特許第6584188号(P6584188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6584188-積層体及びその製造方法 図000003
  • 特許6584188-積層体及びその製造方法 図000004
  • 特許6584188-積層体及びその製造方法 図000005
  • 特許6584188-積層体及びその製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584188
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20190919BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20190919BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   B32B7/023
   B32B7/025
   B32B9/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-145332(P2015-145332)
(22)【出願日】2015年7月22日
(65)【公開番号】特開2017-24267(P2017-24267A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大貴
(72)【発明者】
【氏名】形見 普史
(72)【発明者】
【氏名】保井 淳
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−084075(JP,A)
【文献】 特開2004−284232(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/111681(WO,A1)
【文献】 特開2010−027391(JP,A)
【文献】 特開2012−111225(JP,A)
【文献】 特開2010−211790(JP,A)
【文献】 特開2000−336281(JP,A)
【文献】 特開2000−248065(JP,A)
【文献】 特開2003−131032(JP,A)
【文献】 特開2013−202844(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/043410(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09J 1/00−5/10
9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材、第1光学調整層及びパターニングされた透明導電層をこの順に有する透明導電体、並びに当該透明導電体の透明導電層上に形成された粘着剤層を有する積層体であって、
前記粘着剤層は、当該粘着剤層の一方の主面から厚み方向にわたって、粘着剤組成物により本質的に形成されるベース粘着剤領域を、他方の主面から厚み方向にわたって、無機粒子を含む無機粒子含有領域を有し、
前記粘着剤層と前記透明導電体は、前記粘着剤層の無機粒子含有領域と、前記透明導電体の透明導電層が接するように積層されており、
前記無機粒子含有領域中に含まれる金属元素と炭素の元素比率(金属元素/炭素)が0.01〜0.2であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記透明基材の屈折率が、前記第1光学調整層の屈折率より大きく、前記透明導電層の屈折率より低いことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第1光学調整層と透明基材との間に、さらに、前記第1光学調整層の屈折率より高く、前記透明導電層の屈折率より低い屈折率を有する第2光学調整層を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記無機粒子含有領域の、透明導電層と接する側の表面の屈折率が、1.47〜1.74であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記無機粒子含有領域の屈折率が、当該無機粒子含有領域の透明導電層と接する側から、他方の側に向けて連続的に小さくなっていくことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記無機粒子が、ジルコニア粒子を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記無機粒子含有領域の平均厚みが、20nm〜600nmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記透明導電層の表面抵抗値が100Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
透明基材、第1光学調整層及び透明導電層をこの順に有する透明導電体を準備する工程、
粘着剤組成物から形成された粘着剤層の一方の主面に、無機粒子を含有する分散液を塗布して、該分散液に含まれる無機粒子を、粘着剤層の一方の主面から厚み方向に浸透させて、前記粘着剤組成物により本質的に形成されるベース粘着剤領域と、無機粒子含有領域とを形成する工程、
前記粘着剤層と前記透明導電体を、前記粘着剤層の前記無機粒子含有領域と、前記透明導電体の透明導電層が接するように貼り合せる工程、を有し、
前記無機粒子含有領域中に含まれる金属元素と炭素の元素比率(金属元素/炭素)が0.01〜0.2であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置や、タッチパネル等を前記表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられるようになってきている。前記タッチパネルとしては、静電容量方式のタッチパネルが広く普及しており、前記静電容量方式のタッチパネルは、多くの部材を積層させた構成を有しており、部材の貼り合わせには粘着剤層が使用されている。前記静電容量方式のタッチパネルとしては、例えば、カバーガラス/粘着剤層/透明導電層/ガラス基板の積層構成を有する静電容量方式のタッチパネルが挙げられる。
【0003】
前記透明導電層は、例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO)等、高い透明性と導電性を有する材料から形成される。前記透明導電層は、通常屈折率が高いため(ITO膜で1.9前後)、一般的に屈折率が1.45〜1.5程度である粘着剤層と貼り合わせると、透明導電層と粘着剤層との界面における屈折率差から反射率が大きくなる場合があり、視認性に劣るという課題があった。また、前記透明導電層がパターンニングされている場合、パターン化された透明導電層上に粘着剤層を介してカバーガラス等の他部材と貼り合わせると、透明導電層を有していないパターン開口部と、透明導電層を有するパターン部との反射率の差により前記パターンが見える(パターン見え)という不具合が生じる場合があった。
【0004】
このような課題に対して、例えば、透明基材、特定の屈折率を有するハードコート層、特定の屈折率を有するアンダーコート層、パターニングされた透明導電層がこの順で積層された透明導電性積層体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5683734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1では、透明導電層と透明基材の間に特定の屈折率を有するハードコート層やアンダーコート層を配置することにより、パターン見えを抑制できることが開示されている。しかしながら、特許文献1では、透明導電層上に積層される粘着剤層については十分に検討されていないものであり、パターン見えの抑制が十分ではなく、改善の余地があるものであった。
【0007】
従って、本発明は、透明導電層のパターン見えを抑制することができる積層体を提供することを目的とする。また、本発明は、前記積層体の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記積層体とすることで、前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、透明基材、第1光学調整層及びパターニングされた透明導電層をこの順に有する透明導電体、並びに当該透明導電体の透明導電層上に形成された粘着剤層を有する積層体であって、
前記粘着剤層は、当該粘着剤層の一方の主面から厚み方向にわたって、粘着剤組成物により本質的に形成されるベース粘着剤領域を、他方の主面から厚み方向にわたって、無機粒子を含む無機粒子含有領域を有し、
前記粘着剤層と前記透明導電体は、前記粘着剤層の無機粒子含有領域と、前記透明導電体の透明導電層が接するように積層されており、
前記無機粒子含有領域中に含まれる金属元素と炭素の元素比率(金属元素/炭素)が0.01〜0.2であることを特徴とする積層体に関する。
【0010】
前記透明基材の屈折率が、前記第1光学調整層の屈折率より大きく、透明導電層の屈折率より低いことが好ましい。
【0011】
前記第1光学調整層と透明基材との間に、さらに、前記第1光学調整層の屈折率より高く、前記透明導電層の屈折率より低い屈折率を有する第2光学調整層を備えることが好ましい。
【0012】
前記無機粒子含有領域の、透明導電層と接する側の表面の屈折率が、1.47〜1.74であることが好ましい。
【0013】
前記無機粒子含有領域の屈折率が、当該無機粒子含有領域の透明導電層と接する側から、無機粒子含有領域の他方の側に向けて連続的に小さくなっていくことが好ましい。
【0014】
前記無機粒子が、ジルコニア粒子を含むことが好ましい。
【0015】
前記無機粒子含有領域の平均厚みが、20nm〜600nmであることが好ましい。
【0016】
前記透明導電層の表面抵抗値が100Ω/□以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、透明基材、第1光学調整層及び透明導電層をこの順に有する透明導電体を準備する工程、
粘着剤組成物から形成された粘着剤層の一方の主面に、無機粒子を含有する分散液を塗布して、該分散液に含まれる無機粒子を、粘着剤層の一方の主面から厚み方向に浸透させて、前記粘着剤組成物により本質的に形成されるベース粘着剤領域と、無機粒子含有領域とを形成する工程、
前記粘着剤層と前記透明導電体を、前記粘着剤層の前記無機粒子含有領域と、前記透明導電体の透明導電層が接するように貼り合せる工程、を有し、
前記無機粒子含有領域中に含まれる金属元素と炭素の元素比率(金属元素/炭素)が0.1〜0.2であることを特徴とする前記積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の積層体は、粘着剤層の透明導電層と接する側に、特定の無機粒子含有領域を有するため、粘着剤層と透明導電層との間の界面における反射を抑制することができ、透明導電層のパターン見えを抑制することができる。また、本発明は、前記効果を奏する積層体を製造することができる積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の積層体の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の積層体の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図3図1、2の粘着剤層の一部の拡大図である。
図4】本発明で用いる粘着剤層の形成工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.積層体
本発明の積層体は、透明基材、第1光学調整層及びパターニングされた透明導電層をこの順に有する透明導電体、並びに当該透明導電体の透明導電層上に形成された粘着剤層を有し、
前記粘着剤層は、当該粘着剤層の一方の主面から厚み方向にわたって、粘着剤組成物により本質的に形成されるベース粘着剤領域を、他方の主面から厚み方向にわたって、無機粒子を含む無機粒子含有領域を有し、
前記粘着剤層と前記透明導電体は、前記粘着剤層の無機粒子含有領域と、前記透明導電体の透明導電層が接するように積層されており、
前記無機粒子含有領域中に含まれる金属元素と炭素の元素比率(金属元素/炭素)が0.01〜0.2であることを特徴とする。
【0021】
本発明の積層体の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図1における各構成の寸法は、その一例を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
図1に示すように、本発明の積層体1は、透明導電体5、並びに粘着剤層8を有する。透明導電体5は、透明基材2、第1光学調整層3及びパターニングされた透明導電層4(以下、単に「透明導電層4」ということもある)をこの順に有する。また、粘着剤層8は、粘着剤層8の一方の主面(図1中の矢印Aで示す面)から厚み方向にわたって、粘着剤組成物により本質的に形成されるベース粘着剤領域7と、粘着剤層8の他方の主面(図1中の矢印Bで示す面)から厚み方向にわたって、無機粒子を含む無機粒子含有領域6とを有する。前記粘着剤層8と前記透明導電体5は、前記粘着剤層8の無機粒子含有領域6と、前記透明導電体5の透明導電層4が接するように積層されている。
【0023】
本発明においては、粘着剤層8の透明導電層4と接する側に、特定の無機粒子含有領域6を有するため、粘着剤層8と透明導電層4との間の界面における反射を抑制することができる。以下、本発明の積層体1の各構成について、詳細に説明する。
【0024】
(1)透明導電体
(1−1)透明基材
透明基材2としては、透明性を有するものであればよく、例えば、樹脂フィルムや、ガラス等からなる基材(例えば、シート状やフィルム状、板状の基材等)等が挙げられ、樹脂フィルムが特に好ましい。透明基材2の厚さは、特に限定されないが、10μm〜200μm程度が好ましく、15μm〜150μm程度がより好ましい。
【0025】
前記樹脂フィルムの材料としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチック材料が挙げられる。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂及びポリエーテルスルホン系樹脂が好ましい。
【0026】
また、前記透明基材2には、表面に予めプラズマ処理、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化等のエッチング処理や下塗り処理を施して、この上に設けられる光学調整層等の前記透明基材2に対する密着性を向上させるようにしてもよい。また、光学調整層等を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄等により除塵、清浄化してもよい。
【0027】
前記透明基材2の屈折率は特に限定されるものではなく、通常1.45〜1.75程度である。また、前記透明基材2の屈折率は、後述する第1光学調整層3の屈折率より大きく、透明導電層4の屈折率より低いことが透明導電層のパターン視認性抑制の点から好ましい。
【0028】
(1−2)光学調整層
第1光学調整層3は、有機物及び無機物からなる群から選択される1種以上の材料から形成されることが好ましく、例えば、無機物と有機物との混合物、有機物単体、無機物単体により形成することができるが、透明導電層のパターニングの加工性(有機物単体の方がエッチングしやすい)の観点からは、有機物単体により形成されることが好ましい。
【0029】
第1光学調整層3を形成する無機物としては、NaF、NaAlF、LiF、MgF、CaF、SiO、LaF、CeF、Al、TiO、Nb、Ta、ZrO、ZnO、ZnS、SiO(xは1.5以上2未満)等を挙げることができ、これらの中でも、SiO、Al、TiO、Nb、Ta、ZrO、ZnO、SiO(xは1.5以上2未満)等の無機酸化物が好ましく、SiOがより好ましい。また、第1光学調整層3を形成する有機物としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シロキサン系ポリマー等が挙げられる。特に、有機物として、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用することが好ましい。第1光学調整層3は、上記の材料を用いて、グラビアコート法やバーコート法等の塗工法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成できる。
【0030】
第1光学調整層3が、無機物と有機物の混合物から形成される場合、その混合比は特に限定されないが、例えば、第1光学調整層3における無機物の含有量は、当該無機物を構成する無機原子と第1光学調整層3中に含まれる炭素原子の原子数比により表すことができる。すなわち、無機物を構成する無機原子の原子数と、炭素原子の原子数の比(無機原子/炭素原子)が、0.15以上であることが好ましく、0.30以上であることがより好ましい。前記無機物を構成する無機原子としては、Na、Al、Li、Mg、Ca、Si、La、Ce、Ti、Nb、Ta、Zr、及びZnからなる群から選択される1種以上の原子を挙げることができ、これらの中でもSi、Nb等が好ましく、Siがより好ましい。
【0031】
前記比(無機原子/炭素原子)は、第1光学調整層3中に含まれる無機原子と炭素原子の原子数比を表すものであり、本発明の積層体が第2光学調整層やその他の光学調整層を含む場合、第1光学調整層3以外の光学調整層は、前記比(無機原子/炭素原子)については適宜調整することができる。
【0032】
なお、例えば、第1光学調整層3を構成する材料として、有機シラン縮合物等の無機原子を含む有機物を用いた場合には、光学調整層に無機物を含まない場合であっても、当該有機物中の無機原子(有機シラン縮合物の場合はSi)が検出されることとなる。しかしながら、通常、有機物に由来する無機原子による(無機原子/炭素原子)の比は0.15未満と少ないものである。
【0033】
前記第1光学調整層3における無機物を構成する無機原子の含有量は、光電子分光分析(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)で、元素比率のデプスプロファイルを測定することで求めることができる。すなわち、第1光学調整層3に含まれる無機原子を、深さ方向に対してプロットし、第1光学調整層3に該当する深さ範囲において、前記比(無機原子/炭素原子)が最大になる値を採用することができる。
【0034】
第1光学調整層3の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、3nm〜200nmであることが好ましく、5nm〜150nmであることがより好ましく、10nm〜40nmであることがさらに好ましい。第1光学調整層3の厚さが前記範囲にあることで、透明導電層のパターンが視認しにくくなるため、好ましい。
【0035】
第1光学調整層3には、ナノ微粒子を有していてもよい。前記ナノ粒子の粒径としては、特に限定されないが、例えば1〜200nmであり、10〜80nmが好ましく、20〜40nmがより好ましい。粒子サイズが1nmを下回ると、光学調整層内に粒子が均一に分散しなくなる恐れがあり、200nmを上回ると、表面に凹凸が生じ、抵抗値が上昇する恐れがある。ナノ微粒子を形成する無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、中空ナノシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ等の微粒子が挙げられる。これらの中でも、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化ニオブの微粒子が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。第1光学調整層3中のナノ微粒子の含有量は90重量%以下であることが好ましく、0.1〜90重量%であることがより好ましい。第1光学調整層3に前記ナノ粒子が含まれる場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)の断面像を観察すると、コントラストの違いからナノ粒子の存在を確かめることができる。なお、第1光学調整層3に、ナノ微粒子を含有する場合は、当該ナノ微粒子に由来する無機原子も前記比(無機原子/炭素原子)の「無機原子」の対象となるものである。
【0036】
前記第1光学調整層3の配置は、透明基材2と透明導電層4との間に配置されていればよい。
【0037】
前記第1光学調整層3の屈折率は、特に限定されないが、1.35〜1.75程度であることが好ましく、1.40〜1.55程度であることがより好ましい。
【0038】
また、本発明においては、図2に示すように、前記第1光学調整層3と透明基板2の間に、前記第1光学調整層3の屈折率よりも高く、前記透明導電層4の屈折率より低い屈折率を有する第2光学調整層3’を有することが、光学特性の観点から好ましい。
【0039】
前記第2光学調整層3’としては、有機物及び無機物からなる群から選択される1種以上の材料から形成されることが好ましく、例えば、無機物と有機物との混合物、有機物単体、無機物単体により形成することができる。無機物、有機物としては、第1光学調整層3で例示したものと同様のものを挙げることができる。第2光学調整層3’の膜厚は、5〜300nm程度が好ましく、10〜100nmがより好ましく、20〜40nmがさらに好ましい。上記の膜厚範囲にすることで、よりパターン視認性を向上させることが出来るため、好ましい。
【0040】
また、第2光学調整層3’を形成する材料としては、特に限定されるものではなく、前記第1光学調整層3と同じものを挙げることができるが、前記無機物の中でも、屈折率の高い、TiO、Nb、ZrO等の金属酸化物を好適に使用することができる。また、第2光学調整層3’中に含まれる金属元素と炭素の元素比率(金属元素/炭素)としては、特に限定されるものではないが、0.15以上であることが、パターン視認性を好適に制御できる観点から好ましい。前記金属元素と炭素の元素比率については、第1光学調整層における測定方法と同じ方法により測定することができる。また、第1光学調整層3と同様に、第2光学調整層3’においても、平均粒径が1nm〜500nmのナノ微粒子を含有していてもよい。
【0041】
第2光学調整層3’の屈折率としては、前記第1光学調整層3の屈折率よりも高く、前記透明導電層4の屈折率より低ければよく、特に限定されるものではないが、例えば、1.60〜2.40程度であることが好ましい。第2光学調整層3’の屈折率が前記範囲にあることで、透明導電層のパターン視認性が抑制できるため好ましい。
【0042】
また、第1光学調整層3と第2光学調整層3’の屈折率差は、特に限定されるものではないが、0.05〜0.90程度であることが好ましく、0.10〜0.30程度であることがより好ましい。第1光学調整層3と第2光学調整層3’の屈折率差が前記範囲にあることで、透明導電層のパターン視認性が抑制できるため好ましい。
【0043】
(1−3)透明導電層
透明導電層4は、金属酸化物により形成された層であることが好ましい。金属酸化物としては、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が好適に用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。これらの中でも、インジウム・スズ酸化物(ITO)であることが好ましい。
【0044】
透明導電層4の厚さは特に制限されないが、その表面抵抗を300Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚さを10nm以上とするのが好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下等をきたすため、15nm〜35nmであることが好ましく、20nm〜30nmがより好ましい。透明導電層4の厚さが10nm未満であると膜表面の電気抵抗が高くなり、かつ連続被膜になり難くなる。また、透明導電層4の厚さが35nmを超えると透明性の低下等をきたす場合がある。
【0045】
透明導電層4の表面抵抗値は、特に限定されず、300Ω/□以下であればよいが、100Ω/□以下であることが好ましく、0.1〜100Ω/□がより好ましく、0.1〜80Ω/□がさらに好ましい。導電層の表面抵抗値が100Ω/□以下であると、タッチパネル等とした時の電力消費が抑えられ、かつ、操作性も良くなるため好ましい。
【0046】
透明導電層4の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。これらの方法は、必要とする膜厚に応じて適宜採用することができる。
【0047】
また、透明導電層4は、非晶質であっても結晶質であってもよい。
【0048】
本発明で用いる透明導電層4は、パターニングされている。パターン形成方法としては、公知のいかなる方法も採用することができるが、例えば、エッチングにより行なうことができる。パターニング部の形状としては、例えば、ストライプ状、スクエア状等が挙げられる。パターニングされている透明導電層4は、透明導電層を有していないパターン開口部と、透明導電層を有するパターン部で段差を生じるが、当該段差は粘着剤層8により埋めることができる。
【0049】
前記透明導電層4の屈折率は、特に限定されるものではないが、通常、1.75〜2.14程度である。
【0050】
(1−4)透明導電体の構成
本発明で用いる透明導電体5は、透明基材2、第1光学調整層3及び透明導電層4をこの順に有するものであればよく、第2光学調整層3’等のその他の層をさらに含んでいてもよいが、前記透明導電層4は、前記第1光学調整層3上に直接形成されていることが、パターン見えの抑制の観点から好ましい。
【0051】
前記透明基材2には、必要に応じて、ブロッキング防止層、ハードコート層、易接着層等をさらに設けることもできる。
【0052】
一般に、前記ハードコート層は、フィルムに硬度を持たせてキズ付きを防止する目的で設けられ、前記ブロッキング防止層は、フィルム表面に凹凸を形成して滑り性や耐ブロッキング性を付与するために設けられる。ハードコート層やブロッキング防止層は、第1光学調整層3(又は第2光学調整層3’)と透明基材2との間に形成することもできるし、透明基材2の透明導電層4が形成される側と反対側の面に形成することもできる。
【0053】
ハードコート層を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂等が挙げられるが、これらの中でも、紫外線照射による硬化処理にて、簡単な加工操作にて効率よくハードコート層を形成することができる紫外線硬化型樹脂が好適である。紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系等の各種のものが挙げられ、紫外線硬化型のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が含まれる。好ましく用いられる紫外線硬化型樹脂は、例えば、紫外線重合性の官能基を有するもの、なかでも当該官能基を2個以上、特に3〜6個有するアクリル系のモノマーやオリゴマー成分を含むものが挙げられる。また、紫外線硬化型樹脂には、紫外線重合開始剤が配合されている。
【0054】
ハードコート層の形成方法は特に制限されず、適宜な方式を採用することができる。例えば、前記透明基材2上にハードコート層を形成する樹脂組成物を塗工し、乾燥後、硬化処理する方法が採用される。樹脂組成物の塗工は、ファンテン、ダイコーター、キャスティング、スピンコート、ファンテンメタリング、グラビア等の適宜な方式で塗工される。なお、塗工にあたり、前記樹脂組成物は、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等の一般的な溶剤で希釈して溶液としておくことが好ましい。
【0055】
ブロッキング防止層としては、硬化型樹脂層中に微粒子を含有させたものや、硬化型樹脂組成物として相分離する2種以上の成分を含有するコーティング組成物を用いたもの、あるいはこれらを併用することによって、表面に凹凸が形成されたものが好適に用いられる。硬化型樹脂層の成分としては、ハードコート層の各成分として前記したものが好適に用いられる。また、相分離する2種以上の成分を含有するコーティング組成物としては、例えば国際公開第2005/073763号パンフレットに記載の組成物を好適に用いることができる。
【0056】
本発明で用いる透明導電体5は、長尺状の透明導電体5がロール状に巻回された透明導電体巻回体とすることができる。また、長尺状の透明導電体5の巻回体は、長尺状の透明基材2のロール状巻回体を用い、前述の透明導電層4、第1光学調整層3、及び必要に応じて付加的な層を、いずれもロール・トゥ・ロール法により形成することによっても形成し得る。
【0057】
(2)粘着剤層
(2−1)ベース粘着剤領域
本発明で用いる粘着剤層8は、粘着剤組成物により本質的に形成されるベース粘着剤領域7と、無機粒子を含む無機粒子含有領域6とを有する。ここで、「粘着剤組成物により本質的に形成される」とは、ベース粘着剤領域7中の無機粒子の金属元素の元素比率が1atomic%以下であることを意味し、0.5atomic%以下であることが好ましく、0atomic%である(すなわち、無機粒子を含有しない)ことが特に好ましい。無機粒子の元素比率の測定方法は、実施例に記載の方法による。
【0058】
前記粘着剤組成物としては、光学用途に使用可能な組成物であれば特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤組成物、ゴム系粘着剤組成物、シリコーン系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤組成物、ウレタン系粘着剤組成物、エポキシ系粘着剤組成物及びポリエーテル系粘着剤組成物からなる群から適宜選択して用いることができ、これらを一種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、透明性、加工性、耐久性等の観点から、(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0059】
前記(メタ)アクリル系ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、炭素数4〜24のアルキル基をエステル基の末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を重合することにより得られたものを挙げることができる。なお、アルキル(メタ)アクリレートは、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0060】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数4〜24のアルキル基を有すものを例示でき、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数4〜9のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが、粘着特性のバランスがとりやすい点で好ましい。これらのアルキル(メタ)アクリレートは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
本発明において、前記炭素数4〜24のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する単官能性モノマー成分の全量に対して40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることが特に好ましい。前記炭素数4〜24のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを前記範囲で用いることで、粘着特性のバランスがとりやすいため好ましい。
【0062】
(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、単官能性モノマー成分として、前記アルキル(メタ)アクリレート以外の共重合モノマーを含有することができる。共重合モノマーは、モノマー成分における前記アルキル(メタ)アクリレートの残部として用いることができる。
【0063】
共重合モノマーとしては、例えば、環状窒素含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、環状エーテル基を有するモノマーが挙げられる。
【0064】
また、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、前記単官能性モノマーの他に、粘着剤の凝集力を調整するために、必要に応じて多官能性モノマーを含有することができる。
【0065】
多官能性モノマーは、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を少なくとも2つ有するモノマーであり、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能性モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
多官能性モノマーの使用量は、その分子量や官能基数等により異なるが、単官能性モノマーの合計100重量部に対して、3重量部以下で用いることが好ましい。多官能性モノマーの使用量が前記範囲内であることにより、接着力を向上することができる。
【0067】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、紫外線重合等の放射線重合、塊状重合、乳化重合等の各種ラジカル重合等の公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等いずれでもよい。
【0068】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0069】
例えば、溶液重合等においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエン等が用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素等の不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50〜70℃程度で、5〜30時間程度の反応条件で行われる。
【0070】
溶液重合等に用いられる熱重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等の過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせ等の過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0072】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール等が挙げられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.1重量部程度以下である。
【0073】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン系乳化剤等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0074】
また、(メタ)アクリル系ポリマーは、放射線重合により製造する場合には、前記モノマー成分を、電子線、紫外線等の放射線を照射することにより重合して製造することができる。前記放射線重合を電子線で行う場合には、前記モノマー成分には光重合開始剤を含有させることは特に必要ではないが、前記放射線重合を紫外線重合で行う場合には、特に、重合時間を短くすることができる利点等から、モノマー成分に光重合開始剤を含有させることができる。光重合開始剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
光重合開始剤としては、特に制限されないが、光重合を開始するものであれば特に制限されず、通常用いられる光重合開始剤を用いることができる。例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等を用いることができる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名:イルガキュア651、BASF社製)等が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、BASF社製)等が挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン等が挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライド等が挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等が挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾイン等が含まれる。ベンジル系光重合開始剤には、例えば、ベンジル等が含まれる。ベンゾフェノン系光重合開始剤には、例えば、ベンゾフェノン等が含まれる。ケタール系光重合開始剤には、例えば、ベンジルジメチルケタール等が含まれる。チオキサントン系光重合開始剤には、例えば、チオキサントン等が含まれる。アシルフォスフィン系光重合開始剤としては、例えば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0076】
光重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、前記モノマー成分100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましい。
【0077】
本発明で用いる(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は40万〜400万であるのが好ましい。重量平均分子量を40万より大きくすることで、粘着剤層の耐久性を満足させたり、粘着剤層の凝集力が小さくなって糊残りが生じるのを抑えることができる。一方、重量平均分子量が400万よりも大きくなると貼り合せ性が低下する傾向がある。さらに、粘着剤が溶液系において、粘度が高くなりすぎ、塗工が困難になる場合がある。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。なお、放射線重合で得られた(メタ)アクリル系ポリマーについては、分子量測定は困難である。
【0078】
本発明で用いる粘着剤組成物には、架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、過酸化物等の架橋剤を挙げることができ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。前記架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく用いられる。
【0079】
上記架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記架橋剤を10重量部以下で含有することが好ましく、0.01〜10重量部の範囲で含有することがより好ましい。
【0080】
本発明において用いる粘着剤組成物には、接着力を向上させるために、(メタ)アクリル系オリゴマーを含有させることができる。(メタ)アクリル系オリゴマーは、本発明で用いる(メタ)アクリル系ポリマーよりもガラス転移温度(Tg)が高く、重量平均分子量が小さい重合体を用いるのが好ましい。かかる(メタ)アクリル系オリゴマーは、粘着付与樹脂として機能し、接着力を増加させる利点を有する。(メタ)アクリル系オリゴマーの配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して20重量部以下であるのが好ましく、0.01〜10重量部がより好ましい。
【0081】
さらに、本発明に用いる粘着剤組成物には、シランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して1重量部以下であるのが好ましく、0.01〜1重量部がより好ましい。
【0082】
好ましく用いられ得るシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0083】
さらに、本発明で用いる粘着剤組成物には、その他、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤等の公知の添加剤を含有していてもよい。
【0084】
前記ベース粘着剤領域7は、前記粘着剤組成物により形成されるが、その形成方法については後述する。前記ベース粘着剤領域7の屈折率は、通常1.40〜1.55程度である。
【0085】
(2−2)無機粒子含有領域
本発明で用いる粘着剤層8の無機粒子含有領域6を構成する無機粒子は、特に限定されるものではないが、ベース粘着剤層7よりも屈折率が高い高屈折率粒子を含むことが好ましい。
【0086】
本発明で用いる無機率粒子の屈折率は、特にされないが、一般的に、ベース粘着剤層の屈折率が1.40〜1.55程度であるため、1.60〜2.74程度であることが好ましく、1.65〜2.20程度であることがより好ましい。無機粒子の屈折率が前記範囲にあることで、粘着剤層の一方主面(無機粒子含有領域6の表面)の屈折率を高くすることができるため好ましい。
【0087】
前記無機粒子の屈折率は、前記ベース粘着剤層7の屈折率よりも大きいことが好ましく、無機粒子の屈折率と、ベース粘着剤層7の屈折率の差が、0.2〜1.3であることが好ましく、0.3〜1.2であることがより好ましい。屈折率の差が0.2未満であると、無機粒子含有領域6の屈折率を高くするのに多量の無機粒子を必要とし、透明性や接着性を維持することが困難となる傾向がある。また、屈折率の差が1.3を超えると粘着剤層との屈折率差が大きくなり、無機粒子による散乱が強くなることで透明性(低ヘイズ値)の維持が困難となる傾向がある。屈折率の差が前記範囲であることで、透明性と高屈折率の両立の制御が可能となるため、好ましい。
【0088】
前記無機粒子としては、TiO、ZrO、CeO、Al、BaTiO、Nb及びSnO等からなる群から選択される1種以上の金属酸化物であることが好ましく、光学的な観点から、可視光領域に吸収を有さず吸収端波長が小さい、ジルコニア粒子(ZrO)を含むことがより好ましい。
【0089】
前記無機粒子の平均一次粒子径は、3nm〜100nmであることが好ましく、5nm〜50nmであることがより好ましく、5nm〜30nmであることがさらに好ましく、5nm〜20nmであることが特に好ましい。平均一次粒子径が前記範囲あることで、透明性と高屈折率の両立制御が可能となる。前記平均一次粒子径の測定は、粒子径分布測定やTEMによる直接観察により行うことができる。
【0090】
本発明においては、前記無機粒子を用いて、粘着剤層8中に無機粒子含有領域6を形成するが、その形成方法については、後述する。
【0091】
前記無機粒子含有領域6において、前記無機粒子由来の金属元素と炭素の元素比率(金属元素/炭素)が0.01〜0.2であり、0.05〜0.15であることが好ましく、0.07〜0.13であることがより好ましい。無機粒子由来の金属元素と炭素の元素比率が前記範囲を下回ると透明導電層のパターン視認性が悪化するおそれがあり、前記範囲を上回ると、粘着力の低下や、パターン化された透明導電層の視認性が上がる場合がある。ここで、無機粒子に含まれる金属元素と炭素の元素比率とは、具体的には、例えば、無機粒子がZrOの場合、ZrとCの元素比率(Zr/C)を示すものである。また、無機粒子が複数の金属元素を含む場合は、全ての金属元素の合計量と炭素の比である。
【0092】
無機粒子含有領域6における、無機粒子由来の金属元素と炭素の元素比率は、下記の条件にてX線光電子分光法(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)によって測定することができる。測定装置、条件としては、以下の通りである。
(測定条件)
測定装置:Quantera SMX、アルバック・ファイ社製
測定条件:X線源:モノクロAlKα
X Ray setting:200μmφ、15kV、26W
光電子取り出し角:試料表面に対して45°
帯電中和条件:電子中和銃とArイオン銃(中和モード)の併用
結合エネルギー:C1sスペクトルのC−C結合由来のピークを285.0eVに補正 Arイオン銃の加速電圧:1kV
Arイオン銃のエッチング速度:2nm/分(SiO換算)
エッチング面積:2mm×2mm
上記の条件で、深さ方向に対する元素比率のデプスプロファイルを作成する。得られたデプスプロファイルにおける無機粒子含有領域6に該当する深さ範囲(すなわち、金属元素の元素比率が1atomic%以上になる深さ範囲)において、金属元素の全元素(但し、H、Heを除く)に対する元素比(atomic%)を積分し、また、炭素元素の全元素(但し、H、Heを除く)に対する元素比(atomic%)を積分し、金属元素の積分値と炭素の積分値の比として算出した値を採用する。
(上記では、測定装置として、アルバック・ファイ社製のQuantera SMXを使用した方法を記載しているが、上記測定装置の同等機によっても測定することは可能である。)
【0093】
前記無機粒子含有領域6の表面(図1、2の矢印Bで示す表面、すなわち、透明導電層4と接する側の表面)では、無機粒子含有領域6の面内方向で無機粒子がほぼ均一に分散して配置され、かつベース粘着剤層7と同じ組成の粘着層と前記無機粒子が混在して存在していることが好ましい。無機粒子含有領域6の面内方向での分散状態については、無機粒子含有領域6の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することで確認することができる。
【0094】
前記無機粒子含有領域6の表面における、前記無機粒子が占める面積比率(表面被覆率)は、55%以上100%未満であることが好ましく、60〜99%であることがより好ましく、70〜99%であることがさらに好ましく、75〜99%であることが特に好ましい。前記無機粒子の面積比率が55%以上であることで、光学用途に必要とされる程度の粘着性を維持しつつ、無機粒子含有領域6表面における屈折率を上昇することができるため好ましい。また、前記無機粒子の面積比率が高いほど、無機粒子含有領域6を透明導電層4に貼り合わせ損ねた際に、糊が残ることがなく、容易に剥がすことができ、リワーク性を向上することができるため好ましい。なお、無機粒子の面積比率(表面被覆率)は、1辺が10μm〜200μmの方形領域における全体面積に対する面積として測定すれば、方形領域の大きさは特に限定されないが、例えば、長辺23μm、短辺18μmの長方形領域の面積にて測定することができる。つまり、表面被覆率は、(測定領域内の無機粒子が存在する領域部分の面積)/(測定領域の全面積)×100で計算された値である。
【0095】
図3は、粘着剤層8の一部分の拡大図である。前記粘着剤層8の厚さ方向における前記無機粒子9の濃度分布は、無機粒子含有領域6の表面(すなわち、粘着剤層8の表面、透明導電層4と接する側の表面、図3の矢印Bの表面)から、無機粒子含有領域の他方の側に向かうにつれて略連続的に減少していることが好ましい。すなわち、無機粒子含有領域6における無機粒子9の濃度分布は、前記無機粒子含有領域6の透明導電層4と接する側の表面で最も高く、前記無機粒子含有領域6の厚さ方向に従って減少していく分布を有することが好ましい。無機粒子9がこのような分布で存在することにより、前記無機粒子含有領域6の屈折率が、当該無機粒子含有領域6の透明導電層と接する側で最も大きくなり、無機粒子含有領域の他方の側に向けて連続的に小さくなっていく。従って、本発明においては、粘着剤層8の表面での屈折率を増大することができ、透明導電層4に貼り合わせた場合にも、粘着剤層8と透明導電層4の界面での反射率を小さくすることができる。さらに、無機粒子含有領域6の透明導電層4と接する側から、厚さ方向に向かうにつれて前記無機粒子9が減少していく分布を有する配置となることで、無機粒子含有領域6とベース粘着剤領域7とのバルク物性の変化を低減することができ、粘着機能・接着信頼性の観点から好ましい。
【0096】
無機粒子9の濃度分布が、粘着剤層8の厚さ方向に従って減少していることについては、ESCAを用いて、元素比率のデプスプロファイルを取得することで特定することができる。すなわち、無機粒子含有領域6に含まれる無機粒子9に含まれる無機原子の元素比率が、無機粒子含有領域6の側の表面から他方の面に向けて、略連続的に減少していく傾向がある。略連続的とは、粘着剤層8において、厳密には、無機粒子9が連続的に減少しない領域を一部含有することを許容するものであり、一方で、当該粘着剤層8において無機粒子9が連続的に減少しない領域が支配的であること、及び、粘着剤層8が、無機粒子9が急激に減少する領域を含有することを許容しないことを意味する。なお、前記粘着剤層8の表面からの深さを横軸に、粘着剤層8に含まれる無機粒子の金属元素の含有率(単位:atomic%)の深さ方向を縦軸にとって折れ線グラフを書いた時に、ジグザグ上に波打ってはいるが、全体としては減少している傾向が見て取れるときがある。このようなときも「無機粒子9が略連続的に減少する」ときに該当する。このような判定が難しい場合には、次のようにして判定する。移動平均法を用いて、前後の測定点を含めた平均値を算出して、再度グラフにすることにより、略連続的に減少している傾向が見られれば、「無機粒子9が略連続的に減少する」ときに該当する。任意の測定点を中心に前後1点のデータを含めて平均を算出してもいいし(3項異動平均)、それでも傾向が読み取りにくい場合は、前後2点以上のデータも含めて平均を算出してもよい(前後2点以上のデータも含めて平均を算出する場合は、5項移動平均となる)。
【0097】
無機粒子9がベース樹脂に対して、均一に分散されている場合、ESCAで元素比率のデプスプロファイルを取得すると、深さに対する元素比率のプロットがピークを持った形状になる。これは、ベース樹脂成分と無機粒子成分のエッチングレートに起因する。一般に樹脂成分の方が、エッチングレートが高く、無機粒子の方が低いため、ベース樹脂が優先的にエッチングされて、見かけの無機の元素量は一定深さまでは増加する傾向となる。その後、無機粒子も十分にエッチングされると元素量は減少する傾向となる。一方で、本発明のような濃度勾配を持つ系に対しては、深くエッチングされるほど、元素量が少なくなるため、元素比率のプロットとしては、ピークを持つ形状とはならず、前述の略連続的に減少する傾向となる。これが屈折率の連続的変化を生み、結果としてパターン視認性は向上する。従って、本発明においては、ESCAで元素比率のデプスプロファイルにおいてピークを持たない無機粒子含有領域を有することを一つの特徴とするものである。
【0098】
前記無機粒子9の減少率は、特に限定されるものではないが、0.09〜0.20atomic%/nmであることが好ましい。無機粒子9の減少率が前記範囲にあることで透明導電層のパターン視認性を好適に抑制できるため好ましい。
【0099】
無機粒子含有領域6の平均厚みは、特に限定されるものではないが、透明導電層のパターン視認性の抑制の観点から、20nm〜600nmであることが好ましく、20nm〜300nmであることがより好ましく、20nm〜200nmであることがさらに好ましい。前記範囲とすることで、パターン化された透明導電層の視認性を低下させることが出来る傾向があるため好ましい。前記無機粒子含有領域6とベース粘着剤領域7との境界は、不規則な凹凸形状になるが、本発明においては、前記無機粒子含有領域6の平均厚みは、凹凸形状の深さの測定値を平均することにより決定することができる。ベース粘着剤領域7の厚みは、粘着剤層8全体の厚みから、前記無機粒子含有領域6の平均厚みを引いた値になる。無機粒子含有領域6の平均厚みの測定方法は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0100】
前記無機粒子含有領域6の透明導電層4と接する側の表面(図1、2の矢印Bで示す表面)の屈折率は、1.47〜1.74であることが好ましく、1.58〜1.74あることがより好ましく、1.60〜1.74であることがさらに好ましい。無機粒子含有領域6の表面の平均屈折率が前記範囲であることで、透明導電層のパターン視認性を抑制できるため好ましい。また、無機粒子含有領域6の表面の平均屈折率は、透明導電層4の屈折率より低いことが好ましい。
【0101】
(2−3)粘着剤層の特性
粘着剤層8の全体としての厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、5μm〜500μmであることが好ましく、5μm〜400μmであることがより好ましく、5μm〜300μmであることがさらに好ましく、5μm〜250μmであることが特に好ましい。粘着剤層8の厚さが5μm未満では、透明導電体5に対する密着性が乏しくなる傾向がある。一方、粘着剤層8の厚さが500μmを超える場合には、粘着剤層8を形成する際の粘着剤組成物の塗布、乾燥時に十分に乾燥しきれず、気泡が残存したり、粘着剤層8の面に厚さムラの発生、さらに工程での巻き取り時にシワ等が発生し易くなることから、外観上の問題が顕在化し易くなる傾向がある。
【0102】
本発明の粘着剤層8のヘイズ値は、1以下であることが好ましく、1未満であることがより好ましく、0〜0.9であることがさらに好ましく、0〜0.8であることがさらに好ましく、0〜0.6であることが特に好ましい。ヘイズ値が前記範囲内であることで、光学用途で用いる粘着剤層に要求される透明性を満足できるものである。
【0103】
前記粘着剤層8の全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。全光線透過率が前記範囲にあることで、優れた透明性や優れた外観が得られるため好ましい。全光線透過率は、JIS K7361に準拠して測定することができる。
【0104】
また、前記粘着剤層8の透明導電層4と接する側と反対側の粘着剤層面(ベース粘着剤層7表面、図1〜3の矢印Aの表面)には、実用に供されるまで離型フィルム等で粘着剤層面を保護することもできる。離型フィルムについては、後述のものを使用することができる。
【0105】
(3)積層体
本発明の積層体は、前記粘着剤層8と前記透明導電体5を、前記粘着剤層8の無機粒子含有領域6と、前記透明導電体5の透明導電層4が接するように積層することで形成することができる。
【0106】
本発明の積層体は、上記構成とすることで、透明導電層4のパターン部の反射光とパターン開口部の直下の反射光の色差(ΔE)を、3.0以下とすることができるものであり、パターン見えが抑制されるものである。ここで、「色差」とは、Lの差ΔL、aの差Δa、及びbの差Δbを用いて、
ΔE={(ΔL+(Δa2+(Δb0.5
で表される値のことである。
【0107】
2.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法は、
透明基材、第1光学調整層及び透明導電層をこの順に有する透明導電体を準備する工程、
粘着剤組成物から形成された粘着剤層の一方の主面に、無機粒子を含有する分散液を塗布して、該分散液に含まれる無機粒子を、粘着剤層の一方の主面から厚み方向に浸透させて、前記粘着剤組成物により本質的に形成されるベース粘着剤領域と、無機粒子含有領域とを形成する工程、
前記粘着剤層と前記透明導電体を、前記粘着剤層の前記無機粒子含有領域と、前記透明導電体の透明導電層が接するように貼り合せる工程、を有し、
前記無機粒子含有領域中に含まれる金属元素と炭素の元素比率(金属元素/炭素)が0.01〜0.2であることを特徴とする。
【0108】
前記透明導電体、粘着剤組成物、無機粒子については、本明細書に記載のものを挙げることができる。また、無機粒子含有領域の無機粒子由来の金属元素量についても、前述の通りである。
【0109】
前記粘着剤組成物から形成された粘着剤層は、無機粒子を含有しないものである。粘着剤組成物を支持体等に塗布して、重合溶剤等を乾燥除去することにより形成することができる。また、前記粘着剤組成物の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0110】
前記支持体としては、粘着剤層を支持するものであり、粘着剤層から剥離可能な材料であることが好ましい。支持体としては、例えば、離型フィルム、フッ素系ポリマーからなる低接着性基材や無極性ポリマーからなる低接着性基材等を挙げることができる。
【0111】
前記離型フィルムの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム、紙、布、不織布等の多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、及びこれらのラミネート体等の適宜な薄葉体等を挙げることができるが、表面平滑性に優れる点から樹脂フィルムが好適に用いられる。
【0112】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0113】
前記離型フィルムの厚さは、通常5μm〜200μmであり、好ましくは5μm〜125μm程度である。前記離型フィルムには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系若しくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型及び防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理をすることもできる。特に、前記離型フィルムの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を適宜行うことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0114】
前記粘着剤組成物の塗布方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。
【0115】
前記加熱乾燥温度は、特に限定されるものではないが、40〜200℃であることが好ましく、50〜180℃がより好ましく、60〜170℃がさらに好ましい。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する透明樹脂層を得ることができる。乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、5秒〜20分が好ましく、5秒〜10分がより好ましく、10秒〜5分が特に好ましい。
【0116】
また、前記粘着剤層の形成は、前記粘着剤組成物に、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより重合して行うこともできる。紫外線照射には、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を用いることができる。なお、モノマー成分から(メタ)アクリル系ポリマーを製造するとともに、粘着剤層を形成することができる。モノマー成分には、適宜に架橋剤等を配合することができる。前記モノマー成分は、紫外線照射にあたり、事前に一部を重合してシロップにしたものを用いることができる。
【0117】
本発明においては、上記得られた(無機粒子を含まない)粘着剤層の少なくとも一方の主面側に、無機粒子を含有する分散液を塗布することで、前記粘着剤層の一方の主面から無機粒子を浸透することができる。具体的な方法としては、図4に示すように、無機粒子9を含む分散液10を粘着剤層8’の表面に塗布する(図4(a))。粘着剤層8’の表面は、分散液10の溶媒により膨潤され、その過程で分散液10内の無機粒子9が、粘着剤層8’内に厚み方向に浸透する(図4(b))。その後、粘着剤層8’を乾燥させることにより、分散液10の溶媒を蒸発させて、ベース粘着剤領域7と、無機粒子を含む無機粒子含有領域6とを形成することができる(図4(c))。
【0118】
前記分散液の分散媒は、粘着剤と相溶性を有することが必要であり、このような分散媒としては、水、有機溶媒、液状の有機樹脂モノマー、液状の有機樹脂オリゴマーの群から選択された1種又は2種以上を含む溶媒を挙げることができる。前記有機溶媒としては、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、炭化水素等の有機溶媒を挙げることができる。前記液状の有機樹脂モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系又はメタクリル系のモノマー、エポキシ系モノマー等を挙げることができる。また、前記液状の有機樹脂オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、アクリレート系オリゴマー等を挙げることができる。これらの中でも、粘着層上への塗工性・粘度・乾燥性の理由より、アルコール、ケトンが好ましく、炭素数4以下のアルキルアルコール、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等がより好ましい。
【0119】
無機粒子を含有する分散液の粘着剤層表面への塗布方法は、通常の方法を挙げることができ、例えば、バーコート、リバースコート、スプレーコート、グラビアコート、ロッドコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等を挙げることができる。
【0120】
無機粒子を含有する分散液の粘着剤層表面へ塗布した後、分散溶媒等を乾燥除去することにより、無機粒子を粘着剤層の一方主面から浸透することができる。前記乾燥温度、乾燥時間は、特に限定されるものではなく、適宜、適切な時間が採用され得る。塗布した分散溶媒を十分乾燥することで、優れた粘着特性を有する透明樹脂層を得ることができる。
【0121】
本発明においては、無機粒子を含有する分散液を粘着剤層の一方の主面に塗布し、分散溶媒等を乾燥除去することにより、無機粒子を粘着剤層の一方の主面から浸透することができ、粘着剤層中において、無機粒子含有領域6とベース粘着剤領域7を形成することができる。無機粒子含有領域6とベース粘着剤領域7は、前述の通りである。
【0122】
前記得られた粘着剤層と前記透明導電体を、前記粘着剤層の前記無機粒子含有領域と、前記透明導電体の透明導電層が接するように貼り合せることで本発明の積層体を得ることができる。
【0123】
本発明の積層体は、静電容量式タッチパネルに好適に用いることができる。
【実施例】
【0124】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0125】
製造例1(粘着剤層の製造)
(アクリル系オリゴマー(A−1)の作製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)60重量部、メチルメタクリレート(MMA)40重量部、連鎖移動剤としてのα−チオグリセロール3.5重量部、及び重合溶媒としてのトルエン100重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を70℃付近に保って1時間撹拌した。次に、重合開始剤としての2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を前記4つ口フラスコに投入し、70℃で2時間反応させ、続いて、80℃で2時間反応させた。その後、反応液を130℃の温度雰囲気下に投入し、トルエン、連鎖移動剤及び未反応モノマーを乾燥除去して、固形状のアクリル系オリゴマー(A−1)を得た。このアクリル系オリゴマー(A−1)の重量平均分子量(Mw)は、5.1×10であった。
【0126】
(アクリル系プレポリマー組成物(A−2)の製造)
アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)68重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)14.5重量部、及びアクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)17.5重量部から構成されるモノマー成分に、さらに、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、BASF製)0.035重量部、及び光重合開始剤(商品名:イルガキュア651、BASF製)0.035重量部を配合した後、粘度(計測条件:BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度:30℃)が約20Pa・sとなるまで紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物(A−2)を得た。
【0127】
次に、得られたプレポリマー組成物(A−2)100重量部に、上記アクリル系オリゴマー(A−1)5重量部、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.15重量部、シランカップリング剤(商品名:KBM−430、信越化学工業(株)製)0.3重量部を添加・混合して、アクリル系粘着剤組成物(A−3)を得た。得られたアクリル系粘着剤組成物(A−3)を、剥離フィルム(商品名:MRF#38、三菱樹脂(株)製)の剥離処理された面上に、粘着剤層形成後の厚さ150μmとなるように塗布して、粘着剤塗布層を形成し、次で、該粘着剤塗布層の表面に、剥離フィルム(商品名:MRF#38、三菱樹脂(株)製)を貼り合せた。その後、照度5mW/cm、光量1500mJ/cmの条件で紫外線照射を行い、粘着剤塗布層を光硬化させて、粘着剤層Aを形成した。粘着剤層Aの屈折率は、1.49であった。
【0128】
実施例1
製造例1で得られた粘着剤層Aの一方の剥離フィルムを剥離した。露出した粘着剤層の表面に、ジルコニア粒子(ZrO、屈折率:2.17、一次粒子径:20nm)を含有する塗布用分散液(分散媒:エタノール、粒子濃度:1.5重量%、分散液の透過率:75%、CIKナノテック(株)製)を、無機粒子含有領域の平均厚さが200nmになるように、バーコーターRDS No.5を用いて塗布し、110℃の乾燥オーブンで180秒間乾燥させた。次いで、ジルコニア(ZrO)粒子が分散された粘着剤表面に、PET剥離シートを貼り合せて、粘着剤シートを得た。無機粒子含有領域表面の屈折率は、1.68であり、ジルコニア粒子が占める面積比率(表面被覆率)は、93%であった。また得られた粘着剤層の無機粒子含有領域中のZr/Cの元素比率は0.07であった。得られた粘着剤層の元素比率のデプスプロファイルを取得した所、Zrの元素比率は深さ方向でピークを持たず、粘着剤層表面(無機粒子含有領域表面)から粘着剤層の内部に向かって、単調に減少していることが分かった。減少率は、0.20atomic%/nm(厚さはSiO換算)であった。また、ベース粘着剤領域中の無機粒子の金属元素比率は0atomic%であった。なお、ジルコニア粒子の平均一次粒子径は、TEM観察により計測した。
【0129】
メラミン樹脂:アルキド樹脂:有機シラン縮合物を、固形分で2:2:1の重量比で含む熱硬化型樹脂組成物を、固形分濃度が8重量%となるようにメチルエチルケトンで希釈した。この溶液を、厚さ50μmのPETフィルム(商品名:ルミラー、東レ(株)製)からなる透明フィルム基材(屈折率:1.65)の一方主面に塗布し、150℃で2分間加熱硬化させ、膜厚30nm、屈折率1.54の光学調整層を形成した。
【0130】
屈折率調整層の表面に、透明導電層として、厚み21nmのインジウム・スズ酸化物層(ITO層、屈折率:1.90)を積層した。続いて、得られた透明導電体を150℃で加熱し、ITO層を結晶化させた。加熱した透明導電体の抵抗値を四端子法により測定した所、140Ω/□であった。形成したITO層上の、ITO層を残したいところに、ポリイミド粘着テープを貼り合わせ、1mol/Lの塩酸に2分間浸漬して、ITO層をエッチングした。その後、透明導電体をイオン交換水で充分に洗浄した後、120℃で10分間乾燥させてからポリイミド粘着テープを剥離し、ITO層がパターニングされた透明導電体を得た。得られた透明導電体のパターニングされたITO層面と、前記粘着剤層の無機粒子含有領域が接するように、透明導電体と粘着剤層を積層した。
【0131】
実施例2
粘着剤層の無機粒子含有領域の膜厚を500nmとすること以外は実施例1と同様の手法で、透明導電体と粘着剤層の積層体を作製した。
【0132】
実施例3
透明導電層の厚みを30nmのインジウム・スズ酸化物層(ITO層、屈折率:1.90、抵抗値:80Ω/□)とする以外は実施例1と同様の手法で、透明導電体と粘着剤層の積層体を作製した。
【0133】
実施例4
厚さ50μmのPETフィルム(商品名:ルミラー、東レ(株)製)からなる透明フィルム基材(屈折率:1.65)の両面に、ハードコート層形成用塗布液として紫外線硬化型アクリル樹脂(屈折率:1.52)を乾燥後の厚さが2.0μmとなるように塗布し、80℃で3分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて、積算光量200mJ/cmの紫外線を照射することで、ハードコート層(屈折率:1.52)を形成した(ハードコート層を有するPETフィルム)。
【0134】
続いて、紫外線硬化型アクリル樹脂(屈折率:1.52)100部に対して、酸化ジルコニウムのナノ粒子(平均粒径:10nm)を屈折率が1.65になるように調整した高屈折率層形成用塗布液を調整した。次に、ハードコート層を有するPETフィルムの一方のハードコート層の表面に前記高屈折率層形成用塗布液を乾燥後の厚さが30nmとなるように塗布し、80℃で3分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて、積算光量200mJ/cmの紫外線を照射することで、光学調整層(高屈折率層、屈折率:1.65)を形成した。光学調整層における金属元素と炭素の元素比率(金属元素/炭素)は、0.41であった。
【0135】
紫外線硬化型アクリル樹脂(屈折率:1.52)にナノシリカ粒子(平均粒径:15nm)を屈折率が1.45になるように調整した低屈折率層形成用塗布液を調整した。形成した光学調整層(高屈折率層)の表面に前記低屈折率層形成用塗布液を乾燥後の厚さが40nmとなるように塗布し、80℃で3分間加熱することにより塗膜を乾燥させた。その後、高圧水銀ランプにて、積算光量200mJ/cmの紫外線を照射することで、低屈折率層(屈折率:1.45)を形成した。低屈折率層における(無機原子/炭素原子)の比は、0.32であった。
【0136】
上記積層フィルム(ハードコート層/PETフィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層)を、DCマグネトロンスパッタ装置へ装着し、加熱した成膜ロールに密着および走行させながら巻き取った。積層フィルムを走行させながら、DCマグネトロンスパッタ装置に備えられる排気装置により、装置内の真空度を1×10−4Paとした(脱ガス処理)。
【0137】
続いて、実施例1と同様の手法でITOの積層、結晶化処理、パターニング処理、積層を実施した。
【0138】
比較例1
実施例3において、製造例1で得られた粘着剤層Aを粘着シートとして用いた(すなわち、比較例1の粘着剤層には無機粒子含有領域を有さない)以外は実施例3と同様にして、透明導電体と粘着剤層の積層体を作製した。
【0139】
比較例2
実施例4において、製造例1で得られた粘着剤層Aを粘着シートとして用いた(すなわち、比較例2の粘着剤層には無機粒子含有領域を有さない)以外は実施例4と同様にして、透明導電体と粘着剤層の積層体を作製した。
【0140】
実施例及び比較例で得られた積層体について、以下の評価を行った。評価結果は、表1及び図面に示す。
【0141】
<透明導電層の抵抗値測定>
透明導電性フィルムを150℃で加熱処理して透明導電層を結晶転化させた後、透明導
電層の表面抵抗(Ω/□)をJIS K7194(1994年)に準じて四端子法により
測定した。
【0142】
<無機粒子含有領域の平均表面屈折率>
実施例及び比較例で得られた粘着シートの平均表面屈折率を、分光エリプソメーター(商品名:EC−400、JA.Woolam製)を用いてナトリウムD線(589nm)における屈折率を測定した。実施例及び比較例の粘着シートでは、両面の剥離シートを剥離して、粒子を塗布してない面に黒板を貼り合せた状態で、粒子が塗布されている面の平均屈折率を測定した。比較例の粘着シートでは、両方の剥離シートを剥離して、一方の面に黒板を貼り合せた状態で、粘着剤層表面の平均屈折率を測定した。
【0143】
<無機粒子含有領域の厚み測定>
粘着剤層の深さ方向の断面を調整し、TEM観察を行った。得られたTEM像から無機粒子含有領域の厚さの測定を計測した。無機粒子含有領域の厚みは、ベース粘着剤層と無機粒子含有領域との界面の凹凸の平均値とし、ベース粘着剤層との界面の判断が困難な場合には、表面TEM像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化画像処理し、ナノ粒子の90%が存在する領域の深さを調整層の厚みとした。
【0144】
<第1光学調整層における無機物(無機原子)含有量の測定方法>
下記の条件にてX線光電子分光法(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を実施して、デプスプロファイルを取得した。
測定装置:Quantera SMX、アルバック・ファイ社製
X線源:モノクロAlKα
X Ray setting:200μmφ、15kV、26W
光電子取り出し角:試料表面に対して45°
帯電中和条件:電子中和銃とArイオン銃(中和モード)の併用
結合エネルギー:C1sスペクトルのC−C結合由来のピークを285.0eVに補正 Arイオン銃の加速電圧:1kV
Arイオン銃のエッチング速度:2nm/分(SiO換算)
エッチング面積:2mm×2mm
デプスプロファイルの第1光学調整層に該当する領域において、無機原子の元素比率(光学調整層に含まれる全元素(但し、H、Heを除く)に対する無機原子の元素比率)が最も高くなる深さにおける、(無機原子/炭素原子)の原子数比をここでは採用した。
【0145】
<無機粒子含有領域における金属元素の含有率>
下記の条件にてX線光電子分光法(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を実施して、深さ方向に対する元素比率のデプスプロファイルを取得した。
測定装置:Quantera SMX、アルバック・ファイ社製
X線源:モノクロAlKα
X Ray setting:200μmφ、15kV、26W
光電子取り出し角:試料表面に対して45°
帯電中和条件:電子中和銃とArイオン銃(中和モード)の併用
結合エネルギー:C1sスペクトルのC−C結合由来のピークを285.0eVに補正 Arイオン銃の加速電圧:1kV
Arイオン銃のエッチング速度:2nm/分(SiO換算)
エッチング面積:2mm×2mm
得られたデプスプロファイルにおける無機粒子含有領域に該当する深さ範囲(すなわち、金属元素の元素比率が1atomic%以上になる深さ範囲)において、金属元素の全元素(但し、H、Heを除く)に対する元素比(atomic%)を積分し、また、炭素元素の全元素(但し、H、Heを除く)に対する元素比(atomic%)を積分し、金属元素の積分値と炭素の積分値の比として算出した。
【0146】
<ベース粘着剤層領域における無機粒子含有量の測定方法>
前記<無機粒子含有領域における金属元素の含有率>と同様の手法で、ベース粘着剤層領域に含まれる全元素(但し、H、Heを除く)に対する無機粒子の金属元素比率を算出した。
【0147】
<無機粒子が占める面積比率(表面被覆率)>
粘着剤層の無機粒子含有領域表面を、FE−SEMを用いて、加速電圧2kV、観察倍率500倍、2,000倍、5,000倍で観察した。得られた表面SEM画像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化画像処理することで、長辺23μm、短辺18μmの長方形領域における全体面積に対する面積として、無機粒子の占める面積比率(%)を求めた。
【0148】
<反射率のΔY値測定>
実施例及び比較例で得られた粘着剤層と貼り合せる前の状態の透明導電体(未エッチング処理)の透明基材面(ハードコート層を有する場合はハードコート層面)に黒テープ(吸収体)を貼り合せて、裏面からの反射が測定されないようにした。その後、エッチングされていない透明導電層上に各実施例及び比較例で用いた粘着剤層を貼り合せて、積層体を作製した。その際、粘着剤層に無機粒子含有領域を持つ場合は、透明導電層と無機粒子含有領域が接するように貼り合せを行った(パターン部サンプル)。また、実施例及び比較例で得られた粘着剤層と貼り合せる前の状態の透明導電体(未エッチング処理)を、50℃、10重量%の塩酸(HCl)でエッチングし、光学調整層をむき出しにした非パターン部サンプルを準備し、透明基材面に黒テープを貼り合せて、その後、むき出しになった光学調整層上に各実施例及び比較例で用いた粘着剤層を貼り合せて、積層体を作製した。その際、粘着剤層に無機粒子含有領域を持つ場合は、光学調整層と無機粒子含有領域が接するように貼り合せを行った(非パターン部サンプル)。
その後、それぞれのパターン部サンプルと非パターン部サンプルを反射率測定機(製品名:U−4100(+積分球ユニット)、(株)日立製作所製)を用いて、粘着剤層の表面から反射率スペクトルを測定した。反射率スペクトルの測定条件は以下の通りである。
データモード:%R
測定範囲:380nm〜780nm
スキャンスピード:600nm/分
スリット:4nm
サンプリング間隔:5nm
光源:D65、
視野:2℃視野
パターン部サンプルと非パターン部サンプルのそれぞれのXYZ座標における反射率Y(JIS Z 8701に記載)をスペクトルから算出し、その差を算出することでΔYを求めた。
【0149】
<色差(ΔE)測定>
まず、<反射率のΔY値測定>と同様の手法で反射スペクトルを測定した。その後、JIS Z 8729に規定されているL*値、a*値、b*値を反射スペクトルから算出し、色差ΔL*、Δa*、Δb*を求め、以下の式に代入して求めた。
ΔE={(ΔL+(Δa+(Δb0.5
【0150】
<パターン見え>
実施例及び比較例で得られた粘着剤層と貼り合せる前の状態の透明導電体(未エッチング処理)を5cm×10cmに切り出し、透明導電体の透明導電層の表面に、透明導電体の短辺方向に沿って、ストライプ状に幅1mmのポリイミドテープを2mm間隔で貼付し、50℃、10質量%の塩酸に5分間含浸させた。これによって、ストライプ形状のパターン部を有する配線パターンに形成した。その後、ポリイミドテープを剥がし、透明導電体の透明基材を黒板に貼付して配線パターン視認性評価用のサンプルを作製した。
作製した配線パターン視認性評価用のサンプルのパターン化した透明導電層上に、実施例及び比較例で使用したそれぞれの粘着剤層を貼り合せ、積層体を作製した。その際、粘着剤層に無機粒子含有領域を持つ場合は、無機粒子含有領域側の面と透明導電層側の面が接するように貼り合せを行った。その後、配線パターンを観察して、視認抑制(パターン見え)を、下記の基準に基づいて、評価した。
◎:導電層のパターンがほとんど視認できず、観察角度を変えてもパターンをほとんど視認できなかった。
〇:導電層のパターンがほとんど視認できないが、観察角度を変えることによりパターンを視認できる場合があった。
×:観察角度を変えることによりパターンを必ず確認できる。
【0151】
【表1】
【符号の説明】
【0152】
1 積層体
2 透明基材
3 第1光学調整層
3’ 第2光学調整層
4 パターニングされた透明導電層
5 透明導電体
6 無機粒子含有領域(屈折率調整層)
7 ベース粘着剤領域
8 粘着剤層
9 無機粒子
10 分散液
図1
図2
図3
図4