特許第6583945号(P6583945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6583945
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】貯水池排水システム
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   E02B7/20 105
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-203333(P2018-203333)
(22)【出願日】2018年10月29日
【審査請求日】2019年5月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年5月22日〜平成30年5月25日に「2018NEW環境展」にて発表
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593036888
【氏名又は名称】日進工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】弘中 美光
(72)【発明者】
【氏名】中光 眞史
(72)【発明者】
【氏名】安藤 竜馬
(72)【発明者】
【氏名】竹本 義美
(72)【発明者】
【氏名】谷 一身
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−084580(JP,A)
【文献】 特開2012−164215(JP,A)
【文献】 特開2008−095420(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3182690(JP,U)
【文献】 特開2003−074041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放水路が底部に設けられ、この放水路に通ずる管路が堤体の内部に形成されるとともに、蓋栓が前記管路の開口端に取り付けられた貯水池に対して用いられる貯水池排水システムであって、
前記堤体に設置されるシリンダ式排水装置と、
このシリンダ式排水装置の動作を制御する制御ユニットと、
この制御ユニットに電力を供給する電源ユニットと、
水位の検出結果を前記制御ユニットに送る水位センサと、
前記制御ユニットから受け取った前記水位センサによる前記検出結果に基づいて前記シリンダ式排水装置を作動させる指令信号を前記制御ユニットに送る監視装置と、を備え、
前記シリンダ式排水装置は、
ロッドを斜め下方に向けた状態で設置されたシリンダと、
このシリンダの前記ロッドに基端が接続された金属製の棒状体と、
この棒状体の先端と前記蓋栓を連結するリンク機構と、を備え
前記棒状体の前記基端は、動作切換機構を介して前記シリンダの前記ロッドに連結されており、
この動作切換機構は、
第1の位置決め孔を有する金属製の長尺部材と、
この長尺部材を長手方向へスライド可能に保持する金属製の保持ケースと、
前記第1の位置決め孔に挿通される位置決め部材と、を備え、
前記保持ケースは、前記第1の位置決め孔に挿通された前記位置決め部材を連通可能に第2の位置決め孔が前記長尺部材の前記長手方向に沿って複数個設けられていることを特徴とする貯水池排水システム。
【請求項2】
前記長尺部材は平板状をなし、その側面から突出するようにガイドピンが着脱可能に取り付けられており、
前記保持ケースは、底板と一対の側板によって断面が「コ」の字をなすように形成されるとともに、前記ガイドピンを前記長尺部材の前記長手方向へスライド可能に保持する長尺のガイド孔が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の貯水池排水システム。
【請求項3】
前記蓋栓が水平な軸を中心として回転するようにして開閉し、
前記リンク機構は、
前記棒状体の前記先端に取り付けられた第1の連結金具と、
前記蓋栓に取り付けられた第2の連結金具と、
この第2の連結金具と前記第1の連結金具に両端がそれぞれ枢着された短冊形の平板材からなる第3の連結金具と、からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の貯水池排水システム。
【請求項4】
前記蓋栓が前記管路の前記開口端に上方から差し込まれるようにして設置されており、
前記リンク機構は、
前記棒状体の前記先端に取り付けられた第1の連結金具と、
この第1の連結金具に基端が枢着された短冊形の平板材からなる第3の連結金具と、
この第3の連結金具の先端に一端が枢着された短冊形の平板材からなる第4の連結金具と、
前記蓋栓の上面に垂直に立設され外面に同形状の複数の歯が長手方向へ所定の長さに亘って等間隔に設けられた長尺の軸体と、
この軸体の前記歯に噛合するとともに、水平に配置された回転軸に接合され、この回転軸を中心として回転可能に設置されたピニオンと、
前記軸体を鉛直方向へ移動可能に保持する保持部と、
この保持部と前記回転軸を支持する脚部と、からなり、
前記第4の連結金具の他端は、前記回転軸に対して回転不能に接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の貯水池排水システム。
【請求項5】
前記貯水池の水中に基端が設置されるとともに、前記貯水池の水面よりも低い箇所に先端が配置されるように前記堤体に跨設される導管と、
この導管の基端に接続され、吸い込み口にフート弁が取り付けられたホース接続管と、
このホース接続管に一端が接続された注水管と、
この注水管に設置された第1の逆止弁と、
前記注水管の他端に接続されるとともに前記ホース接続管の前記吸い込み口に近接するように設置された給水ポンプと、
前記導管に上方へ突出するように形成される分岐管と、
この分岐管に設置された第2の逆止弁と、
前記分岐管と前記導管の前記先端の間に設置されるダンパと、からなるサイフォン式排水装置を備え、
前記給水ポンプと前記ダンパは、前記制御ユニットによって動作を制御され、
前記監視装置は、前記制御ユニットから受け取った前記水位センサによる前記検出結果に基づいて前記給水ポンプと前記ダンパを作動させる指令信号を前記制御ユニットに送ることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の貯水池排水システム。
【請求項6】
前記分岐管の基端と前記第2の逆止弁の間に電磁弁が設置され、
この電磁弁は、前記制御ユニットによって動作を制御され、
前記監視装置は、前記制御ユニットから受け取った前記水位センサによる前記検出結果に基づいて前記電磁弁を作動させる指令信号を前記制御ユニットに送ることを特徴とする請求項に記載の貯水池排水システム。
【請求項7】
前記分岐管の内部に前記導管内の水位を検出して、その検出結果を前記制御ユニットに送るレベルセンサを備え、
前記監視装置は、前記制御ユニットから受け取った前記レベルセンサによる前記検出結果に基づいて前記給水ポンプと前記ダンパと前記電磁弁を作動させる指令信号を前記制御ユニットに送ることを特徴とする請求項6に記載の貯水池排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水池の水位を測定した結果に基づいてその水量を遠隔操作によって調整することが可能な貯水池排水システムに係り、特に、設置や維持管理が容易であるとともに、低コストで運用することが可能な貯水池排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
長雨や集中豪雨などによって貯水池の水位が上昇すると、貯水池が決壊したり、放水作業時に事故が発生したりするおそれがある。そのため、貯水池には放水路などの排水設備が設置されている。しかしながら、従来、排水設備の操作は人が手動で行わなければならず、しかも、貯水池までの通路が十分に確保されていないことが多いため、適時に貯水池の排水を行うことが難しいという課題があった。
【0003】
このような課題に対処するものとして、例えば、特許文献1には、「調整池ダム水位制御システム」という名称で、水力発電用の調整池ダムにおいて、上流に位置する発電機側から調整池ダムに流入する水の量と、その調整池ダムに貯留された水を下流側に取水ゲートを介して放流する水の量とを調整することにより、調整池ダムの水量を制御するシステムに関する発明が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された発明は、調整池ダムの上流側の気象条件と水理条件が入力される条件入力手段と、調整池ダムに対して予め設定された複数の水位制御範囲のうち特定の水位制御範囲を、条件入力手段に入力された条件に基づいて選択する水位切替条件判定手段と、発電機側から調整池ダムに流入する水の量と取水ゲートを介して下流側に放流する水の量を、調整池ダムの水位が特定の水位制御範囲となるように水位切替条件判定手段によって選択された特定の水位制御範囲に基づいて制御する水位切替指令手段を備えたことを特徴としている。
このような構成によれば、調整池ダムの水位制御が自動で行われるため、雷が発生した場合などのような非常時における運転員の負担を軽減することができる。また、調整池ダムに貯留されている水の越流を防止できるため、越流による溢水電力の発生や誤放流を回避することが可能である。
【0005】
また、特許文献2には、「調整池の排水流量制御システム」という名称で、雨水を一時的に貯留する調整池の水量を制御するシステムに関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、調整池の排水口に設けられた開閉バルブを調節して、貯留雨水を安全に排水することを特徴とするものであり、明細書には、調整池が複数ある場合に、各単位時間当りの降雨量、貯留水位及び流量の測定値を電話回線又は無線で遠隔地にある中央監視盤に伝送して、この中央監視盤で各調整池の排水量を遠隔制御することが記載されている。
このような構成によれば、遠隔操作によって調整池の水量を制御することができるため、調整池の排水を適時に行って下流水路の氾濫を防ぐことが可能である。
【0006】
さらに、特許文献3には、「サイフォン式排水システム」という名称で、貯水池に貯留された水を、その下流側の低地にサイフォンを利用して排出するシステムに関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された発明は、天然ダムの頂部に設置される排水制御ユニットと、天然ダムの上流側に生成された貯水池に浮遊配置される吸入部ユニットと、天然ダムの下流側の低地に設置される排水部ユニットと、排水制御ユニットに支持されて、吸入部ユニットと排水部ユニットを連通接続する4系統の接続ホースを備えており、ポータブル式発動発電機と真空ポンプと吸込回路の満水状態を検知するセンサと制御盤等によって排水制御ユニットが構成されたことを特徴としている。
【0007】
このような構成を備えた特許文献3に記載の排水システムによれば、天然ダムの上流側の貯水をその下流側の低地へ容易かつ的確に排水することができる。また、本発明の排水システムにおいては、大型で大重量の排水ポンプや発電機が用いられる従来の排水システムに比べて、排水制御ユニットと吸入部ユニットと排水部ユニットが軽量構造であるため、現場までの進入道路が寸断されている場合であっても空輸等により、難なく目的とする場所に配置することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−82646号公報
【特許文献2】特許第3176315号公報
【特許文献3】特開2014−163202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された発明は、調整池ダムに貯留された水を下流側に放流するための既設の管路を利用するものであるが、明細書と図面のいずれにも管路の取水ゲートを開閉する機構について具体的に示されておらず、どのようにして調整池の水位制御が自動で行われるか、不明である。したがって、遠隔操作によって調整池の水位を容易に調整できないおそれがある。
【0010】
また、特許文献2に開示された発明では、調整池の排出口に電動開閉バルブ(ゲート)を新たに設置する必要があるため、設置や維持が容易でなく、運用コストも嵩む可能性が高い。
【0011】
さらに、特許文献3に開示された発明では、天然ダムの頂部に設置される真空ポンプによって、天然ダムの上流側に生成された貯水池の水を吸い上げる構造であるため、真空ポンプを大型のものにする必要がある。したがって、設置や維持が容易でなく、また、低コストで運用することが難しいという課題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、設置や維持管理が容易であるとともに、低コストで運用することが可能な貯水池排水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、第1の発明は、放水路が底部に設けられ、この放水路に通ずる管路が堤体の内部に形成されるとともに、蓋栓が管路の開口端に取り付けられた貯水池に対して用いられる貯水池排水システムであって、堤体に設置されるシリンダ式排水装置と、このシリンダ式排水装置の動作を制御する制御ユニットと、この制御ユニットに電力を供給する電源ユニットと、水位の検出結果を制御ユニットに送る水位センサと、制御ユニットから受け取った水位センサによる検出結果に基づいてシリンダ式排水装置を作動させる指令信号を制御ユニットに送る監視装置と、を備え、シリンダ式排水装置は、ロッドを斜め下方に向けた状態で設置されたシリンダと、このシリンダのロッドに基端が接続された金属製の棒状体と、この棒状体の先端と蓋栓を連結するリンク機構と、を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
このような構成の貯水池排水システムにおいては、管路の開口端に取り付けられた蓋栓が閉じている状態で、監視装置から制御ユニットに指令信号を送って、シリンダのロッドを移動させると、棒状体とリンク機構が移動し、それに伴って蓋栓が開放される結果、貯水池の水が管路から放水路へ排出されるという作用を有する。そして、蓋栓が開いている状態で、シリンダのロッドを上述の場合とは逆の方向へ移動させるような指令信号を監視装置から制御ユニットに送ると、蓋栓が棒状体とリンク機構の移動に伴って閉じられるため、貯水池の水の放水路への流出が停止する。このように、第1の発明では、遠隔地において監視装置を操作することによって貯水池の排水が行われるため、実際に現地に赴く必要がない。
また、蓋栓の開閉機構にワイヤを用いる場合、蓋栓を閉じる際にワイヤを介してシリンダ等の駆動力を蓋栓に伝達することができないため、蓋栓を開く機構とは別に蓋栓を閉じる機構を設ける必要があるが、第1の発明においては、シリンダの駆動力が金属製の棒状体を介して蓋栓に伝達されることから、蓋栓の開閉機構がワイヤを用いる場合よりもシンプルな構造になる。
【0015】
また、第2の発明は、第1の発明において、棒状体の基端は、動作切換機構を介してシリンダのロッドに連結されており、この動作切換機構は、第1の位置決め孔を有する金属製の長尺部材と、この長尺部材を長手方向へスライド可能に保持する金属製の保持ケースと、第1の位置決め孔に挿通される位置決め部材と、を備え、保持ケースは、第1の位置決め孔に挿通された位置決め部材を連通可能に第2の位置決め孔が長尺部材の長手方向に沿って複数個設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
このような構成の貯水池排水システムにおいては、第1の発明の作用に加え、長尺部材の第1の位置決め孔から位置決め部材を抜出すると、長尺部材と保持ケースの連結状態が解消されるという作用を有する。
【0017】
第3の発明は、第2の発明において、長尺部材は平板状をなし、その側面から突出するようにガイドピンが着脱可能に取り付けられており、保持ケースは、底板と一対の側板によって断面が「コ」の字をなすように形成されるとともに、ガイドピンを長尺部材の長手方向へスライド可能に保持する長尺のガイド孔が設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
このような構成の貯水池排水システムにおいては、第2の発明の作用に加え、長尺部材からガイドピンを取り外すことにより、保持ケースから長尺部材の取り出しが可能になるという作用を有する。
【0019】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかにおいて、蓋栓が水平な軸を中心として回転するようにして開閉し、リンク機構は、棒状体の先端に取り付けられた第1の連結金具と、蓋栓に取り付けられた第2の連結金具と、この第2の連結金具と第1の連結金具に両端がそれぞれ枢着された短冊形の平板材からなる第3の連結金具と、からなることを特徴とするものである。
このような構成の貯水池排水システムにおいては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の作用に加えて、シリンダのロッドが前進又は後退すると、リンク機構を介して引っ張られるようにして蓋栓が開くとともに、シリンダのロッドが上述の場合とは逆の方向へ移動すると、リンク機構に押されるようにして蓋栓が閉じるという作用を有する。また、このとき、リンク機構は、シリンダから棒状体を介して伝達される力によって蓋栓に発生する回転モーメントが大きくなるように、棒状体から蓋栓に加えられる力の向きを変化させるという作用を有する。
【0020】
第5の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかにおいて、蓋栓が管路の開口端に上方から差し込まれるようにして設置されており、リンク機構は、棒状体の先端に取り付けられた第1の連結金具と、この第1の連結金具に基端が枢着された短冊形の平板材からなる第3の連結金具と、この第3の連結金具の先端に一端が枢着された短冊形の平板材からなる第4の連結金具と、蓋栓の上面に垂直に立設され外面に同形状の複数の歯が長手方向へ所定の長さに亘って等間隔に設けられた長尺の軸体と、この軸体の歯に噛合するとともに、水平に配置された回転軸に接合され、この回転軸を中心として回転可能に設置されたピニオンと、軸体を鉛直方向へ移動可能に保持する保持部と、この保持部と回転軸を支持する脚部と、からなり、第4の連結金具の他端は、回転軸に対して回転不能に接続されていることを特徴とするものである。
【0021】
このような構成の貯水池排水システムにおいては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の作用に加えて、シリンダのロッドが前進又は後退すると、リンク機構によって持ち上げられるようにして蓋栓が開くとともに、シリンダのロッドが上述の場合とは逆の方向へ移動すると、リンク機構によって押し下げられるようにして蓋栓が閉じるという作用を有する。そして、このとき、リンク機構は、棒状体から蓋栓に加えられる力が鉛直方向を向くように変化させるという作用を有する。
【0022】
第6の発明は、第1の発明乃至第5の発明のいずれかにおいて、貯水池の水中に基端が設置されるとともに、貯水池の水面よりも低い箇所に先端が配置されるように堤体に跨設される導管と、この導管の基端に接続され、吸い込み口にフート弁が取り付けられたホース接続管と、このホース接続管に一端が接続された注水管と、この注水管に設置された第1の逆止弁と、注水管の他端に接続されるとともにホース接続管の吸い込み口に近接するように設置された給水ポンプと、導管に上方へ突出するように形成される分岐管と、この分岐管に設置された第2の逆止弁と、分岐管と導管の先端の間に設置されるダンパと、からなるサイフォン式排水装置を備え、給水ポンプとダンパは、制御ユニットによって動作を制御され、監視装置は、制御ユニットから受け取った水位センサによる検出結果に基づいて給水ポンプとダンパを作動させる指令信号を制御ユニットに送ることを特徴とするものである。
なお、第6の発明において、「給水ポンプがホース接続管の吸い込み口に『近接』するように設置」されている状態には、給水ポンプとホース接続管の吸い込み口が接触はしていないものの、当該吸い込み口の極近傍に給水ポンプが設置されている場合のように「給水ポンプがホース接続管の吸い込み口に『略近接』するように設置」されている状態も含まれるものとする。
【0023】
このような構成の貯水池排水システムにおいては、第1の発明乃至第5の発明のいずれかの発明の作用に加えて、分岐管が導管の最上部に配置されるようにサイフォン式排水装置を設置した後、監視装置から制御ユニットに指令信号を送り、導管の先端側が閉塞されるようにダンパを作動させるとともに、給水ポンプを作動させてホース接続管の内部に水を供給した場合、その水がホース接続管の吸い込み口から排出されることをフート弁が防ぐという作用を有する。また、第2の電磁弁は、導管の外部の空気が分岐管を通って導管の内部へ流入することを防ぐという作用を有する。
そして、ダンパとホース接続管の吸い込み口の間の導管内に満たされた水は、サイフォン式排水装置の呼び水として機能するため、この状態で、監視装置から制御ユニットに指令信号を送り、導管の先端側が開放されるようにダンパを作動させると、貯水池の水は、サイフォンの原理によってホース接続管の吸い込み口から吸い上げられて、導管の先端から排出されるという作用を有する。
【0024】
第7の発明は、第6の発明において、分岐管の基端と第2の逆止弁の間に電磁弁が設置され、この電磁弁は、制御ユニットによって動作を制御され、監視装置は、制御ユニットから受け取った水位センサによる検出結果に基づいて電磁弁を作動させる指令信号を制御ユニットに送ることを特徴とするものである。
このような構成の貯水池排水システムにおいては、分岐管を通って外部の空気が導管内に流入することを第2の逆止弁が防ぐという第6の発明の作用が確実に発揮される。
【0025】
第8の発明は、第7の発明において、分岐管の内部に導管内の水位を検出して、その検出結果を制御ユニットに送るレベルセンサを備え、監視装置は、制御ユニットから受け取ったレベルセンサによる検出結果に基づいて給水ポンプとダンパと電磁弁を作動させる指令信号を制御ユニットに送ることを特徴とするものである。
このような構成の貯水池排水システムにおいて、サイフォン式排水装置を使用しないときはダンパを作動させて導管の先端側を閉塞しておけば、ダンパとホース接続管の吸い込み口の間の導管内の水位がレベルセンサによって検出される。そこで、上記水位が予め定められたレベルよりも低くなった場合に給水ポンプを作動させてホース接続管に所定量の水を供給した後、外部の空気が分岐管から導管内へ流入しないように電磁弁を作動させると、ダンパとホース接続管の吸い込み口の間の導管内が常に呼び水で満たされた状態になる。この場合、ダンパを作動させて導管の先端を開放するだけで、貯水池の水が導管を通って排出されることになる。
すなわち、本発明では、第7の発明の作用に加えて、ダンパを作動させて導管の先端を開放するだけでサイフォン式排水装置の排水機能が発揮されるという作用を有する。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、第1の発明によれば、シリンダ式排水装置の遠隔操作によって、貯水池の水が管路を通して放水路に排出されるという効果を奏する。したがって、実際に現地に赴いて排水機構を操作する場合とは異なり、貯水池の水量の調整を適切なタイミングで効率よく実施することが可能である。
また、第1の発明は、蓋栓が開口端に設けられた管路と、この管路が接続された放水路からなる既設の排水機構を利用するものであるため、低コストで運用することができる。
さらに、第1の発明では、蓋栓の開閉機構にワイヤを用いる場合とは異なり、蓋栓の開閉機構がシンプルな構造であることから、設置や維持管理が容易である。
【0027】
第2の発明では、第1の発明の効果に加え、通信トラブル等によってシリンダ式排水装置のシリンダを遠隔操作できない場合でも、長尺部材の第1の位置決め孔から位置決め部材を抜出することにより棒状体の手動操作が可能になるという効果を奏する。
【0028】
第3の発明によれば、保持ケースからの長尺部材の取り出しが可能であるため、第2の発明の効果に加え、長尺部材が移動し難い状態になった場合に、その点検や交換等の作業を効率よく行うことができるという効果を奏する。
【0029】
第4の発明では、水平な軸を中心として回転するようにして開閉する蓋栓が管路の開口端に取り付けられている場合に、シリンダや棒状体の傾斜状態によらず、蓋栓にシリンダの力が効率よく伝達されることから、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの効果に加えて、シリンダ式排水装置の設置場所に対する制約が少ないという効果を奏する。
【0030】
第5の発明では、蓋栓が管路の開口端に上方から差し込まれるようにして設置されている場合に、シリンダから棒状体を介して蓋栓に伝達される力がシリンダや棒状体の傾斜状態の影響を受け難いため、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの効果に加えて、シリンダ式排水装置の設置場所に対する制約が少ないという効果を奏する。
【0031】
第6の発明によれば、第1の発明乃至第5の発明のいずれかの効果に加え、サイフォン式排水装置の遠隔操作によって、貯水池の水をその水面よりも低い、貯水池とは別の箇所に対して連続的に排出することができるという効果を奏する。また、給水ポンプ用のホースが導管と別個に設けられている場合、導管だけでなくホースも設置しなければならないため、導管の設置場所が制限されてしまう。これに対し、第5の発明は、導管の基端に接続されたホース接続管に対し、その吸い込み口に近接するように設置された給水ポンプによって注水管を介して呼び水を供給する構造であり、導管と別個に給水ポンプ用のホースを設ける必要がないため、導管の設置場所に対する制約が少ない。
さらに、導管の上部に設置された給水ポンプによって導管の基端から水を吸い上げる場合には、揚程が高いため、大型で高価な給水ポンプが必要となるが、第5の発明では、給水ポンプが導管の基端の近傍に設置されており、揚程が低いことから、小型で安価な給水ポンプを用いることができる。
【0032】
第7の発明では、第6の発明と比べた場合、分岐管と第2の逆止弁からなるエア抜き機構がより確実に機能するため、サイフォン式排水装置の遠隔操作によって、貯水池の水を連続的に排出できるという第6の発明の効果がより一層発揮される。
【0033】
第8の発明では、第7の発明の効果に加え、貯水池の水位が予め定められたレベルを超えた場合に、サイフォン式排水装置により貯水池の水を速やかに排出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施の形態に係る貯水池排水システムに用いられるシリンダ式の排水装置の外観図である。
図2】(a)は図1に示した電動シリンダと動作切換機構の外観図であり、(b)及び(c)は動作切換機構を構成するスライド板と保持ケースの正面図である。
図3】(a)及び(b)はそれぞれ保持ケースの下面図及び左側面図であり、(c)は図2(c)におけるA−A線矢視断面図であり、(d)及び(e)はそれぞれ位置決め部材の正面図及び平面図であり、(f)はスライド板と保持ケースにガイドピンと位置決め部材が取り付けられた状態を示す斜視図である。
図4】(a)乃至(d)は動作切換機構の機能を説明するための図である。
図5】(a)は開閉軸の正面図であり、(b)は開閉軸の先端と第1の連結金具の平面図であり、(c)は第3の連結金具の正面図であり、(d)及び(e)は第2の連結金具の正面図及び平面図であり、(f)及び(g)はそれぞれリンク機構の正面図及び右側面図である。
図6】(a)及び(b)はそれぞれ蓋栓の正面図及び平面図であり、(c)及び(d)はそれぞれ蓋栓にリンク機構が取り付けられた状態を示す正面図及び平面図である。
図7】(a)乃至(c)はそれぞれシリンダカバーの左側面図と正面図と右側面図であり、(d)乃至(f)はストレーナの左側面図と正面図と右側面図であり、(g)はストレーナの背面板の平面図であり、(h)及び(i)はそれぞれストレーナの平面図及び下面図である。
図8】(a)乃至(c)はそれぞれ架台の左側面図と正面図と右側面図であり、(d)は第1の軸サポートの正面図であり、(e)及び(f)はそれぞれ同図(d)におけるB方向矢視図及びC方向矢視図である。
図9】(a)は第2の軸サポートの平面図であり、(b)乃至(d)はそれぞれ第3の軸サポートの正面図と右側面図と下面図であり、(e)乃至(g)はそれぞれガイド部材の左側面図と正面図と右側面図である。
図10】(a)は図1に示したシリンダ式の排水装置の変形例の正面図であり、(b)は同図(a)におけるD−D線矢視断面図である。
図11図10(a)におけるE−E線矢視断面図である。
図12】本発明の実施の形態に係る貯水池排水システムに用いられるサイフォン式の排水装置の外観図である。
図13】(a)は図12に示したエア抜き機構の拡大図であり、(b)は図12におけるH方向矢視図である。
図14】(a)及び(b)はそれぞれ図12に示した排水装置の吸い込み部の正面図及び平面図である。
図15】(a)及び(b)はそれぞれホース接続管の正面図及び下面図であり、(c)は固定台の平面図である。(a)はホース接続管の外観図であり、(b)及び(c)はそれぞれ取付板及び固定台の平面図である。
図16】本発明の実施の形態に係る貯水池排水システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の貯水池排水システムについて、図1乃至図16を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の説明では、シリンダ式の排水装置やサイフォン式の排水装置が実際に貯水池の堤体に設置されている状態を想定して、「上面」や「下面」あるいは「上方」や「下方」などの表現を用いている。
【実施例】
【0036】
図1はシリンダ式の排水装置1aの外観図である。また、図2(a)は図1に示した電動シリンダ2と動作切換機構4の外観図であり、図2(b)及び図2(c)はそれぞれ動作切換機構4を構成するスライド板13と保持ケース14の正面図である。そして、図3(a)及び図3(b)はそれぞれ保持ケース14の下面図及び左側面図であり、図3(c)は図2(c)におけるA−A線矢視断面図である。さらに、図3(d)及び図3(e)はそれぞれスライド板を保持ケースに固定するための位置決め部材18bの正面図及び平面図であり、図3(f)はスライド板13と保持ケース14にガイドピン18aと位置決め部材18bが取り付けられた状態を示す斜視図である。
なお、図1では、電動シリンダ2を駆動するための電源や各種のケーブルについてその図示を省略している。また、図3(d)及び図3(e)では、位置決め部材18bを図3(a)乃至(c)における保持ケース14よりも拡大した状態で示している。
【0037】
図1に示すように、排水装置1aは、貯水池60の底部に設けられた放水路61と、この放水路61に通ずるように堤体62の内部に形成されるとともに、開口端64aに蓋栓63が水平な軸を中心として回転可能に取り付けられた管路64からなる既設の排水機構を利用するものである。
排水装置1aの最上部には電動シリンダ2が設置されており、この電動シリンダ2と蓋栓63の間には棒状の開閉軸3が配置されている。また、開閉軸3の基端3aは動作切換機構4を介して電動シリンダ2のロッド2a(図2(a)参照)に連結されており、棒状体3の先端3bはリンク機構5を介して蓋栓63に連結されている。さらに、電動シリンダ2にはシリンダカバー6が取り付けられており、管路64の開口端64aの上方を覆うようにストレーナ7が設置されている。
なお、電動シリンダ2はロッド2aを斜め下方に向けた状態で架台8に設置されており、開閉軸3は第1の軸サポート9と第3の軸サポート11と第2の軸サポート10の上部に取り付けられたガイド部材12によって、基端3a及び先端3bの近傍とそれらの間をそれぞれ支持されている。すなわち、排水装置1aは貯水池60の堤体62の斜面に傾斜した状態で設置されている。
【0038】
図2及び図3に示すように、動作切換機構4は、ステンレス製の長尺部材からなるスライド板13と、同じくステンレス製の長尺部材からなり、基端14aに電動シリンダ2のロッド2aを取り付けるための取付板15を有するとともに、一対の側板16,16と底板17によって断面が「コ」の字状をなすように形成され、スライド板13をその長手方向へスライド可能に保持する保持ケース14によって構成されている。
スライド板13には、保持ケース14によって保持された状態において、側板16よりも上方へ突出するように把持部13cが基端13aの近くに設けられるとともに、開閉軸3の基端3aを連結するための切り欠き13dが先端13bに形成されている。また、スライド板13には、基端13aと把持部13cの間にガイドピン18aの挿通孔13e,13eが長手方向に所定の間隔を空けて設けられるとともに、位置決め部材18bの位置決め孔13fが把持部13cの基端の近くに設けられている。
【0039】
なお、スライド板13や保持ケース14は、ステンレスに限らず、例えば、アルミニウムなどのステンレス以外の金属によって形成された物であっても良い。また、動作切換機構4は、スライド板13と保持ケース14の代わりに、長尺部材が筒状体によって、その長手方向へスライド可能に保持されるとともに、この長尺部材と筒状体に位置決め部材が挿通される位置決め孔が設けられた構造とすることもできる。
ただし、動作切換機構4がスライド板13と保持ケース14によって構成されている場合には、スライド板13の挿通孔13eからガイドピン18aを取り外すことにより、保持ケース14からスライド板13の取り出しが可能になる。したがって、スライド板13が移動し難い状態になった場合に、その点検や交換等の作業を効率よく行うことができる。
【0040】
保持ケース14の取付板15には、電動シリンダ2のロッド2aに固定する際に使用される複数のネジ孔15aが設けられている。また、一対の側板16,16には、スライド板13の挿通孔13eに挿通された状態のガイドピン18aを案内するためのガイド孔16aが長手方向に沿って長く形成されるとともに、スライド板13を保持したままで、位置決め孔13fに挿通された状態の位置決め部材18bを連通可能に3つの位置決め孔16b〜16dが長手方向に沿って所定の間隔を空けて設けられている。
【0041】
さらに、一対の側板16,16には、位置決め部材18bを保持ケース14に連結する鎖(図示せず)の一端を固定するための貫通孔16eが設けられている。
位置決め部材18bは、基端側が90度に曲折されたピン形状をしており、この曲折された部分の近傍には、上述の鎖の一端を連結するための連結片19が取り付けられている。
なお、位置決め孔16bと位置決め孔16cの間隔及び位置決め孔16cと位置決め孔16dの間隔は、閉じた状態の蓋栓63を開く際に電動シリンダ2のロッド2aが移動する距離、すなわち、蓋栓63の開閉に必要な電動シリンダ2のストロークと等しくなるように設定されている。
【0042】
図4(a)乃至図4(d)は動作切換機構4の機能を説明するための図である。なお、図4では、ガイドピン18aと位置決め部材18bの図示を省略している。
排水装置1aでは、通常、位置決め部材18bはスライド板13の位置決め孔13fと保持ケース14の位置決め孔16cに連通されている。したがって、蓋栓63が開いている場合に、電動シリンダ2を駆動してロッド2aを前進させると、位置決め部材18bを介して保持ケース14に連結されたスライド板13が電動シリンダ2に連動し前進する。その結果、動作切換機構4は図4(a)に示した状態となり、蓋栓63が閉じられる。
また、蓋栓63が閉じている状態で電動シリンダ2を駆動してロッド2aを後退させると、スライド板13は、位置決め部材18bを介して保持ケース14に連結されていることから、電動シリンダ2に連動して後退する。その結果、動作切換機構4は図4(b)に示した状態となり、蓋栓63が開かれる。
【0043】
なお、図4(a)に示した状態において、位置決め部材18bをスライド板13の位置決め孔13fと保持ケース14の位置決め孔16cから抜出すると、スライド板13は、保持ケース14に対する連結状態が解消されるため、手動で操作可能になる。そこで、把持部13cを手で持って後退させていくと、蓋栓63が徐々に開き始める。
このとき、保持ケース14における位置決め孔16bと位置決め孔16cの間隔と蓋栓63の開閉に必要な電動シリンダ2のストロークが等しいことから、図4(c)に示すように位置決め孔13fが保持ケース14の位置決め孔16bの位置に達するまでスライド板13を後退させると、蓋栓63は完全に開いた状態になる。そこで、位置決め部材18bをスライド板13の位置決め孔13fと保持ケース14の位置決め孔16bに連通させると、蓋栓63の開いた状態が維持される。
【0044】
また、図4(b)に示した状態において、位置決め部材18bをスライド板13の位置決め孔13fと保持ケース14の位置決め孔16cから抜出してスライド板13の保持ケース14に対する連結状態を解消した後、把持部13cを手で持って、スライド板13を前進させていくと、蓋栓63が徐々に閉じ始める。
このとき、保持ケース14における位置決め孔16cと位置決め孔16dの間隔と蓋栓63の開閉に必要な電動シリンダ2のストロークが等しいことから、図4(d)に示すように位置決め孔13fが保持ケース14の位置決め孔16dの位置に達するまでスライド板13を前進させると、蓋栓63は完全に閉じた状態になる。そこで、位置決め部材18bをスライド板13の位置決め孔13fと保持ケース14の位置決め孔16dに連通させると、蓋栓63の閉じた状態が維持される。
【0045】
このように、排水装置1aでは、スライド板13の位置決め孔13fから位置決め部材18bを抜出すれば、開閉軸3を手動で操作することができる。したがって、通信トラブル等によって電動シリンダ2に対して後述するような遠隔操作を行うことができない場合でも、蓋栓63を手動で開閉することが可能である。
【0046】
図5(a)はスライド板13の先端13bが基端3aに連結されるとともに第1の連結金具20が先端3bに連結された状態を示す開閉軸3の正面図であり、図5(b)は開閉軸3の先端3bと第1の連結金具20の平面図であり、図5(c)は第3の連結金具21の正面図である。
図5(a)及び図5(b)に示すように、開閉軸3は、ステンレス製の丸棒からなり、ターンバックル3cと呼ばれる張力を調節する装置が基端3aの近くに取り付けられている。また、第1の連結金具20は、短冊形のステンレス製の平板材からなり、開閉軸3の先端3bに設けられた切り欠き3dに基端20aが接合されるとともに、平面視円弧状をなす先端20bの近傍には連結孔20cが設けられている。さらに、図5(c)に示すように、第3の連結金具21は、両端が平面視円弧状をなす短冊形のステンレス製の平板材からなり、基端21aと先端21bの近傍には連結孔21c,21dがそれぞれ設けられている。
なお、開閉軸3には、ステンレス製の丸棒に限らず、断面が三角形や四角形をなすとともに、例えば、アルミニウムなどのステンレス以外の金属によって形成された棒状体を用いることもできる。
【0047】
図5(d)及び図5(e)はそれぞれ第2の連結金具22の正面図及び平面図であり、図5(f)及び図5(g)はリンク機構5の正面図及び右側面図である。
図5(d)及び図5(e)に示すように、第2の連結金具22は、平面視円弧状をなす基端23aの近傍に連結孔23cが設けられたステンレス製の短冊形の連結板23と、この連結板23の先端23bに平面視T字状をなすように接合される短冊形のステンレス製の取付板24からなる。連結板23の基端23aと先端23bの間には、連結孔23dが設けられており、取付板24には、連結板23を挟んで対称に一対のボルト挿通孔24a,24aが設けられている。
【0048】
図5(f)及び図5(g)に示すように、第1の連結金具20の先端20bは連結孔20c(図5(a)参照)と連結孔21c,21c(図5(c)参照)に連通された締結具25aを介して回動可能に一対の第3の連結金具21,21の基端21a,21aに連結されている。
また、第2の連結金具22の連結板23は、基端23aが連結孔23c(図5(d)参照)と連結孔21d,21d(図5(c)参照)に連通された締結具25bを介して回動可能に一対の第3の連結金具21,21の先端21b,21bに連結されるとともに、連結孔23d(図5(d)参照)に挿通された締結具25cを介して一対の補強板26,26に連結されている。
なお、補強板26は、電動シリンダ2の動力がリンク機構5を介して蓋栓63に伝達される際に、取付板24の蓋栓63に連結された部分に加わる力を分散させるという機能を有している。
【0049】
図6(a)及び図6(b)はそれぞれ蓋栓63の正面図及び平面図であり、図6(c)及び図6(d)はそれぞれ蓋栓63にリンク機構5が取り付けられた状態を示す正面図及び平面図である。なお、図6(c)では、蓋栓63が開いた状態を破線で示している。
図6(a)及び図6(b)に示すように、管路64が形成されたコンクリート基礎65の上面65aに設置されて軸体67の両端をそれぞれ保持する一対の保持部材68,68と、一端が蓋栓63に接合されるとともに他端が軸体67を介して回動可能に一対の保持部材68,68に連結される一対の連結部材69,69からなる蓋開閉機構66を介して、蓋栓63は開閉自在にコンクリート基礎65に取り付けられている。ただし、蓋栓63には、第2の連結金具22を締結するためのボルトが螺入されるボルト孔63a,63aを取付板24のボルト挿通孔24a,24aと対応する箇所に設けるものとする。
【0050】
図6(c)及び図6(d)に示すように、リンク機構5の第2の連結金具22は、補強板26,26の先端26a,26aを蓋栓63の上面63bに当接させた状態で蓋栓63にボルト(図示せず)を用いて締結される。
蓋栓63が閉じている場合に、開閉軸3によって第1の連結金具20が図6(c)に矢印Xで示す方向へ引っ張られると、蓋栓63はリンク機構5の移動に伴って軸体67を中心として矢印Yの向きに回動する結果、破線で示したように開いた状態となる。
一方、蓋栓63が開いている場合、開閉軸3によって第1の連結金具20が図6(c)に矢印Xで示す方向と逆の方向へ押されると、蓋栓63はリンク機構5の移動に伴って軸体67を中心として矢印Yと逆の向きに回動する結果、実線で示したように閉じた状態となる。
【0051】
上記構造の排水装置1aにおいては、電動シリンダ2から開閉軸3を介して伝達される力によって蓋栓63に発生する回転モーメントが大きくなるように、蓋栓63に加わる電動シリンダ2の力の向きをリンク機構5が変化させるという作用を有する。すなわち、排水装置1aでは、電動シリンダ2や開閉軸3の傾斜状態によらず、蓋栓63に電動シリンダ2の力が効率よく伝達されることから、設置場所に対する制約が少ない。
なお、本実施例では、電動シリンダ2のロッド2aが後退した場合に第1の連結金具20が図6(c)に矢印Xで示す方向へ引っ張られることで蓋栓63が開くとともに、電動シリンダ2のロッド2aが前進した場合に第1の連結金具20が図6(c)に矢印Xで示す方向と逆の方向へ移動することで蓋栓63が閉じる構造となっているが、第1の連結金具20と開閉軸3を接続する代わりに、開閉軸3が前進すると第1の連結金具20が引っ張られる一方、開閉軸3が後退すると第1の連結金具20が押されるように、開閉軸3と第1の連結金具20の間にピニオンを設置して、電動シリンダ2のロッド2aが前進した場合に蓋栓63が開くとともに、電動シリンダ2のロッド2aが後退した場合に蓋栓63が閉じる構造とすることもできる。
【0052】
図7(a)乃至図7(c)はそれぞれシリンダカバー6の左側面図と正面図と右側面図であり、図7(d)乃至図7(f)はそれぞれストレーナ7の左側面図と正面図と右側面図であり、図7(g)はストレーナ7の背面板29の平面図であり、図7(h)及び図7(i)はそれぞれストレーナ7の平面図及び下面図である。なお、図7(h)ではアングル材28,28の取り付け状態がわかるように、本体部27の上面の一部を切り欠いた状態で示している。
【0053】
図7(a)乃至図7(c)に示すように、シリンダカバー6はステンレス製の平板材からなり、電動シリンダ2の上面と側面と背面を覆うことができるように、天板6aと側板6b,6bと背面板6cを備えており、側板6b,6bの下縁の近傍には、架台8にボルト固定するためのボルト挿通孔6d,6dが設けられている。
図7(d)乃至図7(i)に示すように、ストレーナ7は、ステンレス製のパンチング板によって背面と下面が開口した直方体状に形成された本体部27と、本体部27の側面の背面側の端縁及び下面側の端縁にそれぞれ取り付けられたステンレス製のアングル材28と、本体部27の背面のアングル材28,28にネジ留めされるステンレス製の背面板29を備えている。また、背面板29には、上端の中央に切り欠き29aが開閉軸3を挿通できるように設けられるとともに、下端の中央に切り欠き29bが第3の軸サポート11の一部を挿通できるように設けられている。
【0054】
図8(a)乃至図8(c)はそれぞれ架台8の左側面図と正面図と右側面図であり、図8(d)は第1の軸サポート9の正面図であり、図8(e)及び図8(f)はそれぞれ図8(d)におけるB方向矢視図及びC方向矢視図である。
図8(a)乃至図8(c)に示すように、架台8は、複数本のアングル材によって形成されており、上部には電動シリンダ2をボルト固定するためのボルト挿通孔30aが設けられた枠状の取付板30が傾斜した状態で設置されている。また、取付板30の両側面に配置される一対のアングル材には、シリンダカバー6を固定するためのボルト挿通孔8a,8aがそれぞれ設けられている。
【0055】
図8(d)乃至図8(f)に示すように、第1の軸サポート9は、複数本のアングル材によって形成されており、側面視略L字状をなす脚部9aの上部には、取付部9bが傾斜した状態で設けられている。また、脚部9aの下面には、アンカーを打ち込むための固定孔9cが設けられており、取付部9bには、ガイド部材12をボルト固定するためのボルト挿通孔9d,9dが設けられている。なお、ボルト挿通孔9dは、ガイド部材12を取り付ける際にその高さを容易に調節できるように、上下方向へ長く形成されている。
【0056】
図9(a)は第2の軸サポート10の平面図であり、図9(b)乃至図9(d)はそれぞれ第3の軸サポート11の正面図と右側面図と下面図である。また、図9(e)乃至図9(g)はそれぞれガイド部材12の左側面図と正面図と右側面図である。
図9(a)に示すように、第2の軸サポート10は、平面視矩形状をなすステンレス製の板材からなり、アンカーを打ち込むための固定孔10a,10aとガイド部材12をボルト固定するためのボルト挿通孔10b,10bが設けられている。なお、ボルト挿通孔10bは、ガイド部材12を取り付ける際にその高さを容易に調節できるように長孔状をなしている。
【0057】
図9(b)乃至図9(d)に示すように、第3の軸サポート11は、複数本のアングル材によって側面視L字状をなすように形成されており、アンカーを打ち込むための固定孔11aが下面に設けられるとともに、ガイド部材12をボルト固定するためのボルト挿通孔11b,11bが上部に設けられている。なお、ボルト挿通孔11bは、ガイド部材12を取り付ける際にその高さを容易に調節できるように、上下方向へ長く形成されている。
図9(e)乃至図9(g)に示すように、ガイド部材12は、ナイロン製のガイドローラ31と、このガイドローラ31を回転可能に支持するステンレス製の支持部材32によって構成されている。また、支持部材32には、ボルト挿通孔32a,32aが設けられている。
【0058】
蓋栓63の開閉機構にワイヤを用いる場合、蓋栓63を閉じる際にワイヤを介してシリンダ等の駆動力を蓋栓に伝達することができないため、蓋栓63を開く機構とは別に蓋栓を閉じる機構を設ける必要がある。これに対し、排水装置1aでは、電動シリンダ2の駆動力が金属製の開閉軸3を介して蓋栓63に伝達されることから、蓋栓63の開閉機構がワイヤを用いる場合よりもシンプルな構造になる。したがって、設置や維持管理が容易である。
【0059】
ここで、排水装置1aの変形例について図10及び図11を用いて説明する。図10(a)は排水装置1aの変形例の正面図であり、図10(b)は図10(a)におけるD−D線矢視断面図である。また、図11図10(a)におけるE−E線矢視断面図である。
なお、図10及び図11では、排水装置1aの変形例に係る排水装置1cについて、リンク機構57と軸体55と架台56以外の構成要素については図示を省略している。さらに、図11では、他の部材と識別し易いように、軸体の断面形状を表示する代わりに、その外観を表示している。
【0060】
先に述べた排水装置1aは、貯水池60の堤体62の内部に形成された管路64の開口端64aに対して、水平な軸を中心として回転可能に取り付けられた蓋栓63を開閉するものであるのに対し、図10及び図11に示した排水装置1aの変形例に係る排水装置1cは、管路64の開口端64aに上方から差し込まれるようにして設置される蓋栓70を開閉するものである。
図10及び図11に示すように、排水装置1cは、排水装置1aにおいて、ストレーナ7の代わりに、蓋栓70の上面70aに垂直に立設される軸体55と、この軸体55を支持する架台56を備えるとともに、リンク機構5の代わりにリンク機構57を備えたことを特徴とする。
【0061】
軸体55は、円筒状又は円柱状をなす長尺部材からなり、その外周面の一部には、同形状の複数の歯55aが軸方向へ所定の長さに亘って等間隔に設けられている。
架台56は、管路64が形成されたコンクリート基礎65の上面65aに、所定の間隔を空けて設置される一対の脚部56a,56aと、この一対の脚部56a,56aによって支持されるとともに、軸体55の歯55aが形成されている部分の上下を鉛直方向へ移動可能に保持する一対の保持部56b,56bと、軸体55の歯55aに対して噛合するとともに、水平に配置された一対の回転軸56c,56cを中心として回転可能に両端がそれぞれ一対の脚部56a,56aに支持されるピニオン56dによって構成されている。
【0062】
排水装置1cに係るリンク機構57は、上述の排水装置1aにおけるリンク機構5において、第2の連結金具22の代わりに、ステンレスによって形成された短冊形の平板材からなる一対の第4の連結金具58,58を備えたことを特徴とする。この一対の第4の連結金具58,58は、平面視円弧状をなす基端58a,58aの近傍にそれぞれ設けられた一対の連結孔(図示せず)に連通された連結軸59を介して、回転可能に一対の第3の連結金具21,21の先端21b,21bに連結されるとともに、先端58b,58bが一対の回転軸56c,56cに対して回転不能にそれぞれ接続されている。
【0063】
管路64の開口端64aが蓋栓70によって閉塞されている場合に、開閉軸3(図1,5を参照)によって第1の連結金具20が図11に矢印Xで示す方向へ引っ張られると、ピニオン56dはリンク機構57の移動に伴って回転軸56c,56cを中心として矢印Fの向きに回動し、ピニオン56dに歯55aが噛合する軸体55は矢印Gで示すように移動する。その結果、軸体55に上面70aが接続された蓋栓70も鉛直上方へ移動し、管路64の開口端64aは開放された状態となる。
一方、管路64の開口端64aが開放されている場合、開閉軸3(図1,5を参照)によって第1の連結金具20が図11に矢印Xで示す方向と逆の方向へ押されると、ピニオン56dはリンク機構57の移動に伴って回転軸56c,56cを中心として矢印Fと逆の向きに回動し、ピニオン56dに歯55aが噛合する軸体55は矢印Gで示す方向と逆の方向へ移動する。その結果、軸体55に上面70aが接続された蓋栓70も鉛直下方へ移動し、管路64の開口端64aは閉塞された状態となる。
【0064】
上記構造の排水装置1cにおいては、電動シリンダ2がロッド2aを進退させる力の向きがリンク機構57によって鉛直方向に変換されるという作用を有する。したがって、排水装置1cでは、電動シリンダ2や開閉軸3の傾斜状態によらず、蓋栓70を電動シリンダ2によって効率よく開閉することができる。
なお、図10及び図11では、軸体55を丸棒としているが、軸体55は円筒体や断面が略多角形をなす中空又は中実の棒状体であっても良い。また、蓋栓70は略円柱状をなしているが、断面が略多角形をなす蓋栓についても同様に排水装置1cによって開閉することが可能である。ただし、その場合には、蓋栓を開閉する際に軸体55が円柱軸を中心として回転しないように、軸体55を断面が略多角形をなす中空又は中実の棒状体とするとともに一対の保持部56b,56bの内周面の断面形状を軸体55の断面形状と同じ略多角形とするか、あるいは蓋栓に対して鉛直方向以外の移動を規制するガイド機構を設けることが望ましい。
【0065】
また、図10及び図11では、先の図4に示す電動シリンダ2のロッド2aが後退した場合に第1の連結金具20が図11に矢印Xで示す方向へ引っ張られることで軸体55が上昇し、蓋栓70が開く構造となっているが、その代わりに、例えば、図11においてピニオン56dを軸体55の右側に配置することで、電動シリンダ2のロッド2aが前進した場合に第1の連結金具20が図11に矢印Xで示す方向と逆の方向へ押される結果、軸体55が上昇して蓋栓70が開く構造とすることもできる。
【0066】
図12はサイフォン式の排水装置1bの外観図である。また、図13(a)は図12に示したエア抜き機構35の拡大図であり、図13(b)は図12におけるH方向矢視図である。なお、図12では、電動ダンパ36と電磁弁42a,42bと給水ポンプ48を駆動するための電源や電源ケーブル及び各種のセンサに接続されたケーブルの図示を省略している。また、貯水池60の水位が上昇した場合の導管33と吸い込み部34の状態を破線で示している。
【0067】
図12に示すように、排水装置1bは、基端33aが貯水池60の水中に設置されるとともに先端33bが貯水池60の水面60aよりも低い箇所に配置されるように堤体62に跨設される導管33と、この導管33の基端33aに設置される吸い込み部34と、導管33の最頂部の近傍に設置されるエア抜き機構35と、このエア抜き機構35と導管33の先端33bの間に設置される電動ダンパ36を備えている。また、堤体62の頂部には、先端33bに向かって高さが次第に低くなるように導管33を傾斜した状態で支持するための支持部材37a,37bが設置されるとともに、導管33には、基端33aとエア抜き機構35の間に複数の浮き38aが取り付けられている。
なお、導管33は、基端33aとエア抜き機構35の間については可撓性を有する樹脂製のホースを用い、堤体62の頂部に配置される箇所及び堤体62の頂部から先端33bの間についてはそれぞれステンレス製の配管及び耐衝撃性に優れた硬質ポリ塩化ビニル製のホースを用いることが望ましい。
【0068】
図13(a)に示すように、エア抜き機構35は、導管33の内部の水位を検出するレベルセンサ39が内部に設置されるとともにその接続部39aが先端40aに設けられたセンサ保持管40と、このセンサ保持管40の側面40bから分岐するエア抜き管41と、このエア抜き管41の側面41aと先端41bにそれぞれ設置される電磁弁42a及び予備の電磁弁42bと、電磁弁42aに接続される逆止弁42cと、この逆止弁42cに取り付けられる接続継手管43を備えている。
浮き38aは、発泡スチロール製の一対の半円筒体からなり、図13(b)に示すように、導管33を両側から挟むように配置された後、外周面に取り付けられたステンレス製の固定バンド44,44によって一体化された状態で導管33に固定される構造となっている。
【0069】
図14(a)及び図14(b)はそれぞれ排水装置1bの吸い込み部34の正面図及び平面図である。また、図15(a)及び図15(b)はそれぞれホース接続管46の正面図及び下面図であり、図15(c)は固定台49の平面図である。
図14及び図15に示すように、吸い込み部34は、吸い込み口46a(図15(b)参照)にフート弁46cが設置され、導管33の基端33aに対して着脱可能に取り付けられるホース接続管46と、フート弁46cに近接するように設置されるとともに、逆止弁47aが設置された注水管47を通してホース接続管46の内部に貯水池60の水を供給する給水ポンプ48と、フート弁46cと給水ポンプ48が内部に設置されるストレーナ45と、発泡スチロール製の円筒体からなり、ストレーナ45が取り付けられている固定台49に対してステンレス製の固定バンド44,44を用いて固定される浮き38bを備えている。
ストレーナ45は、ステンレス製のパンチング板が短円筒状に形成されたものであり、固定台49に上面45a(図14(b)参照)がボルトを用いて固定されている。ホース接続管46は、吸い込み口46aに設けられたフランジ46b(図14(b)参照)が固定台49にボルトを用いて固定されており、フート弁46cは、このフランジ46bに対してボルトを用いて固定されている。
【0070】
上記構造の排水装置1bにおいては、給水ポンプ48を作動させてホース接続管46の内部に貯水池60の水を供給した場合、その水がホース接続管46の吸い込み口46aから排出されることをフート弁46cが防ぐという作用を有する。なお、電動ダンパ36とホース接続管46の吸い込み口46aの間の導管33の内部に満たされた水は、排水装置1bの呼び水として機能する。
また、電磁弁42aは、導管33の外部の空気がエア抜き管41を通って導管33の内部へ流入することを防ぐという作用を有する。すなわち、排水装置1bでは、電磁弁42bを備えていることから、逆止弁42cのみを備えている場合に比べて、エア抜き機構35がより確実に機能する。
【0071】
なお、給水ポンプ48に用いられるホースが導管33と別個に設けられている場合、導管33だけでなくホースも設置しなければならないため、導管33の設置場所が制限されてしまう。これに対し、排水装置1bでは、導管33の基端33aに接続されたホース接続管46に対し、その吸い込み口46aに近接するように設置された給水ポンプ48によって注水管47を介して呼び水を供給する構造であり、導管33と別個に給水ポンプ48のためのホースを設ける必要がないため、導管33の設置場所に対する制約が少ない。
また、導管33の上部に給水ポンプ48を設置して、導管33を利用してその基端33aから貯水池60の水を吸い上げる場合には、揚程が高いため、給水ポンプ48が大型で高価なものとなる。これに対し、排水装置1bでは、給水ポンプ48が導管33の基端33aの近傍に設置されており、揚程が低いことから、小型で安価なものを用いることができる。
【0072】
本発明の貯水池排水システムの構成について図16を参照しながら具体的に説明する。図16は本発明の貯水池排水システムの構成を示すブロック図である。なお、図1乃至図15に示した構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図16に示すように、本発明の貯水池排水システムは、前述の排水装置1a,1bに加え、排水装置1a,1bの動作を制御する制御ユニット50と、排水装置1bの導管33の水位及び流量と貯水池60の水位を検出する検出ユニット51と、排水装置1a,1bと制御ユニット50に電力を供給する電源ユニット52と、検出ユニット51によって検出された貯水池60の水位を監視するとともに、排水装置1a,1bを遠隔操作することによって貯水池60の水量を調整する監視装置53と、制御ユニット50と監視装置53の間でデータの送受信を行うための通信ユニット54を備えている。
【0073】
制御ユニット50は、電動シリンダ2にロッド2aを前進させる信号又は後退させる信号を送って排水装置1aを作動させる制御部50aと、操作盤(図示せず)からなり、制御部50aに対して各種の命令を与える入力部50bと、排水装置1a,1bの動作状況や検出ユニット51によって検出された結果を記憶する記憶装置50cを備えている。
検出ユニット51は、エア抜き機構35のセンサ保持管40の内部に設置されるレベルセンサ39の他、貯水池60の水面60aの近くに設置されて、水位の上昇の有無を検出する水位センサ51aと、基端33aの近傍に設置されて導管33から排出される水の量を検出する流量センサ51bを備えている
レベルセンサ39の接続部39aと制御ユニット50の制御部50aはケーブル(図示せず)によって接続されており、導管33の水位の検出結果はレベルセンサ39から制御部50aに随時送られる。また、水位センサ51aと流量センサ51bによる検出結果も図示しないケーブルを介して同様に制御ユニット50の制御部50aに随時送られる。なお、排水装置1a,1bの動作状況や検出ユニット51から制御ユニット50に送られた検出結果は、通信ユニット54を介して監視装置53にも送信される。
【0074】
電源ユニット52は、太陽光パネル52aと、この太陽光パネル52aによって発電された電気が蓄えられるバッテリ52cと、バッテリ52の蓄電量に応じて太陽光パネル52aからバッテリ52cに送られる電力を調節する充電コントローラ52bと、バッテリ52cから送り出される直流電流を交流電流に変換するインバータ52dを備えている。なお、バッテリ52cの電圧状態は、制御ユニット50に送られるとともに、通信ユニット54を介して監視装置53にも送信される。
監視装置53は、通信ユニット54を介して制御ユニット50から受け取った検出ユニット51による検出結果に基づいて排水装置1a,1bを作動させる指令信号を制御ユニット50に送信する制御部53aと、排水装置1a,1bの動作状況や検出ユニット51によって検出された結果及びバッテリ52cの電圧状態を表示する表示部53b及びそれらの情報を記憶する記憶装置53dと、制御部53aに対して各種の命令を与える入力部53cを備えている。
【0075】
このような構成の貯水池排水システムにおいては、管路64の開口端64aに取り付けられた蓋栓63が閉じている状態で、貯水池60の水位が予め定められたレベルを超えたことを示す検出結果を水位センサ51aから監視装置53が受け取った場合、制御部53aは、電動シリンダ2のロッド2aを後退させるような指令信号を制御ユニット50に送る。
制御ユニット50では、この指令信号に従って、制御部50aが排水装置1aの電動シリンダ2のロッド2aを後退させる。その結果、動作切換機構4と開閉軸3とリンク機構5を介して引っ張られるようにして蓋栓63が開放されるため、貯水池60の水は管路64を通って放水路61へ排出される。
【0076】
蓋栓63が開いている状態で、貯水池60の水位が予め定められたレベルを下回ったことを示す検出結果を水位センサ51aから監視装置53が受け取った場合、制御部53aは、電動シリンダ2のロッド2aを前進させるような指令信号を制御ユニット50に送る。
制御ユニット50では、この指令信号に従って、制御部50aが排水装置1aの電動シリンダ2のロッド2aを前進させる。その結果、動作切換機構4と開閉軸3とリンク機構5を介して押されるようにして蓋栓63が閉じられるため、貯水池60の水の放水路61への流出が停止する。
【0077】
また、センサ保持管40とエア抜き管41が導管33の最上部に配置されるように排水装置1bが設置された状態で、導管33の内部の水位が予め定められたレベルを下回っていることを示す検出結果を制御ユニット50がレベルセンサ39から受け取った場合、制御部53aは、電動ダンパ36を作動させて導管33の先端33bを閉塞した後、給水ポンプ48を作動させてホース接続管46に注水管47を介して貯水池60の水を所定量供給した後、外部の空気がエア抜き管41から導管33の内部へ流入しないように電磁弁42aを閉じさせる。これにより、電動ダンパ36とホース接続管46の吸い込み口46aの間の導管33の内部が常に呼び水で満たされた状態になる。
【0078】
上述の状態で、貯水池60の水位が予め定められたレベルを超えたことを示す検出結果を水位センサ51aから監視装置53が受け取った場合、制御部53aは、電動ダンパ36を作動させて導管33の先端33bを開放するような指令信号を制御ユニット50に送る。
制御ユニット50では、この指令信号に従って、制御部50aが電動ダンパ36を作動させて導管33の先端33bを開放する。その結果、サイフォンの原理により、貯水池60の水はホース接続管46の吸い込み口46aから吸い上げられて、導管33の先端33bから排出される。
なお、排水装置1bでは、前述のとおり、電動ダンパ36とホース接続管46の吸い込み口46aの間の導管33の内部が常に呼び水で満たされた状態となっているため、電動ダンパ36を作動させて導管33の先端33bを開放することにより、貯水池60の水を排出するという上述の機能が速やかに発揮される。
【0079】
一方、本発明の貯水池排水システムでは、貯水池60の水位が予め定められたレベルを下回ったことを示す検出結果を水位センサ51aから監視装置53が受け取った場合、制御部53aは、電動ダンパ36を作動させて導管33の先端33bを閉じるような指令信号を制御ユニット50に送る。
制御ユニット50では、この指令信号に従って、制御部50aが電動ダンパ36を作動させて導管33の先端33bを閉塞する。その結果、排水装置1bによる排水機能が停止する。
【0080】
以上説明したように、本発明の貯水池排水システムによれば、排水装置1a,1bの遠隔操作によって、貯水池60の水を排出することができるため、実際に現地に赴いて貯水池60の排水機構を操作する場合とは異なり、貯水池60の水量の調整を適切なタイミングで効率よく実施することが可能である。
また、排水装置1aが、水平な軸を中心として回転するようにして開閉する蓋栓63が開口端64aに設けられた管路64と、この管路64が接続された放水路61からなる既設の排水機構を利用するものであるため、本発明の貯水池排水システムは、低コストで運用することが可能である。
【0081】
なお、本発明の貯水池排水システムでは、貯水池60の水位が予め定められたレベルを超えていなくとも、水位センサ51aから監視装置53に送られた貯水池60の水位の検出結果を表示部53bで確認した作業者が、入力部53cを操作して、排水装置1a,1bを作動させる指令信号を制御ユニット50に送信させるような命令を制御部53aに対して与えることによっても、貯水池60の水量を調整することができる。また、作業者は、監視装置53を用いる代わりに、制御ユニット50の入力部50bから直接、制御部50aに対して排水装置1a,1bを作動させる命令を与えることもできる。
すなわち、本発明の貯水池排水システムでは、監視装置53による遠隔操作に加え、現地で排水装置1a,1bを自動又は手動によって直接操作することも可能となっている。
【0082】
なお、排水装置1aの代わりに変形例に係る排水装置1cを用いた場合、電動シリンダ2によって開閉される蓋栓の構造のみが異なるだけで、上述した本発明の貯水池排水システムにおける作用及び効果は排水装置1aを用いた場合と同様に発揮される。
また、本実施例では、排水装置1aに電動シリンダ2や電動ダンパ36を用いているが、本発明の貯水池排水システムは、このような構造に限定されるものではない。例えば、電動シリンダや電動ダンパの代わりに油圧シリンダやエアシリンダや油圧ダンパやエアダンパを用いることもできる。このように油圧シリンダやエアシリンダや油圧ダンパやエアダンパを用いた場合であっても、上述した本発明の貯水池排水システムにおける作用及び効果は、電動シリンダや電動ダンパを用いた場合と同様に発揮される。
さらに、図5(g)や図10(b)には、第3の連結金具21や第4の連結金具58をそれぞれ一対ずつ備えた構造が示されているが、このような構造に限定されるものではなく、本発明の貯水池排水システムでは、第3の連結金具21や第4の連結金具58が一つずつ設けられた構造であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0083】
請求項1乃至請求項8に記載された発明は、長雨や集中豪雨によって複数の貯水池の水量が増加した場合などのように、それらの貯水池の排水作業を同時に効率よく行う必要がある場合に特に有用である。
【符号の説明】
【0084】
1a〜1c…排水装置 2…電動シリンダ 2a…ロッド 3…開閉軸 3a…基端 3b…先端 3c…ターンバックル 3d…切り欠き 4…動作切換機構 5…リンク機構 6…シリンダカバー 6a…天板 6b…側板 6c…背面板 6d…ボルト挿通孔 7…ストレーナ 8…架台 8a…ボルト挿通孔 9…第1の軸サポート 9a…脚部 9b…取付部 9c…固定孔 9d…ボルト挿通孔 10…第2の軸サポート 10a…固定孔 10b…ボルト挿通孔 11…第3の軸サポート 11a…固定孔 11b…ボルト挿通孔 12…ガイド部材 13…スライド板 13a…基端 13b…先端 13c…把持部 13d…切り欠き 13e…挿通孔 13f…位置決め孔 14…保持ケース 14a…基端 15…取付板 15a…ネジ孔 16…側板 16a…ガイド孔 16b〜16d…位置決め孔 16e…貫通孔 17…底板 18a…ガイドピン 18b…位置決め部材 19…連結片 20…第1の連結金具 20a…基端 20b…先端 20c…連結孔 21…第3の連結金具 21a…基端 21b…先端 21c,21d…連結孔 22…第2の連結金具 23…連結板 23a…基端 23b…先端 23c,23d…連結孔 24…取付板 24a…ボルト挿通孔 25a〜25c…締結具 26…補強板 26a…先端 27…本体部 28…アングル材 29…背面板 29a,29b…切り欠き 30…取付板 30a…ボルト挿通孔 31…ガイドローラ 32…支持部材 32a…ボルト挿通孔 33…導管 33a…基端 33b…先端 34…吸い込み部 35…エア抜き機構 36…電動ダンパ 37a,37b…支持部材 38a,38b…浮き 39…レベルセンサ 39a…接続部 40…センサ保持管 40a…先端 40b…側面 41…エア抜き管 41a…側面 41b…先端 42a,42b…電磁弁 42c…逆止弁 43…接続継手管 44…固定バンド 45…ストレーナ 45a…上面 46…ホース接続管 46a…吸い込み口 46b…フランジ 46c…フート弁 47…注水管 47a…逆止弁 48…給水ポンプ 49…固定台 50…制御ユニット 50a…制御部 50b…入力部 50c…記憶装置 51…検出ユニット 51a…水位センサ 51b…流量センサ 52…電源ユニット 52a…太陽光パネル 52b…充電コントローラ 52c…バッテリ 52d…インバータ 53…監視装置 53a…制御部 53b…表示部 53c…入力部 53d…記憶装置 54…通信ユニット 55…軸体 55a…歯 56…架台 56a…脚部 56b…保持部 56c…回転軸 56d…ピニオン 57…リンク機構 58…第4の連結金具 58a…基端 58b…先端 59…連結軸 60…貯水池 60a…水面 61…放水路 62…堤体 63…蓋栓 63a…ボルト孔 63b…上面 64…管路 64a…開口端 65…コンクリート基礎 65a…上面 66…蓋開閉機構 67…軸体 68…保持部材 69…連結部材 70…蓋栓 70a…上面
【要約】
【課題】設置や維持管理が容易であるとともに、低コストで運用することが可能な貯水池排水システムを提供する。
【解決手段】本発明の貯水池排水システムは、シリンダ式の排水装置1aとサイフォン式の排水装置1bに加え、これらの排水装置1a,1bの動作を制御する制御ユニット50と、排水装置1bの導管の水位及び流量と貯水池の水位を検出する検出ユニット51と、排水装置1a,1bと制御ユニット50に電力を供給する電源ユニット52と、検出ユニット51によって検出された貯水池の水位を監視するとともに、排水装置1a,1bを遠隔操作して貯水池の水量を調整する監視装置53と、制御ユニット50と監視装置53の間でデータの送受信を行うための通信ユニット54を備えている。
【選択図】図16
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16