特許第6584038号(P6584038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584038
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ノイズキャンセラー装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/10 20060101AFI20190919BHJP
   H04B 7/005 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   H04B1/10 L
   H04B7/005
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-539600(P2018-539600)
(86)(22)【出願日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】JP2017030375
(87)【国際公開番号】WO2018051758
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2018年11月30日
(31)【優先権主張番号】特願2016-179910(P2016-179910)
(32)【優先日】2016年9月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】串岡 洋一
(72)【発明者】
【氏名】四本 宏二
(72)【発明者】
【氏名】▲たか▼島 光博
【審査官】 岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−353866(JP,A)
【文献】 特開2015−170877(JP,A)
【文献】 特開2003−046419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/10
H04B 7/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号から干渉信号を除去するノイズキャンセラー装置であって、
所望信号を受信するための第1のアンテナと、
干渉信号を受信するための第2のアンテナと、
前記第2のアンテナで受信した信号について、遅延、位相、振幅を調整する複数の干渉信号調整部と、
前記複数の干渉信号調整部のそれぞれに対応し、前記第1のアンテナの受信信号から前記各干渉信号調整部の出力を減算して差分信号を出力する複数の加算器と、
前記複数の加算器のそれぞれに対応し、前記差分信号の平均電力の値を算出する複数の平均電力算出部と、
前記複数の平均電力算出部からの出力に基づいて、前記平均電力の値が最小となる遅延、位相、振幅の値を最適条件として決定する最適条件探索部と、
前記第2のアンテナで受信した信号を、前記最適条件に基づいて調整する最適干渉信号調整部と、
前記第1のアンテナの受信信号から前記最適干渉信号調整部の出力を減算するキャンセル部とを備えたことを特徴とするノイズキャンセラー装置。
【請求項2】
干渉信号調整部と、最適条件探索部と、最適干渉信号調整部の組が、遅延、位相、振幅のそれぞれについて設けられ、
第1番目に、前記遅延、位相、振幅の内のいずれかの組、第2番目に前記第1番目を除く前記遅延、位相、振幅のいずれかの組、第3番目に前記第1番目及び前記第2番目を除く前記遅延、位相、振幅のいずれかの組が順に接続され、
前記第1番目に設けられた組の最適干渉信号調整部からの出力が、前記第2番目に設けられた組の干渉信号調整部及び最適干渉信号調整部に入力され、
前記第2番目に設けられた組の最適干渉信号調整部からの出力が、前記第3番目に設けられた組の干渉信号調整部及び最適干渉信号調整部に入力され、
前記キャンセル部が、第1のアンテナの受信信号から、前記第3番目に設けられた組の最適干渉信号調整部の出力を減算することを特徴とする請求項1記載のノイズキャンセラー装置。
【請求項3】
受信信号から干渉信号を除去するノイズキャンセラー装置であって、
所望信号を受信するための第1のアンテナと、
干渉信号を受信するための第2のアンテナと、
前記第1のアンテナで受信した信号について、遅延、位相、振幅を調整する複数の干渉信号調整部と、
前記複数の干渉信号調整部のそれぞれに対応し、前記各干渉信号調整部の出力から前記第2のアンテナの受信信号を減算して差分信号を出力する複数の加算器と、
前記複数の加算器のそれぞれに対応し、前記差分信号の平均電力の値を算出する複数の平均電力算出部と、
前記複数の平均電力算出部からの出力に基づいて、前記平均電力の値が最小となる遅延、位相、振幅の値を最適条件として決定する最適条件探索部と、
前記第1のアンテナで受信した信号を、前記最適条件に基づいて調整する最適干渉信号調整部と、
前記最適干渉信号調整部の出力から前記第2のアンテナの受信信号を減算するキャンセル部とを備えたことを特徴とするノイズキャンセラー装置。
【請求項4】
平均電力算出部における平均電力の値を算出する周期を可変とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のノイズキャンセラー装置。
【請求項5】
受信信号から干渉信号を除去するノイズキャンセラー装置であって、
所望信号を受信するための第1のアンテナと、
干渉信号を受信するための第2のアンテナと、
前記第2のアンテナで受信した信号について、時分割で設定された値に基づいて、遅延、位相、振幅を調整する干渉信号調整部と、
前記第1のアンテナの受信信号から前記各干渉信号調整部の出力を減算して差分信号を出力する加算器と、
前記差分信号の平均電力の値を時分割で算出する平均電力算出部と、
前記平均電力算出部からの出力を時分割で複数記憶し、前記平均電力の値が最小となる遅延、位相、振幅の値を最適条件として決定する最適条件探索部と、
前記第2のアンテナで受信した信号を、前記最適条件に基づいて調整する最適干渉信号調整部と、
前記第1のアンテナの受信信号から前記最適干渉信号調整部の出力を減算するキャンセル部と、
前記干渉信号調整部に対して、前記時分割のタイミングで、遅延、位相、振幅の値を設定すると共に、前記平均電力算出部及び前記最適条件探索部に、前記時分割のタイミングを指示する制御部とを備えたことを特徴とするノイズキャンセラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線システムにおけるノイズキャンセラー装置に係り、特に他のシステムからの干渉信号を高精度で安定して除去することができるノイズキャンセラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来の無線通信システムにおいて、所望の信号に対して他のシステムの信号が干渉信号となり、通信環境が劣化する場合がある。
例えば、各家庭に設置されているBS(Broadcasting Satellite:放送衛星)アンテナを有する放送衛星の受信設備などでは、受信した信号を処理するために周波数変換される場合が多く、その際に受信設備から電波が漏洩すると、携帯電話システムの帯域に干渉を与えるなどの場合が考えられる。
【0003】
干渉信号となる衛星放送の信号帯域は、所望の信号となる携帯電話の帯域よりも広く、フィルタなどで取り除くことが困難である。
また、干渉信号が既知であればリファレンスとしてレプリカを生成して除去することも可能であるが、干渉信号のレプリカを用意できないときには、干渉信号のみを取り除くことは困難である。
干渉信号を取り除けない場合には、所望信号である携帯電話の通信品質が劣化することとなる。
【0004】
また、干渉信号がBSアンテナからの漏洩信号のような場合、定まった場所から定常的に干渉信号が送出されている。一方、所望信号が携帯電話の信号のような場合、様々な場所から断続的に所望信号が送出される。
つまり、干渉信号が定常的に存在し、所望信号が定常的ではなく断続的に存在する通信環境である。
【0005】
[関連技術]
尚、ノイズキャンセラー装置の従来技術としては、特開2015−170877号公報「ノイズキャンセラー装置」(株式会社日立国際電気、特許文献1)がある。
特許文献1には、複数のサブアンテナで受信した干渉信号の相互相関処理を行って干渉信号の情報を取得し、当該情報に基づいて複数受信した干渉信号を合成し、メインアンテナで受信した信号と合成された信号との相互相関の処理を行って受信した信号に含まれる干渉信号の情報を取得し、当該情報に基づいて干渉信号レプリカを生成し、受信した信号から干渉信号レプリカを差し引いて干渉信号を除去することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−170877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のノイズキャンセラー装置では、干渉信号が定常的に存在し、所望信号が定常的には存在しない環境において、より精度よく安定して干渉信号を除去することについての考慮が十分ではなかった。
【0008】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、干渉信号が定常的に存在し、所望信号が定常的には存在しない通信環境において、高精度で安定して干渉信号を除去することができるノイズキャンセラー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、受信信号から干渉信号を除去するノイズキャンセラー装置であって、所望信号を受信するための第1のアンテナと、干渉信号を受信するための第2のアンテナと、第2のアンテナで受信した信号について、遅延、位相、振幅を調整する複数の干渉信号調整部と、複数の干渉信号調整部のそれぞれに対応し、第1のアンテナの受信信号から各干渉信号調整部の出力を減算して差分信号を出力する複数の加算器と、複数の加算器のそれぞれに対応し、差分信号の平均電力の値を算出する複数の平均電力算出部と、複数の平均電力算出部からの出力に基づいて、平均電力の値が最小となる遅延、位相、振幅の値を最適条件として決定する最適条件探索部と、第2のアンテナで受信した信号を、最適条件に基づいて調整する最適干渉信号調整部と、第1のアンテナの受信信号から最適干渉信号調整部の出力を減算するキャンセル部とを備えたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、上記ノイズキャンセラー装置において、干渉信号調整部と、最適条件探索部と、最適干渉信号調整部の組が、遅延、位相、振幅のそれぞれについて設けられ、第1番目に、遅延、位相、振幅の内のいずれかの組、第2番目に第1番目を除く遅延、位相、振幅のいずれかの組、第3番目に第1番目及び第2番目を除く遅延、位相、振幅のいずれかの組が順に接続され、第1番目に設けられた組の最適干渉信号調整部からの出力が、第2番目に設けられた組の干渉信号調整部及び最適干渉信号調整部に入力され、第2番目に設けられた組の最適干渉信号調整部からの出力が、前記第3番目に設けられた組の干渉信号調整部及び最適干渉信号調整部に入力され、
前記キャンセル部が、第1のアンテナの受信信号から、前記第3番目に設けられた組の最適干渉信号調整部の出力を減算することを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、受信信号から干渉信号を除去するノイズキャンセラー装置であって、所望信号を受信するための第1のアンテナと、干渉信号を受信するための第2のアンテナと、第1のアンテナで受信した信号について、遅延、位相、振幅を調整する複数の干渉信号調整部と、複数の干渉信号調整部のそれぞれに対応し、各干渉信号調整部の出力から第2のアンテナの受信信号を減算して差分信号を出力する複数の加算器と、複数の加算器のそれぞれに対応し、差分信号の平均電力の値を算出する複数の平均電力算出部と、複数の平均電力算出部からの出力に基づいて、平均電力の値が最小となる遅延、位相、振幅の値を最適条件として決定する最適条件探索部と、第1のアンテナで受信した信号を、最適条件に基づいて調整する最適干渉信号調整部と、最適干渉信号調整部の出力から第2のアンテナの受信信号を減算するキャンセル部とを備えたことを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、上記ノイズキャンセラー装置において、平均電力算出部における平均電力の値を算出する周期を可変とすることを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、受信信号から干渉信号を除去するノイズキャンセラー装置であって、所望信号を受信するための第1のアンテナと、干渉信号を受信するための第2のアンテナと、第2のアンテナで受信した信号について、時分割で設定された値に基づいて、遅延、位相、振幅を調整する干渉信号調整部と、第1のアンテナの受信信号から各干渉信号調整部の出力を減算して差分信号を出力する加算器と、差分信号の平均電力の値を時分割で算出する平均電力算出部と、平均電力算出部からの出力を時分割で複数記憶し、平均電力の値が最小となる遅延、位相、振幅の値を最適条件として決定する最適条件探索部と、第2のアンテナで受信した信号を、最適条件に基づいて調整する最適干渉信号調整部と、第1のアンテナの受信信号から最適干渉信号調整部の出力を減算するキャンセル部と、干渉信号調整部に対して、時分割のタイミングで、遅延、位相、振幅の値を設定すると共に、平均電力算出部及び最適条件探索部に、時分割のタイミングを指示する制御部とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、受信信号から干渉信号を除去するノイズキャンセラー装置であって、所望信号を受信するための第1のアンテナと、干渉信号を受信するための第2のアンテナと、第2のアンテナで受信した信号について、遅延、位相、振幅を調整する複数の干渉信号調整部と、複数の干渉信号調整部のそれぞれに対応し、第1のアンテナの受信信号から各干渉信号調整部の出力を減算して差分信号を出力する複数の加算器と、複数の加算器のそれぞれに対応し、差分信号の平均電力の値を算出する複数の平均電力算出部と、複数の平均電力算出部からの出力に基づいて、平均電力の値が最小となる遅延、位相、振幅の値を最適条件として決定する最適条件探索部と、第2のアンテナで受信した信号を、最適条件に基づいて調整する最適干渉信号調整部と、第1のアンテナの受信信号から最適干渉信号調整部の出力を減算するキャンセル部とを備えたノイズキャンセラー装置としているので、干渉信号が定常的に存在し、所望信号が断続的にしか存在しない環境において、干渉信号を精度よく且つ安定して除去することができる効果がある。
【0015】
また、本発明によれば、干渉信号調整部と、最適条件探索部と、最適干渉信号調整部の組が、遅延、位相、振幅のそれぞれについて設けられ、第1番目に、遅延、位相、振幅の内のいずれかの組、第2番目に第1番目を除く前記遅延、位相、振幅のいずれかの組、第3番目に第1番目及び第2番目を除く遅延、位相、振幅のいずれかの組が順に接続され、第1番目に設けられた組の最適干渉信号調整部からの出力が、第2番目に設けられた組の干渉信号調整部及び最適干渉信号調整部に入力され、第2番目に設けられた組の最適干渉信号調整部からの出力が、第3番目に設けられた組の干渉信号調整部及び最適干渉信号調整部に入力され、キャンセル部が、第1のアンテナの受信信号から、第3番目に設けられた組の最適干渉信号調整部の出力を減算する上記ノイズキャンセラー装置としているので、遅延、位相、振幅のパラメータの最適値を、それぞれ独立して求めることができ、一層高精度に干渉信号を除去することができる効果がある。
【0016】
また、本発明によれば、受信信号から干渉信号を除去するノイズキャンセラー装置であって、所望信号を受信するための第1のアンテナと、干渉信号を受信するための第2のアンテナと、第1のアンテナで受信した信号について、遅延、位相、振幅を調整する複数の干渉信号調整部と、複数の干渉信号調整部のそれぞれに対応し、各干渉信号調整部の出力から第2のアンテナの受信信号を減算して差分信号を出力する複数の加算器と、複数の加算器のそれぞれに対応し、差分信号の平均電力の値を算出する複数の平均電力算出部と、複数の平均電力算出部からの出力に基づいて、平均電力の値が最小となる遅延、位相、振幅の値を最適条件として決定する最適条件探索部と、第1のアンテナで受信した信号を、最適条件に基づいて調整する最適干渉信号調整部と、最適干渉信号調整部の出力から第2のアンテナの受信信号を減算するキャンセル部とを備えたノイズキャンセラー装置としているので、干渉信号が定常的に存在し、所望信号が断続的にしか存在しない環境において、干渉信号を精度よく且つ安定して除去することができる効果がある。
【0017】
また、本発明によれば、平均電力算出部における平均電力の値を算出する周期を可変とする上記ノイズキャンセラー装置としているので、実際の通信環境に応じて平均化の周期を設定することができ、干渉信号を精度よく除去することができる効果がある。
【0018】
また、本発明によれば、受信信号から干渉信号を除去するノイズキャンセラー装置であって、所望信号を受信するための第1のアンテナと、干渉信号を受信するための第2のアンテナと、第2のアンテナで受信した信号について、時分割で設定された値に基づいて、遅延、位相、振幅を調整する干渉信号調整部と、第1のアンテナの受信信号から各干渉信号調整部の出力を減算して差分信号を出力する加算器と、差分信号の平均電力の値を時分割で算出する平均電力算出部と、平均電力算出部からの出力を時分割で複数記憶し、平均電力の値が最小となる遅延、位相、振幅の値を最適条件として決定する最適条件探索部と、第2のアンテナで受信した信号を、最適条件に基づいて調整する最適干渉信号調整部と、第1のアンテナの受信信号から最適干渉信号調整部の出力を減算するキャンセル部と、干渉信号調整部に対して、時分割のタイミングで、遅延、位相、振幅の値を設定すると共に、平均電力算出部及び最適条件探索部に、時分割のタイミングを指示する制御部とを備えたノイズキャンセラー装置としているので、回路規模及びコストを抑えつつ、高精度で安定して干渉信号を除去することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置の構成ブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置におけるパラメータと差分信号の平均パワーとの関係を示す説明図である。
図3】第2のノイズキャンセラー装置の構成ブロック図である。
図4】第3のノイズキャンセラー装置の概略構成ブロック図である。
図5】第4のノイズキャンセラー装置の構成ブロック図である。
図6】第1のノイズキャンセラー装置の応用例の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置は、所望信号を受信するメインアンテナと、干渉信号を受信するサブアンテナとを備え、サブアンテナの受信信号を複数に分岐してその各々について、異なる条件で、遅延、位相、振幅を調整して、メインアンテナの受信信号から調整後の信号をそれぞれ減算し、減算結果について特定の周期で平均パワーを算出し、平均パワーが最小となる遅延、位相、振幅の条件を決定し、サブアンテナの受信信号を当該決定した遅延、位相、振幅の条件で調整して、メインアンテナの受信信号から減算するものであり、サブアンテナの受信信号をメインアンテナの受信信号に含まれる干渉信号とできるだけ同等になるよう調整して、メインアンテナの受信信号から減算することで、干渉信号と所望信号の定常性に差がある通信環境において、干渉信号を高精度に安定して除去することができるものである。
【0021】
[第1のノイズキャンセラー装置の構成:図1
本発明の第1の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置について図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置の構成ブロック図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置(第1のノイズキャンセラー装置)は、メインアンテナ11と、サブアンテナ12と、複数の干渉信号調整部13(干渉信号調整部13-1〜13-n)と、遅延部14と、複数の加算器15(加算器15-1〜15-n)と、複数の平均パワー算出部16(平均パワー算出部16-1〜16-n)と、最適条件探索部17と、最適干渉信号調整部18と、遅延部19と、キャンセル部20とを備えている。
そして、キャンセル部20は、信号の情報処理を行う上位装置に接続されている。
【0022】
第1のノイズキャンセラー装置の各部について説明する。
[メインアンテナ11]
メインアンテナ11は、所望信号を受信するためのアンテナであり、具体的には携帯電話の無線信号を受信するためのアンテナである。但し、メインアンテナ11には、他のシステムの干渉信号(BSアンテナからの漏洩信号)が混入する。メインアンテナ11は、請求項に記載した第1のアンテナに相当する。
【0023】
[サブアンテナ12]
サブアンテナ12は、干渉信号を受信するアンテナである。但し、干渉信号のみを受信するのではなく、所望信号やその他の信号も受信する。サブアンテナ12は、請求項に記載した第2のアンテナに相当する。
ここで、所望信号である携帯電話の信号は断続的にしか存在しない定常性の低い信号であるのに対し、干渉信号は、常時存在する定常性の高い信号である。
【0024】
そして、第1のノイズキャンセラー装置は、サブアンテナ12で受信した信号を、メインアンテナ11での受信信号に含まれる干渉信号にできるだけ近い成分となるよう調整した上で、メインアンテナ11で受信した信号から差し引く(取り除く)ことで、メインアンテナ11の受信信号から干渉信号をキャンセルするものである。
【0025】
[干渉信号調整部13]
干渉信号調整部13-1〜13-nは、遅延を調整する遅延調整部、位相を調整する位相調整部、振幅を調整する振幅調整部を備え、サブアンテナ12で受信された信号について、遅延、位相、振幅の各パラメータを調整する。尚、遅延、位相、振幅の調整はどのような順序であっても構わない。
干渉信号調整部13-1〜13-nには、図示しない操作部及び制御部を介して、遅延、位相、振幅の値が設定されており、各干渉信号調整部13-1〜13-nは、それぞれ異なる遅延、位相、振幅の条件でサブアンテナ12の受信信号を調整する。
図1の例では、干渉信号調整部13-1では、「遅延1、位相1、振幅1」の値でサブアンテナ12の受信信号を調整し、干渉信号調整部13-nでは、「遅延n、位相n、振幅n」の値で調整する。
【0026】
尚、各干渉信号調整部13に設定される遅延、位相、振幅のパラメータの範囲は、受信環境や装置構成を考慮して決定される。
例えば、メインアンテナ11、サブアンテナ12からノイズキャンセラー装置までのケーブル長が大きく異なる場合には、遅延の調整範囲を広めに設定する。
また、メインアンテナ11、サブアンテナ12とノイズキャンセラー装置との間にアンプのような装置が設けられて、両者にレベル差が発生する場合には、振幅の調整範囲を広めに設定する。
【0027】
[遅延部14]
遅延部14は、干渉信号調整部13における処理時間分、メインアンテナ11の受信信号を遅延させて、加算器15-1〜15-nに出力する。
[加算器15]
加算器15-1〜15-nは、遅延部14で遅延されたメインアンテナ11の受信信号から、各干渉信号調整部13-1〜13-nの出力を減算して、差分信号を出力する。
【0028】
[平均パワー算出部16]
平均パワー算出部16-1〜16-nは、加算器15-1〜15-nからの差分信号をそれぞれ入力し、特定の周期(期間)で平均化して、差分信号の平均パワー(平均電力)を算出する。
ここで、平均パワー算出部(平均電力算出部)16における平均化の周期について説明する。
第1のノイズキャンセラー装置が用いられる通信環境では、干渉信号は定常的に存在するのに対し、所望信号は断続的にしか存在しないため、平均パワー算出部16において十分長い期間で平均化することにより、平均パワーにおける所望信号の寄与を干渉信号に比べて十分小さくして、なるべく干渉信号のみを観測するようにしている。
【0029】
つまり、本実施の形態に係るノイズキャンセラー装置では、平均化によって、定常的に受信する干渉信号と、断続的にしか受信しない所望信号との差が十分得られるよう、平均パワー算出部16における平均化の周期を十分長期間としている。
これにより、後述するキャンセル部20において、所望波を残して干渉波のみをキャンセルすることができるものである。
【0030】
平均パワーの算出周期は、所望信号の断続性及び干渉信号の定常性に応じて、干渉信号と所望信号との差が得られるように決定され、制御部(図示省略)から平均パワー算出部16に対して設定される。
例えば、干渉信号の定常性が大きい場合には、小さい場合よりも算出周期を短くすることができ、所望信号の断続性が大きい(所望信号を受信する頻度が低い)場合、断続性が小さい(所望信号を受信する頻度が高い)場合よりも算出周期を短くすることができる。
【0031】
[最適条件探索部17]
最適条件探索部17は、平均パワー算出部16-1〜16-nからの平均パワーを全て入力して比較し、どの平均パワー算出部16からの平均パワーの値が最小であるか特定し、当該平均パワー算出部16に対応する干渉信号調整部13における遅延、位相、振幅の条件を最適条件として決定する。最適条件探索部17には、予め、各平均パワー算出部16-1〜16-nに対応する干渉信号調整部13-1〜13-nに設定された遅延、位相、振幅の値が記憶されている。
更に、最適条件探索部17は、最適条件として決定された遅延、位相、振幅の各パラメータの値を、最適干渉信号調整部18に設定する。
【0032】
[平均パワーの変化:図2
ここで、パラメータと差分信号の平均パワーとの関係について図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置におけるパラメータと差分信号の平均パワーとの関係を示す説明図である。
上述したように、メインアンテナ11の受信信号には、所望信号と干渉信号とが含まれている。また、図1に示したように、差分信号は、加算器15においてメインアンテナ11の受信信号から、サブアンテナ12の受信信号を各干渉信号調整部13で調整した調整信号を差し引いた信号である。
【0033】
そのため、調整信号がメインアンテナ11の受信信号に含まれる干渉信号の成分に最も近くなるよう調整された場合に、干渉信号が精度よくキャンセルされて、差分信号の平均パワーが最小となる。
つまり、差分信号の平均パワーが最小となる場合に、干渉信号調整部13から出力された調整信号の成分が、メインアンテナ11の受信信号に含まれる干渉信号の成分に最も近くなっており、そのときのパラメータの値が最適な値となる。
【0034】
図2(a)では、遅延をパラメータとして、遅延量の変化と平均パワーの変化とを示しており、差分信号の平均パワーが最小となる場合の遅延量が最適遅延となる。
同様に、(b)では位相をパラメータとし、(c)では振幅をパラメータとして、差分信号の平均パワーの変化を示しており、それぞれ、平均パワーが最小となる場合の値が、最適位相及び最適振幅となる。
【0035】
尚、第1のノイズキャンセラー装置の最適条件探索部17では、図2に示した遅延、位相、振幅のパラメータの最適値をそれぞれ独立して決定するのではなく、n個の「遅延、位相、振幅」の組み合わせの中から最適となる組を選択し、当該組の各パラメータの値を最適値としている。
【0036】
[最適干渉信号調整部18]
最適干渉信号調整部18は、サブアンテナ12で受信した信号を、最適条件探索部17から設定された値で遅延、位相、振幅を変化させて、最適な調整信号を生成する。
[遅延部19]
遅延部19は、メインアンテナ11で受信した信号を、最適干渉調整部18からの最適な調整信号の出力のタイミングに合わせるよう遅延させる。遅延時間は、最適な調整信号を生成するための処理に要する時間を考慮して予め設定されている。
【0037】
[キャンセル部20]
キャンセル部20は、遅延部19で遅延されたメインアンテナ11の受信信号から、最適干渉信号調整部18からの出力を減算して干渉信号を除去し、所望信号を上位装置に出力する。
最適干渉調整部18からの最適な調整信号は、メインアンテナ11に含まれる干渉信号となるべく同等の成分となるように遅延、位相、振幅が調整されているので、キャンセル部20においてメインアンテナ11の受信信号に含まれる干渉信号はキャンセルされ、所望信号のみが上位装置に出力される。
【0038】
[第1のノイズキャンセラー装置の動作:図1
次に、第1のノイズキャンセラー装置の動作について図1を用いて説明する。
第1のノイズキャンセラー装置では、メインアンテナ11で干渉信号を含む所望信号を受信し、サブアンテナ12で所望信号を含む干渉信号を受信する。
サブアンテナ12の受信信号は、n本に分岐されて干渉信号調整部13-1〜13-nに入力され、それぞれ、遅延、位相、振幅を調整された調整信号として出力され、加算器15-1〜15-nに入力される。
【0039】
メインアンテナ11の受信信号は遅延部14で遅延されて、加算器15-1〜15-nに入力され、加算器15-1〜15-nにおいて、メインアンテナ11の受信信号から干渉信号調整部13-1〜13-nで調整された調整信号が差し引かれ、差分信号が出力される。
【0040】
差分信号は平均パワー算出部16-1〜16-nに入力されて、特定の周期で平均化され、n個の平均パワーが出力されて、最適条件探索部17に入力される。
そして、最適条件探索部17で最適なパラメータの組が決定されて最適干渉信号調整部18に設定され、サブアンテナ12の受信信号について、最適干渉信号調整部18で遅延、位相、振幅の調整がなされる。
【0041】
そして、キャンセル部20において、遅延部19で遅延されたメインアンテナ11の受信信号から、最適干渉信号調整部18の出力が減算されて、干渉信号がキャンセルされ、所望信号が上位装置に出力される。
このようにして、第1のノイズキャンセラー装置の動作が行われる。
【0042】
[第1の実施の形態の効果]
第1のノイズキャンセラー装置によれば、複数の干渉信号調整部13が、サブアンテナ12の受信信号について異なる条件で遅延、位相、振幅を調整して各調整信号とし、メインアンテナ11で受信された信号から各調整信号を減算して差分信号とし、平均パワー算出部16で各差分信号の平均パワーを算出し、最適条件探索部17が各平均パワーを比較して、平均パワーが最小となる場合の遅延、位相、振幅を決定して最適干渉信号調整部18に設定し、最適干渉信号調整部18がサブアンテナ12の受信信号を最適な遅延、位相、振幅の条件で調整して最適な調整信号とし、キャンセル部20がメインアンテナ11の受信信号から最適な調整信号を減算して、干渉信号を除去して所望信号のみを上位装置に出力するようにしているので、所望信号が非定常的に存在し、干渉信号が定常的に存在する場合に、干渉信号を精度よく且つ安定してキャンセルすることができる効果がある。
【0043】
特に、第1のノイズキャンセラー装置では、干渉信号調整部13で調整した調整信号を実際にメインアンテナ11の受信信号から差し引いて、その結果最適なパラメータの組を最適干渉信号調整部18に設定するようにしているため、高精度のキャンセル動作を安定して行うことができるものである。
これは、後述する各実施の形態に係るノイズキャンセラー装置においても同様である。
【0044】
また、所望信号が狭帯域信号で干渉信号が広帯域信号の場合、所望信号と干渉信号の単位帯域当たりのパワーが同じであれば、干渉信号の方が全体としてのパワーが大きくなるため、干渉信号をより正確に観測することができ、一層精度よく干渉信号をキャンセルすることができるものである。
【0045】
[第2のノイズキャンセラー装置:図3
次に、本発明の第2の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置(第2のノイズキャンセラー装置)について図3を用いて説明する。図3は、第2のノイズキャンセラー装置の構成ブロック図である。
上述した第1のノイズキャンセラー装置では、サブアンテナ12で受信した信号について遅延、位相、振幅の調整を行ったが、第2のノイズキャンセラー装置は、メインアンテナ11で受信した信号について調整を行って、メインアンテナ11の受信信号に含まれる干渉信号成分をサブアンテナ12で受信した干渉信号成分に近づけるようにして、干渉信号を除去するものである。
【0046】
図3に示すように、第2のノイズキャンセラー装置の構成要素は、図1に示した第1のノイズキャンセラー装置と同様であるが、メインアンテナ21の受信信号を複数に分岐して干渉信号調整部24-1〜24-nに入力して、遅延、位相、振幅の調整を行って調整信号を出力するようにしている。
各構成部分の動作は、図1に示した第1のノイズキャンセラー装置と同様である。
【0047】
そして、加算器25-1〜25-nにおいて、各調整信号から、遅延器24で遅延させたサブアンテナ22の受信信号を減算して差分信号を出力し、平均パワー算出部26-1〜26-nで特定周期で平均化して差分信号の平均パワーを算出する。
【0048】
平均パワーは最適条件探索部27に入力され、最適条件探索部27において、平均パワーが最小となる干渉信号調整部23の遅延、位相、振幅の組み合わせが選択されて、最適な条件として最適干渉信号調整部28に設定される。
第2のノイズキャンセラー装置において、平均パワーが最小となる条件は、メインアンテナ21で受信した信号に含まれる干渉信号を、サブアンテナ22で受信した干渉信号の成分と同等となるように調整するための条件となる。
【0049】
そして、最適干渉信号調整部28でメインアンテナ21の受信信号について、遅延、位相、振幅が調整されて、キャンセル部30で、サブアンテナ22の受信信号が減算されて、メインアンテナ21の受信信号から干渉信号が除去され、所望信号のみが上位装置に出力される。
【0050】
[第2の実施の形態の効果]
第2のノイズキャンセラー装置によれば、最適条件探索部27が、メインアンテナ21で受信した信号を、サブアンテナ22で受信した干渉信号と同等な成分となるように調整する遅延、位相、振幅の条件を求め、最適干渉信号調整部28が求められた条件で調整して最適な調整信号を出力し、キャンセル部30でメインアンテナ21の受信信号から最適な調整信号を減算するようにしているので、所望信号が非定常的に存在し、干渉信号が定常的に存在する環境において、高精度で安定してメインアンテナ21の受信信号から干渉信号を除去できる効果がある。
尚、第2のノイズキャンセラー装置は、第1のノイズキャンセラー装置と同等のキャンセル効果が得られるものである。
【0051】
[第3のノイズキャンセラー装置:図4
次に、本発明の第3の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置(第3のノイズキャンセラー装置)について図4を用いて説明する。図4は、第3のノイズキャンセラー装置の概略構成ブロック図である。
第1、第2のノイズキャンセラー装置は、遅延、位相、振幅のパラメータを全て調整してから平均パワーを算出して最適値を求めているが、第3のノイズキャンセラー装置は、遅延、位相、振幅について1つずつ順番に最適な値を探索するものである。
【0052】
図4に示すように、第3のノイズキャンセラー装置は、メインアンテナ31と、サブアンテナ32と、遅延の最適条件を探索する遅延条件探索ブロック33と、位相の最適条件を探索する位相条件探索ブロック35と、振幅の最適条件を探索する振幅条件探索ブロック37とを備え、各探索ブロックで探索された条件でサブアンテナ32の受信信号を順次調整する最適遅延調整部34と、最適位相調整部36と、最適振幅調整部38とを備えている。
更に、第3のノイズキャンセラー装置は、メインアンテナ31の受信信号を適宜遅延させる遅延部39a、39b、39c、39dと、キャンセル部40を備えている。
【0053】
遅延条件探索ブロック33は、基本的に、図1に示した干渉信号調整部13-1〜13-n、加算器15-1〜15-n、平均パワー算出部16-1〜16-n、及び最適条件探索部17を備えた構成である。但し、遅延条件探索ブロック33の干渉信号調整部には、遅延調整部のみが設けられており、位相調整部や振幅調整部は設けられていない。
位相条件探索ブロック35は、遅延調整部の代わりに位相調整部を備えている点を除いて、遅延条件探索ブロック33と同様の構成である。
同様に、振幅条件探索ブロック37は、振幅調整部を備えている。
【0054】
そして、遅延条件探索ブロック33は、サブアンテナ32の受信信号と遅延部39aで遅延されたメインアンテナ31の受信信号とを用いて、最適な遅延条件を求める。
最適遅延調整部34は、遅延条件探索ブロック33で決定された最適な遅延量で、サブアンテナ32の受信信号の遅延量を調整し、遅延が調整された信号を位相条件探索ブロック35に出力する。
【0055】
位相条件探索ブロック35は、遅延が調整された最適遅延調整部34の出力信号と、遅延部39bで遅延されたメインアンテナ31の受信信号とを用いて、最適な位相条件を求める。
最適位相調整部36は、位相条件探索ブロック35で決定された最適な位相で、最適遅延調整部34の出力信号の位相を調整し、遅延及び位相が調整された信号を振幅条件探索ブロック37に出力する。
【0056】
振幅条件探索ブロック37は、遅延と位相とが調整された最適位相調整部36の出力信号と、遅延部39cで遅延されたメインアンテナ31の受信信号とを用いて、最適な振幅条件を求める。
最適振幅調整部38は、振幅条件探索ブロック37で決定された最適な振幅で、最適位相調整部36の出力信号の振幅を調整し、キャンセル部40に出力する。最適振幅調整部38からの出力信号は、遅延、位相、振幅が調整された最適な調整信号となる。
【0057】
そして、キャンセル部40において、遅延部39dで遅延させたメインアンテナ31の受信信号から、最適振幅調整部38からの最適な調整信号を減算して、メインアンテナ31の受信信号に含まれる干渉信号を除去するものである。
つまり、第3のノイズキャンセラー装置では、干渉信号調整部と、最適条件探索部と、最適干渉信号調整部の組が、遅延、位相、振幅の各パラメータについてそれぞれ設けられて、順に接続されている。
尚、図4の例では、各パラメータの条件探索及び最適な値による調整は、遅延、位相、振幅の順で行っているが、どのような順であってもよい。
また、メインアンテナ31の受信信号について、同様に、遅延、位相、振幅のパラメータ毎に調整を行う構成としてもよい。
【0058】
[第3の実施の形態の効果]
第3のノイズキャンセラー装置によれば、遅延、位相、振幅の各パラメータについて、最適な条件を精度よく決定でき、メインアンテナ31の受信信号から、高精度で安定して干渉信号を除去することができる効果がある。
【0059】
[第4のノイズキャンセラー装置:図5
次に、本発明の第4の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置(第4のノイズキャンセラー装置)について図5を用いて説明する。図5は、第4のノイズキャンセラー装置の構成ブロック図である。
上述した第1のノイズキャンセラー装置では、複数の干渉信号調整部13-1〜13-nが並列に処理を行うようにしているが、第4のノイズキャンセラー装置は、一つの干渉信号調整部が時分割でパラメータを設定して調整するようにしている。
【0060】
具体的には、図5に示すように、第4のノイズキャンセラー装置の特徴部分として、遅延、位相、振幅を調整する干渉信号調整部43と、差分信号の平均パワーを算出する平均パワー算出部46と、遅延、位相、振幅の最適条件を決定する最適条件探索部47と、時分割の制御を行う制御部51とを備えている。
【0061】
干渉信号調整部43は、遅延設定部・位相設定部・振幅設定部を備え、制御部51から時分割で設定されるパラメータに基づいて、サブアンテナ42の受信信号を調整する。
【0062】
制御部51は、干渉信号調整部44の遅延設定部・位相設定部・振幅設定部のパラメータの値を、予め設定された時分割のタイミングで順次変えて設定すると共に、平均パワー算出部46及び最適条件探索部47に時分割のタイミングを指示する。
遅延、位相、振幅のパラメータの組は予め複数個用意されており(例えばn組)、制御部51は、n組のパラメータを時間をずらして設定していく。
【0063】
加算部45は、遅延されたメインアンテナ41の受信信号から、干渉信号調整部43で調整された調整信号が減算されて差分信号を出力する。
平均パワー算出部46は、差分信号の平均パワーを算出して、制御部51からのタイミングに基づいて最適条件探索部47に出力する。
【0064】
最適条件探索部47は、n個分の平均パワーの値を保持する記憶部を備え、入力される平均パワーの値を順次記憶しておく。最適条件探索部47は、制御部51からのタイミングをカウントすることで、入力された平均パワーが何番目のパラメータによるものであるかを特定し、所定のエリアに記憶する。
【0065】
そして、n個分記憶した場合に、最適条件探索部47は、n個の中で最小となる平均パワーを特定し、それに対応する遅延、位相、振幅の値を最適な条件として決定する。そして、決定された最適なパラメータの値を最適干渉信号調整部48に出力する。
【0066】
最適条件探索部47には、予め、時分割の順番(番号)に対応するn個のパラメータの組が記憶されているものである。尚、平均パワーが最小となったパラメータの番号が特定された場合に、最適条件探索部47が制御部51に当該番号を付してパラメータの値を問い合わせる構成としてもよい。
また、メインアンテナ41で受信した信号について、遅延、位相、振幅を時分割で調整する構成としてもよい。
【0067】
[第4の実施の形態の効果]
第4のノイズキャンセラー装置によれば、干渉信号調整部43を1つだけ設けて、制御部51が、時分割でパラメータを時間毎に変えて設定して調整を行うようにしているので、回路規模及びコストを大幅に低減することができる効果がある。
【0068】
[応用例:図6
次に、本発明の実施の形態に係るノイズキャンセラー装置の応用例について図6を用いて説明する。図6は、第1のノイズキャンセラー装置の応用例の構成ブロック図である。
上述した第1〜第4のノイズキャンセラー装置では、メインアンテナとサブアンテナとを備え、一方のアンテナで受信した信号について、遅延、位相、振幅を調整して、他方のアンテナで受信した信号との差分信号を求めるようにしているが、応用例は、図6に示すように、メインアンテナ51のみを設け、その受信信号を用いてキャンセル動作を行うものである。
【0069】
具体的に説明する。
図6に示すように、第1のノイズキャンセラー装置の応用例では、メインアンテナ51の受信信号を大きく2つの系に分岐して、一方をメインの信号系として遅延部59及び最適干渉信号調整部58に入力すると共に、他方を調整信号生成用の系として処理を行う。
【0070】
他方の系の信号は、複数の干渉信号調整部53-1〜53-nに入力されると共に、遅延部54に入力されて、加算器55-1〜55-nで差分信号が出力され、平均パワー算出部56-1〜56-nで平均パワーが算出される。
【0071】
そして、最適条件探索部57で、平均パワーが最小となる遅延、位相、振幅の値が最適条件として決定され、最適干渉信号調整部58において、最適条件でメインアンテナ51の受信信号の遅延、位相、振幅が調整され、キャンセル部20で遅延部59の出力から最適干渉信号調整部58の出力が減算されて、メインアンテナ11の受信信号から干渉信号がキャンセルされる。
同様に、第2、第3、第4のノイズキャンセラー装置についても、メインアンテナのみを設けた構成とすることが可能である。
尚、ここでは所望信号を受信するメインアンテナ51を1本のみ設けた構成としたが、これに限らず、任意のアンテナであってもよい。
【0072】
[応用例の効果]
応用例によれば、信号を受信するアンテナとしてメインアンテナ51のみを設け、メインアンテナ51の受信信号を2つの系に分岐して、一方の系の信号を干渉信号調整部53-1〜53-nで調整し、遅延させた受信信号との差分信号を求め、平均パワー算出部56-1〜56-n平均パワーが最小となる遅延、位相、振幅の値を最適条件として決定し、決定された最適条件で分岐された他方の系の信号を調整して、遅延された受信信号とキャンセルさせることにより、簡易な構成で、受信信号中に含まれる干渉信号を精度よく除去することができる効果がある。
【0073】
この出願は、2016年9月14日に出願された日本出願特願2016−179910を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、特に他のシステムからの干渉信号を高精度で安定して除去することができるノイズキャンセラー装置に適している。
【符号の説明】
【0075】
11,21,31,41,51...メインアンテナ、 12,22,32,42...サブアンテナ、 13,23,43,53...干渉信号調整部、 14,24,44,54...遅延部、 15、25,45,55...加算部、 16、26,46,56...平均パワー算出部、 17,27,47,57...最適条件探索部、 18,28,48,58...最適干渉信号調整部、 19,29,39,49,59...遅延部、 20、30,40,50,60...キャンセル部、 33...遅延条件探索ブロック、 34...最適遅延調整部、 35...位相条件探索ブロック、 36...最適位相調整部、 37...振幅条件探索ブロック、 38...最適振幅調整部、 51...制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6