【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日本経済新聞 平成27年6月19日付朝刊 平成27年度(第19回)機械要素技術展, 開催日 平成27年6月24日〜26日 ウェブサイト掲載 平成27年6月24日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電動アクチュエータの駆動によって、プランジャを該プランジャの軸方向に沿ってシリンジ内で前後動させ、前記シリンジ内の物質を吐出または前記シリンジ内に物質を吸入する吐出装置であって、
前記電動アクチュエータを内部かつ後端側に設けた装置本体を備え、
前記装置本体の先端下側が、前記装置本体の先端から後方に後退した後退位置に配置されて指掛けを構成しており、
前記装置本体の内部において前記電動アクチュエータの下方側には、前記電動アクチュエータに電力を供給するバッテリが、前記後退位置よりも後方の位置から、前記吐出装置の長手方向における中央付近を通り、前記電動アクチュエータよりも先端側の位置まで延在しており、
前記電動アクチュエータを駆動させる操作ボタンが、前記装置本体の先端上側において、前記後退位置よりも先端側に設けられており、
人差し指を前記操作ボタンに添え、中指を前記指掛けに掛け、親指を前記装置本体の側面に添えることで手によって把持可能である
ことを特徴とする吐出装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る吐出装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係る吐出装置1を示す斜視図である。なお、同図は、吐出装置1を先端側から見た斜視図となっている。
図2は、実施形態に係る吐出装置1を示す側面図である。
【0014】
図1および
図2に示されるように、吐出装置1は、吐出装置本体10とシリンジカートリッジ100とを備えている。吐出装置本体10は、作業者が把持および操作するための装置部分であり、内部には後に詳述する駆動装置等の主要構成物が備えられている。吐出装置1は、カートリッジ式のシリンジを採用しており、吐出装置本体10の先端側に取り付けられたシリンジカートリッジ100は着脱可能となっている。
【0015】
シリンジカートリッジ100は、その大部分が吐出装置本体10の中に収容されている。すなわち、シリンジカートリッジ100のノズル110は、吐出装置本体10から露出しているものの、液体を収容するシリンジは吐出装置本体10の中に収容されている。これにより、ノズル110の先端から吐出装置本体10までの距離を大幅に低減することができる構成となっている。結果、吐出装置1を用いる作業者は、ノズル110の先端を目標箇所に近づける作業が容易になり、作業の正確性が向上している。
【0016】
なお、吐出装置1では、上述のように吐出装置本体10の中にシリンジカートリッジ100の大部分を収容する構成としたことにより、シリンジカートリッジ100内の液量を直接視認することが難しくなった。そこで、吐出装置本体10に確認窓15を設けて、シリンジカートリッジ100内の液量を確認することができるように構成されている。
【0017】
吐出装置本体10には、第1の操作入力部40aと第2の操作入力部40bとが設けられている。第1の操作入力部40aおよび第2の操作入力部40bは、作業者(吐出装置1の利用者)が操作入力を行うためのものである。
【0018】
第1の操作入力部40aは、吐出装置本体10における先端付近の上面に設けられている。第1の操作入力部40aは、作業者が吐出装置本体10を用いて作業する際に使用する操作ボタン41を備えている。操作ボタン41は、例えば液体の吐出に割り当てられており、作業者が操作ボタン41を押した場合、シリンジカートリッジ100内の液体がノズル110を介して所定量吐出される。
【0019】
第2の操作入力部40bは、吐出装置本体10における中央付近の上面に設けられている。第2の操作入力部40bは、吐出装置1の設定をするための設定ボタン42を備えている。設定ボタン42は、例えば吐出装置1から吐出される液量の設定を行うことができる。設定ボタン42によって設定された吐出装置1の設定は、表示パネル43に表示され、作業者が吐出装置1の設定を確認することが可能である。
【0020】
図1および
図2に示されるように、吐出装置1の長手方向における中央付近の下部には、バッテリケース70が設けられている。バッテリケース70には、バッテリケース蓋71が設けられ、バッテリケース70内にバッテリ72(
図3参照)が収容される。
【0021】
よく知られているように、一般的なバッテリ72は重量が大きい。したがって、吐出装置1におけるバッテリ72の位置は、吐出装置1全体における重心位置に大きく寄与する。そして、吐出装置1全体における重心位置は、作業者が吐出装置1を操作する際の操作性に大きく影響することになる。
【0022】
吐出装置1では、吐出装置1の長手方向における中央付近にバッテリ72を収容しているので、吐出装置1全体における重心位置が吐出装置1における中央付近に存在することになる。これにより、作業者が吐出装置1を把持する際に、バランスを取るために余計な力を必要とすることがなくなる。このことは、作業者がノズル110の先端を目標箇所に近づけることに注力できるので、作業の正確性が向上することになる。
【0023】
また、吐出装置1では、バッテリケース70が吐出装置本体10の先端より少し後方に下がった場所に設けられている。この構成により、バッテリケース70の前方端面が指掛け16として機能することになる。
【0024】
作業者は、吐出装置1を把持する際、人差し指を操作ボタン41の上に添え、中指を指掛け16に掛け、親指を吐出装置本体10の側面に添えることで、安定して吐出装置1を把持することができる(
図4参照)。この構成には、2つの効果がある。一つは、作業者が中指を指掛け16に掛けることにより、吐出装置1自体をしっかり把持することができるである。もう一つは、人差し指で操作ボタン41を押した際の反動を中指で
吸収することができることである。従来は、操作ボタン41を押した際の反動でノズル110の先端がブレてしまうことがあったが、本構成ではこのブレを抑制することができる。この2つの効果により、吐出装置1では、作業の正確性が顕著に向上することになる。
【0025】
上記の目的のため、バッテリケース70の位置は、吐出装置本体10の先端から指一本程度後方に後退した位置に設けることが好ましい。
【0026】
ここで、吐出装置1の内部構成について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る吐出装置1の縦断面を示す概略説明図である。
図6は、吐出装置本体10の先端部分の拡大断面を示す概略説明図である。
【0027】
シリンジカートリッジ100は、シリンジ101と、シリンジ101の基端側(
図5において上側)からシリンジ101内に挿入されたプランジャ102とを備え、内部に液体を封入可能とされている。
【0028】
シリンジ101は筒状に形成され、シリンジ101の先端側(
図5において下側)は閉塞するとともに液体が通過する細径の流路103が形成されている。なお、シリンジカートリッジ100の先端に、取り外し可能なノズル110が設けられている。一方、シリンジ101の基端側は、プランジャ102によって閉塞されている。
【0029】
プランジャ102は円筒形状に構成されている。プランジャ102の外径は、シリンジ101の内径よりもわずかに小さく設定されており、プランジャ102がシリンジ101内をプランジャ102の軸方向に前後動することにより、ノズル110を通じて、シリンジ101内に液体を吸入したり、シリンジ101内の液体を吐出したりすることができるようになっている。
【0030】
吐出装置本体10の内部には、吐出装置本体10の長手方向に延在した筒体20が設けられている。筒体20は、吐出装置本体10の内部で、電動アクチュエータ31と減速機32と出力軸33とピストン基端部34とピストン35とを保持している。
【0031】
電動アクチュエータ31は、吐出装置1の駆動源となるもので、バッテリケース70に収容されたバッテリ72から供給される電力により駆動する。なお、バッテリ72から供給される電力は、途中の制御回路において適切に制御される。すなわち、制御回路は、第2の操作入力部40bの設定ボタン42によって設定された吐出量となるように、電動アクチュエータ31の1回の駆動回転量を制御したり、設定ボタン42によって設定された吐出モードと吸入モードとの切り替えに応じて電動アクチュエータ31の回転方向を変更したりすることができる。
【0032】
減速機32は、電動アクチュエータ31によって生み出される回転駆動力を、減速変換し、出力軸33へ伝える装置である。出力軸33は、外周面にネジ溝が形成された円柱状の構造物である。出力軸33の一端は、減速機32に連結しており、電動アクチュエータ31によって生み出される回転駆動力によって回転する。
【0033】
ピストン基端部34は、中央に穴を有し、当該穴にナット状に雌ネジが形成されている。当該雌ネジは、出力軸33の外周に形成されたネジ溝に螺合している。一方、ピストン基端部34は、筒体20に形成された長溝に嵌合されており、筒体20の内部で回転することが規制されている。その結果、出力軸33が回転すると、出力軸33に螺合されているピストン基端部34も回転しようとするが、その回転は規制されているので、ピストン基端部34は、筒体20内部を長手方向に前後動する結果となる。
【0034】
ピストン35は、ピストン基端部34に連結されており、ピストン基端部34が筒体20内部を長手方向に前後動することにより、ピストン35も移動する。一方、ピストン35は、シリンジカートリッジ100のシリンジ101内に挿入されている。したがって、ピストン35は、ピストン基端部34の前後動に伴って、シリンジ101内を前後動することになる。
【0035】
シリンジカートリッジ100は、シリンジカートリッジ保持部25を介して、吐出装置本体10に保持されている。シリンジカートリッジ保持部25は、ほぼ円筒形状であり、シリンジカートリッジ100(シリンジ101)の外周側面を保持している。
【0036】
ピストン35は、先端が閉塞された略円筒状をなすものであり、その外径の大きさは、シリンジ101の内径よりも僅かに小さいものである。また、ピストン35の内径の大きさは、出力軸33の外径よりも僅かに大きいものである。
【0037】
ピストン35の先端側と、シリンジカートリッジ100のプランジャ102の後端側との間に磁石部50を備えている。この磁石部50は、ピストン35の先端に固定されており、プランジャ102の金属部分と磁気的に接続される。これにより、ピストン35の進退に応じて、プランジャ102は磁石部50を介してシリンジ101内を進退することになる。先述のように、吐出装置1では、シリンジカートリッジ100の大部分が吐出装置本体10の内部に収容されている。したがって、シリンジカートリッジ100を吐出装置本体10に接続する際に、接続部分を直接操作することはできない。しかしながら、本構成の吐出装置1では、シリンジカートリッジ100内のプランジャ102と吐出装置本体10のピストン35とを磁力によって接続することによって、作業者が接続部分を直接操作することなく、シリンジカートリッジ100の着脱が可能になっている。
【0038】
先述のように、バッテリ72は、吐出装置1の長手方向における中央付近の下部に配置されている。一方、シリンジカートリッジ100のうちシリンジ101の部分は、吐出装置本体10の内部に収容されている。したがって、バッテリ72は、シリンジカートリッジ100の近傍に配置されることになっている。
【0039】
また、バッテリ72が収容された吐出装置本体10の前方端面は指掛け16として機能する。したがって、作業者が吐出装置1を把持する際は、重量の大きいバッテリ72および正確に操作すべきシリンジカートリッジ100の両方が作業者の手に近い位置に配置される。このことは、作業者にとって、操作性の向上に大きく寄与する。
【0040】
図7Aおよび
図7Bは、吐出装置1がシリンジ101内の液体を吐出する様子を示す断面斜視図である。
図7Aは、シリンジ内に液体が残っている状態を図示しており、
図7Bは、シリンジ内の液体が吐出された後の状態を図示している。
【0041】
図7Aに示されるように、シリンジ内に液体が残っている状態では、シリンジ101とプランジャ102とによって形成された領域Aに液体が収容されている。これが、作業者が操作ボタン41を押すことによって、電動アクチュエータ31が回転駆動し、減速機32および出力軸33を介してピストン35を前後動させる。これにより、シリンジ101内のプランジャ102が前方に摺動し、領域Aを縮小させる。結果、領域Aに収容されている液体がノズル110を通じて吐出される。操作ボタン41を押すごとに吐出される液量は、電動アクチュエータ31における回転量によって規定される。そして、最終的には、
図7Bに示されるように、シリンジ101とプランジャ102とによって形成された領域Aが無くなる位置までプランジャ102が移動することになる。
【0042】
なお、上記例では、吐出装置1から液体を吐出する例を示したが、吐出装置1では、電動アクチュエータ31の回転方向を変えることにより、吐出装置1に液体を吸入する作業も行うことができる。
【0043】
なお、上記の実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0044】
例えば、上述の実施形態では、吐出装置本体10が磁石部50を有する場合について説明したが、磁石部50を有していなくても良い。この場合、例えば、ピストンとプランジャとが嵌合されるなど、他のロック機構により接続される構成とすれば良い。
【0045】
また、上述の実施形態では、吐出装置1において、ノズル110をシリンジカートリッジ100から取り外し可能な構造である場合について説明したが、ノズル110とシリンジカートリッジ100とが一体な構造とされていても良い。
【0046】
また、上述の実施形態では、シリンジ101の内部に液体を収容する、いわゆるディスペンサ型の吐出装置を用いて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、シリンジ101の内部に気体を収容する、いわゆるピペット型の吐出装置に適用することも可能である。本発明をピペット型の吐出装置に適用する場合、図面に記載したようなノズル110を用いるのではなく、液体を溜めることができるチップを着脱可能に保持することが可能なノズルを用いる。この場合、吐出装置内部のシリンジ101は気体の排気および吸入を行い、この気体の排気および吸入によって、チップ内に溜めこまれている液体を吐出および吸入することになる。しかしながら、このようなピペット型の吐出装置であっても、上述の実施形態と同じように、作業者が安定して装置を把持して、目標箇所にて正確に液体を吐出または吸入できるという効果を奏することになる。
【0047】
さらに、シリンジ101の内部に収容される物質は、液体および気体に限定されず、固体とすることもできる。例えば、角膜移植用の人工角膜を眼内へ注入する装置では、シリンジ101の内部に人工角膜を収容に、ノズルを介して患者の眼内へ人工角膜を吐出する。このように、シリンジ101の内部に収容される物質は、ある程度の柔軟性を有する高分子化合物等の固体またはゲル状物質なども用いることができる。もちろん、このような固体等を吐出する吐出装置であっても、上述の実施形態と同じように、作業者が安定して装置を把持して、目標箇所にて正確に物質を吐出できるという効果を奏することになる。