特許第6583923号(P6583923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6583923カメラのキャリブレーション装置、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583923
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】カメラのキャリブレーション装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/70 20170101AFI20190919BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20190919BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   G06T7/70
   H04N5/232
   G03B15/00 U
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-161404(P2016-161404)
(22)【出願日】2016年8月19日
(65)【公開番号】特開2018-28864(P2018-28864A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2018年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】要 強
(72)【発明者】
【氏名】内藤 整
【審査官】 千葉 久博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−54914(JP,A)
【文献】 特開2011−134322(JP,A)
【文献】 特開2009−245060(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0180084(US,A1)
【文献】 河北薫, 外3名,“方向成分を考慮した交点マッチングによる平面射影行列の推定”,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2012年 4月20日,第112巻, 第20号,p.81-86
【文献】 島脇巧, 外2名,“シーン検索システムのための長時間サッカー中継映像の解析”,情報処理学会研究報告,日本,社団法人情報処理学会,2004年 5月 7日,第2004巻, 第40号,p.125-132
【文献】 呉海元, 外2名,“ロボットのボディを利用したカメラキャリブレーション”,情報処理学会研究報告,日本,社団法人情報処理学会,2003年 1月17日,第2003巻, 第2号,p.67-74
【文献】 Xianghua Ying, 外1名,“Camera Calibration from a Circle and a Coplanar Point at Infinity with Applications to Sports Scenes Analyses”,Proceedings of the 2007 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems,米国,2007年,p.220-225
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/70
G03B 15/00
H04N 5/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポーツ・フィールドの円状ラインの少なくとも一部と、前記円状ラインと交差し、かつ、前記円状ラインの中心を通る直線状ラインの少なくとも一部を含むフレームから、当該フレームに対するホモグラフィ行列を求めるキャリブレーション装置であって、
前記直線状ラインと前記円状ラインとの2つの第1交点の実座標と、前記直線状ラインと直交し、かつ、前記円状ラインの中心を通る第1仮想直線と、前記円状ラインとの2つの第2交点の実座標と、を保持する保持手段と、
前記フレームからライン部分を判定してラインを示すライン画像を生成する生成手段と、
前記ライン画像から前記2つの第1交点のカメラ座標と、前記2つの第2交点のカメラ座標を判定する判定手段と、
前記2つの第1交点の実座標及びカメラ座標と、前記2つの第2交点の実座標及びカメラ座標と、に基づき前記フレームのホモグラフィ行列を算出する算出手段と、
を備えていることを特徴とするキャリブレーション装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記ライン画像に含まれる前記円状ラインの少なくとも一部から前記フレームのカメラ座標系において前記円状ラインを示す第1方程式を求め、前記ライン画像に含まれる前記直線状ラインの少なくとも一部から前記フレームのカメラ座標系において前記直線状ラインを示す第2方程式を求め、前記第1方程式と前記第2方程式とに基づき、前記ライン画像に含まれない第1交点のカメラ座標を判定することを特徴とする請求項1に記載のキャリブレーション装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記第2方程式から前記フレームのカメラ座標系において前記第1仮想直線を示す第3方程式を求め、前記第1方程式と前記第3方程式とに基づき、前記2つの第2交点のカメラ座標を判定することを特徴とする請求項2に記載のキャリブレーション装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記直線状ラインと直交する他の直線状ラインが前記ライン画像内にあると、前記フレームのカメラ座標系における前記他の直線状ラインの方向に基づき前記第3方程式を求めることを特徴とする請求項3に記載のキャリブレーション装置。
【請求項5】
スポーツ・フィールドの円状ラインの少なくとも一部と、前記円状ラインと交差し、かつ、前記円状ラインの中心を通る直線状ラインの少なくとも一部を含むフレームから、当該フレームに対するホモグラフィ行列を求めるキャリブレーション装置であって、
前記直線状ラインと前記円状ラインとの2つの第1交点の実座標と、前記直線状ラインと直交し、かつ、前記円状ラインの中心を通る第1仮想直線と、前記円状ラインとの2つの第2交点の実座標と、を保持する保持手段と、
前記フレームからライン部分を判定してラインを示すライン画像を生成する生成手段と、
前記ライン画像から前記2つの第1交点のカメラ座標を判定する判定手段と、
前記ライン画像から前記2つの第2交点のカメラ座標の候補の組を複数推定する推定手段と、
前記推定手段が推定した候補の組それぞれについて、前記2つの第1交点の実座標及びカメラ座標と、前記2つの第2交点の実座標と、前記候補の組の2つのカメラ座標と、に基づきホモグラフィ行列を算出する算出手段と、
前記推定手段が推定した候補の組それぞれについて前記算出手段が算出したホモグラフィ行列から、前記フレームに対するホモグラフィ行列を選択する選択手段と、
を備えていることを特徴とするキャリブレーション装置。
【請求項6】
前記保持手段は、前記スポーツ・フィールドの複数の基準点それぞれの実座標を保持しており、
前記選択手段は、前記算出手段が算出したホモグラフィ行列それぞれにより基準点の座標をカメラ座標に変換し、変換後のカメラ座標と前記ライン画像が示すラインとの距離に基づき、前記算出手段が算出したホモグラフィ行列から前記フレームに対するホモグラフィ行列を選択することを特徴とする請求項5に記載のキャリブレーション装置。
【請求項7】
前記基準点は、前記スポーツ・フィールドの2つの直交するラインの交点を含むことを特徴とする請求項6に記載のキャリブレーション装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記ライン画像に含まれる前記円状ラインの少なくとも一部から前記フレームのカメラ座標系において前記円状ラインを示す第1方程式を求め、前記ライン画像に含まれる前記直線状ラインの少なくとも一部から前記フレームのカメラ座標系において前記直線状ラインを示す第2方程式を求め、前記第1方程式と前記第2方程式とに基づき、前記ライン画像に含まれない第1交点のカメラ座標を判定し、
前記推定手段は、前記第1方程式に基づき前記フレームのカメラ座標系において前記第1仮想直線を示す第3方程式を複数推定し、前記第3方程式と前記第1方程式の2つの交点のカメラ座標を、前記2つの第2交点のカメラ座標の候補の組とすることを特徴とする請求項5又は6に記載のキャリブレーション装置。
【請求項9】
前記フレームのカメラ座標系における前記第3方程式それぞれの傾きは、前記フレームのカメラ座標系における前記第2方程式の傾きに対して所定範囲内にあることを特徴とする請求項8に記載のキャリブレーション装置。
【請求項10】
スポーツ・フィールドの円状ラインの少なくとも一部と、前記円状ラインと交差し、かつ、前記円状ラインの中心を通る直線状ラインの少なくとも一部を含むフレームから、当該フレームに対するホモグラフィ行列を求めるキャリブレーション装置におけるキャリブレーション方法であって、前記キャリブレーション装置は、前記直線状ラインと前記円状ラインとの2つの第1交点の実座標と、前記直線状ラインと直交し、かつ、前記円状ラインの中心を通る第1仮想直線と、前記円状ラインとの2つの第2交点の実座標と、を保持しており、
前記キャリブレーション方法は、
前記フレームからライン部分を判定してラインを示すライン画像を生成する生成ステップと、
前記ライン画像から前記2つの第1交点のカメラ座標と、前記2つの第2交点のカメラ座標を判定する判定ステップと、
前記2つの第1交点の実座標及びカメラ座標と、前記2つの第2交点の実座標及びカメラ座標と、に基づき前記フレームのホモグラフィ行列を算出する算出ステップと、
を含むことを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項11】
スポーツ・フィールドの円状ラインの少なくとも一部と、前記円状ラインと交差し、かつ、前記円状ラインの中心を通る直線状ラインの少なくとも一部を含むフレームから、当該フレームに対するホモグラフィ行列を求めるキャリブレーション装置におけるキャリブレーション方法であって、前記キャリブレーション装置は、前記直線状ラインと前記円状ラインとの2つの第1交点の実座標と、前記直線状ラインと直交し、かつ、前記円状ラインの中心を通る第1仮想直線と、前記円状ラインとの2つの第2交点の実座標と、を保持しており、
前記キャリブレーション方法は、
前記フレームからライン部分を判定してラインを示すライン画像を生成する生成ステップと、
前記ライン画像から前記2つの第1交点のカメラ座標を判定する判定ステップと、
前記ライン画像から前記2つの第2交点のカメラ座標の候補の組を複数推定する推定ステップと、
推定した候補の組それぞれについて、前記2つの第1交点の実座標及びカメラ座標と、前記2つの第2交点の実座標と、前記候補の組の2つのカメラ座標と、に基づきホモグラフィ行列を算出する算出ステップと、
前記候補の組それぞれについて算出したホモグラフィ行列から、前記フレームに対するホモグラフィ行列を選択する選択ステップと、
を含むことを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載のキャリブレーション装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラのキャリブレーション技術に関し、特に、野球、サッカーまたはテニスのようなスポーツ映像に対するキャリブレーション技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラキャリブレーション(以下、単にキャリブレーションと呼ぶ)は、3Dコンピュータビジョンにおいて非常に重要な技術であり、現実シーンのワールド座標系(以下、実座標系と呼ぶ)とカメラ画像のピクセル座標系(以下、カメラ座標系と呼ぶ。)との関係は、カメラに固有の内部パラメータ及び外部パラメータ(あるいはホモグラフィ行列)に基づいて求められる。特に、スポーツ映像における自由視点でのナビゲーションでは、実際のフィールド上での各選手の位置が重要であり、カメラ画像における各選手の座標をホモグラフィ行列で射影変換することで求められる。したがって、正確なキャリブレーションを自動で行える技術が、自由視点ナビゲーションやビデオ分析のリアルタイムアプリケーションにおいて必要とされる。
【0003】
なお、あるフレームのホモグラフィ行列は、既知である少なくとも4点の実座標と、当該少なくとも4点の実座標に対応する、当該フレームでのカメラ座標が分かれば求めることができる。ここで、非特許文献1は、サッカーフィールドのペネルティエリアやゴールエリア等を示す2つの直交するラインの交点に基づきホモグラフィ行列を求める構成を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Farin et al,"Robust camera calibration for sport videos using court models",Electronic Imaging 2004,International Society for Optics and Photonics,2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1の構成では、映像を構成するフレームの内、直交する2つのラインの交点が少なくとも4つ存在するフレームに対してはホモグラフィ行列を求めることができるが、その他のフレームについてはホモグラフィ行列を求めることができない。
【0006】
本発明は、ホモグラフィ行列を算出できるフレームの数を、従来技術より多くできるキャリブレーション装置、方法及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、スポーツ・フィールドの円状ラインの少なくとも一部と、前記円状ラインと交差し、かつ、前記円状ラインの中心を通る直線状ラインの少なくとも一部を含むフレームから、当該フレームに対するホモグラフィ行列を求めるキャリブレーション装置は、前記直線状ラインと前記円状ラインとの2つの第1交点の実座標と、前記直線状ラインと直交し、かつ、前記円状ラインの中心を通る第1仮想直線と、前記円状ラインとの2つの第2交点の実座標と、を保持する保持手段と、前記フレームからライン部分を判定してラインを示すライン画像を生成する生成手段と、前記ライン画像から前記2つの第1交点のカメラ座標と、前記2つの第2交点のカメラ座標を判定する判定手段と、前記2つの第1交点の実座標及びカメラ座標と、前記2つの第2交点の実座標及びカメラ座標と、に基づき前記フレームのホモグラフィ行列を算出する算出手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来技術より多くのフレームについてホモグラフィ行列を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態においてキャリブレーション装置が保持する実座標の位置を示す図。
図2】一実施形態によるキャリブレーション方法のフローチャート。
図3】一実施形態によるライン画像を示す図。
図4】一実施形態によるセンターサークルに基づくキャリブレーション方法のフローチャート。
図5】一実施形態によるセンターサークルに基づくキャリブレーション方法の説明図。
図6】一実施形態によるセンターサークルに基づくキャリブレーション方法の説明図。
図7】一実施形態によるキャリブレーション装置の構成図。
図8】一実施形態による第2ホモグラフィ行列判定部の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態についてサッカーの映像を例にして説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。また、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0011】
<第一実施形態>
図1は、サッカーフィールドを示している。本実施形態によるキャリブレーション装置は、図1の黒丸、白丸、網掛をした丸の実座標を示す情報を保持している。また、フィールドにひかれたラインを実座標系で特定できる情報も保持している。なお、黒丸は、フィールド上に引かれた2つのラインの交点である。また、白丸は、フィールド上に引かれた2つのラインの交点ではないが、あるラインを伸ばした場合における他のラインとの交点を示している。なお、図1においては、あるラインを伸ばした部分を点線で示している。つまり、点線は、フィールド上に実際にひかれたラインではない。また、網掛をした丸は、センターラインと直交し、かつ、センターサークルの中心を通る直線とセンターサークルの交点を示している。
【0012】
図2は、本実施形態によるキャリブレーション装置が実行するキャリブレーション方法のフローチャートである。なお、図2は1つのフレームに対する処理を示し、実際には、映像内の全フレームに渡り図2の処理は繰り返される。まず、S10において、フィールドの色とフィールド上のラインの色との違いに基づきフィールド上のライン部分を抽出する。一例として、フレームの、例えば、中央付近の所定領域内の各画素の色値の平均値を求める。そして、フレーム内の各画素について、平均値との色値の差が閾値以上ある画素を前景画素とし、それ以外の画素を背景画素(フィールドを示す画素)とする。そして、前景画素を例えば、画素値255(白色)で示し、背景画素を画素値0で示すマスク画像を生成する。通常、ライン及びフィールド上の選手に対応する画素が前景画素として得られる。続いて、ライン部分を強調するため、例えば、メディアンフィルタをマスク画像に適用し、フィルタ適用前後のマスク画像の差分を取ることでライン部分を示すライン画像を抽出することができる。なお、ライン画像にはフィールド上の選手によるノイズが現れるが、この部分は、ライン上に連続する画素とはならないため影響はない。なお、ライン画像の生成方法は、上述した例に限定されず、その他の公知の方法を使用できる。例えば、ラインの色は、通常、フィールドの色とは異なるため、ラインの色に基づきライン画像を抽出することもできる。また、上記例では、フレームの所定領域内の各画素の色値の平均値をフィールドの色値とし、平均値との差が少ない色値の画素をフィールドの画素としていたが、平均値の代わりに予め求めた固定的な値を使用することができる。なお、ライン画像とは、ラインに対応する画素と、それ以外の画素を2値で示す2値画像である。
【0013】
図3は、ライン画像の一例であり、黒色部分がラインとして抽出された画素(以下、ライン画素と呼ぶ)を示している。なお、ノイズは選手に起因するものである。また、図3に示す様に、フィールド上の各ラインには、所々にライン画素として検出されない箇所が存在する。キャリブレーション装置は、直線又は曲線状に連続するライン画素を1つのグループとする。図3の例では、グループ40〜49が、それぞれ、1つのグループとして検出される。なお、選手に起因するノイズは直線や曲線状とはならないため除外される。そして、キャリブレーション装置は、グループ内のライン画素の連続する方向から、直線を構成するグループと、曲線を構成するグループに分類する。そして、直線を構成するグループについては、ライン画素の連続する方向と、その位置から、さらに、同じラインを示すグループを判定する。つまり、図3の例では、ライン画素のグループ40〜42が1つの連続する直線の部分であり、ライン画素のグループ43〜45が1つの連続する直線の部分であり、ライン画素のグループ46〜49が1つの連続する円の部分であると判定することができる。これにより、キャリブレーション装置は、実際にはラインであるが、ライン画素として抽出されなかった部分を補間して、処理対象のフレーム内に写っているフィールドのラインを復元することができる。つまり、例えば、図3のセンターサークルは、4箇所で途切れているが、途切れている部分をライン画素に置き換えて、フレーム上では楕円状に見えるセンターサークルを示す様にライン画像を変更することができる。なお、選手に起因するノイズをラインに属するグループと誤判定することを避けるため、所定数以上の画素が直線又は曲線状に繋がっているグループのみを検出して、同じラインのグループか否かを判定する構成であっても良い。
【0014】
図2に戻り、キャリブレーション装置は、S11で、ライン画像がゴール付近の画像であり、直交する2つのラインの交点が少なくとも4つ存在するかを判定する。なお、図1に示す様に、直交する2つのラインの総ての交点の実座標は既知である。直交する2つのラインの交点が少なくとも4つ存在すると、キャリブレーション装置は、S12で、非特許文献1に記載の構成により処理対象フレームのホモグラフィ行列を算出する。例えば、ゴールエリアを示すラインの4つの頂点がライン画像に存在すると、この4つの頂点の実座標とライン画像におけるカメラ座標に基づきホモグラフィ行列を算出することができる。なお、フレーム内の交点が、実座標系のどの交点に対応するかはライン画像が示すラインと、図1にて説明したフィールドにひかれたラインを実座標系で特定できる情報との比較により特定することができる。
【0015】
一方、S11で、少なくとも4つの交点がライン画像に存在しないと、キャリブレーション装置は、S12で、センターサークル及びセンターラインがライン画像内にあるかを判定する。なお、センターサークル及びセンターラインの総てがライン画像内にある必要はなく、それぞれの部分が存在すれば良い。なお、サッカーフィールドにおいて曲線は、センターサークルと、ペナルティアークのみであり、ペナルティアーク付近のフレームと、センターサークル付近のフレームでは、フレーム内のラインの数等が異なるため、ライン画像の曲線がセンターサークルであるかペナルティアークであるかを判別することができる。センターサークル及びセンターラインがライン画像内にあると、キャリブレーション装置は、S14でセンターサークルに基づくホモグラフィ行列の算出を行う。一方、S13で、センターサークル及びセンターラインがライン画像内ないと、キャリブレーション装置は、S15で、当該処理対象フレームについてはホモグラフィ行列を算出できないことを記録して、処理を終了する。なお、ホモグラフィ行列を算出できないフレームについては、公知の別の方法により、個別にホモグラフィ行列を算出する必要がある。したがって、キャリブレーション装置は、記録したホモグラフィ行列を算出できなかったフレームを示す情報、例えば、フレーム番号等をユーザに表示・通知する。
【0016】
図4は、S14における処理を示すフローチャートである。本実施形態では、ライン画像にセンターサークル及びセンターラインが写っている場合、図5(A)及び(B)に示す様に、センターサークルとセンターラインの交点51及び52と、センターラインと直交し、かつ、センターサークルの中心を通る仮想直線62とセンターサークルとの交点53及び54の計4つの交点を使用してホモグラフィ行列を算出する。なお、交点51〜54の実座標は上述した様に既知である。したがって、交点51〜54のカメラ座標が分かればホモグラフィ行列を算出することができる。
【0017】
このため、キャリブレーション装置は、まず、S20で、交点51及び52のカメラ座標を判定する。交点51及び52がライン画像内に存在するのであれば、交点51及び52のカメラ座標はライン画像から直ちに求めることができる。一方、交点51及び52の両方、或いは、いずれか一方がライン画像内に存在しないと、キャリブレーション装置は、以下に説明する様に計算により交点51及び52のカメラ座標を求める。
【0018】
センターサークルは円であるが、通常、フレーム内においては図5(B)に示す様に楕円状になる。したがって、センターサークルは、カメラ座標系において、
ax+bxy+cy+dx+ey+f=0
で表される。また、フレーム内においてセンターラインは斜線となり、
(x−g)/h=(y−i)/k
で表される。キャリブレーション装置は、ライン画像内のセンターサークル及びセンターラインに基づき未知数a〜kを求め、これにより交点51及び52のカメラ座標を求める。
【0019】
一方、交点53及び交点54は、仮想直線62とセンターサークルの交点である。本実施形態において、キャリブレーション装置は、まず、図6に示す様に、仮想直線63を設定し、仮想直線63とセンターサークルの2つの交点71及び72のカメラ座標を判定する。図6に示す様に、仮想直線63は、仮想直線62の方向とは異なり、よって、交点71及び72は、交点53及び54に一致していない。しかしながら、キャリブレーション装置は、交点71及び72の実座標が、保持している交点53及び54の実座標であるものとしてホモグラフィ行列を算出する。キャリブレーション装置は、仮想直線63の方向を所定範囲内にて移動させながら上記処理を繰り返し、仮想直線63の方向毎のホモグラフィ行列をS21で算出する。なお、所定範囲は、センターラインの方向に基づき決定することができる。より詳しくは、フレームにおけるセンターラインを示す方程式の傾きを基準に、所定の範囲内の傾きの仮想直線63をそれぞれ求めて交点71及び72のカメラ座標を求める構成とすることができる。
【0020】
キャリブレーション装置は、S22において、S21で求めた仮想直線63の方向毎のホモグラフィ行列から最良のものを選択する。なお、この最良のものは、仮想直線63の方向が仮想直線62の方向に一番近いものとなる。つまり、交点71と交点53や、交点72と交点54の差が最も小さいときのホモグラフィ行列である。このため、キャリブレーション装置は、図1に示す交点の実座標を使用する。具体的には、図1に示す交点の実座標を、S21で求めた1つのホモグラフィ行列で変換してカメラ座標を求める。そして、変換後のカメラ座標がライン画像内にあるものについて、変換後のカメラ座標を中心とした所定半径の円内にあるライン画素の数をそれぞれ求める。所定半径の円内にあるライン画素の数が閾値以上であるものについては評価値を1として、そうでなければ評価値を−1として、変換後のカメラ座標がライン画像内にある交点総ての評価値の合計値又は平均値を求める。そして、S21で求めたホモグラフィ行列それぞれについて求めた評価値の合計値又は平均値を比較し、評価値の合計値又は平均値が最大となるものを最良のホモグラフィ行列として選択する。
【0021】
以上の構成によりたとえ直交する2つのラインの交点を4つ得ることができないセンターサークル付近のみが写っているフレームに対してもホモグラフィ行列を求めることができる。したがって、非特許文献1の発明と比較して、より多くのフレームについてのホモグラフィ行列を算出することができる。
【0022】
図7は、本実施形態によるキャリブレーション装置の構成図である。交点実座標保持部15は、図1に示す既知の交点の座標や、ラインを示す情報を保持している。ライン判定部11は、映像のフレームからライン部分を判定してライン画像を生成する。判定部12は、ライン画像において、直交する2つのラインの交点が4つ以上あるか否かを判定する。4つ以上あると、判定部12は、ライン画像を第1ホモグラフィ行列判定部13に出力する。第1ホモグラフィ行列判定部13は、交点実座標保持部15が保持する実座標と、ライン画像上の4つ以上の交点に基づき処理対象フレームのホモグラフィ行列を算出する。また、判定部12は、ライン画像において、直交する2つのラインの交点が4つ以上ないと、センターサークル及びセンターラインがライン画像内にあるかを判定する。センターサークル及びセンターラインの両方、又は、いずれか一方がないと、判定部12は、処理対象フレームのフレーム番号を記録部16に記録する。なお、フレーム番号は、各機能ブロックにおいて既知であるものとする。また、センターサークル及びセンターラインがライン画像内にあると、ライン画像を第2ホモグラフィ行列判定部14に出力する。
【0023】
図8は、第2ホモグラフィ行列判定部14の構成図である。第1交点検出部141は、図5の交点51及び52のカメラ座標を検出する。なお、交点51及び52の内、ライン画像内にあるものについては、そのカメラ座標は、ライン画像の当該交点の座標である。一方、交点51及び52の内、ライン画像内にないものについては、楕円を示す方程式と直線を示す方程式をライン画像内の、センターサークルに対応する曲線部分と、センターラインに対応する直線部分から求めて交点のカメラ座標を求める。第1交点検出部141は、求めた交点51及び52のカメラ座標を行列算出部143に出力する。
【0024】
第2交点検出部142は、図5の交点53及び54のカメラ座標を推定する。なお、図6を用いて説明した様に、第2交点検出部142は、交点53及び54の推定位置として、交点71及び交点72のカメラ座標の組を複数個求める。そして、求めた複数の組のカメラ座標を行列算出部143に出力する。行列算出部143は、交点51及び52のカメラ座標と、交点53及び54の推定位置(交点71及び72)のカメラ座標と、これらの実座標に基づきホモグラフィ行列を算出して検証部144に出力する。なお、ホモグラフィ行列は、交点53及び54の推定位置の組それぞれについて求め、よって、複数のホモグラフィ行列が検証部144に出力される。
【0025】
検証部144は、交点実座標保持部15が保持する実座標を各ホモグラフィ行列で変換し、ライン画像のラインの位置と比較する。例えば、交点実座標保持部15が保持する交点を基準点とし、各基準点の実座標を各ホモグラフィ行列で変換して基準点のカメラ座標を求める。そして、ライン画像内に位置する各基準点について、所定範囲内にライン画素が存在するか否かを判定する。これは、例えば、基準点を中心とする所定半径内のライン画素の数が閾値以上であるか否かにより判定できる。そして、所定範囲内にラインが存在する基準点については第1評価値を付与し、それ以外の基準点には、第1評価値より低い第2評価値を付与する。そして、ホモグラフィ行列それぞれについて、基準点の評価値の合計値又は平均値を求め、評価値の合計値又は平均値の最も高いホモグラフィ行列を選択して、処理対象フレームのホモグラフィ行列として出力する。
【0026】
<その他の実施形態>
以下、第一実施形態の変形例について説明する。第一実施形態では、仮想直線63の方向を所定範囲内で変更しながら交点71及び72の組を複数求め、それぞれについてのホモグラフィ行列を計算した上で、最良のものを選択していた。しかしながら、センターライン61を示すカメラ座標での方程式に基づき仮想直線62の方程式を算出し、仮想直線62の方程式とセンターサークルを示す方程式に基づき交点53及び54のカメラ座標を算出する構成とすることもできる。この場合、図8の検証部144で行う検証処理は必要ない。また、ライン画像にサイドラインが含まれる場合、仮想直線62は、サイドラインと並行であるため、このサイドラインを並行移動させることで、仮想直線62の方程式を求めることもできる。なお、サッカーのフィールドを用いて上記実施形態を説明したが、センターサークルと、センターサークルと交差するラインとを含むフィールドであれば良く、本発明は、サッカーの映像に限定されない。
【0027】
なお、本発明によるキャリブレーション装置は、コンピュータを上記キャリブレーション装置として動作させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【符号の説明】
【0028】
11:ライン判定部、12:判定部、14:第2ホモグラフィ行列判定部、15:交点実座標保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8