(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584145
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】車載光学レンズの洗浄システムおよび洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B60S 1/60 20060101AFI20190919BHJP
B08B 5/00 20060101ALI20190919BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20190919BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20190919BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20190919BHJP
B60R 1/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
B60S1/60 Z
B08B5/00 Z
B08B3/02 F
H04N5/225 430
H04N7/18 J
B60R1/00 A
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-107836(P2015-107836)
(22)【出願日】2015年5月27日
(65)【公開番号】特開2015-224032(P2015-224032A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2018年5月28日
(31)【優先権主張番号】14382188.2
(32)【優先日】2014年5月27日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515143795
【氏名又は名称】フィコ トランスパー,ソシエダ アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ガレラ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】エステラ ピタルク,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】モタ ロペス,ミゲル
【審査官】
神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−027539(JP,A)
【文献】
特開2014−019403(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/010579(WO,A1)
【文献】
特開2013−100077(JP,A)
【文献】
特開2012−201122(JP,A)
【文献】
特開2009−083730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/60
H04N 5/225
B08B 5/00
B08B 3/02
B60R 1/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載型光学表面の洗浄システムであって、
洗浄液ノズルと、前記洗浄液ノズルに連通して、前記洗浄液ノズルを介した液体のフローを制御する液体フロー制御装置と、
空気ノズルと、前記空気ノズルに連通して、前記空気ノズルを介した空気のフローを制御する空気フロー制御装置と、
入口開口を持つ空気ポンプと、
前記液体フロー制御装置に接続された洗浄液導管と、
を備え、
前記空気ポンプは、空気を加圧するための可変容積圧縮室を含み、前記可変容積圧縮室は前記空気フロー制御装置に連通しており、
加圧洗浄液のフローによって前記可変容積圧縮室における前記空気が加圧され得るように前記洗浄液導管は更に前記空気ポンプ入口開口とも連通していることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記空気ポンプは、筒状体と、その筒状体内に収容された変位可能なプランジャーとを備え、その筒状体と前記プランジャーによって前記可変容積圧縮室が形成され、前記空気ポンプは、前記可変容積圧縮室内に収容されたばねコイルを付加的に備えているため、そのばねコイルによって前記プランジャーが前記入口開口のほうに圧迫される、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記液体フロー制御装置と前記空気ポンプに加圧洗浄液を供給するために前記洗浄液導管に連通した液体ポンプをさらに備えている、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記液体ポンプによってポンプ送水された加圧洗浄液のフローによって前記空気ポンプの前記プランジャーが駆動されることで、前記可変容積圧縮室内の容積を縮小して圧縮空気を生成する、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記空気フロー制御装置と前記液体フロー制御装置と前記液体ポンプとに作動的に関連付けられてそれらの作動を命令する制御装置をさらに備え、前記制御装置は、少なくとも1つの洗浄サイクルを実現するように前記液体フロー制御装置、前記液体ポンプ、および、前記空気フロー制御装置を制御し、前記少なくとも1つの洗浄サイクルの各々は、加圧洗浄液を前記光学表面に供給する少なくとも1つの動作と加圧空気を前記光学表面に施用する少なくとも1つの動作とを含む請求項1〜4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記制御装置は一つの洗浄サイクルを実行するように構成されており、その洗浄サイクルにおいて先ず所定量の加圧洗浄液が、前記液体フロー制御装置を開放することにより前記洗浄液ノズルを介して前記光学表面上に供給され、前記空気ポンプへ供給される加圧洗浄液のフローの圧力によって前記可変容積圧縮室内で加圧空気が生成され、引き続いて前記空気フロー制御装置が開放されて、加圧空気が前記光学表面上に施用されることで、前記光学表面に洗浄液の液滴があればそれを吹き払うようにする、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
開口と、その開口に取り付けられた前記光学表面を有する支持体をさらに備えており、前記洗浄液ノズルと前記空気ノズルが前記支持体に取り付けられ、両ノズルはそれぞれ、前記光学表面に洗浄液を供給するためと、空気フローを投射するために配置されている、請求項1〜6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記空気ポンプ、前記空気フロー制御装置および前記液体フロー制御装置は前記支持体に取り付けられている請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記支持体の一部はハウジングの形状に構成されており、前記支持体はさらに、光学センサのための光学レンズ、および、光学レンズを保護するためもしくは光学センサを保護するために載置されるカバーウィンドウのうちの少なくとも1つを備え、前記光学表面は、前記光学レンズまたは前記カバーウィンドウの表面である、請求項7または8記載のシステム。
【請求項10】
前記空気ポンプには、前記可変容積圧縮室に連通する一方向弁が配設され、前記一方向弁は前記可変容積圧縮室の拡張中に前記可変容積圧縮室に空気を流入させ、また、前記可変容積圧縮室の圧縮中に前記可変容積圧縮室への空気の流入を防止するように構成されている、請求項1〜9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記空気フロー制御装置と前記液体フロー制御装置は電磁弁であり、制御装置は電子的にプログラム可能な装置である、請求項1〜10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記液体ポンプと連通する洗浄液槽をさらに備えている請求項3記載のシステム。
【請求項13】
前記光学表面は光学レンズまたはカバーウィンドウである請求項1〜12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記支持体は可動部を含み、前記空気ノズルと前記洗浄液ノズルはその可動部に取り付けられ、前記可動部は作動位置から非作動位置へと移動するように構成され、その結果、非作動位置において前記空気ノズルと前記洗浄液ノズルは前記支持体内部に隠されるようになっている、請求項6記載のシステム。
【請求項15】
空気を加圧するための可変容積圧縮室を有する空気ポンプと、
加圧された洗浄液のフローを制御する液体フロー制御装置と
加圧された空気のフローを制御する空気フロー制御装置と
を含んで成るシステムによって車載型光学レンズを洗浄する方法であって、
加圧された洗浄液のフローを発生し、この加圧された洗浄液のフローを前記液体フロー制御装置に供給するとともに、前記空気ポンプにも供給して前記可変容積圧縮室内に加圧された空気を生成することと、
前記液体フロー制御装置および前記空気フロー制御装置を順次制御することにより、予め定められた洗浄シーケンスに従って、光学レンズ上に、噴出された加圧洗浄液を供給し、その後、加圧された空気を供給することと、
を含む洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、車両に搭載された光学レンズを、クリアな画像または光学的信号がいつでも捕捉されうるようにレンズからどんな種類の汚れでも除去するために、洗浄液を噴霧することによって自動洗浄する技術に関する。
【0002】
より具体的には、本発明の目的は、単純な方式かつ削減したコストで洗浄工程を迅速かつ充分に完了できる光学レンズ自動洗浄システムおよび洗浄方法を提供することである。
【0003】
本発明は特に、車載パーキングカメラレンズまたは任意の種類の光学センサレンズを洗浄することに対して有利である。
【背景技術】
【0004】
現在、自動車には、例えば、パーキング支援、死角領域の物体検知、車線逸脱、交通信号識別またはバックミラー代替物等を含むがそれらに限定されない、多様な交通状況において運転者を支援する光学センサが装着されている。
【0005】
一般に、これらの光学センサは車両の外面に取り付けられているため、光学センサのレンズ面が汚れに暴露されて捕捉画像の質を損なう。この暴露は直接の場合と間接の場合があり、間接の暴露はレンズ面がカバーウィンドウの裏に配置されている場合に発生する。したがって、レンズ面に付着した、または、車載型光学センサのカバーウィンドウに付着した異物を除去する必要がある。
【0006】
車内搭載型カメラのフロントガラスまたはレンズを洗浄するための様々なタイプのカメラ洗浄装置があり、それらには、高圧空気を用いて高圧洗浄水を発生し、車内搭載型カメラのカバーガラスの表面を洗い流して洗浄するために、その高圧洗浄水を車内搭載型カメラのカバーガラスまたはレンズの表面に噴射する高圧空気発生装置が慣用的に備わっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、洗浄水が、レンズまたはカバーガラスを洗浄するために施用されている間、そして、水が完全に蒸発するまで、車両の運転者は捕捉画像を正しく見ることができない。この問題を解決するため、レンズまたはカバーガラス上に残った洗浄水を乾燥させるために、空気噴流を使用する既知の装置がある。しかし、これらの装置は通常、モーター駆動の空気ポンプに基づいており、それらは複雑かつ高価な機器である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、添付の独立請求項に規定され、また、洗浄過程を迅速に、かつより少ない個数の構成要素で完了できる単純な洗浄技法を提供することにより、従来技術の上記の欠点を克服する。
【0009】
本発明の一つの態様は、車両の外面に搭載された光学レンズまたは透明カバーなどの光学表面を洗浄するためのシステムに言及し、そのシステムにおいて光学表面は、画像を捕捉または感知するのに適した任意のタイプの感光装置に光学的に関連付けられうる。好ましくは、感光装置はビデオカメラまたは光学センサである。
【0010】
本発明のシステムは、光学表面に洗浄液を供給するための洗浄液ノズルと、洗浄液が供給された後でその表面に空気フローを投射し、それにより光学表面に形成された洗浄液の液滴を吹き払う空気ノズルとを備えている。したがって、高品質画像の捕捉を損ないうる光学表面上の洗浄液の液滴が迅速に除去され、したがって洗浄時間が短縮される。
【0011】
この洗浄システムでは、加圧洗浄液が液体ノズルに供給され、また、加圧空気の噴射を発生するために空気ポンプが設けられている。この空気ポンプは空気ポンプに施用された流体によって及ぼされる水圧力によって加圧空気を発生するように構成されている。付加的に、液体ノズルに供給されるのと同じ加圧洗浄液のフローが空気ポンプにも送り込まれ、空気ポンプが同じ洗浄液によって作動するようになっている。
【0012】
上述の構成に由来する技術的効果と利点は、加圧洗浄液のフローが二重の機能、すなわち光学表面の洗浄機能と、空気ポンプの作動および空気噴流の発生機能を有していることである。したがって、加圧洗浄液と加圧空気の両方を発生するために1つのみの液体ポンプが必要であるため、少ない個数の構成要素で、すなわち非常にコスト効率の良い方式で、二重の機能が実施される。従来技術と対照的に、空気噴流を発生するため専用にモーター駆動による装置を備える必要がない。
【0013】
空気ポンプは、可変容積圧縮室を含んでいるため、洗浄液の水圧をかけることにより室の容積が縮小してその中に封じ込めてある空気が加圧される。
【0014】
空気フロー制御装置と、液体フロー制御装置とに作動的に関連付けられた制御装置によって、洗浄液の供給と空気の吹込みが調整された方式で実行される。制御装置は、異なる洗浄サイクルを実行するように適合されている。本発明による1つの好ましい洗浄サイクルにおいて、液体フロー制御装置を一つの所定周期または複数の所定数周期で開放させることによって、先ず所定量の加圧洗浄液が光学表面に供給され、その後、液体フロー制御装置が閉止されて空気フロー制御装置が開放され、その結果、少なくとも一噴流の加圧空気が光学表面に施用されて、光学表面上に洗浄液の液滴があればそれを吹き払う。
【0015】
本発明の別の態様は、加圧液体のフローによって動作可能な空気ポンプが設けられ、その空気ポンプがその目的のため
一定量の空
気を加圧するための可変容積圧縮室を含んでいる車載型光学レンズの洗浄方法に言及する。加圧洗浄液のフローが、液体フロー制御装置と圧縮室の両方に供給されて
一定量の圧縮
された空
気を生む。本発明の方法において、一噴出の加圧洗浄液および/または加圧空気の噴流が、所定の洗浄シーケンスに従って調整された方式で光学レンズに供給される。好ましくは、本発明による所定の洗浄シーケンスは:先ず光学レンズ上に少なくとも一噴出の洗浄液を供給し、その後、光学レンズ上に加圧空気を投射して光学レンズから洗浄液の液滴を吹き払うことを含む。
【0016】
本発明の説明において、光学表面は、光学装置の画像の捕捉を支援する、または単に光学装置に画像を捕捉させる任意のタイプの表面を指す。さらに具体的に、光学表面は、光学レンズまたは光学レンズを保護するためもしくは光学センサを保護するために載置されるカバーウィンドウである。
【0017】
本発明の好ましい実施形態を、以下に、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による洗浄システムの一部の好ましい実施形態の図であり、図a)は内部要素を見せるために空気ポンプを破線で示した透視図、図b)は別の透視図、図c)は正面図である。
【
図2】洗浄システムの非作動状態における模式図である。
【
図3】
図2の図で、洗浄過程の第1の段階にあり、水フローと空気フローが矢印で示された図である。
【
図4】
図2の図で、洗浄過程の第2の段階にあり、水フローと空気フローが矢印で示された図である。
【
図5】
図2の図で、洗浄過程の第3の段階にあり、水フローと空気フローが矢印で示された図である。
【
図6】
図2の図で、洗浄過程の第4の段階にあり、水フローと空気フローが矢印で示された図である。
【
図7】本発明の例示的実施形態による洗浄液および空気作動シーケンスを表すグラフである。時間の単位は秒(s)で表されている。
【
図8】
図7の洗浄シーケンス中に測定された洗浄液のフロー(Q)と供給された空気を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、自動車の表面に装着されるのに適した、好ましくはプラスチック材料で作製された支持体(1)を示す。支持体(1)は、開口(2)と光学表面と、この例ではその開口(2)に取り付けられたカメラレンズ(3)と、支持体(1)のハウジング(4)内にあり、カメラレンズ(3)に対して作動的に配置されたビデオカメラ(図示せず)とを有している。付加的に空気ポンプ(5)と、空気制御装置および液体制御装置も支持体(1)に取り付けられている。好ましくは、空気制御装置および液体制御装置はこの例において、それぞれ、第1と第2の電磁弁(6,7)によって実施される。
【0020】
別法として、カメラレンズ(3)は、裏に配置された光学レンズを保護するために配設されたガラスカバーから構成されてもよい。
【0021】
図に示すように支持体(1)の外面に液体ノズル(9)と空気ノズル(8)が取り付けられ、両ノズルはそれぞれ洗浄液(10)と空気の噴流(11)をカメラレンズ(3)上に供給するために配置されている。
【0022】
別の実施形態において、支持体(1)は可動部品(図示せず)を含み、空気ノズルと液体ノズルはその可動部品に取り付けられて、可動部品が作動位置から非作動位置へと移動するように構成され、その非作動位置において、空気ノズルと液体ノズルは支持体内部に隠されるようになる。
【0023】
第1の電磁弁(6)は、空気ノズル(8)を通って空気ポンプによって提供される空気のフローを開閉するために、空気ノズル(8)および空気ポンプ(5)と連通している。同様に、第2の電磁弁(7)は、液体ノズル(9)を通る洗浄液のフローを開閉するために、液体ノズル(9)および洗浄液導管(12)と連通している。
【0024】
ビデオカメラまたは任意の他の光学装置と、外部装置(図示せず)との電気的接続用に、電気的コネクタ(17)も支持体に結合されている。
【0025】
本発明の空気ポンプ(5)は、この例ではシリンダー(13)である管状体と、管状体内に収容された変位可能なプランジャー(14)とを備え、シリンダー(13)とプランジャー(14)との間に圧縮室(16)が画定されるようになっている。圧縮室(16)内にばねコイル(15)が収容され、プランジャー(14)がばねコイル(15)によって空気ポンプ入口開口(19)のほうに圧迫されるようになっている。
【0026】
ばねコイル(15)は、空気ポンプ(5)が空気噴流を供給した後で圧縮室(16)の容積を拡張するために配置されている。シリンダー(13)に取り付けられ、圧縮室(16)と連通している一方向弁(18)は、圧縮室(16)の拡張中には圧縮室(16)に空気を流入させ、圧縮室(16)の圧縮中には室への空気流入を防止するように構成されている。好ましくは、この一方向弁(18)は弾性材料で作製され、円錐形状であり、その狭いほうの端部に開口があって、シリンダー(13)内部に配置されている。
【0027】
洗浄液導管(12)はさらに空気ポンプ入口開口(19)と連通していて、空気ポンプ(5)が、そこに供給される加圧洗浄液のフローによって作動できるようになっている。より具体的には、
図1に示されるように、洗浄液導管(12)はT接合コネクタ(20)と接続され、導管(12)の第1の枝管(12’)はコネクタ(20)と、空気ポンプの入口開口(19)とに接続され、導管(12)の第2の枝管(12”)はコネクタ(20)と、第1の電磁弁(6)とに接続されている。こうして、液体ポンプ(22)によって発生した加圧洗浄液(21)のフローは空気ポンプ(5)と第2の電磁弁(7)の両方に供給される。
【0028】
図2から5は、本発明の洗浄システムおよび洗浄方法の作動をより詳細に図示している。
図2は、非作動状態にあるシステムを表し、そこで第1と第2の電磁弁(6,7)は閉止されており、液体ポンプ(22)は洗浄システムに液体を供給していない。
【0029】
車両の使用者が洗浄システムを作動させると、第1と第2の電磁弁(6,7)と、液体ポンプ(22)に電子的に連通しているプログラム可能な電子装置によって実施される制御装置(23)は、洗浄サイクルを実行するように適合またはプログラムされ、洗浄サイクルにおいて先ず液体ポンプ(22)が作動して、洗浄液(24)を洗浄液槽(25)から洗浄液導管(12)へとポンプ送水して洗浄液(21)のフローを発生させる。この洗浄サイクルの第1の段階において第2の電磁弁(7)は開放しており、
図3に示すように、噴出した洗浄液が液体ノズル(9)を通ってカメラレンズ面(3)に供給される。この段階において第1の電磁弁(6)は閉止したままであるが、洗浄液(21)のフローは空気ポンプ(5)の入口開口(19)にも供給される。
【0030】
洗浄液の噴出(26)はカメラレンズ(3)の表面を洗浄し、その表面にはいくらかの液滴が残っていることがある。
【0031】
洗浄サイクルの第2の段階(
図4)において、すなわち、所定期間が経過した後で、制御装置(23)は第2の弁(7)を閉止して、第2の枝管(12”)を通る加圧洗浄液の循環と、加圧洗浄液の供給が中断される。しかし、この状況において空気ポンプ(5)は洗浄液で満たされ、その圧力はプランジャー(14)にかけられ、それによりプランジャー(14)は、ばね(15)の弾性作用に逆らうように変位して容積を縮小する、すなわち、可変容積圧縮室(16)を圧縮して、その室内に封じ込められた
一定量の空
気を加圧し、その一方で第1の電磁弁(6)は閉止したままである。一方向弁(18)はこの段階で、その弁の円錐面にかかる圧力室内の圧力により閉止したままである。
【0032】
洗浄システム、また特に、空気ポンプ(5)および液体ポンプ(2)は、液体ポンプによってポンプ送水された洗浄液の圧力が、空気ポンプを作動させるコイルばね(15)の弾性力に打ち勝つような態様に適合されていることが理解されうる。
【0033】
一定レベルの空気圧力に達すると、制御装置(23)は第1の弁(6)を開放して、加圧空気が空気ノズル(8)から放出され、また、表面に残っている液体を取り払って乾燥させるに十分な圧力でカメラレンズ(3)の表面に空気の噴流(27)が投射されるようにする。この工程は、
図5に示されている。
【0034】
所定時間経過後、制御装置(23)は第1の電磁弁(6)を閉止し(
図6)、液体ポンプ(22)を停止させて、プランジャー(14)への水圧が解放されるようにする。するとコイルばね(15)の弾性力が水圧に打ち勝ってプランジャー(14)を初期位置に戻すように押しやる。それと同時に、圧縮室(16)が拡張し、空気ポンプの外側からの空気が一方向弁(18)を介して吸引され、圧縮室(16)を非圧縮空気で満たす。
【0035】
洗浄対象の光学レンズの状態によっていくつかの洗浄シーケンスが実行されうる。
図7は、レンズ表面上に付着した乾いた泥や虫などの重度の汚れの場合に実行されうる好ましい洗浄シーケンスの一例である。
図7の場合において、洗浄サイクルは少なくとも2回の連続した洗浄液放出を含み、各洗浄液放出は0.1から0.5秒内の持続期間、この場合0.3秒で、これら2回の液体放出間に1秒の時間間隔を置いている。1.5秒経過後、少なくとも2回の連続した0.1秒の空気噴流が1秒の時間間隔を置いて供給される。完全洗浄シーケンスの持続時間は4.3秒である。
【0036】
図7の洗浄サイクルにおいて測定された時間単位ごとの液体と空気の測定量が、
図8に示されている。
【0037】
軽微な汚れ等の他の条件では、液体と空気の必要量がより少ないため、より少ない回数の放出が供給され、その持続時間もより短い。
【0038】
本発明の別の好ましい実施形態において、制御装置(23)は、空気ノズル(8)と液体ノズル(9)を作動させて、別々の洗浄シーケンスを実行するようにプログラムされうる。例えば、制御装置(23)は、1つのみまたはそれ以上の洗浄液の噴出を供給する、または、1つのみまたはそれ以上の空気噴流を供給するように、空気ノズル(8)と液体ノズル(9)を互いに独立して動作させるようにプログラムされ、それは、対応する電磁弁を単に開閉するだけで実行されうる。
【0039】
本発明の他の好ましい実施形態は、添付の従属請求項およびそれらの複数の組み合わせに記述される。
【0040】
本発明は、以下の特徴を有する。
<1>
車載型光学表面の洗浄システムであって、
洗浄液ノズルと、前記洗浄液ノズルに連通して、前記洗浄液ノズルを介した液体のフローを制御する液体フロー制御装置と、
空気ノズルと、前記空気ノズルに連通して、前記空気ノズルを介した空気のフローを制御する空気フロー制御装置と、
入口開口を持つ空気ポンプと、
前記液体フロー制御装置に接続された洗浄液導管と、
を備え、
前記空気ポンプは、空気を加圧するための可変容積圧縮室を含み、前記可変容積圧縮室は前記空気フロー制御装置に連通しており、
加圧洗浄液のフローによって前記可変容積圧縮室における前記空気が加圧され得るように前記洗浄液導管は更に前記空気ポンプ入口開口とも連通していることを特徴とするシステム。
<2>
前記空気ポンプは、筒状体と、その筒状体内に収容された変位可能なプランジャーとを備え、その筒状体と前記プランジャーによって前記可変容積圧縮室が形成され、前記空気ポンプは、前記可変容積圧縮室内に収容されたばねコイルを付加的に備えているため、そのばねコイルによって前記プランジャーが前記入口開口のほうに圧迫される、上記<1>に記載のシステム。
<3>
前記液体フロー制御装置と前記空気ポンプに加圧洗浄液を供給するために前記洗浄液導管に連通した液体ポンプをさらに備えている、上記<1>または<2>に記載のシステム。
<4>
前記液体ポンプによってポンプ送水された加圧洗浄液のフローによって前記空気ポンプの前記プランジャーが駆動されることで、前記可変容積圧縮室内の容積を縮小して圧縮空
気を生成する、上記<2
>に記載のシステム。
<5>
前記空気フロー制御装置と前記液体フロー制御装置と前記液体ポンプとに作動的に関連付けられてそれらの作動を命令する制御装置をさらに備え、前記制御装置は、少なくとも1つの洗浄サイクルを実現するように前記液体フロー制御装置、前記液体ポンプ、および、前記空気フロー制御装置を制御し、前記少なくとも1つの洗浄サイクルの各々は、加圧洗浄液を前記光学表面に供給する少なくとも1つの動作と加圧空気を前記光学表面に施用する少なくとも1つの動作とを含む上記<1>〜<4>のいずれかに記載のシステム。
<6>
前記制御装置は一つの洗浄サイクルを実行するように
構成されており、その洗浄サイクルにおいて先ず所定量の加圧洗浄液が、前記液体フロー制御装置を開放することにより前記洗浄液ノズルを介して前記光学表面上に供給され、前記空気ポンプへ供給される加圧洗浄液のフローの圧力によって前記可変容積圧縮室内で加圧空気が生成され、引き続いて前記空気フロー制御装置が開放されて、加圧空気が前記光学表面上に施用されることで、前記光学表面に洗浄液の液滴があればそれを吹き払うようにする、上記<5>に記載のシステム。
<7>
開口と、その開口に取り付けられた前記光学表面を有する支持体をさらに備えており、前記洗浄液ノズルと前記空気ノズルが前記支持体に取り付けられ、両ノズルはそれぞれ、前記光学表面に洗浄液を供給するためと、空気フローを投射するために配置されている、上記<1>〜<6>のいずれかに記載のシステム。
<8>
前記空気ポンプ、前記空気フロー制御装置および前記液体フロー制御装置は前記支持体に取り付けられている上記<7>に記載のシステム。
<9>
前記支持体の一部はハウジングの形状に構成されており、
前記支持体はさらに、光学センサのための光学レンズ、および、光学レンズを保護するためもしくは光学センサを保護するために載置されるカバーウィンドウのうちの少なくとも1つを備え、前記光学表面は、前記光学レンズまたは前記カバーウィンドウの表面である、上記<7>または<8>に記載のシステム。
<10>
前記空気ポンプには、前記可変容積圧縮室に連通する一方向弁が配設され、前記一方向弁は前記可変容積圧縮室の拡張中に前記可変容積圧縮室に空気を流入させ、また、前記可変容積圧縮室の圧縮中に前記可変容積圧縮室への空気の流入を防止するように構成されている、上記<1>〜<9>のいずれかに記載のシステム。
<11>
前記空気フロー制御装置と前記液体フロー制御装置は電磁弁であり、制御装置は電子的にプログラム可能な装置である、上記<1>〜<10>のいずれかに記載のシステム。
<12>
前記液体ポンプと連通する洗浄液槽をさらに備えている上記<3>に記載のシステム。
<13>
前記光学表面は光学レンズまたはカバーウィンドウである上記<1>〜<12>のいずれかに記載のシステム。
<14>
前記支持体は可動部を含み、前記空気ノズルと前記洗浄液ノズルはその可動部に取り付けられ、前記可動部は作動位置から非作動位置へと移動するように構成され、その結果、非作動位置において前記空気ノズルと前記洗浄液ノズルは前記支持体内部に隠されるようになっている、上記<6>に記載のシステム。
<15>
空気を加圧するための可変容積圧縮室を有する空気ポンプと、
加圧された洗浄液のフローを制御する液体フロー制御装置と
加圧された空気のフローを制御する空気フロー制御装置と
を含んで成るシステムによって車載型光学レンズを洗浄する方法であって、
加圧された洗浄液のフローを発生し、この加圧された洗浄液のフローを前記液体フロー制御装置に供給するとともに、前記空気ポンプにも供給して前記可変容積圧縮室内に加圧された空気を生成することと、
前記液体フロー制御装置および前記空気フロー制御装置を順次制御することにより、予め定められた洗浄シーケンスに従って、光学レンズ上に、噴出された加圧洗浄液を供給し、その後、加圧された空気を供給することと、
を含む洗浄方法。
【符号の説明】
【0041】
1 支持体
2 開口
3 カメラレンズ
4 ハウジング
5 空気ポンプ
6 第1の電磁弁
7 第2の電磁弁
8 空気ノズル
9 液体ノズル
10 洗浄液
11 空気噴流
12 洗浄液導管
12’ 第1の枝管
12” 第2の枝管
13 シリンダー
14 プランジャー
15 コイルばね
16 可変容積圧縮室
17 電気的コネクタ
18 一方向弁
19 空気ポンプ入口開口
20 T接合コネクタ
21 洗浄液
22 液体ポンプ
23 制御装置
27 空気の噴流