【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、前記した従来の金型(
図8,9参照)を用いた射出成形では、成形品である導光体5の前面周縁部に、配光制御ステップ5aを取り囲む断面矩形状(例えば、1mm×1mm)の「入れ子棚」と称される帯状部5bが成形される。
【0014】
そして、成形品である導光体5を組み付けた灯具を点灯させると、配光制御ステップ5aを取り囲むように延在する帯状部5bが点光りして、灯具の所望の配光が得られず、被視認性も悪い、という新たな問題が発生した。
【0015】
そこで発明者は、「入れ子棚」と称される断面矩形状の帯状部5bを実質的になくすことができれば、灯具点灯時の帯状部5bの点光りがなくなって、灯具の所望の配光および被視認性が得られる、と考えた。
【0016】
一方、従来の金型では、金型1に組み付ける入れ子2は、成形面2aを設けた入れ子2前面の周縁部が、断面矩形状(例えば、1mm×1mm)に切り欠かれており、即ち、入れ子2の成形面2a周縁部に、断面矩形状(例えば、1mm×1mm)の切欠に対応する段差部端面2bが帯状に設けられている。
【0017】
この段差部端面2bは、入れ子2に高精度の成形面2aを形成するために、また、入れ子2を挿入孔1a’にスムーズに挿入させるとともに、配光制御ステップ5aの成形性を確保するためにも、必要不可欠なもので、段差部端面2bそのものをなくすことはできない。
【0018】
しかし、この段差部端面2bの幅をできる限り微小値にすれば、段差部端面2bの幅で特定される、金型1,3によって画成されるキャビティの帯状部5bに対応する部分の間隙sも同様に微小値となって、射出成形の際、この間隙sに樹脂が充填されず、「入れ子棚」と称される帯状部5bを欠肉させることができる、即ち、成形された導光体の光出射面周縁部に従来形成されていた断面矩形状の帯状部5bを実質的になくすことができる、と考えた。
【0019】
そして、入れ子2に設ける段差部端面2bの幅を種々変えて、導光体を射出成形する検証を重ねた結果、成形された導光体の光出射面周縁部に「入れ子棚」と称される断面矩形状の帯状部5bが形成されないためには、段差部端面2bの幅(キャビティの入れ子棚に対応する部分の間隙寸法)dを所定の範囲にすることが有効であることが確認されたことで、今回の特許出願に至ったものである。
【0020】
本発明は、前記した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、所望の灯具の配光および被視認性が得られ、外観性も良好な導光体,同導光体の成形方法および金型装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明(導光体)は、入射した光を配光制御ステップが形成された光出射面から出射させるように構成され、前記配光制御ステップ成形用の成形面を有する金型を用いて射出成形された導光体において、
前記導光体の光出射面周縁部に、前記金型の前記成形面周縁部に設けた帯状の段差部端面に対応し、前記段差部端面に接触しないで成形された非成形面である帯状部が形成されたことを特徴とする。
【0022】
具体的には、入射した光を配光制御ステップが形成された光出射面から出射させるように構成され、前記配光制御ステップ成形用の成形面を有する入れ子を内蔵した金型を用いて射出成形された導光体であって、
前記導光体の光出射面周縁部に、前記入れ子の成形面周縁部に設けた帯状の段差部端面に対応する帯状部が形成された導光体において、
前記段差部端面の幅が所定値以下に設定されて、前記導光体の光出射面周縁部に、前記段差部端面と同幅の非成形面で構成された帯状部が前記配光制御ステップ形成位置と面一に形成されたことを特徴とする。
【0023】
請求項2においては、請求項1に記載の発明において、前記帯状部の幅は、0.1mm〜0.5mmの範囲であることを特徴とする。
【0024】
前記目的を達成するために、請求項3に係る発明(導光体の成形方法)は、入射した光を配光制御ステップが形成された光出射面から出射させる導光体を、前記配光制御ステップ成形用の成形面を有する金型を用いて射出成形する際に、
前記導光体の光出射面周縁部に、前記金型の前記成形面周縁部に設けた帯状の段差部端面に対応する帯状部が成形される導光体の成形方法において、
射出成形の際、前記金型に設けた前記導光体成形用のキャビティに射出された樹脂が該キャビティの前記段差部端面に接触しないで成形されることを特徴とする。
【0025】
具体的には、入射した光を配光制御ステップが形成された光出射面から出射させる導光体を、前記配光制御ステップ成形用の成形面を有する入れ子を内蔵した金型を用いて射出成形する際に、前記導光体の光出射面周縁部に、前記入れ子の成形面周縁部に設けた帯状の段差部端面に対応する帯状部が成形される、導光体の成形方法において、
前記段差部端面の幅が所定値以下の微小幅に設定されて、射出成形の際、前記金型に設けた前記導光体成形用キャビティの前記帯状部に対応する部分に樹脂が侵入できないように構成されたことを特徴とする。
【0026】
前記目的を達成するために、請求項4に係る発明(金型装置)は、入射した光を配光制御ステップが形成された光出射面から出射させる導光体を、前記配光制御ステップ成形用の成形面を有する入れ子を内蔵した金型を用いて射出成形することで、前記導光体の光出射面周縁部に、前記入れ子の成形面周縁部に設けた帯状の段差部端面に対応する帯状部が成形されるように構成された金型装置において、
射出成形の際、前記金型に設けた前記導光体成形用のキャビティに射出された樹脂が該キャビティの前記段差部端面に接触しないで成形されることを特徴とする。
【0027】
具体的には、入射した光を配光制御ステップが形成された光出射面から出射させる導光体を、前記配光制御ステップ成形用の成形面を有する入れ子を内蔵した金型を用いて射出成形することで、前記導光体の光出射面周縁部に、前記入れ子の成形面周縁部に設けた帯状の段差部端面に対応する帯状部が成形されるように構成された金型装置において、
前記段差部端面の幅が所定値以下の微小幅に設定されて、射出成形の際、前記金型に設けた前記導光体成形用キャビティの前記帯状部に対応する部分に樹脂が侵入できないように構成されたことを特徴とする。
【0028】
そして、請求項3(4)では、前記金型(前記入れ子)の前記成形面周縁部に設けた段差部端面の幅は、0.1mm〜0.5mmの範囲であることが望ましい。
(作用)従来は、射出成形の際、金型に設けた導光体成形用のキャビティに樹脂が充填されることで、光出射面に配光制御ステップが形成された導光体が成形されるが、金型の配光制御ステップ成形用の成形面周縁部に設けた帯状の段差部端面に対応する厚さをもつ「入れ子棚」と称される横断面矩形状の帯状部(
図8の符号5b参照)が成形される。
【0029】
詳しくは、金型の成形面と入れ子の成形面周縁部間の微小間隙(入れ子の成形面周縁部に設けた帯状の段差部端面の幅に等しい間隙)に樹脂が充填されることで、導光体の光出射面周縁部には、入れ子の成形面周縁部に設けた帯状の段差部端面の幅に対応する厚さをもつ「入れ子棚」と称される横断面矩形状の帯状部(
図8の符号5b参照)が成形される。
【0030】
然るに、本発明に係る方法および装置では、金型(入れ子)の配光制御ステップ成形用の成形面周縁部に設けた帯状の段差部端面の幅が所定値以下の微小幅に設定されて、射出成形の際、金型に設けた導光体成形用のキャビティの帯状部に対応する部分(=入れ子に設けた帯状の段差部端面の微小幅相当の間隙)に樹脂が侵入できないため、該間隙は、樹脂が充填されない欠肉した状態となる。
【0031】
そして、金型に設けたキャビティの帯状部に対応する部分の入り口に樹脂が一部膨出した形態(入り口に樹脂が凸面状に盛り上がった形態)で保圧・冷却される。
【0032】
したがって、成形された導光体の光出射面周縁部に、従来形成されていた「入れ子棚」と称される横断面矩形状の帯状部は形成されず、帯状部(入れ子棚)が点光りするという従来の不具合が解消される。
【0033】
また、成形された導光体の光出射面周縁部には、「入れ子棚」と称される横断面矩形状の帯状部に代わり、入れ子の成形面周縁部に設けた帯状の段差部端面と同幅の帯状部が配光制御ステップ形成位置と面一に形成される。
【0034】
この帯状部の幅は、非常に狭い(例えば、0.1〜0.5mm)ため、帯状部から出射する光は非常に微少で弱い。しかも帯状部の表面は、平滑な成形面とは異なり、樹脂素材が金型や入れ子と接触することなく冷却して硬化した、滑らかとは到底いえない非成形面で構成され、さらには、帯状部の表面は前方凸の断面円弧状に形成されているので、帯状部から出射する光は拡散する。したがって、導光体の光出射面周縁部の帯状部が点光りすることもない。
【0035】
なお、導光体の光出射面周縁部に形成される帯状部の幅は、金型(入れ子)の成形面周縁部に設ける帯状の段差部端面の幅で特定されるので、帯状部の幅が0.5 mmを越えると、金型(入れ子)の成形面周縁部に設ける帯状の段差部端面の幅が0.5 mmを越えて、射出成形の際、金型に設けた導光体成形用のキャビティの帯状部に対応する部分(間隙)に樹脂が侵入し、同間隙を欠肉させることができない。
【0036】
一方、帯状部の幅が0.1 mm未満では、金型(入れ子)の成形面周縁部に設ける帯状の段差部端面の幅が0.1 mm未満で、これは、入れ子前面に成形面を切削加工する際に、入れ子前面の側縁に沿って残す仕上げ代dが0.1 mm未満、即ち、仕上げ代dを設けないに等しく、入れ子前面の側縁に成形面の尖ったエッジが一致するように正確に切削加工することは、非常に難しい。即ち、入れ子前面に高精度の成形面を形成することができない。
【0037】
したがって、帯状部の幅は、0.1〜0.5mmの範囲にあることが望ましい。
【0038】
また、導光体の光出射面周縁部に配光制御ステップ形成位置と面一に形成されている、非成形面で構成された微小幅の帯状部によって、導光体の光出射面に形成されている配光制御ステップと導光体外周面との境界がぼかされて、導光体の側方からの外観性も良好となる。
【0039】
なお、入れ子の成形面周縁部に設けた帯状の段差部端面の幅は、従来の段差部端面の幅(1mm)に比べて微小値(0.1mm以上0.5mm未満)に設定されているが、従来の入れ子の成形面周縁部に設けた帯状の段差部端面の種々の機能が損なわれるわけではない。
【0040】
即ち、第1には、入れ子前面に成形面を切削加工する際に、入れ子前面に仕上げ代(0.1mm以上)が残るように成形面を切削加工した後に、入れ子前面の外周面を仕上げ代相当切削加工することで、入れ子前面に高精度の成形面を形成することができる。
【0041】
第2には、入れ子の挿入孔への挿入方向前面側の大きさが、入れ子の外形よりも全周にわたって段差部端面の幅(0.1mm以上)だけ狭められている分、入れ子を挿入孔に挿入する際に、孔の内周面と干渉させることなく、スムーズに挿入できる。
【0042】
第3には、金型を型閉めした際、キャビティを画成する金型の成形面と入れ子の成形面間には、断面矩形状(0.1mm以上0.5mm未満)の環状の非常に狭い間隙Sが形成されて、射出成形の際に、この間隙Sに樹脂が充填されることはないが、金型の成形面と入れ子の成形面が離間(0.1mm以上0.5mm未満)している分、入れ子の成形面に樹脂が確実に密着するように充填されて、配光制御ステップの成形性が確保される。