特許第6584216号(P6584216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6584216-回路遮断器の瞬時引き外し装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584216
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】回路遮断器の瞬時引き外し装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/36 20060101AFI20190919BHJP
   H01H 73/48 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   H01H73/36 E
   H01H73/48
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-162433(P2015-162433)
(22)【出願日】2015年8月20日
(65)【公開番号】特開2017-41363(P2017-41363A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 賢司
(72)【発明者】
【氏名】安村 直樹
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−099240(JP,A)
【文献】 特開2000−306488(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0000955(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00 〜 69/01
H01H 71/00 〜 83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ヨークと、その内部に配置された電路と、
固定ヨークに隣接させて配置された可動ヨークとからなる回路遮断器の瞬時引き外し装置において、
前記電路はバイメタルであり、磁性部材をバイメタルと一体に固定することにより、電路と固定ヨーク間、または電路と可動ヨーク間の少なくとも一方に、磁性部材を配置したことを特徴とする回路遮断器の瞬時引き外し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路遮断器の瞬時引き外し装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器には、熱動式の引き外し装置と、電磁式の引き外し装置とが組み込まれている(特許文献1)。
【0003】
熱動式の引き外し装置は、電路となるバイメタルに過大電流が流れたときにバイメタルが変形し、トリガプレートを動かしてラッチの係止を解除し、トリップ動作を行わせるものである。また電磁式の引き外し装置は、電路となるバイメタルに短絡電流のような大電流が流れたときに発生する磁束により固定ヨークを磁化させ、固定ヨークに隣接配置された可動ヨークを瞬時に引きよせてトリガプレートを動かし、ラッチの係止を解除し、トリップ動作を行わせるものである。
【0004】
工業用制御装置の安全規格(UL508)により、定格電流の600%以上の電流が流れたときに必要な引き外し時間が定められており、このような場合には電磁式の引き外し装置により、回路が瞬時に遮断されるようになっている。
【0005】
ところが、電流によって発生する磁界の強さは、電流に比例する。このため、定格電流が小さい回路遮断器においては、定格電流の600%以上の電流が流れたとしても磁界は弱く、可動ヨークを引き寄せる力も小さくなるために、確実に回路を遮断できない可能性があった。
【0006】
また、固定ヨークと可動ヨークとの間には作動用のギャップが形成されているため、これも可動ヨークを引き寄せる力を低下させる原因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−75163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、定格電流が小さい回路遮断器においても、確実に瞬時遮断を行わせることができる回路遮断器の瞬時引き外し装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、固定ヨークと、その内部に配置された電路と、固定ヨークに隣接させて配置された可動ヨークとからなる回路遮断器の瞬時引き外し装置において、前記電路はバイメタルであり、磁性部材をバイメタルと一体に固定することにより、電路と固定ヨーク間、または電路と可動ヨーク間の少なくとも一方に、磁性部材を配置したことを特徴とするものである。
【0010】
【0011】
【発明の効果】
【0012】
本発明の回路遮断器の瞬時引き外し装置は、磁性部材により固定ヨークと可動ヨーク間の磁束を強くし、可動ヨークを固定ヨークに引き寄せる吸引力を高めることができる。このため、定格電流が小さい回路遮断器であっても確実に瞬時引き外し動作を行わせることができる。
【0013】
また本発明によれば、磁性部材をバイメタルと一体に固定したので、回路遮断器への組付けが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】回路遮断器の内部機構の説明図である。
図2】第1の実施形態の要部を示す斜視図である。
図3】第1の実施形態の要部を示す分解斜視図である。
図4】第1の実施形態の要部を示す正面図とそのA−A断面図である。
図5】可動ヨークが吸着された状態を示す正面図とそのB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は回路遮断器の内部機構の説明図であり、1は電路となるバイメタル、2はバイメタル1を囲むように配置された断面がコ字型の固定ヨーク、3は固定ヨーク2に隣接配置された可動ヨーク、4はバイメタル1の先端に設けられた調節ねじ、5はバイメタル1が変形したときに調節ねじ4によって動かされるトリガープレート、6はトリガープレート5に係止されるラッチである。8は、可動ヨーク2の動作に連動して回動する補助金具である。
【0016】
熱動式の引き外し装置を構成するバイメタル1は、電路に過電流が流れると徐々に湾曲してトリガープレート5を動かしラッチ6を外して公知の引き外し機構を動作させ、回路を遮断する。
【0017】
また、バイメタル1と固定ヨーク2と可動ヨーク3は電磁式の引き外し装置を構成するものであり、電路であるバイメタル1に短絡電流などの大電流が流れると、その電流により発生する磁束が固定ヨーク2と可動ヨーク3を磁化させて可動ヨーク3が固定ヨーク2に吸着される。図5に示すように、可動ヨーク3は軸7により固定ヨーク2に枢着されているため、可動ヨーク3が固定ヨーク2に引き寄せられると補助金具8の上端部8aがトリガープレート5を動かし、同様に回路を遮断する。なお、電磁式の引き外し装置の電路はバイメタル1である必要はなく、より線によって電路を形成する。
【0018】
これらの熱動式の引き外し装置及び電磁式の引き外し装置の作動は従来と同様であるが、以下に説明するように、本発明では電磁式の引き外し装置に従来になかった磁性部材9を組み込み、電路を流れる電流値が比較的小さい場合にも確実に可動ヨーク3が固定ヨーク2に引き寄せられるようにした。
【0019】
図2から図5は本発明の第1の実施形態を示すもので、平板状の磁性部材9が電路であるバイメタル1と固定ヨーク2との間に配置されている。磁性部材9は鉄、フェライト等の透磁性に優れた材料からなる。図3図4に示すように、この実施形態では磁性部材9はバイメタル1と固定ヨーク2の下部10に固定されている。なお、可動ヨーク3が固定された補助金具8は固定ヨーク2から離れる方向に、ばね11により付勢されている。
【0020】
図4の下図に示すように、断面コ字型の固定ヨーク2の内部に電路であるバイメタル1と磁性部材9とが配置され、可動ヨーク3は固定ヨーク2との間に作動用のギャップを設けて隣接配置されている。電路に短絡電流等が流れると、電路を中心とした磁束が発生する。このため、磁性部材9を設けると磁性部材9が磁化することによって図5の下図に示すように可動ヨーク3と固定ヨーク2を通過する磁束Wbを多くし、即ち磁束密度を高くすることによって磁力を高めることが可能となる。この結果、可動ヨーク3を吸着する力が高まり、定格電流が小さい回路遮断器であっても、図5に示すように、確実に可動ヨーク3は固定ヨーク2に吸着され、瞬時引き外し動作を行わせることができることとなる。図6に示すように、磁性部材9は固定ヨーク2に密着させるものでも良い。また、磁性部材9は固定ヨーク2のコ字状の腕部に渡すように密着させることや、更に、バイメタル1とも密着させるようにしても良く、その場合であっても、より磁力を高めることが可能である。
【0021】
この第1の実施形態のように、磁性部材9をバイメタル1と一体に組み込めば、回路遮断器への組み込み作業が容易となる。このように、磁性部材9は定格電流が比較的小さい回路遮断器においては瞬時引き外し能力を向上させる効果があるが、定格電流が大きい回路遮断器においては、磁性部材9を電路としてヒータとしての機能を持たせ、回路遮断器を傍熱式・傍直熱式として部材を兼用することもできる。傍熱式はバイメタル1に直接電流を流さない形式であり、この場合には図1に示すより線12をバイメタル1に接続せず、磁性部材9に接続すればよい。
【0022】
なお、磁性部材9をバイメタル1に密着させる場合には、バイメタル1の湾曲方向の反対側に磁性部材9を配置し、バイメタル1の湾曲動作に影響しないようにすることが望ましい。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
以上に説明したように、本発明の回路遮断器の瞬時引き外し装置によれば、磁性部材9によって可動ヨーク3と固定ヨーク2を通過する磁束密度が高くなり、定格電流の小さい回路遮断器においても、瞬時引き外し動作を確実に行わせることができる利点がある。
【符号の説明】
【0027】
1 バイメタル
2 固定ヨーク
3 可動ヨーク
4 調節ねじ
5 トリガープレート
6 ラッチ
7 軸
8 補助金具
8a 上端部
9 磁性部材
10 下部
11 ばね
12 より線
Wb 磁束
図1
図2
図3
図4
図5