(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583929
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】波形成装置
(51)【国際特許分類】
B63B 35/73 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
B63B35/73 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-193361(P2017-193361)
(22)【出願日】2017年10月3日
(65)【公開番号】特開2019-64502(P2019-64502A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年4月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【審査官】
福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第07252047(US,B1)
【文献】
米国特許第06083063(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0038771(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0274967(US,A1)
【文献】
米国特許第09701373(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/73
B63B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型船舶の後部に横置きに装着される筒状体であって、前記小型船舶の移動に伴って水が流入する水流入口と、前記水流入口から流入した水が流出する水流出口と、前記水流出口に向かって前記水流出口の端部の上面および底面が上方に傾斜する傾斜部を備え、前記水流入口は前記水流出口に対して1.5〜4倍の断面積であるブースターを有することを特徴とする、
波形成装置。
【請求項2】
垂直にのびる複数のポールを有し、
前記ブースターは、前記ポールに沿って、上下に昇降可能であることを特徴とする、
請求項1に記載の波形成装置。
【請求項3】
前記ブースターの上方には略水平な踏台が設けられ、
前記踏台は、前記ブースターと共に、前記ポールに沿って、上下に昇降可能であることを特徴とする、
請求項2に記載の波形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上スキーやウェイクボード等のマリンスポーツ用ボート等の小型船舶に付属させ、小型船舶の移動によって波を形成する波形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェイクボード等のマリンスポーツ用のモーターボート等の小型船舶において、マリンスポーツの滑走者は、滑走者を牽引する小型船舶の航跡により波が形成された水面の滑走を楽しむ。しかし、従来、小さい船舶を使用した際には船舶の後方には大きな波ができず、滑走者は十分にスポーツを楽しめないという問題があった。
【0003】
そこで、ボート作動式の波発生装置が特許文献1に開示されている。これは、波発生装置が滑走者を牽引するモーターボート等に取り付けられ、モーターボートが水中の移動中、波発生装置に含まれる水平方向および垂直方向に湾曲したライディング表面により水をすくいあげることによって、トンネル波や飛散波等の波形を形成することができる。
【0004】
特許文献2は、水上スキー等用のボートであって、ボートの後部に、ブレード7を有する波発生装置6が配置し、プロペラ5によりボートが前進する際に波発生装置6により波を発生させる技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平11−506714号公報
【特許文献2】豪国特許出願公告第2016203389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2で開示されている波発生装置では、装置は水をすくいあげる力が弱く、発生する波は小さいため、使用者が十分にスリルを味わいスポーツを楽しむことができなかった。
【0007】
本発明は、上記問題点に着目してなされたものであり、水上スキーやウェイクボードなどのマリンスポーツにおいて、小さな船舶でも後方に大きな波を形成し、水上スキーヤーやウェイクボーダー等の滑走者が、波のある水上滑走を十分に楽しむことができる、波形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、小型船舶の後部に横置きに装着される筒状体であって、前記小型船舶の移動に伴って水が流入する水流入口と、
水流入口から流入した水が流出する水流出口と、水流出口に向かって
水流出口の端部の上面および底面が上方に傾斜する傾斜部を備え
、水流入口は水流出口に対して1.5〜4倍の断面積であるブースターを有することを特徴とする波形成装置である。
【0009】
ここでいう「小型船舶」とは、モーターボートや水上バイク等を含む、主にマリンスポーツに用いられる小型の船舶を意味する。「筒状体」は断面が角形、丸形、楕円形、小判形状等、種々の形状を採ることができる。筒状体は、前方から後方に向かって、傾斜する構造、あるいは、屈曲する形状が好ましい。例えば、筒状体の軸線方向が、前方から後方に向かうにつれて、右上がりになること、あるいは、筒状体が、前方の第1部材と、第1部材と接続する後方の第2部材とからなり、第1部材の軸線方向の傾斜が第2部材の軸線方向の傾斜よりも大きくなることが好ましい。水流入口の断面積に対する水流出口の断面積の比率は、1.3〜10倍が好ましく、1.5〜4倍が特に好ましい。
【0010】
この構成によれば、波形成装置において、水流入口における水の流速よりも水流出口における水の流速の方が高く、また、傾斜部から流れる水が水流出口から斜め上方へ流出するため、水流出口から出た水は周りの水を伴って、大きな波を形成することができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の波形成装置において、前記波形成装置は、垂直にのびる複数のポールを有し、前記ブースターは、前記ポールに沿って、上下に昇降可能であることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、ブースター未使用時や、小型船舶が水深の浅い場所に移動した時や干潮時にブースターを水面より上方に配置することができ、小型船舶が水深の深い沖へ到達し、波形成に使用したい時にだけ、ブースターを下方へ配置することが可能である。そのため、ブースターによる小型船舶の駆動効率の低減を抑えることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2の波形成装置において、前記ブースターの上方には略水平な踏台が設けられ、前記踏台は、前記ブースターと共に、前記ポールに沿って、上下に昇降可能であることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、滑走者は、船舶等に乗って目的地に到着したのち、踏台を使用して船舶から海へ降りたり、スポーツが終わって船舶に乗る際、踏台を使用して乗ったりすることができる。踏台は昇降可能であるので、滑走者にとって最もよい高さの踏台を用意できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、波形成装置は、ブースターが波をすくいあげ斜め上方向の流れを作るとともに流速を高くし、水流出口からの水は、さらに周りの水を伴って上方に流出するため、大きな波を形成することができる。そのため、滑走者は水上スキーやウェイクボード等のスポーツをより楽しむことができる。また、ブースターは昇降可能であり、ブースター使用時にのみブースターを海面下に配置できるため、無駄に小型船舶の駆動効率を下げることがない。さらに、ブースター上方には昇降可能な踏台が配置されているため、滑走者が必要する踏台の高さを適宜決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態の波形成装置の使用状態を表す概略図である。
【
図2】本実施形態の波形成装置のブースターの側面図である。
【
図4】本実施形態の波形成装置と小型船舶の接続状態を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0018】
図1〜4に示すように、本実施形態の波形成装置1は、ブースター2、二本の垂直に伸びるポール3、踏台4を有している。前記波形成装置1は、モーターボート5の後方の壁に取り付けられており、モーターボート5の移動に伴い、前記波形成装置1も移動する。本実施形態は、前記波形成装置1をウェイクボードに用いるモーターボートへ応用した形態である。
図1に示すように、モーターボート5には、持ち手のついたロープが接続されており、滑走者は板状の滑走具に載り、ロープが接続された持ち手を持って、モーターボート5に曳航されながら、水面を滑る。
【0019】
ブースター2は、
図2および
図3に示すように、ステンレスまたは樹脂製の断面四角形の筒形状であり、水が横方向に貫通する横置き構造となっており、垂直面の水流入口21、垂直面を有する水流出口22、水流入口21の下辺から水流出口22の下辺に向かって上方へ傾斜する底面23、水流入口21の上辺から水流出口22の上辺に向かって、略水平に伸びる第一上面24、それに続いて上方へ傾斜する第2上面25、側面26、および、流入口の側辺から横方向へ延びる接続板28を有している。
【0020】
水流入口21の高さおよび幅は共に、水流出口22の高さおよび幅よりも大きくなっているため、水流入口21の面積は、水流出口の面積よりも大きい。そのため、水が通過する際に縮流され、水流入口21における水の流速よりも、水流出口22における水の流速が高くなる。水流入口21と水流出口22の面積比は1.3〜10倍が好ましく、1.5〜4倍がさらに好ましい。1.3倍より小さいと、水の流速の増加が十分ではなく、大きな波が作れない。一方、4倍より大きいと、ポール3やブースター2やモーターボートとの取り付け部にかかる負荷が大きいために破損する恐れがあるという問題がある。この問題は、強度の高い材料を使用することによって克服できるが、10倍が限界である。本実施形態においては、一例として、水流入口21の面積は、水流出口22の面積の3倍になっている。よって、水流出口22における水の流速は、水流入口21における水の流速の3倍になる。第2上面25、底面23の流出口22側の一部、側面26の流出口22側の一部は、傾斜部27を形成し、流出口22から水を斜め上方へ流出させる。
【0021】
水流入口21から流入した水は、水流出口22へ向かってブースター2の断面積が絞られることにより、水流出口22へ向かって徐々に流速が高くなるとともに、上方へ傾斜する底面23の一部および第2上面25を含む傾斜部27によって流れ方向が斜め上方へ変わり、水流出口22から勢いよく流出する。流出した水は、さらに周りの水を伴って、上方へ流れ、波を形成または増幅する。水流出口22から流出する水は、滑走者に向けて流れ出るため、効率的に、滑走者周辺に波を形成させることができる。
【0022】
ブースター2は上述の形状に限定されるものではなく、上面が流入口21上辺から流出口22上辺に向けて緩やかに傾斜する形状、上面及び底面が流入口21から流出口22へ向けて湾曲しながら上方へ傾斜する形状等も好適である。
【0023】
2本のポール3は、上下にのび、平面視で略コの字形状の中空の角筒31を有している。角筒31の内部には、上下に摺動可能な摺動部材32と、摺動部材32を上下に動かす油圧シリンダ(図示略)が備えられている。油圧シリンダは海水による錆などの腐食を避けるために摺動部材32の上方に設けられている。ポール3のモーターボート5側の側面には、電動モーター(図示略)および油圧ポンプ(図示略)が取り付けられ、モーターボート5の後部には、前記電動モーターを制御する制御ボックスが取り付けられている。モーターボート5に乗る人が制御ボックスによって電動モーターを駆動させ、配管を通して油圧ポンプから油圧シリンダに油を送り、その油圧を制御して油圧シリンダのストロークを変化させる。油圧シリンダの伸長伸縮により、摺動部材32は上下に摺動する。制御ボックスには、例えば、上昇ボタン、下降ボタンの他、緊急停止ボタンを有する。緊急停止ボタンは、安全対策の目的で設けられており、滑走者等が誤って手や足を挟みそうになった時に使用するものである。摺動部材32には、ブースター2の接続板28がボルトを介して接続されている。そのため、ブースター2は2本のポール3に沿って、上下に昇降が可能である。ブースター2の上下の昇降は、油圧駆動に限定することはなく、エアー圧で駆動させる等、現行の技術を利用し、適宜変更が可能である。
【0024】
図1に示すように、2本のポール3の上端は、滑走者を牽引するロープよりも下方に位置するので、ロープがポール3やブースター2と干渉することはない。
【0025】
図1、
図3はブースター2が最も下方に配置された場合の図であり、ブースター2の全体が水中に位置する。ブースター2が最も上方に配置されるときは、ブースター2全体が水面より上方に位置する。ブースター2が上下に昇降するので、ブースター2が未使用時にブースター2を上方へ配置してモーターボートの駆動効率の低減を抑えたり、またはモーターボート5が水深の浅い場所や干潮の時はブースター2が水底に衝突しないように上方に配置したりできる。モーターボート5が水深の深い沖へ到達し、波形成に使用したい時にだけ、ブースター2を下方へ配置することが可能である。
【0026】
波形成時は、ブースター2を最も下方に配置する。その配置では、ブースターの水流出口22の上辺が海面近くになる。水流出口22から出た水は、周りの水を伴い、海面上方へ向けて流れ出すため、大きな波が形成される。また、同配置において、水流入口21が、モーターボート5のスクリュー7の後方であって、スクリュー7に近い高さにあることが好ましく、波流入口に流入する水をさらに多くできるため、ブースターによる波形成機能は大きくなる。
【0027】
踏台4は、ステンレスまたは樹脂製の略水平で平面視で台形の板であり、ブースターの上方であって、かつ、二本のポール3の摺動部材32に接続部材41を介して接続されている。ブースターと共に、ポールに沿って、昇降可能な構造になっている。踏台4は、滑走者が、滑走を始める前や終わった後、モーターボートから降りたり、乗ったりする時に使用する。踏台4が昇降可能であるので、滑走者にとって最も便利な高さに踏台を位置させることができる。
【0028】
波形成装置とモーターボートの接続構造について説明する。
図1、4に示すように、モーターボートの後方の側壁には、ポール3の角筒31が接続されたフレーム6が複数のボルトを介して接続されている。フレーム6は、水平方向の水平フレーム61、フレーム61の前端からポールの上部へ延びる二本の上側フレーム62、および、フレーム61の前端からポールの下部へ延びる二本の下側フレーム63を有する。
図4は、便宜上、上側フレーム62を省略している。水平フレーム61は、接続強度を高めるため、モーターボート5の後端部だけではなく、モーターボート5の側壁にも沿って設けられている。
【0029】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることが出来るものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、上記実施形態は、水形成装置はモーターボートに接続されているが、モーターボートの代わりに、水上バイクを用いてもよい。また、発明の目的の範囲内で、各部材の寸法の範囲、材質等も適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の波形成装置は、ウェイクボードの他、水上スキー、ウェイクサーフィンなど、様々なマリンスポーツにおいて利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 :波形成装置
2 :ブースター
21 :水流入口
22 :水流出口
23 :底面
24 :第一上面
25 :第二上面
26 :側面
27 :傾斜部
28 :接続板
3 :ポール
31 :角筒
32 :摺動部材
4 :踏台
41 :接続部材
5 :モーターボート
6 :フレーム
61 :水平フレーム
62 :上側フレーム
63 :下側フレーム
7 :スクリュー