(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記筒部材が、前記棒部材の先端面から所定の距離を超えて前進することを制限する移動制限部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のワイヤカット放電加工機の中子移動装置。
前記棒部材に対する前記筒部材の位置が、前記棒部材の先端面に前記中子が吸着されている際の位置であるか否かを検出する、中子吸着検出部を備えることを特徴とする請求項1に記載のワイヤカット放電加工機の中子移動装置。
前記棒部材の基端部が取り付けられて、前記棒部材と一緒に前記被加工物に対して相対的に移動する支持部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のワイヤカット放電加工機の中子移動装置。
前記筒部材駆動部は、退避位置から前進して前記筒部材が突き出る方向に当該筒部材を押し出して、そのあと後退して前記筒部材を残して退避位置に戻る押し部材と、前記支持部材に取り付けられて前記押し部材を前後に駆動する押し部材駆動源と、を備えることを特徴とする請求項6に記載のワイヤカット放電加工機の中子移動装置。
前記棒部材の基端部が取り付けられて、前記棒部材と一緒に前記被加工物に対して相対的に移動する支持部材を備えることを特徴とする請求項3に記載のワイヤカット放電加工機の中子移動装置。
前記中子吸着検出部は、前記支持部材に取り付けられて、前記棒部材の先端面に前記中子が吸着されている際の前記筒部材の基端部に対面する位置に取り付けられる、前記筒部材の基端部の接近を非接触で検出する近接センサ、または、前記筒部材の基端部の接近を接触で検出する接触センサを備えることを特徴とする請求項8に記載のワイヤカット放電加工機の中子移動装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を用いて本発明の実施形態に係るワイヤカット放電加工機の中子移動装置について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る中子移動装置を備える放電加工装置を概略を示す正面断面図である。
図2は、
図1のA−A矢視の側面断面図である。
図3は、中子吸着保持部が中子を吸着した状態を示す概略図である。
図4は、中子を吸着した中子吸着保持部を上昇させて被加工物の中から中子を抜き取った状態を示す概略図である。
図5は、中子を吸着した中子吸着保持部を中子回収バケットの上方まで移動させて中子吸着保持部から中子を取り外した状態を示す概略図である。
図6は、本発明の中子移動装置の中子吸着保持部の概略を示す斜視図である。
図7は、
図6のB−B矢視の正面断面図である。
図8は、
図7のC−C矢視断面図であって、中子を吸着する前の中子吸着保持部の概略を示す正面断面図である。
図9は、中子を吸着したときの中子吸着保持部の概略を示す側面断面図である。
図10は、中子を取り外したときの中子吸着保持部の概略を示す側面断面図である。
図11は、別の実施の形態に係る筒部材の先端面の段差を示す概略図である。
【0010】
図1から
図5に示すワイヤカット放電加工機1は、被加工物WPとワイヤ電極ELの間に図示しない放電加工用の電源装置から加工電圧を供給し、上下一対のガイドに案内されて走行するワイヤ電極ELを上下一対のガイドの間に配置される被加工物WPに対して所望の経路に沿って相対移動させて、被加工物WPから所望の形状の中子WP1を切り抜く。
【0011】
ワイヤ電極ELは、例えば、図示しないリールから上ガイド16aに未使用のワイヤ電極として供給されて、上ガイド16aから下ガイド18aに向って上から下に走行し、下ガイド18aから図示しないワイヤ電極回収バケットに使用済みのワイヤ電極として回収される。
【0012】
ワイヤカット放電加工機1は、ベッド10と、コラム11と、サドル12と、テーブル13と、加工タンク14と、ワークスタンドWSと、上側支持部15と、下側支持部17と、制御装置と、および放電加工用の電源装置とを備える。ベッド10は、設置面に載置されている。コラム11は、ベッド10の後部に鉛直に立設されている。上側支持部15と下側支持部17は、コラム11に取り付けられている。
【0013】
サドル12は、ベッド10上に設けられて、ベッド10上をY軸方向に移動する。テーブル13は、サドル12上に設けられて、サドル12上をX軸方向に移動する。制御装置は、サドル12とテーブル13の移動を制御する。X軸方向は、ベッド10の前後方向である。Y軸方向はベッド10の左右方向である。X軸とY軸から構成される平面は、水平である。
【0014】
加工タンク14は、テーブル13上に固定されて、テーブル13と一緒に移動する。加工タンク14は、加工液で満たされている。加工タンクから排出される汚れた加工液は、図示しないサブタンクに一時的に貯められる。サブタンク内の加工液は、汚れを浄化され、所定の温度に温度調整されたあと、必要なタイミングで加工タンク14に戻される。
【0015】
ワークスタンドWSは、加工タンク14内に設けられて、加工タンク14と一緒に移動する。被加工物WPは、ワークスタンドWSに固定されて、加工タンク14と一緒に移動する。被加工物WPは、X軸方向およびY軸方向に移動する。
【0016】
上側支持部15は、上ガイド部16を支持している。上ガイド部16は、上ガイド16aと、上通電体16bと、および上加工液噴出ノズルとを備えている。上ガイド16aは、被加工物WPの上方でワイヤ電極ELを案内する。上通電体16bは、上ガイド16aの上方でワイヤ電極ELに接触して、ワイヤ電極ELと放電加工用の電源装置を接続する。上加工液噴出ノズル16cは、上ガイド部16の下端に設けられて、サブタンクから供給される加工液を被加工物WPの上面に噴出する。ワイヤ電極ELは、加工液を噴出する上加工液噴出ノズル16cの開口を通してもよい。
【0017】
上側支持部15は、コラム11側から順に、ヘッド15bと、U軸移動ユニット15uと、V軸移動ユニット15vと、および上アーム15aとを備えている。ヘッド15bは、コラム11に設けられて、コラム11に対してU軸移動ユニット15uをZ軸方向に移動する。U軸移動ユニット15uは、ヘッド15bに設けられて、ヘッド15bに対してU軸方向にV軸移動ユニット15vを移動する。V軸移動ユニット15vは、U軸移動ユニット15uに設けられて、V軸方向に上アーム15aを移動する。
【0018】
上アーム15aは、V軸移動ユニット15vからZ軸方向に延びて、下端に上ガイド部16が設けられている。上ガイド部16は、U軸方向、V軸方向、およびZ軸方向に移動する。U軸は、X軸に平行する。V軸は、Y軸に平行する。U軸とV軸から構成される平面は、X軸とY軸から構成される平面に平行であって、水平である。Z軸は、X軸とY軸に垂直であって、鉛直である。Z軸方向は、ベッド10の上下方向である。
【0019】
上ガイド16aが下ガイド18aに対して相対的に水平方向に移動することで斜めに支持されるワイヤ電極ELは、テーパ形状のワイヤカット放電加工を可能にする。
【0020】
下側支持部17は、上側支持部15の下方に配置される。下側支持部17は、下ガイド部18を支持している。下ガイド部18は、下ガイド18aと、下通電体18bと、および下加工液噴出ノズル18cとを備えている。下ガイド18aは、被加工物WPの下方でワイヤ電極ELを案内する。下通電体18bは、下ガイド18aの下方でワイヤ電極ELに接触して、ワイヤ電極ELと放電加工用の電源装置を接続する。下加工液噴出ノズル18cは、下ガイド部18の上端に設けられて、サブタンクから供給される加工液を被加工物WPの下面に噴出する。ワイヤ電極ELは、加工液を噴出する下加工液噴出ノズル18cの開口を通してもよい。
【0021】
下側支持部17は、下アーム17aを備える。下アーム17aの胴部は、加工タンク14の槽壁をY軸方向に貫通している貫通孔14a内に通されている。貫通孔14aは、加工タンク14に対して相対的にX軸方向にスライドする。貫通孔14aは、下アーム17aを摺動可能にシールされている。
【0022】
下アーム17aは、コラム11からY軸方向に延びて、先端に下ガイド部18が設けられている。下ガイド部18は、加工タンク14内の被加工物WPの下方に配置される。下ガイド部18は、被加工物WPに対して、X軸方向とY軸方向に相対的に移動する。
【0023】
ワイヤカット放電加工機1は、上ガイド部16を鉛直方向に移動させて、上ガイド部16と下ガイド部18の間の距離を調整することができる。ワイヤカット放電加工機1は、上ガイド部16を水平方向に移動させて、上ガイド部16と下ガイド部18の間のワイヤ電極ELの傾きを調整することができる。ワイヤカット放電加工機1は、上ガイド部16と下ガイド部18の間に被加工物WPを配置して、加工タンク14の加工液の中で被加工物WPをワイヤ電極ELに対して相対的に所望の経路に沿って移動させて、被加工物WPから所望する形状の中子WP1を切り抜く。
【0024】
上加工液噴出ノズル16cは、被加工部WPの上面に所定の圧力の加工液を噴出してもよい。下加工液噴出ノズル18cは、被加工部WPの下面に所定の圧力の加工液を噴出してもよい。上加工液噴出ノズル16cおよび下加工液噴出ノズル18cは、同時に加工液を噴出してもよい。
【0025】
上加工液噴出ノズル16cまたは下加工液噴出ノズル18cのうちの少なくともいずれか一方から噴出される清浄な加工液は、ワイヤ電極ELと被加工物WPの間の加工間隙から加工屑を含む加工液を押し出して置き換わる。上加工液噴出ノズル16cおよび下加工液噴出ノズル18cの両方から噴出される加工液は、被加工物WPから切り抜く途中の中子WP1の傾き、および被加工物WPから切り抜かれた直後の中子WP1の傾きを防止することができる。
【0026】
下加工液噴出ノズル18cから噴出される加工液は、被加工物WPから切り抜かれる途中の中子WP1の傾き、および被加工物WPから切り抜いた直後の中子WP1の傾きを防止することができる。下加工液噴出ノズル18cから噴出される加工液は、被加工物WPから切り抜いた中子WP1を持ち上げることができる。
【0027】
下ガイド部18は、下加工液噴出ノズル18cと被加工物WPの間に中子保持パッド18dを備えてもよい。中子保持パッド18dの材料は、例えば、樹脂材料である。中子保持パッド18dは、下ガイド部18の上端に設けられて、ワイヤ電極ELおよび下加工液噴出ノズル18cから噴出される加工液を通す開口が形成されている。中子保持パッド18dの被加工物WP側の面は、被加工物WPの下面に可能な限り近接している。中子保持パッド18dの被加工物WP側の面は、複数の突起が形成されていてもよい。
【0028】
下ガイド部18は、中子WP1に対して相対的に移動して、被加工物WPから切り抜かれた中子WP1の下に移動する。下加工液噴出ノズル18cは、加工液の噴出を停止する。切り抜いた中子WP1は、中子保持パッド18dの上に載る。中子WP1は、被加工物WPの中から引き上げられる際に、引っ掛かることなく簡単に取り出すことができる。
【0029】
ここからは、本発明の特有の構成が説明される。本発明のワイヤカット放電加工機1の中子移動装置2は、例えば、被加工物WPから切り抜かれた中子WP1を被加工物WP内から取り出したあと、中子WP1をワイヤカット放電加工機1の加工タンク14内に設けた中子回収バケット14bに回収する。以下、本発明の中子移動装置2は、中子WP1を回収する装置を一例にして説明される。
【0030】
図6から
図10に示す本発明のワイヤカット放電加工機1の中子移動装置2は、中子吸着保持部20を備える。中子吸着保持部20は、マグネット21と、棒部材22と、筒部材23、および筒部材駆動部25とを備える。マグネット21は、永久磁石または電磁石である。
【0031】
棒部材22は、少なくとも先端部がマグネット21で構成されている。中子WP1は、マグネット21に吸着されて、棒部材22の先端面22aに保持される。
【0032】
筒部材23は、棒部材22を内挿する。筒部材23は、棒部材22に対して相対的に棒部材22の軸心方向に前進および後退する。前進方向は、筒部材23が棒部材22の先端部側に移動する方向である。後退方向は、筒部材23が棒部材22の基端部側に移動する方向である。筒部材23の材料は、マグネットに付かない非磁性材料、例えば、プラスチック、非磁性金属、または非磁性セラミックなどであるとよい。
【0033】
筒部材23は、筒部材23の前部が棒部材23の先端面23aを超えて突き出るまで前進する。筒部材23は、棒部材22の先端面22aが露出するまでの後退する。筒部材23は、少なくとも棒部材22の先端面22aと筒部材23の先端面23aが一致するまで後退するだけでもよい。
【0034】
筒部材23は、移動制限部材24を備えてもよい。移動制限部材24は、筒部材23の先端面23aが棒部材22の先端面22aから所定の距離を超えて突き出すことを制限する。筒部材23が移動制限部材24に制限されるまで突き出たときの筒部材23の先端面23aと棒部材22の先端面22aとの間の所定の距離は、離れている棒部材22の先端面22aに中子WP1が磁力で吸引されない距離に設定されるとよい。移動制限部材24は、例えば、棒部材22の軸心に対して垂直に棒部材22および筒部材23を貫通するキー部材24aと、キー部材24aを挿通しかつキー部材24aを棒部材22の軸心方向に所定の距離だけ平行に移動させることができる棒部材22に形成されている長孔24bとで構成される。移動制限部材24は、実施の形態だけに限定されず、移動を制限する機能を果たすことができる構成であれば各種構成が適用できる。
【0035】
筒部材駆動部25は、筒部材23を少なくとも前進させる。筒部材駆動部25は、例えば、押し部材25aと、押し部材駆動源25bとを備えても良い。押し部材25aは、筒部材駆動部25の駆動軸に接続されている。押し部材25aは、押し部材駆動源25bによって退避位置から前進して筒部材23を前進させて、筒部材23を残して押し部材駆動源25bによって後退して退避位置に戻る。筒部材駆動部25は、実施の形態に限定されずに、筒部材23を前進および後退させてもよい。筒部材駆動部25の駆動源は、空圧アクチュエータ、油圧アクチュエータ、または電動モータなどの各種駆動源が適宜に採用されるとよい。
【0036】
中子吸着保持部20は、筒部材23を棒部材22に対して相対的に後退させて、棒部材22の先端面22aを露出させる。露出した棒部材22の先端面22aは、マグネット21の磁力で中子WP1吸着する。中子吸着保持部20は、筒部材23を棒部材22に対して相対的に前進させて、移動制限部材24に制限されるまで棒部材22の先端面22aから所定の距離を突き出る筒部材23によって、中子WP1を磁力に反して押し出す。中子WP1は、棒部材22の先端面22aから所定の距離を離されるとマグネット21の磁力で吸着できずに、棒部材22から取り外される。
【0037】
さらに中子吸着保持部20は、中子吸着検出部27を備えてもよい。中子吸着検出部27は、棒部材22の先端面22aに中子WP1が吸着しているか否かを検出する。中子吸着検出部27は、例えば、棒部材22の先端面22aが露出するまで棒部材22に対して筒部材23が相対的に後退したことを示す信号を出力すればよい。
【0038】
中子吸着検出部27は、例えば、近接センサ27aまたは図示しない接触センサを備えるとよい。近接センサまたは接触センサは、棒部材22の先端面22aが露出して、棒部材22の先端面22aに中子WP1を吸着させた際の筒部材23の基端部に対面する位置に取り付けられるとよい。近接センサ27aは、筒部材23の基端部の接近を非接触で検出する。接触センサは、筒部材23の基端部の接近を接触で検出する。
【0039】
中子吸着保持部20は、支持部材28を備えてもよい。支持部材28は、棒部材22の基端部、押し部材駆動源25bが取り付けられる。支持部材28は、中子吸着検出部27の近接センサ27aまたは接触センサが取り付けられる。押し部材25aは、棒部材22が摺動する孔が形成されて、支持部材28と筒部材23の基端面との間を前進または後退させてもよい。
【0040】
中子移動装置2は、中子吸着保持部20を被加工物WPに対して相対的にX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させる中子吸着保持部駆動手段を備える。中子移動装置2は、上アーム15aに中子吸着保持部20を取り付けて、被加工物WPに対して相対的にワイヤ電極ELを移動させるワイヤカット放電加工機1の各種駆動部、および、下ガイド部18に対して上ガイド部16を相対的に移動させるワイヤカット放電加工機1の各種駆動部を中子吸着保持部駆動手段として、中子吸着保持部20を被加工物WPに対して相対的に移動させてもよい。中子移動装置2は、ワイヤカット放電加工機1に備える各種駆動部と中子吸着保持部の専用駆動部の両方を中子吸着保持部駆動手段としてもよい。
【0041】
本発明の中子移動装置2は、例えば、
図1から
図5に示すように構成されるとよい。棒部材22は、基端部を上にしかつ先端部を下にして、鉛直、すなわちZ軸方向に配置される。筒部材23は、棒部材22に対して相対的に移動して、移動制限部材24に制限されるまで自重で降下し、自重に反して外力で上昇させることができる。
【0042】
中子吸着保持部20は、中子吸着保持部駆動手段の1つである上下駆動部29の上下駆動軸29aが支持部材28に接続されている。上下駆動部29は、ワイヤカット放電加工機1の上アーム15aに取り付けられている。中子吸着保持部20は、上下駆動部29によって、Z軸方向に上下に移動する。さらに加えて中子吸着保持部20は、中子吸着保持部駆動手段の1つである上アーム15aを上下に移動させる駆動部によって、Z軸方向に上下に移動することもできる。中子吸着保持部20は、中子吸着保持部駆動手段の1つである上アーム15aを前後左右に移動させる駆動部によって、X軸方向およびY軸方向に前後左右に移動する。さらに加えて中子吸着保持部20は、上アーム15aに対して相対的に左右に移動するテーブル13の駆動部、および、上アーム15aに対して相対的に前後に移動するサドル12の駆動部によって、被加工物WPに対して相対的にX軸方向およびY軸方向に前後左右に移動することもできる。
【0043】
本発明のワイヤカット放電加工機1の中子移動装置2は、例えば、つぎのように動作する。まず、ワイヤカット放電加工機1は、
図1にしめすように、ワイヤ放電加工を用いて被加工物WPから中子WP1を切り抜く。つぎに、ワイヤカット放電加工機1は、
図2に示すように、ワイヤ電極ELを上ガイド16aの上方で図示しないワイヤカット部によって切断する。下ガイド部18側のワイヤ電極ELは、切断されたあと図示しないワイヤ電極回収ボックスに回収される。下ガイド部18が被加工物WPに対して相対的に移動して、下ガイド部18に有する中子保持パッド18dを中子WP1の下に移動させる。被加工物WP1は、中子保持パッド18d上に保持される。上アーム15aを上昇させて上ガイド部16を所定の位置に移動する。
【0044】
中子移動装置2は、
図2に示すように、上アーム15aを水平方向に移動させて、中子WP1の上方に中子吸着保持部20を移動させる。中子移動装置2は、上下駆動部29によって中子吸着保持部20を下降させる。筒部材23は、
図7および
図8に示すように、移動制限部材24に制限されるところまで自重によって棒部材22の先端面22aから突き出ている。
【0045】
下降する中子吸着保持部20は、最初に筒部材23の先端面23aが中子WP1の上面に当接する。さらに下降する中子吸着保持部20は、下降する棒部材22に対して相対的に筒部材23が上昇する。さらに下降する中子吸着保持部20は、
図9に示すように、露出した棒部材22の先端面22aが中子WP1の上面に当接する位置で下降を停止する。中子吸着保持部20を下降させる距離は、予め設定しておくことができる。加工する中子吸着保持部20は、露出した棒部材22の先端面22aが中子WP1の上面に当接したことを中子吸着検出部27が検知すると下降を停止するようにしてもよい。
【0046】
中子吸着検出部27は、移動する筒部材23の基端部が近接センサ27aに対面する位置に到達すると、棒部材22の先端面22aに中子WP1が当接したこを示すON信号を出力する。
【0047】
中子移動装置2は、中子吸着検出部27のON信号を受けて、今度は上アーム15aを上に移動させて、中子吸着保持部20を上昇させる。中子吸着保持部20は、
図4に示すように、中子回収バケット14bの上方まで中子WP1を前後左右に移動しても他の物体に干渉しない高さまで上昇する。中子吸着保持部20は、上アーム15aの移動だけでは移動距離が不足する場合には、上下駆動部29で上下方向に移動させるなど、複数の駆動部を組み合わせて移動してもよい。このとき、筒部材23が自重で降下して中子吸着検出部27がOFF信号を示すことで、中子WP1が棒部材22の先端面22aに磁力で吸着できていないことが検出できる。棒部材22に中子WP1が吸着できていなければ、再び棒部材22の先端面22aを中子WP1に当接させる作業に戻してもよいし、アラームを出して中子移動装置2またはワイヤカット放電加工機1を停止させてもよい。
【0048】
中子移動装置2は、
図5に示すように、中子吸着保持部20を中子WP1を中子回収バケット14bの上方まで水平方向に移動する。必要に応じて、中子回収バケット14bの中まで下降させてもよい。中子吸着保持部20は、必要に応じて、中子回収バケット14bの中まで下降させてもよい。中子吸着保持部20は、上アーム15aの移動だけでは移動距離が不足する場合には、中子回収バケット14bを備える加工タンク14を水平方向に移動させるなど、複数の駆動部を組み合わせて移動してもよい。
【0049】
中子吸着保持部20は、
図10に示すように、退避位置の押し部材25aを下降させる。筒部材23は、下降する押し部材25aに押されて、移動制限部材24に制限されるまで棒部材22に対して相対的に下降する。中子WP1は、磁力で吸着していた棒部材22の先端面22aから離されて、さらに棒部材22の先端面22aに磁力で吸引されない位置まで棒部材22の先端面22aから離されて、中子回収バケット14bの中に落下する。押し部材25aは、退避位置まで上昇する。このとき、中子吸着検出部27がOFF信号を示せば、中子WP1が落下したことが検出される。また、このとき、中子吸着検出部27がON信号を示せば、中子WP1が落下せずに筒部材23を押し上げて棒部材22の先端面22aに磁力で吸引されて再び磁力で吸着したことが検出できる。中子WP1が落下していなけば、再び棒部材22の先端面22aから中子WP1を取り外す作業に戻してもよいし、アラームを出して中子移動装置2またはワイヤカット放電加工機1を停止させてもよい。
【0050】
中子移動装置2は、中子吸着保持部20が他の物体に干渉しない高さまで上昇させる。続けて別の中子WP1を回収する場合には、一連の動作を繰り返す。または、つぎのワイヤカット放電加工で中子WP1の抜き出しが行わえる。
【0051】
本発明のワイヤカット放電加工機1の中子移動装置2は、筒部材23に棒部材22を内挿するという簡単な構成で、棒部材22の先端面22aに磁力で吸着される中子WP1を確実に棒部材22から取り外すことが可能になる。本発明のワイヤカット放電加工機1の中子移動装置2は、中子WP1をマグネット21から取り外す機構を使って、棒部材22に対する筒部材23の位置を検出することで、棒部材22に中子WP1が吸着されているのか否かを容易に検出して、中子WP1を確実に移動させることが可能になる。本発明のワイヤカット放電加工機1の中子移動装置2は、ワイヤカット放電加工を用いて被加工物WPから切り抜かれた中子WP1を自動で移動することも可能である。
【0052】
筒部材23の先端面23aは、棒部材22の先端面22aに平行する面でもよい。筒部材23の先端面23aは、
図11に示すように、わずかな段差を有してもよい。磁力で吸着されている棒部材22の先端面22aと中子WP1の間は、隙間がなければ真空状態による力も作用することがある。わずかな段差は、隙間なく磁力で吸着している中子WP1を棒部材22の先端面22aから離す際に、最初に中子WP1を棒部材22の先端面22aに対してわずかに斜めにして、より小さい力で棒部材22の先端面22aと中子WP1の間にわずかな隙間をあけさせることができる。中子WP1は、隙間があけられたあとも引き続き押されて、棒部材22の先端面22aから磁力によって吸引されない位置まで押されて、棒部材22の先端面22aから取り外される。
【0053】
以上説明した本発明は、この発明の精神および必須の特徴的事項から逸脱することなく他のいろいろな形態で実施することができる。したがって、本明細書に記載した実施例は例示的なものであり、これに限定して解釈されるべきものではない。
【解決手段】中子移動装置が、被加工物から切り抜いた中子をマグネット21の磁力で吸着し、被加工物に対して相対的に移動する中子吸着保持部20を備えて、中子吸着保持部が、少なくとも先端部がマグネットで構成される棒部材22と、棒部材を内挿し、一方で棒部材に対して相対的に後退して棒部材の先端面22aを露出させて、棒部材の先端面に中子を吸着して、他方で棒部材に対して相対的に前進して棒部材の先端面を超えて突き出て、棒部材の先端面に吸着した中子を磁力に反して押し出して取り外す筒部材23と、棒部材に対して相対的に筒部材を前進させる筒部材駆動部25と、を備える。