特許第6584094号(P6584094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6584094PLC監視装置、及び、それに用いる高機能OSモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584094
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】PLC監視装置、及び、それに用いる高機能OSモジュール
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   G05B19/05 D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-37982(P2015-37982)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-162041(P2016-162041A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三島 岳秋
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孟
【審査官】 永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−196806(JP,A)
【文献】 特開平4−182805(JP,A)
【文献】 特開平6−259116(JP,A)
【文献】 特開平10−268914(JP,A)
【文献】 特開2002−44161(JP,A)
【文献】 特開2004−258797(JP,A)
【文献】 特開2011−249861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PLCを用いたPLC監視装置であって、
前記PLCは、PLCモジュールとして入出力モジュールとCPUモジュールと高機能OSモジュールを有し、
前記高機能OSモジュール内に一時データを保存するためのRAMを設け、
前記PLCモジュール間の通信にバスインターフェイスを用い、特定のアドレスに前記RAMの内容を出力し、
前記バスインターフェイス経由で前記高機能OSモジュールの一時データを前記CPUモジュール内のメモリに保存し、該メモリは電池によって電源供給され、
前記高機能OSモジュールは、起動処理中に前記CPUモジュールに保存しておいた一時データを読み出してデータ復帰を行ってから起動処理を完了することを特徴とするPLC監視装置。
【請求項2】
PLCを用いたPLC監視装置に用いられるPLCモジュールである高機能OSモジュールであって、
高機能OSを搭載し、
一時データを保存するためのRAMを設け、
前記PLCのモジュール間の通信に用いるバスインターフェイスで前記RAMの内容が出力可能に構成され、
前記一時データは前記PLC内のCPUモジュールによって読み出され該CPUモジュールに保存されており
起動処理中に前記CPUモジュールに保存しておいた前記一時データを読み出してデータ復帰を行ってから起動処理を完了することを特徴とする高機能OSモジュール。
【請求項3】
PLCを用いたPLC監視装置であって、
前記PLCは、PLCモジュールとして入出力モジュールとCPUモジュールと高機能OSモジュールを有し、
前記高機能OSモジュール内に一時データを保存するためのRAMを設け、
前記CPUモジュールのシーケンスプログラムは、前記RAMの内容を定期的に読み出し前記CPUモジュールのメモリに保存するようにプログラムされており、
前記高機能OSモジュールは、起動処理中に前記CPUモジュールに保存しておいた一時データを読み出してデータ復帰を行ってから起動処理を完了することを特徴とするPLC監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLC監視装置、及び、それに用いる高機能OSモジュールに係り、特に、上下水道の給水、配水設備や、産業用の生産設備、販売データ収集設備等を遠隔監視や制御する監視装置のデータ保護機能に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、現場に設置したプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に監視対象のデータを取り込んで、そのデータをパソコンなどに転送してデータの保存や表示を行う監視システムが知られている。これらの監視システムの監視対象では監視データはデジタル及びアナログの接点入力信号として入出力をするため、接点信号を数値に変換する必要がある。 また、従来の監視システムでは、データの保存や表示をパソコンが行い、接点信号の入出力処理やシーケンス制御はPLCのCPUモジュールが行っていた。これは、パソコンは、ハードディスクなどの大容量の保存領域を持ちグラフィック処理の能力が高いためデータの保存とGUIインターフェイスの機能の実装に向いていることと、PLCが、リアルタイム処理と接点の入出力インターフェイスを有しているために信号の入出力とシーケンス制御を行うのに適しているためである。
【0003】
近年ではWINDOWS(登録商標)やLINUX(登録商標)などの高機能OSが動作するコンピューターも小型化されており、PLCのモジュールに、このようなコンピューター基板を収納したPLCモジュールが実用化されている。これらの高機能OSを搭載した高機能OSモジュール上では、パソコン向けに開発されたソフトウェアを使用できることと、アプリケーションプログラムの書き換えが比較的容易であるので、従来のCPUモジュールのユーザープログラムでは実装が困難な複雑なデータ処理をシステムごとに異なるプログラムとしてPLCに搭載した高機能OSモジュール内で行うことが可能になった。しかしながら、高機能OSがリアルタイム処理に向いていないという問題は変わらないため、シーケンス制御を行うために従来のPLCのCPUモジュールも搭載して並行して処理を行う場合が多い。
【0004】
本技術分野の背景技術として、特開2011−249861号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、その課題として、「PLCに搭載されている高機能OSを用いた通信モジュールと入出力モジュール等の他のモジュールとの動作時間の違いによる誤データの送信を防止し、監視端末に備わる通信モジュールの起動処理時等において、該通信モジュールに接続された入出力モジュールから取得した監視対象のデータを確実に送信できる監視端末や監視システムを提供する」ことを挙げ、その解決手段として、「監視対象から外部データを取得したことを確認した後に、取得した外部データを監視センタへ送信するよう、監視端末を構成する。」技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−249861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにPLCモジュール内のデータ処理部に高機能OSを用いた高機能OSモジュールを導入することで、従来はパソコンでのみ行えたような高度な処理を行うことができる。
【0007】
また、組み込み機器において広くストレージとして使用されているフラッシュメモリが大容量化しているため、ひとつのICで数十ギガバイト以上のデータ保存領域を持つことも可能になっている。しかし、フラッシュメモリはデータの書き込み速度が遅く書き換え回数に制限のあるメモリであるため、メインメモリ上にRAMディスク等のデータの保存エリアを設けて、そこに置いた一時データを用いて処理を行い、定期的にフラッシュメモリへデータのコピーを行うなどの手法で、処理速度の向上とフラッシュメモリへの書き込み回数の低減を行う必要がある。このような一時データを用いた処理では電源断が発生すると処理が停止すると同時に、一時データが失われてしまうという問題がある。
【0008】
ユーザーが使用できるソフトウェアとしては高機能OSモジュール上のアプリケーションプログラムの他にPLCのユーザープログラムがある。PLCのユーザープログラムは高度な処理を行うことはできないが、処理速度が速くリアルタイム性に優れている。また、ユーザープログラム用の揮発性メモリは電源断時のデータバックアップ用に電池を内蔵している。この電池により電源OFF時にユーザープログラムが停止しても主記憶装置上のデータは電源OFF直前の値で保持される。よって、再度、電源ONした際には、電源OFF直前のデータを引き継いで動作復帰することが出来る。
【0009】
一方、高機能OSモジュールを搭載したPLCで電源断が発生すると、高機能OSモジュールの一時データが失われてしまう。
【0010】
また、高機能OSモジュールは不安定なOSを使用しているため、使用しているうちに高機能OSモジュールのプログラムが動作異常となる可能性がある。この場合も何らかの方法で高機能OSモジュールを再起動して動作復帰を行う必要があるが、このような動作異常時にはデータバックアップ処理を正常に行うことができないため、再起動の際にも一時データの欠損が発生する。
【0011】
特許文献1には、高機能OSを用いた通信モジュールと入出力モジュール等の他のモジュールとの動作時間の違いによる誤データの送信を防止する点が記載されているが、電源断や異常動作時の再起動に伴うデータの欠損については考慮されていない。
【0012】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、高機能OSモジュールの電源断や異常動作時の再起動に伴うデータの欠損を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本発明は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、PLCを用いたPLC監視装置であって、PLCは、PLCモジュールとして入出力モジュールとCPUモジュールと高機能OSモジュールを有し、高機能OSモジュール内に一時データを保存するためのRAMを設け、PLCモジュール間の通信にバスインターフェイスを用い、特定のアドレスにRAMの内容を出力するように構成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高機能OSモジュールの電源断や再起動処理による一時データの欠損を防ぐことができる。これによって、動作の遅い、高機能OSモジュールを利用してデータ処理を行うPLC監視装置の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例における監視システムの構成図である。
図2】本実施例におけるPLC監視装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0016】
以下、本発明に係る実施例を、図を用いて説明する。
なお、本実施形態では、上下水道設備を監視するシステムを例にとって説明するものとする。
【0017】
先ず、図1を用いて本実施例における監視システムの構成について説明する。図1は、本実施例における監視システムの構成図である。
図1において、PLC監視装置100は、CPUモジュール200と高機能OSモジュール300と入出力モジュール400で構成されたPLCである。よって、高機能OSモジュール300もPLCのモジュールの1つである。
PLC監視装置100は、監視対象900から出力される信号を入出力モジュール400経由で取り込み、取り込まれた信号はCPUモジュール200経由で、高機能OSモジュール300に取り込まれ、高機能OSモジュール300内に蓄積される。
【0018】
高機能OSモジュール300はPLC内部メモリに展開されたデータを読みだしてデータ処理を行って自身に保存を行う。また、WEBサーバ等によるデータの表示機能を有し、ネットワーク接続したパソコンなどの表示機器にデータ表示を行う。すなわち、高機能OSモジュール300は、通信回線1000にて接続した表示装置1100に、蓄積したデータを表示する機能を有している。言い換えれば、高機能OSモジュールは、外部とのデータのやり取りを行う通信機能と、データの保存、表示制御を行う監視機能を有している。なお、使用者に対するインターフェイスは表示装置1100が行う。
【0019】
次に、図2を用いてPLC監視装置100のハード構成について説明する。図2において、高機能OSモジュール300は、高機能OSを実装するためのCPU302と主記憶装置303と補助記憶装置304から成るコンピューター301と、データ保存用RAM305とCPUモジュール200との通信インターフェイスであるバスIF用通信コントローラ306を内蔵した通信コントローラ307で構成される。
【0020】
CPU302上で動作するソフトウェアは主記憶装置303を使用して動作をするが、頻繁に更新を行う必要があるデータはデータ保存用RAM305に保存しながら動作を行なう。
【0021】
CPUモジュール200と高機能OSモジュール300、入出力モジュール400はモジュール間の通信を行うための通信バスを内蔵した通信用バスインターフェイス(ベースモジュール)500で接続されている。各モジュール間のインターフェイスはバスインターフェイスとなっており、各モジュール内のメモリを読み書きすることでデータのやり取りを行っている。すなわち、CPUモジュール200のCPU用通信コントローラ202や、高機能OSモジュール300内のバスIF用通信コントローラ306、また、入出力モジュール400内のバスIF用通信コントローラ402は、メモリであり、メモリの特定アドレスをCPUが読み書きすることで通信コントローラとしての機能を有している。
【0022】
なお、近年PLCは小型化が進んでおり、複数の機能を1つのICで処理を行うことは実装面積を削減できる点で利点が大きい。そのため、本実施例では、データ保存用RAM305とバスIF用通信コントローラ306を1つのICメモリで構成することで実装面積を小さくしている。
【0023】
高機能OSモジュールとCPUモジュールの通信にバスインターフェイスを用いて、特定のアドレスに一時データ保存用のRAM305の内容を出力する。すなわち、高機能OSモジュール300のバスでアクセスする領域のうち特定のアドレスエリアがデータ保存用RAM305の内容の領域になっている。CPUモジュール200のユーザープログラム(シーケンスプログラム)は、バスインターフェイス経由で一時データ保存用RAM305の内容を高周期で、定期的に読み出し、CPUモジュールのメモリ203に保存するようにプログラムされている。CPUモジュールは高機能OSモジュールより動作が速いため、高機能OSモジュールが一時データを更新するよりも高周期でデータを読み出すことができるためデータの取りこぼしが防がれる。そして、CPUモジュールのメモリ203は揮発性メモリであるが、電池204から常時電源供給されてデータが保護されているため、電源断中もデータの保持が自動で行われる。そのため、PLC監視装置100が電源断されても一時データはメモリ203内に保持され、電源断によるデータの欠損を防ぐことができる。
【0024】
次に、起動処理の手順を説明する。PLC監視装置100の電源を投入すると、CPUモジュール200と高機能OSモジュール300は同時に起動処理を開始するが、高機能OSモジュール300よりもCPUモジュール200の方が起動時間が短いためCPUモジュール200が先に起動処理を終了する。よって、PLC装置の起動時には、動作の速いCPUモジュール上のユーザープログラムが起動した後、高機能OSモジュールが起動するため、高機能OSモジュールは起動処理の中でCPUモジュールに保存しておいた一時データを読み出して処理を開始することができる。高機能OSモジュール300は、起動処理の中で先に起動完了しているCPUモジュールから一時データを読み出して受け取り、一時データを復元させるデータ復帰を行ってから起動処理を完了する。
【0025】
以上のように、本実施例は、PLCを用いたPLC監視装置であって、PLCは、PLCモジュールとして入出力モジュールとCPUモジュールと高機能OSモジュールを有し、高機能OSモジュール内に一時データを保存するためのRAMを設け、PLCモジュール間の通信にバスインターフェイスを用い、特定のアドレスにRAMの内容を出力するように構成する。
【0026】
また、高機能OSモジュールは、起動処理中にCPUモジュールに保存しておいた一時データを読み出してデータ復帰を行ってから起動処理を完了するように構成する。
【0027】
また、PLCを用いたPLC監視装置に用いられるPLCモジュールである高機能OSモジュールであって、高機能OSを搭載し、一時データを保存するためのRAMを設け、PLCのモジュール間の通信に用いるバスインターフェイスでRAMの内容が出力可能に構成する。
【0028】
また、PLCを用いたPLC監視装置であって、PLCは、PLCモジュールとして入出力モジュールとCPUモジュールと高機能OSモジュールを有し、高機能OSモジュール内に一時データを保存するためのRAMを設け、CPUモジュールのシーケンスプログラムは、RAMの内容を定期的に読み出しCPUモジュールのメモリに保存するようにプログラムされている構成とする。
【0029】
よって、本実施例は、高機能OSモジュールの電源断や再起動処理による一時データの欠損を防ぐことができる。これによって、動作の遅い、高機能OSモジュールを利用してデータ処理を行うPLC監視装置の信頼性を確保することができる。
【0030】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
100…PLC監視装置、200…CPUモジュール、201…CPU、202…CPU用通信コントローラ、203…メモリ、204…電池、300…高機能OSモジュール、301…コンピューター、302…CPU、303…主記憶装置、304…補助記憶装置、305…データ保存用RAM、306…バスIF用通信コントローラ、307…通信コントローラ、400…入出力モジュール、401…入出力端子、402…バスIF用通信コントローラ、500…通信用バスインターフェイス(ベースモジュール)、900…監視対象、1000…通信回線、1100…表示装置
図1
図2