特許第6583954号(P6583954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6583954
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】展示装置および映像展示方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/22 20060101AFI20190919BHJP
   G09F 19/18 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   G02B27/22
   G09F19/18 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-2407(P2015-2407)
(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公開番号】特開2016-126285(P2016-126285A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】十二 紀行
【審査官】 佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−238492(JP,A)
【文献】 特開2009−049007(JP,A)
【文献】 特表2009−521005(JP,A)
【文献】 特開平05−249428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00−27/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間に映像を結像させる下記(A)の表示手段と、所定の立体形状を有するとともに映像の光を反射可能な表面色を有する展示用物体に対して映像を投影する投影手段とを備える展示装置であって、
下記(A)の表示手段の結像光学素子が、下記(A)の表示手段の筐体上面に設けられた開口部に配設され、その開口部の周囲の筐体上面の領域に、上記展示用物体が配置され、かつ下記(A)の表示手段が所定位置に位置決めされており、
上記投影手段が、下記(A)の表示手段の筐体上面より上方の位置に配置され、表示手段により結像された空間2次元映像の周りの筐体上面の所定の領域に載置された上記展示用物体に対して所定の映像を投影可能な状態に位置決めされており
記表示手段および投影手段の少なくとも一方が、上記表示手段による空間2次元映像の表示と上記投影手段による筐体上面に載置された上記展示用物体への映像の投影とを連動させて制御する映像同期手段を備えていることを特徴とする展示装置。
(A)ディスプレイと結像光学素子とこれらを収容する筐体とを備え、この筐体の上面に光透過状に配設された結像光学素子を介して、上記結像光学素子の下側に所定角度傾斜して配設されたディスプレイの表示面に表示された映像を、上記筐体上面の上側の空間位置に、斜め状に立ち上がる空間2次元映像として結像させる表示手段。
【請求項2】
上記表示手段(A)が、鑑賞者が見下ろすことのできる位置に、鑑賞者側から見て手前側に向かって斜め状に立ち上がる空間2次元映像を結像させるよう位置決めされており、
上記投影手段が、床面から190〜300cmの高さで、上記表示手段(A)の筐体上面に設けられた開口部よりも鑑賞者側から見て手前側の位置に、昇降可能に配設され、かつ上記投影手段による投影の光軸が垂線に対して5〜45°鑑賞者側から見て奥側に傾けた状態となるよう位置決めされている請求項1記載の展示装置。
【請求項3】
上記ディスプレイが、携帯電話または携帯情報端末の表示部である、請求項1または2記載の展示装置。
【請求項4】
空間に映像を結像させる下記(A)の表示手段と、所定の立体形状を有するとともに映像の光を反射可能な表面色を有する展示用物体に対して映像を投影する投影手段とを備え、
下記(A)の表示手段の結像光学素子が、下記(A)の表示手段の筐体上面に設けられた開口部に配設され、その開口部の周囲の筐体上面の領域に、上記展示用物体が配置され、
上記投影手段が、上記展示用物体の表面に、その立体形状に対応した映像を投影するようになっており、
下記(A)の表示手段より上方の位置に配置された上記投影手段から、所定位置に位置決めされた下記(A)の表示手段の筐体の上面に向けて、この表示手段により結像された空間2次元映像とは異なる所定の映像を投影し、かつ、上記表示手段による空間2次元映像の表示と、上記投影手段による筐体上面に載置された上記展示用物体への映像の投影とが、同期して行われるようになっていることを特徴とする映像展示方法。
(A)ディスプレイと結像光学素子とこれらを収容する筐体とを備え、この筐体の上面に光透過状に配設された結像光学素子を介して、上記結像光学素子の下側に所定角度傾斜して配設されたディスプレイの表示面に表示された映像を、上記筐体上面の上側の空間位置に、斜め状に立ち上がる空間2次元映像として結像させる表示手段。
【請求項5】
上記表示手段(A)を、鑑賞者が見下ろすことのできる位置に、鑑賞者側から見て手前側に向かって斜め状に立ち上がる空間2次元映像を結像させるよう位置決めするとともに、
上記投影手段を、床面から190〜300cmの高さで、上記表示手段(A)の筐体上面に設けられた開口部よりも鑑賞者側から見て手前側の位置に、昇降可能に配設し、かつ上記投影手段による投影の光軸が垂線に対して5〜45°鑑賞者側から見て奥側に傾けた状態となるよう位置決めする、
請求項4記載の映像展示方法。
【請求項6】
上記ディスプレイとして、携帯電話または携帯情報端末の表示部を用いる請求項4または5記載の映像展示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の上に浮かび上がるように、奥行き感のある空間2次元映像を表示することのできる展示装置および映像展示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、これまでに、パネル状の結像光学素子と、フラットパネル型のディスプレイとを用いて、上記ディスプレイの表示面に表示された映像(動画や静止画等)の投影像が、結像光学素子の上側の空間に浮かび上がった状態で、空間2次元映像として結像する表示装置を提案している(特許文献1を参照)。
【0003】
上記表示装置は、図5に示すように、結像機能を有する結像光学素子(マイクロミラーアレイM)と、映像を表示するフラットパネルディスプレイ(ディスプレイD)と、これらを収容するケースCまたは開放形のハウジング等とを主体として構成されており、上記マイクロミラーアレイMは、上記ケースCの上面(天板部)に設けられた開口に、光透過状に取り付けられている。
【0004】
また、ディスプレイDは、上記マイクロミラーアレイMの下側に、その表示面DaをマイクロミラーアレイMの下面Mbに対して所定角度α(30°以上90°未満)傾けた状態で、載置台Fにより支持されており、このディスプレイDの表示面Daに表示された映像I(発せられた光:二点鎖線)が、上記マイクロミラーアレイMを透して、アレイMに対して面対称の位置となるマイクロミラーアレイMの上側(上面Maの上方)の空間に、斜め状に立ち上がる2次元映像(空間像I’)として結像するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−115606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような表示装置は、装置筐体の上側に空間2次元映像(空間像)が浮かび上がるものであるため、家庭等における個人利用においては、従来のLCD,PDP,有機EL等の表示装置に比べ、強い印象とインパクトを与えるものである。しかしながら、店頭や展示会等での広告展示(デジタルサイネージ)やプレゼンテーション等での商用利用を考えた場合、広い空間(スペース)で展示等がなされるため、そのインパクトやアイキャッチ力を向上させる必要がある。
【0007】
また、上記店頭での広告展示や商品陳列・販売等の分野で用いられる展示装置(映像展示装置)についても、上記のような広告として、表示(空間像)だけを単独で使用するよりも、実際の商品(物品または展示物等)と一体的に展示して、連携してアピールすることができれば、その広告効果も高まると考えられる。このような点で、従来の表示装置や展示装置は改良の余地がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、空間像と投影像という2つのイメージを組み合わせて使用することにより、印象深く効果的な演出を行うことのできる展示装置および映像展示方法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、空間に映像を結像させる下記(A)の表示手段と、物体に対して映像を投影する投影手段とを備え、上記表示手段が所定位置に位置決めされ、上記投影手段が、下記(A)の表示手段の筐体上面より上方の位置に配置され、表示手段により結像された空間2次元映像の周りの筐体上面の所定の領域に対して所定の映像を投影可能な状態に位置決めされている展示装置を、第1の要旨とする。
【0010】
(A)ディスプレイと結像光学素子とこれらを収容する筐体とを備え、この筐体の上面に光透過状に配設された結像光学素子を介して、上記結像光学素子の下側に所定角度傾斜して配設されたディスプレイの表示面に表示された映像を、上記筐体上面の上側の空間位置に、斜め状に立ち上がる空間2次元映像として結像させる表示手段。
【0011】
また、本発明は、空間に映像を結像させる上記(A)の表示手段と、物体に対して映像を投影する投影手段とを備え、表示手段より上方の位置に配置された投影手段から、所定位置に位置決めされた上記(A)の表示手段の筐体の上面に向けて、この表示手段により結像された空間2次元映像とは異なる所定の映像を投影する映像展示方法を、第2の要旨とする。
【0012】
すなわち、本発明者は、前記課題を解決するため研究を重ね、その結果、表示手段により投影される空間像(空間2次元映像)の周りの少なくとも一部に、これに関連する別の映像をプロジェクタから投影し、これらを連携させることによって、上記映像展示の広告効果(インパクトやアイキャッチ力等)を、飛躍的に高められることを見出し、本発明に到達した。また、本発明者は、上記空間像の周囲で、かつ、上記別の映像を投影する領域(表示手段の筐体上面)に、空間像との間に両眼視差を生み出す立体物(展示用物体)を載置し、この立体物の表面に上記別の映像を投影すれば、上記空間像の奥行き感(疑似立体感)が増して、より印象的で、より効果的な演出を行うことが可能なことも見出した。
【発明の効果】
【0013】
本発明の展示装置は、ディスプレイに表示された映像を結像光学素子の上側の空間位置に斜め状に立ち上がる空間2次元映像として結像させる表示手段と、物体に対して映像を投影する投影手段とを備え、上記表示手段が所定位置に位置決めされ、上記投影手段が、上記表示手段の筐体上面より上方の位置に配置され、表示手段により投影された空間2次元映像の周りの筐体上面に対して、上記空間2次元映像に関連する所定の映像を投影可能な状態に位置決めされている。これにより、本発明の展示装置は、上記空間2次元映像(すなわち、ディスプレイに表示された映像)を、その周囲に投影された映像との対比から、その存在がより強調された、奥行き感に富む、臨場感豊かな空間像として、表示手段の上側に表示することができる。
【0014】
すなわち、上記展示装置は、その展示を、上記空間像と投影による映像とが一体となった、見る者に強いインパクトを与える、アイキャッチ力の高いものとすることができるとともに、広告展示やプレゼンテーション等の商用利用においても、目的とする展示を、特に印象深い効果的な演出とすることが可能になる。
【0015】
また、本発明の展示装置のなかでも、上記表示手段の結像光学素子が、上記筐体上面に設けられた開口部に配設され、その開口部の周囲の筐体上面の領域に、所定の立体形状を有する展示用物体が配置されているものは、この展示用物体と上記空間像との間に大きな両眼視差が発生する。そのため、上記空間像の奥行き感や臨場感を、より向上させることができる。
【0016】
そして、本発明の展示装置のなかでも、特に、上記表示手段および投影手段の少なくとも一方が、表示手段による空間2次元映像の表示と投影手段による筐体上面への映像の投影とを連動させて制御する映像同期手段を備えるものは、これらの展示を、一体感を持って連動する展示とすることができる。これにより、上記展示を、より印象深く、より効果的な演出で行うことが可能になる。
【0017】
つぎに、本発明の映像展示方法は、ディスプレイに表示された映像を結像光学素子の上側の空間位置に斜め状に立ち上がる空間2次元映像として結像させる表示手段と、物体に対して映像を投影する投影手段とを備え、表示手段より上方の位置に配置された投影手段から、所定位置に位置決めされた表示手段の筐体の上面に向けて、この表示手段により結像された空間2次元映像とは異なる所定の映像を投影する、映像展示方法である。この映像展示方法によれば、その展示を、上記空間像と投影による映像とが一体となった、見る者に強いインパクトを与える、アイキャッチ力の高いものとすることができる。また、その展示を、特に印象深い効果的な演出で行うことが可能になる。
【0018】
また、本発明の映像展示方法のなかでも、上記表示手段の結像光学素子が、上記筐体上面に設けられた開口部に配設され、その開口部の周囲の筐体上面の領域に、所定の立体形状を有する展示用物体が配置され、上記投影手段が、上記展示用物体の表面に、その立体形状に対応した映像を投影するようになっている場合は、上記展示用物体と空間像との間に両眼視差が発生するため、上記空間像の奥行き感や臨場感を、より一層向上させることができる。
【0019】
さらに、本発明の映像展示方法のなかでも、特に、上記表示手段による空間2次元映像の表示と、投影手段による筐体上面への映像の投影とが、同期して行われるようになっている場合は、これらの展示を、一体感を持って連動させて展示することが可能で、上記展示を、より印象深い効果的な演出で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態における映像展示方法を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態における展示装置の構造を示す断面図である。
図3】上記展示装置における表示手段の外観斜視図である。
図4】本発明の展示装置の表示手段に用いられるマイクロミラーアレイの構成を説明する図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組み立て後の外観斜視図である。
図5】従来の表示装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の展示装置を用いた映像展示方法を示す説明図であり、図2は、本発明の実施形態における展示装置の構造を示す断面図である。なお、各図では、本発明の展示装置の要部構造のみを簡潔に説明するために、ケース,ハウジング等の筐体の一部や、配線,電装品等の部品の図示を省略している。また、ディスプレイDの表示面Daに表示される「映像I」や、その投影像である「空間像I’」は、分かり易いように厚みを誇張して描いており、出射された光(光線)を二点鎖線で表示している。
【0023】
本実施形態における映像展示は、図1に示すように、展示台S等の上面に設けられた展示面の所定地位に載置された表示手段Bと、映像を投影する投影手段であるプロジェクタPとを備える展示装置を用いてなされる。すなわち、その映像展示方法は、上記表示手段Bの上側の空間に、空間2次元映像(空間像I’)を投影・結像させた状態で、この表示手段Bの上面に向けて、上方に設置されたプロジェクタPから、表示手段Bにより表示された映像(空間像I’)とは異なる、空間像I’に関連する映像(光線:二点鎖線)を投影する展示方法である。これにより、上記空間像I’を、奥行き感に富む、臨場感豊かな空間像として表示することができる。
【0024】
なお、図中の符号Dはフラットパネルディスプレイ(ディスプレイ)を、Mは結像光学素子(マイクロミラーアレイ)を、Fは上記ディスプレイDの載置台を、Hはこれらを収納する筐体(ハウジング)を示す。また、O,O,Oは、上記ハウジングHの上面に載置されたオブジェクト群(以下、総称を「オブジェクトO」とする)である。
【0025】
上記映像展示方法に用いるに展示装置について、詳しく説明すると、展示台S等に載置される表示手段Bは、図2の断面図に示すように、パネル状のマイクロミラーアレイ結像光学素子(以下「マイクロミラーアレイM」または単に「アレイM」という)と、LCD等のフラットパネルディスプレイ(以下、ディスプレイD)と、このディスプレイDを上記アレイMの下側(ハウジングHの内側)で斜め傾斜状に支持するディスプレイ載置台Fと、これらを収容するハウジングH等とから構成されている。なお、白抜き矢印Eは、この表示手段Bを見る人(鑑賞者)の視線を表す。
【0026】
上記表示手段Bを構成するハウジングHは、円板状の底部3と、それを囲う状態で設けられた側部2とからなる有底円筒状のハウジング本体と、このハウジング本体の上面開口を蓋する蓋体(天板部1:図3参照)とから構成されている。上記天板部1の中央には、円形状の開口部1a(丸穴)が設けられており、この開口部1aの下側(内部側)に、図2に示すように、取り付け部材6を用いて上記マイクロミラーアレイMが取り付けられている。
【0027】
また、上記ハウジングHの内部には、ディスプレイDを所定位置に固定(載置)するためのディスプレイ載置台Fが配設されている。このディスプレイ載置台Fは、ディスプレイDを載置するための板状部材4と、この板状部材4を支持するフレーム5等とからなり、ハウジングHの底部3の所定位置に載置されている。上記板状部材4は、上記ハウジングHの底部3(ハウジング内側面)およびマイクロミラーアレイMの下面Mbに対して所定角度α傾いた状態で、上記フレーム5等に支持・固定されており、その上側面が、ディスプレイDの載置面となっている。
【0028】
そして、このディスプレイDの載置面上に、スマートフォン等のLCD画面を備える機器を載置することにより、この機器が備えるディスプレイDの表示面Daが、マイクロミラーアレイMの下面Mbに対してα°傾いた状態で保持されるようになっている。なお、ハウジングH内における上記ディスプレイ載置台Fの、マイクロミラーアレイMの下面Mbに対する傾斜角αは、上記アレイMによる結像が最適となるように調整されており、通常30°以上90°未満、好ましくは40°以上80°以下の範囲に設定される。
【0029】
上記ディスプレイ載置台F上に載置され、映像Iの表示に用いられるディスプレイDの例としては、バックライトを備える液晶表示パネル(LCD)の他、プラズマディスプレイパネル,有機EL表示パネル等、全可視光波長にわたってなるべく偏りのない「白色」と、非表示時の「黒色」とを、コントラスト良く再現できるディスプレイパネルを使用することが望ましい。
【0030】
また、ディスプレイDは、携帯電話または携帯情報端末等の表示部であってもよく、具体的には、上記ディスプレイDとして、スマートフォン,タブレット,タブレット型PC,デジタルフォトフレームや、携帯型ゲーム機,携帯型ブックリーダー,PDA,電子辞書等のうち、表示面Daが常時露出する(カバーされていない)タイプのなかで、その表示面Daの寸法が、上記マイクロミラーアレイMの大きさ(平面形状)に対応するサイズのものを使用することができる。なお、本発明の表示手段Bに用いられるディスプレイDは、その表示(空間像I’の投影)と、後記のプロジェクタPによるハウジングH上面への映像の投影とを連動させて制御する映像同期手段(同期信号を受信する受信手段と映像も再生を制御するプログラムの一部)とを備えている。
【0031】
そして、上記ハウジングHの天板部1の開口部1aの下側(裏面側)に配設され、ディスプレイDに表示された映像Iの投影(結像)に用いられる結像光学素子(マイクロミラーアレイM)としては、フレネルレンズ等を含む各種レンズや、アフォーカル光学系のマイクロミラー,コーナーリフレクタ等の屈折型結像素子を用いることができる。なかでも、本発明の実施形態においては、後記の図4(a),(b)に示すような、ハウジングH上面に対して面対称の位置に像を結ぶ、マイクロミラーアレイM(2枚の光学素子からなるコーナーリフレクタアレイ)が好適に使用される。このマイクロミラーアレイMは、任意の取り付け部材6(図2参照)等により、鑑賞者の視点に対して略水平になるように配設される。
【0032】
つぎに、本実施の形態の表示手段BのハウジングHの上面(天板部1の上面)には、上記天板部1の開口部1aを除く、開口部1aの周囲に、図3に示すような、空間像I’の奥行き感や臨場感を補強するための展示用物体(オブジェクトO:図2におけるO,O,O,・・・等)が複数個載置されている。そして、このハウジングHの天板部1から距離を空けた上方(図1参照)には、上記オブジェクトO(オブジェクト群)に向けて、空間像I’に関連する映像を投影するためのプロジェクタPが配置されている。
【0033】
上記ハウジングHの上面に載置される各オブジェクトO,O,O,・・・等としては、黒色等の暗色を除く、上記プロジェクタPから投影される映像の光を反射可能な表面色を有するものであれば、特にその立体形状(表面形状)に制約はなく、どのような形状のものでも使用することが可能である。しかしながら、前記のような上方からのプロジェクタPによる映像の投影を考慮すると、この投影光により展示用物体の表面に陰影(影)ができることは、映像表現の妨げとなるおそれがある。そのため、本発明における上記各オブジェクトO,O,O等の好適な形状としては、図3に示すような、奥側に配置した円錐形,角錐(多角錘)形や、手前側に配置した山形,丘(丘陵)形等のなだらかな形状、または反対に凹状となる池形や湖形等、上記上方のプロジェクタPから光を受けた際も影を作りにくい形状が好ましく、少なくとも、図3のように、鑑賞者側(手前側)から見て、プロジェクタPの投影光による影を生じない形状および色(できれば白色や淡色等)であることが望ましい。なお、「影」が必要な場合は、映像上の暗部または黒色部として、投影により意図的に作成・表現することができる。
【0034】
また、前記のようなソリッドモデルの他、上面に載置されるオブジェクトとして、木や森等を模したプラスチック・モデルや、ミニカー,食玩,動物や植物を模したフィギュア等を、上記ハウジングHの天板部1上に配置して、この天板部1上にジオラマを構成するようにしてもよい。さらに、商業利用の場合、この天板部1上に、特定のキャラクターや商品,商品模型等を用いた展示・陳列等を行ってもよい。
【0035】
つぎに、上記表示手段Bの上面に対して映像を投影するための投影手段(プロジェクタP)は、図1に示すように、上記表示装置の上面位置(天板部1の上面:図中の水平線L)より上側で、かつ、上記表示装置の開口部1a(空間像I’の表示位置:図中の垂線L)より前側(鑑賞者の手前側:図示左側)の位置に、昇降可能に配設されている。
【0036】
このように、上記位置にプロジェクタPを配置し、その投影の光軸(一点鎖線X)を表示手段Bの奥側に(この場合、垂線Lに対して角θが約5〜45°程度)傾けて、上記位置から天板部1上に載置された各展示用物体(オブジェクトO)に向けて映像を投影することにより、先にも述べたように、この投影光による展示用物体表面の陰影の発生を防止することができる。また、これらオブジェクトO自体による影は、鑑賞者から見えにくい、奥側に向かって生じることとなる。なお、上記プロジェクタPの配置される高さ(床面からの高さ)は、人の身長や天井高等を考慮して、通常190〜300cm程度、好ましくは200〜250cmの範囲内に設定される。
【0037】
また、このプロジェクタPは、前記ディスプレイDと同様、ディスプレイDの表示と連動・同期して映像を投影できる映像同期手段として、同期信号を受信する受信手段および光源と投影(シャッター)を制御するプログラムの一部等を有している。上記プロジェクタP(内蔵)の光源としては、ハロゲンランプやLED等を用いることが可能で、プロジェクタPの上下位置は、昇降機構により、投影範囲が上記天板部1の上面とほぼ同じ大きさか、あるいはその上面からはみ出ない範囲に投影されるように調節される。
【0038】
さらに、プロジェクタPから投影される映像は、内蔵の記録媒体または外部の再生機器等から供給され、前記表示手段Bから投影される空間像I’との干渉を避けてこの空間像I’を鮮明に表示できるように、天板部1の開口部1aに対応する位置が、黒い画像(すなわち、その部分に光を投射しないよう)になっている。
【0039】
そして、上記表示手段Bが載置される展示台Sの上面(表示手段Bの周囲)と、その奥側等の周囲に立設された衝立Tや壁(壁面)等は、上記天板部1の上面からはみ出した映像が鑑賞者の目に入りにくく、上記空間像I’および投影像が視認し易いように、表面が黒色あるいは暗色の素材または塗装等が使用されている。
【0040】
つぎに、上記実施の形態の展示装置で用いられる、マイクロミラーアレイMについて説明する。
【0041】
結像機能を有するマイクロミラーアレイMは、図4(a)に示すように、アクリルやガラス等からなる透明な基板の表面に、回転刃を用いたダイシング加工により、互いに平行な複数本の直線状溝が所定の間隔で形成された2枚の光学素子〔単体、図4(a)における上下それぞれ〕)を、各光学素子の直線状溝の延びる方向が平面視互いに直交するように、各光学素子における直線状溝が形成された「おもて面」どうしが当接した態様で重ね合わせ、一組として構成されている〔図4(b)参照〕。
【0042】
上記マイクロミラーアレイMの構造について、より詳しく説明すると、上記図4(b)に示すマイクロミラーアレイMは、図4(a)に示す光学素子(10,10’)を重ねて構成されている。各光学素子を構成する基板10,10’(溝10g,10’g形成前の基板)は、直線状の溝10g,10’gを彫り込み加工するための基体であり、例えばガラスやアクリル樹脂等、可視光の透過率が80%以上の材料から形成されている。
【0043】
この基板10,10’は、通常、一定の厚みを有する硬質な板状(厚さ0.5〜10.0mm程度)で、その上面(おもて面10a,10’a)に、ダイシング加工により、上記直線状の各溝10g,10’gが彫り込み形成される。上記直線状の溝10gとそれに隣接する溝10gとの間の、溝が彫り込み形成されなかった基板表面部分は、隣接する溝の形成により、基板10,10’の一面に向けて突出する凸部(凸条部または凸条部位)となっている。また、上記各溝10g,10’gの彫り込みが到達していない平板状部位は、各溝10g,10’gの間に彫り残して形成される上記凸条部の支持基台となっている。
【0044】
なお、上記基板10,10’上の溝10g,10’gは、ダイシング加工機等の回転刃(切削加工)により形成されるもので、基板10,10’の加工対象面(おもて面)に、一方向に所定の間隔(ピッチ)で、かつ、互いに平行になるように形成されている。そして、これらの溝10g,10’gを構成する側面(壁面)は、上記回転刃を用いたダイシング加工により形成されるため、光反射性の垂直面(鏡面)に形成される。
【0045】
また、ダイシングブレード等を用いた彫り込み加工により得られる溝10g,10’gは、上記ブレードの厚さ(回転刃端面間の全厚)にもよるが、通常、0.015mm(15μm)〜0.3mm(300μm)程度の厚さのブレードを使用した場合、溝幅が約20〜350μmで、溝深さが約50〜500μm程度の溝10g,10’gが形成され、これらの溝10g,10’gが形成されていない残りの領域(凸条部)は、幅が約50〜300μmで、高さが約50〜500μm(溝の深さと同一)の平行なリブ状となっている。
【0046】
そして、上記直線状の各溝10g,10’gが形成された2枚の基板10,10’は、一方の基板10’を下側の他方の基板10に対して水平に90°回転させた状態(すなわち、下側の基板10と上側の基板10’における「溝」の延長方向の位相が90°異なる状態)で、これらの基板10,10’を重ね合わせることにより、図4(b)に示すマイクロミラーアレイMが形成される。
【0047】
なお、重ね合わせの際、上記のように下側の基板10と上側の基板10’における溝方向の位相が90°異なることから、同じ形状に形成された基板10と基板10’の各溝10g,10’gは、その連続方向が平面視互いに直交する配置〔立体的には「ねじれの位置」〕になる。この状態において、上記各マイクロミラーアレイMを基板表裏方向(上下方向)から見た場合、上側の基板10’の各溝10’gと下側の基板10の各溝10gとが、平面視互いに直交する格子状になっており、これらの交差箇所それぞれに、上側の基板10’の各溝10’gの光反射性の垂直面(第2の鏡面)と、下側の基板10の各溝10gの光反射性の垂直面(第1の鏡面)とからなるコーナーリフレクタ〔上下方向に離間した2面コーナーリフレクタ〕が形成される。
【0048】
この構成により、上記マイクロミラーアレイMは、図2(および図5)のように、このアレイMの一面側にある映像Iを、他面側の面対象位置に、正立の空間像I’として結像することができる。
【0049】
なお、マイクロミラーアレイの構成としては、上記各光学素子における直線状溝が形成されたおもて面どうしが当接した状態で重ね合わせる態様(上記アレイM)の他、直線状溝が形成されたおもて面10aと、形成されていない裏面10’bを当接させ、これら基板10,10’どうしを上下に重ね合わせる態様、または、直線状溝が形成されていない裏面(10b,10’b)どうしが当接した状態で重ね合わせる態様としても、同様の機能を有する結像光学素子を得ることができる。
【0050】
さらに、使用する結像光学素子(マイクロミラーアレイ)は、1枚の基板10(光学素子)の上側のおもて面10aおよび下側の裏面10bに、それぞれ、前記の回転刃等を用いたダイシング加工により、互いに平行な直線状(おもて面10aと裏面10bの溝方向の位相は90°異なる)を形成する構成としてもよい。
【0051】
本実施の形態の展示装置に用いる結像光学素子としては、これらの態様のマイクロミラーアレイのうち、いずれを用いても差し支えないが、なかでも、図4(b)に示すマイクロミラーアレイMが、アレイMの溝内への埃等の付着を防ぐ観点から、最も好適に使用される。
【0052】
上記展示装置を用いた映像展示は、まず、上面(開口部1aの周囲のハウジングH上面)に展示用物体(オブジェクトO:O,O,O等)が配置された表示手段Bを、展示台Sの展示面(上面)の、予め決められた所定位置に位置決めして載置し、プロジェクタPから映像を投影しながらその上下位置(昇降)を変更して、この投影される映像(光線:二点鎖線)が、上記表示手段Bの上面(図3に示す、円形のハウジングH上面)とほぼ同じ大きさになるように、プロジェクタPの上下位置,光軸(投影角度)および投影範囲を調節する。
【0053】
つぎに、ディスプレイDおよびプロジェクタPの両者が備える映像同期手段のどちらか一方のスタート信号の発信により、上記表示手段B(ディスプレイD)による空間像I’の表示(空間投影)プログラムと、上記プロジェクタPによる上方からの映像の投影プログラムとが、同時に連動して開始される。これにより、上記空間像I’の表示と、上記プロジェクタPによる上方からの投影映像とが、同じタイミングで同期して切り替わり、これらを、より印象深く、より効果的な演出で、表示装置の前に立つ人(鑑賞者や顧客等)に展示することができる。例えば、図3の表示手段Bにおいて、開口部1aの周囲のハウジングH上面および各オブジェクトOの表面に、山河や森林,草花等の四季の移り変わりを表現するカラー動画等を投影し、その中央に位置する空間像I’として、動物や人、あるいは商品や企業のロゴ等の動画を表示(再生)した場合、中央に位置する空間像I’自体の印象とその動作を、より際立たせることができる。
【0054】
また、プロジェクタPが、上記展示用物体の表面に、その立体形状に対応した映像を、最適な位置に最適なタイミングで投影(プロジェクション・マッピング)できるように設定されているため、この映像が投影される上記展示用物体と空間像I’との間に大きな両眼視差が発生し、この空間像I’を、従来の表示装置より奥行き感や臨場感の一層強い、見る者により強いインパクトを与える映像とすることができる。
【0055】
なお、上記ディスプレイDおよびプロジェクタPの映像同期手段の間の通信(同期)は、ケーブル,ファイバ等を用いた有線通信と、Bluetooth(登録商標),NFC,無線LAN等を用いた無線通信のどちらでもよい。また、上記映像の同期は、両方の機器に用意されたスイッチを係員が同時に押すか、あるいは、一方の映像の表示を係員が見ながら、適切なタイミングで他方の機器のスタートボタンを押す等、手動で行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の展示装置およびこれを用いた映像展示方法は、表示手段に表示される空間像およびその周囲に配置された展示用物体の両方を、特に奥行き感や臨場感等を感じる、印象深い効果的な演出で展示することができる。そのため、店頭や展示会等での広告展示やプレゼンテーション等での商用利用等、広い空間(スペース)で展示等がなされる利用方法に適する。
【符号の説明】
【0057】
B 表示手段
D ディスプレイ
I’ 空間像
M マイクロミラーアレイ
P プロジェクタ
図1
図2
図3
図4
図5