【実施例1】
【0039】
本実施例1に用いるレーザ加工装置の概略を
図8に示す。その概略は、パルスレーザ光源6並びに反射ミラー、テレスコープ、ホモジナイザー、マスク1及びZ軸ステージに設置されたテレセントリックレンズ等からなる設計縮小率を1/5とする縮小投影光学系81、観察用カメラ及びその導入光学素子からなる観察系82、被加工物を載置する載置台、X軸、Y軸及びθ軸用ステージからなるステージ系91、前記マスク1の位置決めに用いるX軸、Y軸、Z軸、θ軸及びチルト用ステージ系92並びにこれらの全て又は一部を支持及び除振する架台7から構成される。
【0040】
本実施例1において、パルスレーザ光源6は発振波長を248nmとするエキシマレーザであるが、被加工物に対し熱加工又はアブレーション加工が可能なパルスレーザ光源であればこれに限られない。パルスレーザ光のパルス幅についても、当該加工可能性を有すれば特に限定はない。
【0041】
縮小投影レンズには、透過型像側テレセントリックレンズを用いているが、要求される加工精度を満たす仕様であればこれに限定されない。また、全ての光学素子は、パルスレーザ光源6の波長、パルス幅及びパルスエネルギーに最適化されている。
【0042】
本実施例1において説明する加工は、
図1に示す500個のノズル112からなるノズル列を有するインクジェットプリンター用のノズルプレートの穿孔加工である。ノズルプレートの材質はポリイミドである。次の表1に、このノズルプレートに関する詳細なパラメータを示す。
【0043】
なお、本実施例1は、インクジェットプリンター用のノズルプレートのほか、所定の形状を有するノズルが一定の周期で配列されたノズル列の穿孔加工にも用いることができる。さらに、ノズルプレートへ照射するパルスレーザ光のショット数を制御することにより、均一の深さを有する非貫通の穴掘加工にも応用可能である。
【0044】
【表1】
【0045】
図2において、本実施例1に用いるマスク1に形成された開口12からなる開口列パターンを示す。本実施例1は、液体であるインクの吐出に用いられるノズル列の穿孔加工であるため、その開口12の形状は一般的な円形である。しかし、特許文献5の記載にあるように、光源とするエキシマレーザの発散角が縦横で異なることを考慮して楕円形状の開口にしたり、前述のようにノズルプレートを他の用途に用いる場合は、その用途に応じた形状として楕円、矩形又は多角形でも構わない。なお、マスク1は、その位置調整のためX軸、Y軸、Z軸、θ軸及びチルトステージから構成されるステージ系92に設置されている。次の表2において、マスク1、開口12及びモニタリング開口11に関する詳細なパラメータを示す。
【0046】
【表2】
【0047】
ここで、開口12は、マスク1の母材上に蒸着されたアルミメッキにより40個描画・配設されており、アルミメッキされた部分13はパルスレーザ光を遮蔽し、開口部分はパルスレーザ光を通過させる。開口パターンの描画・配設方法に限定はなく、さらにその母材や遮蔽部分の材質は、加工に用いるパルスレーザ光の波長や配設方法に応じて適宜選択されていれば足りる。例えば、遮蔽部分の材質は、本実施例1にて用いるアルミメッキに代えて、波長248nmのレーザ光を透過しないクロムメッキや誘電体多層膜でも構わない。
【0048】
同じく
図2において、開口12とモニタリング開口11との位置関係を示す。モニタリング開口11は、開口列パターンの両端から選択された二つの開口12の近傍にそれぞれ配設されたクロスヘア形状である。その中心位置は、当該開口12の中心からMAx=500μm、MAy=500μmの距離であり、対となる開口12に対し各々が相対的に同一の位置に配設されている。なお、この距離は、モニタリングマークがノズルの吐出性能又はノズルの構造上影響を与えない距離でなければならない。
【0049】
モニタリング開口11を構成する開口の最小幅は、用いられる縮小投影光学系の分解能以下
の幅に縮小される幅であって、複数のレーザパルスによる多重縮小投影により前記モニタリングマークとして観察可能である幅で設計するのが望ましい。本実施例1においてはクロスヘアの開口最小幅を3μmにて設計した。なお、この数値は、要求されるノズルの加工精度が達成されたか否かの判定を、被加工物上に施されたモニタリングマーク111の観察によって判断可能な数値である必要があり、具体的には前記のとおり光学系の分解能以下の値において経験的に決定される。
【0050】
ところで、本実施例1と異なり、モニタリング開口の位置が、対となる各々の開口と相対的に同一の距離に配設されていない場合、例えば、
図2において左端の開口に対してはその左上の位置に、右端の開口に対してはその右上の位置にそれぞれ配設されている場合、このモニタリングマークを用いることで可能となるアライメント対象や品質管理方法は限定される。
【0051】
また、加工が終了した被加工物上にノズル列以外のモニタリングマークが加工されていることを忌避する応用においては、本実施例1と異なり、モニタリング開口11を前記選択された二つの開口の内側にそれぞれ設けることも可能である。但し、この場合の本発明の効果は、加工前における縮小投影光学系のアライメントや、加工精度に悪影響を及ぼす要因の早期発見を可能にするにとどまり、品質・等級管理用のモニタリングマーク付きノズルプレートの製造はできない。
【0052】
図7において、モニタリング開口11の形状の例を示す。モニタリング開口11の形状には、本実施例1において用いた中心部が分離したすクロスヘア62、その分離部分に収まる小さいクロスヘア63、単純なクロスヘアの61、その他L字形の64や65など様々であるが、これらに限定されない。なお、
図7においては、クロスヘア66を除き、便宜のため、斜線をレーザ光を遮蔽する部分ではなく開口部に施している。
【0053】
また、モニタリング開口11の形状は、被加工物の表面に縮小投映されたモニタリングマークの位置ズレやにじみ、二重投映、太り等の観察結果により、光学系の事前のアライメントや定期調整において、XYZ及びθのうちどの軸を調整したらよいかの判断がしやすい形状が望ましい。さらに、ステージの位置とパルスレーザ光の発振タイミングの同期異常、ひいては、ステージ自体の異常を検知できる形状が望ましい。具体的には、少なくともステージの移動方向(X軸)と相対的に並行な開口とこれと直行する開口とを含む形状が望ましい。
図7に示すいずれのモニタリング開口の形状もこれを満たす。
【0054】
参考として、モニタリング開口の開口幅の違いによるモニタリングマークの様子の違いは、例えば、後出の実施例2において説明する
図13において確認できる。そこでは、一のノズルの上側に20ショットのパルスレーザ光にて縮小率が1/5の縮小投影光学系を用いて加工された5つのモニタリングマークが撮影されており、その加工線幅は、左から右に0.6μm、0.8μm、1.0μm、1.2μm、1.4μmの順である。また、それぞれに対応するモニタリング開口の幅は、同じく左から右に向かって、3μm、4μm、5μm、6μm、7μmの順である。
【0055】
観察系82を構成するモニタリングマークの観察手段として、CCDカメラをレーザ加工装置の筐体内に配置しているが、カメラの種類はこれに限定されない。また、これらに代えて、筐体外の卓上顕微鏡等によりモニタリングマークを観察する構成とすることも可能である。ここで、CCDカメラとモニターの組み合わせは、要求される加工精度が達成できているか否かを判断できる解像度を有する必要がある。本実施例1においては、ピクセル数が1624×1234、ピクセルサイズが4.4μm×4.4μmのCCDカメラの画像を、解像度が1280×1024、画素ピッチが264μm×264μmのモニターに20倍に拡大して観察した。なお、モニタリングマークをコンピュータソフトで画像処理し、縮小投影光学系を構成する光学素子等の位置調整にフィードバックをかけることで、縮小投影光学系の調整を自動又は半自動にすることも可能である。
【0056】
ステージ系91は、水平面と並行に設置された被加工物を載置するための吸引機構付の載置台と、その下に位置するX軸、Y軸ステージ及び光軸周りに回転するθ軸ステージから構成され、光軸方向であるZ軸の調整については、テレセントリックレンズをこのZ軸用ステージに設置することで実現している。本実施例1における各々のステージのストロークや分解能は次の表3のとおりである。但し、要求されるノズルプレートのサイズやノズル形状の精度等によりその仕様や構成は適宜、選択し組み合わせることができる。
【0057】
なお、スキャン加工におけるステージの位置情報をステージコントローラに出力するリニアエンコーダーをX軸及びY軸又はその両軸のステージに搭載する。本実施例1においては、ステージのスキャン方向を
図7の紙面に垂直な方向(表面から裏面の方向)をX軸としている。
【0058】
【表3】
【0059】
以上の装置構成により、縮小投影光学系等の事前のアライメントのための加工を行う。はじめに、
図2に示すマスク1に配設された開口12からなる開口列とその両端に配設されたモニタリング開口11をカバーするように成形されたパルスレーザ光を1から数ショット用いて、載置台上に吸着され固定されたポリイミドシート100に前記開口列と前記二つのモニタリング開口11を縮小投影し、これらの加工痕をつける。なお、以下の説明ではショット数が少ないため穿孔加工に至っていない開口12の縮小投影加工痕のことも、便宜上ノズル列又はノズル112という。
【0060】
次に、ノズル列の両端に位置するモニタリングマーク111間の距離を観察系82により計測し、その距離がマスク1に配設されたモニタリング開口11間の距離MALに対し、正確に縮小率の設計値である1/5倍になっているかを確認する。そして、これと異なる場合は、前記加工を繰り返し正確に1/5倍となるよう縮小投影光学系7をアライメントする。このとき、二つのモニタリングマークを結ぶ直線と、モニター上において基準となるX軸が角度を持つ場合、これを可能な範囲でゼロにすべくマスクのθステージを調整する。
【0061】
より精密に倍率を調整する必要がある場合やマスク1にモニタリング開口11を一つしか配設していない場合には、次に記載するスキャン加工を行い、前記加工の場合よりも長いモニタリングマーク111間の距離MMLを測定し同様の調整を行う。
【0062】
次に、X軸ステージを移動しながら行うアライメントのためのスキャン加工を1回行う。X軸ステージの移動速度は100mm/sとした。
【0063】
X軸ステージの位置情報に基づいたリニアエンコーダーからの信号を基準として、パルスレーザ光の発振用外部トリガーをパルスレーザ光源5に出力し、前記X軸ステージと同期したパルスレーザ光を発振させる。なお、必ずしもスキャンを1回に限定する必要はないが、回数が多すぎると後述するモニタリングマークのズレの判別が困難になる場合があるので注意する。
【0064】
前記外部トリガーのタイミングの決定においては、主に、X軸ステージのリニアエンコーダーからステージコントローラへの信号出力からパルスレーザ光源5への外部トリガー出力までの間、及び、パルスレーザ光源5への当該外部トリガーの出力から実際のパルスレーザ光の発振までの間に、合計μsオーダーの遅延時間が発生する点に注意する。したがって、その遅延時間にX軸ステージが移動する距離を考慮に入れて外部トリガーのタイミングを調整する。すなわち、本実施例1の場合は、加工すべき位置よりも0.1μmオーダー手前の位置情報を基準に、外部トリガーのタイミングを決定する。
【0065】
次に、前記スキャン加工により各ノズル13の近傍に、それぞれ1スキャンあたり2回ずつ加工されたモニタリングマーク111の重なり具合を確認する。ここで、2回加工されたモニタリングマーク111とは、1回のスキャンにおいて、その1回目が
図2に示すマスク1上の左端のモニタリング開口11が縮小投影されたモニタリングマーク111であり、2回目が同じく右端のモニタリング開口11が縮小投影されたものである。
図9において、本実施例1におけるスキャン加工過程の様子を疑似的に描写するが、その左側の列に示す一連の加工が、1回の前記スキャン加工に対応する。
【0066】
図11において、前記スキャン加工により形成されたノズル列及びモニタリングマーク111の様子を模擬的に示す。二つのモニタリングマーク111の重なり具合において、
図11中のΔxがゼロでない場合、X軸ステージの移動とパルスレーザ光が正確に同期していない可能性がある。そこで、このΔxをゼロにすべく前記外部トリガーのタイミングをさらに微調整する。なお、前述のとおり、モニタリング開口11の開口幅を縮小投影光学系の分解能以下
の幅に縮小される幅であって、複数のレーザパルスによる多重縮小投影により前記モニタリングマークとして観察可能である幅にデザインすることで、
図11に示すとおり、ノズル112自体の加工位置ズレを観察するよりも、モニタリングマークのΔx及びΔyを観察するほうが容易であることがわかる。
【0067】
一方、Δyがゼロでない場合、X軸ステージの移動方向とノズル列の軸、ひいてはマスク1の開口列の軸が互いに並行でない可能性がある。すなわち、光軸回りに互いに角度をもっている蓋然性が高い。そこで、このΔyをゼロにすべく、載置台の下のθ軸ステージ等を用いて当該角度をゼロにすべく適宜調整する。なお、モニタリング開口11が一つしか配設されていない場合は、前記調整に資するΔx及びΔyは、このスキャン加工により確認することはできない。
【0068】
また、Δx又はΔyが一定ではなく、ノズル112ごとに不規則に変動する場合は、X軸ステージの直進性に異常が発生している可能性を疑う。また周期的に変動する場合は、パルスレーザの照射により、マスク1の熱膨張によるモニタリング開口11のピッチPAが経時的に変化している可能性がある。そこで、マスク1への余分な熱量の投入を最小限に抑えるため、マスク1に照射されるパルスレーザ光の形状を必要最小限の面積となるように調整する。
【0069】
さらに、前記周期的変動が、前記熱量制限により解消できない場合には、スキャン加工の方向、すなわち常に+X軸方向へスキャンするのではなく、スキャンの復路時(−X軸方向へ)のスキャンにおいても加工する様に加工方法を検討するのもよい。
【0070】
なお、モニタリング開口11を、開口列の両端のほか中央位置等にも加え計三つ以上配設する場合、これらによるモニタリングマーク111を観察することは当該マスク1の熱膨張の詳細な解析に有効である。しかし、その配設数を不必要に増やすことは、モニタリングマーク111の加工深さの増加を招くため、インク吐出への影響について留意する必要がある。
【0071】
以上の縮小投影光学系等の事前のアライメントの後、ノズル列の穿孔加工に移行する。本実施例1の場合、次の表4に記載するパラメータによりノズル列の穿孔加工を行った。
【0072】
【表4】
【0073】
なお、1ノズルあたりに照射されるパルスレーザ光のショット数を均一にするため、ポリイミドシート100の上面に
図1に示すとおりレーザ光遮蔽板101を覆設した。この遮蔽板は、本実施例1のようにポリイミドシート100上に接触するように覆設してもよいし、接触しないように、例えばポリイミドシート100を吸着し固定する載置台に固定してもよい。
【0074】
図9において、本実施例1におけるパルスレーザ光の照射とX軸ステージの同期加工の様子を模擬的に示す。但し、ここでは簡易のため三つの開口からなる開口列及びその両端にモニタリングマークを配設したマスクを用い、2回のスキャンにより6つのノズルを計6ショットにて穿孔加工した様子を示している。さらに、パルスレーザ光の照射により加工されるノズルの部分を黒色で表し、それより前のパルスレーザ光の照射により既に加工されている部分を灰色で表した。一方、モニタリングマークについては、理解を容易にするため、左端に位置するモニタリング開口によるモニタリングマークを黒色で、同じく右端に位置するものを灰色で表した。
【0075】
本実施例1においては、1シートあたり16枚のノズルプレートを各プレートあたり10回のスキャン加工により穿孔加工を行った。
【0076】
その後、加工軸とはオフアクシスの観察系82により各ノズルプレートのモニタリングマークを観察し、その結果と予め定めた次の表5を一例とした対応表に基づき、16枚のノズルプレートの各々に個別の等級を決定する。
【0077】
【表5】
【0078】
なお、モニタリングマークの状態と等級の対応表を作成する際には、一度、実際にインクの吐出試験を行い、その印刷結果に対し意図する等級と異なる等級が定義づけられていないかを確認するとよい。
【実施例2】
【0079】
本実施例2においては、本発明を実施するための形態として、特にインクジェットプリンター用のノズルプレートに一般的に要求されるテーパー付のノズル列の穿孔加工を説明する。なお、ここでテーパーとは、インクの供給側のノズルの径に比べ、吐出側の径が小さくなっているものをいう。
【0080】
本実施例2に用いるレーザ加工装置は、実施例1と同様、
図8に示す概略のとおりである。但し、その構成のうちマスクは
図3に示すマスク2と
図4に示す多段マスク3を切り替えて使用するため、両マスクは同一のX軸、Y軸、Z軸、θ軸及びチルトステージからなるステージ系92上に配置される構成となっている。なお、各軸のストロークや分解能は、開口列のサイズ、縮小投影光学系の設計倍率及び要求されるノズル形状の加工精度等により適宜決定される。
【0081】
図3及び4において、本実施例2に用いるマスク2及び多段マスク3に配設された開口22及び23からなる開口列パターンを示す。本実施例2は、液体であるインクの吐出に用いられるノズル列の穿孔加工であるため、その開口22及び32の形状は一般的な円形である。しかし、実施例1と同様に、他の用途に用いる場合はその用途に応じて楕円、矩形又は多角形でも構わない。マスク2及び多段マスク3の詳細なパラメータを次の表6及び7に示す。
【0082】
【表6】
【0083】
【表7】
【0084】
マスク2又は多段マスク3におけるモニタリング開口21又は31は、開口列パターンの両端から選択された二つの開口22又は32の近傍に各々配設された中央部分が分離したクロスヘアであり、その形状は
図7における形状62及び63である。その中心位置は、マスク2及び多段マスク3ともに各開口の中心からMAx=500μm、MAy=500μmの距離であり、対となる開口に対し各々相対的に同一の位置に配設されている。
【0085】
このように、マスク2と多段マスク3のモニタリング開口の形状を異なるものとした理由は、後述するマスクの切り替えによる位置ズレを、観察系により判断しやすくするためである。
【0086】
本実施例2において説明するノズル列の穿孔加工は、はじめに多段マスク3を用いたスキャン加工により、テーパーを有するノズル列の穿孔加工をインク供給側であるポリイミドシートの上穴径を決定する目的で行い、次に、マスクを切り替えた後、マスク2を用いたスキャン加工により、同じく下穴径を決定する目的で穿孔加工を行うというものである。両穿孔加工は、多段マスク3によるノズル列と、マスク2によるノズル列のパターンが一致するように位置決めされた状態で行われる。
【0087】
そこで、前記加工の前には、縮小投影光学系7のアライメントを前記マスクの切り替えも含めておこなう。そのアライメント方法及びその手順は、実施例1におけるそれと同様である。すなわち、多段マスク3を用いてアライメントを行い、その後マスク2に切り替え、多段マスク3において付されたモニタリングマークと同一の中心位置にマスク2によるモニタリングマークを付す。そして、観察系82によりその互いの位置にズレが生じていないことを確認する。
【0088】
ここで、マスクの法線と光軸とが一致せず角度がある場合は、マスク切り替えにより縮小投影レンズとマスク1間の距離が変動し、これによる焦点位置の異常を示すモニタリングマークの線の太りが観察されることが予想される。また、多段マスク3をマスク2に切り替える際の位置決めが正確でない場合、多段マスク3によるモニタリングマーク231とマスク2によるモニタリングマーク221との間で、
図11において模擬的に示すような、ΔxやΔyが観察されることが予想される。
【0089】
本実施例2は、インクジェットプリンター用のノズルプレートの穿孔加工であるが、印刷の出来栄えを大きく左右する印刷時の筋状のムラの原因となりうる症状として、モニタリングマークのΔx又はΔyが一定ではなく、ノズル222/232ごとに周期的に変動する場合がある。そのような場合には、実施例1にて記載する調整方法のほか、マスクの開口形状やその変化の仕方を調整するのも一案である。
【0090】
具体的には、
図6に示すような開口形状が開口列の一端から他端に向けて大中小小中大の順に変化する多段マスク5がその一例である。また、開口形状については、全てが真円であるもののほか、特許文献5に記載の楕円形状を開口列パターンの中に有するものも用いることが可能である。
【0091】
図13において、多段マスク3による10回のスキャン加工後、マスク2に切り替えて20回スキャン加工したノズル列中の一のノズルを、当該ノズルの下側に加工されたモニタリングマークと共に示す。(なお、ノズルの上部についたモニタリングマークは条件の検討に用いたものであって、本実施例2における説明とは無関係である。)
【0092】
ここでは、多段マスク3によるモニタリングマークとマスク2によるモニタリングマークの位置ズレが意図的に生じるよう両マスクの切り替えを行った。模擬的には、
図7に例示するモニタリング開口形状63(小さいクロスヘア)が縮小投影加工された、
図12におけるモニタリングマーク231と、同じくモニタリング開口形状62(中央分離型クロスヘア)によるモニタリングマーク221の位置ズレであって、ΔmxとΔmyにて示す。そして、
図13におけるそれらの値は、いずれも0.5μmである。
【0093】
なお、ノズルの下部に複数のモニタリングマーク221及び231が加工されているのは、各モニタリング開口の開口幅の最適化を図るためにマスク上に複数の開口幅を持つモニタリング開口を配設したためであり、マスク上のモニタリング開口幅として、左から3μm、4μm、5μm、6μm、7μmに対応している。
【0094】
多段マスク3とマスク2を再び切り替えて、前記アライメントを繰り返すことで、アライメント異常を示すモニタリングマーク231及び221の観察結果がノズル形状に要求される加工精度に照らし許容できる範囲内に収まったことを確認する。その後、ノズル列の穿孔加工に移行する。なお、実際のノズル列の穿孔加工においては、その生産性を考慮し、多段マスク3をマスク2に切り替える際に都度アライメントは行わず、これらのマスク切り替え用のステージ系92の移動量においてオフセットにより補正するに留めるのがよい。
【0095】
以上により、テーパー付ノズル列の穿孔加工がなされる。穿孔加工後のモニタリングマークの観察による、等級の決定については、実施例1と同様である。