特許第6584108号(P6584108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6584108-合成樹脂製容器 図000002
  • 特許6584108-合成樹脂製容器 図000003
  • 特許6584108-合成樹脂製容器 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584108
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20190919BHJP
   B65D 1/46 20060101ALI20190919BHJP
   B65D 23/08 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   B65D1/02 221
   B65D1/46
   B65D23/08 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-61396(P2015-61396)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-179847(P2016-179847A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 敏正
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 高雄
【審査官】 西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−011856(JP,A)
【文献】 特開2010−143631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 1/46
B65D 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の注出口となる口部と、該口部に肩部を介して連なる筒状の胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備えたボトル形状の合成樹脂製容器において、
前記胴部は、該胴部の周方向に沿って設けられ、径方向内方に向けて凹となる環状溝部を有し、
該環状溝部を構成する側壁には、容器の外方に向けて膨出する略三角形状の第1膨出部と、該第1膨出部の略上下反転形状である第2膨出部とが、前記周方向に沿って交互に連続して隣接配置されており、
前記第1膨出部は、略三角形の頂点部分に位置する2つの上側交点部と、該2つの上側交点部よりも前記底部側に位置する1つの下側交点部と、をそれぞれ繋ぐ3本の輪郭線で区画されており、
前記周方向における前記下側交点部の位置は、前記2つの上側交点部の間にあり、
1本の前記環状溝部を構成する側壁には、前記周方向に沿って交互に連続して隣接配置された前記第1膨出部及び第2膨出部が1列のみ設けられている、合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記胴部は、少なくとも前記環状溝部を覆うように該胴部の外周面に密着保持されたラベルを有する、請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の注出口となる口部と、該口部に肩部を介して連なる胴部と、該胴部
の下端を閉塞する底部とを備えたボトル形状の合成樹脂製容器に関し、特には、容器の側面剛性を維持しつつ、座屈強度を高めようとするものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン(PP)製のボトルやポリエチレンテレフタレート(PET)製のボトルに代表されるような合成樹脂製容器は、軽量で取り扱いが容易であること、内容物の保存安定性に優れること、しかもコスト的に安価であることから、食品や飲料、化粧料あるいは薬剤等を充填する容器として多用されている。
【0003】
近年、この種の容器にあっては、ゴミの削減を図り自然環境を良好に維持する観点から、ボトル一本当たりの材料の使用量を減らすべく容器の壁厚を薄肉化(軽量化)する要求が高まっており、その要望に対処するためには、容器の強度低下が避けられない状況にある。このような問題に対しては、例えば、容器の胴部に、この胴部の周りに沿って周回する環状の溝部を形成することにより、ボトル型容器の側面強度を高める技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−104343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような環状の溝部を有する容器において、より容器の側面強度を高めるために溝の深さを深くしていくと、当該環状の溝部が座屈変形の起点となり、容器の座屈強度を低下させる原因となる虞があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、胴部に環状の溝部を有するボトル形状の合成樹脂製容器において、容器の側面強度を維持しつつ、座屈強度を高めることができる合成樹脂製容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の合成樹脂製容器は、内容物の注出口となる口部と、該口部に肩部を介して連なる筒状の胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備えたボトル形状の合成樹脂製容器において、
前記胴部は、該胴部の周方向に沿って設けられ、径方向内方に向けて凹となる環状溝部を有し、
該環状溝部を構成する側壁には、容器の外方に向けて膨出する略三角形状の第1膨出部と、該第1膨出部の略上下反転形状である第2膨出部とが、前記周方向に沿って交互に連続して隣接配置されており、
前記第1膨出部は、略三角形の頂点部分に位置する2つの上側交点部と、該2つの上側交点部よりも前記底部側に位置する1つの下側交点部と、をそれぞれ繋ぐ3本の輪郭線で区画されており、
前記周方向における前記下側交点部の位置は、前記2つの上側交点部の間にあり、
1本の前記環状溝部を構成する側壁には、前記周方向に沿って交互に連続して隣接配置された前記第1膨出部及び第2膨出部が1列のみ設けられていることを特徴とする。
【0008】
なお、本発明の合成樹脂製容器にあっては、前記胴部は、少なくとも前記環状溝部を覆うように該胴部の外周面に密着保持されたラベルを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、胴部に環状の溝部を有するボトル形状の合成樹脂製容器において、容器の側面強度を維持しつつ、座屈強度を高めることができる合成樹脂製容器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態である合成樹脂製容器の側面図である。
図2】(a)は、図1に示す合成樹脂製容器のA−A断面図であり、(b)は、B−B断面図である。
図3】比較のために示す従来の合成樹脂製容器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に例示説明する。図中の符号1は、本発明に従う合成樹脂製容器(以下、単に「容器」と称す)の一実施形態を示す。図1に示すように、ボトル形状の容器1は、内容物の注出口となる円筒状の口部2と、当該口部2の下端部から拡径する肩部3を介して連なる筒状の胴部4と、当該胴部4の下端を閉塞する底部5とを備え、容器1の内側は、内容物を収容する内部空間となっている。なお、本発明に係る容器1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)を原料とするプリフォームを用いた二軸延伸ブロー成形により成形されるボトルを採用することが可能であるが、これに限定されるものではなく、例えば、押出しブロー成形により成形することも可能である。
【0012】
口部2の外周面には、雄ねじが設けられており、これに対応する雌ねじを備えたキャップ(図示しない)を着脱自在に螺着することができる。口部2に装着されるキャップの構成は特に限定されるものではなく、口部2に対してアンダーカット係合する構成とすることも可能である。また、口部2に対して係合保持されるベースと、ベースに対してヒンジを介して開閉自在な蓋部を備えたキャップを採用することも可能である。
【0013】
肩部3は、口部2に連なる上部から、胴部4に連なる下部に向けて、径方向外方に向けて湾曲しながら拡大するドーム状に形成されている。肩部3は湾曲したドーム状に限らず、直線的に拡大する形状としても良く、口部2と胴部4を連結する構成であれば特に形状は限定されない。
【0014】
胴部4には、容器内方に向けて窪む複数の減圧吸収面6と複数の柱部7とが、周方向に交互に配置され、横断面(すなわち、容器1の中心軸線Cに直交する断面)において、複数の柱部7を頂点とする略多角形状をなすように形成されている。より具体的には、本実施形態では、横断面において6つの柱部7を頂点とする略正6角形状をなす筒状に形成されている。減圧吸収面6は、充填された内容物の冷却に伴って容器内が減圧した際に優先して変形し、ボトルの不正変形(局所的な陥没変形など)を生じないようにするための構成である。なお、本発明において減圧吸収面6及び柱部7は必須の構成ではなく、後述する環状溝部10を除く胴部4の形状は特に限定されるものではない。
【0015】
胴部4の上端部付近には、径方向内方に向けて凹となる環状溝部10が容器1の周方向に沿って設けられている。環状溝部10を構成する側壁には、容器1の外方に向けて膨出する略三角形状の第1膨出部11と、第1膨出部11の略上下反転形状である第2膨出部12とが、環状溝部10の延在方向(容器1の周方向)に沿って交互に連続して隣接配置されている。図1に示すように、第1膨出部11及び第2膨出部12は、略三角形の3辺を構成する輪郭線13で区画されており、輪郭線13から第1膨出部11及び第2膨出部12それぞれの中央領域11a、12aに向けて、環状溝部10内で僅かに容器1の外方に向けて膨出する形状とされている。また、図1に示すように、略三角形の頂点部分、すなわち輪郭線13の交点である上側交点部14及び下側交点部15が周方向に沿って交互に配置され、これら上側交点部14及び下側交点部15を結ぶ輪郭線13が周方向にジクザグ状に延びている。なお、上側交点部14及び下側交点部15の形状は特に限定されず、例えば、点、直線、又は曲線等の形状とすることができる。
【0016】
ここで、図2(a)、(b)はそれぞれ、図1に示す容器1における、中心軸線Cに直交するA−A断面及びB−B断面を示す図である。図2(a)に示すように、A−A断面において、上側交点部14は、環状溝部10を構成する側壁の最も径方向内方に位置する部分であり、第1膨出部11の中央領域11aに比べて径方向内方に位置している。また、図2(b)に示すように、B−B断面において、下側交点部15は、環状溝部10を構成する側壁の最も径方向内方に位置する部分であり、第2膨出部12の中央領域12aに比べて、径方向内方に位置している。また、本実施形態においては、上側交点部14及び下側交点部15をそれぞれ通る縦断面において、環状溝部10を構成する側壁の最も径方向内方に位置する部分がそれぞれ上側交点部14及び下側交点部15となる。したがって、環状溝部10を構成する側壁の最も径方向内方に位置する部分は、環状溝部10の延在方向(容器1の周方向)に沿って、上下に周期的に変化することとなる。
【0017】
図3は、従来形状の環状溝部110を備えた合成樹脂製容器100を示している。環状溝部110の側壁には、図1の容器1に形成された第1膨出部11及び第2膨出部12といった凹凸は設けられておらず、環状溝部110の側壁は全周にわたって縦断面が台形状またはV字やU字状の一定の断面形状のみで構成されている。このような容器100の場合、環状溝部110を設けたことで、径方向の力に対する強度、すなわち側面強度を高めることができるものの、環状溝部110が座屈変形の起点となり、座屈強度が弱くなる虞がある。具体的には、容器100に中心軸線Cに沿う圧縮方向の力が加わった場合に、環状溝部110に力が集中し易く、環状溝部110を構成する上下に向かい合う側壁同士が近接するように変形が生じる、すなわち、環状溝部110が蛇腹のように作用する虞がある。
【0018】
これに対して、本実施形態の容器1にあっては、環状溝部10の側面に第1膨出部11及び第2膨出部12を設けたことにより、中心軸線Cに対して斜めに延びる輪郭線13の働きによって中心軸線Cに沿う縦方向の力を、中心軸線C方向に対して傾斜する周方向の力に変換して分散させ、座屈変形を抑制することができる。したがって、本実施形態の容器1によれば、環状溝部10による側面強度の向上効果を維持しつつ、容器1の座屈強度を高めることが可能となる。
【0019】
なお、図示は省略するが、胴部4には、少なくとも環状溝部10を覆うように胴部4の周りに密着保持されたラベルを設けることが好ましい。ラベルとしては、例えば、シュリンクラベルに代表される熱収縮性ラベルが挙げられるが、これに限られるものではなく、伸縮性の所謂ストレッチラベルや、裏面に接着層が設けられた貼着ラベル、あるいはロールラベルなどを使用することもできる。このようなラベルを設けた場合には、容器1に縦方向の大きな力が加えられて容器1が径方向外方に向けて変形しようとした際に、ラベルで外側から締め付けることで径方向外方への変形を抑制することが可能となる。これにより、主に加飾を目的として多用されているラベルを用いて、装飾性を高めるのみならず、容器1の強度をさらに高めることが可能となる。
【0020】
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0021】
例えば、前述した実施形態では、環状溝部10を胴部4の上端部付近のみに設ける構成としたが、これに限らず、胴部4の中央部分や下端部付近に設けることも可能であり、一箇所に限らず、複数箇所に設けても良い。さらに、環状溝部10に加えて、膨出部を設けない図3に示すような環状溝部110を胴部4の任意の位置に追加で設けて、側面強度をさらに高めることも可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 合成樹脂製容器
2 口部
3 肩部
4 胴部
5 底部
6 減圧吸収面
7 柱部
10 環状溝部
11 第1膨出部
12 第2膨出部
13 輪郭線
14 上側交点部
15 下側交点部
C 中心軸線
図1
図2
図3