【実施例】
【0036】
図1はシリンダ式の排水装置1aの外観図である。また、
図2(a)は
図1に示した電動シリンダ2と動作切換機構4の外観図であり、
図2(b)及び
図2(c)はそれぞれ動作切換機構4を構成するスライド板13と保持ケース14の正面図である。そして、
図3(a)及び
図3(b)はそれぞれ保持ケース14の下面図及び左側面図であり、
図3(c)は
図2(c)におけるA−A線矢視断面図である。さらに、
図3(d)及び
図3(e)はそれぞれスライド板を保持ケースに固定するための位置決め部材18bの正面図及び平面図であり、
図3(f)はスライド板13と保持ケース14にガイドピン18aと位置決め部材18bが取り付けられた状態を示す斜視図である。
なお、
図1では、電動シリンダ2を駆動するための電源や各種のケーブルについてその図示を省略している。また、
図3(d)及び
図3(e)では、位置決め部材18bを
図3(a)乃至(c)における保持ケース14よりも拡大した状態で示している。
【0037】
図1に示すように、排水装置1aは、貯水池60の底部に設けられた放水路61と、この放水路61に通ずるように堤体62の内部に形成されるとともに、開口端64aに蓋栓63が水平な軸を中心として回転可能に取り付けられた管路64からなる既設の排水機構を利用するものである。
排水装置1aの最上部には電動シリンダ2が設置されており、この電動シリンダ2と蓋栓63の間には棒状の開閉軸3が配置されている。また、開閉軸3の基端3aは動作切換機構4を介して電動シリンダ2のロッド2a(
図2(a)参照)に連結されており、棒状体3の先端3bはリンク機構5を介して蓋栓63に連結されている。さらに、電動シリンダ2にはシリンダカバー6が取り付けられており、管路64の開口端64aの上方を覆うようにストレーナ7が設置されている。
なお、電動シリンダ2はロッド2aを斜め下方に向けた状態で架台8に設置されており、開閉軸3は第1の軸サポート9と第3の軸サポート11と第2の軸サポート10の上部に取り付けられたガイド部材12によって、基端3a及び先端3bの近傍とそれらの間をそれぞれ支持されている。すなわち、排水装置1aは貯水池60の堤体62の斜面に傾斜した状態で設置されている。
【0038】
図2及び
図3に示すように、動作切換機構4は、ステンレス製の長尺部材からなるスライド板13と、同じくステンレス製の長尺部材からなり、基端14aに電動シリンダ2のロッド2aを取り付けるための取付板15を有するとともに、一対の側板16,16と底板17によって断面が「コ」の字状をなすように形成され、スライド板13をその長手方向へスライド可能に保持する保持ケース14によって構成されている。
スライド板13には、保持ケース14によって保持された状態において、側板16よりも上方へ突出するように把持部13cが基端13aの近くに設けられるとともに、開閉軸3の基端3aを連結するための切り欠き13dが先端13bに形成されている。また、スライド板13には、基端13aと把持部13cの間にガイドピン18aの挿通孔13e,13eが長手方向に所定の間隔を空けて設けられるとともに、位置決め部材18bの位置決め孔13fが把持部13cの基端の近くに設けられている。
【0039】
なお、スライド板13や保持ケース14は、ステンレスに限らず、例えば、アルミニウムなどのステンレス以外の金属によって形成された物であっても良い。また、動作切換機構4は、スライド板13と保持ケース14の代わりに、長尺部材が筒状体によって、その長手方向へスライド可能に保持されるとともに、この長尺部材と筒状体に位置決め部材が挿通される位置決め孔が設けられた構造とすることもできる。
ただし、動作切換機構4がスライド板13と保持ケース14によって構成されている場合には、スライド板13の挿通孔13eからガイドピン18aを取り外すことにより、保持ケース14からスライド板13の取り出しが可能になる。したがって、スライド板13が移動し難い状態になった場合に、その点検や交換等の作業を効率よく行うことができる。
【0040】
保持ケース14の取付板15には、電動シリンダ2のロッド2aに固定する際に使用される複数のネジ孔15aが設けられている。また、一対の側板16,16には、スライド板13の挿通孔13eに挿通された状態のガイドピン18aを案内するためのガイド孔16aが長手方向に沿って長く形成されるとともに、スライド板13を保持したままで、位置決め孔13fに挿通された状態の位置決め部材18bを連通可能に3つの位置決め孔16b〜16dが長手方向に沿って所定の間隔を空けて設けられている。
【0041】
さらに、一対の側板16,16には、位置決め部材18bを保持ケース14に連結する鎖(図示せず)の一端を固定するための貫通孔16eが設けられている。
位置決め部材18bは、基端側が90度に曲折されたピン形状をしており、この曲折された部分の近傍には、上述の鎖の一端を連結するための連結片19が取り付けられている。
なお、位置決め孔16bと位置決め孔16cの間隔及び位置決め孔16cと位置決め孔16dの間隔は、閉じた状態の蓋栓63を開く際に電動シリンダ2のロッド2aが移動する距離、すなわち、蓋栓63の開閉に必要な電動シリンダ2のストロークと等しくなるように設定されている。
【0042】
図4(a)乃至
図4(d)は動作切換機構4の機能を説明するための図である。なお、
図4では、ガイドピン18aと位置決め部材18bの図示を省略している。
排水装置1aでは、通常、位置決め部材18bはスライド板13の位置決め孔13fと保持ケース14の位置決め孔16cに連通されている。したがって、蓋栓63が開いている場合に、電動シリンダ2を駆動してロッド2aを前進させると、位置決め部材18bを介して保持ケース14に連結されたスライド板13が電動シリンダ2に連動し前進する。その結果、動作切換機構4は
図4(a)に示した状態となり、蓋栓63が閉じられる。
また、蓋栓63が閉じている状態で電動シリンダ2を駆動してロッド2aを後退させると、スライド板13は、位置決め部材18bを介して保持ケース14に連結されていることから、電動シリンダ2に連動して後退する。その結果、動作切換機構4は
図4(b)に示した状態となり、蓋栓63が開かれる。
【0043】
なお、
図4(a)に示した状態において、位置決め部材18bをスライド板13の位置決め孔13fと保持ケース14の位置決め孔16cから抜出すると、スライド板13は、保持ケース14に対する連結状態が解消されるため、手動で操作可能になる。そこで、把持部13cを手で持って後退させていくと、蓋栓63が徐々に開き始める。
このとき、保持ケース14における位置決め孔16bと位置決め孔16cの間隔と蓋栓63の開閉に必要な電動シリンダ2のストロークが等しいことから、
図4(c)に示すように位置決め孔13fが保持ケース14の位置決め孔16bの位置に達するまでスライド板13を後退させると、蓋栓63は完全に開いた状態になる。そこで、位置決め部材18bをスライド板13の位置決め孔13fと保持ケース14の位置決め孔16bに連通させると、蓋栓63の開いた状態が維持される。
【0044】
また、
図4(b)に示した状態において、位置決め部材18bをスライド板13の位置決め孔13fと保持ケース14の位置決め孔16cから抜出してスライド板13の保持ケース14に対する連結状態を解消した後、把持部13cを手で持って、スライド板13を前進させていくと、蓋栓63が徐々に閉じ始める。
このとき、保持ケース14における位置決め孔16cと位置決め孔16dの間隔と蓋栓63の開閉に必要な電動シリンダ2のストロークが等しいことから、
図4(d)に示すように位置決め孔13fが保持ケース14の位置決め孔16dの位置に達するまでスライド板13を前進させると、蓋栓63は完全に閉じた状態になる。そこで、位置決め部材18bをスライド板13の位置決め孔13fと保持ケース14の位置決め孔16dに連通させると、蓋栓63の閉じた状態が維持される。
【0045】
このように、排水装置1aでは、スライド板13の位置決め孔13fから位置決め部材18bを抜出すれば、開閉軸3を手動で操作することができる。したがって、通信トラブル等によって電動シリンダ2に対して後述するような遠隔操作を行うことができない場合でも、蓋栓63を手動で開閉することが可能である。
【0046】
図5(a)はスライド板13の先端13bが基端3aに連結されるとともに第1の連結金具20が先端3bに連結された状態を示す開閉軸3の正面図であり、
図5(b)は開閉軸3の先端3bと第1の連結金具20の平面図であり、
図5(c)は第3の連結金具21の正面図である。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、開閉軸3は、ステンレス製の丸棒からなり、ターンバックル3cと呼ばれる張力を調節する装置が基端3aの近くに取り付けられている。また、第1の連結金具20は、短冊形のステンレス製の平板材からなり、開閉軸3の先端3bに設けられた切り欠き3dに基端20aが接合されるとともに、平面視円弧状をなす先端20bの近傍には連結孔20cが設けられている。さらに、
図5(c)に示すように、第3の連結金具21は、両端が平面視円弧状をなす短冊形のステンレス製の平板材からなり、基端21aと先端21bの近傍には連結孔21c,21dがそれぞれ設けられている。
なお、開閉軸3には、ステンレス製の丸棒に限らず、断面が三角形や四角形をなすとともに、例えば、アルミニウムなどのステンレス以外の金属によって形成された棒状体を用いることもできる。
【0047】
図5(d)及び
図5(e)はそれぞれ第2の連結金具22の正面図及び平面図であり、
図5(f)及び
図5(g)はリンク機構5の正面図及び右側面図である。
図5(d)及び
図5(e)に示すように、第2の連結金具22は、平面視円弧状をなす基端23aの近傍に連結孔23cが設けられたステンレス製の短冊形の連結板23と、この連結板23の先端23bに平面視T字状をなすように接合される短冊形のステンレス製の取付板24からなる。連結板23の基端23aと先端23bの間には、連結孔23dが設けられており、取付板24には、連結板23を挟んで対称に一対のボルト挿通孔24a,24aが設けられている。
【0048】
図5(f)及び
図5(g)に示すように、第1の連結金具20の先端20bは連結孔20c(
図5(a)参照)と連結孔21c,21c(
図5(c)参照)に連通された締結具25aを介して回動可能に一対の第3の連結金具21,21の基端21a,21aに連結されている。
また、第2の連結金具22の連結板23は、基端23aが連結孔23c(
図5(d)参照)と連結孔21d,21d(
図5(c)参照)に連通された締結具25bを介して回動可能に一対の第3の連結金具21,21の先端21b,21bに連結されるとともに、連結孔23d(
図5(d)参照)に挿通された締結具25cを介して一対の補強板26,26に連結されている。
なお、補強板26は、電動シリンダ2の動力がリンク機構5を介して蓋栓63に伝達される際に、取付板24の蓋栓63に連結された部分に加わる力を分散させるという機能を有している。
【0049】
図6(a)及び
図6(b)はそれぞれ蓋栓63の正面図及び平面図であり、
図6(c)及び
図6(d)はそれぞれ蓋栓63にリンク機構5が取り付けられた状態を示す正面図及び平面図である。なお、
図6(c)では、蓋栓63が開いた状態を破線で示している。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、管路64が形成されたコンクリート基礎65の上面65aに設置されて軸体67の両端をそれぞれ保持する一対の保持部材68,68と、一端が蓋栓63に接合されるとともに他端が軸体67を介して回動可能に一対の保持部材68,68に連結される一対の連結部材69,69からなる蓋開閉機構66を介して、蓋栓63は開閉自在にコンクリート基礎65に取り付けられている。ただし、蓋栓63には、第2の連結金具22を締結するためのボルトが螺入されるボルト孔63a,63aを取付板24のボルト挿通孔24a,24aと対応する箇所に設けるものとする。
【0050】
図6(c)及び
図6(d)に示すように、リンク機構5の第2の連結金具22は、補強板26,26の先端26a,26aを蓋栓63の上面63bに当接させた状態で蓋栓63にボルト(図示せず)を用いて締結される。
蓋栓63が閉じている場合に、開閉軸3によって第1の連結金具20が
図6(c)に矢印Xで示す方向へ引っ張られると、蓋栓63はリンク機構5の移動に伴って軸体67を中心として矢印Yの向きに回動する結果、破線で示したように開いた状態となる。
一方、蓋栓63が開いている場合、開閉軸3によって第1の連結金具20が
図6(c)に矢印Xで示す方向と逆の方向へ押されると、蓋栓63はリンク機構5の移動に伴って軸体67を中心として矢印Yと逆の向きに回動する結果、実線で示したように閉じた状態となる。
【0051】
上記構造の排水装置1aにおいては、電動シリンダ2から開閉軸3を介して伝達される力によって蓋栓63に発生する回転モーメントが大きくなるように、蓋栓63に加わる電動シリンダ2の力の向きをリンク機構5が変化させるという作用を有する。すなわち、排水装置1aでは、電動シリンダ2や開閉軸3の傾斜状態によらず、蓋栓63に電動シリンダ2の力が効率よく伝達されることから、設置場所に対する制約が少ない。
なお、本実施例では、電動シリンダ2のロッド2aが後退した場合に第1の連結金具20が
図6(c)に矢印Xで示す方向へ引っ張られることで蓋栓63が開くとともに、電動シリンダ2のロッド2aが前進した場合に第1の連結金具20が
図6(c)に矢印Xで示す方向と逆の方向へ移動することで蓋栓63が閉じる構造となっているが、第1の連結金具20と開閉軸3を接続する代わりに、開閉軸3が前進すると第1の連結金具20が引っ張られる一方、開閉軸3が後退すると第1の連結金具20が押されるように、開閉軸3と第1の連結金具20の間にピニオンを設置して、電動シリンダ2のロッド2aが前進した場合に蓋栓63が開くとともに、電動シリンダ2のロッド2aが後退した場合に蓋栓63が閉じる構造とすることもできる。
【0052】
図7(a)乃至
図7(c)はそれぞれシリンダカバー6の左側面図と正面図と右側面図であり、
図7(d)乃至
図7(f)はそれぞれストレーナ7の左側面図と正面図と右側面図であり、
図7(g)はストレーナ7の背面板29の平面図であり、
図7(h)及び
図7(i)はそれぞれストレーナ7の平面図及び下面図である。なお、
図7(h)ではアングル材28,28の取り付け状態がわかるように、本体部27の上面の一部を切り欠いた状態で示している。
【0053】
図7(a)乃至
図7(c)に示すように、シリンダカバー6はステンレス製の平板材からなり、電動シリンダ2の上面と側面と背面を覆うことができるように、天板6aと側板6b,6bと背面板6cを備えており、側板6b,6bの下縁の近傍には、架台8にボルト固定するためのボルト挿通孔6d,6dが設けられている。
図7(d)乃至
図7(i)に示すように、ストレーナ7は、ステンレス製のパンチング板によって背面と下面が開口した直方体状に形成された本体部27と、本体部27の側面の背面側の端縁及び下面側の端縁にそれぞれ取り付けられたステンレス製のアングル材28と、本体部27の背面のアングル材28,28にネジ留めされるステンレス製の背面板29を備えている。また、背面板29には、上端の中央に切り欠き29aが開閉軸3を挿通できるように設けられるとともに、下端の中央に切り欠き29bが第3の軸サポート11の一部を挿通できるように設けられている。
【0054】
図8(a)乃至
図8(c)はそれぞれ架台8の左側面図と正面図と右側面図であり、
図8(d)は第1の軸サポート9の正面図であり、
図8(e)及び
図8(f)はそれぞれ
図8(d)におけるB方向矢視図及びC方向矢視図である。
図8(a)乃至
図8(c)に示すように、架台8は、複数本のアングル材によって形成されており、上部には電動シリンダ2をボルト固定するためのボルト挿通孔30aが設けられた枠状の取付板30が傾斜した状態で設置されている。また、取付板30の両側面に配置される一対のアングル材には、シリンダカバー6を固定するためのボルト挿通孔8a,8aがそれぞれ設けられている。
【0055】
図8(d)乃至
図8(f)に示すように、第1の軸サポート9は、複数本のアングル材によって形成されており、側面視略L字状をなす脚部9aの上部には、取付部9bが傾斜した状態で設けられている。また、脚部9aの下面には、アンカーを打ち込むための固定孔9cが設けられており、取付部9bには、ガイド部材12をボルト固定するためのボルト挿通孔9d,9dが設けられている。なお、ボルト挿通孔9dは、ガイド部材12を取り付ける際にその高さを容易に調節できるように、上下方向へ長く形成されている。
【0056】
図9(a)は第2の軸サポート10の平面図であり、
図9(b)乃至
図9(d)はそれぞれ第3の軸サポート11の正面図と右側面図と下面図である。また、
図9(e)乃至
図9(g)はそれぞれガイド部材12の左側面図と正面図と右側面図である。
図9(a)に示すように、第2の軸サポート10は、平面視矩形状をなすステンレス製の板材からなり、アンカーを打ち込むための固定孔10a,10aとガイド部材12をボルト固定するためのボルト挿通孔10b,10bが設けられている。なお、ボルト挿通孔10bは、ガイド部材12を取り付ける際にその高さを容易に調節できるように長孔状をなしている。
【0057】
図9(b)乃至
図9(d)に示すように、第3の軸サポート11は、複数本のアングル材によって側面視L字状をなすように形成されており、アンカーを打ち込むための固定孔11aが下面に設けられるとともに、ガイド部材12をボルト固定するためのボルト挿通孔11b,11bが上部に設けられている。なお、ボルト挿通孔11bは、ガイド部材12を取り付ける際にその高さを容易に調節できるように、上下方向へ長く形成されている。
図9(e)乃至
図9(g)に示すように、ガイド部材12は、ナイロン製のガイドローラ31と、このガイドローラ31を回転可能に支持するステンレス製の支持部材32によって構成されている。また、支持部材32には、ボルト挿通孔32a,32aが設けられている。
【0058】
蓋栓63の開閉機構にワイヤを用いる場合、蓋栓63を閉じる際にワイヤを介してシリンダ等の駆動力を蓋栓に伝達することができないため、蓋栓63を開く機構とは別に蓋栓を閉じる機構を設ける必要がある。これに対し、排水装置1aでは、電動シリンダ2の駆動力が金属製の開閉軸3を介して蓋栓63に伝達されることから、蓋栓63の開閉機構がワイヤを用いる場合よりもシンプルな構造になる。したがって、設置や維持管理が容易である。
【0059】
ここで、排水装置1aの変形例について
図10及び
図11を用いて説明する。
図10(a)は排水装置1aの変形例の正面図であり、
図10(b)は
図10(a)におけるD−D線矢視断面図である。また、
図11は
図10(a)におけるE−E線矢視断面図である。
なお、
図10及び
図11では、排水装置1aの変形例に係る排水装置1cについて、リンク機構57と軸体55と架台56以外の構成要素については図示を省略している。さらに、
図11では、他の部材と識別し易いように、軸体の断面形状を表示する代わりに、その外観を表示している。
【0060】
先に述べた排水装置1aは、貯水池60の堤体62の内部に形成された管路64の開口端64aに対して、水平な軸を中心として回転可能に取り付けられた蓋栓63を開閉するものであるのに対し、
図10及び
図11に示した排水装置1aの変形例に係る排水装置1cは、管路64の開口端64aに上方から差し込まれるようにして設置される蓋栓70を開閉するものである。
図10及び
図11に示すように、排水装置1cは、排水装置1aにおいて、ストレーナ7の代わりに、蓋栓70の上面70aに垂直に立設される軸体55と、この軸体55を支持する架台56を備えるとともに、リンク機構5の代わりにリンク機構57を備えたことを特徴とする。
【0061】
軸体55は、円筒状又は円柱状をなす長尺部材からなり、その外周面の一部には、同形状の複数の歯55aが軸方向へ所定の長さに亘って等間隔に設けられている。
架台56は、管路64が形成されたコンクリート基礎65の上面65aに、所定の間隔を空けて設置される一対の脚部56a,56aと、この一対の脚部56a,56aによって支持されるとともに、軸体55の歯55aが形成されている部分の上下を鉛直方向へ移動可能に保持する一対の保持部56b,56bと、軸体55の歯55aに対して噛合するとともに、水平に配置された一対の回転軸56c,56cを中心として回転可能に両端がそれぞれ一対の脚部56a,56aに支持されるピニオン56dによって構成されている。
【0062】
排水装置1cに係るリンク機構57は、上述の排水装置1aにおけるリンク機構5において、第2の連結金具22の代わりに、ステンレスによって形成された短冊形の平板材からなる一対の第4の連結金具58,58を備えたことを特徴とする。この一対の第4の連結金具58,58は、平面視円弧状をなす基端58a,58aの近傍にそれぞれ設けられた一対の連結孔(図示せず)に連通された連結軸59を介して、回転可能に一対の第3の連結金具21,21の先端21b,21bに連結されるとともに、先端58b,58bが一対の回転軸56c,56cに対して回転不能にそれぞれ接続されている。
【0063】
管路64の開口端64aが蓋栓70によって閉塞されている場合に、開閉軸3(
図1,5を参照)によって第1の連結金具20が
図11に矢印Xで示す方向へ引っ張られると、ピニオン56dはリンク機構57の移動に伴って回転軸56c,56cを中心として矢印Fの向きに回動し、ピニオン56dに歯55aが噛合する軸体55は矢印Gで示すように移動する。その結果、軸体55に上面70aが接続された蓋栓70も鉛直上方へ移動し、管路64の開口端64aは開放された状態となる。
一方、管路64の開口端64aが開放されている場合、開閉軸3(
図1,5を参照)によって第1の連結金具20が
図11に矢印Xで示す方向と逆の方向へ押されると、ピニオン56dはリンク機構57の移動に伴って回転軸56c,56cを中心として矢印Fと逆の向きに回動し、ピニオン56dに歯55aが噛合する軸体55は矢印Gで示す方向と逆の方向へ移動する。その結果、軸体55に上面70aが接続された蓋栓70も鉛直下方へ移動し、管路64の開口端64aは閉塞された状態となる。
【0064】
上記構造の排水装置1cにおいては、電動シリンダ2がロッド2aを進退させる力の向きがリンク機構57によって鉛直方向に変換されるという作用を有する。したがって、排水装置1cでは、電動シリンダ2や開閉軸3の傾斜状態によらず、蓋栓70を電動シリンダ2によって効率よく開閉することができる。
なお、
図10及び
図11では、軸体55を丸棒としているが、軸体55は円筒体や断面が略多角形をなす中空又は中実の棒状体であっても良い。また、蓋栓70は略円柱状をなしているが、断面が略多角形をなす蓋栓についても同様に排水装置1cによって開閉することが可能である。ただし、その場合には、蓋栓を開閉する際に軸体55が円柱軸を中心として回転しないように、軸体55を断面が略多角形をなす中空又は中実の棒状体とするとともに一対の保持部56b,56bの内周面の断面形状を軸体55の断面形状と同じ略多角形とするか、あるいは蓋栓に対して鉛直方向以外の移動を規制するガイド機構を設けることが望ましい。
【0065】
また、
図10及び
図11では、先の
図4に示す電動シリンダ2のロッド2aが後退した場合に第1の連結金具20が
図11に矢印Xで示す方向へ引っ張られることで軸体55が上昇し、蓋栓70が開く構造となっているが、その代わりに、例えば、
図11においてピニオン56dを軸体55の右側に配置することで、電動シリンダ2のロッド2aが前進した場合に第1の連結金具20が
図11に矢印Xで示す方向と逆の方向へ押される結果、軸体55が上昇して蓋栓70が開く構造とすることもできる。
【0066】
図12はサイフォン式の排水装置1bの外観図である。また、
図13(a)は
図12に示したエア抜き機構35の拡大図であり、
図13(b)は
図12におけるH方向矢視図である。なお、
図12では、電動ダンパ36と電磁弁42a,42bと給水ポンプ48を駆動するための電源や電源ケーブル及び各種のセンサに接続されたケーブルの図示を省略している。また、貯水池60の水位が上昇した場合の導管33と吸い込み部34の状態を破線で示している。
【0067】
図12に示すように、排水装置1bは、基端33aが貯水池60の水中に設置されるとともに先端33bが貯水池60の水面60aよりも低い箇所に配置されるように堤体62に跨設される導管33と、この導管33の基端33aに設置される吸い込み部34と、導管33の最頂部の近傍に設置されるエア抜き機構35と、このエア抜き機構35と導管33の先端33bの間に設置される電動ダンパ36を備えている。また、堤体62の頂部には、先端33bに向かって高さが次第に低くなるように導管33を傾斜した状態で支持するための支持部材37a,37bが設置されるとともに、導管33には、基端33aとエア抜き機構35の間に複数の浮き38aが取り付けられている。
なお、導管33は、基端33aとエア抜き機構35の間については可撓性を有する樹脂製のホースを用い、堤体62の頂部に配置される箇所及び堤体62の頂部から先端33bの間についてはそれぞれステンレス製の配管及び耐衝撃性に優れた硬質ポリ塩化ビニル製のホースを用いることが望ましい。
【0068】
図13(a)に示すように、エア抜き機構35は、導管33の内部の水位を検出するレベルセンサ39が内部に設置されるとともにその接続部39aが先端40aに設けられたセンサ保持管40と、このセンサ保持管40の側面40bから分岐するエア抜き管41と、このエア抜き管41の側面41aと先端41bにそれぞれ設置される電磁弁42a及び予備の電磁弁42bと、電磁弁42aに接続される逆止弁42cと、この逆止弁42cに取り付けられる接続継手管43を備えている。
浮き38aは、発泡スチロール製の一対の半円筒体からなり、
図13(b)に示すように、導管33を両側から挟むように配置された後、外周面に取り付けられたステンレス製の固定バンド44,44によって一体化された状態で導管33に固定される構造となっている。
【0069】
図14(a)及び
図14(b)はそれぞれ排水装置1bの吸い込み部34の正面図及び平面図である。また、
図15(a)及び
図15(b)はそれぞれホース接続管46の正面図及び下面図であり、
図15(c)は固定台49の平面図である。
図14及び
図15に示すように、吸い込み部34は、吸い込み口46a(
図15(b)参照)にフート弁46cが設置され、導管33の基端33aに対して着脱可能に取り付けられるホース接続管46と、フート弁46cに近接するように設置されるとともに、逆止弁47aが設置された注水管47を通してホース接続管46の内部に貯水池60の水を供給する給水ポンプ48と、フート弁46cと給水ポンプ48が内部に設置されるストレーナ45と、発泡スチロール製の円筒体からなり、ストレーナ45が取り付けられている固定台49に対してステンレス製の固定バンド44,44を用いて固定される浮き38bを備えている。
ストレーナ45は、ステンレス製のパンチング板が短円筒状に形成されたものであり、固定台49に上面45a(
図14(b)参照)がボルトを用いて固定されている。ホース接続管46は、吸い込み口46aに設けられたフランジ46b(
図14(b)参照)が固定台49にボルトを用いて固定されており、フート弁46cは、このフランジ46bに対してボルトを用いて固定されている。
【0070】
上記構造の排水装置1bにおいては、給水ポンプ48を作動させてホース接続管46の内部に貯水池60の水を供給した場合、その水がホース接続管46の吸い込み口46aから排出されることをフート弁46cが防ぐという作用を有する。なお、電動ダンパ36とホース接続管46の吸い込み口46aの間の導管33の内部に満たされた水は、排水装置1bの呼び水として機能する。
また、電磁弁42aは、導管33の外部の空気がエア抜き管41を通って導管33の内部へ流入することを防ぐという作用を有する。すなわち、排水装置1bでは、電磁弁42bを備えていることから、逆止弁42cのみを備えている場合に比べて、エア抜き機構35がより確実に機能する。
【0071】
なお、給水ポンプ48に用いられるホースが導管33と別個に設けられている場合、導管33だけでなくホースも設置しなければならないため、導管33の設置場所が制限されてしまう。これに対し、排水装置1bでは、導管33の基端33aに接続されたホース接続管46に対し、その吸い込み口46aに近接するように設置された給水ポンプ48によって注水管47を介して呼び水を供給する構造であり、導管33と別個に給水ポンプ48のためのホースを設ける必要がないため、導管33の設置場所に対する制約が少ない。
また、導管33の上部に給水ポンプ48を設置して、導管33を利用してその基端33aから貯水池60の水を吸い上げる場合には、揚程が高いため、給水ポンプ48が大型で高価なものとなる。これに対し、排水装置1bでは、給水ポンプ48が導管33の基端33aの近傍に設置されており、揚程が低いことから、小型で安価なものを用いることができる。
【0072】
本発明の貯水池排水システムの構成について
図16を参照しながら具体的に説明する。
図16は本発明の貯水池排水システムの構成を示すブロック図である。なお、
図1乃至
図15に示した構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図16に示すように、本発明の貯水池排水システムは、前述の排水装置1a,1bに加え、排水装置1a,1bの動作を制御する制御ユニット50と、排水装置1bの導管33の水位及び流量と貯水池60の水位を検出する検出ユニット51と、排水装置1a,1bと制御ユニット50に電力を供給する電源ユニット52と、検出ユニット51によって検出された貯水池60の水位を監視するとともに、排水装置1a,1bを遠隔操作することによって貯水池60の水量を調整する監視装置53と、制御ユニット50と監視装置53の間でデータの送受信を行うための通信ユニット54を備えている。
【0073】
制御ユニット50は、電動シリンダ2にロッド2aを前進させる信号又は後退させる信号を送って排水装置1aを作動させる制御部50aと、操作盤(図示せず)からなり、制御部50aに対して各種の命令を与える入力部50bと、排水装置1a,1bの動作状況や検出ユニット51によって検出された結果を記憶する記憶装置50cを備えている。
検出ユニット51は、エア抜き機構35のセンサ保持管40の内部に設置されるレベルセンサ39の他、貯水池60の水面60aの近くに設置されて、水位の上昇の有無を検出する水位センサ51aと、基端33aの近傍に設置されて導管33から排出される水の量を検出する流量センサ51bを備えている
レベルセンサ39の接続部39aと制御ユニット50の制御部50aはケーブル(図示せず)によって接続されており、導管33の水位の検出結果はレベルセンサ39から制御部50aに随時送られる。また、水位センサ51aと流量センサ51bによる検出結果も図示しないケーブルを介して同様に制御ユニット50の制御部50aに随時送られる。なお、排水装置1a,1bの動作状況や検出ユニット51から制御ユニット50に送られた検出結果は、通信ユニット54を介して監視装置53にも送信される。
【0074】
電源ユニット52は、太陽光パネル52aと、この太陽光パネル52aによって発電された電気が蓄えられるバッテリ52cと、バッテリ52の蓄電量に応じて太陽光パネル52aからバッテリ52cに送られる電力を調節する充電コントローラ52bと、バッテリ52cから送り出される直流電流を交流電流に変換するインバータ52dを備えている。なお、バッテリ52cの電圧状態は、制御ユニット50に送られるとともに、通信ユニット54を介して監視装置53にも送信される。
監視装置53は、通信ユニット54を介して制御ユニット50から受け取った検出ユニット51による検出結果に基づいて排水装置1a,1bを作動させる指令信号を制御ユニット50に送信する制御部53aと、排水装置1a,1bの動作状況や検出ユニット51によって検出された結果及びバッテリ52cの電圧状態を表示する表示部53b及びそれらの情報を記憶する記憶装置53dと、制御部53aに対して各種の命令を与える入力部53cを備えている。
【0075】
このような構成の貯水池排水システムにおいては、管路64の開口端64aに取り付けられた蓋栓63が閉じている状態で、貯水池60の水位が予め定められたレベルを超えたことを示す検出結果を水位センサ51aから監視装置53が受け取った場合、制御部53aは、電動シリンダ2のロッド2aを後退させるような指令信号を制御ユニット50に送る。
制御ユニット50では、この指令信号に従って、制御部50aが排水装置1aの電動シリンダ2のロッド2aを後退させる。その結果、動作切換機構4と開閉軸3とリンク機構5を介して引っ張られるようにして蓋栓63が開放されるため、貯水池60の水は管路64を通って放水路61へ排出される。
【0076】
蓋栓63が開いている状態で、貯水池60の水位が予め定められたレベルを下回ったことを示す検出結果を水位センサ51aから監視装置53が受け取った場合、制御部53aは、電動シリンダ2のロッド2aを前進させるような指令信号を制御ユニット50に送る。
制御ユニット50では、この指令信号に従って、制御部50aが排水装置1aの電動シリンダ2のロッド2aを前進させる。その結果、動作切換機構4と開閉軸3とリンク機構5を介して押されるようにして蓋栓63が閉じられるため、貯水池60の水の放水路61への流出が停止する。
【0077】
また、センサ保持管40とエア抜き管41が導管33の最上部に配置されるように排水装置1bが設置された状態で、導管33の内部の水位が予め定められたレベルを下回っていることを示す検出結果を制御ユニット50がレベルセンサ39から受け取った場合、制御部53aは、電動ダンパ36を作動させて導管33の先端33bを閉塞した後、給水ポンプ48を作動させてホース接続管46に注水管47を介して貯水池60の水を所定量供給した後、外部の空気がエア抜き管41から導管33の内部へ流入しないように電磁弁42aを閉じさせる。これにより、電動ダンパ36とホース接続管46の吸い込み口46aの間の導管33の内部が常に呼び水で満たされた状態になる。
【0078】
上述の状態で、貯水池60の水位が予め定められたレベルを超えたことを示す検出結果を水位センサ51aから監視装置53が受け取った場合、制御部53aは、電動ダンパ36を作動させて導管33の先端33bを開放するような指令信号を制御ユニット50に送る。
制御ユニット50では、この指令信号に従って、制御部50aが電動ダンパ36を作動させて導管33の先端33bを開放する。その結果、サイフォンの原理により、貯水池60の水はホース接続管46の吸い込み口46aから吸い上げられて、導管33の先端33bから排出される。
なお、排水装置1bでは、前述のとおり、電動ダンパ36とホース接続管46の吸い込み口46aの間の導管33の内部が常に呼び水で満たされた状態となっているため、電動ダンパ36を作動させて導管33の先端33bを開放することにより、貯水池60の水を排出するという上述の機能が速やかに発揮される。
【0079】
一方、本発明の貯水池排水システムでは、貯水池60の水位が予め定められたレベルを下回ったことを示す検出結果を水位センサ51aから監視装置53が受け取った場合、制御部53aは、電動ダンパ36を作動させて導管33の先端33bを閉じるような指令信号を制御ユニット50に送る。
制御ユニット50では、この指令信号に従って、制御部50aが電動ダンパ36を作動させて導管33の先端33bを閉塞する。その結果、排水装置1bによる排水機能が停止する。
【0080】
以上説明したように、本発明の貯水池排水システムによれば、排水装置1a,1bの遠隔操作によって、貯水池60の水を排出することができるため、実際に現地に赴いて貯水池60の排水機構を操作する場合とは異なり、貯水池60の水量の調整を適切なタイミングで効率よく実施することが可能である。
また、排水装置1aが、水平な軸を中心として回転するようにして開閉する蓋栓63が開口端64aに設けられた管路64と、この管路64が接続された放水路61からなる既設の排水機構を利用するものであるため、本発明の貯水池排水システムは、低コストで運用することが可能である。
【0081】
なお、本発明の貯水池排水システムでは、貯水池60の水位が予め定められたレベルを超えていなくとも、水位センサ51aから監視装置53に送られた貯水池60の水位の検出結果を表示部53bで確認した作業者が、入力部53cを操作して、排水装置1a,1bを作動させる指令信号を制御ユニット50に送信させるような命令を制御部53aに対して与えることによっても、貯水池60の水量を調整することができる。また、作業者は、監視装置53を用いる代わりに、制御ユニット50の入力部50bから直接、制御部50aに対して排水装置1a,1bを作動させる命令を与えることもできる。
すなわち、本発明の貯水池排水システムでは、監視装置53による遠隔操作に加え、現地で排水装置1a,1bを自動又は手動によって直接操作することも可能となっている。
【0082】
なお、排水装置1aの代わりに変形例に係る排水装置1cを用いた場合、電動シリンダ2によって開閉される蓋栓の構造のみが異なるだけで、上述した本発明の貯水池排水システムにおける作用及び効果は排水装置1aを用いた場合と同様に発揮される。
また、本実施例では、排水装置1aに電動シリンダ2や電動ダンパ36を用いているが、本発明の貯水池排水システムは、このような構造に限定されるものではない。例えば、電動シリンダや電動ダンパの代わりに油圧シリンダやエアシリンダや油圧ダンパやエアダンパを用いることもできる。このように油圧シリンダやエアシリンダや油圧ダンパやエアダンパを用いた場合であっても、上述した本発明の貯水池排水システムにおける作用及び効果は、電動シリンダや電動ダンパを用いた場合と同様に発揮される。
さらに、
図5(g)や
図10(b)には、第3の連結金具21や第4の連結金具58をそれぞれ一対ずつ備えた構造が示されているが、このような構造に限定されるものではなく、本発明の貯水池排水システムでは、第3の連結金具21や第4の連結金具58が一つずつ設けられた構造であっても良い。