特許第6584212号(P6584212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6584212ノズルプレートのレーザ加工方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584212
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ノズルプレートのレーザ加工方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/16 20060101AFI20190919BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20190919BHJP
   B23K 26/066 20140101ALI20190919BHJP
   B23K 26/03 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   B41J2/16 511
   B23K26/382
   B23K26/066
   B23K26/03
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-160249(P2015-160249)
(22)【出願日】2015年8月17日
(65)【公開番号】特開2017-39204(P2017-39204A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】315005037
【氏名又は名称】株式会社フォーサイトテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100180013
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 一範
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 健人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸一
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−129081(JP,A)
【文献】 特開2011−031282(JP,A)
【文献】 特開2008−012543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
B23K 26/03
B23K 26/066
B23K 26/382
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャンを繰り返す、移動中のステージの位置情報と同期して発振するパルスレーザ光及び縮小投影光学系により、マスク上の周期的な位置に配設された複数の開口からなる開口列パターンを、当該ステージに載置された被加工物に縮小投影し、複数且つ同一形状からなるノズル列を形成するレーザ加工方法であって、
前記開口列パターン内から選択された一以上の開口の近傍に各々配設されたモニタリング開口を、当該選択された開口とともに、同一の縮小投影光学系による同一パルスにて同時に被加工物の表面にモニタリングマークとして縮小投影加工する工程と、
前記スキャンにより多重に縮小投影された前記モニタリングマークを観察し、当該観察結果に基づいて、前記縮小投影光学系を事前調整する工程若しくは前記ノズル列の加工後の精度に関する等級情報をノズルプレートごとに決定する工程又はこれら両方の工程と、
を含むレーザ加工方法。
【請求項2】
前記開口列パターン内から選択された開口が二以上の場合であって、当該各開口の近傍に各々配設されたモニタリング開口は、当該各開口の中心から各々が相対的に同一の位置に配設されていることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記モニタリング開口は、前記縮小投影光学系の分解能以下の幅に縮小される幅であって、複数のレーザパルスによる多重縮小投影により前記モニタリングマークとして観察可能である幅からなる開口部を含むことを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記開口列パターンを構成する各開口の形状は、当該開口列の一端から他端に向けて変化することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記開口列パターンを構成する各開口の形状の変化は、所定の形状に達すると再び元の形状に戻るよう開口列の一端から他端に向けて変化することを特徴とする、請求項4に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
異なる開口列パターン又は異なるモニタリング開口が配設された二種以上のマスクを切り替えて加工することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記パルスレーザ光の発振波長は、400nm以下であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
被加工物の上方に覆設され、当該被加工物と共に移動するレーザ光遮蔽板により、1ノズルあたり照射されるレーザパルス数及び1モニタリングマークあたり照射されるレーザパルス数を、それぞれ均一にする工程を含むことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
スキャンを繰り返す、移動中のステージの位置情報と同期して発振するパルスレーザ光及び縮小投影光学系により、マスク上の周期的な位置に配設された複数の開口からなる開口列パターンを、当該ステージに載置された被加工物に縮小投影し、複数且つ同一形状からなるノズル列を形成するレーザ加工装置であって、
パルスレーザ発振器、縮小投影用のマスク、縮小投影光学系、被加工物の載置用ステージ、ステージコントローラ及び被加工物の観察用機器を含む構成からなり、
前記ステージコントローラは、前記ステージの位置情報に基づいて、前記パルスレーザ発振器に同期発振用トリガーを出力するステージコントローラであり、
前記マスクは、前記開口列パターン内から選択された一以上の開口に対し、当該各開口を含む開口列パターンとともに、同一の前記縮小光学系による同一パルスにて同時に照射される近傍に各々配設されたモニタリング開口を有する一、又は切り替え可能な二以上のマスクである、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項10】
前記開口列パターン内から選択された開口が二以上の場合であって、当該各開口の近傍に各々配設されたモニタリング開口は、当該各開口の中心から各々が相対的に同一の位置に配設されていることを特徴とする、請求項9に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記モニタリング開口は、前記縮小投影光学系の分解能以下の幅に縮小される幅であって、複数のレーザパルスによる多重縮小投影により前記モニタリングマークとして観察可能である幅からなる開口部を含み、且つ、前記観察用機器は、当該分解能以下の幅を表示可能な解像度を有することを特徴とする、請求項9又は10に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記開口列パターンを構成する各開口の形状は、当該開口列の一端から他端に向けて変化することを特徴とする、請求項9又は11のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
前記開口列パターンを構成する各開口の形状の変化は、所定の形状に達すると再び元の形状に戻るよう開口列の一端から他端に向けて変化することを特徴とする、請求項12に記載のレーザ加工装置。
【請求項14】
前記パルスレーザ光の発振波長は、400nm以下であることを特徴とする、請求項9乃至13のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項15】
1ノズルあたり照射されるレーザパルス数及び1モニタリングマークあたり照射されるレーザパルス数をそれぞれ均一にするために、被加工物の上方に覆設され当該被加工物と共に移動するレーザ光遮蔽板を、さらに有することを特徴とする請求項9乃至14のいずれかに記載のレーザ加工装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルプレートをレーザにより加工する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の同一形状のノズルを備えたノズルプレートの代表的なものにインクジェットプリンターのインク吐出用ノズルプレートがある。例えば、このノズルプレートの機能として、高精細且つ印刷ムラの無い印刷品質の向上、印刷領域の拡大、さらには印刷速度の向上が要求されている。こうした要求に応えるためには、インクの吐出量を微量化するためのノズル形状の微細化、インクの吐出方向を決定するノズルの入口・出口形状の同軸性の向上、及びノズル数の増大化に伴うノズルプレートの大型化に耐えうるこれら品質のノズル間ばらつきの抑制等が必要と言われている。
【0003】
また、このようなノズルプレートの品質向上に加え、ノズルプレートの製造コストを下げる要求にも応えるため、ノズルプレートの加工時間短縮を行う必要がある。こうした事情を背景に、レーザ光を用いたマスクパターン縮小投影法など多くの手法及び装置が開発され、これらにより様々なノズルプレートが製造されている。
【0004】
例えば、特許文献1においては、ノズルプレートの被加工面の平面度のばらつきによる被加工面の位置をレーザ加工の工程中に検知し、この検出された位置を用いてレーザ光の焦点位置と被加工面との相対距離を補正しながら加工することで、加工されたノズルの形状のばらつきを抑える効果を得ている。
【0005】
同様に、特許文献2においては、加工テーブルにセットされたワークに予め設けられた複数のアライメントマークの中心線方向をレーザ光による穿孔加工開始前に認識し、加工テーブルの移動すべき方向を決定し、これに応じて加工テーブルをレーザ光の光軸周りに回転し調整することで、ノズル支持部材とノズル形成部材が一体化した前記ワークに対する位置決め精度のよい加工を可能にしている。
【0006】
また、特許文献3においては、予めノズルプレートに短時間で検出しやすいアライメントマーク(位置合わせ目標)を設け、これを基準として加工用レーザ光の焦点位置と被加工物との相対位置を補正して加工することで、被加工物の位置合わせに要する時間を短縮する効果を得ている。
【0007】
特許文献4においては、加工の進行により変化するノズルの吐出口側の面積を常時測定し、予め設定されている目標とすべき面積と比較することで、ノズルの加工に用いるレーザ光の照射量を制御し、ノズル形状の精度を向上させる効果を得ている。
【0008】
特許文献5においては、加工ステージをレーザの繰り返し周波数と同期して移動させたまま、サイズが段階的に異なる複数の開口パターンからなるマスクを用いて、マスクパターン縮小投影法を用いたレーザ加工により、加工時間の大幅な短縮を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−231260号公報
【特許文献2】特開1993−124197号公報
【特許文献3】特開2000−202670号公報
【特許文献4】特開1999−179922号公報
【特許文献5】特開2011−031282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、予めアライメントマークを被加工物に施す工程を必要とする特許文献1や特許文献2に記載の技術を用いる場合、ノズルプレートの生産性の低下を招くことはもとより、実際に、アライメントマークに対し精度よく加工されたか否か、さらには、印刷ムラを引き起こす液体の吐出方向に対して生じた周期的な傾向がないか等の加工結果を確認するためには、ノズルプレート全数又はサンプリングによる流体の吐出試験が必要である。
【0011】
また、加工中にレーザ光の焦点位置と被加工面の相対距離を補正しながら加工する特許文献3に記載の技術は、ノズルプレートの大型化において生産性の向上や低コスト化には対応できない。また、この技術に、大型ノズルプレートの加工において加工時間の大幅な短縮効果が期待できる特許文献5に記載の技術と組み合わせると、加工時間の短縮効果が減殺されてしまうおそれがある。このことは、特許文献4に記載の技術との組み合わせにおいても同様である。
【0012】
そこで、本発明は、パルスレーザ光を用いたマスクパターン縮小投影法によるノズルプレートの形成において、事前の光学系のアライメント時間も含めた加工時間を大幅に短縮し、且つ、実際の加工結果を反映した等級管理用のモニタリングマークを加工と同時にノズルプレートに付すことで、吐出・噴射テスト工程の簡略化又は省略による生産性の向上及び等級管理を含む品質管理を実現する加工方法、加工装置及びこれらを用いて製造されたノズルプレートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、スキャンを繰り返す、移動中のステージの位置情報と同期して発振するパルスレーザ光及び縮小投影光学系により、マスク上の周期的な位置に配設された複数の開口からなる開口列パターンを、当該ステージに載置された被加工物に縮小投影し、複数且つ同一形状からなるノズル列を形成するレーザ加工方法であって、前記開口列パターン内から選択された一以上の開口の近傍に各々配設されたモニタリング開口を、当該選択された開口とともに、同一の縮小投影光学系による同一パルスにて同時に被加工物の表面にモニタリングマークとして縮小投影加工する工程と、前記スキャンにより多重に縮小投影された前記モニタリングマークを観察し、当該観察結果に基づいて、前記縮小投影光学系を事前調整する工程若しくは前記ノズル列の加工後の精度に関する等級情報をノズルプレートごとに決定する工程又はこれら両方の工程と、を含むレーザ加工方法である。
【0014】
ここで、「周期的な位置に配設された」とは、同一形状の開口が等間隔で配設された場合はもとより、複数の開口からなる開口群ごとに周期性をもって配設された場合や、周期ごとに形状が徐々に変化する開口や開口群が配設された場合も含む概念である。
【0015】
また、「同期して発振する」とは、ステージの移動速度又はその変動にかかわらず、移動するステージの位置情報に基づいて決定する信号を発振用の外部トリガーとしてパルスレーザ発振することをいう。また、ステージの移動方向を変更し往復又は反復加工する場合や、ステージのスキャン方向に並ぶ二以上のノズルプレートを連続して加工する場合等において、レーザパルスを照射しない時間は、当該外部トリガーの休止によりパルスレーザ発振を休止することも含む概念である。
【0016】
また、「開口の近傍」とは、開口列パターン内から選択した一以上の開口とモニタリング開口を同時に、同一のパルスレーザ光にて、同一の縮小投映光学系を用いて、被加工物上に縮小投映できる距離範囲をいい、当該選択した一以上の開口の内部を含む概念である。但し、開口の内部に設けられたモニタリング開口の場合は、モニタリング「開口」とはいうものの、実際には、パルスレーザ光を遮蔽するパターンとして捉えることができる。
【0017】
さらに、「等級情報」とは、被加工物に加工されたモニタリングマークの形状、場所、さらにはその個数等に基づいて予め定義された数値や記号であってもよいし、加工精度等の実測値そのものであってもよい。また、その等級の数や種類は被加工物の用途に応じて決定されていれば足りる。
【0018】
第2の発明は、第1の発明において前記開口列パターン内から選択された開口が二以上の場合であって、当該各開口の近傍に各々配設されたモニタリング開口が、当該各開口の中心から各々が相対的に同一の位置に配設されていることを特徴とする。
【0019】
すなわち、モニタリング開口が二以上の場合、それぞれのモニタリング開口が重なり合って被加工物上に縮小投映加工されることを意味する。
【0020】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記モニタリング開口が前記縮小投影光学系の分解能以下の幅に縮小される幅であって、複数のレーザパルスによる多重縮小投影により前記モニタリングマークとして観察可能である幅からなる開口部を含むことを特徴とする。
【0021】
第4の発明は、第1乃至第3の発明において、前記開口列パターンを構成する各開口の形状が、当該開口列の一端から他端に向けて変化することを特徴とする。
【0022】
第5の発明は、第4の発明において、前記開口列パターンを構成する各開口の形状の変化が、所定の形状に達すると再び元の形状に戻るよう開口列の一端から他端に向けて変化することを特徴とする。
【0023】
ここで、所定の形状に達すると再び形状が元に戻るように変化するとは、一例として、円形をなす各開口の形状が開口列の一端から他端に向けて大中小小中大と変化する態様をいう。
【0024】
さらに、当該変化は、必ずしも一定の割合で相似的又は段階的に変化するものに限らず、ノズルプレートの使用目的に応じて変化の割合や開口形状そのものを自由に設計し最適化することができる。
【0025】
第6の発明は、第1乃至第5の発明において、異なる開口列パターン又は異なるモニタリング開口が配設された二種以上のマスクを切り替えて加工することを特徴とする。
【0026】
第7の発明は、第1乃至第6の発明において、前記パルスレーザの発振波長が、400nm以下であることを特徴とする。
【0027】
第8の発明は、第1乃至第7の発明において、被加工物の上方に覆設され、当該被加工物と共に移動するレーザ光遮蔽板により、1ノズルあたり照射されるレーザパルス数及び1モニタリングマークあたり照射されるレーザパルス数を、それぞれ均一にする工程をさらに含むことを特徴とする。
【0028】
第9の発明は、スキャンを繰り返す、移動中のステージの位置情報と同期して発振するパルスレーザ光及び縮小投影光学系により、マスク上の周期的な位置に配設された複数の開口からなる開口列パターンを、当該ステージに載置された被加工物に縮小投影し、複数且つ同一形状からなるノズル列を形成するレーザ加工装置であって、パルスレーザ発振器、縮小投影用のマスク、縮小投影光学系、被加工物の載置用ステージ、ステージコントローラ及び被加工物の観察用機器を含む構成からなり、前記ステージコントローラは、前記ステージの位置情報に基づいて、前記パルスレーザ発振器に同期発振用トリガーを出力するステージコントローラであり、前記マスクは前記開口列パターン内から選択された一以上の開口に対し、当該各開口を含む開口列パターンとともに、同一の前記縮小光学系による同一パルスにて同時に照射される近傍に各々配設されたモニタリング開口を有する一、又は切り替え可能な二以上のマスクであることを特徴とするレーザ加工装置である。
【0029】
第10の発明は、第9の発明において前記開口列パターン内から選択された開口が二以上の場合であって、当該各開口の近傍に各々配設されたモニタリング開口が、当該各開口の中心から各々が相対的に同一の位置に配設されていることを特徴とする。
【0030】
第11の発明は、第9又は第10の発明において、前記モニタリング開口が前記縮小投影光学系の分解能以下の幅に縮小される幅であって、複数のレーザパルスによる多重縮小投影により前記モニタリングマークとして観察可能である幅からなる開口部を含み、且つ、前記観察用機器が当該分解能以下の幅を表示可能な解像度を有することを特徴とする。
【0031】
第12の発明は、第9乃至第11の発明において、前記開口列パターンを構成する各開口の形状が当該開口列の一端から他端に向けて変化することを特徴とする。
【0032】
第13の発明は、第12の発明において、前記開口列パターンを構成する各開口の形状の変化が、所定の形状に達すると再び元の形状に戻るよう開口列の一端から他端に向けて変化することを特徴とする。
【0033】
第14の発明は、第9乃至第13の発明において、前記パルスレーザの発振波長が400nm以下であることを特徴とする。
【0034】
第15の発明は、第9乃至第14の発明において、1ノズルあたり照射されるレーザパルス数及び1モニタリングマークあたり照射されるレーザパルス数をそれぞれ均一にするために、被加工物の上方に覆設され当該被加工物と共に移動するレーザ光遮蔽板を、さらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
第1及び第9の発明によれば、品質・等級管理用のモニタリングマーク付きノズルプレートの加工を可能にし、吐出検査工程の省略、ひいては製造コストの削減が可能となる。また、実際の吐出試験を経ることなく、加工前における縮小投影光学系のアライメントや、加工精度に悪影響を及ぼす要因の早期発見が可能となる。
【0036】
第2又は第10の発明によれば、ノズルが周期的に配設されている方向と、被加工物を載置したステージの移動方向を精度よく一致させた加工が可能となる。第3又は第11の発明によれば縮小投影光学系の分解能に近い精度の加工が、第4、第5、第12又は第13の発明によればノズルのテーパー角度の調整が、第6の発明によれば、より複雑な形状を有するノズルの加工が、第7又は第14の発明によれば被加工物の材質に適したフォトンエネルギーによるアブレーション加工が、それぞれ可能になる。また、第8及び第15の発明によれば不要なパルスレーザ光の照射痕を回避できることはもとより、ノズル形状のノズル間均一性の向上や加工時間の短縮にも効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】実施例1にて穿孔加工されたノズルプレートを示す。
図2】同一形状の開口列及び単純クロスヘア形状のモニタリング開口を有するマスクパターンの例を示す。
図3】同一形状の開口列及び分離クロスヘア形状のモニタリング開口を有するマスクパターンの例を示す。
図4】開口ごとに形状が変化する開口列及びモニタリング開口を有する多段マスクパターンの例を示す。
図5】開口群ごとに形状が変化する開口列及びモニタリング開口を有する多段マスクパターンの例を示す。
図6図4の開口形状の変化が、大中小小中大と変化する開口列及びモニタリング開口を有する多段マスクパターンの例を示す。
図7】モニタリング開口の形状の例を示す。
図8】レーザ加工装置の概略を示す。
図9図2のマスクを用いた場合におけるパルスレーザ光の照射とステージの同期の様子を模擬的に示す。
図10図4の多段マスクを用いた場合におけるパルスレーザ光の照射とステージの同期の様子を模擬的に示す。
図11】実施例1におけるモニタリングマークの加工例を模擬的に示す。
図12】実施例2におけるモニタリングマークの加工例を模擬的に示す。
図13】実施例2におけるマスク切り替えによるモニタリングマークの加工痕を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施例について図を用いて説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施態様に限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
本実施例1に用いるレーザ加工装置の概略を図8に示す。その概略は、パルスレーザ光源6並びに反射ミラー、テレスコープ、ホモジナイザー、マスク1及びZ軸ステージに設置されたテレセントリックレンズ等からなる設計縮小率を1/5とする縮小投影光学系81、観察用カメラ及びその導入光学素子からなる観察系82、被加工物を載置する載置台、X軸、Y軸及びθ軸用ステージからなるステージ系91、前記マスク1の位置決めに用いるX軸、Y軸、Z軸、θ軸及びチルト用ステージ系92並びにこれらの全て又は一部を支持及び除振する架台7から構成される。
【0040】
本実施例1において、パルスレーザ光源6は発振波長を248nmとするエキシマレーザであるが、被加工物に対し熱加工又はアブレーション加工が可能なパルスレーザ光源であればこれに限られない。パルスレーザ光のパルス幅についても、当該加工可能性を有すれば特に限定はない。
【0041】
縮小投影レンズには、透過型像側テレセントリックレンズを用いているが、要求される加工精度を満たす仕様であればこれに限定されない。また、全ての光学素子は、パルスレーザ光源6の波長、パルス幅及びパルスエネルギーに最適化されている。
【0042】
本実施例1において説明する加工は、図1に示す500個のノズル112からなるノズル列を有するインクジェットプリンター用のノズルプレートの穿孔加工である。ノズルプレートの材質はポリイミドである。次の表1に、このノズルプレートに関する詳細なパラメータを示す。
【0043】
なお、本実施例1は、インクジェットプリンター用のノズルプレートのほか、所定の形状を有するノズルが一定の周期で配列されたノズル列の穿孔加工にも用いることができる。さらに、ノズルプレートへ照射するパルスレーザ光のショット数を制御することにより、均一の深さを有する非貫通の穴掘加工にも応用可能である。
【0044】
【表1】
【0045】
図2において、本実施例1に用いるマスク1に形成された開口12からなる開口列パターンを示す。本実施例1は、液体であるインクの吐出に用いられるノズル列の穿孔加工であるため、その開口12の形状は一般的な円形である。しかし、特許文献5の記載にあるように、光源とするエキシマレーザの発散角が縦横で異なることを考慮して楕円形状の開口にしたり、前述のようにノズルプレートを他の用途に用いる場合は、その用途に応じた形状として楕円、矩形又は多角形でも構わない。なお、マスク1は、その位置調整のためX軸、Y軸、Z軸、θ軸及びチルトステージから構成されるステージ系92に設置されている。次の表2において、マスク1、開口12及びモニタリング開口11に関する詳細なパラメータを示す。
【0046】
【表2】
【0047】
ここで、開口12は、マスク1の母材上に蒸着されたアルミメッキにより40個描画・配設されており、アルミメッキされた部分13はパルスレーザ光を遮蔽し、開口部分はパルスレーザ光を通過させる。開口パターンの描画・配設方法に限定はなく、さらにその母材や遮蔽部分の材質は、加工に用いるパルスレーザ光の波長や配設方法に応じて適宜選択されていれば足りる。例えば、遮蔽部分の材質は、本実施例1にて用いるアルミメッキに代えて、波長248nmのレーザ光を透過しないクロムメッキや誘電体多層膜でも構わない。
【0048】
同じく図2において、開口12とモニタリング開口11との位置関係を示す。モニタリング開口11は、開口列パターンの両端から選択された二つの開口12の近傍にそれぞれ配設されたクロスヘア形状である。その中心位置は、当該開口12の中心からMAx=500μm、MAy=500μmの距離であり、対となる開口12に対し各々が相対的に同一の位置に配設されている。なお、この距離は、モニタリングマークがノズルの吐出性能又はノズルの構造上影響を与えない距離でなければならない。
【0049】
モニタリング開口11を構成する開口の最小幅は、用いられる縮小投影光学系の分解能以下の幅に縮小される幅であって、複数のレーザパルスによる多重縮小投影により前記モニタリングマークとして観察可能である幅で設計するのが望ましい。本実施例1においてはクロスヘアの開口最小幅を3μmにて設計した。なお、この数値は、要求されるノズルの加工精度が達成されたか否かの判定を、被加工物上に施されたモニタリングマーク111の観察によって判断可能な数値である必要があり、具体的には前記のとおり光学系の分解能以下の値において経験的に決定される。
【0050】
ところで、本実施例1と異なり、モニタリング開口の位置が、対となる各々の開口と相対的に同一の距離に配設されていない場合、例えば、図2において左端の開口に対してはその左上の位置に、右端の開口に対してはその右上の位置にそれぞれ配設されている場合、このモニタリングマークを用いることで可能となるアライメント対象や品質管理方法は限定される。
【0051】
また、加工が終了した被加工物上にノズル列以外のモニタリングマークが加工されていることを忌避する応用においては、本実施例1と異なり、モニタリング開口11を前記選択された二つの開口の内側にそれぞれ設けることも可能である。但し、この場合の本発明の効果は、加工前における縮小投影光学系のアライメントや、加工精度に悪影響を及ぼす要因の早期発見を可能にするにとどまり、品質・等級管理用のモニタリングマーク付きノズルプレートの製造はできない。
【0052】
図7において、モニタリング開口11の形状の例を示す。モニタリング開口11の形状には、本実施例1において用いた中心部が分離したすクロスヘア62、その分離部分に収まる小さいクロスヘア63、単純なクロスヘアの61、その他L字形の64や65など様々であるが、これらに限定されない。なお、図7においては、クロスヘア66を除き、便宜のため、斜線をレーザ光を遮蔽する部分ではなく開口部に施している。
【0053】
また、モニタリング開口11の形状は、被加工物の表面に縮小投映されたモニタリングマークの位置ズレやにじみ、二重投映、太り等の観察結果により、光学系の事前のアライメントや定期調整において、XYZ及びθのうちどの軸を調整したらよいかの判断がしやすい形状が望ましい。さらに、ステージの位置とパルスレーザ光の発振タイミングの同期異常、ひいては、ステージ自体の異常を検知できる形状が望ましい。具体的には、少なくともステージの移動方向(X軸)と相対的に並行な開口とこれと直行する開口とを含む形状が望ましい。図7に示すいずれのモニタリング開口の形状もこれを満たす。
【0054】
参考として、モニタリング開口の開口幅の違いによるモニタリングマークの様子の違いは、例えば、後出の実施例2において説明する図13において確認できる。そこでは、一のノズルの上側に20ショットのパルスレーザ光にて縮小率が1/5の縮小投影光学系を用いて加工された5つのモニタリングマークが撮影されており、その加工線幅は、左から右に0.6μm、0.8μm、1.0μm、1.2μm、1.4μmの順である。また、それぞれに対応するモニタリング開口の幅は、同じく左から右に向かって、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmの順である。
【0055】
観察系82を構成するモニタリングマークの観察手段として、CCDカメラをレーザ加工装置の筐体内に配置しているが、カメラの種類はこれに限定されない。また、これらに代えて、筐体外の卓上顕微鏡等によりモニタリングマークを観察する構成とすることも可能である。ここで、CCDカメラとモニターの組み合わせは、要求される加工精度が達成できているか否かを判断できる解像度を有する必要がある。本実施例1においては、ピクセル数が1624×1234、ピクセルサイズが4.4μm×4.4μmのCCDカメラの画像を、解像度が1280×1024、画素ピッチが264μm×264μmのモニターに20倍に拡大して観察した。なお、モニタリングマークをコンピュータソフトで画像処理し、縮小投影光学系を構成する光学素子等の位置調整にフィードバックをかけることで、縮小投影光学系の調整を自動又は半自動にすることも可能である。
【0056】
ステージ系91は、水平面と並行に設置された被加工物を載置するための吸引機構付の載置台と、その下に位置するX軸、Y軸ステージ及び光軸周りに回転するθ軸ステージから構成され、光軸方向であるZ軸の調整については、テレセントリックレンズをこのZ軸用ステージに設置することで実現している。本実施例1における各々のステージのストロークや分解能は次の表3のとおりである。但し、要求されるノズルプレートのサイズやノズル形状の精度等によりその仕様や構成は適宜、選択し組み合わせることができる。
【0057】
なお、スキャン加工におけるステージの位置情報をステージコントローラに出力するリニアエンコーダーをX軸及びY軸又はその両軸のステージに搭載する。本実施例1においては、ステージのスキャン方向を図7の紙面に垂直な方向(表面から裏面の方向)をX軸としている。
【0058】
【表3】
【0059】
以上の装置構成により、縮小投影光学系等の事前のアライメントのための加工を行う。はじめに、図2に示すマスク1に配設された開口12からなる開口列とその両端に配設されたモニタリング開口11をカバーするように成形されたパルスレーザ光を1から数ショット用いて、載置台上に吸着され固定されたポリイミドシート100に前記開口列と前記二つのモニタリング開口11を縮小投影し、これらの加工痕をつける。なお、以下の説明ではショット数が少ないため穿孔加工に至っていない開口12の縮小投影加工痕のことも、便宜上ノズル列又はノズル112という。
【0060】
次に、ノズル列の両端に位置するモニタリングマーク111間の距離を観察系82により計測し、その距離がマスク1に配設されたモニタリング開口11間の距離MALに対し、正確に縮小率の設計値である1/5倍になっているかを確認する。そして、これと異なる場合は、前記加工を繰り返し正確に1/5倍となるよう縮小投影光学系7をアライメントする。このとき、二つのモニタリングマークを結ぶ直線と、モニター上において基準となるX軸が角度を持つ場合、これを可能な範囲でゼロにすべくマスクのθステージを調整する。
【0061】
より精密に倍率を調整する必要がある場合やマスク1にモニタリング開口11を一つしか配設していない場合には、次に記載するスキャン加工を行い、前記加工の場合よりも長いモニタリングマーク111間の距離MMLを測定し同様の調整を行う。
【0062】
次に、X軸ステージを移動しながら行うアライメントのためのスキャン加工を1回行う。X軸ステージの移動速度は100mm/sとした。
【0063】
X軸ステージの位置情報に基づいたリニアエンコーダーからの信号を基準として、パルスレーザ光の発振用外部トリガーをパルスレーザ光源5に出力し、前記X軸ステージと同期したパルスレーザ光を発振させる。なお、必ずしもスキャンを1回に限定する必要はないが、回数が多すぎると後述するモニタリングマークのズレの判別が困難になる場合があるので注意する。
【0064】
前記外部トリガーのタイミングの決定においては、主に、X軸ステージのリニアエンコーダーからステージコントローラへの信号出力からパルスレーザ光源5への外部トリガー出力までの間、及び、パルスレーザ光源5への当該外部トリガーの出力から実際のパルスレーザ光の発振までの間に、合計μsオーダーの遅延時間が発生する点に注意する。したがって、その遅延時間にX軸ステージが移動する距離を考慮に入れて外部トリガーのタイミングを調整する。すなわち、本実施例1の場合は、加工すべき位置よりも0.1μmオーダー手前の位置情報を基準に、外部トリガーのタイミングを決定する。
【0065】
次に、前記スキャン加工により各ノズル13の近傍に、それぞれ1スキャンあたり2回ずつ加工されたモニタリングマーク111の重なり具合を確認する。ここで、2回加工されたモニタリングマーク111とは、1回のスキャンにおいて、その1回目が図2に示すマスク1上の左端のモニタリング開口11が縮小投影されたモニタリングマーク111であり、2回目が同じく右端のモニタリング開口11が縮小投影されたものである。図9において、本実施例1におけるスキャン加工過程の様子を疑似的に描写するが、その左側の列に示す一連の加工が、1回の前記スキャン加工に対応する。
【0066】
図11において、前記スキャン加工により形成されたノズル列及びモニタリングマーク111の様子を模擬的に示す。二つのモニタリングマーク111の重なり具合において、図11中のΔxがゼロでない場合、X軸ステージの移動とパルスレーザ光が正確に同期していない可能性がある。そこで、このΔxをゼロにすべく前記外部トリガーのタイミングをさらに微調整する。なお、前述のとおり、モニタリング開口11の開口幅を縮小投影光学系の分解能以下の幅に縮小される幅であって、複数のレーザパルスによる多重縮小投影により前記モニタリングマークとして観察可能である幅にデザインすることで、図11に示すとおり、ノズル112自体の加工位置ズレを観察するよりも、モニタリングマークのΔx及びΔyを観察するほうが容易であることがわかる。
【0067】
一方、Δyがゼロでない場合、X軸ステージの移動方向とノズル列の軸、ひいてはマスク1の開口列の軸が互いに並行でない可能性がある。すなわち、光軸回りに互いに角度をもっている蓋然性が高い。そこで、このΔyをゼロにすべく、載置台の下のθ軸ステージ等を用いて当該角度をゼロにすべく適宜調整する。なお、モニタリング開口11が一つしか配設されていない場合は、前記調整に資するΔx及びΔyは、このスキャン加工により確認することはできない。
【0068】
また、Δx又はΔyが一定ではなく、ノズル112ごとに不規則に変動する場合は、X軸ステージの直進性に異常が発生している可能性を疑う。また周期的に変動する場合は、パルスレーザの照射により、マスク1の熱膨張によるモニタリング開口11のピッチPAが経時的に変化している可能性がある。そこで、マスク1への余分な熱量の投入を最小限に抑えるため、マスク1に照射されるパルスレーザ光の形状を必要最小限の面積となるように調整する。
【0069】
さらに、前記周期的変動が、前記熱量制限により解消できない場合には、スキャン加工の方向、すなわち常に+X軸方向へスキャンするのではなく、スキャンの復路時(−X軸方向へ)のスキャンにおいても加工する様に加工方法を検討するのもよい。
【0070】
なお、モニタリング開口11を、開口列の両端のほか中央位置等にも加え計三つ以上配設する場合、これらによるモニタリングマーク111を観察することは当該マスク1の熱膨張の詳細な解析に有効である。しかし、その配設数を不必要に増やすことは、モニタリングマーク111の加工深さの増加を招くため、インク吐出への影響について留意する必要がある。
【0071】
以上の縮小投影光学系等の事前のアライメントの後、ノズル列の穿孔加工に移行する。本実施例1の場合、次の表4に記載するパラメータによりノズル列の穿孔加工を行った。
【0072】
【表4】
【0073】
なお、1ノズルあたりに照射されるパルスレーザ光のショット数を均一にするため、ポリイミドシート100の上面に図1に示すとおりレーザ光遮蔽板101を覆設した。この遮蔽板は、本実施例1のようにポリイミドシート100上に接触するように覆設してもよいし、接触しないように、例えばポリイミドシート100を吸着し固定する載置台に固定してもよい。
【0074】
図9において、本実施例1におけるパルスレーザ光の照射とX軸ステージの同期加工の様子を模擬的に示す。但し、ここでは簡易のため三つの開口からなる開口列及びその両端にモニタリングマークを配設したマスクを用い、2回のスキャンにより6つのノズルを計6ショットにて穿孔加工した様子を示している。さらに、パルスレーザ光の照射により加工されるノズルの部分を黒色で表し、それより前のパルスレーザ光の照射により既に加工されている部分を灰色で表した。一方、モニタリングマークについては、理解を容易にするため、左端に位置するモニタリング開口によるモニタリングマークを黒色で、同じく右端に位置するものを灰色で表した。
【0075】
本実施例1においては、1シートあたり16枚のノズルプレートを各プレートあたり10回のスキャン加工により穿孔加工を行った。
【0076】
その後、加工軸とはオフアクシスの観察系82により各ノズルプレートのモニタリングマークを観察し、その結果と予め定めた次の表5を一例とした対応表に基づき、16枚のノズルプレートの各々に個別の等級を決定する。
【0077】
【表5】
【0078】
なお、モニタリングマークの状態と等級の対応表を作成する際には、一度、実際にインクの吐出試験を行い、その印刷結果に対し意図する等級と異なる等級が定義づけられていないかを確認するとよい。
【実施例2】
【0079】
本実施例2においては、本発明を実施するための形態として、特にインクジェットプリンター用のノズルプレートに一般的に要求されるテーパー付のノズル列の穿孔加工を説明する。なお、ここでテーパーとは、インクの供給側のノズルの径に比べ、吐出側の径が小さくなっているものをいう。
【0080】
本実施例2に用いるレーザ加工装置は、実施例1と同様、図8に示す概略のとおりである。但し、その構成のうちマスクは図3に示すマスク2と図4に示す多段マスク3を切り替えて使用するため、両マスクは同一のX軸、Y軸、Z軸、θ軸及びチルトステージからなるステージ系92上に配置される構成となっている。なお、各軸のストロークや分解能は、開口列のサイズ、縮小投影光学系の設計倍率及び要求されるノズル形状の加工精度等により適宜決定される。
【0081】
図3及び4において、本実施例2に用いるマスク2及び多段マスク3に配設された開口22及び23からなる開口列パターンを示す。本実施例2は、液体であるインクの吐出に用いられるノズル列の穿孔加工であるため、その開口22及び32の形状は一般的な円形である。しかし、実施例1と同様に、他の用途に用いる場合はその用途に応じて楕円、矩形又は多角形でも構わない。マスク2及び多段マスク3の詳細なパラメータを次の表6及び7に示す。
【0082】
【表6】
【0083】
【表7】
【0084】
マスク2又は多段マスク3におけるモニタリング開口21又は31は、開口列パターンの両端から選択された二つの開口22又は32の近傍に各々配設された中央部分が分離したクロスヘアであり、その形状は図7における形状62及び63である。その中心位置は、マスク2及び多段マスク3ともに各開口の中心からMAx=500μm、MAy=500μmの距離であり、対となる開口に対し各々相対的に同一の位置に配設されている。
【0085】
このように、マスク2と多段マスク3のモニタリング開口の形状を異なるものとした理由は、後述するマスクの切り替えによる位置ズレを、観察系により判断しやすくするためである。
【0086】
本実施例2において説明するノズル列の穿孔加工は、はじめに多段マスク3を用いたスキャン加工により、テーパーを有するノズル列の穿孔加工をインク供給側であるポリイミドシートの上穴径を決定する目的で行い、次に、マスクを切り替えた後、マスク2を用いたスキャン加工により、同じく下穴径を決定する目的で穿孔加工を行うというものである。両穿孔加工は、多段マスク3によるノズル列と、マスク2によるノズル列のパターンが一致するように位置決めされた状態で行われる。
【0087】
そこで、前記加工の前には、縮小投影光学系7のアライメントを前記マスクの切り替えも含めておこなう。そのアライメント方法及びその手順は、実施例1におけるそれと同様である。すなわち、多段マスク3を用いてアライメントを行い、その後マスク2に切り替え、多段マスク3において付されたモニタリングマークと同一の中心位置にマスク2によるモニタリングマークを付す。そして、観察系82によりその互いの位置にズレが生じていないことを確認する。
【0088】
ここで、マスクの法線と光軸とが一致せず角度がある場合は、マスク切り替えにより縮小投影レンズとマスク1間の距離が変動し、これによる焦点位置の異常を示すモニタリングマークの線の太りが観察されることが予想される。また、多段マスク3をマスク2に切り替える際の位置決めが正確でない場合、多段マスク3によるモニタリングマーク231とマスク2によるモニタリングマーク221との間で、図11において模擬的に示すような、ΔxやΔyが観察されることが予想される。
【0089】
本実施例2は、インクジェットプリンター用のノズルプレートの穿孔加工であるが、印刷の出来栄えを大きく左右する印刷時の筋状のムラの原因となりうる症状として、モニタリングマークのΔx又はΔyが一定ではなく、ノズル222/232ごとに周期的に変動する場合がある。そのような場合には、実施例1にて記載する調整方法のほか、マスクの開口形状やその変化の仕方を調整するのも一案である。
【0090】
具体的には、図6に示すような開口形状が開口列の一端から他端に向けて大中小小中大の順に変化する多段マスク5がその一例である。また、開口形状については、全てが真円であるもののほか、特許文献5に記載の楕円形状を開口列パターンの中に有するものも用いることが可能である。
【0091】
図13において、多段マスク3による10回のスキャン加工後、マスク2に切り替えて20回スキャン加工したノズル列中の一のノズルを、当該ノズルの下側に加工されたモニタリングマークと共に示す。(なお、ノズルの上部についたモニタリングマークは条件の検討に用いたものであって、本実施例2における説明とは無関係である。)
【0092】
ここでは、多段マスク3によるモニタリングマークとマスク2によるモニタリングマークの位置ズレが意図的に生じるよう両マスクの切り替えを行った。模擬的には、図7に例示するモニタリング開口形状63(小さいクロスヘア)が縮小投影加工された、図12におけるモニタリングマーク231と、同じくモニタリング開口形状62(中央分離型クロスヘア)によるモニタリングマーク221の位置ズレであって、ΔmxとΔmyにて示す。そして、図13におけるそれらの値は、いずれも0.5μmである。
【0093】
なお、ノズルの下部に複数のモニタリングマーク221及び231が加工されているのは、各モニタリング開口の開口幅の最適化を図るためにマスク上に複数の開口幅を持つモニタリング開口を配設したためであり、マスク上のモニタリング開口幅として、左から3μm、4μm、5μm、6μm、7μmに対応している。
【0094】
多段マスク3とマスク2を再び切り替えて、前記アライメントを繰り返すことで、アライメント異常を示すモニタリングマーク231及び221の観察結果がノズル形状に要求される加工精度に照らし許容できる範囲内に収まったことを確認する。その後、ノズル列の穿孔加工に移行する。なお、実際のノズル列の穿孔加工においては、その生産性を考慮し、多段マスク3をマスク2に切り替える際に都度アライメントは行わず、これらのマスク切り替え用のステージ系92の移動量においてオフセットにより補正するに留めるのがよい。
【0095】
以上により、テーパー付ノズル列の穿孔加工がなされる。穿孔加工後のモニタリングマークの観察による、等級の決定については、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0096】
本実施例3においては、三つのノズルからなるノズル列がX軸方向に対し一定の角度をもって、X軸方向に周期的に配設されたノズルプレートの穿孔加工の概略を説明する。
【0097】
本実施例3に用いるレーザ加工装置は、実施例2と同様である。但し、切り替えるマスクは、図5に示す多段マスク4と、図示は省略するが、当該多段マスク4に配設された開口と同数且つ同一の位置関係にある、開口径が全て同一のマスクとを切り替えて使用する装置構成とする。
【0098】
その他のアライメント工程及び穿孔加工の工程は、実施例2と同様である。すなわち、前記三つのノズルを一つのノズルと置き換えれば、これらの工程は実施例2と全く同一である。図10において、本実施例3の図5の多段マスク4を用いて行うパルスレーザ光の照射とステージの同期加工の様子を模擬的に示す。
【産業上の利用可能性】
【0099】
例えば、インクジェットプリンター用のインク吐出ノズルプレートの高精細化、高生産性、低コスト及びその品質の等級管理に利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1、2 マスク
3、4、5 多段マスク
11、21、31、41、51 モニタリング開口
12、22、32、42、52 ノズル開口
6 パルスレーザ光源
7 架台
81 縮小投影光学系
82 観察系
91 被加工物移動用ステージ系
92 マスク移動用ステージ系
100、200 ポリイミドシート
101 レーザ遮蔽板
111、221、231 モニタリングマーク
112、222、232 ノズル

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13