(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6583943
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】地下シェルター
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20190919BHJP
E03B 11/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
E04H9/14 B
E03B11/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-187625(P2018-187625)
(22)【出願日】2018年10月2日
【審査請求日】2019年4月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【審査官】
立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−041746(JP,U)
【文献】
特開2014−080847(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/199431(WO,A1)
【文献】
特許第6418620(JP,B1)
【文献】
特開2009−221673(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3178338(JP,U)
【文献】
特開2014−080745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を設けた天井を有し、避難空間を画定する本体と、
前記開口部を封止可能な扉と、を備え、
前記扉は、前記天井の上方に画定された貯水可能な凹部に配設され、
前記凹部に給水する貯水タンクをさらに備え、
前記貯水タンクは、地上に配設される第1貯水タンクと、前記避難空間に配設される第2貯水タンクとを有することを特徴とする地下シェルター。
【請求項2】
開口部を設けた天井を有し、避難空間を画定する本体と、
前記開口部を封止可能な扉と、を備え、
前記扉は、前記天井の上方に画定された貯水可能な凹部に配設され、
前記凹部に給水する貯水タンクをさらに備え、
前記貯水タンクは、地上に配設される第1貯水タンクを有し、
前記貯水タンクに給水する貯水槽をさらに備え、
前記貯水槽は、地中に設けられて、雨水を集水可能であることを特徴とする地下シェルター。
【請求項3】
開口部を設けた天井を有し、避難空間を画定する本体と、
前記開口部を封止可能な扉と、を備え、
前記扉は、前記天井の上方に画定された貯水可能な凹部に配設され、
前記扉の上方にリフト装置が設けられ、
前記リフト装置は駆動部と、前記駆動部を支持するフレーム部を有し、
前記凹部に給水する貯水タンクをさらに備え、
前記貯水タンクは、前記フレーム部の上面に載置される第1貯水タンクを有することを特徴とする地下シェルター。
【請求項4】
前記凹部に所定の水量を給水したとき、前記扉の全体が水没することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の地下シェルター。
【請求項5】
前記避難空間の上端部に設けられる断熱部材を備え、
前記断熱部材は、厚さが、1.0m〜2.0mであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の地下シェルター。
【請求項6】
前記本体は、厚さが20cm〜50cmの鉄筋コンクリート製であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の地下シェルター。
【請求項7】
前記本体に固着するべた基礎を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の地下シェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェルターの内部温度の上昇が抑制できる地下シェルターに関する。
【背景技術】
【0002】
木造住宅密集地域で発生する地震火災は延焼速度が早く、かつ同時多発的に巨大な火炎が迫ってくる危険があり、逃げ遅れないために早期に避難することが重要である。しかし、安全な場所に避難しようとしても、道路は避難する人々で前に進めない事態が想定される。仮に、前に進めたとしても倒壊した家屋によって道路が塞がれ、さらに橋梁の倒壊等により避難路が確保できない事態も予想される。
【0003】
関東大震災や阪神・淡路大震災では、地震に起因する火災、いわゆる地震火災が同時多発的に発生し甚大な被害をもたらした。地震火災は、本震直後から出火し、その件数は建物倒壊数に比例して増大するとされる。また、消防力の分散、建築倒壊や道路損壊による交通障害の発生、消火栓や水道管の破損による水利不足、交通渋滞などの要因が複合して消火活動が阻害されることから、延焼範囲は拡大し、鎮火するまでの時間は長引くことになる。東日本大震災では、過去最大級の津波・津波火災が発生したことによって、多くの尊い人命が失われた。
【0004】
今後発生が予想される大都市直下地震では、すでに都市の近代化が進み十分な対策が取られていることから、関東大震災や阪神・淡路大震災のように甚大な被害をもたらさないとも考えられる。しかし、大都市においても、現時点で木造住宅密集地は多数存在し、しかも関東大震災当時と比べ過密な状態となっている。
【0005】
このような状況に鑑みると、地震火災が発生したとき、シェルターに避難することが有効である。また、シェルターは、火災が長時間続いた場合でも、内部の温度上昇が抑制される手段が必要となる。
【0006】
特許文献1では、災害等において一時的に避難するために、建造物の防災目的で設置される断熱層を有する構造体を、長時間の火災に耐えられるように、安価なコストでその内部温度の上昇を抑制するための耐火構造が開示されている。具体的には、建造物に設置され、天井壁と側壁と床壁よりなる防災シェルターであって、内部温度の上昇を抑制するために、天井壁の上に水槽を設け、火災発生等の周囲温度が上昇したときに水槽内の水を利用してシェルターに流して内部の温度上昇を未然に防止するものである。
【0007】
しかし、特許文献1で開示されるシェルターは、建造物内に設置されているので、火災で建造物が倒壊した場合、倒壊した建造物が火炎源となり、長時間に渡り火炎熱にさらされる。また、火災発生時等の周囲温度が上昇したとき天井壁の上部に設けられた開放型の水槽から構造体に水を供給する構造となっているため、何らかの原因、例えば、開放型の水槽内の水が地震によって外部飛散した場合、構造体に水が供給されない状態となり、防火シェルターとしての機能を果たすことができない。さらに、水をシェルターに流した直後は、シェルターの内部の温度を抑制できるが、その後、継続して長時間にわたって抑制することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−84883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、地震火災・津波火災が発生したときにシェルターの内部温度を抑制できる地下シェルターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、地下シェルターであって、開口部を設けた天井を有し、避難空間を画定する本体と、開口部を封止可能な扉を備え、扉は、天井の上方に画定された貯水可能な凹部に配設され、凹部に給水する貯水タンクをさらに備え、貯水タンクは、地上に配設される第1貯水タンク
と、避難空間に配設される第2貯水タンクを有することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、凹部に供給するための水を貯留する第1貯水タンクが地上に配設されているので、高低差を利用して凹部に迅速に水を供給できる。地下シェルターに避難した後、凹部に貯水しておくことにより、火災等に起因して周辺の温度が上昇しても、貯水された水の潜熱効果で、シェルター内部の温度上昇を抑制できる。
さらにこの構成によれば、貯水タンクは、地下シェルターに配設される第2貯水タンクをさらに有するので、第1貯水タンクが津波等によって破損した場合でも、第2貯水タンクは給水機能を維持できる。その結果、凹部に安定して給水できる。
【0012】
請求項2に係る発明は
、地下シェルター
であって、開口部を設けた天井を有し、避難空間を画定する本体と、開口部を封止可能な扉を備え、扉は、天井の上方に画定された貯水可能な凹部に配設され、凹部に給水する貯水タンクをさらに備え、貯水タンクは、地上に配設される第1貯水タンクを有し、貯水タンクに給水する貯水槽をさらに備え、貯水槽は、地中に設けられて、雨水を集水可能であることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、
貯水タンクに給水する貯水槽を有し貯水槽は、地中に設けられて、 雨水を集水可能であるので、貯水タンクを介して雨水を安定して凹部に給水できる。
【0014】
請求項3に係る発明は
、地下シェルター
であって、開口部を設けた天井を有し、避難空間を画定する本体と、開口部を封止可能な扉を備え、扉は、天井の上方に画定された貯水可能な凹部に配設され、扉の上方にリフト装置が設けられ、リフト装置は駆動部と、駆動部を支持するフレーム部を有し、凹部に給水する貯水タンクをさらに備え、貯水タンクは、フレーム部の上面に載置される第1貯水タンクを有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、
開口部の上部にリフト装置が設けられ、リフト装置は駆動部と、駆動部を支持するフレーム部を有し、第1貯水タンクは、フレーム部の上面に載置されるので、凹部と第1貯水タンクとの高低差を大きくできる。その結果、短時間で凹部に給水できる。また、障害者、老人、子供等の弱者の方々が迅速にシェルターに避難できる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の地下シェルターにおいて
、
凹部に所定の水量を給水したとき、扉の全体が水没することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、
扉は、凹部に所定の水量を給水したとき、全体が水没するので、水 の潜熱効果で、天井のみならず、扉全体の温度上昇も抑制できる。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の地下シェルターにおいて、避難空間の上端部に設けられる断熱部材を備え、断熱部材は、厚さが、1.0m〜2.0mであるので、厚い断熱層の断熱効果により、より一層、地下シェルターの内部の温度上昇を抑制できる。
【0019】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の地下シェルターにおいて、本体は、厚さが20cm〜50cmの鉄筋コンクリート製であることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、地下シェルターの本体は、厚さが20cm〜50cmの放射線遮蔽性能が高い鉄筋コンクリート製であるので、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、X線、および中性子線などほぼすべての放射線を遮蔽する所定の性能を具備する。その結果、核シェルターとして利用可能となる。
【0021】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の地下シェルターにおいて、
本体に固着するべた基礎を備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、
本体に固着するべた基礎を備えるので、地震力をべた基礎全体で分散して負担できる。これにより地下シェルターの本体の損傷を免れ得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態の地下シェルターの貯水タンク・リフト装置を省略した平面図である。
【
図2】本実施形態の地下シェルターの正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態1について
図1〜
図6を参照して説明する。
【0027】
図1〜
図2に示す通り、本発明実施形態の地下シェルター1(以下、シェルター1という)は、本体2、べた基礎30、貯水タンク4、貯水槽40、およびリフト装置200を有している。ここで、シェルター1とは、避難空間90の一部、または全部が地中300に位置するシェルターをいう。
【0028】
本体2は、べた基礎30に固着した状態で、地中300に埋設されている。べた基礎30は、駐車場舗装3の表層を構成する。本体2は、天井21、側壁22、床24を有する有底、有天井の円筒体であり、これらが協働して避難空間90を画定している。本実施形態での例示としては、本体2の外径は2.8m、べた基礎30の厚さは45cm、天井21、側壁22、床24の厚さは40cmである。この厚さを確保することにより、シェルター1は所定の放射線遮蔽性能を具備する。
【0029】
天井21の上方に設けられる凹部33は、天井21とべた基礎30によって画定される。凹部33には、扉5が配設されて、扉本体50は、天井21で画定された開口部25を封止する。
【0030】
駐車場舗装3は、基層36の上面にべた基礎30が敷設される構造である。基層36は、べた基礎30が車両から受ける荷重を、地中300に分散して伝えるとともに、べた基礎30を強固に支持するためのものである。これにより、べた基礎30は、車両の荷重が長期間載荷されることによる沈下、および地震に起因する不等沈下を生じることなく、安定した状態で基層36を介して地中300に支持される。車両の乗り入れ部は地面と段差を生じることなく接続するためにスロープ34が設けられる。また、車両を安全かつ確実に駐車させるための車止め32、32が設けられる。さらに、中央部には、砂利層31が設けられる。べた基礎30の上面の降雨は砂利層31に集められ、貯水槽40に貯留される。
【0031】
なお、基層36の材質・厚さは地中300の強度等により適宜定める。例えば、地中300が所定の強度を有する場合、基層36を省略し、べた基礎30を直接地中300に載置できる。
【0032】
本体2は、べた基礎30の後方部(平面視で車止め32の後方)に設けられており、円筒形の側壁22、床24、および天井21を有し、円柱形状の避難空間90が画定されている。べた基礎30に配筋された鉄筋と、本体2に配筋された鉄筋とを相互に連結することで、べた基礎30は本体2に固着する。これにより、本体2の自重、および本体2に載荷される地震力をべた基礎30全体で分散して負担できる。その結果、地中300の圧密沈下、および地震力に起因する本体2の不等沈下を抑制できる。
【0033】
側壁22の壁面には断熱層29が設けられる。これにより、火炎熱による避難空間90の内部温度の上昇を抑制できる。断熱層29の材質・厚さは、避難空間90の目標とする断熱性能を設定することにより、適宜定める。
【0034】
側壁22には、上下方向、および周方向に所定の間隔で外方に向かって水平に延びる突起体45が固定されている。側壁22の表面積が増加することにより放熱効果が増大し、避難空間90の温度上昇を抑制することができる。また、地震力に起因して、本体2と本体周辺の地中300がずれることが懸念される。しかし、突起体45によって、本体2と地中300との間のせん断抵抗力が増大するので、そのずれを抑制することができる。これにより、本体2を安定した状態で地中300に埋設できる。
【0035】
天井21には、地上410と避難空間90の間を出入りするための開口部25が設けられている。開口部25は平面視で矩形の形状であり、その形状は下方に向かって広がる四角錐台である。開口部25は、第1断熱蓋26aで封止される。第1断熱蓋26aは開口部25に対応する形状であり、平常時は、避難空間90の定められた場所に載置されている。
【0036】
断熱部材27が、避難空間90の上端部に、天井21と接する状態で配設されて、開口部25の直下に、断熱開口部28が画定される。断熱開口部28は平面視で矩形の形状であり、その形状は下方に向かって広がる四角錐台であり、第2断熱蓋26bで封止される。第2断熱蓋26bは断熱開口部28に対応する形状であり、平常時は、避難空間90の定められた場所に載置されている。断熱部材27の厚さは、1.0m〜2.0mであることが好ましい。通常の断熱材の厚さに比べて、厚い部材とすることで、上方、特に扉5からの輻射熱に起因する温度上昇を抑制できる。
【0037】
断熱部材27の素材は、グラスウール、セルローズファイバー、羊毛断熱材、もしくはロックウール等の繊維系の断熱素材、または硬質ウレタンフォーム、ビーズ法ポリスチレンフォーム、もしくはフェノールフォーム等の発泡プラスチック系の断熱素材であることが好ましい。より好ましくは軽量で透湿への抵抗力に優れる発泡プラスチック系の断熱素材である。これにより、軽量化できるとともに、湿度の高い地下空間に長時間置いた状態であっても、吸湿による重量の増加・形状の変化が生じない。
【0038】
避難空間90に避難したとき、第1断熱蓋26aを、開口部25に挿入する。その後、第2断熱蓋26bを断熱開口部28に挿入する。これにより、開口部25、および断熱開口部28は封止される。さらに、第2断熱蓋26bを上下方向に延びる固定棒110で突き上げた状態で、支持する。これにより、封止をより強固にできるとともに、第1断熱蓋26a、および第2断熱蓋26bの脱落を防止できる。
【0039】
固定棒110は伸縮可能な構造である。平常時は、上端は断熱部材27に、他端は第2貯水タンク42を介して床24に固定される。
【0040】
適切な酸素濃度の確保のため、避難空間90に空気ボンベが用意してある。空気を吹き出すことで、中の気圧が上昇する。そのため、内部の圧力を抜く減圧弁46も備える。さらに、二酸化炭素の増え過ぎを防止するため、消石灰水溶液、またはゼオライトで二酸化炭素を吸着する。
【0041】
図3、4に示す通り、扉5は凹部33に配設されて、鉄筋コンクリート製の扉本体50、扉本体50に固定される車輪51、車輪51の走行方向を誘導する軌道52、および軌道52を上下方向に変位させるジャッキ53を有する。
【0042】
車輪51は、扉本体50を軌道52に沿って移動させるためのものであり、片側に2個、合計で4個の車輪51が扉本体50に固定される。車輪51は後述する軌道52の溝部52aに配設され、その設置面は、ジャッキ53を上昇させたとき、扉本体50の底板12と天井21との間に所定の隙間が存在し、下降させたとき底板12と天井21は接触する状態となるように設定される。すなわち、ジャッキ53の構造高さ、およびジャッキ53のストローク等を勘案して適宜定める。なお、ジャッキ53は油圧で上昇および下降する手動、または電動の油圧ジャッキであることが好ましい。
【0043】
一対の軌道52、52は上述した車輪51を円滑に回動させるとともに所定の方向に確実に誘導するためのものである。
図3、4に示す通り、軌道52、52は天井21の上方に設けられ、開口部25の外周領域に、凹部側面33a、33bに平行に敷設される。軌道52は上方に開口された溝部52aを形成する断面視コ字形の形状であり、両端部、および中央部の3か所で合計3個のジャッキ53を介して天井21に固定される。具体的には、軌道52の底面はジャッキ53の受け台53aに固定されており、また、ジャッキ53の底面は、天井21に固定される。
【0044】
軌道52の長さは、開口部25を開閉することができる長さ、すなわち、開口部25の敷設方向の長さに扉本体50の走行方向の長さを加算した長さ以上に設定される。
【0045】
車輪51の移動方向に直角方向の間隔は、車輪51を軌道52に配設することができる間隔、すなわち一対の軌道52、52の間隔と同じとなるように設定されている。これにより、扉本体50は、軌道52に沿って移動可能となり、開口部25を開閉できる。
【0046】
軌道52の両端部には、溝部52aを塞ぐ制止板54a、bが溝部52aの上方に突出した状態で設けられている。制止板54a、bは、車輪51の移動を制限するためのものであり、これにより扉本体50の軌道52からの移動方向への逸脱を防止できる。制止板54aによって車輪51の移動が制限されたとき、扉本体50は開口部25を開放する状態となり、制止板54bによって車輪51の移動が制限されたとき、扉本体50は開口部25を閉鎖する状態となる。
【0047】
扉本体50を閉鎖した状態で、開口部25の外周面に対向する扉本体50の底面にパッキン80が環状に設けられている。これにより、扉本体50と天井21に存する隙間を封止したとき、避難空間90の気密性をより一層高めることができる。
【0048】
開口部25を封止する方法について説明する。扉本体50と天井21との間に所定の隙間が存する状態、すなわち、6個のジャッキ53がすべて上昇している状態で、扉本体50を開口部25の方向に移動させる。制止板54bによって、扉本体50の移動が制限されたときたとき、開口部25は扉本体50で閉鎖された状態となる。その後、軌道52、52を固定する合計6個のジャッキ53を同時に下方に降下させることにより、扉本体50と天井21との間に存する所定の隙間を封止できる。
【0049】
開口部25が封止された状態から、開放された状態とする方法について説明する。6個のジャッキ53を同時に上昇させ、扉本体50と天井21との間に所定の隙間が存する状態とする。その後、扉本体50を制止板54aの方向に移動させる。制止板54aによって扉本体50の移動が制限されたとき、開口部25は開放された状態となる。その後、6個のジャッキ53を同時に下降させ、扉本体50と天井21が接触し、扉本体50の全重量を天井21が負担する状態とする。扉本体50と天井21に作用する摩擦力により、扉本体50は安定して所定の位置に載置できる。
【0050】
図2に示す通り、貯水槽40は、砂利層31の直下の地中300に埋設されている。貯水槽40は、第1貯水タンク41、および第2貯水タンク42に給水するための水W3を貯留するためのものである。べた基礎30の上面の降雨は砂利層31に集められ、貯水槽40に貯留される。また、水W3は、雨どいで集水した雨水を貯留してもよい。
【0051】
貯水タンク4は、凹部33に給水するためのものであり、
図2に示す通り、第1貯水タンク41と、第2貯水タンク42を有している。第1貯水タンク41はリフト装置200の天板部221に載置されており、一方、第2貯水タンク42は、本体2の床24に載置されている。
【0052】
貯水槽40内に貯水された水W3は、ポンプ41cで揚水されて、管41aを経由して第1貯水タンク41に給水される。一方、管42aを経由して第2貯水タンク42に給水される。これにより、第1貯水タンク41に水W1が、第2貯水タンク42に水W2が、貯留される。
【0053】
火災発生時に、避難空間90に避難したとき、管41bに設けられた電磁バルブ(図示略)を避難空間90からの遠隔操作によって開放する。これにより第1貯水タンク41に貯留された水W1は、管41bを経由して凹部33に給水される。地上410に存する第1貯水タンク41は、地表400近傍に存する凹部33に比べ、高所に位置するので、水W1は自然流下する。そのため、給水のためのポンプは不要となる。高低差を大きくすることで、短時間で凹部33に水W1を給水できる。一方、第2貯水タンク42に貯留された水W2は、ポンプ43で揚水され、管42bを経由して、凹部33に給水される。第2貯水タンク42は、避難空間90に載置されているので、地震等の外部環境の変化を受けることなく凹部33に水W2を供給できる。なお、ポンプ43は、手動、電動のいずれであってもよい。
【0054】
上述した通り、凹部33への給水は、自然流下による給水、ポンプ43による給水の2系統により行われる。そのため、凹部33への迅速な水の供給が可能であり、さらに、いずれか一方が故障した場合でも、凹部33に安定して給水できる。
【0055】
凹部33の水位が一定以上となったとき、
図4に示す通り、扉5は水没状態となる。そのため、水の潜熱効果により、天井21のみならず扉本体50についても温度上昇を抑制できる。凹部33の水位を一定の高さに調整するために、凹部33の水位をセンサーで検知して、その計測値に基づき、コントローラでバルブの開閉をしてもよい。これにより、給水された水が凹部33から溢れ出ることを防止できるので、長時間の給水が可能となる。
【0056】
火災が終息したとき、排水口(図示略)を開放し、凹部33に貯留された水を外部に排出する。凹部33から水が排水されるので、扉本体50を開戸しても、水W2が避難空間90に浸水することはない。
【0057】
リフト装置200は、駆動部210と、駆動部210を支持するフレーム部220で構成されている。駆動部210は、避難に必要な資材を避難空間90に搬入・搬出するためのものである。また、障害者の方々が、避難空間90に避難するときにも使用できる。
【0058】
フレーム部220は、天板部221、および脚部222で構成される。天板部221は、駆動部210の一部となるガイドレール214を固定している。また、脚部222は、一端が地表400に固定された状態で、天板部221を支持している。なお、天板部221はカーポートと連結することが好ましい。
【0059】
駆動部210は、フレーム部220に固定されるガイドレール214、ガイドレール214に沿って移動する横行台車211、横行台車211に取り付けられて吊り下げフック213を上下に昇降させる昇降ウインチ212、および昇降ウインチ212に懸架される吊り下げフック213で構成される。障害者の方々が、避難空間90に避難するときは、吊り下げフック213に車椅子230を懸垂させ、横行台車211をガイドレール214に沿って扉5の直上まで移動し、昇降ウインチ212で避難空間90に降下する。また、ガイドレール214を適宜延長することで、障害者の方々は、駐車場からも、ウッドデッキ299からも避難できる。
【0060】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、様々な改変、置換等を行うことができる。例えば、
図6に示す通り、扉205の配置を変えて、扉本体250の移動方向が、自動車290の進行方向に対して直角となるようにしてもよい。また、狭隘な土地に設置する場合、駐車場と一体としなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
火災時において、避難空間の温度上昇を抑制する地下シェルターを、狭隘な土地に容易に設置できる。特に、住宅密集地域において、その産業上の利用価値は大である。
【符号の説明】
【0062】
1 :シェルター
2 :本体
4 :貯水タンク
5、205 :扉
21 :天井
22 :側壁
24 :床
25 :開口部
33 :凹部
40 :貯水槽
41 :第1貯水タンク
42 :第2貯留タンク
50、250 :扉本体
90 :避難空間
200 :リフト装置
300 :地中
400 :地表
410 :地上
W1、W2、W3 :水
【要約】 (修正有)
【課題】地震火災・津波火災が発生したときに避難が容易であるとともに、内部温度を抑制できる地下シェルターを提供する。
【解決手段】シェルター1は、本体2、貯水タンク4、貯水槽40等を有している。貯水タンク4は、凹部33に給水するためのものであり、第1貯水タンク41と、第2貯水タンク42を有している。火災時において、避難空間90に避難したとき、管41bに設けられた電磁バルブ(図示略)を開放する。これにより第1貯留タンク41に貯留された水W1は、管41bを経由して凹部33に給水される。一方、第2貯水タンク42に貯留された水W2は、ポンプ43を作動することで揚水され、管42bを経由して、凹部33に給水される。凹部33の水位が一定以上となったとき、扉は水没状態となる。その結果、水の潜熱効果により扉本体50、及び天井21の温度上昇を抑制できる。
【選択図】
図2