特許第6584181号(P6584181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6584181加速度センサー及びシートベルト用リトラクタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584181
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】加速度センサー及びシートベルト用リトラクタ
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/40 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   B60R22/40
【請求項の数】5
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-142077(P2015-142077)
(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公開番号】特開2017-24457(P2017-24457A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】崔 仁洙
(72)【発明者】
【氏名】角中 智
(72)【発明者】
【氏名】重里 賢一
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−116284(JP,A)
【文献】 特開2003−212086(JP,A)
【文献】 特開2012−250688(JP,A)
【文献】 実開平01−174268(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0301153(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00−22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の支持部を有し、慣性力により変位する慣性体が載置されるセンサーホルダーと、
前記一対の支持部の間に配置された基部、及び、前記基部から突出して前記一対の支持部により支持された一対の軸を有し、前記一対の支持部の間で回転軸を中心に回転可能に、かつ、回転軸方向に移動可能に支持され、前記慣性体の上方に配置されて、前記慣性体の変位により回転して変位するセンサーレバーと、
を備えたシートベルト用リトラクタの加速度センサーであって、
前記センサーホルダーは、前記センサーレバーに接触して、前記回転軸方向における一方向と他方向への前記センサーレバーの移動を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記一対の支持部の間に設けられており、
前記センサーレバーは、前記一方向と他方向のそれぞれに移動したときに、前記規制部に接触する一対の接触部を有し、
前記センサーレバーが前記一方向と他方向のいずれに移動したときでも、前記センサーレバーの移動が前記規制部により規制されて、前記基部と前記一対の支持部とが接触しないシートベルト用リトラクタの加速度センサー。
【請求項2】
請求項1に記載されたシートベルト用リトラクタの加速度センサーにおいて、
前記センサーレバーは、前記一対の軸の間に位置する空所を有し、
前記一対の接触部は、前記空所内に形成され、
前記規制部は前記空所内に配置されたシートベルト用リトラクタの加速度センサー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたシートベルト用リトラクタの加速度センサーにおいて、
前記一対の接触部と前記規制部は、前記センサーレバーの前記一対の軸の間において、前記センサーレバーの回転軸に直交する方向で、前記軸が前記支持部に接触する位置よりも前記回転軸側の領域のみにおいて接触するシートベルト用リトラクタの加速度センサー。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたシートベルト用リトラクタの加速度センサーにおいて、
前記規制部は、前記センサーレバーの回転軸の位置に配置されたシートベルト用リトラクタの加速度センサー。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載されたシートベルト用リトラクタの加速度センサーを備えたシートベルト用リトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性体により加速度を検知するシートベルト用リトラクタの加速度センサー、及び、加速度センサーを備えたシートベルト用リトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、シートに座った乗員を保護するため、リトラクタを備えたシートベルト装置が搭載されている。乗員は、リトラクタからウエビング(シートベルト)を引き出して、ウエビングを装着する。車両の衝突等により、リトラクタの加速度センサーが所定値以上の加速度を検知したときには、加速度センサーにより、リトラクタのロック機構が作動する。ロック機構により、ウエビングの引き出しが停止して、ウエビングにより、乗員がシートに拘束される。また、加速度センサーは、車両が傾いた状態でも加速度を検知してロック機構を作動させ、横転等に伴う車両の傾きも検知してロック機構を作動させる。
【0003】
加速度センサーは、一般に、加速に伴う慣性力により変位する慣性体を備え、慣性体により加速度を検知する。また、従来、慣性体であるボールと、ブラケット(センサーホルダー)の一対のアーム(支持部)により回転可能に支持されたポール(センサーレバー)と、を備えた加速度センサーが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された従来の加速度センサーでは、ボールが、慣性力により変位して、センサーレバーを回転により変位させる。これにより、加速度センサーが作動し、センサーレバーにより、リトラクタのロック機構が作動する。
【0005】
この従来の加速度センサーを組み立てるときには、一対の支持部の間隔を広げて、センサーレバーのピン(軸)を一対の支持部の支持孔に取り付ける。その際、一対の支持部を弾性変形させる必要がある。また、取り付け易さ、又は、取り付け後の動き易さを考慮して、センサーレバーと一対の支持部の間には、ある程度の回転軸方向の間隙が必要である。更に、各部品には寸法差があり、部品の間にガタツキもある。そのため、センサーレバーの回転軸方向の移動を抑制するのは難しく、センサーレバーの位置がずれる虞がある。
【0006】
特に、車両が傾いたときには、センサーレバーの回転軸が水平方向に対して傾くため、センサーレバーが回転軸方向に移動し易くなる。センサーレバーの位置によっては、加速度センサーの安定した作動に影響が生じる虞がある。従って、センサーレバーの位置のずれを考慮して、ロック機構を設計することが求められており、これにより、ロック機構の小型化等が困難になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−114867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、加速度センサーのセンサーレバーを正確な位置に配置し、加速度センサーを安定して作動させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一対の支持部を有し、慣性力により変位する慣性体が載置されるセンサーホルダーと、前記一対の支持部の間に配置された基部、及び、前記基部から突出して前記一対の支持部により支持された一対の軸を有し、前記一対の支持部の間で回転軸を中心に回転可能に、かつ、回転軸方向に移動可能に支持され、前記慣性体の上方に配置されて、前記慣性体の変位により回転して変位するセンサーレバーと、を備えたシートベルト用リトラクタの加速度センサーである。前記センサーホルダーは、前記センサーレバーに接触して、前記回転軸方向における一方向と他方向への前記センサーレバーの移動を規制する規制部を有する。前記規制部は、前記一対の支持部の間に設けられている。前記センサーレバーは、前記一方向と他方向のそれぞれに移動したときに、前記規制部に接触する一対の接触部を有する。前記センサーレバーが前記一方向と他方向のいずれに移動したときでも、前記センサーレバーの移動が前記規制部により規制されて、前記基部と前記一対の支持部とが接触しない。
また、本発明は、シートベルト用リトラクタの加速度センサーを備えたシートベルト用リトラクタである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加速度センサーのセンサーレバーを正確な位置に配置でき、加速度センサーを安定して作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のリトラクタの斜視図である。
図2】複数のユニットに分解されたリトラクタの斜視図である。
図3】複数のユニットに分解されたリトラクタの斜視図である。
図4】分解された巻取バネユニットの斜視図である。
図5】分解されたハウジングユニットの斜視図である。
図6】パウルとラチェットギヤを模式的に示す正面図である。
図7】巻取ドラムユニットの断面図である。
図8図1のX方向からみたロックユニットの断面図である。
図9】分解されたロックユニットの斜視図である。
図10】分解されたロックユニットの斜視図である。
図11】ロッキングギヤの斜視図である。
図12】クラッチの斜視図である。
図13】ロック機構の動作を示す図である。
図14】ロック機構の動作を示す図である。
図15】ロック機構の動作を示す図である。
図16】ロック機構の動作を示す図である。
図17】ロック機構の動作を示す図である。
図18】ロック機構の動作を示す図である。
図19】ロック機構の動作を示す図である。
図20】加速度センサーの側面図である。
図21】分解された加速度センサーの斜視図である。
図22】分解された加速度センサーの斜視図である。
図23】加速度センサーのセンサーホルダーを示す斜視図である。
図24】加速度センサーのセンサーレバーを示す斜視図である。
図25】加速度センサーのセンサーレバーを示す斜視図である。
図26】加速度センサーの組み立て手順を示す図である。
図27】加速度センサーの組み立て手順を示す図である。
図28】加速度センサーの組み立て手順を示す図である。
図29】加速度センサーの組み立て手順を示す図である。
図30】加速度センサーの組み立て手順を示す図である。
図31図29に示す加速度センサーの一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のシートベルト用リトラクタ(以下、リトラクタという)の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のリトラクタは、シートベルトのウエビングを巻き取るウエビング巻取装置であり、車両用のシートベルト装置に設けられる。リトラクタを備えたシートベルト装置は、車両に搭載され、シートに座った乗員をウエビング(シートベルト)により保護する。
【0013】
図1は、本実施形態のリトラクタ1の斜視図であり、帯状のウエビング2を鎖線で示している。また、図1A図1Bは、異なる方向からみたリトラクタ1の全体を示している。図2図3は、複数のユニットに分解されたリトラクタ1の斜視図であり、異なる方向からみたリトラクタ1を示している。
図示のように、リトラクタ1は、ハウジングユニット3と、巻取ドラムユニット4と、巻取バネユニット5と、ロックユニット6を備えている。
【0014】
巻取ドラムユニット4は、中心線Cを中心に回転する巻取ドラム10と、ラチェットギヤ7を有する。巻取ドラム10は、一対の端部11、12(第1端部11、第2端部12)と、第1端部11と第2端部12の間の巻取部13と、第2端部12の中央に形成されたシャフト14を有する。ウエビング2は、巻取部13に取り付けられて、巻取ドラム10の巻取部13に巻き取られる。ラチェットギヤ7は、複数の歯(ラチェット歯)7Aを有し、巻取ドラム10の第1端部11に配置されて、巻取ドラム10とともに回転及び停止する。
【0015】
巻取ドラム10がハウジングユニット3内に配置された状態で、巻取バネユニット5とロックユニット6は、ハウジングユニット3の側面に固定されて、巻取ドラムユニット4を回転可能に支持する。ハウジングユニット3が車両に取り付けられて、リトラクタ1が車両に搭載される。
【0016】
巻取バネユニット5とロックユニット6により、巻取ドラムユニット4及び巻取ドラム10は、ウエビング2の巻取方向Wと引出方向Pに回転可能に支持される。巻取方向Wは、ウエビング2の巻取時における巻取ドラム10の回転方向であり、引出方向Pは、ウエビング2の引出時における巻取ドラム10の回転方向である。ウエビング2の巻き取りと引き出しに伴い、巻取ドラム10は、ウエビング2の巻取方向Wと引出方向Pに回転する。
【0017】
巻取バネユニット5は、巻取ドラム10(巻取ドラムユニット4)をウエビング2の巻取方向Wに付勢する付勢機構であり、かつ、ウエビング2を巻取ドラム10に巻き取る巻取手段である。巻取バネユニット5は、巻取ドラム10のシャフト14に連結される。巻取バネユニット5により、巻取ドラム10は、巻取方向Wに常に付勢され、巻取方向Wに回転する。ウエビング2は、回転する巻取ドラム10に巻き取られてリトラクタ1内に収納される。その状態から、ウエビング2は、巻取ドラム10を引出方向Pに回転しながらリトラクタ1から引き出される。
【0018】
ロックユニット6は、巻取ドラムユニット4のラチェットギヤ7に隣接し、ラチェットギヤ7とともにロック機構8を構成する。ロック機構8は、車両の緊急時に作動して、巻取ドラム10のウエビング2の巻取方向Wへの回転を阻止する。ここでは、車両の速度の急激な変化又はウエビング2の急激な引き出しに応じて(又は、反応して)、ロック機構8が作動して、ウエビング2の引出方向Pに回転する巻取ドラム10をロックする。また、ロック機構8は、加速度検知機構を有し、加速度検知機構により、緊急時の車両の加速度又はウエビング2の急激な引き出しを検知して作動する。ロック機構8により、巻取ドラム10の引出方向Pの回転が阻止されて、ウエビング2の引き出しが停止する。その際、ロック機構8により、ラチェットギヤ7の回転が阻止されて、巻取ドラムユニット4及び巻取ドラム10の回転が停止する。
【0019】
次に、リトラクタ1の各ユニットについて、より詳細に説明する。
(巻取バネユニット5)
図4は、分解された巻取バネユニット5の斜視図であり、図4A図4Bは、異なる方向からみた巻取バネユニット5を示している。
図示のように、巻取バネユニット5は、渦巻バネ5Aと、バネケース5Bと、バネシート5Cと、円筒状のバネシャフト5Dを有する。渦巻バネ5Aの外端K1は、バネケース5Bの固定部5Eに固定され、渦巻バネ5Aの内端K2は、バネシャフト5Dに固定される。バネケース5Bは、渦巻バネ5Aとバネシャフト5Dを収容する。
【0020】
バネシート5Cは、バネケース5Bに取り付けられて、バネケース5B内の渦巻バネ5Aとバネシャフト5Dを覆う。また、バネシート5Cは、中央に形成された円形状の凹部5Fと、凹部5Fの中心に形成された支持孔5Gを有する。バネシャフト5Dの一端部は、バネシート5Cの凹部5F内に配置されて、バネシート5Cに回転可能に支持される。バネシャフト5Dの他端部は、バネケース5Bのピン5Hにより回転可能に支持される。巻取ドラム10のシャフト14は、支持孔5Gに挿入されて、バネシャフト5Dに固定される。バネシート5Cにより、シャフト14が回転可能に支持される。
【0021】
バネシャフト5Dは、巻取ドラム10と一体に回転し、かつ、渦巻バネ5Aの付勢力を巻取ドラム10に伝達する。巻取バネユニット5は、渦巻バネ5Aにより、巻取ドラム10をウエビング2の巻取方向Wに常に付勢する。ウエビング2の引出時には、巻取ドラム10の回転により渦巻バネ5Aが巻かれる。ウエビング2の巻取時には、渦巻バネ5Aの付勢により、巻取ドラム10が巻取方向Wに回転して、ウエビング2が巻取ドラム10に巻き取られる。
【0022】
(ハウジングユニット3)
図5は、分解されたハウジングユニット3の斜視図である。
図示のように、ハウジングユニット3は、巻取ドラム10を収容するハウジング3Aと、プロテクタ20と、パウル21と、パウルリベット22と、リターンスプリング23と、リターンプレート24と、センサーカバー25と、加速度センサー26を有する。
【0023】
(ハウジング3A)
ハウジング3Aは、車体に固定される背板部3Bと、一対の側壁部3C、3D(第1側壁部3C、第2側壁部3D)と、一対の側壁部3C、3Dに固定された2つの固定板3Eを有する。プロテクタ20は、ウエビング2が通過する通過孔20Aを有し、背板部3Bに取り付けられる。第1側壁部3Cと第2側壁部3Dは、背板部3Bの両側縁部から突出して相対向する。また、ハウジング3Aは、第1側壁部3Cに形成された開口(第1開口3F)と、第1開口3Fに繋がるパウル収容部3Gと、第2側壁部3Dに形成された開口(第2開口3H)を有する。
【0024】
ハウジング3Aは、第1側壁部3Cと第2側壁部3Dの間に、巻取ドラム10をウエビング2の巻取方向Wと引出方向Pに回転可能に収容する(図2図3参照)。その状態で、ロックユニット6が第1側壁部3Cに取り付けられ、巻取バネユニット5が第2側壁部3Dに取り付けられる。また、ラチェットギヤ7がハウジング3Aの第1開口3F内に配置され、巻取ドラム10の第2端部12がハウジング3Aの第2開口3H内に配置される。
【0025】
(加速度センサー26)
加速度センサー26は、加速度を検知する加速度検知機構(第1加速度検知機構)であり、慣性体27とセンサーホルダー30とセンサーレバー40を備えている。また、加速度センサー26は、緊急ロック作動装置であり、車両の緊急時に、慣性体27により車両の加速度を検知してロック機構8を作動させる。慣性体27は、金属製の球体であり、センサーホルダー30に載置される。その状態で、慣性体27が、センサーホルダー30とセンサーレバー40の間に変位可能に保持される。センサーレバー40は、慣性体27の上方に配置されて、慣性体27を上方から覆い、センサーホルダー30に上下方向に変位可能に取り付けられる。
【0026】
加速度センサー26がセンサーカバー25内に挿入されて、センサーホルダー30がセンサーカバー25に取り付けられる。センサーカバー25は、第1側壁部3Cの取付孔3Iに挿入されて、第1側壁部3Cに取り付けられる。その状態で、センサーレバー40の突起41は、上方に突出し、センサーカバー25外に位置する。車両の緊急事態(例えば、衝突、急ブレーキ)により、車両の加速度が所定値以上になったときに、慣性体27は、慣性力によりセンサーホルダー30の上で変位して、センサーレバー40を上方へ押す。加速度センサー26は、慣性体27の変位により、車両の加速度を検知して、センサーレバー40の突起41を上方に変位させる。
【0027】
(パウル21)
パウル21は、ラチェットギヤ7のラチェット歯7Aに係合する係合爪21Aと、連動ピン21Bと、円筒状のボス21Cを有する。連動ピン21Bは、係合爪21Aに近いパウル21の一端側に形成され、第1側壁部3Cの外側に突出する。ボス21Cは、係合爪21Aから離れたパウル21の他端側に形成され、ハウジング3Aの内側から第1側壁部3Cの取付孔3Jに挿入される。パウルリベット22がボス21Cの内周部に挿入されて、パウル21が第1側壁部3Cに回転可能に取り付けられる。
【0028】
(リターンスプリング23)
リターンスプリング23は、V字状に形成された捩じりコイルバネであり、弾性連結部23Aと第1腕部23Bと第2腕部23Cを有する。第1腕部23Bと第2腕部23Cの間の角度の変化に伴い、弾性連結部23Aが弾性的に捩じれ変形する。第1腕部23Bは、ロック機構8の所定部に取り付けられ、第2腕部23Cは、リターンプレート24の取付ピン24Aに取り付けられる。
【0029】
(リターンプレート24)
リターンプレート24は、取付ピン24Aと、装着孔24Bと、貫通孔24Cを有する。装着孔24Bは、パウルリベット22の頭部に装着される。また、パウル21の連動ピン21Bがリターンプレート24の貫通孔24Cに挿入されて、パウル21とリターンプレート24が連結される。パウル21とリターンプレート24は、ボス21C及びパウルリベット22を中心に回転して、回転方向に一体に変位する。リターンスプリング23は、第2腕部23Cにより、リターンプレート24の取付ピン24Aに力を加えて、リターンプレート24により、パウル21の連動ピン21Bを付勢する。パウル21は、リターンプレート24とともに、リターンスプリング23により付勢されて、リターンスプリング23の付勢方向に変位する。
【0030】
(ロック機構8)
ロック機構8(図2参照)は、ハウジング3Aの第1側壁部3Cに配置されて、パウル21の連動ピン21Bに連結される。ロック機構8により、連動ピン21B及びパウル21が移動して、パウル21がパウル収容部3Gの内側と外側とに変位する。これにより、パウル21は、ラチェットギヤ7から離れ、或いは、ラチェットギヤ7に接近する。また、パウル21は、巻取ドラム10をロックしない非ロック位置(パウル収容部3G内の位置)と、巻取ドラム10をロックするロック位置(パウル収容部3G外の位置)とに変位する。
【0031】
図6は、パウル21とラチェットギヤ7を模式的に示す正面図である。図6では、ロック位置に変位したパウル21を実線で示し、非ロック位置に変位したパウル21を点線で示している。
図示のように、非ロック位置は、パウル21がラチェットギヤ7のラチェット歯7Aに係合しない非係合位置であり、ロック位置は、パウル21がラチェットギヤ7のラチェット歯7Aに係合する係合位置である。ラチェットギヤ7は、パウル21の係合爪21Aと係合する複数のラチェット歯7Aを有し、複数のラチェット歯7Aは、ラチェットギヤ7の外周全体に形成されている。
【0032】
車両の緊急時には、ロック機構8は、車両の加速度又はウエビング2の引き出しの加速度に対応して、パウル21を非ロック位置(非係合位置)からロック位置(係合位置)に変位させる。これにより、パウル21の係合爪21Aがラチェットギヤ7のラチェット歯7Aに係合し、パウル21がラチェットギヤ7に係合する。ロック機構8は、パウル21により、ラチェットギヤ7の引出方向Pの回転を阻止して、ラチェットギヤ7及び巻取ドラム10をロックする。従って、パウル21は、ロック機構8の一部である。
【0033】
パウル21とラチェットギヤ7は、巻取ドラム10が引出方向Pに回転するときのみ係合し、ラチェット歯7Aと係合爪21Aは、ラチェットギヤ7の引出方向Pの回転のみを阻止する。係合爪21Aがラチェット歯7Aから外れたときに、パウル21とラチェットギヤ7の係合が解除される。また、パウル21がラチェットギヤ7から離れて非ロック位置に変位し、ラチェットギヤ7と巻取ドラム10のロックが解除される。これにより、ウエビング2の引き出しと巻き取りが可能になる。
【0034】
(巻取ドラムユニット4)
図7は、巻取ドラムユニット4の断面図であり、中心線Cを含む平面で切断した巻取ドラムユニット4を示している。
図示のように、巻取ドラムユニット4は、ラチェットギヤ7と、巻取ドラム10と、円柱状のトーションバー15を有する。ラチェットギヤ7は、中央に形成された軸部(ラチェット軸部)7Bを有し、巻取ドラム10は、中心線Cに沿って形成された中心孔部16を有する。中心孔部16は、巻取ドラム10の第2端部12で閉じ、巻取ドラム10の第1端部11で開口する。ラチェット軸部7Bと巻取ドラム10のシャフト14は、巻取ドラム10の中心線Cに位置し、巻取ドラムユニット4は、ラチェット軸部7Bとシャフト14により回転可能に支持される。
【0035】
(トーションバー15)
トーションバー15は、巻取ドラム10とラチェットギヤ7とに取り付けられて、巻取ドラム10とラチェットギヤ7とを回転不能に連結する。トーションバー15は、例えば鋼製であり、巻取ドラム10の中心孔部16に挿入される。トーションバー15の一端部は、中心孔部16内で巻取ドラム10の第2端部12に固定され、トーションバー15の他端部は、ラチェットギヤ7の中央部に固定される。ラチェットギヤ7は、トーションバー15に固定されて、巻取ドラム10の第1端部11に装着される。ウエビング2の引出荷重が所定値未満のときに、トーションバー15は、ラチェットギヤ7を巻取ドラム10とともに回転及び停止させ、ラチェットギヤ7の回転停止により巻取ドラム10の回転を停止させる。なお、ウエビング2の引出荷重は、乗員の移動によりウエビング2に掛かる荷重である。
【0036】
トーションバー15は、エネルギー吸収部材であり、車両の緊急時に、乗員の移動エネルギーを吸収する。ロック機構8(パウル21)によりラチェットギヤ7の引出方向Pの回転が阻止された状態で、ウエビング2を装着した乗員が車両の前方に移動すると、乗員からウエビング2に力(引出荷重)が加えられる。ウエビング2の引出荷重が所定値以上になったときに、巻取ドラム10に作用する引出方向Pの回転トルクにより、トーションバー15が塑性変形(ここでは、捻じれ変形)する。トーションバー15は、塑性変形しつつ巻取ドラム10を引出方向Pに回転させる。このように、トーションバー15が塑性変形することで、巻取ドラム10が引出方向Pに回転する。これにより、ウエビング2が巻取ドラム10から引き出されて、乗員の移動エネルギーが吸収される。
【0037】
(ロックユニット6)
図8は、図1のX方向からみたロックユニット6の断面図であり、通常時(パウル21が非ロック位置に配置された状態)におけるロックユニット6を示している。図9図10は、分解されたロックユニット6の斜視図であり、異なる方向からみたロックユニット6と巻取ドラムユニット4のラチェットギヤ7を示している。
図示のように、ロックユニット6は、メカニズムカバー6Aと、円形状のロッキングギヤ50と、ロッキングアーム60と、センサースプリング65と、クラッチ70と、噛合パウル80を有する。
【0038】
(メカニズムカバー6A)
メカニズムカバー6Aは、ロック機構8を収容する第1収容部6Bと、加速度センサー26を収容する第2収容部6Cと、円筒状の支持ボス6Dを有する。第1収容部6Bは、ロック機構8の一部であるロッキングギヤ50、ロッキングアーム60、及び、クラッチ70を収容する。加速度センサー26は、第2収容部6Cに挿入されて、第2収容部6Cに取り付けられる。センサーレバー40の突起41は、第2収容部6Cの貫通口6Eを通って、第1収容部6Bと第2収容部6Cとに移動する。
【0039】
(ロッキングギヤ50)
ロッキングギヤ50は、中央に形成された軸孔51と、複数の嵌合部52と、中央から突出する軸部(ギヤ軸部)53と、複数の歯54を備えたラチェットホイール55を有する。ラチェットギヤ7のラチェット軸部7Bが軸孔51に挿入され、複数の嵌合部52がラチェットギヤ7の複数の凹部7Cに嵌合する。これにより、ロッキングギヤ50は、ラチェットギヤ7に取り付けられて、巻取ドラムユニット4(巻取ドラム10)と一体に回転する。ギヤ軸部53は、メカニズムカバー6Aの支持ボス6D内に挿入されて、支持ボス6Dにより、回転可能に支持される。
【0040】
図11は、ロッキングギヤ50の斜視図である。
図示のように、ラチェットホイール55は、ロッキングギヤ50の外周に形成された環状部材であり、複数の歯54は、ラチェットホイール55の外周全体に形成されている。また、ロッキングギヤ50は、円柱状のアーム支持部56と、センサースプリング65を支持する支持ピン57と、ロッキングアーム60の変位を規制するストッパー58を有する。ロッキングアーム60(図8図10参照)は、環状のラチェットホイール55の内側で、ロッキングギヤ50に変位可能に連結される。
【0041】
(ロッキングアーム60)
ロッキングアーム60は、長手方向の一端部(係合端部)61と他端部(自由端部)62の間に形成された挿入孔63を有し、湾曲形状に形成されている。アーム支持部56を挿入孔63に挿入することで、ロッキングアーム60が、アーム支持部56に取り付けられる。アーム支持部56は、ロッキングアーム60を回転可能に支持し、ロッキングアーム60は、アーム支持部56によりロッキングギヤ50に回転可能に連結される。
【0042】
ロッキングアーム60は、ラチェットホイール55の内側に配置され、アーム支持部56を中心に回転する。センサースプリング65は、ロッキングアーム60の支持ピン64とロッキングギヤ50の支持ピン57の間に配置されて、ロッキングアーム60の他端部62をウエビング2の引出方向Pに付勢する。センサースプリング65の付勢により、ロッキングアーム60の他端部62が所定のロック作動方向L(図8参照)の反対方向に変位し、ロッキングアーム60の一端部61側の部分がロッキングギヤ50のストッパー58に接触して停止する。
【0043】
(クラッチ70)
クラッチ70は、第1収容部6B内でロッキングギヤ50とメカニズムカバー6Aとに挟まれた状態で、一定の回転範囲内で回転する。また、クラッチ70は、環状の内壁71と、内壁71の内周に形成されたクラッチギヤ72と、内壁71を囲む環状の外壁73と、内壁71の中心に位置する中心孔74を有する。ロッキングギヤ50のギヤ軸部53が中心孔74に挿入され、ロッキングギヤ50及び巻取ドラムユニット4がクラッチ70に対して相対的に回転する。
【0044】
ロッキングギヤ50のラチェットホイール55は、内壁71と外壁73の間に配置され、ロッキングアーム60は、内壁71の内側に配置される。巻取ドラム10のロック時には、ロッキングアーム60の一端部61が、クラッチギヤ72の内周に形成された係合歯に係合する。その状態で、クラッチ70が、ロッキングギヤ50及びロッキングアーム60と一体に、引出方向Pに回転する。
【0045】
クラッチ70は、外壁73の外側に形成された誘導部75と、誘導部75に形成された細長い誘導溝76を有する。パウル21の連動ピン21Bは、誘導溝76に挿入され、クラッチ70の回転に伴い、誘導部75により誘導される。誘導部75は、誘導溝76内で、パウル21の連動ピン21Bを強制的に移動させる。通常時には、リターンスプリング23により、クラッチ70は、ウエビング2の巻取方向Wに付勢され、パウル21の連動ピン21Bは、パウル21がラチェットギヤ7から離れる方向に付勢される。そのため、パウル21の連動ピン21Bが誘導溝76の一端部に配置され、パウル21が非ロック位置に維持される。
【0046】
図12は、クラッチ70の斜視図である。
図示のように、クラッチ70は、外壁73の外側に形成された取付ピン77、円柱状のパウル支持部78、及び、ストッパー79を有する。取付ピン77は、誘導部75とパウル支持部78の間に形成され、リターンスプリング23の第1腕部23Bは、取付ピン77に取り付けられる。噛合パウル80は、パウル支持部78に支持されて、ストッパー79に接触する(図8図9参照)。
【0047】
(噛合パウル80)
噛合パウル80は、円筒状の取付部81と、ラチェットホイール55の歯54に噛み合う噛合爪82を有する。パウル支持部78が取付部81に挿入されて、噛合パウル80がパウル支持部78に取り付けられる。パウル支持部78は、噛合パウル80を回転可能に支持し、噛合パウル80は、パウル支持部78によりクラッチ70に回転可能に取り付けられる。噛合パウル80が自重により回転して下方に変位するときには、噛合パウル80がストッパー79に接触して停止する。その状態で、噛合爪82は、外壁73の孔73Aに配置される。
【0048】
車両の加速度が所定値以上になったときに、上方に変位する加速度センサー26の突起41により、噛合パウル80は、上方に押されて、取付部81を中心に回転する。これにより、噛合パウル80が上方に変位し、噛合パウル80の噛合爪82がラチェットホイール55の歯54に噛み合う。歯54に噛み合う噛合パウル80により、クラッチ70がロッキングギヤ50に連結される。
【0049】
次に、リトラクタ1の動作について説明する。
ロッキングアーム60は、巻取ドラム10及びロッキングギヤ50とともに引出方向Pと巻取方向Wに回転する。通常時には、センサースプリング65の付勢により、ロッキングアーム60がストッパー58に接触し、ロッキングアーム60の一端部61がクラッチギヤ72から離れた状態に維持される。そのため、クラッチ70はロッキングギヤ50に連結されず、ロック機構8は作動しない。ウエビング2の引き出しに伴い、巻取ドラム10とロッキングギヤ50は、停止したクラッチ70に対して引出方向Pに回転する。
【0050】
これに対し、車両に所定値以上の加速度が作用したときに、ロック機構8が作動して巻取ドラム10をロックする。具体的には、ウエビング2の急激な引き出しにより、ウエビング2の引き出しの加速度が所定値以上になったときに(即ち、巻取ドラム10の引出方向Pの加速度が所定値以上になったときに)、ロッキングアーム60の一端部61が、慣性力により巻取ドラム10及びロッキングギヤ50の回転に追従しきれなくなる。その結果、回転するロッキングギヤ50に対して、慣性による遅れがロッキングアーム60の一端部61に生じて、ロッキングアーム60の一端部61が変位する。これに伴い、ロッキングアーム60が、センサースプリング65の付勢力に抗して、所定のロック作動方向L(図8参照)に変位し、ロック機構8を作動する。
【0051】
このように、ロッキングアーム60とセンサースプリング65は、巻取ドラム10から引き出されるウエビング2の引き出しの加速度(巻取ドラム10の引出方向Pの加速度)を検知する加速度検知機構(第2加速度検知機構)の一部である。第2加速度検知機構は、車両の緊急時に、ウエビング2の引き出しの加速度を検知して、ロック機構8を作動させる。
【0052】
図13図16は、ロック機構8の動作(ロック動作)を示す図であり、ロックユニット6の一部を削除して、リトラクタ1の内部構造を示している。
図示のように、ウエビング2の急激な引き出しにより、巻取ドラム10の引出方向Pの加速度が所定値以上になったときに、ロッキングアーム60が、センサースプリング65を圧縮しつつ回転して、ロック作動方向Lに変位する。これにより(図13参照)、ロッキングアーム60の一端部61が、ロッキングギヤ50の半径方向外側に変位して、クラッチギヤ72に係合する。また、クラッチ70が、ロッキングアーム60によりロッキングギヤ50(ラチェットギヤ7、及び、巻取ドラム10)に連結されて、ロッキングギヤ50及び巻取ドラム10とともにウエビング2の引出方向Pに回転する。
【0053】
クラッチ70の回転に伴い、パウル21の連動ピン21Bが、クラッチ70の誘導部75により誘導されて、誘導溝76内でクラッチ70の中心側に移動する(図14参照)。連動ピン21Bの移動により、パウル21がロック位置に変位して、パウル21の係合爪21Aがラチェットギヤ7のラチェット歯7Aに係合する。このように、パウル21は、回転するクラッチ70により非ロック位置からロック位置に変位し、ロック機構8は、パウル21によりラチェットギヤ7及び巻取ドラム10をロックする。ロック機構8は、パウル21により、巻取ドラム10の引出方向Pの回転を阻止して、ウエビング2の引き出しを停止する。
【0054】
続いて、ウエビング2の引っ張りが解除された後、巻取バネユニット5により、巻取ドラム10とロッキングギヤ50がウエビング2の巻取方向Wに回転して、ウエビング2が巻取ドラム10に巻き取られる。パウル21がロック位置に配置された状態では、クラッチ70は、リターンスプリング23によりウエビング2の引出方向Pに付勢されており、巻取方向Wに回転しない。そのため、ロッキングギヤ50は、静止したクラッチ70に対して、ロッキングアーム60とともに巻取方向Wに相対的に回転する。これに伴い、ロッキングアーム60の一端部61がクラッチギヤ72から外れて、クラッチ70とロッキングギヤ50の連結が解除される(図15参照)。
【0055】
ラチェットギヤ7は、巻取ドラム10とともにウエビング2の巻取方向Wに回転する。同時に、パウル21の係合爪21Aがラチェットギヤ7のラチェット歯7Aにより誘導されて、パウル21がロック位置から非ロック位置に向かって変位する(図16参照)。また、パウル21の連動ピン21Bにより、クラッチ70の誘導部75が押されて、クラッチ70が巻取方向Wに回転する。
【0056】
クラッチ70の巻取方向Wの回転に応じて、リターンスプリング23によるクラッチ70の付勢方向が、ウエビング2の引出方向Pから巻取方向Wに変更される。これにより、クラッチ70が巻取方向Wに回転し、パウル21が非ロック位置まで変位する(図8参照)。パウル21の変位に伴い、係合爪21Aとラチェット歯7Aとの係合が解除されて、ロック機構8による巻取ドラム10のロックが解除される。また、パウル21が非ロック位置に復帰し、クラッチ70が元の状態に復帰する。パウル21が非ロック位置に配置された状態では、クラッチ70は、リターンスプリング23によりウエビング2の巻取方向Wに付勢される。以降、ウエビング2の自由な引き出しと巻き取りが可能になる。
【0057】
このように、ロック機構8は、ロッキングアーム60を有するウエビング感応式ロック機構であり、ウエビング2の急激な引き出しに応じてウエビング2の引き出しを停止する。また、リトラクタ1は、ロッキングアーム60に加えて、加速度センサー26を備えている(図9図10参照)。ロック機構8は、加速度センサー26により作動する車両感応式ロック機構でもあり、車両の速度の急激な変化に応じてウエビング2の引き出しを停止する。
【0058】
ロック機構8、噛合パウル80、及び、加速度センサー26が、車両感応式ロック機構を構成する。通常時(図8参照)には、噛合パウル80は、ラチェットホイール55の歯54に噛み合わない位置(ラチェットホイール55から離れた位置)に配置され、センサーレバー40の突起41は、噛合パウル80の近傍に位置する。その状態において、車両に所定値以上の加速度が作用したときに、加速度センサー26が噛合パウル80によりロック機構8を作動させて、ロック機構8が巻取ドラム10をロックする。
【0059】
図17図19は、ロック機構8の動作(ロック動作)を示す図であり、ロックユニット6の一部を削除して、リトラクタ1の内部構造を示している。
図示のように、車両に所定値以上の加速度が作用したときに、加速度センサー26の慣性体27が、センサーホルダー30とセンサーレバー40の間に保持された状態で、慣性力により、センサーホルダー30の上で変位する(図17参照)。加速度センサー26は、慣性体27の変位により、所定値以上の加速度を検知して、慣性体27により、センサーレバー40の突起41を上方に変位させる。突起41により、噛合パウル80が上方に押されて、噛合パウル80(噛合爪82)がラチェットホイール55の歯54に噛み合う。噛合パウル80は、ロック機構8の一部であり、ロック機構8は、噛合パウル80の変位により作動する。
【0060】
噛合パウル80がラチェットホイール55の歯54に噛み合ったときに、噛合パウル80により、クラッチ70がロッキングギヤ50に連結される。続いて、ウエビング2が引き出されると、噛合パウル80が歯54に噛み合う状態で、クラッチ70が、ロッキングギヤ50及び巻取ドラム10とともにウエビング2の引出方向Pに回転する。
【0061】
クラッチ70の回転に伴い、パウル21の連動ピン21Bが、クラッチ70の誘導部75により誘導されて、誘導溝76内でクラッチ70の中心側に移動する(図18参照)。連動ピン21Bの移動により、パウル21が非ロック位置からロック位置に変位して、パウル21の係合爪21Aがラチェットギヤ7のラチェット歯7Aに係合する。ロック機構8は、パウル21によりラチェットギヤ7及び巻取ドラム10をロックする。ロック機構8は、パウル21により、巻取ドラム10の引出方向Pの回転を阻止して、ウエビング2の引き出しを停止する。
【0062】
車両の加速度が所定値よりも小さくなったときに、慣性体27が重力により元の位置に変位し、センサーレバー40と突起41が自重により下方へ変位する。続いて、ウエビング2の引っ張りが解除された後、巻取バネユニット5により、巻取ドラム10とロッキングギヤ50がウエビング2の巻取方向Wに回転して、ウエビング2が巻取ドラム10に巻き取られる。その際、上記したように、クラッチ70は、リターンスプリング23により引出方向Pに付勢されており、巻取方向Wに回転しない。そのため、ロッキングギヤ50は、静止したクラッチ70に対して巻取方向Wに相対的に回転する。これに伴い、噛合パウル80が、ラチェットホイール55の歯54から外れて、自重により下方へ変位する。その結果、クラッチ70とロッキングギヤ50の連結が解除される(図19参照)。
【0063】
ラチェットギヤ7は、巻取ドラム10とともにウエビング2の巻取方向Wに回転する。同時に、パウル21の係合爪21Aがラチェットギヤ7のラチェット歯7Aにより誘導されて、パウル21がロック位置から非ロック位置に向かって変位する。また、パウル21の連動ピン21Bにより、クラッチ70の誘導部75が押されて、クラッチ70が巻取方向Wに回転する。
【0064】
クラッチ70の巻取方向Wの回転に応じて、リターンスプリング23によるクラッチ70の付勢方向が、ウエビング2の引出方向Pから巻取方向Wに変更される。これにより、クラッチ70が巻取方向Wに回転し、パウル21が非ロック位置まで変位する(図8参照)。パウル21の変位に伴い、係合爪21Aとラチェット歯7Aとの係合が解除されて、ロック機構8による巻取ドラム10のロックが解除される。また、パウル21が非ロック位置に復帰し、クラッチ70が元の状態に復帰する。
【0065】
次に、リトラクタ1の加速度センサー26について、より詳細に説明する。
図20は、加速度センサー26の側面図である。図21図22は、分解された加速度センサー26の斜視図であり、異なる方向からみた加速度センサー26を示している。図23は、加速度センサー26のセンサーホルダー30を示す斜視図である。図24図25は、加速度センサー26のセンサーレバー40を示す斜視図であり、異なる方向からみたセンサーレバー40を示している。
【0066】
図示のように、センサーホルダー30は、慣性体27が載置される載置部31と、載置部31を囲む周壁32と、慣性体27を収容する収容部33と、一対の支持部34A、34Bと、支持部34A、34Bに形成された一対の支持孔35A、35Bと、センサーレバー40の移動を規制する規制部36と、傾斜部37を有する。収容部33は、載置部31と環状の周壁32からなる凹部であり、周壁32の内部に慣性体27を収容する。慣性体27は、収容部33に変位可能に収容され、載置部31の上で変位する。
【0067】
支持部34A、34Bは、載置部31から突出して並列する支柱であり、載置部31から同じ方向に突出し、離間して配置される。支持孔35A、35Bは、それぞれ支持部34A、34Bの先端側に形成された円形孔であり、支持孔35A、35Bの半径方向の中心は、同一直線上に位置する。規制部36は、支持部34A、34Bの間に設けられた凸部であり、載置部31から支持部34A、34Bの突出方向に突出して、支持部34A、34Bから離間して配置される。規制部36の先端は、支持孔35A、35Bの中心を通る直線上に位置する。
【0068】
センサーレバー40は、突起41と、一対の軸42A、42Bと、椀状のカバー部43と、軸42A、42Bの間に位置する空所44と、センサーホルダー30の規制部36に接触する一対の接触部45A、45Bと、一対のテーパー部46A、46Bと、回転止め部47と、基部48を有する。規制部36は、接触部45A、45Bに接触して、センサーレバー40の回転軸方向Sの移動を規制する。回転軸方向Sは、センサーレバー40の回転軸Rの延びる方向であり、規制部36は、回転軸方向Sにおける両方向(一方向、他方向)へのセンサーレバー40の移動を規制する。突起41は、例えば、カバー部43に形成された爪状の部材(ロック爪)であり、センサーレバー40から上方に突出する。軸42A、42Bは、センサーレバー40の側部に形成され、センサーレバー40から互いに反対方向に突出する。
【0069】
一方の軸42Aは、円柱状に形成され、他方の軸42Bは、柱状に形成されている。軸42Bは、軸42Aと同じ半径の円柱から外周側の一部(ここでは、上部)を切り取った形状に形成され(図25参照)、軸42Bの回転軸Rに直交する断面は、円形から外周側の一部を切り取った形状に形成されている(図20参照)。また、軸42Bは、円柱の外周側において半径の半分程度の部分を削除した形状をなし、面取り49が、軸42Bの上部に形成されている。軸42A、42Bの回転軸は、センサーレバー40の回転軸Rであり、同一直線上に位置する。
【0070】
センサーレバー40の基部48がセンサーホルダー30の支持部34A、34Bの間に配置され、センサーレバー40の軸42A、42Bが基部48から支持部34A、34Bに向かって突出する。軸42A、42Bは、それぞれセンサーホルダー30の支持孔35A、35B内に配置され、軸42A、42B及びセンサーレバー40は、支持部34A、34Bにより回転軸Rを中心に回転可能に支持される。センサーレバー40は、回転軸Rを中心に両方向に回転して、回転方向に変位する。
【0071】
センサーレバー40のカバー部43が、慣性体27を覆うように慣性体27の上に載置されて、センサーレバー40が、慣性体27の上に配置される。センサーレバー40の回転止め部47は、センサーホルダー30の規制部36に対向する。センサーレバー40が上方に向かって回転したときに、回転止め部47が規制部36に接触して、センサーレバー40の回転が止められる。
【0072】
センサーレバー40の空所44は、センサーホルダー30の規制部36が配置される配置空間であり、軸42A、42Bの間に凹状に形成されている。規制部36は、空所44内で、軸42A、42Bの間に配置される。センサーレバー40の接触部45A、45Bは、空所44内の部分であり、軸42A、42Bのそれぞれの位置に対応して、空所44内の2箇所に形成されている。ここでは、接触部45A、45Bは、空所44の内面部であり、回転軸Rに直交する。
【0073】
センサーレバー40のテーパー部46A、46Bは、空所44において、それぞれ接触部45A、45Bの下方に形成されている(図24参照)。テーパー部46A、46Bは、回転軸Rに対して傾斜した平面であり、それぞれ接触部45A、45Bの下端から回転軸方向Sの外側(軸42A、42B側)に向かって傾斜する。接触部45A、45Bの下端は、回転軸Rから僅かな距離を隔てて、回転軸Rの下方に位置する。センサーレバー40の基部48は、軸42A、42Bと空所44の間に形成され、軸42A、42Bよりも回転軸Rに直交する方向に大きい。
【0074】
図26図30は、加速度センサー26の組み立て手順を示す図である。図26図27は、組み立て途中の加速度センサー26を示し、図28図30は、組み立て完了後の加速度センサー26を示している。また、図26図28は、加速度センサー26の側面図あり、図28は、図20の反対側からみた加速度センサー26を示している。図27は、図26のY1−Y1線で切断した加速度センサー26の断面図であり、図29は、図28のY2−Y2線で切断した加速度センサー26の断面図である。図30は、図29のY3−Y3線で切断した加速度センサー26の断面図である。
【0075】
図示のように、加速度センサー26の組み立て時には、まず(図26図27参照)、慣性体27をセンサーホルダー30の載置部31に載置する。また、センサーレバー40の一方の軸42Aをセンサーホルダー30の一方の支持孔35Aに入れ、規制部36の先端を一方のテーパー部46Aに接触させる。次に、支持部34A、34Bを弾性変形させて、支持部34A、34Bの間隔を拡げながら、センサーレバー40の他方の軸42Bをセンサーホルダー30の他方の支持孔35Bに押し込む(図28図30参照)。
【0076】
センサーホルダー30の傾斜部37は、支持部34Bの先端部に、かつ、支持部34Bの内側(規制部36側)に形成され、支持部34Bの突出方向に対して傾斜する。軸42Bは、傾斜部37に沿って、支持部34Bの先端部から支持孔35Bまで押し込まれる。その際、傾斜部37により、支持部34A、34Bの間隔が拡がり易くなっている。また、軸42Bの面取り49により、軸42Bが支持孔35Bに入り易く、空所44のテーパー部46Aにより、規制部36が空所44内にスムーズに挿入される。センサーレバー40の軸42A、42Bは、それぞれセンサーホルダー30の支持孔35A、35Bに挿入されて、支持孔35A、35Bに嵌め込まれる。
【0077】
センサーレバー40は、慣性体27の上に載置され、軸42A、42Bは、センサーホルダー30の支持部34A、34Bにより支持される。同時に、センサーホルダー30の規制部36が、センサーレバー40の空所44に挿入されて、空所44内に配置される。車両に所定値以上の加速度が作用したときには、センサーホルダー30とセンサーレバー40の間に保持された状態で、慣性体27が、慣性力により収容部33内で変位する。センサーレバー40は、慣性体27の変位により回転して変位する。また、センサーレバー40の変位により、リトラクタ1のロック機構8が作動する。
【0078】
図31は、図29に示す加速度センサー26の一部を拡大した断面図であり、規制部36と空所44の周辺部を示している。
図29図31に示すように、センサーレバー40の軸42A、42Bは、センサーホルダー30の支持部34A、34Bにより支持される。この支持部34A、34Bにより、センサーレバー40は、支持部34A、34Bの間で、回転軸Rを中心に回転可能に、かつ、回転軸方向Sに移動可能に支持される。
【0079】
具体的には、回転軸方向Sにおいて、間隙UA、UB(図29参照)が、センサーホルダー30の支持部34A、34Bとセンサーレバー40の基部48の間に形成され、間隙ZA、ZB(図31参照)が、センサーレバー40の接触部45A、45Bとセンサーホルダー30の規制部36の間に形成される。間隙UA、UBの内、一方の間隙UAは、一方の支持部34Aと支持部34Aに対向する基部48の間に形成され、他方の間隙UBは、他方の支持部34Bと支持部34Bに対向する基部48の間に形成される。また、間隙ZA、ZBの内、一方の間隙ZAは、一方の接触部45Aと接触部45Aに対向する規制部36の間に形成され、他方の間隙ZBは、他方の接触部45Bと接触部45Bに対向する規制部36の間に形成される。
【0080】
センサーレバー40は、間隙UA、UB、ZA、ZBの各寸法を変化させつつ、支持部34A、34Bの間で回転軸方向Sに移動する。また、間隙UAは間隙ZBよりも広く、間隙UBは間隙ZAよりも広い。そのため、センサーレバー40が回転軸方向Sにおける一方向又は他方向に移動したときに、間隙ZA又は間隙ZBが消滅して、接触部45A又は接触部45Bがセンサーホルダー30の規制部36に接触する。センサーレバー40が間隙ZA又は間隙ZBの分だけ回転軸方向Sに移動しても、間隙UA、UBは消滅せず、支持部34A、34Bと基部48は接触しない。間隙ZAと間隙ZBの合計寸法は、センサーレバー40の回転し易さに基づいて設定され、設定可能な寸法内の最小寸法に設定される。
【0081】
このように、センサーレバー40が回転軸方向Sにおける一方向と他方向にそれぞれ移動したときに、センサーレバー40の接触部45A、45Bのいずれか一方がセンサーホルダー30の規制部36に接触して、センサーレバー40が停止する。これにより、センサーレバー40の回転軸方向Sへの移動が停止する。規制部36は、接触部45A、45Bに接触して、回転軸方向Sにおける一方向と他方向へのセンサーレバー40の移動を規制する。センサーレバー40が回転軸方向Sにおける一方向と他方向のいずれに移動したときでも、センサーレバー40の移動は規制部36により規制されて、基部48と支持部34A、34Bは接触しない。
【0082】
センサーレバー40の軸42A、42Bが、支持部34A、34Bに形成された支持孔35A、35Bの内面に接触する状態で、センサーレバー40が回転する。その際、間隙UA、UBが支持部34A、34Bと基部48の間に形成されて、支持部34A、34Bと基部48は接触しない。また、センサーレバー40が回転軸方向Sに移動しても、センサーレバー40の接触部45A、45B以外の部分は常に規制部36から離間しており、規制部36に接触する可能性がある部分は接触部45A、45Bのみである。
【0083】
従って、センサーレバー40の回転時に、センサーホルダー30とセンサーレバー40の摩擦は、主に、軸42A、42Bと支持部34A、34Bの接触により生じる。接触部45A、45Bのいずれか一方と規制部36が接触したときには、軸42A、42Bと支持部34A、34Bの接触による摩擦に加えて、接触部45A、45Bのいずれか一方と規制部36の接触のみが摩擦を生じさせる。
【0084】
センサーホルダー30の規制部36は、センサーレバー40の空所44内に配置される。空所44において、センサーレバー40の接触部45A、45Bは、規制部36に対してセンサーレバー40の回転軸方向Sの両側に位置し、センサーレバー40の回転軸Rと交差する。センサーレバー40が回転軸方向Sに移動したときに、接触部45A、45Bのいずれか一方が規制部36に接触する。また、規制部36は、センサーホルダー30の支持部34A、34Bの間で、センサーレバー40の回転軸Rの位置に配置される。規制部36は、回転軸Rの近傍で接触部45A、45Bに接触し、センサーレバー40の回転軸方向Sの移動を規制する。
【0085】
センサーレバー40の接触部45A、45Bは、センサーホルダー30の支持部34A、34Bの間に配置され、軸42A、42Bの間に位置する空所44内の領域で、センサーホルダー30の規制部36に接触する。回転軸方向Sに移動するセンサーレバー40の移動方向(一方向、又は、他方向)に応じて、いずれか一方の接触部45A、45Bが規制部36の側部に接触して、センサーレバー40の回転軸方向Sの移動が規制される。また、接触部45A、45Bは、規制部36の回転軸Rを含む部分に接触する。センサーレバー40の回転軸方向Sの移動は、接触部45A、45Bに接触する規制部36のみにより規制される。
【0086】
ここでは、センサーホルダー30の規制部36は、先端が回転軸Rよりも上方に位置するように、センサーレバー40の空所44内に配置される。また、規制部36と接触部45A、45Bは、センサーレバー40の軸42A、42Bの間において(図29参照)、回転軸Rに直交する方向で、軸42A、42Bが支持部34A、34Bに接触する位置よりも回転軸R側の領域(接触領域T)のみにおいて接触する。具体的には、軸42A、42Bの間の接触領域T(以下、単に、接触領域Tという)は、軸42A、42Bが支持孔35A、35B内で支持部34A、34Bに接触する位置よりも回転軸R側の領域である。また、接触領域Tは、回転軸Rから、軸42A、42Bの半径分の距離を隔てた位置までの領域でもあり、規制部36と接触部45A、45Bは、接触領域T内のみにおいて接触する。規制部36の先端は、接触領域T内に位置し、テーパー部46A、46Bと接触部45A、45Bの各境界も、接触領域T内に位置する。これに伴い、規制部36と接触部45A、45Bが接触領域T内のみにおいて接触する。
【0087】
センサーレバー40の回転時に、センサーホルダー30の支持部34A、34Bの間で、センサーレバー40の軸42A、42Bを除いた部分は支持部34A、34Bと接触しない。また、各支持部34A、34Bとセンサーレバー40の軸42A、42Bを除いた部分との間には、常に間隙が形成される。ここでは、各支持部34A、34Bと基部48の間に、常に間隙UA、UBが形成される。
【0088】
以上説明した加速度センサー26では、センサーホルダー30の規制部36により、センサーレバー40の回転軸方向Sの移動を規制することができる。そのため、センサーレバー40の回転軸方向Sの移動を最小限に抑制して、センサーレバー40を正確な位置に配置することができる。
【0089】
センサーレバー40の回転時に、センサーホルダー30とセンサーレバー40の摩擦は、主に、センサーレバー40の軸42A、42Bとセンサーホルダー30の支持部34A、34Bの接触により生じる。また、センサーレバー40の回転軸方向Sの移動により、規制部36と接触部45A、45Bが接触したときには、規制部36と接触部45A、45Bの接触により、センサーホルダー30とセンサーレバー40の摩擦が増加する。その際、支持部34A、34Bはセンサーレバー40の基部48と接触せず、センサーレバー40の軸42A、42B以外の部分は支持部34A、34Bと接触しない。
【0090】
センサーホルダー30とセンサーレバー40の接触箇所(摩擦の発生箇所)が回転軸Rに近づくにつれて、センサーレバー40の回転に対する摩擦の影響が小さくなる。この摩擦の影響に関し、本実施形態の加速度センサー26では、センサーホルダー30の支持部34A、34Bとセンサーレバー40の軸42A、42Bが支持孔35A、35B内のみで接触する。そのため、センサーホルダー30とセンサーレバー40の摩擦の変化を小さくして、センサーレバー40の回転に対する摩擦の影響を低減することができる。従って、加速度センサー26を安定して作動させることができ、加速度センサー26により加速度を確実に検知することができる。
【0091】
センサーレバー40の接触部45A、45Bは空所44に形成され、センサーホルダー30の規制部36は空所44内で接触部45A、45Bに接触する。そのため、接触部45A、45Bをセンサーレバー40に容易に形成できるとともに、規制部36を接触部45A、45Bに確実に接触させることができる。規制部36がセンサーレバー40の回転軸Rの位置で接触部45A、45Bに接触するため、センサーレバー40の回転に対する規制部36と接触部45A、45Bの摩擦の影響を低減することができる。
【0092】
規制部36と接触部45A、45Bは、接触領域Tのみで接触する。その結果、規制部36と接触部45A、45Bは、軸42A、42Bと支持孔35A、35Bの内面が接触する位置よりも、回転軸Rに近い位置で接触する。これに伴い、センサーレバー40の回転に対する摩擦の影響を、より確実に低減することができる。
【0093】
ここでは、センサーレバー40の回転軸Rは、水平方向に配置される。これに対し、センサーレバー40の回転軸Rを水平方向に対して傾けてもよい。この場合でも、センサーレバー40の回転軸方向Sの移動を規制して、センサーレバー40を正確な位置に配置することができる。また、センサーレバー40の回転に対する摩擦の影響を低減できるとともに、加速度センサー26を安定して作動させることができる。
【0094】
センサーホルダー30の規制部36は、空所44内に配置されて、接触領域Tの内側(回転軸R側)のみにおいて、接触部45A、45Bに接触する。その状態で、規制部36の先端は、回転軸Rよりも上方に位置していてもよく、回転軸Rよりも下方に位置していてもよい。
【0095】
センサーレバー40の軸42A、42Bの半径は異なっていてもよい。この場合に、規制部36と接触部45A、45Bが、回転軸Rから、軸42A、42Bの半径のうちの大きい半径分の距離を隔てた位置までの領域のみにおいて接触しても、摩擦の影響を低減する効果が得られる。ただし、摩擦の影響をより低減するため、規制部36と接触部45A、45Bを、回転軸Rから、軸42A、42Bの半径のうちの小さい半径分の距離を隔てた位置までの領域のみにおいて接触させるのが好ましい。
【0096】
センサーレバー40の軸42A、42Bは、円柱状以外の形状(例えば、角柱状)に形成してもよい。この場合でも、規制部36と接触部45A、45Bが接触領域Tのみで接触することで、摩擦の影響を低減する効果が得られる。
【符号の説明】
【0097】
1・・・リトラクタ、2・・・ウエビング、3・・・ハウジングユニット、3A・・・ハウジング、3B・・・背板部、3C・・・第1側壁部、3D・・・第2側壁部、3E・・・固定板、3F・・・第1開口、3G・・・パウル収容部、3H・・・第2開口、3I・・・取付孔、3J・・・取付孔、4・・・巻取ドラムユニット、5・・・巻取バネユニット、5A・・・渦巻バネ、5B・・・バネケース、5C・・・バネシート、5D・・・バネシャフト、5E・・・固定部、5F・・・凹部、5G・・・支持孔、5H・・・ピン、6・・・ロックユニット、6A・・・メカニズムカバー、6B・・・第1収容部、6C・・・第2収容部、6D・・・支持ボス、6E・・・貫通口、7・・・ラチェットギヤ、7A・・・ラチェット歯、7B・・・ラチェット軸部、8・・・ロック機構、10・・・巻取ドラム、11・・・第1端部、12・・・第2端部、13・・・巻取部、14・・・シャフト、15・・・トーションバー、16・・・中心孔部、20・・・プロテクタ、21・・・パウル、21A・・・係合爪、21B・・・連動ピン、22・・・パウルリベット、23・・・リターンスプリング、24・・・リターンプレート、25・・・センサーカバー、26・・・加速度センサー、27・・・慣性体、30・・・センサーホルダー、31・・・載置部、32・・・周壁、33・・・収容部、34A、34B・・・支持部、35A、35B・・・支持孔、36・・・規制部、37・・・傾斜部、40・・・センサーレバー、41・・・突起、42A、42B・・・軸、43・・・カバー部、44・・・空所、45A、45B・・・接触部、46A、46B・・・テーパー部、47・・・回転止め部、48・・・基部、49・・・面取り、50・・・ロッキングギヤ、51・・・軸孔、52・・・嵌合部、53・・・ギヤ軸部、54・・・歯、55・・・ラチェットホイール、56・・・アーム支持部、57・・・支持ピン、58・・・ストッパー、60・・・ロッキングアーム、65・・・センサースプリング、70・・・クラッチ、71・・・内壁、72・・・クラッチギヤ、73・・・外壁、74・・・中心孔、75・・・誘導部、76・・・誘導溝、77・・・取付ピン、78・・・パウル支持部、79・・・ストッパー、80・・・噛合パウル、81・・・取付部、82・・・噛合爪、C・・・中心線、L・・・ロック作動方向、P・・・引出方向、R・・・回転軸、S・・・回転軸方向、T・・・接触領域、UA、UB・・・間隙、W・・・巻取方向、ZA、ZB・・・間隙。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図31