、軽量で物理的強度に優れていることから、ボートや浴槽、各種タンク類等で広く用いられており、また特に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、かなりの高強度と軽さを併せ持つため、航空機、電車、自動車などの輸送機器の分野においても用途が拡大している。
【0004】
そして、このような繊維強化プラスチック等の切断を行う場合、通常、加圧された水を小さい穴などに通すことによって得られるウォータージェットや、円板状台金の外周にダイヤモンド砥粒等を付着させた切断砥石が一般に使用されているが、これらはコスト的に高価であり、また上記切断砥石の場合、繊維強化プラスチックの切削中に目詰まりが生じて加工速度が低下し易く、切断効率が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−60649号公報
【特許文献2】特開2012−187701号公報
【特許文献3】特開2015−20271号公報
【特許文献4】特開2015-178143号公報
【特許文献5】特開2012−206212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したサンドイッチパネルや繊維強化プラスチック等のコンポジット材は異なる複数の構成材料からなるものであるため、各種構成材料の硬度、形状および組成等の違いによって、これらを一括的に切削・切断することが困難であり、そのため、切断箇所において、所謂、バリや毛羽立ち、表層剥離等が発生し易い。
【0007】
具体的には、サンドイッチパネルでは、両側の面板は硬度が高く、高強度であるのに対して内部のハニカムコア材の強度は低い。繊維強化プラスチックでは、内部の繊維(フィラー)は高強度であるのに対して母材(マトリックス)である樹脂の強度は低い。このようなコンポジット材を一様に切削・切断するのは容易ではなく、切削・切断時に前記サンドイッチパネルでは、バリや変形、或はハニカムコア材の圧潰等が発生し易く、前記繊維強化プラスチックでは、母材の溶融や繊維の毛羽立ち、表層剥離等が発生し易い。
【0008】
本発明の目的は、前述した種々の問題を一挙に解消し、優れた切削・切断が容易に行えるコンポジット材用チップソーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の本発明は、円板状台金の外周に台座が所定間隔をあけて形成され、各台座に単体のチップが固着されたチップソーにおいて、前記チップは、その逃げ面が、当該チップソーの回転方向側から見て、左端から右端へ下る傾斜面と右端から左端に下る傾斜面とで構成された左端と右端が交互に先鋭状の千鳥刃となされ、且つすくい面が、当該チップソーの径方向側から見て、左端から右端へ下る傾斜面と右端から左端に下る傾斜面とで構成された左端と右端が交互に先鋭状の千鳥刃なされ、前記逃げ面と前記すくい面とが複合千鳥状となされており、各チップのすくい面は台金の中心から外周方向に伸びる中心線を基準として当該チップソーの回転方向と反対方向へ傾いたマイナス角度となされ、且つチップの逃げ面がその全長にわたって同一幅となされている、コンポジット材用チップソーである。
【0010】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載のコンポジット材用チップソーについて、台座は、側面から見て凹弧状であり、チップは、側面から見て略扇形であって、前側の半径部がすくい面となされ、後側の半径部が逃げ面となされ、両半径部をつなぐ凸弧部が前記台座に固着されていることを技術的特徴とするものである。
【0011】
前記の通り、チップが略扇形であって、前側の半径部がすくい面となされ、後側の半径部が逃げ面となされ、両半径部をつなぐ凸弧部が台金外周に所定間隔をあけて形成された凹弧状の台座に固着されており、且つ隣り合う鋸刃間のピッチが4.5mm未満まで設定可能であり、更には、隣り合うチップ間のピッチは3.5mm以下でも設定可能である。
【0012】
請求項3記載の本発明は、前記請求項1記載のコンポジット材用チップソーについて、台座は、側面から見て略L字状であって、円板状台金の外周に所定間隔をあけて一体に延成された鋸刃に設けられており、チップは、側面から見て略方形であって、前側部がすくい面となされ、頂部が逃げ面となされ、チップ後側部およびチップ底部が前記台座に固着されていることを技術的特徴とするものである。
【0013】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載のコンポジット材用チップソーについて、外周部分に一定幅の脱水素型DLCコーティングが施されていることを技術的特徴とするものである。
【0014】
なお、本出願において、「コンポジット材」とは、サンドイッチパネルや繊維強化プラスチックといった互いに異なる二種以上の材料が複合された全てのものが含まれる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1および請求項3記載の本発明に係るチップソーによれば、台金の外周における鋸刃に固着されたチップが、その逃げ面について、交互に先鋭状の千鳥刃となされているため、被切削材である繊維強化プラスチックの切断箇所において、常に外側のフィラーを切断しながら、内側のマトリックスを切削していくこととなり、その結果、表層剥離が発生しない切削が可能となる。しかも、本発明のチップソーでは、チップのすくい面は台金の中心から外周方向に伸びる中心線を基準として当該チップソーの回転方向と反対方向へ傾いたマイナス角度となされていることで、このような刃先角度によってCFRP(炭素繊維強化プラスチック)等のコンポジット材に対して、刃先が約75°〜約105°の範囲で切削を行い、且つ必ず90°(直角)で切り込む箇所がある。その結果、フィラー(繊維)の剥がれや毛羽立ちが発生せず、これが前述した千鳥刃による連続的な切削作用と相俟って、繊維強化プラスチック中のフィラーを逃さずに鋭く切断することが可能となり、そのためCFRPの切削も確実に行えるという格別の効果が得られる。
【0016】
そして、前述した技術的特徴を有する逃げ面の千鳥刃とすることによって、左右交互の先鋭状のチップを介して、左右にバランスがとれた状態で、被切削材であるコンポジット材の当接箇所において、常に外側のフィラーを切断しながら、内側のマトリックスを切削していくことが可能となり、そのためコンポジット材の切断の際に問題となる表層剥離や毛羽立ち等が発生しないという格別の効果が得られるのである。
【0017】
更に、請求項1記載の本発明では、すくい面が、当該チップソーの径方向側から見て、左端から右端へ下る傾斜面と右端から左端に下る傾斜面とで構成された左端と右端が交互に先鋭状の千鳥刃となされているため、コンポジット材の切削・切断時にその切粉がチップの厚さ中心方向へ移動することとなり、その結果、切削中に切粉が被切削材に衝突して該部分に傷がつくことを確実に防止することができるという実用的利点を有する。すなわち、リード角を千鳥にすることにより切削直後の切粉が被切削材の切断面に擦れずに中心側へ移動することで前記切断面が綺麗に維持でき、また角度がつくことにより、すくい面の摩擦が低下することでも切削抵抗が下がるのである。そして、このような効果が前述した千鳥状の逃げ面による効果と相俟って更なる相乗的な切削・切断性能の向上が実現される。
【0018】
請求項2記載の本発明に係るチップソーは、チップの形状を略扇形とすることで、チップを台金における台座に接合する際に、チップの中心部分を加熱することでその熱がチップの外縁方向へ容易に放出されるようにして、チップ固着時の熱影響を最小限に抑制し、その結果、従来問題となっていた台金外周部の熱膨張による塑性変形が発生しない状況とし、隣り合うチップ間のピッチを4.5mm未満、より好ましく3.5mm程度まで非常に小さくすることが可能となる。そのため、このような極小ピッチを実現することによって、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)等のコンポジット材の厚みが、3mm未満、或は1mm以下の非常に薄い板厚であっても、該コンポジット材を振動させることなく、安定的に切削が行え、またこの際、コンポジット材のマトリックスが熱可塑性プラスチックであっても、前述したような極小ピッチの各チップにおける効率的な放熱によって熱可塑性プラスチックがチップに溶着することなく、確実に切削作業が行えるという格別の利点を有する。
【0019】
以上要するに、前記本発明に係るチップソーは、前述した鋸刃構成によって、従来問題となっていたコンポジット材の切断時におけるバリや毛羽立ち、表層剥離の発生および目詰まりを確実に防止することができ、被切削材がサンドイッチパネルやCFRPであっても鋭利性をもってスムーズに切断することが可能である。
【0020】
請求項4記載の本発明に係るコンポジット材用チップソーは、前記請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載のコンポジット材用チップソーについて、外周部分に一定幅の脱水素型DLCコーティングが施されていることにより、表面平滑性と切削時の摩擦係数の低下を図ることができる。そのため、特に熱可塑性樹脂のCFRPの切断において、溶融樹脂が刃先に溶着することが完全に防止され、バリのない綺麗な切断面を得ることができ、また前述した通り、摩擦係数を低くできることから、被切削材の切断時に刃先に発生する切削熱そのものを抑制することができ、これに伴って工具寿命を延ばし、また台金の塑性変形の防止や溶融温度が低い熱可塑性プラスチックに対する切削性の更なる向上が可能となる。また、前記DLCコーティングによれば、一般的に施されているPVDコーティングに比べて、約1/4の摩擦係数となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態1に係るチップソーの一部を示す側面図である。
図2図1のチップソーにおける鋸刃部分の拡大図である。
図3】同チップソーにおける逃げ面部分の千鳥刃を示す正面図である。
図4】同チップソーにおけるすくい面部分の千鳥刃を示す正面図である。
図5】同チップソーによる切削状態を示すチップ部分の拡大斜視図である。
図6】実施形態2のチップソーの一部を示す側面図である。
図7図6のチップソーにおけるチップ部分の拡大図である。
図8】被削材に対する実施形態1のチップソーにおけるチップの当接状態を示す側面図である。
図9】被削材に対する実施形態2のチップソーにおけるチップの当接状態を示す側面図である。
図10】従来のチップソーによる切削試験の結果を示す被切削材の切断面画像である。
図11】実施形態に係るチップソーによる切削試験の結果を示す被切削材の切断面画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について、図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0023】
(実施形態1)
【0024】
図1図4に示すように、本実施形態に係るコンポジット材用チップソー1は、円板状台金2の外周に鋸刃3が一定間隔あけて形成され、各鋸刃3に形成された台座4にチップ5が固着されたものであって、チップ5は、より詳細には、略縦長方形であって、台金2の一側から他側にかけて傾斜し且つ隣り合う鋸刃3において、刃先B1・B2が互いに反対側となされ、前側部が前記すくい面5aとなされ、頂部5bが逃げ面となされ、後側部5cおよび底部5dが前記台座4に接合されており、且つ隣り合う鋸刃間のピッチPが4.0mm以上となされている。
【0025】
前記チップ5はその逃げ面5bが、当該チップソー1の回転方向A側から見て、左端から右端へ下る傾斜面(角度f)と右端から左端に下る傾斜面(角度f)とで構成された左端と右端が交互に先鋭状の千鳥刃となされ、且つすくい面5a(リード角)が、当該チップソー1の径方向C側から見て、左端から右端へ下る傾斜面(角度e)と右端から左端に下る傾斜面(角度e)とで構成された左端と右端が交互に先鋭状の千鳥刃となされており、各チップのすくい面5aは台金2の中心から外周方向に伸びる中心線CLを基準として当該チップソー1の回転方向Aと反対方向へ傾いたマイナス角度αとなされている。
【0026】
前記台座4は、外方に膨出した鋸刃3に、側面から見て略L字状に形成されている。更に、図5(a)に示すように、前記被切削材である繊維強化プラスチックWの切削の際、チップ5の逃げ面5bは千鳥刃となされているため、左右の刃先B1・B2によって、交互に切り込みがバランス良く行われ、且つ先鋭状の刃先B1・B2が協働して、繊維強化プラスチックWのフィラー(繊維)を切断しつつ、更に切り込んでマトリックス(樹脂)を切削するため、毛羽立ちや表層剥離が完全に防止される。
【0027】
更に、図5(b)に示すように、チップ5は、そのすくい面5aが、当該チップソー1の径方向C側から見て、左端から右端へ下る傾斜面と右端から左端に下る傾斜面とで構成された左端と右端が交互に先鋭状の千鳥刃となされているため、切粉Dが内側I(中心側)へ移動することとなる。
【0028】
(実施形態2)
【0029】
図6および図7に示すように、チップソー21は、円板状台金22の外周に一定間隔で台座24が形成され、台座24にチップ25が固着されたものであって、チップ25は略扇形となされ、且つ刃先Bを頂点として、前側の半径部25aがすくい面となされ、後側の半径部25bが逃げ面となされ、両半径部25a・25bをつなぐ凸弧部25cが台金22外周に一定間隔をあけて形成された凹弧状の前記台座24にロウ付け等によって固着され、且つ隣り合う鋸刃ピッチPが4.5mm未満となされており、チップ25のすくい面25aは台金22の中心から外周方向に伸びる中心線CLを基準として当該チップソー21の回転方向Aと反対方向へ傾いたマイナス角度αとなされている。
【0030】
また、本実施形態のチップソー21における凹弧状の各台座24は、円板状台金22の外周よりも中心方向に窪んだ形態となされ、該台座24に前述した略扇形のチップ25が固着されることにより、隣り合うチップ25間が刃室26となっているものである。
【0031】
更に、当該チップソー21における隣り合う鋸刃ピッチPはより好ましくは、4.5mm未満とすることができ、或いは更に3.0mm未満程度とすることができたものである。
【0032】
また、本実施形態においても、前記実施形態1およびその図3および図4と同様、台金22の外周におけるチップ25の逃げ面25bが、当該チップソー21の回転方向側から見て、左端から右端へ下る傾斜面と右端から左端に下る傾斜面とで構成された左端と右端が交互に先鋭状の千鳥刃となされ、且つすくい面(リード角)25aが、当該チップソー21の径方向C側から見て、左端から右端へ下る傾斜面と右端から左端に下る傾斜面とで構成された左端と右端が交互に先鋭状の千鳥刃となされている。
【0033】
この他、当該チップソー21は、前述したように、チップ25が略扇形であって、前側の半径部25aがすくい面となされ、後側の半径部25bが逃げ面となされ、両半径部25a・25bをつなぐ凸弧部25cが台金22外周に一定間隔をあけて形成された凹弧状の台座24に固着された構成となされているため、台座24へのチップ25の接合にあたって、該チップ25の中心部分を加熱することにより、該チップ25の凸弧部25cを介して台金22の凹弧状の台座24に均一且つ効率的に熱量を与えることができるため、台金22外周における熱影響が最小限に抑えられる。
また、図7に示すように、このことは扇形のチップ25が台金22の凹弧状の台座24に接合され、そして、チップ25の逃げ面25bが前記台座24の端部につながる形状となされているため、いっそう促進され得る。
【0034】
そのため、前述した通り、当該チップソー21では、隣り合う鋸刃ピッチを3.5mm程度に狭くすることが実現される。
【0035】
また、図8および図9に示すように、前述した構成のチップソー1・21でCFRP等のコンポジット材を切削する際、これら被切削材に対して、刃先が75°〜105°の範囲で切削を行い、且つチップ5・25のすくい面5a・25aが直角に切れ込む箇所があるため、この箇所において被切削材であるコンポジット材としての繊維強化プラスチック中の繊維剥離が防止されて、該コンポジット材が完全且つスムーズに切断される。
【0036】
より詳細には、スクイ角を−α、当該チップソーの半径をxとすると、角度がαの位置で刃先の角度とFRP板の角度が90°となり得る。そこでyの長さを求めると、
y=cosα(x/cosα−x)=xcosα(1/cos−1)であり、仮にφ200の鋸で刃先角度−αが30°の場合は、
y=100cos30°(1/cos30°−1)であり、cos30°=0.866より=86.6(1/0.866−1)=13.40であり、よって刃先から板厚中心までの距離が13.40mmの時、刃先と板の角度が90°となり、被切削材に対してチップ刃先が直角に当接して切断可能となる。その結果、鋭利な切削が実現され得る。
【0037】
また、例えばチップソー1・21について、その外周部分に一定幅の脱水素型DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングを施すことで、更なる切削性能の向上並びに使用に伴う摩耗・劣化を有効に防止し得る。
(切断試験)
【0038】
次に、図10に示すように、前述した実施形態のチップソー1・21とは異なり、チップのすくい面がプラス角度で、且つ本発明のような千鳥刃になっていない従来のチップソーによって、アラミド強化繊維プラスチックWの切削・切断試験を行ったところ、従来のチップソーでは、検視台T上の切削面S1に毛羽立ちFが確認された。
【0039】
一方、図11に示すように、実施形態に係るチップソー1・21では、検視台T上の切削面S2に前記バリや毛羽立ち、あるいは表層剥離がまったく認められなかった。更に、前記脱水素型DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングを施した実施形態のチップソー1・21では、更に切削時における摩擦抵抗の低下が顕著に認められた。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のチップソーによれば、従来不可能であった熱可塑性CFRP等の複合材料の切削が容易に行われるため、幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0041】
1・21 チップソー
2・22 円板状台金
3 鋸刃
4・24 台座
5・25 チップ
5a・25a チップのすくい面
5b・25b チップの逃げ面
α すくい角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11