(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非金属化炭素質添加剤は、無煙炭コークス、褐炭コークス、カーボンブラック、活性コークス、石油コークス、炉ダスト、石炭のウィンクラーガス化からのダスト、赤泥、静電フィルターダスト、及びサイクロンダストからなるリストから選択される、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
非金属化炭素質添加剤は、非金属化炭素質添加剤の重量基準で少なくとも6000ppmの合計量の1種類以上の金属を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の方法及び材料は、重質油及び/又は残渣油の水素化処理に関係する。かかるプロセスは当該技術において公知であり、通常は重質油又は残渣油を、水素の存在下、昇温及び昇圧下で反応させることを含む。したがって、本発明方法は、重質油及び/又は残渣油を、水素含有気体(即ち、本明細書において用いる場合には分子状水素(H
2)を含む気体)の存在下、約250℃〜約600℃(好ましくは〜約500℃)の温度において非金属化炭素質添加剤と接触させる工程を含む。本明細書において用いる「重質油又は残渣油」とは、残油、石炭、瀝青、シェールオイル、タールサンドなど、及びこれらのフラクション(fraction)など(しかしながらこれらに限定されない)の重質及び超重質原油を指す。したがって、重質油は、液体、半固体、及び/又は固体であってよい。水素化処理にかけることができる重質油の非限定的な例としては、カナダタールサンド、ブラジルのサントス及びカンポス盆地、エジプトのスエズ湾、チャド、ベネズエラのスリア、マレーシア、及びインドネシアのスマトラからの減圧残油が挙げられる。重質油及び/又は残渣油の他の例は、本明細書の他の箇所において記載し、限定なしに精油所プロセスから排出される残滓(bottom of the barrel)及び残留物(residuum left over)も含まれる。特定の非限定的な例としては、通常は少なくとも約343℃の沸点を有する常圧塔塔底物、通常は少なくとも約524℃の沸点を有する減圧塔塔底物、及び約524℃以上の沸点を有していてよい残渣ピッチ及び減圧残油が挙げられる。
【0008】
水素の存在下における重質油又は残渣油のアップグレード又は処理は、本発明においては一般に「水素化処理」と呼ぶ。水素化処理は、限定なしに水素化、水素処理、水素化転化、水素化分解(選択的水素化分解を含む)、水素化異性化、水素化脱ロウ、水素化脱芳香族化、水素化脱硫、水素化脱窒、水素化脱金属化などの任意のプロセスを包含する。本発明に特に関係するものは、水素化処理が水素化転化又は水素化分解、即ち重質油及び/又は残渣油中のアスファルテンの分子量及び/又は沸点及び/又は濃度を低下させるために重質油及び/又は残渣油を処理することを意味すると解釈される場合である。本プロセスにおいては、水素化処理における添加剤として非金属化炭素質材料を用いる。
【0009】
本明細書において用いる「非金属化」という用語は、それに外部源から第VB(5)族(例えば、V、Nb、Ta)、第VIB(6)族(例えば、Cr、Mo、W)、及び第VIII(8)族(例えば、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)からの金属を添加(例えば装填(loaded))していない材料、例えば外部源から遷移金属を添加(例えば装填)していない材料、或いは外部源から金属を添加(例えば装填)していない材料を包含する。本明細書において用いる場合には、本発明において処理する重質油及び/又は残渣油は外部源という記載から除外することができ、即ち、添加剤は例えばin situで重質油及び/又は残渣油から上記の任意のカテゴリーの金属を除去することができることは本発明の意図の範囲内である。同じように、本発明において用いる「非金属化」の定義によれば、添加剤は金属などの更なる材料を含んでいてよいが、非金属化炭素質材料は、更なる金属がそれに加えられていない(例えばその上に装填されていない)可能性がある。而して、炭素質原材料は、本質的には金属又は金属化とはみなされないが、それでも金属原子を含んでいてよい一片の果実(例えば、バナナは、その自然状態において「金属化」されているとは通常はみなされないが、カリウムを含んでいると広く認められている)のように、その自然状態で金属(例えば、鉄、ニッケル、又はバナジウムのような微量の金属)を含んでいてよいことが理解され、認められる。
【0010】
本発明にしたがって用いられる非金属化炭素質添加剤は任意の形態であってよく、例えば添加剤は、無煙炭コークス、褐炭コークス、カーボンブラック、活性コークス、石油コークス、炉ダスト、石炭のウィンクラーガス化からのダスト、赤泥、静電フィルターダスト、サイクロンダスト、及びこれらの混合物からなる群の1以上を含めるか又はこれから選択することができ、一方で、非金属化炭素質材料は、好ましくは褐炭コークスを含むか、又は褐炭コークスである。特に2つの種の特徴又は特性に関しては本発明において実質的に交換可能であるが、「添加剤」という用語は通常は本発明方法において用いるために調製された時点の種を指し、一方で「材料」とは、通常は添加剤が(調製された時点で)それから構成される物質、或いは本発明方法のためにかかる調製を行う前の添加剤のいずれかを指す。
【0011】
本発明の第1の形態によれば、非金属化炭素質添加剤は、少なくとも約2nm、好ましくは少なくとも約2.25nm、より好ましくは少なくとも約2.5nm、更により好ましくは更には少なくとも約3nm、例えば約2nm〜約10nm、好ましくは約2.25nm〜約8nm、より好ましくは約2.5nm〜約6nm、更により好ましくは約3nm〜約5nmの平均細孔径を有する。本明細書において用いる「平均細孔径」という用語は、炭素質材料中の細孔の平均内半径を指す。これに対応して、「細孔径」又は「複数の細孔径」とは、それぞれ、例えば所定の細孔又は細孔の組に関して測定される内半径/複数の内半径を指す。理論によって縛られることは望まないが、本出願人らは、上記の細孔径を採用することによって、これらのより大きな分子の水素化処理を促進するために、アスファルテン及び他の大きな炭化水素を添加剤中に接近させることが促進されると考える。細孔径が過度に大きいと添加剤の全表面積及び物理強度が低下する可能性があり、これにより非金属化炭素質添加剤の有効性に潜在的に害を及ぼす可能性があるので、この範囲はまた上限の限界値を有する可能性がある。ここに記載する細孔径は、水素化処理工程のためにより温和な条件を用いることを可能にすることができる。アスファルテンのような大きな炭化水素分子は厳しい条件を用いて分解することができるが、より厳しい条件を用いることはまた、水素化処理生成物中において小さい炭化水素分子のより大きな割合ももたらし、これは2つの点で望ましくない。第1には、より小さい分子(例えばメタン及びエタン)は、それらがより小さいエネルギー密度のためにより大きな炭化水素分子(例えばオクタン及びデカン)と比べて価値に欠けるという理由のためにそれ自体望ましくなく、第2には、より小さい分子に関しては水素/炭素比がより高く、これは水素化処理プロセス中により多くの水素が消費され、このために無駄が多く、プロセスに関係するコストが増加することを意味する。
【0012】
非金属化炭素質添加剤の平均細孔径などの細孔径(及び比表面積)は、液体窒素温度(例えば−196℃)における窒素多分子層吸着/脱着等温線によって多孔質材料の外表面積、細孔径、及び細孔内部の表面積を評価する確立されたBrunauer-Emmett-Teller(BET)法(ASTM−D3663(例えば03版、2008年再認可))によって測定することができる。本明細書において用いる「全細孔容積」とは、BET法を用いて求められる材料に関して測定される全細孔容積である。Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法を用いて,実験脱着等温線から細孔径分布を評価する。本明細書において用いる「積算細孔容積」とは、BJH法を用いて求められる材料に関する合計の細孔容積である。
【0013】
非金属化炭素質添加剤中により大きな細孔が存在することは、特に有利であると考えられる。理論に縛られることは望まないが、本出願人らは、より大きな細孔の割合を増加させると、アスファルテンは表面に単に付着する(この場合には、大きなアスファルテン分子が単純に1以上の細孔をブロックする可能性がある)のではなく、添加剤粒子に入り込むことができるので、アスファルテンを処理する添加剤の能力が増加すると考える。したがって、これは上記に開示した任意の平均細孔径と組み合わせることができ、細孔径分布は、有利には約50nmまで、或いは約30nmまでの範囲であってよい。したがって、例えば、細孔径分布は有利には約40nmまでの範囲であってよく、これは、細孔径の最も大きな記録される値が約40nm(他の値に関しては対応する値)であることを意味する。或いは、細孔径分布は2つの値の間の範囲であってよい(即ち、細孔径分布は、最も小さい記録される値と最も大きな記録される値を有していてよい)。かかる有利な細孔径分布の非限定的な例は、約1.5nmから約50nmまで、或いは好ましくは約2nmから約30nmまでの範囲のものであってよい。細孔径分布の更なる有利な形態は、少なくとも約5nm、又は少なくとも約8nm、或いは少なくとも約10nmの細孔径を有する細孔が存在するように、より大きな細孔の増加した割合であってよい。細孔径分布は、通常は少なくとも1つのモードを有し、有利には少なくとも2つのモード(即ち、特定の細孔径において位置する分布における複数の最大値)、例えば2、3、4、5、6、7、8、9又はそれ以上のモードを有する。
【0014】
細孔径分布を考察する他の方法は、幾つかの寸法の細孔に由来する材料全体中における細孔容積の割合によるものである。本発明による幾つかの例としては、BJHによって測定される積算細孔容積(即ち、この方法を用いて求められる全ての細孔に関する細孔容積の合計)を基準として、積算細孔容積の少なくとも約80%は少なくとも約2nmの細孔径を有する細孔に由来するものである非金属化炭素質添加剤、更には又は或いは、積算細孔容積の少なくとも約50%は少なくとも約5nmの細孔径を有する細孔に由来するものである非金属化炭素質添加剤、更には又は或いは、積算細孔容積の少なくとも約30%は少なくとも約10nmの細孔径を有する細孔に由来するものである非金属化炭素質添加剤、更には又は或いは、積算細孔容積の少なくとも50%は少なくとも約10nmの細孔径を有する細孔に由来するものである非金属化炭素質添加剤、或いはこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0015】
細孔径分布の更なる非限定的な例として、積算細孔容積の少なくとも約90%は少なくとも約2nmの細孔径を有する細孔に由来するものであってよく、更には又は或いは、積算細孔容積の少なくとも75%は少なくとも約5nmの細孔径を有する細孔に由来するものであってよく、更には又は或いは、積算細孔容積の
少なくとも約50%は少なくとも約10nmの細孔径を有する細孔に由来するものであってよく、或いはこれらの任意の組合せであってよい。
【0016】
細孔径に関して上記に記載した種々の範囲はまた、任意の算術的に理にかなった組合せを形成することもできる。したがって、1つのかかる可能な組合せの非限定的な例を与えると、本発明による非金属化炭素質添加剤は、積算細孔容積の30%は少なくとも10nmの細孔径を有する細孔に由来し、積算細孔容積の75%は少なくとも5nmの細孔径を有する細孔に由来する30nmまでの範囲の細孔径分布を有していてよい。
【0017】
本発明において用いる非金属化炭素質添加剤は、有利には、非金属化炭素質添加剤を形成する炭素質材料のものよりも大きく、即ち材料がその自然形態である場合の全細孔容積よりも大きい全細孔容積(BET法(ASTM−D3663(例えば03版、2008年再認可))にしたがって測定)を有していてよい。全細孔容積は、約0.1cm
3/g〜約5cm
3/g、好ましくは約0.2cm
3/g〜約2cm
3/g、より好ましくは約0.3cm
3/g〜約1.5cm
3/g、更により好ましくは約0.5cm
3/g〜約1.25cm
3/g、更により好ましくは更には約0.7cm
3/g〜約1cm
3/gの範囲であってよい。理論に縛られることは望まないが、本出願人らは、かかる全細孔容積は、炭化水素分子が添加剤中に拡散するためのより多い空間を与えて、それによって更に有効性を向上させると考える。
【0018】
更に、非金属化炭素質添加剤は、有利には、非金属化炭素質添加剤を形成する炭素質材料のものよりも大きい、即ち材料がその自然形態である場合の比表面積よりも大きい比表面積(BET法にしたがって測定)を有していてよい。比表面積は、約100m
2/g〜約3000m
2/g、好ましくは約200m
2/g〜約1000m
2/g、より好ましくは約300m
2/g〜約800m
2/g、更により好ましくは約350m
2/g〜約700m
2/g、例えば約400m
2/g〜約650m
2/gの範囲であってよい。理論に縛られることは望まないが、かかる比表面積によって添加剤表面の増加した利用可能性が与えられて、重質油及び/又は残渣油の水素化処理が促進される。高い表面積は、特にここに記載する細孔径分布の任意の形態と組み合わさると、同等の水素化処理の有効性のためにより少ない添加剤しか必要でないことも意味する可能性がある。
【0019】
本発明において用いる非金属化炭素質添加剤は、有利には粉末である。本発明の範囲内において、この粉末は原則として任意の粒径を有していてよい。望ましくは、粒径は、約1μm〜約100μm、好ましくは約10μm〜約90μm、より好ましくは約20μm〜約80μm、更により好ましくは約30μm〜約70μm、更により好ましくは更には約40μm〜約60μmである。
【0020】
ここで「非金属化」の定義において考察すると、非金属化炭素質添加剤は、本質的に若干の金属を含んでいてよい。理論に縛られることは望まないが、本出願人らは、若干の金属、特に鉄のような遷移金属は、(直接か又は触媒前駆体として作用することによって)炭化水素の分解を触媒することによって水素化処理を向上させることができると考える。したがって、非金属化炭素質添加剤(特にコークス、より特には褐炭コークス)は、有利には、全て非金属化炭素質添加剤の重量基準で、少なくとも約6000ppm、例えば約6000ppm〜約100000ppm、好ましくは約7000ppm〜約30000ppm、より好ましくは約8000ppm〜約20000ppm、更により好ましくは約9000ppm〜約15000ppm、更により好ましくは更には約10000ppm〜約13000ppmの金属を含む(例えば生来的に含んでいる)。好ましくは、上記の任意の範囲は、全て非金属化炭素質添加剤の重量基準で、存在する遷移金属の量、より好ましくは第VB(5)族(例えば、V、Nb、Ta)、第VIB(6)族(例えば、Cr、Mo、W)、及び第VIII(8)族(例えば、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)からの金属の量、更により好ましくは第VIII(8)族からの金属の量、更により好ましくは更には非金属化炭素質添加剤中に存在する鉄の量のみに基づいて非金属化炭素質添加剤に適用することができる。これらの範囲は、外部源から金属を加えない(例えば装填しない)で、例えば非金属化炭素質材料の自然の状態の非金属化炭素質添加剤に適用することができる。或いは、これは単純に非金属化炭素質添加剤のために用いる材料を選択することによって達成することができる。重質油及び/又は残渣油からの金属の除去はこれらの範囲に加えてよく、或いはこの範囲はかかる除去の後の金属含量を示すものであってよい。この範囲は、それを重質油及び/又は残渣油と接触させる時点、例えば酸素含有気体の存在下における加熱及び/又はここに記載する酸による処理のような他のプロセス工程を行った後の添加剤を確実に示すことができる。理論に縛られることは望まないが、本出願人らは、燃焼性の材料は通常はここに記載する本発明の幾つかの形態を適用する際に非金属化炭素質添加剤から除去されるが、金属は除去されず、したがって添加剤中の潜在的な触媒種の割合は増加し、これによりプロセス効率の向上が促進されると考える。
【0021】
また本発明によれば、重質油及び/又は残渣油を水素化処理する方法には、非金属化炭素質材料を、少なくとも約120℃の温度において、酸素含有気体(即ち、分子状酸素(O
2)を含む気体)と接触させて非金属化炭素質添加剤(例えば、本発明による平均細孔径を有するもの)を形成し;重質油及び/又は残渣油を、水素含有気体の存在下、約250℃〜約600℃の温度において、少なくとも約100bargの水素分圧下で非金属化炭素質添加剤と接触させる;工程を含ませることができる。最高圧力は実際には用いる装置によって定まるが、水素分圧は、約500barg以下、約400barg以下、又は約300barg以下、例えば約100barg〜約500barg、約150barg〜約400barg、又は約200barg〜約300bargであってよい。非金属化炭素質材料(即ち、本発明による未処理形態の潜在的な添加剤)を形成するために別個の加熱プロセスを用いることができることを留意すべきである。これの非限定的な例は、加熱を用いてコークス(非金属化炭素質材料)を形成することができるが、次に本発明によれば、そのコークスを本発明による非金属化炭素質添加剤に転化させるために更なる加熱工程を用いることができることである。したがって、(例えば非金属化炭素質添加剤を形成するための)本発明の範囲内の加熱工程は、非金属化炭素質材料を形成するために用いる加熱とは、(例えば非金属化炭素質材料を周囲温度に冷却する工程のような冷却工程によって分離される)別のものとみなすことができる。他の非限定的な例として、加熱工程は水素化処理工程と(例えば同じ工場において)共に配置することができる。
【0022】
その自然状態においては、非金属化炭素質材料(例えば褐炭コークス)の平均細孔径は、約2nm未満であるだけでなく、より大きな細孔がほとんど存在しない細孔径分布のような狭い細孔径分布も伴うことを見出すことができる。ここで本出願人らは、酸素含有気体の存在下で非金属化炭素質材料を加熱(本発明においては「加熱酸化(heated oxidation)」)すると、平均細孔径が増大し、細孔径分布が拡がって本発明の利益が与えられることを見出した。有利には、加熱は約120℃より高く、好ましくは約200℃〜約600℃、より好ましくは約250℃〜約450℃、更により好ましくは約300℃〜約400℃、更により好ましくは更には約330℃〜約370℃の温度までであり、酸素含有気体の存在下における加熱時間は、少なくとも約1時間、好ましくは少なくとも約2時間、より好ましくは少なくとも約3時間、更により好ましくは少なくとも約4時間、例えば約1時間〜約24時間、約2時間〜約12時間、約3時間〜約10時間、又は約4時間〜約5時間である。或いは、酸素含有気体の存在下において非金属化炭素質材料を加熱するプロセス工程は、連続的であってよい。酸素含有気体は、有利には酸素、窒素−酸素混合物、又は空気であってよく、好ましくは空気である。温度範囲、継続時間、及び酸素含有気体の種類の任意の組み合わせを用いることができ、本発明の範囲内に包含されると意図されることを留意すべきである。理論に縛られることは望まないが、本出願人らは、上記の記載にしたがう加熱酸化によって、非金属化炭素質材料の細孔の内部からの燃焼性材料及び/又は灰分の除去が促進され、それにより平均細孔径が増大し、水素化処理工程を(直接か又はプレ触媒として機能することによって)触媒することができる微量金属(例えば鉄)の利用可能性が増加すると理解する。
【0023】
幾つかの望ましい態様によれば、加熱酸化中における酸素含有気体の圧力は、原則として、若干の酸素含有気体が存在するという条件で任意の好適なレベルであってよい。用いることができる酸素含有気体の圧力の非限定的な例としては、約−999mbarg〜20barg、約−500mbarg〜約10barg、約−250mbarg〜約5barg、約−200mbarg〜約2barg、約−150mbarg〜約1barg、又は約−100mbarg〜約500mbargが挙げられる。したがって周囲圧力(約0barg)を用いることができる。或いは、上記に開示した圧力は、酸素含有気体中に存在する酸素(O
2)の分圧であってよい。
【0024】
幾つかの有利な態様においては、非金属化炭素質材料を酸で処理する、即ち、本プロセスに、例えば加熱酸化に加えて、非金属化炭素質材料/添加剤を酸と接触させる工程(本発明においては「酸処理」)を含ませることができる。理論に縛られることは望まないが、本出願人らは、上記に記載の酸処理によって、灰分、結晶質グラファイト、及び非金属無機材料を非金属化炭素質材料の細孔内から更に除去することができ、また塩基性の金属(例えば第1及び2族の元素、例えばNa、K、Ca、Mg)も除去することができ、これにより水素化処理工程における潜在的な触媒金属(例えば、鉄のような遷移金属)の利用可能性が更に増加すると考える。したがって、灰分含量は、非金属化炭素質添加剤の重量基準で20%以下(又は未満)、好ましくは15%以下(又は未満)、より好ましくは10%以下(又は未満)、更により好ましくは5%以下(又は未満)にすることができる。これから生じる更なる利益は、酸処理によって添加剤が軟化して、それにより炭素質添加剤を用いる結果として起こる可能性がある処理装置(例えば水素化処理反応器)内における腐食が減少することである可能性がある。
【0025】
酸処理工程は、ここに記載する加熱酸化の前後に行うことができるが、加熱酸化の前に行うと、細孔径を増加させるのと同時に、加熱酸化によって酸処理からの残留湿分を更に除去する(即ち非金属化炭素質添加剤を乾燥する)ことができるので、好ましくは加熱酸化の前に行う。
【0026】
原則として、酸処理工程のために任意の酸を用いることができる。好適な酸の例としては、タングステン酸、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸、及びこれらの混合物のような無機酸、並びにクエン酸、酢酸、安息香酸、サリチル酸、及びこれらの混合物のような有機酸が挙げられる。好ましくは、酸処理工程のために用いる酸は無機酸を含むか、又は無機酸であり、より好ましくは、酸は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸、及びこれらの混合物を含むか、又はこれらから選択され、更により好ましくは、酸は硝酸を含むか、又は硝酸である。通常は、酸は水溶液として酸処理に供給する。かかる溶液中の酸の濃度は、原則として任意の値であってよい。例えば、酸は、溶液の重量基準で約1%〜約99%、好ましくは約5%〜約95%、より好ましくは約10%〜約90%、更により好ましくは約20%〜約70%、更により好ましくは更には約25%〜約50%、更により好ましくは約30%〜約35%の量(全て溶液の重量基準である)で存在させることができる。
【0027】
酸処理はまた、加熱してもよく(例えば加熱工程であってもよく)、例えば酸処理は、約25℃〜約99℃、好ましくは約30℃〜約95℃、より好ましくは約40℃〜約90℃、更により好ましくは約50℃〜約88℃、更により好ましくは更には約70℃〜約85℃、或いは約75℃〜約85℃の温度で行うことができる。有利には、酸処理は、例えばかき混ぜることによって撹拌することもできる。
【0028】
酸処理工程の後、存在する可能性がある過剰の酸を除去するために非金属化炭素質添加剤をすすぐことが望ましい可能性がある。例えば、非金属化炭素質添加剤を、例えばすすぎ水(即ち添加剤をすすぐのに用いた後にサンプリングされる水)のpHが一定になる時点まで、水(好ましくは脱イオン水)ですすぐことができる。
【0029】
また、非金属化炭素質添加剤の酸処理の後に更なる乾燥工程を行うこともでき、これは、例えば非金属化炭素質添加剤を少なくとも約40℃の温度に少なくとも約2時間の間加熱することであってよい。好ましくは、この随意的な乾燥工程は約120℃において約12時間行うことができる。
【0030】
また、全体的なプロセス効率を向上させるために、水素化処理工程におけるその移動度(即ち、沈降する傾向と対立するものとして、水素化処理反応器内における物理的な移動度)を向上させるために、非金属化炭素質添加剤の密度を操作することが望ましい可能性もある。特に、理論に縛られることは望まないが、本出願人らは、熱及び/又は酸処理によって灰分を除去することによって、非金属化炭素質添加剤の密度を低下させ、それによって全体的なプロセス効率を促進させることができると理解する。したがって、添加剤の真の密度は、有利には約1g/cm
3〜約3g/cm
3、好ましくは約1.7g/cm
3〜約2g/cm
3であってよい。真の密度は、例えばASTM−D2638(例えば10版、ASTM−D2638−10)にしたがってHe吸収によって測定することができる。
【0031】
本方法は、重質油及び/又は残渣油を、水素含有気体の存在下で非金属化炭素質添加剤と接触させる工程、即ち水素化処理工程、例えば水素化分解工程を含む。この水素化処理工程は、通常は、約250℃〜約600℃又は500℃、好ましくは約400℃〜約490℃、より好ましくは約425℃〜約485℃、更により好ましくは約440℃〜約480℃、更により好ましくは更には約450℃〜約475℃の温度で行う。また、約50barg〜約300barg、好ましくは約100barg〜約250bargの水素分圧を用いることも通常的な手法である。
【0032】
非金属化炭素質添加剤は、水素化処理工程中に存在する全ての固体及び液体(例えば、存在する気体は含まない)の重量基準で約0.1%〜約25%の量で水素化処理工程中に存在させることができる。有利には、非金属化炭素質添加剤は、水素化処理工程中に存在する固体/液体材料の重量基準で約0.5%〜約15%、好ましくは約0.8%〜約10%、更により好ましくは約1%〜約5%の量で存在させることができる。
【0033】
他の添加剤及び/又は触媒を、本発明による非金属化炭素質添加剤に追加して加えることができる。かかる添加剤及び/又は触媒は、当該技術において公知の任意のもの、例えば金属触媒であってよい。例えば石炭液化の幾つかの態様によれば、触媒前駆体を用いて、石炭に対して約0.25〜約5重量%の金属(無水無灰基準又は「daf」基準)の割合で粉砕した石炭に含侵させることができる。含侵の後、in situの硫化によって触媒が形成される。幾つかの態様においては、このin situの硫化は、元素状イオウを、触媒を含侵した石炭及び溶媒又は希釈剤(例えば、1種類又は複数のFCCタイプのプロセス油、1種類又は複数の軽質接触サイクル分解油(LCCO)、1種類又は複数のデカント油(DCO))と、約0.25:1〜約5:1、又は約0.5〜約3:1の範囲の溶媒/石炭比で混合することによって行う。
【0034】
水素化処理工程には複数の個々の水素化処理工程(即ち2以上の工程、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、又はそれ以上の工程)を含ませることができ、或いはこれらの工程であってよく、これらは同一であってよく、或いはこれらの少なくとも1つは1以上の点で少なくとも1つの他のものと異なっていてよい。
【0035】
1つ又は複数の水素化処理工程は、原則として当該技術において公知の任意のものであってよく、いかなるようにも特定のアプローチ又は装置に限定されない。したがって、水素化処理は、連続的、バッチモード、又はこれらの組合せであってよい(例えば、複数の水素化処理工程の場合には、連続的である1以上の工程、及びバッチモードで運転する1つ又は複数の他の工程を存在させることができる)。同様に、1以上の水素化処理工程を混合タンク内で行い、他のものを流動床反応器又はスラリー床反応器内で行うことができる。また、単一段階又は多段階反応器を用いて、複数の水素化処理プロセス及び反応器タイプの組み合わせを形成することもできる。幾つかの態様においては、複数の工程のために1つの反応器を関与させるバッチプロセスを行って、従前の工程が完了した後に順々に工程を行うことができ、或いは複数の反応器を直列にして、それぞれの工程を別々の反応器内で行うことができる。本発明による非限定的な連続プロセスとしては、1つの反応器からの生成物流を、更なる反応器、別の工程(例えば蒸留又は凝縮)、或いは処理(例えば生成物流又は廃棄物流として)のいずれかであるプロセス内の次の工程に供給する連続プロセスが挙げられる。
【0036】
当該技術において公知の任意の好適な装置を本プロセスのために用いることができる。例えば、装置は、沸騰床反応器、混合タンク反応器、流動床反応器、スラリー床反応器、又はこれらの組合せ、例えば上記の任意の連続撹拌タンク反応器の変形体であってよい。撹拌(水素化処理の前、処理中、及び/又は処理後であってよい)は、乱流の混合条件を得るために、当該技術において公知の任意の好適な手段、例えば、インラインスタティックミキサー(例えば複数の内部バッフル又は他の撹拌部材を用いる)、動的高剪断ミキサー(例えば超高乱流で高剪断混合のためのプロペラを有する容器)、或いは上記の任意の組合せによって行うことができる。幾つかの有利な態様においては、混合物が沈降又は増粘するのを阻止するために、高剪断混合が望ましい。したがって、少なくとも約2000のレイノルズ数を有する流れのための混合条件を得ることが望ましい可能性がある。幾つかの態様においては、混合は高剪断モード(例えば約100rpm〜約1600rpm)で連続的であり、均一なスラリーを得ることを目的として約10分間〜約24時間継続させることができる。混合はまた、少なくとも約3000、又は約3100〜約7200のレイノルズ数のために十分なものであってもよい。
【0037】
混合は不活性雰囲気下で行うことができ、これは非限定的な例として、窒素、精油所ガス、酸素をほとんど有しないか又は全く有しない任意の他の気体、並びにこれらの任意の混合物であってよい。混合はまた、水素含有気体の圧力下で行うこともできる。処理可能性を向上させるために(非金属化炭素質添加剤を有するか又は有しない)重質油及び/又は残渣油に界面活性剤を加えるか、或いは非金属化炭素質添加剤と重質油及び/又は残渣油の混合物を活性化放射線にかけることが有利である可能性があり、例えば混合物を高強度超音波又は電磁放射線にかけて、非金属化炭素質添加剤の粒径をin situで減少させることができる。
【0038】
重質油及び/又は残渣油(非金属化炭素質添加剤を有するか又は有しない)は水(例えば遊離水)を含む可能性があり、これは除去してそれが水素化処理反応器内の空間を占有するのを阻止することができる。例えば、重質油及び/又は残渣油(非金属化炭素質添加剤を有するか又は有しない)は、水素化処理の前に高圧分離器に送って水を除去することができる。更には又は或いは、重質油及び/又は残渣油(非金属化炭素質添加剤を有するか又は有しない)は、水素化処理の前に水素で予備コンデショニングすることができる。遊離水の存在は、反応器内において発泡を引き起こす可能性があり、これによってプロセスを連続的に運転することができる時間の長さが減少するので、特に望ましくない可能性がある。
【0039】
非金属化炭素質添加剤は、限定なしに常圧軽油、減圧軽油(VGO)、常圧残油、減圧残油、脱瀝油、オレフィン、タールサンド又は瀝青から誘導されるオイル、石炭から誘導されるオイル、原油(例えば重質原油)、フィッシャー・トロプシュプロセスからの合成油、並びにリサイクルされた廃油及びポリマーから誘導されるオイルなどの炭素質供給材料を水素化処理するために有用である。非金属化炭素質添加剤は、熱水素化分解、水素化処理、水素化脱硫、水素化脱窒、及び水素化脱金属のような水素化アップグレードプロセス(しかしながら、これらに限定されない)のために有用である。幾つかの更なる態様においては、非金属化炭素質添加剤は、炭素質材料を予備処理するため、及び/又は石炭又は石炭と上述の任意の他の供給材料の混合物のような炭素質材料を液化するために用いることができる。
【0040】
非金属化炭素質添加剤は、約250℃〜約500℃の温度、約5〜約300barg又はbara(72〜4351psi又は0.5〜30MPa)の水素圧、約0.05〜約10h
−1の液時空間速度(liquid hourly space velocity)、及び約35.6〜約2670m
3/m
3(200〜15000SCF/B)の水素処理ガス速度のような広範囲の反応条件下で複数の供給材料を処理するために用いることができる。
【0041】
幾つかの態様においては、水素化処理圧力は、約10MPa(1,450psi)〜約25MPa(3,625psi)、約15MPa(2,175psi)〜約20MPa(2,900psi)、22MPa(3,190psi)未満、又は14MPa(2,030psi)より高い範囲である。供給材料の液時空間速度(LHSV)は、一般に、約0.05h
−1〜約30h
−1、約0.5h
−1〜約25h
−1、約1h
−1〜約20h
−1、約1.5h
−1〜約15h
−1、又は約2h
−1〜約10h
−1の範囲である。幾つかの態様においては、LHSVは、少なくとも約5h
−1、少なくとも約11h
−1、少なくとも約15h
−1、又は少なくとも約20h
−1である。幾つかの態様においては、LHSVは約0.25h
−1〜約0.9h
−1の範囲である。また、幾つかの態様においては、LHSVは約0.1h
−1〜約3h
−1の範囲である。水素化処理温度は、約410℃(770°F)〜約600℃(1112°F)、更には又は或いは約462℃(900°F)未満、及び/又は約425℃(797°F)より高い範囲であってよい。水素化処理は1以上の反応区域内で実施することができ、対向流又は並流モードのいずれかで実施することができる。対向流モードとは、供給材料の流れを水素含有処理ガスの流れに対して対向流で流すプロセスを意味する。並流モードとは、供給材料の流れを水素含有処理ガスの流れと並流で流すプロセスを意味する。水素化処理にはまた、イオウ及び窒素化合物を除去し、及び石油中間留分のような軽質化石燃料中に存在する芳香族分子を水素化するため、例えば循環している非金属化炭素質添加剤を用いて重質油を水素化処理するためのスラリー及び沸騰床水素化処理プロセスを含ませることもできる。
【0042】
本発明による水素化処理プロセスにおいて用いるための供給材料(即ち重質油及び/又は残渣油)としては、オレフィン、常圧蒸留残油、水素化分解物、ラフィネート、水素化処理油、常圧及び減圧軽油、コーカー軽油、常圧及び減圧残油、脱瀝油、脱ロウ油、スラックワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、及びこれらの混合物のような石油及び化学供給材料を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されない。具体例は、比較的軽質の留出物フラクションから、全原油、常圧蒸留残油、減圧塔残渣、プロパン脱瀝残油、ブライトストック、サイクル油、流動接触分解(FCC)塔塔底物、コーカー軽油及び減圧軽油などの軽油、脱瀝残油、及び他の重質油のような高沸点材料までの範囲である。一態様においては、供給材料はC
10+供給材料である。他の態様においては、供給材料は、軽油、灯油、ジェット燃料、230℃より高い沸点の潤滑油材料、加熱油、水素化処理油材料、フルフラール抽出潤滑油材料、並びにその流動点及び粘度特性を特定の仕様限界内に維持する必要がある他の留出物フラクションのような留出物材料から選択される。非金属化炭素質添加剤は、水素化処理の前/処理中に供給材料に直接加えることができ、或いは溶媒又は希釈剤(例えば、石油フラクション、1種類又は複数のFCCタイプのプロセス油、1種類又は複数の軽質接触サイクル分解油(LCCO)、1種類又は複数のデカント油(DCO))中にまず混合することができる。
【0043】
幾つかの態様においては、重質油及び/又は残渣油には、特に有機窒素化合物の形態の、相当量の、窒素、例えば重量基準で少なくとも約10ppmの窒素を含む化合物を含ませることができる。重質油及び/又は残渣油はまた、例えば約0.1重量%〜約3重量%又はそれ以上の範囲の相当なイオウ含量を有していてもよい。幾つかの態様においては、重質油及び/又は残渣油は、原油、シェールオイル、及びタールサンドから誘導される供給材料、並びに例えば約315℃以上の初留点を有するフィッシャー・トロプシュプロセスから誘導されるもののような合成供給材料を形成する。非限定的な具体例としては、常圧蒸留残油、水素化分解物、ラフィネート、水素化処理油、常圧軽油、減圧軽油、コーカー軽油、常圧及び減圧残油、脱瀝油、スラックワックス、及びフィッシャー・トロプシュワックス、並びにこれらの混合物が挙げられる。幾つかの態様においては、供給材料は、コーカーからの軽油と、蒸留塔(常圧及び減圧)、水素化分解装置、水素化処理装置、及び溶媒抽出ユニットから誘導される通常の原油からの減圧蒸留物の混合物であり、約50%以下又はそれ以上のワックス含量を有していてよい。また、幾つかの態様においては、重質油及び/又は残渣油には、軽質接触サイクル分解油(LCCO)のような化石燃料からの中間留分;石油、石炭、瀝青、タールサンド、又はシェールオイルから誘導される留出物;重質接触分解サイクル油(HCCO)、コーカー軽油、リサイクルされた廃油及びポリマーから誘導されるオイル、減圧軽油(VGO)、及びより重質の残油を含めることができ、これらは例えば、数パーセント(例えば約15%以下、約1%〜約13%、約3%〜約10%、約5%〜約8%、又は約6%〜約7%)の3環以上の芳香族化合物、特に大きなアスファルテン分子を含んでいてよい。
【0044】
更なる形態においては、本発明は、少なくとも約2nmの平均細孔径、及び少なくとも約300m
2/gの比表面積を有する、(例えば非金属化炭素質材料を含む)重質油及び/又は残渣油を水素化処理するための非金属化炭素質添加剤を提供する。本発明のこの形態による添加剤は、これも本発明による方法において用いることができるので、本明細書において非金属化炭素質添加剤に関して開示する任意の特徴又は複数の特徴の組合せ(密度、金属含量、鉄含量、粒径、粒径分布、又は任意の他の形態、或いはこれらの組合せなどであるが、これらに限定されない)を、本発明のこの形態に適用することができる。同様に、本発明は、重質油及び/又は残渣油を水素化分解するためのここに記載するかかる非金属化炭素質添加剤の使用、並びにかかる添加剤を製造するための方法を意図し、かかる添加剤を製造するための方法は、ここに記載し、非金属化炭素質添加剤に関係する1以上の工程、例えば非金属化炭素質添加剤を形成するための非金属化炭素質材料の加熱酸化及び/又は酸処理を含む。
【実施例】
【0045】
比較例A:
<50μmの平均粒径を有する粉末化褐炭コークス(例えば「反応性強化微粉化褐炭コークス」としてRWEから入手できるもの)を、比較例、並びに下記の本発明の実施例1及び2のための出発材料として選択した。
【0046】
本発明の実施例1:
10gの粉末化褐炭コークス(平均粒径<50μm)を、110℃の温度において12時間乾燥した後、マッフル炉内で、350℃の温度において空気流下で4時間加熱処理した。
【0047】
本発明の実施例2:
20gの粉末化褐炭コークス(平均粒径<50μm)を、100mLの脱イオン水及び80mLの70重量%硝酸の溶液中において、80℃の温度で6時間の間撹拌することによって酸処理した。固形物を分離し、すすぎ水(すすぎの後にサンプリングした)のpHが一定になるまで脱イオン水で洗浄した。洗浄した固形物を一晩放置し、次に110℃において12時間乾燥した後、空気流下において350℃で4時間加熱処理した。
【0048】
3つの実施例をそれぞれ、上述のBrunauer-Emmett-Teller(BET)(ASTM−D3663)法にしたがって表面積、細孔径、及び細孔容積の測定にかけて、以下の結果を得た。
【0049】
【表1】
【0050】
Barret-Joyner-Halenda(BJH)法にもとづく実施例の細孔径分布の分析によって、次の結果が得られた。
【0051】
【表2】
【0052】
下表に詳述する特性を有する減圧残油を用いて、上記に与えた実施例を試験した。
【0053】
【表3】
【0054】
比較例B:
まず、50±0.1gの減圧残油を300mLのオートクレーブに加え、次に1.2gの元の未処理の褐炭コークス(実施例A)を残油に加えた。純水素を用いてオートクレーブを室温において123.14barg(1786psig)に加圧し、次に温度をまず120℃に上昇させ、ここで撹拌下で30分間保持して添加剤を分散させた。次に、温度を432℃(810°F)に上昇させ、その温度に撹拌下で2時間保持した。これらの条件から得られた転化率(525℃+)は、(ガスクロマトグラフィーを介する高温シミュレート蒸留によって)75〜80%であると求められた。次に、反応器を室温に冷却した。シミュレート蒸留分析のためにより少ないアリコート量の試料を取り出した後、液体及び固体を含む反応器の内容物を、トルエンで洗浄することによって回収した。混合物を、室温において0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターを用いて濾過した。固体のケーキを300mLのトルエン中に投入し、超音波浴内において混合物を45分間超音波処理して、固体上に残留するトルエン可溶性の材料を除去した。次に、トルエン及び固体混合物を再び濾過した。濾紙から回収されたコークスを、N
2流下、120℃において少なくとも3時間乾燥し、質量を測定して最終コークス収率を得た。
【0055】
本発明の実施例3:
比較例Bと同じ手順を、本発明の実施例
3において用いた。しかしながら、本発明の実施例1に記載したようにして処理した褐炭コークスを、比較例Aの未処理の褐炭コークスの代わりに添加剤として用いた。
【0056】
本発明の実施例4:
比較例Bと同じ手順を、本発明の実施例4において用いた。しかしながら、本発明の実施例2に記載したようにして処理した褐炭コークスを、比較例Aの未処理の褐炭コークスの代わりに添加剤として用いた。
【0057】
比較例B並びに本発明の実施例3及び4からの結果を下表に与える。
【0058】
【表4】
【0059】
本発明の実施例3及び4の処理した褐炭コークス添加剤は、比較例Bと比べてコークス収率を減少させることによって、プロセスに対して大きな有利性を与えることが明確に示される。
【0060】
本明細書において開示する寸法及び値は、示されている実際の数値に厳密に限定されるとは理解すべきではない。その代わりに、他に示していない限りにおいて、それぞれのかかる寸法は、示されている値、及びその値の周囲の機能的に同等の範囲の両方を意味すると意図される。例えば、「40mm」と開示されている寸法は、「約40mm」を意味すると意図される。
【0061】
相互参照又は関連する特許若しくは出願を含む本明細書において引用する各文献は、明確に除外されていない限りにおいて、又は他に限定されていない限りにおいて、その全体を参照として本明細書中に包含する。任意の文献の引用は、それが本発明において開示し特許請求する発明に対する従来技術であること、或いはそれが単独か又は任意の他の1つ又は複数の参照文献と組み合わせて任意のかかる発明を教示、示唆、又は開示していることを認めることにはならない。更に、本明細書における用語の意味又は定義が参照として包含される文献における同じ用語の意味又は定義と一致しない限りにおいては、本明細書においてその用語に割り当てられる意味又は定義が支配する。本発明の特定の態様を示し且つ記載したが、発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の他の変更及び修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲及び精神の範囲内であるかかる変更及び修正は全て、添付の特許請求の範囲内にカバーされると意図される。
[発明の態様]
[1](a)重質油及び/又は残渣油を、水素含有気体の存在下、250℃〜600℃の温度において非金属化炭素質添加剤と接触させる;
工程を含み;
非金属化炭素質添加剤は少なくとも2nmの平均細孔径を有する、重質油及び/又は残渣油を水素化処理する方法。
[2]非金属化炭素質添加剤は、2nm〜10nm、好ましくは2.25nm〜8nm、より好ましくは2.5nm〜6nm、更により好ましくは3nm〜5nmの平均細孔径を有する、[1]の方法。
[3]非金属化炭素質添加剤は、無煙炭コークス、褐炭コークス、カーボンブラック、活性コークス、石油コークス、炉ダスト、石炭のウィンクラーガス化からのダスト、赤泥、静電フィルターダスト、及びサイクロンダストからなるリストから選択され;好ましくは非金属化炭素質添加剤は褐炭コークスである、[1]〜[2]のいずれかの方法。
[4]非金属化炭素質添加剤は、非金属化炭素質添加剤の重量基準で少なくとも6000ppm、好ましくは6000ppm〜100000ppm、より好ましくは7000ppm〜30000ppm、更により好ましくは8000ppm〜20000ppm、更により好ましくは更には9000ppm〜15000ppm、更により好ましくは更には10000ppm〜13000ppmの合計量の1種類以上の金属を含む、[1]〜[3]のいずれかの方法。
[5]1種類以上の金属は、第VB(5)族、第VIB(6)族、及び第VIII(8)族からの金属から、好ましくは第VIII(8)族からの金属から選択され、より好ましくは金属は鉄である、[4]の方法。
[6]非金属化炭素質添加剤は、細孔径分布において少なくとも2つのモードを含む、[1]〜[5]のいずれかの方法。
[7]非金属化炭素質添加剤の積算細孔容積の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%は、少なくとも2nmの細孔径を有する細孔に由来する、[1]〜[6]のいずれかの方法。
[8]非金属化炭素質添加剤の積算細孔容積の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%は、少なくとも5nmの細孔径を有する細孔に由来する、[1]〜[7]のいずれかの方法。
[9]非金属化炭素質添加剤の積算細孔容積の少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%は、少なくとも10nmの細孔径を有する細孔に由来する、[1]〜[8]のいずれかの方法。
[10]非金属化炭素質添加剤は、100m2/g〜3000m2/g、好ましくは200m2/g〜1000m2/g、より好ましくは300m2/g〜800m2/g、更により好ましくは350m2/g〜700m2/g、例えば400m2/g〜650m2/gの表面積を有する、[1]〜[9]のいずれかの方法。
[11]非金属化炭素質添加剤は、0.1cm3/g〜5cm3/g、好ましくは0.2cm3/g〜2cm3/g、より好ましくは0.3cm3/g〜1.5cm3/g、更により好ましくは0.5cm3/g〜1.25cm3/g、更により好ましくは更には0.7cm3/g〜1cm3/gの全細孔容積を有する、[1]〜[10]のいずれかの方法。
[12]工程(a)の前に、
(i)非金属化炭素質材料を、少なくとも120℃の温度で酸素含有気体と接触させて非金属化炭素質添加剤を形成する;
工程を更に含む、[1]〜[11]のいずれかの方法。
[13]非金属化炭素質材料を、200℃〜600℃、好ましくは250℃〜450℃、より好ましくは300℃〜400℃、更により好ましくは330℃〜370℃の温度で酸素含有気体と接触させる、[12]の方法。
[14]非金属化炭素質材料を、バッチプロセスで、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは1時間〜24時間、更により好ましくは2時間〜12時間、更により好ましくは更には3時間〜10時間、更により好ましくは4時間〜5時間の間、酸素含有気体と接触させる、[12]又は[13]のいずれかの方法。
[15]非金属化炭素質材料を連続プロセスで酸素含有気体と接触させる、[12]又は[13]のいずれかの方法。
[16]工程(i)における酸素の分圧は、約−999mbarg〜約20barg、約−500mbarg〜約10barg、約−250mbarg〜約5barg、約−200mbarg〜約2barg、約−150mbarg〜約1barg、又は約−100mbarg〜約500mbargである、[12]〜[15]のいずれかの方法。
[17]工程(a)の前に非金属化炭素質材料又は非金属化炭素質添加剤を酸と接触させる工程を更に含む[1]〜[16]のいずれか、好ましくは[12]〜[16]のいずれかの方法であり;より好ましくは、工程(i)の前に非金属化炭素質添加剤を酸と接触させる工程を更に含む、[12]〜[16]のいずれかの方法。
[18]酸は、水溶液の重量基準で1%〜99%、好ましくは水溶液の重量基準で5%〜95%、より好ましくは10%〜90%、更により好ましくは20%〜70%、更により好ましくは更には25%〜50%、更により好ましくは30%〜35%の量で酸が存在する水溶液の形態である、[17]の方法。
[19]酸は、無機酸であり、好ましくは酸は、タングステン酸、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸、及びこれらの混合物から選択され、より好ましくは、酸は、硝酸である、[17]又は[18]の方法。
[20]少なくとも2nmの平均細孔径及び少なくとも300m2/gの表面積を有する、重質油及び/又は残渣油を水素化処理するための非金属化炭素質添加剤。