(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583936
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】地下シェルター
(51)【国際特許分類】
E04H 9/12 20060101AFI20190919BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20190919BHJP
E02D 29/05 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
E04H9/12
E04H9/14 Z
E02D29/05 B
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-111549(P2018-111549)
(22)【出願日】2018年6月12日
(62)【分割の表示】特願2017-248029(P2017-248029)の分割
【原出願日】2017年12月25日
(65)【公開番号】特開2019-112921(P2019-112921A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2019年4月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3178338(JP,U)
【文献】
国際公開第2016/199431(WO,A1)
【文献】
特開昭50−156247(JP,A)
【文献】
特開2014−080847(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/061108(WO,A1)
【文献】
特開平09−173391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00−9/16
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート製の地下シェルターであって、
地表に敷設されて、駐車場舗装の表層を構成するべた基礎と、
底床と天井と側壁とを有する本体と、
前記天井に形成された第1開口部を開閉するとともに、封止可能である引き戸式の扉と、を備え、
前記天井は、前記べた基礎に固着され、
前記扉は、駐車場の敷地内に配置されて、一対の軌道と、前記軌道に沿って移動可能である扉本体と、前記天井と前記軌道を接続するジャッキとを有し、前記ジャッキは、前記第1開口部が前記扉本体によって閉鎖されたとき、前記扉本体を前記天井方向に変位させることにより、前記扉本体と前記天井の間に生じた隙間を封止することを特徴とする地下シェルター。
【請求項2】
前記第1開口部に着脱可能な第1断熱蓋を備えることを特徴とする請求項1に記載の地下シェルター。
【請求項3】
前記第1断熱蓋を支持するための第1固定棒を備えることを特徴とする請求項2に記載の地下シェルター。
【請求項4】
前記本体は、第2開口部が形成された中間床をさらに有し、
前記中間床は、前記底床と前記天井との間に設けられ、
前記第2開口部はハッチが設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の地下シェルター。
【請求項5】
前記第2開口部に着脱可能な第2断熱蓋を備えることを特徴とする請求項4に記載の地下シェルター。
【請求項6】
前記第2断熱蓋を支持するための第2固定棒を備えることを特徴とする請求項5に記載の地下シェルター。
【請求項7】
前記扉は、前記べた基礎に形成された凹部に配設され、
前記本体は、前記凹部に供給するための水を貯留する貯水タンクを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の地下シェルター。
【請求項8】
前記側壁は、外側に向かって延びる複数の突起体を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の地下シェルター。
【請求項9】
前記突起体は、上下方向、及び周方向に所定の間隔で配設されることを特徴とする請求項8に記載の地下シェルター。
【請求項10】
前記扉の上部にリフト装置を設けることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の地下シェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地表に敷設されるべた基礎に固定された鉄筋コンクリート製の地下シェルターに関する。
【背景技術】
【0002】
東日本大震災では、地震により各地で建物の倒壊・火災が相次ぎ、さらに、過去最大級の津波・津波火災が発生したことによって、多くの尊い人命が失われた。今後も、南海トラフ大地震等の発生が予想されている。さらに、近年の緊迫した国際情勢に鑑みると、地震等の災害のみならず、放射能被爆被害に対応可能な性能を具備するシェルターが求められる。
【0003】
スイス、イスラエルでは核シェルターの普及率は100%であるが、日本ではわずか0.02%に過ぎない。日本においても有事に対応可能な核シェルターの普及が急務である。このような状況下、地震・津波等の災害のみならず、放射能被爆被害に対応可能な性能を具備するシェルターに対する関心は近年益々高まっている。
【0004】
特許文献1では、耐震性、防水性に加え、有事の際に使用される破壊兵器や自然災害の強大な破壊エネルギー、また放射線・電磁波などの特殊な性質と効果を持つ要素に対し 、確実に内部を防護できるより安全性の高い地下シェルターが開示されている。具体的には、地中に設けた高強度鉄筋コンクリートからなるシェルター外殻床スラブ上に、金属板からなるボックス状のシェルター内殻を設置し、シェルター外殻床スラブ側を除く残りのシェルター内殻の外表面の周囲を高強度鉄筋コンクリートからなるシェルター外殻で覆った地下シェルターである。
【0005】
特許文献2では、建物の内部に組み込まれ、側壁及び上壁をコンクリートで形成し、外部環境の異常な変化から内部空間の居住性を防護するシェルターが開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1で開示されるシェルターは、内殻と外殻を有する2重構造であり、また外殻の底面は地盤面から5〜6mの深さに位置する構造物である。そのため、設置するために、まとまった面積の土地が必要となり、既存の住宅密集地では設置のための土地を確保することが難しい。また、施工も複雑である。
【0007】
特許文献2で開示されるシェルターは、建物の内部に組み込まれるものなので、建物を建設するときに設置すると考えられ、既存の建物に設置することは困難である。
【0008】
すなわち、特許文献1、2で開示されているシェルターは、設置時期、及び設置場所等の制約条件があり、容易に設置することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−297898号公報
【特許文献2】特開2009−221673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、住宅敷地内等で確保ができる小規模の土地に容易に設置することができるとともに、地震・津波・火災災害、及び放射能被爆被害に対応できるシェルターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、鉄筋コンクリート製の地下シェルターであって、地表に敷設され
て、駐車場舗装の表層を構成するべた基礎と、底床と天井と側壁とを有する本体と、天井に形成された第1開口部を開閉するとともに、封止可能である引き戸式の扉を備え、天井は、べた基礎に固着され、扉は、駐車場の敷地内
に配置されて、
一対の軌道と、軌道に沿って移動可能である扉本体と、天井と軌道を接続するジャッキとを有し、ジャッキは、第1開口部が扉本体によって閉鎖されたとき、扉本体を天井方向に変位させることにより、扉本体と天井の間に生じた隙間を封止することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、天井は地表に敷設されたべた基礎に固着されているので、本体の自重、及び本体に載荷される地震力をべた基礎全体で分散して負担することができる。これにより、地盤の圧密沈下、及び地震力に起因する本体の不等沈下を抑制することができる。
【0013】
また、この構成によれば、べた基礎、本体、及び扉は鉄筋コンクリート製であるので、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、X線、及び中性子線などほぼすべての放射線を遮蔽する性能を具備する。さらに、第1開口部は扉によって封止されるので、第1開口部を完全に隙間なく封止することができる。これにより、地下シェルターは、核シェルターとして使用することができる。
【0014】
また、この構成によれば、駐車場に駐車する自動車から迅速にシェルターに避難することができる。
さらに、地下シェルターは駐車場の地下に埋設されるので、駐車場の地下空間を有効に活用することができる。これにより、シェルターの設置場所の確保が困難な住宅密集地においても、容易にシェルターを設置できる。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の地下シェルターにおいて、第1開口部に着脱可能な第1断熱蓋を備えることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、第1開口部に着脱可能な第1断熱蓋を備えるので、第1開口部に第1断熱蓋を取り付けることにより、火災等に起因して周辺の温度が上昇したとき、シェルター内部の温度上昇を抑制できる。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の地下シェルターにおいて、第1断熱蓋を支持するための第1固定棒を備えることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、第1断熱蓋を支持するための第1固定棒を備えるので、第1断熱蓋
が第1開口部に取り付けられた状態で、第1断熱蓋を第1固定棒で支持することにより、第1開口部から第1断熱蓋が脱落することを防止できる。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の地下シェルターにおいて、本体は、第2開口部が形成された中間床をさらに有し、中間床は、底床と天井との間に設けられ、第2開口部はハッチが設けられることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、本体は、第2開口部が形成された中間床をさらに有し、中間床は、底床と天井との間に設けられ、第2開口部はハッチが設けられるので、本体の内部空間は、中間床によって上下方向に2分割される。また、ハッチによって上下方向に移動可能となる。これにより、シェルターの収容人数を増加することができる。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の地下シェルターにおいて、第2開口部に着脱可能な第2断熱蓋を備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、第2開口部に着脱可能な第2断熱蓋を備えるので、第2開口部に第2断熱蓋を取り付けることにより、火災等に起因して周辺の温度が上昇したとき、中間床によって上下方向に2分割されたシェルターの内部空間の下方の温度上昇を、上方に比べてさらに抑制することができる。
【0023】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の地下シェルターにおいて、第2断熱蓋を支持するための第2固定棒を備えることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、第2断熱蓋を支持するための第2固定棒を備えるので、第2断熱蓋
が第2開口部に取り付けられた状態で、第2断熱蓋を第2固定棒で支持することにより、第2開口部から第2断熱蓋が脱落することを防止することができる。
【0025】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の地下シェルターにおいて、扉は、べた基礎に形成された凹部に配設され、本体は、凹部に供給するための水を貯留する貯水タンクを有することを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、扉は、べた基礎に形成された貯水可能な凹部に配設されている。また、凹部に供給するための水を貯留する貯水タンクを有するので、凹部に安定して水を供給することができる。シェルターに避難した後、凹部に貯水しておくことにより、火災等に起因して周辺の温度が上昇しても、貯水された水の潜熱効果で、シェルター内部の温度上昇を抑制することができる。
【0027】
請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の地下シェルターにおいて、側壁は、外側に向かって延びる複数の突起体を含むことを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、側壁は、外側に向かって延びる複数の突起体を含むので、側壁の表面積は増加する。これにより放熱効果が増大し、シェルター内部の温度上昇を抑制することができる。また、地震力に起因して、本体と本体周辺の地盤がずれることが懸念される。しかし、突起体によって、本体と地盤との間のせん断抵抗力が増大するので、そのずれを抑制することができる。これにより、本体を安定した状態で地中に埋設できる。
【0029】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の地下シェルターにおいて、突起体は、上下方向、及び周方向に所定の間隔で配設されることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、突起体は、上下方向、及び周方向に所定の間隔で配設されるので、地盤条件等に応じて適宜適切に配設することによりその効果を高めることができる。
【0033】
請求項11に係る発明は、扉の上部にリフト装置を設けることを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、障害者、老人、子供等の弱者が迅速にシェルターに避難することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本実施形態1の地下シェルターの扉の一部を省略した平面図である。
【
図3】本実施形態1の地下シェルターの扉を説明する平面図である。
【
図6】本実施形態2の地下シェルターと運搬装置の正面一部断面図である。
【
図7】本実施形態2の地下シェルターの扉の開閉を説明する平面図である。
【
図8】本実施形態2の地下シェルターの扉近傍を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態1について
図1〜
図5を参照して説明する。
【0037】
図1〜
図2に示す通り、本発明実施形態1の鉄筋コンクリート製の地下シェルター1(以下、シェルター1という)は、べた基礎30と、べた基礎30に固着し、地中に埋設された本体2を備えている。べた基礎30は、駐車場舗装3の表層を構成する。本体2は、天井21、側壁22、底床24を有する有底、有天井の円筒体であり、内部空間は中間床23で仕切られた2層構造となっている。また、天井21には扉5が設けられて、扉5の一部を構成する扉本体50は、天井21に形成された第1開口部25aを封止する。本実施形態1での例示としては、本体2の外径は2.8m、扉5を構成するべた基礎30の厚さは45cm、天井21、側壁22、底床24の厚さは40cmである。この厚さを確保することにより、シェルター1は所定の放射能遮蔽性能を具備する。
【0038】
駐車場舗装3は、基層36の上面(地表400)にべた基礎30が敷設される構造である。基層36は、べた基礎30が車両から受ける荷重を、地盤300に分散して伝えるとともに、べた基礎30を強固に支持するためのものである。これにより、べた基礎30は、車両の荷重が長期間載荷されることによる沈下、及び地震に起因する不等沈下を生じることなく、安定した状態で基層36を介して地盤300に支持される。車両の乗り入れ部は地面と段差を生じることなく接続するためにスロープ34が設けられる。また、車両を安全かつ確実に駐車させるための車止め32、32が設けられる。さらに、中央部には、砂利層31が設けられる。べた基礎30の上面の降雨は砂利層31に集められ、貯水槽40に貯留される。
【0039】
なお、基層36の材質・厚さは地盤300の強度等により適宜定める。例えば、地盤300が所定の強度を有する場合、基層36を省略し、べた基礎30を直接地盤300に載置できる。
【0040】
本体は、べた基礎30の後方部(平面視で車止め32の後方)に設けられており、べた基礎30に配筋された鉄筋と、本体2に配筋された鉄筋とを相互に連結することで、べた基礎30と、固着される。これにより、本体2の自重、及び本体2に載荷される地震力をべた基礎30全体で分散して負担できる。その結果、地盤300の圧密沈下、及び地震力に起因する本体2の不等沈下を抑制できる。
【0041】
本体2は、円筒形の側壁22、底床24、及び天井21を有し、円柱形状の内部空間が形成されている。また、内部空間は、中間床23によって2層に仕切られ、上方に位置する第1内部空間5a、及び下方に位置する第2内部空間5bが形成される。
【0042】
第1内部空間5aの天井21、側壁22、及び中間床23の壁面には第1断熱層29aが設けられる。これにより、火炎熱による第1内部空間5aの内部温度の上昇を抑制できる。第1断熱層29aの材質・厚さは、第1内部空間の目標とする断熱性能を設定することにより、適宜定める。
【0043】
側壁22には、上下方向、及び周方向に所定の間隔で外方に向かって水平に延びる突起体45が固定されている。側壁22の表面積が増加することにより放熱効果が増大し、第1内部空間5a、及び第2内部空間5bの温度上昇を抑制することができる。また、地震力に起因して、本体2と本体周辺の地盤300がずれることが懸念される。しかし、突起体45によって、本体2と地盤300との間のせん断抵抗力が増大するので、そのずれを抑制することができる。これにより、本体2を安定した状態で地中に埋設できる。
【0044】
天井21には、外部空間と第1内部空間5aの間を出入りするための第1開口部25aが形成されている。第1開口部25aは平面視で矩形の形状であり、その形状は下方に向かって広がる四角錐台である。第1開口部25aは、第1断熱蓋26aで封止される。第1断熱蓋26aは第1開口部25aに対応する形状であり、平常時は、第1内部空間5aの定められた場所に載置されている。使用時は、第1断熱蓋26aを第1開口部25aに上方に向かって挿入する。これにより第1開口部25aは封止される。また、挿入後、第1断熱蓋26aを上下方向に延びる第1固定棒110aで支持する。これにより、封止をより強固にできるとともに、第1断熱蓋26aの脱落を防止できる。
【0045】
第1固定棒110aは伸縮可能な構造である。平常時は、一端を天井21に配設される第1断熱層29aに、他端を中間床23に配設される第1断熱層29aに接した状態で第1内部空間5aの所定の場所に固定される。
【0046】
第2内部空間5bの側壁22、及び中間床23の壁面には第2断熱層29bが設けられる。第2内部空間5bは、第1内部空間5aに比べ、火炎熱の影響を受けにくい下層に位置することから、内部温度の上昇は第1内部空間5aに比べさらに抑制される。第2断熱層29bの材質・厚さは、第2内部空間5bの目標とする断熱性能を設定することにより、適宜定める。
【0047】
中間床23の中央部に、第1内部空間5aと第2内部空間5bを出入りするための第2開口部25bが形成される。第2開口部25bは平面視で円形の形状であり、その形状は下方に向かって広がる円錐台である。第2開口部25bを開閉するハッチ27が中間床23の第1内部空間5a側に設けられる第1断熱層29aに回動可能に固定されている。第2開口部25bは、第2断熱蓋26bで封止される。第2断熱蓋26bは第2開口部25bに対応する形状であり、平常時は、第2内部空間5bの定められた場所に載置されている。使用時は、第2断熱蓋26bを第2開口部25bに上方に向かって挿入する。これにより第2開口部25bは封止される。また、挿入後、第2断熱蓋26bを上下方向に延びる第2固定棒110bで支持する。これにより、封止をより強固にできるとともに、第2断熱蓋26bの脱落を防止できる。
【0048】
第2固定棒110bは伸縮可能な構造である。平常時は、一端を中間床23に配設される第2断熱層29bに、他端を底床24の上方に設けられる貯水タンク42に接した状態で第2内部空間5bの所定の場所に固定される。
【0049】
適切な酸素濃度の確保のため、第1内部空間5a、第2内部空間5b内に酸素ボンベが用意してある。酸素を吹き出すことで、中の気圧が上昇する。そのため、内部の圧力を抜く減圧弁46も備える。さらに、二酸化炭素の増え過ぎを防止するため、二酸化炭素を消石灰水溶液又はゼオライトで吸着して二酸化炭素を減らす。
【0050】
貯水槽40内に貯留された水W1は、管41を経由して貯水タンク42内に貯留される。貯水タンク42に貯留された水W2は、ポンプ43で揚水され、管44を経由して給排水口35から放出され、凹部33に貯留される。火災時に凹部33に水W2を貯留することで、水の潜熱効果により扉本体50、及び天井21の温度上昇を抑制できる。管44は、水の逆流を防止するための逆止弁(図示略)が設けられている。これにより、水W2を凹部33に安定して供給することができる。なお、ポンプ43は、手動、電動のいずれであってもよい。
【0051】
火災が終息したとき、逆止弁を開放し、凹部33に貯留された水W2を給排水口35から管44を経由して貯水タンク42に還流する。これにより、水W2は凹部33から排水される。その結果、扉本体50を開戸しても、第1開口部25aから水W2が第1内部空間5aに浸水することはない。
【0052】
扉5は凹部33に配設されて、鉄筋コンクリート製の扉本体50、扉本体50に固定される車輪51、車輪51の走行方向を誘導する軌道52、及び軌道52を上下方向に変位させるジャッキ53を有する。
【0053】
車輪51は、扉本体50を軌道52に沿って移動させるためのものであり、片側に2個、合計で4個の車輪51が扉本体50に固定される。車輪51は後述する軌道52の溝部52aに配設され、その設置面は、ジャッキ53を上昇させたとき、底板12と天井21との間に所定の隙間が存在し、下降させたとき扉本体50と天井21は接触する状態となるように設定される。すなわち、ジャッキ53の構造高さ、及びジャッキ53のストローク等を勘案して適宜定める。なお、ジャッキ53は油圧で上昇及び下降する手動、又は電動の油圧ジャッキであることが好ましい。
【0054】
一対の軌道52、52は上述した車輪51を円滑に回動させるとともに所定の方向に確実に誘導するためのものである。
図3、4に示す通り、軌道52、52は天井21の上方に設けられ、第1開口部25aの外周領域に、凹部側面33a、33bに平行に敷設される。軌道52は上方に開口された溝部52aを形成する断面視コ字形の形状であり、両端部、及び中央部の3か所で合計3個のジャッキ53を介して天井21に固定される。具体的には、軌道52の底面はジャッキ53の受け台53aに固定されており、また、ジャッキ53の底面は、天井21に固定される。
【0055】
軌道52の長さは、第1開口部25aを開閉することができる長さ、すなわち、第1開口部25aの敷設方向の長さに扉本体50の走行方向の長さを加算した長さ以上に設定される。
【0056】
車輪51の移動方向に直角方向の間隔は、車輪51を軌道52に配設することができる間隔、すなわち一対の軌道52、52間隔と同じとなるように設定されている。これにより、扉本体50は、軌道52に沿って移動可能となり、第1開口部25aを開閉できる。
【0057】
軌道52の両端部には、溝部52aを塞ぐ制止板54a、bが溝部52aの上方に突出した状態で設けられている。制止板54a、bは、車輪51の移動を制限するためのものであり、これにより扉本体50の軌道52からの移動方向への逸脱を防止できる。制止板54bによって車輪51の移動が制限されたとき、扉本体50は第1開口部25aを閉鎖する状態となり、制止板54aによって車輪51の移動が制限されたとき、扉本体50は第1開口部25aを開放する状態となる。
【0058】
扉本体50を閉鎖した状態で、第1開口部25aの外周面に対向する扉本体50の底面にパッキン80が環状に設けられている。これにより、扉本体50と天井21に存する隙間を封止したとき、第1内部空間5aの気密性をより一層高めることができる。
【0059】
第1開口部25aを封止する方法について説明する。扉本体50と天井21との間に所定の隙間が存する状態、すなわち、6個のジャッキ53がすべて上昇している状態で、扉本体50を第1開口部25aの方向に移動させる。制止板54bによって、扉本体50の移動が制限されたときたとき、第1開口部25aは扉本体50で閉鎖された状態となる。その後、軌道52、52を固定する合計6個のジャッキ53を同時に下方に降下させることにより、扉本体50と天井21との間に存する所定の隙間を封止できる。
【0060】
第1開口部25aが封止された状態から、開放された状態とする方法について説明する。6個のジャッキ53を同時に上昇させ、扉本体50と天井21との間に所定の隙間が存する状態とする。その後、扉本体50を制止板54aの方向に移動させる。制止板54aによって扉本体50の移動が制限されたとき、第1開口部25aは開放された状態となる。その後、6個のジャッキ53を同時に下降させ、扉本体50と天井21が接触し、扉本体50の全重量を天井21が負担する状態とする。扉本体50と天井21に作用する摩擦力により、扉本体50は安定して所定の位置に載置できる。
【0061】
本発明の実施形態2について
図6〜
図8を参照して説明する。本実施形態2は実施形態1と基本的には共通するが、リフト装置270を追加した点などの相違点を主に説明する。対応する部材番号は200番台とし、共通する部材については説明を援用する。
図1〜
図5の実施形態1の部材は、説明の便宜のため、実施形態2の対応する図面では、適宜、省略する。
【0062】
リフト装置270は、天板部271と、天板部271を支持し地表400に固定される脚部272と、天板部271に固定されるガイドレール273と、ガイドレール273に沿って横方向に移動するフック部274と、フック部274に吊り下げられるロープ275と、ロープ275に吊り下げる車椅子276と、を備えている。車椅子276は懸垂状態で扉205の上まで横方向に移動させる。扉205を開き、地下1階B1又は地下2階B2まで降下させる。自動車290を経て、車椅子276をフック部274に懸垂させることもある。なお、天板部271はカーポートと連結することが好ましい。フック部274の移動は電動ウィンチ(図示略)で行う。地下1階B1に第2のフック部274aを設けることで、地下1階B1から地下2階B2へ電動ウィンチ(図示略)を用いて人の移動を行うことができる。
【0063】
実施形態2のリフト装置270により、障害者、お年寄り、子供等を迅速に収容することができる。また、駐車場に近いので、自動車290から迅速に避難できる。
【0064】
図8に示す通り、上蓋205aと核防護用蓋205bとが連動するように連結され、手動、又は電動で動く構造である。これにより、安全性を高めるとともに操作性を向上できる。なお、ウッドデッキ299を避難路に設けている。
【産業上の利用可能性】
【0065】
放射線、地震、火災、及び津波に対応できる地下シェルターを、狭隘な土地に容易に設置できる。特に、住宅密集地域において、その産業上の利用価値は大である。
【符号の説明】
【0066】
1 :地下シェルター
2 :本体
3 :駐車場舗装
5 :扉
5a :第1内部空間
5b :第2内部空間
21 :天井
22 :側壁
23 :中間床
24 :底床
25a :第1開口部
25b :第2開口部
26a :第1断熱蓋
26b :第2断熱蓋
27 :ハッチ
29a :第1断熱層
29b :第2断熱層
30 :べた基礎
31 :砂利層
32 :車止め
33 :凹部
35 :給排水口
36 :基層
40 :貯水槽
42 :貯水タンク
43 :ポンプ
45 :突起体
50 :扉本体
51 :車輪
52 :軌道
52a :溝部
53 :ジャッキ
53a :受け台
54a、b:制止板
80 :パッキン
110a :第1固定棒
110b :第2固定棒
205 :扉
205a :上蓋
205b :核防護用蓋
270 :リフト装置
271 :天板部
272 :脚部
273 :ガイドレール
274 :フック部
275 :ロープ
276 :車椅子
290 :自動車
274a :第2のフック部
299 :ウッドデッキ
300 :地盤
400 :地表
W1、w2:水