【実施例1】
【0026】
(実施例1の構成)
図3は、本発明の実施例1におけるスイッチング電源装置の構成例を示す概略の回路図である。
【0027】
このスイッチング電源装置は、例えば、電流共振型コンバータであり、太陽電池等のDC電源から供給されるDC入力電圧Vinを入力する正側入力端子1a及びグランド側の負側入力端子1bを有している。入力端子1a,1b間には、平滑用の入力コンデンサ2を介して、ハーフブリッジ型のスイッチング回路3が接続されている。ハーフブリッジ型のスイッチング回路3は、2つのスイッチング素子(例えば、電界効果トランジスタ、以下「FET」という。)3a,3bを有し、これらのFET3a,3bが、入力コンデンサ2の正側電極と負側電極との間に直列に接続されている。
【0028】
2つのFET3a,3bは、2つのスイッチング信号S1,S2により相補的にオン/オフ動作するものであり、これらのFET3a,3bのドレイン電極及びソース電極間に、転流用の寄生ダイオード3a1,3b1がそれぞれ逆並列に接続されている。FET3aのソース電極及びFET3bのドレイン電極間の接続点N1と、FET3bのソース電極と、には、共振回路4を介して、トランス5が接続されている。
【0029】
共振回路4は、2つの共振用コンデンサ4a,4bと共振用インダクタ4cとを有している。2つの共振用コンデンサ4a,4bは、FET3aのドレイン電極とFET3bのソース電極との間に、直列に接続されている。接続点N1と、2つの共振用コンデンサ4a,4b間の接続点N2と、の間には、共振用インダクタ4cとトランス5の1次巻線5aとが直列に接続されている。共振回路4は、共振用コンデンサ4a,4bのキャパシタンスと共振用インダクタ4cのインダクタンスとで決まる固有の共振周波数frを有している。
【0030】
トランス5は、インダクタ4cの一端の電極と接続点N2との間に接続された1次巻線5aと、この1次巻線5aに対して電磁気結合される2次巻線5bと、を有している。1次巻線5aには、これと並列に、トランス5の励磁インダクタンスが存在している。2次巻線5bの両端電極には、整流平滑回路6が接続されている。
【0031】
整流平滑回路6は、2次巻線5bに誘起される誘導電圧を全波整流する4つのダイオード6a〜6dからなるダイオードブリッジ回路と、平滑用の出力コンデンサ6eと、により構成されている。出力コンデンサ6eの両端電極には、正側出力端子7a及びグランド側の負側出力端子7bが接続されている。出力端子7a,7b間から、DC出力電圧Voutが出力される。この出力端子7a,7bには、制御部としての出力電圧制御部10が接続されている。
【0032】
出力電圧制御部10は、DC出力電圧Voutを検出し、この検出信号に基づき、PFM制御によって、FET3a,3bをオン/オフ動作させるスイッチング信号S1,S2を生成し、そのFET3a,3bに対するプリチャージ動作、ソフトスイッチング動作及び通常運転動作を制御する回路である。この出力電圧制御部10は、例えば、デジタル信号処理に特化したマイクロプロセッサであるDSP等のプロセッサ、デジタル回路の実回路、或いは、周波数制御集積回路等のアナログ回路の実回路、により構成されている。
【0033】
図1は、本発明の実施例1における
図3のスイッチング電源装置中の出力電圧制御部10を示す概略の機能ブロック図である。
【0034】
この出力電圧制御部10は、DSP等のプロセッサにより構成され、出力電圧検出手段11、第1固定制御量設定手段としての第1固定周波数設定手段12、第1固定期間計測手段13、プリチャージ判定手段14、第2固定制御量設定手段としての第2固定周波数設定手段15、第2固定期間計測手段16、ソフトスタート移行手段17、ソフトスタート制御量設定手段としてのソフトスタート周波数設定手段18、通常運転制御量設定手段としての通常運転周波数設定手段19、及びスイッチング信号生成手段20を有している。
【0035】
出力電圧検出手段11は、DC出力電圧Voutを検出してこの検出信号S11をプリチャージ判定手段14、ソフトスタート移行手段17、ソフトスタート周波数設定手段18、及び通常運転周波数設定手段19へ出力するものであり、抵抗分圧回路等により構成されている。
【0036】
第1固定周波数設定手段12は、ソフトスイッチング動作の制御前において、スイッチング回路3の起動開始から第1固定期間H1の間、予め設定したスイッチング周波数値により、第1固定の制御量(例えば、第1固定周波数)f1を設定して、第1固定制御量設定信号としての第1固定周波数設定信号S12を、第1固定期間計測手段13及びスイッチング信号生成手段20へ出力するものである。
【0037】
第1固定期間計測手段13は、第1固定期間H1を計測し、この計測結果をプリチャージ判定手段14へ出力するものであり、タイマ等で構成されている。
【0038】
プリチャージ判定手段14は、出力電圧検出手段11の検出信号S11、第1固定期間計測手段13の計測結果、及び第2固定期間計測手段16の計測結果に基づき、第1固定期間H1の終了時、及び第1固定期間H1の終了後の第2固定期間H2において、出力電圧Voutが規定値のプリチャージ完了電圧Vpに達しているか否か(即ち、Vout≧Vpか否か)のプリチャージ判定を行って、このプリチャージ判定結果を第2固定周波数設定手段15及びソフトスタート移行手段17へ出力するものである。
【0039】
第2固定周波数設定手段15は、プリチャージ判定手段14のプリチャージ判定結果が、第1固定期間H1の終了時においてプリチャージ完了電圧Vpに達していない場合、第2固定期間H2の間、出力電圧Voutをプリチャージ完了電圧Vpへ上昇させるような第2固定の制御量(例えば、第2固定周波数)f2を設定して、第2固定制御量設定信号としての第2固定周波数設定信号S15を、第2固定期間計測手段16及びスイッチング信号生成手段20へ出力するものである。第2固定周波数f2は、第1固定周波数f1と同一の周波数、又は、第1固定周波数f1よりも低い周波数である。
【0040】
第2固定期間計測手段16は、第2固定期間H2を計測し、この計測結果をプリチャージ判定手段14及びソフトスタート移行手段17へ出力するものであり、タイマ等で構成されている。
【0041】
ソフトスタート移行手段17は、出力電圧検出手段11の検出信号S11、プリチャージ判定手段14のプリチャージ判定結果、及び第2固定期間計測手段16の計測結果に基づき、プリチャージ判定結果が、第1固定期間H1の終了時又は第2固定期間H2中においてプリチャージ完了電圧Vpに達している場合、及び、第2固定期間H2の終了時においてプリチャージ完了電圧Vpに達していない場合、プリチャージ動作の制御を終了して次のソフトスイッチング動作の制御へ移行し、その移行結果を、ソフトスタート制御量設定手段としてのソフトスタート周波数設定手段18へ出力するものである。
【0042】
ソフトスタート周波数設定手段18は、プリチャージ動作の制御の終了後、次のソフトスタート期間H3の間、出力電圧Voutが目標値へ徐々に上昇するようなソフトスタートの制御量(例えば、ソフトスタート周波数)f3を設定して、ソフトスタート制御量設定信号としてのソフトスタート周波数設定信号S18を、通常運転制御量設定手段としての通常運転周波数設定手段19とスイッチング信号生成手段20とへ出力するものである。
【0043】
ソフトスタート周波数設定手段18は、例えば、基準電圧設定部と周波数演算部とにより構成されている。基準電圧設定部は、プリチャージ動作の制御の終了後、出力電圧検出手段11の検出信号S11に基づいて、予め設定された目標値まで、徐々に上昇させた基準電圧を設定するものである。更に、周波数演算部は、出力電圧検出手段11の検出信号S11とその基準電圧とを比較演算してソフトスタート周波数設定信号S18を生成する機能を有している。
【0044】
通常運転周波数設定手段19は、出力電圧検出手段11の検出信号S11、及びソフトスタート周波数設定信号S18に基づき、ソフトスタート期間H3の終了後の通常運転期間H4において、出力電圧Voutが目標値に追従するような通常運転周波数f4を設定して、通常運転周波数設定信号S19をスイッチング信号生成手段20へ出力するものである。
【0045】
通常運転周波数設定手段19は、例えば、ソフトスタート周波数設定手段18と略同様に、基準電圧設定部と周波数演算部とにより構成されている。基準電圧設定部は、ソフトスタート期間H3の終了後の通常運転期間H4において、目標値となる一定の基準電圧を設定するものである。周波数演算部は、出力電圧検出手段11の検出信号S11と、一定の基準電圧と、を比較演算して通常運転周波数設定信号S19を生成する機能を有している。
【0046】
スイッチング信号生成手段20は、周波数制御手段としての機能を有し、第1固定周波数設定信号S12、第2固定周波数設定信号S15、ソフトスタート周波数設定信号S18、及び通常運転周波数設定信号S19に基づき、PFM制御によって制御パルスを作り、この制御パルスを駆動して相補的なスイッチング信号S1,S2を生成し、FET3a,3bをオン/オフ動作させるものである。
【0047】
(実施例1の動作)
図4は、
図3のスイッチング電源装置の出力電圧Voutを示す起動時の波形図である。
【0048】
図4において、横軸は時間T、縦軸は出力電圧Voutである。横軸において、H12は第1固定期間H1と最大期間である第2固定期間H2とからなるプリチャージ期間、H3はソフトスタート期間、H4は通常運転期間である。実線波形のVout1は、大容量コンデンサを有する大容量負荷の場合の出力電圧、破線波形のVout2は、大容量コンデンサの無い通常負荷の場合の出力電圧である。
【0049】
図5は、
図1の出力電圧制御部10における起動時の制御処理を示すフローチャートである。
【0050】
図5のステップST1において、出力電圧制御部10の起動制御が開始されると、
図1の出力電圧制御部10内の第1固定周波数設定手段12は、
図4の第1固定期間H1の間、第1固定周波数f1を設定して第1固定周波数設定信号S12をスイッチング信号生成手段20へ出力する。すると、スイッチング信号生成手段20は、第1固定周波数設定信号S12に基づき、PFM制御によって制御パルスを作り、この制御パルスを駆動して相補的なスイッチング信号S1,S2を生成し、
図3のスイッチング回路3内のFET3a,3bをオン/オフ動作させる。
【0051】
例えば、スイッチング信号S1によってスイッチング回路3内のFET3aがオン状態になると共に、スイッチング信号S2によってFET3bがオフ状態になると、DC入力電圧Vinが印加された入力コンデンサ2の正側電極の蓄積電荷により、オン状態のFET3a、接続点N1、共振回路4内の共振用インダクタ4c、トランス5の1次巻線5a、接続点N2、及び共振用コンデンサ4bを経由して、入力コンデンサ2の負側電極へ電流が流れる。
【0052】
次に、スイッチング信号S1によってFET3aがオフ状態になると共に、スイッチング信号S2によってFET3bがオン状態になると、共振用コンデンサ4bの正側電極の蓄積電荷により、接続点N2、トランス5の1次巻線5a、共振用インダク4c、接続点N1、及びオン状態のFET3bを経由して、共振用コンデンサ4bの負側電極へ電流が流れる。
【0053】
これにより、共振用インダクタ4c、トランス5の1次巻線5a、及び共振用コンデンサ4bを流れる電流が共振し、トランス5の2次巻線5bに誘導電圧が発生する。発生した誘導電圧は、整流平滑回路6にて全波整流された後に平滑され、DC出力電圧Voutが出力端子7a,7bから出力される。
【0054】
出力端子7a,7bに、大容量コンデンサの無い通常負荷が接続されている場合、
図4の破線波形で示されるように、出力電圧Vout2が上昇していく。しかし、大容量コンデンサを有する大容量負荷が接続されている場合、
図4の実線波形で示されるように、起動できないときがあり、そのため、出力電圧Vout1が上昇しない。そこで、次のステップST2,ST3へ進む。
【0055】
ステップST2において、
図1の第1固定期間計測手段13は、予め設定された
図4の第1固定期間H1を計測し、この第1固定期間H1が終了すると(YES)、この終了時点をプリチャージ判定手段14へ通知し、ステップST3へ進む。ステップST3において、プリチャージ判定手段14は、第1固定期間H1の終了時点で、出力電圧検出手段11の検出信号S11に基づき、出力電圧Vout(=Vout1,Vout2)が規定値のプリチャージ完了電圧Vpに達しているか否か(即ち、Vout1,Vout2≧Vpか否か)を判定し、この判定結果を第2固定周波数設定手段15へ通知する。通常負荷の場合には、出力電圧Vout2がプリチャージ完了電圧Vpに達しているので(YES)、ステップST5へ進む。大容量負荷の場合には、出力電圧Vout1が上昇していないので(NO)、ステップST4へ進む。
【0056】
ステップST4において、第2固定周波数設定手段15は、
図4の第2固定期間H2の間、出力電圧Vout1がプリチャージ完了電圧Vpへ上昇するような第2固定周波数f2を設定して、第2固定周波数設定信号S15をスイッチング信号生成手段20へ出力する。スイッチング信号生成手段20は、第2固定周波数設定信号S15に基づき、PFM制御によってスイッチング信号S1,S2を生成し、FET3a,3bをオン/オフ動作させ、ステップST5へ進む。
【0057】
ステップST5において、プリチャージ判定手段14は、第2固定期間H2において、出力電圧検出手段11の検出信号S11に基づき、出力電圧Vout1がプリチャージ完了電圧Vpに達しているか否か(即ち、Vout1≧Vpか否か)を判定し、この判定結果をソフトスタート移行手段17へ通知する。通常負荷の場合には、出力電圧Vout2がプリチャージ完了電圧Vpに達しているので(YES)、ステップST7へ進む。大容量負荷の場合には、出力電圧Vout1が上昇していないので(NO)、ステップST6へ進む。
【0058】
ステップST6において、第2固定期間計測手段16は、第2固定期間H2を計測し、第2固定期間H2が終了しているか否かを判定する。第2固定期間H2が終了していないときには、ステップST5へ戻り、第2固定期間H2が終了しているときには、ステップST7へ進む。
【0059】
ステップST7において、ソフトスタート周波数設定手段18は、プリチャージ終了後のソフトスタート期間H3の間、出力電圧検出手段11の検出信号S11に基づき(即ち、出力電圧を検出し)、出力電圧Vout(=Vout1,Vout2)が目標値へ徐々に上昇するようなソフトスタート周波数f3を設定して、ソフトスタート周波数設定信号S18を通常運転周波数設定手段19及びスイッチング信号生成手段20へ出力する。スイッチング信号生成手段20は、ソフトスタート周波数設定信号S18に基づき、PFM制御によってスイッチング信号S1,S2を生成し、FET3a,3bをオン/オフ動作させて、出力電圧Vout(=Vout1,Vout2)を目標値へ徐々に上昇させていく。出力電圧Vout(=Vout1,Vout2)が目標値まで上昇すると、ステップST8へ進む。
【0060】
ステップST8おいて、起動制御を終了し、通常運転動作の制御へ移行する。この通常運転動作の制御において、通常運転周波数設定手段19は、出力電圧検出手段11の検出信号S11、及びソフトスタート周波数設定信号S18に基づき、ソフトスタート期間H3の終了後の通常運転期間H4において、出力電圧Voutが目標値に追従するような通常運転周波数f4を設定して、通常運転周波数設定信号S19をスイッチング信号生成手段20へ出力する。スイッチング信号生成手段20は、通常運転周波数設定信号S19に基づき、PFM制御によってスイッチング信号S1,S2を生成し、FET3a,3bをオン/オフ動作させる。これにより、出力電圧Voutの変動が抑制され、定格出力電圧になるような定電圧制御が行われる。
【0061】
(実施例1の効果)
本実施例1のスイッチング電源装置によれば、次の(1)〜(3)のような効果がある。
【0062】
(1) 起動時において、第1固定期間H1及び第2固定期間H2からなるプリチャージ期間H12を設けているので、大容量コンデンサを有する大容量負荷を出力側に接続した場合においても、スムーズに起動できる。又、出力電圧制御部10を、例えば、DSP等のプロセッサで構成した場合、ハード回路を追加することなく、容易に、プリチャージ期間H12を設けることができる。
【0063】
(2) プリチャージ期間H12の終了時の出力電圧Voutに基づき(即ち、出力電圧を検出し)、ソフトスタート周波数f3を設定しているので、滑らかにソフトスタート期間H3へ移行でき、滑らかな出力電圧Voutの立ち上がりを実現できる。そのため、起動時のスイッチング電源装置のストレスを回避できる。
【0064】
(3) プリチャージ期間H12の終了時に検出した出力電圧Voutの検出信号S11に基づき、その後のソフトスタート期間H3において、出力電圧Voutの立ち上がり時間、或いは、立ち上がり傾斜を調整(設定)できる。そのため、急激な出力電圧Voutや出力電流の変化を防ぐことで、起動時の負荷ストレスも軽減、回避できる。
【0065】
(実施例1の変形例)
本発明は、上記実施例1に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(e)のようなものがある。
【0066】
(a)
図3のスイッチング回路3、共振回路4、トランス5、及び整流平滑回路6を有するコンバータ主回路は、図示以外の構成に変更しても良い。例えば、スイッチング回路3を構成するFET3a,3bは、他のトランジスタ等のスイッチング素子で構成しても良い。又、スイッチング回路3は、4つのスイッチング素子を用いたフルブリッジ構成に変更しても良い。
【0067】
(b)
図1の出力電圧制御部10は、図示以外の構成に変更しても良い。例えば、ソフトスタート周波数設定手段18と通常運転周波数設定手段19とは、略同様の構成であるため、これらのソフトスタート周波数設定手段18と通常運転周波数設定手段19とを、共通の周波数設定手段により構成しても良い。
【0068】
(c) 実施例1は、定電圧制御を行う構成例について説明したが、回路構成を変更することにより、定電流制御を行う構成に変更したり、或いは、定電圧制御及び定電流制御を行う構成に変更することも可能である。
【0069】
(d) 実施例1では、制御量として、周波数を用いたが、周波数の代わりにパルス幅を用いることも可能である。
【0070】
(e) 実施例1では、スイッチング電源装置の例として、電流共振型コンバータについて説明したが、本発明は、共振回路4を持たないスイッチング電源装置や、PWM制御のスイッチング電源装置等にも適用が可能である。PWM制御の場合は、スイッチング周波数ではなく、デューティ制御されたPWM信号がスイッチング信号S1,S2になる。