(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
親水性ゼオライトは、一般に水分を吸着することはできるが、有機ガス、無機ガス等のアウトガスを吸着することはできない。また、特許文献2で開示されているような疎水性ゼオライトは、アウトガスを吸着することはできるが、水分を吸収しない。そのため、包装内の水分とアウトガスを両方吸着する包装材、包装袋はこれまで検討されてこなかった。
【0008】
本発明者らが鋭意研究したところ、特許文献1に開示されている10Å以上の細孔径を有する親水性ゼオライトは、水分だけでなく、内容物からのアウトガスも吸着することがわかった。しかしながら、包装袋中に水分及びアウトガスがある場合、水分を優先的に吸着してしまい、アウトガスを十分に吸着させることは困難であった。また、アウトガスの吸着を優先して上記親水性ゼオライトの含有量を増やした場合、吸湿能力の制御ができず、包装内が絶乾状態またはそれに近い状態となった。内容物によっては過乾燥状態となり、悪影響を及ぼすという問題もある。
【0009】
そこで、本発明では、第1に、包装内の水分とアウトガスを両方吸着し、その吸着量をそれぞれ独立して調節できる包装袋を提供することを目的とする。また第2に、過乾燥状態を嫌う内容物に対しても使用可能な、包装内を絶乾状態とすることなく適度に吸湿することができ、かつアウトガスを十分に吸着させることができる包装袋、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈1〉SiO
2/Al
2O
3モル比が3.0未満の第1のゼオライトを含有している吸湿層を含む吸湿フィルム、及び第1の基材フィルムを有する吸湿積層フィルム、並びに
SiO
2/Al
2O
3モル比が3.0以上の第2のゼオライトを含有しているガス吸着層を含むガス吸着フィルム、及び第2の基材フィルムを有するガス吸着積層フィルム、
を有し、かつ
上記吸湿フィルムと上記ガス吸着フィルムとが対向するようにして、上記吸湿積層フィルム及び上記ガス吸着積層フィルムが配置されており、かつ対向している上記吸湿フィルム及び上記ガス吸着フィルムの周縁が互いにヒートシールされている、
包装袋。
〈2〉上記第1の基材フィルム及び/又は第2の基材フィルムがバリア層及び樹脂フィルムを含む、上記〈1〉項に記載の包装袋。
〈3〉上記吸湿フィルム又は上記ガス吸着フィルムがスキン層を更に含む、上記〈1〉又は〈2〉項に記載の包装袋。
〈4〉上記第1のゼオライトの細孔径が10Å以上である、上記〈1〉〜〈3〉項のいずれか一項に記載の包装袋。
〈5〉上記吸湿層中の前記第1のゼオライトの含有量が、5〜25質量%である、上記〈1〉〜〈4〉項のいずれか一項に記載の包装袋。
〈6〉設計容積の23℃及び相対湿度50%の空気を上記包装袋に封入し、そして4日間放置した後で、上記包装袋の内部の相対湿度が5〜25%であり、かつ
設計容積の23℃及び相対湿度50%の空気、及び設計容積86mlに対してトリエチルアミン又はトルエン1μlを上記包装袋内に封入し、そして40℃の恒温槽内に24時間放置した後で、上記包装袋内が無臭である、
上記〈1〉〜〈5〉項のいずれか一項に記載の包装袋。
〈7〉内容物、及び
上記内容物を密封している上記〈1〉〜〈6〉項のいずれか一項に記載の包装袋
を含む、内容物入り包装袋。
〈8〉熱可塑性樹脂及びSiO
2/Al
2O
3モル比が3.0未満の親水性ゼオライトを溶融混練して、親水性マスターバッチを作製する工程、
熱可塑性樹脂及びSiO
2/Al
2O
3モル比が3.0以上の疎水性ゼオライトを溶融混練して、疎水性マスターバッチを作製する工程、
上記親水性マスターバッチ及び上記疎水性マスターバッチを各々製膜して、吸湿フィルム及びガス吸着フィルムを作製する工程、
上記吸湿フィルム及び上記ガス吸着フィルムに第1の基材フィルム及び第2の基材フィルムをそれぞれ積層させて、吸湿積層フィルム及びガス吸着積層フィルムを作製する工程、並びに
上記吸湿フィルムと上記ガス吸着フィルムとが対向するようにして上記吸湿積層フィルムと上記ガス吸着積層フィルムとを配置し、そして対向している上記吸湿フィルム及び上記ガス吸着フィルムの周縁を互いにヒートシールして袋状にする工程
を含む、包装袋の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の包装袋によれば、吸湿フィルム及びガス吸着フィルムを有するため、包装内の水分とアウトガスを両方吸着することができる。またさらに、吸湿フィルム及びガス吸着フィルムを独立して設けているので、各部位のゼオライトの含有量を独立して調節することができ、それによって包装内の水分の吸着量及びアウトガスの吸着量を内容物に応じて容易に調節することができる。そのため、包装内の水分を適度に吸湿して、包装内を絶乾状態とすることなく、一定の低湿度状態に維持することができ、かつ、アウトガスを十分に吸着することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《包装袋》
本発明の包装袋は、1つの態様において、
図1に示すように、吸湿積層フィルム(100)、及びガス吸着積層フィルム(200)を有する。
【0014】
この本発明の包装袋では、吸湿フィルム(400)とガス吸着フィルム(500)とが対向するようにして、吸湿積層フィルム及びガス吸着積層フィルムが配置されており、かつ対向している吸湿フィルム(400)及びガス吸着フィルム(500)の周縁がシール部(30a)において互いにヒートシールされている。
【0015】
以下では、本発明の包装袋の各構成要素について説明する。
【0016】
〈吸湿積層フィルム〉
吸湿積層フィルム(100)は、吸湿フィルム(400)、随意の接着層(50)、及び第1の基材フィルム(300)を有することができる。
【0017】
(吸湿フィルム)
吸湿フィルムは、吸湿層(10)、及び随意のスキン層(30)を含むことができる。
【0018】
吸湿層は、SiO
2/Al
2O
3モル比が3.0未満、2.5以下、2.0以下、又は1.5以下の第1のゼオライトを含有することができる。
【0019】
ここで、SiO
2/Al
2O
3モル比が小さいことは、ゼオライトが親水性の性質を有することを意味する。したがって、第1のゼオライトは、水分を吸着対象とした物理吸着剤である。このゼオライトの細孔径が小さいと袋内が絶乾状態になりやすくなるため、細孔径は6Å以上、好ましくは10Å以上の細孔径を有するゼオライトが好ましい。
【0020】
第1のゼオライトとしては、例えばA型、X型、又はLSX型のゼオライトを使用することができる。これらは単独で使用してもよく、また混合して使用してもよい。
【0021】
吸湿層中の第1のゼオライトの含有量は、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であることができ、また40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下であることができる。特に、適度な湿度調整及び匂い成分の十分な吸着の両立の観点から、吸湿層中の第1のゼオライトの含有量は、5〜25質量%であることが好ましい。
【0022】
吸湿層は、例えば第1のゼオライト及び熱可塑性樹脂を混練させて得た混練物を製膜機でフィルム状に加工することにより得られる。
【0023】
吸湿層の熱可塑性樹脂としては、水分の透過性が高く、混練性に優れた樹脂を使用することができる。例えば、これに限られないが、LDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、メタロセン触媒によるポリエチレン、カルボン酸変性ポリエチレン等のポリエチレン、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロックコポリマー、プロピレン−エチレンランダムコポリマー、メタロセン触媒によるポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン、等のポリプロピレン、ポリメチルペンテン、カルボン酸変性EVA、PVC(ポリ塩化ビニル)等のポリオレフィン、EAA(エチレン−アクリル酸コポリマー)、EMAA(エチレン−メタクリル酸コポリマー)、EEA(エチレン−エチルアクリレートコポリマー)、EMAC(エチレン−メチルアクリレートコポリマー)、EVA(エチレン−酢酸ビニルコポリマー)等のエチレン系コポリマー、飽和ポリエステル、ポリスチレン、アイオノマー、ポリカーボネート、ポリアミド、熱可塑性エラストマー等から選択される少なくとも1種、又はこれらの組合せを使用することができる。
【0024】
吸湿層の厚さは、5μm以上、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であることができ、また100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、又は40μm以下であることができる。
【0025】
吸湿層に含有されるゼオライトの脱落を防止し、かつ袋としての強度、例えばシール強度及び積層強度を持たせるため、吸湿層の片側又は両側に、随意のスキン層を積層させることができる。
【0026】
スキン層は、製膜安定性向上及び第1のゼオライトの脱落や直接外部に接触するのを防ぐ熱可塑性樹脂層であるとともに、第1の基材フィルムと積層するための表面平滑性を付与する熱可塑性樹脂層でもある。
【0027】
スキン層に含まれている熱可塑性樹脂としては、吸湿層に関して挙げた熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0028】
スキン層の厚さは、1μm以上、3μm以上、5μm以上、又は7μm以上であることができ、また50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は15μm以下であることができる。吸湿層の両側にスキン層を積層させた場合、これらのスキン層の厚さは同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
(第1の基材フィルム)
吸湿積層フィルムに含まれている第1の基材フィルム(300)は、樹脂フィルム(60)及びバリア層(40)を含むことができる。
【0030】
吸湿フィルム及び下に示すガス吸着フィルムは、単体では大気中の水分やアウトガスを吸収し、失活してしまうことを防止するため、包装袋として吸湿フィルム及びガス吸着フィルムの外側に随意のバリア層を設けることができる。
【0031】
バリア層としては、これに限られないが、アルミ箔、アルミ合金等の金属箔、又はアルミニウム蒸着膜、シリカ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ・アルミナ二元蒸着膜、ポリ塩化ビニリデンコーティング膜、ポリフッ化ビニリデンコーティング膜等のコーティング膜を使用することができる。
【0032】
バリア層の厚さとしては、1μm以上、3μm以上、5μm以上、又は7μm以上であることができ、また70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は10μm以下であることができる。
【0033】
第1の基材フィルムに含まれている樹脂フィルムとしては、耐衝撃性、耐摩耗性等に優れた樹脂を使用することができる。例えば、これに限られないが、特に、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、PAN(ポリアクリロニトリル)、PVA(エチレン−ビニルアルコール共重合体)、延伸又は無延伸ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル、ナイロン(登録商標)、ナイロン6、ナイロンMXD6等のポリアミド等を単独で、又は2種類以上組み合わせて複層で使用することができる。
【0034】
樹脂フィルムの厚さとしては、3μm以上、5μm以上、7μm以上、10μm以上、又は12μm以上であることができ、また120μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、又は20μm以下であることができる。
【0035】
(接着層)
吸湿積層フィルムの各々の層の間には随意の接着層(50)が存在していてもよい。接着層としては、例えば、ドライラミネート接着剤、アンカーコート接着剤、ホットメルト接着剤、水溶性接着剤、エマルション接着剤、及び押出ラミネート用の熱可塑性樹脂等を使用することができる。
【0036】
〈ガス吸着積層フィルム〉
ガス吸着積層フィルム(200)は、ガス吸着フィルム(500)、随意の接着層(50)、及び第2の基材フィルム(350)を有する。
【0037】
(ガス吸着フィルム)
ガス吸着フィルム(500)は、ガス吸着層(20)、及び随意のスキン層(30)を含むことができる。
【0038】
ガス吸着層は、SiO
2/Al
2O
3モル比が3.0以上、5.0以上、10.0以上、30.0以上、50.0以上、100.0以上、又は1000.0以上の疎水性ゼオライトを含有していることができる。
【0039】
ここで、SiO
2/Al
2O
3モル比が大きいことは、ゼオライトが疎水性の性質を有することを意味する。したがって、第2のゼオライトは、内容物からのアウトガス等を吸着対象とした物理吸着剤である。
【0040】
SiO
2/Al
2O
3モル比が3.0以上の疎水性ゼオライトとしては、例えばベータ型、ZSM−5型、フェリエナイト型、モルデナイト型、L型、又はY型のゼオライトを使用することができる。また、ZSM−5型ゼオライトの類縁体であるZSM−11、シリカライト、シリカライト−2、ペンタシル型メタロケイ酸塩を使用することもできる。これらは単独で使用してもよく、また組み合わせて使用してもよい。
【0041】
ガス吸着層中の疎水性ゼオライトの含有量は、5質量%、10質量%、又は15質量%以上であることができ、また40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下であることができる。
【0042】
ガス吸着層は、このゼオライト及び熱可塑性樹脂を混練させて得た混練物を製膜機でフィルム状に加工することにより得られる。
【0043】
ガス吸着層に含まれている熱可塑性樹脂としては、吸湿層に関して挙げた熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0044】
ガス吸着層の厚さは、5μm以上、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であることができ、また100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、又は40μm以下であることができる。
【0045】
ガス吸着層に含有されているゼオライトの脱落を防止し、かつ袋としての強度、例えばシール強度及び積層強度を持たせるため、ガス吸着層の片側又は両側に、随意のスキン層を積層させることができる。このスキン層は、吸湿フィルムに関して挙げたスキン層を用いることができ、吸湿フィルムのスキン層とは同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
ガス吸着積層フィルムに含まれている第2の基材フィルム(350)としては、第1の基材フィルムに関して挙げた基材フィルムを使用することができ、第1の基材フィルムとは同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
(接着層)
ガス吸着積層フィルムの各々の層の間には随意の接着層(50)が存在していてもよい。接着層としては、例えば、吸湿積層フィルムに関して挙げた接着剤等を使用することができる。この接着層は、吸湿積層フィルムの接着層とは同一でも異なっていてもよい。
【0048】
本発明の包装袋は、設計容積の23℃及び相対湿度50%の空気を上記包装袋に封入し、そして4日間放置した後で、上記包装袋の内部の相対湿度が5〜25%とすることができる。
【0049】
また、本発明の包装袋は、設計容積の23℃及び相対湿度50%の空気、及び設計容積約86mlに対してトリエチルアミン又はトルエン1μlを上記包装袋内に封入し、そして40℃の恒温槽内に24時間放置した後で、上記包装袋内が無臭であることができる。
【0050】
ここで、設計容積は、袋により封入することを意図している容積を言うものである。
【0051】
《包装袋の製造方法》
本発明の包装袋の製造方法は、以下の工程を含む:
熱可塑性樹脂及びSiO
2/Al
2O
3モル比が3.0未満の親水性ゼオライトを溶融混練して親水性マスターバッチを作製する工程、
熱可塑性樹脂及びSiO
2/Al
2O
3モル比が3.0以上の疎水性ゼオライトを溶融混練して疎水性マスターバッチを作製する工程、
親水性マスターバッチ及び疎水性マスターバッチを各々製膜して吸湿層及びガス吸着層を作製する工程、
吸湿層及びガス吸着層に第1の基材フィルム及び第2の基材フィルムをそれぞれ積層させて、吸湿積層フィルム及びガス吸着積層フィルムを作製する工程、並びに
吸湿フィルムとガス吸着フィルムとが対向するようにして吸湿積層フィルムとガス吸着積層フィルムとを配置し、そして対向している吸湿フィルム及びガス吸着フィルムの周縁を互いにヒートシールして袋状にする工程。
【0052】
(マスターバッチを作製する工程)
マスターバッチの作製は、熱可塑性樹脂及びゼオライトを溶融混練することにより行うことができる。熱可塑性樹脂としては、吸湿層に関して挙げた樹脂を使用することができる。
【0053】
(吸湿フィルム及びガス吸着フィルムを作製する工程)
吸湿フィルム及びガス吸着フィルムの作製は、親水性マスターバッチ及び疎水性マスターバッチを各々製膜することにより行うことができる。製膜方法としては、これに限られないが、インフレーション法、Tダイ法、カレンダー法、キャスティング法、プレス成形、押出成形又は射出成形等を挙げることができる。吸湿フィルム及びガス吸着フィルムがスキン層を有する場合は、共押出インフレーション法及び共押出Tダイ法等で製膜することができる。
【0054】
(吸湿積層フィルム及びガス吸着積層フィルムを作製する工程)
吸湿積層フィルム及びガス吸着積層フィルムを作製する工程は、吸湿フィルム及びガス吸着フィルムに第1の基材フィルム及び第2の基材フィルムをそれぞれ積層させることにより行うことができる。積層方法としては、これに限られないが、サンドラミネート法等の押出ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。好ましくは、押出しラミネート法を使用する。
【0055】
(袋状にする工程)
袋状にする工程は、吸湿フィルムとガス吸着フィルムとが対向するようにして吸湿積層フィルムとガス吸着積層フィルムとを配置し、そして対向している吸湿フィルム及びガス吸着フィルムの周縁を互いにヒートシールすることにより行うことができる。
【0056】
包装袋の形態としては、例えば四方シール袋、ガゼット袋、四面体袋等が挙げられる。
【実施例】
【0057】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0058】
〈ガス吸着積層フィルムAの作製〉
第2のゼオライト(疎水性ゼオライト、アブセンツ3000、米国UOP社、SiO
2/Al
2O
3比100.00以上)20質量%、及び低密度ポリエチレン(ペトロセン202、東ソー株式会社)を配合し、溶融混練法により押出機で疎水性マスターバッチを作製した。次いで、上記マスターバッチをガス吸着層用に、直鎖型低密度ポリエチレン(エボリューSP2520、株式会社プライムポリマー)をスキン層用にそれぞれ用い、インフレーション法により共押出して、ガス吸着層の両面にスキン層を有する3層構造のガス吸着フィルムを作製した。このフィルムの作製は、三層インフレーション成形機(TUL−600R、株式会社プラコー)を使用して、樹脂温度を、中間層及びスキン層ともに170℃とし、引取速度を10m/分として行った。
【0059】
次いで、このフィルムの一方のスキン層側にコロナ処理を施した。その後、PETフィルム(E5100、東洋紡株式会社、12μm)及びアルミニウム箔(合金アルミニウム箔、UACJ株式会社、9μm)を貼りあわせた基材フィルムのアルミニウム箔側と、当該コロナ処理面側とを対向させて押出しラミネート法で積層させて、ガス吸着積層フィルムAを作製した。ここで、押出しラミネート用の樹脂は、低密度ポリエチレン(サンテックLD L1850K、旭化成ケミカルズ株式会社)を用いた。積層は、サンドラミネーター(型式:TP45.45 製番P−46010、株式会社プラコー)を使用して、樹脂温度を300℃とし、かつ引取速度を30〜45m/minとして行った。
【0060】
〈吸湿積層フィルムB〜Gの作製〉
第2のゼオライトの代わりに第1のゼオライト(親水性ゼオライト、モレキュラーシーブ13X、ユニオン昭和株式会社、SiO
2/Al
2O
3比2.47)を表1に記載の含有量で使用したこと、及び各層の厚さを表1に示すように変更したことを除いてガス吸着積層フィルムAと同様にして、吸湿積層フィルムB〜Gを作製した。
【0061】
〈ゼオライト非含有積層フィルムHの作製〉
厚さ50μmの直鎖型低密度ポリエチレンのフィルムをガス吸着積層フィルムAに用いたものと同じ基材フィルムに積層させて、ゼオライトを含有していないゼオライト非含有積層フィルムHを作製した。
【0062】
【表1】
【0063】
A〜Hの積層フィルムを100mm×100mmに切り出し、シールの幅を10mmにして、表2に示す組み合わせで、比較例1〜4及び実施例1〜3の3方シール袋(1方が開口状態)を作製した。
【0064】
【表2】
【0065】
〈袋内湿度評価〉
比較例及び実施例の3方シール袋に、23℃及び50%RH(相対湿度)の環境下で温湿度データ集積装置(ハイグロクロン、株式会社KNラボラトリーズ)を入れ、そして内容積(設計容積)が約86mlの四面体型になるように残り1辺をシールして密封し、23℃50%RHの環境に4日間放置して、袋内の湿度変化を測定した。
【0066】
〈におい官能評価〉
比較例及び実施例の3方シール袋に、トリエチルアミン又はトルエン1μlを滴下し、内容積(設計容積)が約86mlの四面体になるように残り1辺をシールして密封し、40℃の恒温槽内に24時間放置し、そしてその後で、トリメチルアミン臭又はトルエン臭の有無を官能評価した。官能評価は3人で実施し、3人ともにおいがしなかったと評価したものを○とし、1人だけにおいがしたと評価したものを△、2人以上においがしたと評価したものを×とした。
【0067】
袋内湿度評価及びにおい官能評価の結果を表3にまとめる。ここで、表3において、「独立調節」は、水分とアウトガスの吸着量をそれぞれ独立して制御できるか否かを示したものである。これらを独立して制御できるものを○、そうでないものを×とした。この表3の「総合評価」では、袋内湿度を5〜25%RHに維持でき、におい低減効果があり、かつ独立調節の評価が○であるものを◎とし、袋内湿度が5〜25%RHに維持できないか、又はにおい低減効果がなく、かつ独立調節の評価が○であるものを○とし、袋内湿度が5〜25%RHに維持できないか、又はにおい低減効果がなく、かつ独立調節の評価が×であるものを△とし、袋内湿度が5〜25%RHに維持できず、におい低減効果がなく、かつ独立調節の評価が×であるものを×とした。
【0068】
【表3】
【0069】
表3から、比較例2及び3、並びに実施例4は吸湿効果及びアウトガス吸着効果は同等であるものの、第1のゼオライト及び第2のゼオライトを使用した実施例4は水分及びアウトガスの吸着量を独立して制御することができる点において比較例2及び3と比較して優れていることが理解される。更に、同じく親水性ゼオライト及び疎水性ゼオライトを使用した実施例1〜3の包装袋は、良好なアウトガス吸着効果を確保することができ、袋内を約5〜25%の湿度に維持でき、かつ水分及びアウトガスの吸着量を独立して制御することができることが理解される。
【0070】
実施例2は、同量の親水性ゼオライトを包装袋内に含有している比較例3と比較して、意外なことに適度な湿度に維持する能力が高い。理論に拘束されないが、疎水性ゼオライトが存在することによって、アウトガスが疎水性ゼオライトに優先的に吸着されるため、親水性ゼオライトが水分にのみ吸着能力を発揮できることが原因と考えられる。