(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、利用者が車椅子に乗ったままの状態で、歯科診療等の診療を受ける際に使用する体位補助エア枕としては、例えば、特許文献1に記載された車椅子用補助器具のヘッドレストエアクッションが知られている。
そのヘッドレストエアクッションは、車椅子に乗った患者の後頭部を支持する空気袋から成る補助具である。ヘッドレストエアクッションは、充満された空気で空気枕状に膨張するビニール製の袋体と、袋体内に空気を供給する栓と、袋体の背面に設けられた袋体用ベルクロと、を備えて構成されている。そのヘッドレストエアクッションには、車椅子に乗った利用者の後頭部を支持する部位に、後頭部支持凹部が形成されている。
【0003】
また、空気の出し入れによってエア枕の高さを調整可能にしたものとしては、例えば、特許文献2に記載された枕が知られている。その枕は、空気を収容した空気袋と、空気の出し入れによって空気収容空間の空気袋の高さが変化する高さ調節部と、空気収容空間と連通するホースと、ホースに設けられた弁装置と、空気収容空間内に設けられた第1弾性体と、チップウレタンが収容された第2弾性体と、を備えている。
【0004】
また、歯科治療台に仰臥した利用者の口腔を右側、または、左側に傾けて傾斜体位をとらせることを可能にしたものとしては、例えば、特許文献3に記載のシート式パッドが知られている。そのシート式パッドは、等厚のシート部の面における縦分断線の一方側に傾斜面を有するパッドを一体的に貼着して、利用者の体位を傾斜させるものである。
【0005】
また、診療椅子のヘッドレストの縦中心の左右にエアパッドをそれぞれ着脱自在に配置し、左右のエアパッドにエアチューブを接続して空気を供給、排出することで、エアパッドの面に傾斜面を形成して、利用者の頭部を側方に傾斜させるものとしては、例えば、特許文献4に記載された診療椅子の頭部傾斜機構が知られている。
【0006】
また、外層がボディラインに合わせて自由に形状変形可能な流動可能なパウダー状のビーズ素材で構成され、内層が外部のエア供給源よりエア供給可能なエアバッグで構成される内外二層構造のエアマットを備えたものとしては、例えば、特許文献5に記載された歯科用診療椅子が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載されたヘッドレストエアクッションは、後頭部支持凹部が、横断面視して円弧状に窪んだ状態に全体が形成されているので、利用者が下顎や上顎の診療を受ける場合に、利用者の頭部を種々の診察にそれぞれ適合した高さや、体位にすることができず、診察し易い体位に頭部を支持することができないという問題点があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の枕は、空気の出し入れによってエア枕の高さを調整することができるものの、頭部を安定させた枕の形状を保持したままで、さらに、枕の高さを調整すると、枕全体が萎んでしまうため、頭部を安定させた状態に保持したまま枕の高さを調整することができないという問題点があった。
【0010】
また、特許文献3,4に記載のパッドは、左右が独立して形成されたエアパッドの面に傾斜面を形成して、利用者の背部を側方に傾斜させることができるものの、利用者の円背の度合いや、利用者の姿勢の傾斜の度合いに応じて傾斜させることができないという問題点があった。
【0011】
また、特許文献5に記載のエアマットは、利用者の頭部の自重が枕にかからない座位の状態で、姿勢が不安定な利用者の頭部を安定した状態に支持することができないという問題点があった。
【0012】
そこで、本発明は、そのような問題点を解消すべく発明されたものであって、利用者の円背の度合いと、姿勢の傾斜の度合いとによらず、どのような座位でも利用者の頭部を安定した状態に保持することができる体位補助エア枕を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明に係る体位補助エア枕は、利用者の頭部を支持した体位を補助する体位補助エア枕であって、前記頭部を載置する第1弾性体と、この第1弾性体を支持し当該第1弾性体よりも柔らかい第2弾性体と、前記第1弾性体及び前記第2弾性体のうち少なくとも当該第2弾性体を収容し、内部に密閉される圧縮エアによって内容積が可変自在な気室カバーと、この気室カバーに配設され前記圧縮エアを導入放出する調整弁と、を有し、
前記気室カバーに前記第1弾性体及び前記第2弾性体を収容し、前記圧縮エアを前記気室カバー内に導入すると、前記第1弾性体よりも早く前記第2弾性体が膨張を開始し、前記圧縮エアを前記気室カバー内から放出すると、前記第1弾性体よりも早く前記第2弾性体が収縮を開始し、前記気室カバーに導入する圧縮エアの量を調整して高さを調整することを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、体位補助エア枕は、頭部を支持する硬い第1弾性体と、第1弾性体を支持し第1弾性体よりも柔らかく枕の高さを調整する第2弾性体と、を有していることによって、硬い第1弾性体で頭部を動かないように安定した状態に支持すると共に、柔らかい第2弾性体でクッション性を向上させて弾性的に頭部を支持することができる。また、体位補助エア枕は、圧縮エアによって内容積が可変自在な気室カバーを有していることにより、気室カバー内に導入する圧縮エアの量を調整して体位補助エア枕の高さを調整することができる。気室カバーは、第1弾性体及び第2弾性体のうち少なくとも第2弾性体を収容していることによって、気室カバー内に導入する圧縮エアの量を調整して高さを変えても、第1弾性体の硬さと、第2弾性体の硬さの差から常に頭部を保持することができる。このため、利用者の円背の度合いや、利用者の姿勢の傾斜の度合いによらず、どのような座位であっても、快適に診療が行えるように、容易に頭部を安定した状態に保持することができる。
【0016】
また、かかる構成によれば、体位補助エア枕は、気室カバー内に第1弾性体及び第2弾性体を収容し、圧縮エアを気室カバー内に導入すると、第1弾性体よりも早く第2弾性体が膨張し、圧縮エアを気室カバー内から放出すると、第1弾性体よりも早く第2弾性体が収縮するように構成されている。体位補助エア枕は、圧縮エアを気室カバー内に導入すると、第1弾性体よりも早く第2弾性体が膨張することによって、頭部を載置する第1弾性体の高さを、第2弾性体を膨張させることで、第1弾性体の形状を保持したまま高く調整することができる。また、体位補助エア枕は、圧縮エアを気室カバー内から放出すると、第1弾性体よりも早く第2弾性体が収縮することによって、頭部を載置する第1弾性体の高さを、第2弾性体を収縮させることで、第1弾性体の形状を保持したまま低く調整することができる。
【0017】
また、前記第1弾性体は、前記頭部の左側を載置し当該頭部の中央部から左側頭部に向かうに連れて高さが高くなる左側載置部と、この左側載置部と別体をなし前記頭部の右側を載置し当該頭部の中央部から右側頭部に向かうに連れて高さが高くなる右側載置部と、を備え、前記第2弾性体は、前記左側載置部を支持する左側支持部と、前記右側載置部を支持する右側支持部と、を備え、前記気室カバーは、前記左側載置部と前記左側支持部とを収容する左側気室カバーと、この左側気室カバーと別体をなし前記右側載置部と前記右側支持部とを収容する右側気室カバーと、を備え、前記調整弁は、前記左側気室カバーに導入する圧縮エアの量を調整して当該左側気室カバーの高さを調整する左側調整弁と、前記右側気室カバーに導入する圧縮エアの量を調整して当該右側気室カバーの高さを調整する右側調整弁と、を備えていることが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、体位補助エア枕の第1弾性体は、頭部の中央部から左側頭部に向かうに連れて高さが高くなる左側載置部と、頭部の中央部から右側頭部に向かうに連れて高さが高くなる右側載置部と、が別体を成して設けられていることによって、後頭部が左側載置部及び右側載置部がフィットした状態に支持される。
また、体位補助エア枕の第2弾性体は、左側載置部を支持する左側支持部と、右側載置部を支持する右側支持部と、が別体になっていることによって、頭部の左側を保持する左側載置部と、頭部の右側を支持する右側載置部とが、利用者の頭部に状態に応じてそれぞれ収縮する。このため、あらゆる体位の利用者の頭部を適合した状態に支持することができる。
体位補助エア枕の気室カバーは、左側載置部と左側支持部とを収容する左側気室カバーと、右側載置部と右側支持部とを収容する右側気室カバーとが、別体を成して独立していることによって、左側載置部及び左側支持部と、右側載置部及び右側支持部とのそれぞれの膨張及び収縮に合わせて、左側気室カバー及び右側気室カバー内の圧縮エアの量を左側調整弁と右側調整弁とで調整して、頭部の体位に合った形状にすることができる。
【0019】
また、本発明に係る体位補助エア枕は、利用者の頭部を支持した体位を補助する体位補助エア枕であって、前記頭部を載置する第1弾性体と、この第1弾性体を支持し当該第1弾性体よりも柔らかい第2弾性体と、前記第1弾性体及び前記第2弾性体のうち少なくとも当該第2弾性体を収容し、内部に密閉される圧縮エアによって内容積が可変自在な気室カバーと、この気室カバーに配設され前記圧縮エアを導入放出する調整弁と、を有し、前記第1弾性体は、前記頭部の盆の窪を載置する隆起部と、前記盆の窪よりも前記頭部の上側を支持し前記隆起部から上側に向かうに連れて高さが低くなるように傾斜した第1傾斜部と、前記盆の窪よりも前記頭部の下側を支持し前記隆起部から下側に向かうに連れて高さが低くなるように傾斜した第2傾斜部と、を備え、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部の傾斜角度が異な
り、前記気室カバーに導入する圧縮エアの量を調整して高さを調整することを特徴とする。
【0020】
かかる構成によれば、第1弾性体は、頭部の盆の窪を載置する隆起部と、隆起部から上側に低くなるように傾斜した第1傾斜部と、隆起部から下側に低くなるように傾斜した第2傾斜部と、を有していることで、例えば、利用者が下顎の診療を受ける場合、傾斜の小さい方の傾斜部(第1傾斜部または第2傾斜部)で利用者の後頭部を支持し、傾斜の大きい方の傾斜部(第2傾斜部または第1傾斜部)で利用者の頚椎側を支持することで、利用者が下方向を向くように支持することができるため、下顎を診療が受け易い状態にすることができる。
また、体位補助エア枕は、利用者が上顎の診療を受ける場合、傾斜の大きい方の傾斜部で利用者の後頭部を支持し、傾斜の小さい方の傾斜部で利用者の頚椎側を支持するように配置することによって、利用者が上方向を向くように支持することができるため、上顎を診療が受け易い状態にすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る体位補助エア枕によれば、利用者の円背の度合いと、姿勢の傾斜の度合いとによらず、どのような座位でも利用者の頭部を安定した状態に保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、
図1〜
図8を参照して、本発明の実施形態に係る体位補助エア枕の一例を説明する。なお、本発明に係る体位補助エア枕3は、円背の利用者Mや、筋力が衰えて腰が曲がっている老人等の利用者Mや、一般的な患者の利用者Mの歯、鼻、口、目、耳等を訪問診療などで診療を受ける際、あるいは、介護される者が食事をする際に使用するのに適しているが、以下、円背の利用者Mが歯科診療を受ける場合を例に挙げて説明する。また、体位補助エア枕3は、車椅子1や、椅子や、シートのシートバッグや、ベッド等に取り付けて、利用者Mの体位を診察が受け易い体位に保持して安定させる場合に使用することが可能であるが、以下、車椅子1に使用される場合を例に挙げて説明する。
まず、体位補助エア枕3を説明する前に、車椅子1及び体位補助器具2を説明する。
【0024】
<車椅子>
図1に示すように、車椅子1は、建物の屋外、屋内等で患者等の利用者Mを載せて移動するものであって、型式等は特に限定されない。なお、車椅子1には、型式により大型、中型、小型のタイプや、スポーツ型、和室用、電動椅子等があり、いずれであっても構わない。車椅子1は、車輪を支える車体フレーム11に、背もたれ部12を有している。
【0025】
<体位補助器具>
図1に示すように、体位補助器具2は、例えば、医師等が利用者Mを診療する際に、車椅子1に乗った利用者Mの体位を診療され易く安定した状態に支持するための装置である。体位補助器具2は、それぞれ後記する体位補助エア枕3と、体位補助エア枕3を車椅子1に取り付けるためのバックサポート4(
図2参照)と、を備えて構成されている。なお、体位補助器具2は、特に、円背等で背中が丸く曲がった利用者Mや、腰の曲がった高齢の利用者M等が在宅歯科の診療を受ける際に最適な装置である。
【0026】
<体位補助エア枕>
体位補助エア枕3は、利用者Mの頭部Maを支持した体位を補助するための補助枕である。体位補助エア枕3は、バックサポート4を介在して車椅子1に取り付けたり、上下方向の長さが長い背もたれ部12を有する車椅子1の背もたれ部12に直接取り付けられたりして、例えば、利用者Mの後頭部Mbの後側等に配置して使用される。
【0027】
図3及び
図4に示すように、体位補助エア枕3は、利用者M(
図1参照)の頭部Maを載置する第1弾性体31と、第1弾性体31を支持する第2弾性体32と、第1弾性体31及び第2弾性体32を収容する気室カバー33と、気室カバー33に配設された調整弁34と、気室カバー33に取り付けられたベルト35と、を有している。体位補助エア枕3には、利用者Mの後頭部Mbを支える際に、窪んだ状態に圧縮される軟質な弾性体から成る第1弾性体31と第2弾性体32とが内設されている。
【0028】
体位補助エア枕3は、調整弁34を開閉して気室カバー33内に導入する圧縮エアの量を調整することによって、体位補助エア枕3の高さH1,H2(
図6参照)を調整することができるようになっている。体位補助エア枕3は、使用する場合、
図3及び
図4に示すように、気室カバー33内の圧縮エアの量を充満させて、適宜な高さH1,H2(
図6参照)に膨張させて使用する。また、体位補助エア枕3は、
図8に示すように、診療後、調整弁34を開放して気室カバー33内のエアを抜いて折り畳んだ状態に圧縮させて、二つ折りに折畳んだバックサポート4内に挿入させて保管される。
【0029】
<第1弾性体>
図5に示すように、第1弾性体31は、利用者M(
図1参照)の頭部Maを後側から弾性的に支持するスポンジ状の弾性体である。第1弾性体31は、利用者Mの頭部Maの左側を載置して支持する左側載置部311と、左側載置部311と別体を成し頭部Maの右側を載置して支持する右側載置部312と、を備えて構成されている。第1弾性体31は、左右対称形状の左側載置部311と右側載置部312とを、気室カバー33の隔壁333(
図6参照)を介在させる間隔を介して互いに隣接させて並べた状態で、第2弾性体32の前面に接合されている。左右一対の第1弾性体31は、前側表面に、側面視して中央部から上下方向に向かって下がるように傾斜して形成されると共に、左右の端部31aから中央部31bに向かって下がるように傾斜して形成された傾斜面31c,31dを有している。
【0030】
第1弾性体31及び第2弾性体32は、内部に細かな孔が無数に空いた多孔質の柔らかいポリウレタン等の合成樹脂製の合成スポンジから成る。このため、第1弾性体31及び第2弾性体32は、押圧力が負荷されない場合、孔内にエアが充満されて膨張した状態になる。
また、第1弾性体31及び第2弾性体32は、押圧力が負荷されて圧縮されると、孔内のエアが押し出されて圧縮した状態に成り、その押圧力で押圧した状態から開放すると、スポンジの弾性で元の形状に戻るようになっている。
【0031】
第1弾性体31は、例えば、硬質ウレタンから成り、第2弾性体32よりもスポンジ硬度が高い材質のものから成る。表面層の硬質の第1弾性体31は、V溝部3dで利用者Mの頭部Maを安定した状態の保持する役目を果す。
第2弾性体32は、例えば、軟質ウレタンから成り、第1弾性体31よりもスポンジ硬度が低い材質のものから成る。内層部位の軟質の第2弾性体32は、枕高さを調整する機能を果す。
このため、第1弾性体31と第2弾性体32は、硬さの相違するスポンジを二層に配置した積層体を形成している。
【0032】
図6に示すように、左側載置部311は、平面視して頭部Maの中央部から左側頭部に向かうに連れて高さH3が高くなるように、中央部から左側端部に亘って盛り上がるように傾斜して形成されている。
右側載置部312は、平面視して頭部Maの中央部から右側頭部に向かうに連れて高さH4が高くなるように、中央部から右側端部に亘って上がるように傾斜して形成されている。
このため、左側載置部311と右側載置部312は、隔壁333を中心として対称に形成されている。左側載置部311と右側載置部312は、平面視(横断面視)して、全体で後頭部Mbを支持するように、中央部31bが窪んだV溝部3dを形成するように隣接して配置されている。
【0033】
<第2弾性体>
第2弾性体32は、第1弾性体31よりも柔らかい弾性部材から成る左右一対の部材であり、第1弾性体31の後面に接合されている。第2弾性体32は、第1弾性体31の後面に合致した厚板形状の弾性部材から成り、全体が均一な厚さに形成されている。第2弾性体32は、左側載置部311を支持する左側支持部321と、右側載置部312を支持する右側支持部322と、を備えている。
【0034】
<気室カバー>
図3及び
図4に示すように、気室カバー33は、第1弾性体31、第2弾性体32及び圧縮エアを収容する密閉状の袋体であって、第1弾性体31及び第2弾性体32を覆うカバー部材である。気室カバー33は、左側に形成された気室を形成する左側気室カバー331と、右側に形成された気室を形成する右側気室カバー332と、左側気室カバー331と右側気室カバー332とを仕切る隔壁333と、ベルト挿通孔334aを有するベルト取付片334と、後記する調整弁34と、を有して構成されている。気室カバー33は、内部に充填された圧縮エアの量によって内容積が可変自在になっている。気室カバー33は、例えば、表面がザラザラした艶がある塩化ビニール製の厚さが0.2mm程度の複数のシートを熱圧着して形成されている。
【0035】
気室カバー33は、第1弾性体31及び第2弾性体32を収容し、この気室カバー33内に圧縮エアを気室カバー33内に導入すると、第1弾性体31よりも早く第2弾性体32が膨張を開始し、圧縮エアを気室カバー33内から放出すると、第1弾性体31よりも早く第2弾性体32が収縮を開始するになっている。
【0036】
左側気室カバー331は、左側に配置されてスポンジ硬度の相違する第1弾性体31及び第2弾性体32と、圧縮エアと、が収容される気密状の袋体部位である。左側気室カバー331は、体位補助エア枕3の左側半体の表面部位を形成すると共に、左側の第1弾性体31及び第2弾性体32を大気から遮断して収容する独立した収容空間を形成する部材である。左側気室カバー331は、積層された状態に接合された左側の第1弾性体31と第2弾性体32との外周面に密着するように覆った状態に形成されている。換言すると、左側気室カバー331は、左側載置部311と左側支持部321とを収容する収容空間を形成している。このため、左側気室カバー331は、左側の第1弾性体31と第2弾性体32との接合体と略同じ形状に形成されている。左側気室カバー331及びも右側気室カバー332は、圧縮エアが充満されることにより膨らんで空気枕の半体を形成し、エアを抜くことにより萎んで収縮するように形成されている。
【0037】
右側気室カバー332は、右側に配置されてスポンジ硬度の相違する第1弾性体31及び第2弾性体32と、圧縮エアとが収容される気密状の袋体部位である。右側気室カバー332は、体位補助エア枕3の右側半体の表面部位を形成すると共に、右側の第1弾性体31及び第2弾性体32を大気から遮断して収容する独立した収容空間を形成する部材である。右側気室カバー332は、積層された状態に接合された右側の第1弾性体31と第2弾性体32との外周面に密着するように覆った状態の形状に形成されている。換言すると、右側気室カバー332は、左側気室カバー331と別体を成し、右側載置部312と右側支持部322とを収容する収容空間を形成している。このため、右側気室カバー332は、右側の第1弾性体31と第2弾性体32との接合体の外周面と略同じ形状に形成されている。
【0038】
図6に示すように、隔壁333は、左側気室カバー331と右側気室カバー332とを接合して二室の密閉空間に区画した状態に配置されたシート状部材である。隔壁333は、第1弾性体31と第2弾性体32との接合体の中央側端面を形成する五角形の塩化ビニール製のシートから成る。
【0039】
ベルト取付片334は、気室カバー33の後側の左右端部から左右方向に突出形成された正面視して三角形(略フラップ形状)の左右一対の突出片である。ベルト取付片334には、上下方向に細長く形成された矩形のベルト挿通孔334aが穿設されている。
【0040】
<調整弁>
調整弁34は、左側気室カバー331内と右側気室カバー332内とにそれぞれ圧縮エアを導入したり、放出したりするための弁である。調整弁34は、エアを注入及び排出する供給口を閉塞・開放する空気止栓であり、左側気室カバー331及び右側気室カバー332の左右側面に一体に合成樹脂で形成されている。調整弁34は、左側気室カバー331に導入する圧縮エアの量を調整して左側気室カバー331の高さH11を調整する左側調整弁341と、右側気室カバー332に導入する圧縮エアの量を調整して右側気室カバー332の高さH12を調整する右側調整弁342と、から成る。
【0041】
<ベルト>
図4及び
図6に示すように、ベルト35は、体位補助エア枕3をバックサポート4に固定するための固定部材である。ベルト35は、基端部が左右のベルト取付片334のベルト挿通孔334aに挿入した固定されたベルト本体35aと、ベルト本体35aの両側先端部に設けられて互いに着脱可能なスナップボタン35bと、を備えて構成されている。なお、ベルト35は、体位補助エア枕3をバックサポート4や、車椅子1の背もたれ部12等に固定できるものであればよく、その形状、型式、材質等は特に限定されない。
【0042】
図6に示すように、ベルト本体35aは、ゴム、合成樹脂、化繊、あるいは、革を帯状に形成したものから成る。
スナップボタン35bは、
図1に示すように、車椅子1の背もたれ部12に固定されたバックサポート4に巻き付けたベルト35を着脱可能に係合・離脱して体位補助エア枕3をバックサポート4に保持させるための部材である。なお、スナップボタン35bは、ベルト35を着脱できるものであればよく、面ファスナ、バックル等の留め具であっても構わない。
【0043】
<バックサポート>
バックサポート4は、利用者Mが診療を受ける際に、車椅子1の背もたれ部12に、サポート取付ベルト46によって取り付けられる補助器具である。
図2に示すように、バックサポート4は、矩形に形成される枠体41と、枠体41を形成する複数のフレーム42と、枠体41に張設された張設布体43と、枠体41に設けられた架設ベルト44と、枠体41を覆うカバー45と、を備えている。このバックサポート4は、非診療時、ヒンジ部41aを折り畳んだ状態で、収納袋(図示省略)に収納される。なお、バックサポート4は、車椅子1に取り付けて、体位補助エア枕3を取り付けことができるものであればよく、その形状、型式、材質等は特に限定されない。
【0044】
枠体41は、複数のフレーム42を連結して矩形に形成されている。この枠体41は、フレーム42を折り畳み可能に連結し、展開すると矩形に形成される。
フレーム42は、枠体41を2つ折に折り畳めるように形成されたパイプ状及び板状のアルミニウム合金等から成る。フレーム42は、略コ字状に形成された2つの部材をヒンジ部41aに回動自在に連結している。
張設布体43及び架設ベルト44は、化繊等の布製のものから成り、枠体41に張設されている。
カバー45は、ビニール製の袋状部材であり、バックサポート4の上側及び下側から被せるようにして設けられている。
【0045】
[作用]
次に、本発明の実施形態に係る体位補助エア枕の作用を、車椅子1に乗った利用者Mが体位補助器具2を使用して歯科診療を受ける場合を例に挙げて説明する。
【0046】
図8に示すように、体位補助エア枕3は、使用しない場合、調整弁34を開放して気室カバー33(左側気室カバー331及び右側気室カバー332)内の圧縮エアを押し縮めて放出し、内部の第1弾性体31及び第2弾性体32(
図3及び
図4参照)を圧縮させた状態で調整弁34を閉栓して、折畳んだバックサポート4のフレーム42間に配置して保管されている。
【0047】
体位補助エア枕3は、圧縮した状態で調整弁34を閉栓すると、外気が左側気室カバー331及び右側気室カバー332内に侵入しないため、圧縮した状態が維持される。体位補助エア枕3は、保管されるときに、押し縮めた状態で、バックサポート4と共に収納袋(図示省略)に入れて保管されるので、特別な占有スペースを取ることが無い。
【0048】
利用者Mが診療を受ける際には、折畳んであるバックサポート4を拡げて、バックサポート4から取り出して、調整弁34を開放する。すると、体位補助エア枕3は、
図6に示すように、内部の硬い層を形成している第1弾性体31が膨らんで元の形状に戻る。この後、続いて第1弾性体31よりも柔らかい第2弾性体32が膨らんで元の形状に戻る。気室カバー33は、それらの弾性力で、調整弁34から外気を吸入すると共に、気室カバー33を元の形状に膨張させる。気室カバー33は、圧縮機等によって調整弁34から圧縮エアを左側気室カバー331及び右側気室カバー332内に送り込んで、気室カバー33を適宜な空気圧の状態に膨張させる。
【0049】
次に、
図1に示すように、バックサポート4を車椅子1の背もたれ部12にサポート取付ベルト46によって取り付ける。すると、車椅子1の背もたれ部12は、バックサポート4によって高さ方向に継ぎ足した状態になり、背もたれ部12が上方方向へ長く延設された分だけ、さらに、車椅子1に乗った利用者Mを安定した状態で支えることができる。
【0050】
そのバックサポート4の上部に、圧縮エアを充填して膨張させた体位補助エア枕3を、利用者Mの頭部Maの位置に合わせて上下方向に調整してベルト35で取り付ける。続いて、車椅子1に乗った利用者Mの後頭部Mbを体位補助エア枕3のV溝部3dに当接させて支持する。
【0051】
この場合、体位補助エア枕3は、硬い第1弾性体31と、第1弾性体31を支持し第1弾性体31よりも柔らかく枕の高さH1を調整する第2弾性体32と、を有していることによって、硬質スポンジ側(表面層側)の第1弾性体31の傾斜面31c,31d(
図3参照)で後頭部Mbを動かないように安定した状態に支持することができる。また、軟質スポンジ側の枕高さを調整する層の第2弾性体32で、クッション性を向上させて頭部Maを弾性的に支持することができる。
【0052】
図6に示すように、体位補助エア枕3は、左右の調整弁34を開栓して左側気室カバー331及び右側気室カバー332内の圧縮エアを抜いたり、供給したりして収容される空気量を調整することによって、膨張している左側気室カバー331及び右側気室カバー332内の空気圧を利用者Mの体位に合わせて、圧縮エアによって内容積が可変自在な左右の気室カバー33を調整してそれぞれを適宜な硬さ及び高さH1にすることができる。この場合、体位補助エア枕3は、気室カバー33内に導入する圧縮エアの量を調整して高さH1を変えたとしても、気室カバー33内の表面側の第1弾性体31の硬さと、第2弾性体32の硬さの差から常に頭部Maを安定した状態に保持することができる。
【0053】
また、後面層の第2弾性体32は、左側気室カバー331内及び右側気室カバー332内の空気量を調整弁34で調整することによって、左右の第1弾性体31を弾性支持する硬さ及び押圧されたときに潰れる度合いを調整して、枕の左右の高さH1、及び、傾斜の度合いを調整することができる。
【0054】
体位補助エア枕3は、気室カバー33内に第1弾性体31及び第2弾性体32を収容し、圧縮エアを気室カバー33内に導入すると、第1弾性体31よりも早く第2弾性体32が膨張し、圧縮エアを気室カバー33内から放出すると、第1弾性体31よりも早く第2弾性体32が収縮するように構成されている。
このため、体位補助エア枕3は、圧縮エアを気室カバー33内に導入すると、第1弾性体31よりも早く第2弾性体32が膨張することによって、頭部Maを載置する第1弾性体31の高さを、第2弾性体32を膨張させることで、第1弾性体31の形状を保持したまま高く調整することができる。
また、体位補助エア枕3は、圧縮エアを気室カバー33内から放出すると、第1弾性体31よりも早く第2弾性体32が収縮することによって、頭部Maを載置する第1弾性体31の高さを、第2弾性体32を収縮させることで、第1弾性体31の形状を保持したまま低く調整することができる。
【0055】
また、体位補助エア枕3の第1弾性体31は、頭部Maの中央部から左側頭部に向かうに連れて高さH3が高くなる左側載置部311と、頭部Maの中央部から右側頭部に向かうに連れて高さH4が高くなる右側載置部312と、が別体を成して設けられていることで、後頭部Mbが左側載置部311及び右側載置部312がフィットした状態に支持される。
また、体位補助エア枕3の第2弾性体32は、左側載置部311を支持する左側支持部321と、右側載置部312を支持する右側支持部322と、が別体になっていることで、頭部Maの左側を保持する左側載置部311と、頭部Maの右側を支持する右側載置部312とが、利用者Mの頭部Maに状態に応じてそれぞれ収縮する。このため、あらゆる体位の利用者Mの頭部Maに適合した状態に支持することができる。
【0056】
また、体位補助エア枕3は、利用者Mの円背度合いによらず、利用者Mの左右の傾斜や、頭部Maの左右の向きに対応させることができると共に、どのような座位(姿勢)であっても、容易に利用者Mの頭部Maを安定した状態に支持することができる。
【0057】
診療が終了したら、車椅子1に取り付けてあったバックサポート4を車椅子1から取り外し、体位補助エア枕3をバックサポート4から取り外す。体位補助エア枕3は、左右の調整弁34を開栓して左側気室カバー331内及び右側気室カバー332内の圧縮エアを排出して、体位補助エア枕3全体を圧縮させる。その体位補助エア枕3は、ヒンジ部41aを中心として折り畳んだ折畳状態のバックサポート4のフレーム42間に挿入して、バックサポート4と共に、収納バッグ内に入れて保管する。このため、体位補助エア枕3は、設置スペースを取らないので保管し易く、また、保持運びもし易い。
【0058】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。なお、既に説明した構成は同じ符号を付してその説明を省略する。
図9は、本発明に係る体位補助エア枕の変形例を示す図であり、(a)は上顎の診療を受けるときの体位補助エア枕の状態を示す側面図、(b)は下顎の診療を受けるときの体位補助エア枕の状態を示す側面図である。
【0059】
前記実施形態では、体位補助エア枕3の一例として、利用者Mの後頭部Mbを支える表面が、
図7に示すように、縦断面視及び側面視して、山状の中央部位から上下方向に均等に傾斜した二等辺三角形のような傾斜面31c,31dを有する第1弾性体31から成るものに限定されるものではない。
【0060】
図9(a)に示すように、体位補助エア枕3Aの第1弾性体31Aは、頭部Maの盆の窪Mdを載置する隆起部3aと、盆の窪Mdよりも頭部Maの上側を支持し隆起部3aから上側に向かうに連れて高さが低くなるように傾斜した小傾斜部3c(第1傾斜部)と、盆の窪Mdよりも頭部Maの下側を支持し隆起部3aから下側に向かうに連れて高さが低くなるように傾斜した大傾斜部3b(第2傾斜部)と、を備え、小傾斜部3cと大傾斜部3bの傾斜角度が異なるように形成してもよい。
【0061】
この場合、例えば、隆起部3aは、利用者Mの頭部Maを支持した際に、バックサポート4から最も高い位置に配置される。大傾斜部3bは、隆起部3aから利用者Mに離間する下方向に傾斜して形成されている。小傾斜部3cは、隆起部3aから利用者Mに離間する上方向(大傾斜部3bの傾斜方向とは反対方向)に大傾斜部3bよりも緩やかに傾斜して形成されている。
【0062】
図9(a)に示すように、体位補助エア枕3Aを使用して利用者Mの下顎の診療を行う場合は、小傾斜部3cで利用者Mの後頭部Mbを支持し、大傾斜部3bで利用者Mの頚椎Mc側を支持するように体位補助エア枕3Aを配置する。体位補助エア枕3Aは、このように構成すれば、利用者Mが下顎の診療を受ける際に、下顎が下側方向を向くため、下顎の診療を受け易い状態にすることができる。
【0063】
また、
図9(b)に示すように、体位補助エア枕3Aを使用して利用者Mが上顎の診療を受ける場合は、大傾斜部3bで利用者Mの後頭部Mbを支持し、小傾斜部3cで利用者Mの頚椎Mc側を支持するように体位補助エア枕3Aを配置する。体位補助エア枕3Aは、このように構成すれば、利用者Mが上顎の診療を受ける際に、上顎が上側方向を向くため、上顎の診療を受け易い状態にすることができる。また、この場合、体位補助エア枕3Aは、最も膨らんでいる隆起部3aで利用者Mの頚椎Mcをサポートすることによって、利用者Mが口を開け易くなるので、歯科診療を受け易い状態にすることができる。
体位補助エア枕3Aは、
図9(a)、(b)に示すように、傾斜角度の相違する大傾斜部3b及び小傾斜部3cを形成して、体位補助エア枕3Aの上下の向きを逆さにして使用することで、利用者Mが診療を受ける部位に適合した体位にすることができる。また、体位補助エア枕3Aは、このように構成することによって、利用者Mの肩と干渉しない状態に、体位補助エア枕3Aを頭部Maとバックサポート4との間の隙間に挿入して配置することができる。
【0064】
[その他の変形例]
例えば、
図6に示す気室カバー33は、左側気室カバー331及び右側気室カバー332によって、それぞれが第1弾性体31及び第2弾性体32の二つの部材を収容する場合を説明したが、これに限定されない。気室カバー33は、第1弾性体31と第2弾性体32とのうちの少なくとも第2弾性体32を収容して、その内部に密閉される圧縮エアによって内容積が可変自在なカバーであってもよい。
その場合、気室カバー33は、第1弾性体31を収容する第1弾性体収容部と、第2弾性体32を収容する第2弾性体収容部とに区画して仕切る隔壁を気室カバー33内に設けて密閉された二つの気室を形成する。そして、第1弾性体収容部と第2弾性体収容部とのそれぞれの側壁に調整弁34を設ける。このように気室カバー33を形成することによって、第1弾性体31と第2弾性体32とは、上側と下側とに分離して配置してもよい。
【0065】
気室カバー33は、上側に第1弾性体収容部を形成し、下側に第2弾性体収容部を形成して区画した場合、第2弾性体収容部には、細かい弾性体や、屑のような弾性体、小さいチップ状のスポンジ等の弾性体を詰め込んでもよい。