特許第6584077号(P6584077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6584077バケットシート構造及び調整可能位置を有する乗員シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584077
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】バケットシート構造及び調整可能位置を有する乗員シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/12 20060101AFI20190919BHJP
   B64D 11/06 20060101ALI20190919BHJP
   B60N 3/06 20060101ALN20190919BHJP
【FI】
   B60N2/12
   B64D11/06
   !B60N3/06
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-15992(P2015-15992)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-141170(P2016-141170A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2018年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】515027576
【氏名又は名称】ウアドエス ソジエルマ
【氏名又は名称原語表記】EADS SOGERMA
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】テクセロ,ロラン
(72)【発明者】
【氏名】ジエロム,オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】マルタン,ガブリエル
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−205690(JP,A)
【文献】 特表2008−510554(JP,A)
【文献】 米国特許第05992798(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/90
B64D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の乗員キャビンのためのシート(100)であって、バケットシート(10)を備え、
このバケットシート(10)は、
シートパン(11)と、
このシートパン(11)に取り付けられ、これと一定の角度で2面角を規定するバックレスト(12)と、
前記バックレストに取り付けられるヘッドレスト(121)と、を備え、
前記バケットシート(10)は基部(20)と一体化され、
前記バケットシートは、前記シートパン(11)が概ね水平である着座位置“a”と、
前記バックレスト(12)が前記着座位置“a”に対して角度Aで、回転により前記基部に対して旋回軸(21)周囲を後方へ旋回する休息位置“r”との間で可動であり、
この旋回軸は、前記バケットシートが着座位置“a”にある際、前記基部に対して固定であり、前記シートパン(11)の上方であって前記バックレスト(12)の前方に位置し、ここで、
前記基部(20)は、前方に向かって開放し、前記バケットシートを保持するボックスを形成し、及び、
前記ヘッドレスト(121)は、前記バックレスト(12)にヒンジで連結され取り付けられて、前記基部(20)の構造との干渉のリスクを回避する、
ことを特徴とするシート(100)。
【請求項2】
前記バケットシート(10)は、前記シートパン(11)と、前記シートパンの前方部分で一体化し、前記シートパンに対して固定され、前記バケットシートが前記着座位置“a”にある際に概ね垂直であり、前記バケットシートが前記休息位置“r”にある際、前記バケットシートの傾斜によって傾斜して、シートの乗員がその脚の下部を置くことを可能とする、前方パネル(13)を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート(10)。
【請求項3】
前記バケットシート(10)は、前記シートパン(11)と、前記シートパンの前方部分で一体化し、前記バケットシートが前記着座位置“a”にある際に、前記シートパンに対して概ね垂直にヒンジにより連結される前方パネル(13)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のシート(10)。
【請求項4】
前記旋回軸(21)は、前記旋回軸(21)の位置が前記基部(20)に取り付けられ、そのガイドレール上で前記バケットシート(10)のローラー又はシューが移動する1つ又は複数のガイドレールの形状により規定される、及び/又は、前記バケットシート(10)に取り付けられ、そのガイドレール上で前記基部(20)のローラー又はシューが移動する1つ又は複数のガイドレールの形状により規定される、仮想的な軸である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート(10)。
【請求項5】
前記基部(20)は、前記シートの下部に、対象となる前記シート後方に位置するシートの乗員が使用するための、前記シートの後方に向かって開放する足元スペース(22)を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート(10)。
【請求項6】
前記基部(20)及び前記バケットシート(10)の間に、バネ手段が配置されて、前記バケットシート(10)の重量の前部又は一部を補償する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート(10)。
【請求項7】
前記基部(20)及び前記バケットシート(10)の間に、少なくとも1つのアクチュエータが配置されて、前記バケットシートを前記基部に対して、前記着座位置“a”及び前記休息位置“r”の間でシフトさせる、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート(10)。
【請求項8】
前記旋回軸(21)は、シートパン平面及びバケットシートバックレスト平面の交点から、300mmから500mmの間の距離に位置し、及び、その上のシートが取り付けられるフロア上方に、800mmから900mmの間の高さに位置する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシート(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員輸送乗物(vehicle)用シートの分野に属する。より詳細には、本発明は、陸路、海路又は空路で乗員を輸送する乗物の乗員キャビン(cabin)のためのシートに関する。こうしたシートは、例えば、乗員輸送航空機のキャビンに据え付けられる。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗物のキャビン内で乗員を輸送するために使用されるシートにより、このシートの占有者(乗員)(occupant)がその形状に適応して快適性の要求を満たすことが可能となる。
例えば、航空機キャビン内で、そのバックレスト(背もたれ)(back rest)が、シートの占有者がその要求の関数(function)として調整する、複数の傾斜を可能とすることが公知である。
こうしたシートにおいて、バックレストとシートパン(シート底面)(seat pan)との間のヒンジ(蝶番)(hinge)の存在は、複雑であって、故障の原因となり得、及びシート構造の補強及びシート重量を増加させる機構を招く。
【0003】
傾斜可能なバックレストの他の難点は、バックレストの裏側(後方)の利用可能な空間を減少させるという事実によるものであり、この空間は一般に、対象となる(under consideration)シートの後方に位置する乗員のシートに関連する。
この場合、バックレストが傾斜される際に、シートのシートパンを前進させて、バックレストにより占有される領域を制限することが知られている。しかし、この解決手段は、複雑さ及びシート重量をさらに増加させてしまう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、シート構造を単純化しつつシートの快適性を向上させることにより、これらの難点を解消することを目的とする。
本発明の目的とするところは、より詳細には、シートパンと、及びこのシートパンに一定角度(constant angle)で2面角(dihedron)を規定して取り付けられるバックレストと、を備えるバケットシート(bucket seat)を備える、乗物の乗員キャビンシートである。このバケットシートは、シートパン(11)が概ね水平である着座位置“a”と、バックレスト(12)が着座位置“a”に対して角度Aで、基部に対して回転により旋回軸周囲を後方へ旋回する(pivoted)休息位置“r”との間で、その上でバケットシートが可動である、シートの基部と一体化される。この旋回軸は、バケットシートが着座位置“a”にある際、基部に対して概ね固定(stationary)であり、シートパンの上方でバックレストの前方に位置する。
【0005】
シートが休息位置へと旋回する際に、バックレスト及びシートパンの位置を、より少ない力で、バックレストの後方への延長(拡張)を伴わずに、又は僅かな延長で、変更することが可能であるシートが、こうして得られる。
ある実施形態において、バケットシートは、シートパンの前方部分でシートパンと一体化された前方パネルを備え、この前方パネルは、バケットシートが着座位置“a”にある際に概ね垂直であり、及びバケットシートが休息位置“r”にある際に傾斜してシートの占有者(乗員)がその脚の下部を置くことを可能にする。シートが休息位置にある際にシートの占有者(乗員)がその脚を置くことを可能にし、シートが着座位置にある際にいかなる支障も来たさない表面が、こうして得られる。
【0006】
ある実施形態において、旋回軸(pivoting axis)は、その位置が、基部に取り付けられ、そのガイドレール上をバケットシートのローラー又はシュー(滑走部)(shoes)が移動する1つ又は複数のガイドレールの形状により規定され、及び/又は、バケットシートに取り付けられ、そのガイドレール上を基部のローラー又はシュー(滑走部)が移動する1つ又は複数のガイドレールの形状により規定される、仮想的な軸である。
【0007】
ガイドレールと、ローラー又はシュー(滑走部)とのアセンブリは、バケットシートの平衡(バランス)を決定しながら、基部及びバケットシートの構造と一体化することができ、こうして、シートの乗員から不可視とされることができる。乗員はこうして、レールや他の機構要素のいずれかの内部に挟まれる(wedged)ことのリスクから保護され、及びレール自体は、機構内に偶然取り込まれ得る異物から保護される。
【0008】
ある実施形態において、基部は、シートの底部にある足元スペース(footwell)を備え、この足元スペースは、対象となるシートの後方(背後)に位置するシートの乗員の使用のため、シートの後方に向かって開放する。こうして、特に休息位置において、改良された快適空間が、対象となるシートの後方に位置するシートの乗員にもたらされる。この快適空間は、着座位置における場合と比較して増加した間隔でシートを配置する必要なく、又はこうした足元スペースがなかったとしたなら休息位置においてシートの乗員の快適性を維持するのに必要とされるであろうものより少ない間隔の増加で、実現される。
【0009】
特定の実施形態において、ヘッドレストは、バックレストにヒンジで動く手法で取り付けられ、及び/又は、前方パネルは、シートパン上でヒンジにより動く。
これらの実施形態において、バケットシートの旋回の間、ヘッドレスト、及び脚のための休息表面として使用される前方パネルにより延長(拡張)される、バケットシート、シートパン及びバックレストの全般的なプロファイル(外形)を変更することが可能となる。これにより、バケットシートの位置の関数としてシートのより人間工学的形状を得ることができ、及びバケットシートの構造と基部の構造との間の干渉の可能性を回避することができる。
【0010】
ある実施形態において、バネ手段は、基部及びバケットシートの間に配置されて、バケットシートの重量の全部又は一部を補償する。こうして、おそらくキャビンの準備の間シートが設置されるキャビンの民間スタッフメンバーによって、バケットシートの位置が、旋回軸周囲でシートの乗員の筋力により変更される際、バケットシートの1つの位置から他の位置、すなわち着座、休息又は中間位置、へ行くための力が、要求される力が低減されることにより容易化されることが見出される。
【0011】
ある実施形態において、少なくとも1つのアクチュエータは、基部及びバケットシートの間に配置され、前記バケットシートを前記基部に対して、着座位置“a”及び休息位置“r”の間でシフトさせる。こうして、バケットシートの位置を筋力により変更する可能性を必要的に排除することなく、シートの乗員が、バケットシートの位置をいかなる特別な力(effort)をも要することなく変更することが可能となる。
本発明の特定の実施形態の詳細な説明及び図面により、本発明の目的及び利点のより良好な理解が可能となる。以下の詳細な説明は、例示的に説明されるものであって、限定的に解されるものではないことは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、各列2つのシートの2列で配置された、本発明に係る一群のシートを示す斜視図である。
図2図2は、本発明に係る分離されたシート、及び着座位置にあるその乗員の斜視側面図である。
図3】他のシートの後方に位置し、その乗員が休息位置にある、本発明に係るシートの斜視側面図である。
図4図4は、着座位置及び休息位置の間で基部に対してバケットシートをシフトすることを説明する模式図である。
図5図5は、後方から、他のシートの後方に位置し、その乗員が休息位置にある、本発明に係るシートの斜視図であり、本発明に係るシート基部の後部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2は、分離された、本発明に係るシートを示し、このシートは、着座位置にある乗員と共に示されている。以下の詳細な説明において、シート参照符号X,Y,Zは、シートの縦、横、及び垂直(鉛直)軸を示すため使用される。シートの乗員により与えられ得る一般的な方向を使用して、縦軸Xに沿って、用語「前方(front)」、「後方(rear)」、「前部(anterior)」、及び「後部(posterior)」が使用され、及び垂直軸Zに沿って、用語「頂部(top)」、「底部(bottom)」、「上方(above)」、及び「下方(below)」が使用される。
【0014】
シート100は、主として、基部20及びバケットシート10を備える。
このシート100はまた、アクセサリー要素、例えば、非限定的に、アームレスト31、折り畳み式(foldaway)トレイ32、隣接する席から分離するための可動仕切り(divider)33、等を備える。
シート100は、基部20により、公知の図示しない方法で、例えばフロアトラック(レール)上で、乗物のフロア40に取り付けられる。これにより、キャビン内のシートの位置を、キャビンを構成する間調整すること、及び特にシート列を提供することが可能となる。これにより、キャビンの快適さの所望のレベルに対応して、あるシートと前方に位置するシートとの間の分離距離、又はシートの間隔、が維持される。
【0015】
バケットシート10は、シートパン11と、バックレストの上方部分でこのバックレストのヘッドレスト121により延長(拡張)するバックレスト12とを備える。シートの乗員がその上に載る(rest on)シートパン11の表面、及びバックレスト12の表面は、固定の(一定の)2面角を形成する。この固定の2面角は、シートの乗員の快適性のため、クッション又は複数の層(合板)により被覆される、シートのバケットシートの剛性構造により得られる。
【0016】
図1及び図2に示されるように、シートパン及びバックレストの間の2面角の角度は、100°に近く、好適には、概ね100°を上回り、例えば100°及び120°の間であり、シートの着座位置“a”、及び後に詳述されるように、シートの休息位置“r”の双方に、2面角の角度を変更することなく、所望される快適性を考慮に入れる。
バケットシート20は、バケットシート10が見出される前方に向かって開放するボックスの全般的形状を有する。実際には多様な形状をとり得る開放ボックスは、主として、バケットシートを保持し、及びシートをキャビンのフロアへ取り付けるための構造として機能し、及び、乗員に寛いだ形を創り出すため、バケットシートと乗員とをキャビンの周辺環境から隔絶するためのハウジングとして機能する。
【0017】
バケットシート10は、図1において前方シートにより、及び図2により示される着座位置と、図1において後方シートにより、及び図3において最前面により示される休息位置との間で、移動可能な方法で、基部20と一体化する。
バケットシートの着座位置において、シートパン11の表面は、公知の方法で、シートのため概ね水平であり、及びバックレスト12の表面は、2面角の角度に対応する直立位置にある。
バケットシートの休息位置において、バケットシートは、着座位置に対して後方へ角度Aで傾斜させられる。バケットシートが傾斜するため、シートの乗員の視点に基づくと、休息位置においてバックレスト12は、後方へ傾斜し、及びシートパン11は、前方で上昇する(持ち上がる)。
この角度Aは、有利には、15°及び30°の間であり、寛ぎ位置の快適性角度(comfort angle)に対応して、例えば17°及び28°の間であるが、この角度の値は、それにもかかわらず、続きのシート列が配置される間隔の、及びシートの乗員にもたらされる快適性のレベルの、関数として調整されることができる。
【0018】
着座位置及び休息位置の間でのバケットシート10の傾斜は、バケットシートの、水平旋回軸21、すなわち基部20に対して参照シートのY軸に平行な軸、周囲の回転により得られる。
旋回軸21の位置は、基部20に対して固定される。さらに、旋回軸21は、図4の概略図に示されるように、シートパン11の表面の上方であり、かつバックレスト12の表面の前方に位置する。着座位置“a”及び休息位置“r”において、バケットシート10及び基部11の形状は、シートのプロファイル(外形)の視点からの骨格(skeletal)構造で表される。
【0019】
有利には、着座位置において、旋回軸の位置は、この旋回軸を備える垂直面(鉛直面)が、着座する人間の従来型の位置、すなわち背中が概ねシートのバックレストにもたれる(接触する)位置、においてバケットシート及びシートの乗員により形成されるユニットの重心から、垂直線(鉛直線)の前方に位置するように設定される。
休息位置において、バケットシートの振り子運動により、同じ重心の垂直線は、旋回軸を備える垂直面に接近するが、好適にはこの場合、この垂直面の前方を通過しない。
こうして、着座位置にある際、バケットシートの運動を開放することにより、バケットシート及びその乗員は、休息位置へとシフトし、好適には、好適な手段、例えば流体摩擦ダンパー、により、重力の単純な効果の下、この運動が減衰される。
【0020】
しかしながら、休息位置において、乗員が傾斜するバケットシート内で起き上がり、及び前方にかがんだ(leans)際、バケットシート及びシートの乗員により形成されるユニットの重力中心は、旋回軸を備える垂直面前方を通過し、及び、このため、バケットシートが重力の単純な効果により開放されるとするならば、この転換運動のためアクチュエータを使用する必要なく、乗員が、着座位置に復帰することを可能とする。
この理由のため、バネ要素により、必要であれば、旋回軸に対して重力中心からの安定位置をシフトし、及び付随して乗員の前方運動を制限して着座位置への復帰を保証することが可能となることに留意すべきである。
【0021】
成人に適合するバケットシートの寸法に基づいた実施形態の例において、旋回軸は、シートパン平面及びバケットシートバックレスト平面の交点から300mmから500mmの間の距離に位置し、及び、シートがその上に取り付けられるフロア上方の高い位置に、800mmから900mmの間に位置する。
旋回軸21の上昇した位置のため、バケットシート10及びシートの乗員を備えるユニットの重力中心は、旋回軸下方に見出され、これにより、バケットシート10の振り子運動が可能となる。
旋回軸21の位置のため、バケットシート10が着座位置“a”から休息位置“r”へ至る際、旋回軸21の高さ近傍の高さに位置するバックレストの休息ポイントは、本質的に垂直運動を描く。バックレスト後方を占める領域の増加は、図4に示すように、こうして、回避されないとしても制限されることができる。
【0022】
シート100において、旋回軸21は、有利には、その位置が、基部20に取り付けられる図示されない1つ又は複数のガイドレールの形状により規定される仮想的な軸である。そのガイドレールの上をバケットシート10のローラー又はシュー(滑走部)が移動する。このガイドレールはまた、バケットシートに取り付けられることができ、及びローラー又はシュー(滑走部)は基部に取り付けられることができる。
【0023】
ガイドレールは、その中心が旋回軸に対応する円弧状のカーブを示す。シートはまた、バケットシート10の位置付けのため、図示されない係止(locking)手段、例えば孔に係合する格納式(retractable)ピン又はブレーキシステムを備え、これにより、シートの乗員は、バケットシートを少なくとも着座位置及び休息位置において固定する(静止させる)(immobilize)ことができる。有利には、係止手段により、バケットシートを、着座位置及び休息位置の間の1つ又は複数の中間位置で固定することが可能となる。
【0024】
バケットシート10の振り子のような据付のため、バケットシートをシフトするための力は、比較的減少し、実際上は垂直線と、旋回軸21及び可動ユニット、すなわちバケットシート単独又はバケットシートとシート乗員、の重力中心により規定される方向と、の正弦(サイン)角度の関数として、減少する。
こうして、シートの乗員が、支点(fulcrum)として機能する、フロア上にその足で、及び/又は、アームレストにその腕で、僅かな(moderate)力を付与することにより、すでに開放されたバケットシート10の位置を変更することが可能になる。必要であれば、バネ手段が、力の部分的な補償を確保して、バケットシートを休息位置又は中間位置から着座位置へと戻す。有利には、この場合、バネ手段は、少なくともバケットシート10の重量を補償し、これにより、シートの乗員がない場合に、より減少された力でこれを上昇させることができる。
【0025】
このバネ手段は、例えば、弾性要素又はガス接続ロッドであり、後者は、単純な手法で、休息位置に向かった下降のため、及びバケットシートの着座位置への突然の上昇を回避するための双方のために、減衰(ダンバー)機能を組み込むことの利点を提供する。
ある実施形態において、バケットシート10は、アクチュエータ、例えば電動アクチュエータ、の手段により可動であり、これは、例えば、一方では、その端部で基部と一体化するボール継ぎ手(ジョイント)(ball joints)に備え付けられるリニアアクチュエータであってよく、又は、他方では、バケットシートと共に、環状(リング状)歯車と噛合する歯車(toothed gear)を駆動するモータであってよい。
【0026】
ある実施形態において、バケットシートはまた、前方パネル13を備える。この前方パネル13は、シートパン11の前方端部近傍に位置し、及びこのシートパン下方に延長する。
バケットシートが着座位置にある際、前方パネル13は、概ね垂直(鉛直)である。バケットシートが休息位置にある際、前方パネル13は、バケットシートのユニットのように、着座位置に対して同じ角度で傾斜して、この場合に、シートの乗員がその脚の下位部分を置くことのできる表面を形成する。
前方パネル13のパディング(詰め物)は、必要に応じて休息位置における快適性を向上させる。前方パネル13により、また、シートパン12下方に閉止空間を生成することが可能になり、及び必要に応じて、前方パネル13は、シートの乗員が利用可能な収納スペースを収容し、又は1つの安全器具、例えば航空機の場合の救命胴衣、を置くことが可能となる。
【0027】
その代償として、固定された基部、及びシートのバックレスト12がほとんど移動しない、又はバケットシートの多様な位置の間で後方へ移動しない、という事実のため、シートパン11は、休息位置において前方へシフトし、対象となるシート100と、キャビン内でこの前方にあるシートとの間で利用可能なスペースを減少させる。
この難点は、有利には、シート間隔を増加させる必要なくして、シートの基部の下部に足元スペース(footwell)を提供することにより補償される。この足元スペースは、図3及び図5に示されるように、対象となるシートの直接後方(背後)に位置するシートの乗員が使用するためのものである。
【0028】
こうした足元スペースは、バケットシートが移動するためシートに組み込まれる機械的要素が単純化されたものであるため、深刻な制約なく設けることができる。
特に、ガイドレールは、有利には、シートの側部端近傍に配置され、これにより、シートパン11下方に自由なスペースが残され、このシートパンをシフトすることを考慮して、このスペースが、足元スペース22のため、又は他の収納スペース及び/又はシートの器具のために使用され得る。
この基部の後部において基部20が移動しないことにより、対象となるシートの後方に位置するシートの乗員が利用可能な器具、例えばスクリーン、を基部に単純に統合することが可能となる。
多様な種類の変形例は、当業者にとって本発明の範囲から逸脱することなくその範囲内にある。
【0029】
特に、上記で説明された例では固定されていた旋回軸の位置は、例えば厳格には円弧でないガイドレールを使用することにより、バケットシートの位置に若干依存してもよく、これにより、バケットシートの位置、及び異なる位置へシフトさせるための力を調整することができる。しかしながら、この場合、旋回軸のシフトは、シートの参照マークで、主として前後方向Xにおいて、数センチメートルに制限され、及び、バケットシートは、この場合、常に、シフト及び力の連続性を保証する実質的に振り子運動の対象となる。
【0030】
例えばヘッドレスト121又は前方パネル13のような、バケットシート10のアクセサセリは、約10°のオーダーでの制限された移動角度であっても、バケットシート、ヘッドレスト又はヒンジで連結された前方パネル、の上に固定的に据え付けられ、又はヒンジで連結されるようにされる。これは、基部の構造との機械的干渉を制限すること、及び/又は、バケットシートの異なる位置においてシートの乗員の快適性を向上させることに有益であるものと証明されることができる。
【0031】
本発明により、バックレストを傾斜させるための単純な調整を有するシートと比較して、単純で軽量な機械的構造により、快適性が向上したシートを提供することが可能となり、及び、これはシートのための動力装置を要求しない。
さらに、乗員の快適性は、この乗員の前方に位置するシートの乗員により選択された調整により影響されず、シートの間隔を増加させる必要もない。
図1
図2
図3
図4
図5