(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置は、所望信号を受信するメインアンテナと、干渉信号を受信するサブアンテナとを備え、サブアンテナの受信信号を複数に分岐してその各々について、異なる条件で、遅延、位相、振幅を調整して、メインアンテナの受信信号から調整後の信号をそれぞれ減算し、減算結果について特定の周期で平均パワーを算出し、平均パワーが最小となる遅延、位相、振幅の条件を決定し、サブアンテナの受信信号を当該決定した遅延、位相、振幅の条件で調整して、メインアンテナの受信信号から減算するものであり、サブアンテナの受信信号をメインアンテナの受信信号に含まれる干渉信号とできるだけ同等になるよう調整して、メインアンテナの受信信号から減算することで、干渉信号と所望信号の定常性に差がある通信環境において、干渉信号を高精度に安定して除去することができるものである。
【0021】
[第1のノイズキャンセラー装置の構成:
図1]
本発明の第1の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置について
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置の構成ブロック図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置(第1のノイズキャンセラー装置)は、メインアンテナ11と、サブアンテナ12と、複数の干渉信号調整部13(干渉信号調整部13-1〜13-n)と、遅延部14と、複数の加算器15(加算器15-1〜15-n)と、複数の平均パワー算出部16(平均パワー算出部16-1〜16-n)と、最適条件探索部17と、最適干渉信号調整部18と、遅延部19と、キャンセル部20とを備えている。
そして、キャンセル部20は、信号の情報処理を行う上位装置に接続されている。
【0022】
第1のノイズキャンセラー装置の各部について説明する。
[メインアンテナ11]
メインアンテナ11は、所望信号を受信するためのアンテナであり、具体的には携帯電話の無線信号を受信するためのアンテナである。但し、メインアンテナ11には、他のシステムの干渉信号(BSアンテナからの漏洩信号)が混入する。メインアンテナ11は、請求項に記載した第1のアンテナに相当する。
【0023】
[サブアンテナ12]
サブアンテナ12は、干渉信号を受信するアンテナである。但し、干渉信号のみを受信するのではなく、所望信号やその他の信号も受信する。サブアンテナ12は、請求項に記載した第2のアンテナに相当する。
ここで、所望信号である携帯電話の信号は断続的にしか存在しない定常性の低い信号であるのに対し、干渉信号は、常時存在する定常性の高い信号である。
【0024】
そして、第1のノイズキャンセラー装置は、サブアンテナ12で受信した信号を、メインアンテナ11での受信信号に含まれる干渉信号にできるだけ近い成分となるよう調整した上で、メインアンテナ11で受信した信号から差し引く(取り除く)ことで、メインアンテナ11の受信信号から干渉信号をキャンセルするものである。
【0025】
[干渉信号調整部13]
干渉信号調整部13-1〜13-nは、遅延を調整する遅延調整部、位相を調整する位相調整部、振幅を調整する振幅調整部を備え、サブアンテナ12で受信された信号について、遅延、位相、振幅の各パラメータを調整する。尚、遅延、位相、振幅の調整はどのような順序であっても構わない。
干渉信号調整部13-1〜13-nには、図示しない操作部及び制御部を介して、遅延、位相、振幅の値が設定されており、各干渉信号調整部13-1〜13-nは、それぞれ異なる遅延、位相、振幅の条件でサブアンテナ12の受信信号を調整する。
図1の例では、干渉信号調整部13-1では、「遅延1、位相1、振幅1」の値でサブアンテナ12の受信信号を調整し、干渉信号調整部13-nでは、「遅延n、位相n、振幅n」の値で調整する。
【0026】
尚、各干渉信号調整部13に設定される遅延、位相、振幅のパラメータの範囲は、受信環境や装置構成を考慮して決定される。
例えば、メインアンテナ11、サブアンテナ12からノイズキャンセラー装置までのケーブル長が大きく異なる場合には、遅延の調整範囲を広めに設定する。
また、メインアンテナ11、サブアンテナ12とノイズキャンセラー装置との間にアンプのような装置が設けられて、両者にレベル差が発生する場合には、振幅の調整範囲を広めに設定する。
【0027】
[遅延部14]
遅延部14は、干渉信号調整部13における処理時間分、メインアンテナ11の受信信号を遅延させて、加算器15-1〜15-nに出力する。
[加算器15]
加算器15-1〜15-nは、遅延部14で遅延されたメインアンテナ11の受信信号から、各干渉信号調整部13-1〜13-nの出力を減算して、差分信号を出力する。
【0028】
[平均パワー算出部16]
平均パワー算出部16-1〜16-nは、加算器15-1〜15-nからの差分信号をそれぞれ入力し、特定の周期(期間)で平均化して、差分信号の平均パワー(平均電力)を算出する。
ここで、平均パワー算出部(平均電力算出部)16における平均化の周期について説明する。
第1のノイズキャンセラー装置が用いられる通信環境では、干渉信号は定常的に存在するのに対し、所望信号は断続的にしか存在しないため、平均パワー算出部16において十分長い期間で平均化することにより、平均パワーにおける所望信号の寄与を干渉信号に比べて十分小さくして、なるべく干渉信号のみを観測するようにしている。
【0029】
つまり、本実施の形態に係るノイズキャンセラー装置では、平均化によって、定常的に受信する干渉信号と、断続的にしか受信しない所望信号との差が十分得られるよう、平均パワー算出部16における平均化の周期を十分長期間としている。
これにより、後述するキャンセル部20において、所望波を残して干渉波のみをキャンセルすることができるものである。
【0030】
平均パワーの算出周期は、所望信号の断続性及び干渉信号の定常性に応じて、干渉信号と所望信号との差が得られるように決定され、制御部(図示省略)から平均パワー算出部16に対して設定される。
例えば、干渉信号の定常性が大きい場合には、小さい場合よりも算出周期を短くすることができ、所望信号の断続性が大きい(所望信号を受信する頻度が低い)場合、断続性が小さい(所望信号を受信する頻度が高い)場合よりも算出周期を短くすることができる。
【0031】
[最適条件探索部17]
最適条件探索部17は、平均パワー算出部16-1〜16-nからの平均パワーを全て入力して比較し、どの平均パワー算出部16からの平均パワーの値が最小であるか特定し、当該平均パワー算出部16に対応する干渉信号調整部13における遅延、位相、振幅の条件を最適条件として決定する。最適条件探索部17には、予め、各平均パワー算出部16-1〜16-nに対応する干渉信号調整部13-1〜13-nに設定された遅延、位相、振幅の値が記憶されている。
更に、最適条件探索部17は、最適条件として決定された遅延、位相、振幅の各パラメータの値を、最適干渉信号調整部18に設定する。
【0032】
[平均パワーの変化:
図2]
ここで、パラメータと差分信号の平均パワーとの関係について
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置におけるパラメータと差分信号の平均パワーとの関係を示す説明図である。
上述したように、メインアンテナ11の受信信号には、所望信号と干渉信号とが含まれている。また、
図1に示したように、差分信号は、加算器15においてメインアンテナ11の受信信号から、サブアンテナ12の受信信号を各干渉信号調整部13で調整した調整信号を差し引いた信号である。
【0033】
そのため、調整信号がメインアンテナ11の受信信号に含まれる干渉信号の成分に最も近くなるよう調整された場合に、干渉信号が精度よくキャンセルされて、差分信号の平均パワーが最小となる。
つまり、差分信号の平均パワーが最小となる場合に、干渉信号調整部13から出力された調整信号の成分が、メインアンテナ11の受信信号に含まれる干渉信号の成分に最も近くなっており、そのときのパラメータの値が最適な値となる。
【0034】
図2(a)では、遅延をパラメータとして、遅延量の変化と平均パワーの変化とを示しており、差分信号の平均パワーが最小となる場合の遅延量が最適遅延となる。
同様に、(b)では位相をパラメータとし、(c)では振幅をパラメータとして、差分信号の平均パワーの変化を示しており、それぞれ、平均パワーが最小となる場合の値が、最適位相及び最適振幅となる。
【0035】
尚、第1のノイズキャンセラー装置の最適条件探索部17では、
図2に示した遅延、位相、振幅のパラメータの最適値をそれぞれ独立して決定するのではなく、n個の「遅延、位相、振幅」の組み合わせの中から最適となる組を選択し、当該組の各パラメータの値を最適値としている。
【0036】
[最適干渉信号調整部18]
最適干渉信号調整部18は、サブアンテナ12で受信した信号を、最適条件探索部17から設定された値で遅延、位相、振幅を変化させて、最適な調整信号を生成する。
[遅延部19]
遅延部19は、メインアンテナ11で受信した信号を、最適干渉調整部18からの最適な調整信号の出力のタイミングに合わせるよう遅延させる。遅延時間は、最適な調整信号を生成するための処理に要する時間を考慮して予め設定されている。
【0037】
[キャンセル部20]
キャンセル部20は、遅延部19で遅延されたメインアンテナ11の受信信号から、最適干渉信号調整部18からの出力を減算して干渉信号を除去し、所望信号を上位装置に出力する。
最適干渉調整部18からの最適な調整信号は、メインアンテナ11に含まれる干渉信号となるべく同等の成分となるように遅延、位相、振幅が調整されているので、キャンセル部20においてメインアンテナ11の受信信号に含まれる干渉信号はキャンセルされ、所望信号のみが上位装置に出力される。
【0038】
[第1のノイズキャンセラー装置の動作:
図1]
次に、第1のノイズキャンセラー装置の動作について
図1を用いて説明する。
第1のノイズキャンセラー装置では、メインアンテナ11で干渉信号を含む所望信号を受信し、サブアンテナ12で所望信号を含む干渉信号を受信する。
サブアンテナ12の受信信号は、n本に分岐されて干渉信号調整部13-1〜13-nに入力され、それぞれ、遅延、位相、振幅を調整された調整信号として出力され、加算器15-1〜15-nに入力される。
【0039】
メインアンテナ11の受信信号は遅延部14で遅延されて、加算器15-1〜15-nに入力され、加算器15-1〜15-nにおいて、メインアンテナ11の受信信号から干渉信号調整部13-1〜13-nで調整された調整信号が差し引かれ、差分信号が出力される。
【0040】
差分信号は平均パワー算出部16-1〜16-nに入力されて、特定の周期で平均化され、n個の平均パワーが出力されて、最適条件探索部17に入力される。
そして、最適条件探索部17で最適なパラメータの組が決定されて最適干渉信号調整部18に設定され、サブアンテナ12の受信信号について、最適干渉信号調整部18で遅延、位相、振幅の調整がなされる。
【0041】
そして、キャンセル部20において、遅延部19で遅延されたメインアンテナ11の受信信号から、最適干渉信号調整部18の出力が減算されて、干渉信号がキャンセルされ、所望信号が上位装置に出力される。
このようにして、第1のノイズキャンセラー装置の動作が行われる。
【0042】
[第1の実施の形態の効果]
第1のノイズキャンセラー装置によれば、複数の干渉信号調整部13が、サブアンテナ12の受信信号について異なる条件で遅延、位相、振幅を調整して各調整信号とし、メインアンテナ11で受信された信号から各調整信号を減算して差分信号とし、平均パワー算出部16で各差分信号の平均パワーを算出し、最適条件探索部17が各平均パワーを比較して、平均パワーが最小となる場合の遅延、位相、振幅を決定して最適干渉信号調整部18に設定し、最適干渉信号調整部18がサブアンテナ12の受信信号を最適な遅延、位相、振幅の条件で調整して最適な調整信号とし、キャンセル部20がメインアンテナ11の受信信号から最適な調整信号を減算して、干渉信号を除去して所望信号のみを上位装置に出力するようにしているので、所望信号が非定常的に存在し、干渉信号が定常的に存在する場合に、干渉信号を精度よく且つ安定してキャンセルすることができる効果がある。
【0043】
特に、第1のノイズキャンセラー装置では、干渉信号調整部13で調整した調整信号を実際にメインアンテナ11の受信信号から差し引いて、その結果最適なパラメータの組を最適干渉信号調整部18に設定するようにしているため、高精度のキャンセル動作を安定して行うことができるものである。
これは、後述する各実施の形態に係るノイズキャンセラー装置においても同様である。
【0044】
また、所望信号が狭帯域信号で干渉信号が広帯域信号の場合、所望信号と干渉信号の単位帯域当たりのパワーが同じであれば、干渉信号の方が全体としてのパワーが大きくなるため、干渉信号をより正確に観測することができ、一層精度よく干渉信号をキャンセルすることができるものである。
【0045】
[第2のノイズキャンセラー装置:
図3]
次に、本発明の第2の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置(第2のノイズキャンセラー装置)について
図3を用いて説明する。
図3は、第2のノイズキャンセラー装置の構成ブロック図である。
上述した第1のノイズキャンセラー装置では、サブアンテナ12で受信した信号について遅延、位相、振幅の調整を行ったが、第2のノイズキャンセラー装置は、メインアンテナ11で受信した信号について調整を行って、メインアンテナ11の受信信号に含まれる干渉信号成分をサブアンテナ12で受信した干渉信号成分に近づけるようにして、干渉信号を除去するものである。
【0046】
図3に示すように、第2のノイズキャンセラー装置の構成要素は、
図1に示した第1のノイズキャンセラー装置と同様であるが、メインアンテナ21の受信信号を複数に分岐して干渉信号調整部24-1〜24-nに入力して、遅延、位相、振幅の調整を行って調整信号を出力するようにしている。
各構成部分の動作は、
図1に示した第1のノイズキャンセラー装置と同様である。
【0047】
そして、加算器25-1〜25-nにおいて、各調整信号から、遅延器24で遅延させたサブアンテナ22の受信信号を減算して差分信号を出力し、平均パワー算出部26-1〜26-nで特定周期で平均化して差分信号の平均パワーを算出する。
【0048】
平均パワーは最適条件探索部27に入力され、最適条件探索部27において、平均パワーが最小となる干渉信号調整部23の遅延、位相、振幅の組み合わせが選択されて、最適な条件として最適干渉信号調整部28に設定される。
第2のノイズキャンセラー装置において、平均パワーが最小となる条件は、メインアンテナ21で受信した信号に含まれる干渉信号を、サブアンテナ22で受信した干渉信号の成分と同等となるように調整するための条件となる。
【0049】
そして、最適干渉信号調整部28でメインアンテナ21の受信信号について、遅延、位相、振幅が調整されて、キャンセル部30で、サブアンテナ22の受信信号が減算されて、メインアンテナ21の受信信号から干渉信号が除去され、所望信号のみが上位装置に出力される。
【0050】
[第2の実施の形態の効果]
第2のノイズキャンセラー装置によれば、最適条件探索部27が、メインアンテナ21で受信した信号を、サブアンテナ22で受信した干渉信号と同等な成分となるように調整する遅延、位相、振幅の条件を求め、最適干渉信号調整部28が求められた条件で調整して最適な調整信号を出力し、キャンセル部30でメインアンテナ21の受信信号から最適な調整信号を減算するようにしているので、所望信号が非定常的に存在し、干渉信号が定常的に存在する環境において、高精度で安定してメインアンテナ21の受信信号から干渉信号を除去できる効果がある。
尚、第2のノイズキャンセラー装置は、第1のノイズキャンセラー装置と同等のキャンセル効果が得られるものである。
【0051】
[第3のノイズキャンセラー装置:
図4]
次に、本発明の第3の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置(第3のノイズキャンセラー装置)について
図4を用いて説明する。
図4は、第3のノイズキャンセラー装置の概略構成ブロック図である。
第1、第2のノイズキャンセラー装置は、遅延、位相、振幅のパラメータを全て調整してから平均パワーを算出して最適値を求めているが、第3のノイズキャンセラー装置は、遅延、位相、振幅について1つずつ順番に最適な値を探索するものである。
【0052】
図4に示すように、第3のノイズキャンセラー装置は、メインアンテナ31と、サブアンテナ32と、遅延の最適条件を探索する遅延条件探索ブロック33と、位相の最適条件を探索する位相条件探索ブロック35と、振幅の最適条件を探索する振幅条件探索ブロック37とを備え、各探索ブロックで探索された条件でサブアンテナ32の受信信号を順次調整する最適遅延調整部34と、最適位相調整部36と、最適振幅調整部38とを備えている。
更に、第3のノイズキャンセラー装置は、メインアンテナ31の受信信号を適宜遅延させる遅延部39a、39b、39c、39dと、キャンセル部40を備えている。
【0053】
遅延条件探索ブロック33は、基本的に、
図1に示した干渉信号調整部13-1〜13-n、加算器15-1〜15-n、平均パワー算出部16-1〜16-n、及び最適条件探索部17を備えた構成である。但し、遅延条件探索ブロック33の干渉信号調整部には、遅延調整部のみが設けられており、位相調整部や振幅調整部は設けられていない。
位相条件探索ブロック35は、遅延調整部の代わりに位相調整部を備えている点を除いて、遅延条件探索ブロック33と同様の構成である。
同様に、振幅条件探索ブロック37は、振幅調整部を備えている。
【0054】
そして、遅延条件探索ブロック33は、サブアンテナ32の受信信号と遅延部39aで遅延されたメインアンテナ31の受信信号とを用いて、最適な遅延条件を求める。
最適遅延調整部34は、遅延条件探索ブロック33で決定された最適な遅延量で、サブアンテナ32の受信信号の遅延量を調整し、遅延が調整された信号を位相条件探索ブロック35に出力する。
【0055】
位相条件探索ブロック35は、遅延が調整された最適遅延調整部34の出力信号と、遅延部39bで遅延されたメインアンテナ31の受信信号とを用いて、最適な位相条件を求める。
最適位相調整部36は、位相条件探索ブロック35で決定された最適な位相で、最適遅延調整部34の出力信号の位相を調整し、遅延及び位相が調整された信号を振幅条件探索ブロック37に出力する。
【0056】
振幅条件探索ブロック37は、遅延と位相とが調整された最適位相調整部36の出力信号と、遅延部39cで遅延されたメインアンテナ31の受信信号とを用いて、最適な振幅条件を求める。
最適振幅調整部38は、振幅条件探索ブロック37で決定された最適な振幅で、最適位相調整部36の出力信号の振幅を調整し、キャンセル部40に出力する。最適振幅調整部38からの出力信号は、遅延、位相、振幅が調整された最適な調整信号となる。
【0057】
そして、キャンセル部40において、遅延部39dで遅延させたメインアンテナ31の受信信号から、最適振幅調整部38からの最適な調整信号を減算して、メインアンテナ31の受信信号に含まれる干渉信号を除去するものである。
つまり、第3のノイズキャンセラー装置では、干渉信号調整部と、最適条件探索部と、最適干渉信号調整部の組が、遅延、位相、振幅の各パラメータについてそれぞれ設けられて、順に接続されている。
尚、
図4の例では、各パラメータの条件探索及び最適な値による調整は、遅延、位相、振幅の順で行っているが、どのような順であってもよい。
また、メインアンテナ31の受信信号について、同様に、遅延、位相、振幅のパラメータ毎に調整を行う構成としてもよい。
【0058】
[第3の実施の形態の効果]
第3のノイズキャンセラー装置によれば、遅延、位相、振幅の各パラメータについて、最適な条件を精度よく決定でき、メインアンテナ31の受信信号から、高精度で安定して干渉信号を除去することができる効果がある。
【0059】
[第4のノイズキャンセラー装置:
図5]
次に、本発明の第4の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置(第4のノイズキャンセラー装置)について
図5を用いて説明する。
図5は、第4のノイズキャンセラー装置の構成ブロック図である。
上述した第1のノイズキャンセラー装置では、複数の干渉信号調整部13-1〜13-nが並列に処理を行うようにしているが、第4のノイズキャンセラー装置は、一つの干渉信号調整部が時分割でパラメータを設定して調整するようにしている。
【0060】
具体的には、
図5に示すように、第4のノイズキャンセラー装置の特徴部分として、遅延、位相、振幅を調整する干渉信号調整部43と、差分信号の平均パワーを算出する平均パワー算出部46と、遅延、位相、振幅の最適条件を決定する最適条件探索部47と、時分割の制御を行う制御部51とを備えている。
【0061】
干渉信号調整部43は、遅延設定部・位相設定部・振幅設定部を備え、制御部51から時分割で設定されるパラメータに基づいて、サブアンテナ42の受信信号を調整する。
【0062】
制御部51は、干渉信号調整部44の遅延設定部・位相設定部・振幅設定部のパラメータの値を、予め設定された時分割のタイミングで順次変えて設定すると共に、平均パワー算出部46及び最適条件探索部47に時分割のタイミングを指示する。
遅延、位相、振幅のパラメータの組は予め複数個用意されており(例えばn組)、制御部51は、n組のパラメータを時間をずらして設定していく。
【0063】
加算部45は、遅延されたメインアンテナ41の受信信号から、干渉信号調整部43で調整された調整信号が減算されて差分信号を出力する。
平均パワー算出部46は、差分信号の平均パワーを算出して、制御部51からのタイミングに基づいて最適条件探索部47に出力する。
【0064】
最適条件探索部47は、n個分の平均パワーの値を保持する記憶部を備え、入力される平均パワーの値を順次記憶しておく。最適条件探索部47は、制御部51からのタイミングをカウントすることで、入力された平均パワーが何番目のパラメータによるものであるかを特定し、所定のエリアに記憶する。
【0065】
そして、n個分記憶した場合に、最適条件探索部47は、n個の中で最小となる平均パワーを特定し、それに対応する遅延、位相、振幅の値を最適な条件として決定する。そして、決定された最適なパラメータの値を最適干渉信号調整部48に出力する。
【0066】
最適条件探索部47には、予め、時分割の順番(番号)に対応するn個のパラメータの組が記憶されているものである。尚、平均パワーが最小となったパラメータの番号が特定された場合に、最適条件探索部47が制御部51に当該番号を付してパラメータの値を問い合わせる構成としてもよい。
また、メインアンテナ41で受信した信号について、遅延、位相、振幅を時分割で調整する構成としてもよい。
【0067】
[第4の実施の形態の効果]
第4のノイズキャンセラー装置によれば、干渉信号調整部43を1つだけ設けて、制御部51が、時分割でパラメータを時間毎に変えて設定して調整を行うようにしているので、回路規模及びコストを大幅に低減することができる効果がある。
【0068】
[応用例:
図6]
次に、本発明の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置の応用例について
図6を用いて説明する。
図6は、第1のノイズキャンセラー装置の応用例の構成ブロック図である。
上述した第1〜第4のノイズキャンセラー装置では、メインアンテナとサブアンテナとを備え、一方のアンテナで受信した信号について、遅延、位相、振幅を調整して、他方のアンテナで受信した信号との差分信号を求めるようにしているが、応用例は、
図6に示すように、メインアンテナ51のみを設け、その受信信号を用いてキャンセル動作を行うものである。
【0069】
具体的に説明する。
図6に示すように、第1のノイズキャンセラー装置の応用例では、メインアンテナ51の受信信号を大きく2つの系に分岐して、一方をメインの信号系として遅延部59及び最適干渉信号調整部58に入力すると共に、他方を調整信号生成用の系として処理を行う。
【0070】
他方の系の信号は、複数の干渉信号調整部53-1〜53-nに入力されると共に、遅延部54に入力されて、加算器55-1〜55-nで差分信号が出力され、平均パワー算出部56-1〜56-nで平均パワーが算出される。
【0071】
そして、最適条件探索部57で、平均パワーが最小となる遅延、位相、振幅の値が最適条件として決定され、最適干渉信号調整部58において、最適条件でメインアンテナ51の受信信号の遅延、位相、振幅が調整され、キャンセル部20で遅延部59の出力から最適干渉信号調整部58の出力が減算されて、メインアンテナ11の受信信号から干渉信号がキャンセルされる。
同様に、第2、第3、第4のノイズキャンセラー装置についても、メインアンテナのみを設けた構成とすることが可能である。
尚、ここでは所望信号を受信するメインアンテナ51を1本のみ設けた構成としたが、これに限らず、任意のアンテナであってもよい。
【0072】
[応用例の効果]
応用例によれば、信号を受信するアンテナとしてメインアンテナ51のみを設け、メインアンテナ51の受信信号を2つの系に分岐して、一方の系の信号を干渉信号調整部53-1〜53-nで調整し、遅延させた受信信号との差分信号を求め、平均パワー算出部56-1〜56-n平均パワーが最小となる遅延、位相、振幅の値を最適条件として決定し、決定された最適条件で分岐された他方の系の信号を調整して、遅延された受信信号とキャンセルさせることにより、簡易な構成で、受信信号中に含まれる干渉信号を精度よく除去することができる効果がある。
【0073】
この出願は、2016年9月14日に出願された日本出願特願2016−179910を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。