(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584266
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】液晶駆動回路
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20190919BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20190919BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 612F
G09G3/20 621B
G09G3/20 623F
G02F1/133 525
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-198642(P2015-198642)
(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公開番号】特開2017-72684(P2017-72684A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】北村 一博
【審査官】
橘 皇徳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−205896(JP,A)
【文献】
特開2002−215108(JP,A)
【文献】
特開2002−304161(JP,A)
【文献】
特開2004−271930(JP,A)
【文献】
特開2002−366115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/20−3/38
G02F 1/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルの一対の電極に駆動電圧を印加する液晶駆動回路であって、
前記一対の電極の一方に印加する共通電圧を生成する共通電圧生成部と、
前記共通電圧との電位差が、入力信号によって指示される階調に対応する電圧値となる互いに極性が異なる第1および第2の電圧を、前記一対の電極の他方に印加する駆動電圧として生成する駆動電圧生成部であって、一方端が高電位側電源端子に、他方端が低電位側電源端子にそれぞれ接続された抵抗分圧回路によって構成された駆動電圧生成部と、
前記第1および第2の電圧が所定間隔で、前記一対の電極の他方に交互に印加されるように前記駆動電圧を切り替える駆動電圧切替部と、
前記高電位側電源端子および前記低電位側電源端子のそれぞれと前記抵抗分圧回路の両端部のそれぞれとの接続を、所定のタイミングで繰り返し切り替える電源切替部と、
を備え、前記電源切替部は、前記抵抗分圧回路の一方端を前記高電位側電源端子および前記低電位側電源端子のいずれか一方に選択的に接続する第1のスイッチと、前記抵抗分圧回路の他方端を前記高電位側電源端子および前記低電位側電源端子のいずれか他方に選択的に接続する第2のスイッチとを有し、前記第1のスイッチを介した接続状態と前記第2のスイッチを介した接続状態とを前記所定のタイミングで変更することを特徴とする液晶駆動回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記駆動電圧切替部によって前記第1および第2の電圧を交互に切り替える間隔は、表示フレームの切替間隔であることを特徴とする液晶駆動回路。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記電源切替部により接続を繰り返し切り替える間隔は、前記駆動電圧切替部によって前記第1および第2の電圧を交互に切り替える間隔よりも長いことを特徴とする液晶駆動回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、
前記電源切替部は、前記駆動電圧切替部による電圧印加動作開始時毎に、接続状態の切り替えを行うことを特徴とする液晶駆動回路。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項において、
前記電源切替部は、入力モード切替時毎に、接続状態の切り替えを行うことを特徴とする液晶駆動回路。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記電源切替部は、同一の接続状態における前記駆動電圧切替部による電圧印加の累積時間が所定値を超えた場合に、接続状態の切り替えを行うことを特徴とする液晶駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの電極に輝度レベルに応じた電圧を印加する液晶駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入力されるビデオ信号と同一極性の非反転信号とその反転信号とを生成し、1水平ライン毎にそれらが対象となるように合成することによってDCオフセットを持たない駆動信号を生成するようにした液晶駆動回路が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような駆動信号を用いることにより、液晶パネルにDCレベルの信号が印加され続けることにより生じる液晶の焼き付きを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−61430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に開示された液晶駆動回路を用いることにより、液晶パネルに印加されるDCオフセットを低減することができるが、完全にDCレベルをゼロにすることはできず、長時間の使用に伴って液晶パネルの焼き付きが発生するおそれがあるという問題があった。例えば、特許文献1の
図1や
図11に示された構成ではマルチプレックスドライバ18によってビデオ信号と同一極性の非反転信号とその反転信号が生成されるが、回路構成や素子のばらつきによって非反転信号を正確に反転した反転信号を生成することは難しく、DCオフセットを完全になくすことはできない。また、中間電圧Vpについても同様であり、印加電圧Vのちょうど中間的な電圧レベル(=1/2V)と一致させることが望ましいが、実際には、この中間電圧Vpには誤差があるため、この誤差に起因してDCオフセットが生じる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、駆動信号によって生じるDCオフセットをなくして液晶パネルの焼き付きの発生を防止することができる液晶駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の液晶駆動回路は、表示パネルの一対の電極に駆動電圧を印加する液晶駆動回路であって、一対の電極の一方に印加する共通電圧を生成する共通電圧生成部と、共通電圧との電位差が、入力信号によって指示される階調に対応する電圧値となる互いに極性が異なる第1および第2の電圧を、一対の電極の他方に印加する駆動電圧として生成する駆動電圧生成部であって、一方端が高電位側電源端子に、他方端が低電位側電源端子にそれぞれ接続された抵抗分圧回路によって構成された駆動電圧生成部と、第1および第2の電圧が所定間隔で、一対の電極の他方に交互に印加されるように駆動電圧を切り替える駆動電圧切替部と、高電位側電源端子および低電位側電源端子のそれぞれと抵抗分圧回路の両端部のそれぞれとの接続を、所定のタイミングで繰り返し切り替える電源切替部とを備えている。
【0007】
抵抗分圧回路によって生成される第1の電圧と第2の電圧の極性を繰り返し切り替えることにより、第1の電圧と共通電圧との電位差と第2の電圧と共通電圧との電位差とが正確に一致しない場合や、第1および第2の電圧の中心電圧と共通電圧とが正確に一致しない場合であっても、これらに起因するDCバイアスを相殺することができる。これにより、駆動信号によって生じるDCバイアスをなくして液晶パネルの焼き付きの発生を防止することができる。
【0008】
また、上述した電源切替部は、抵抗分圧回路の一方端を高電位側電源端子および低電位側電源端子のいずれか一方に選択的に接続する第1のスイッチと、抵抗分圧回路の他方端を高電位側電源端子および低電位側電源端子のいずれか他方に選択的に接続する第2のスイッチとを有し、第1のスイッチを介した接続状態と第2のスイッチを介した接続状態とを所定のタイミングで
変更する。これにより、駆動電圧としての第1および第2の電圧の極性を確実に入れ替えることが可能となる。
【0009】
また、上述した駆動電圧切替部によって第1および第2の電圧を交互に切り替える間隔は、表示フレームの切替間隔であることが望ましい。また、上述した電源切替部により接続を繰り返し切り替える間隔は、駆動電圧切替部によって第1および第2の電圧を交互に切り替える間隔よりも長いことが望ましい。これにより、駆動電圧として第1の電圧と第2の電圧を交互に印加する使用状態が継続したときに生じるDCバイアスを確実になくすことができる。
【0010】
また、上述した電源切替部は、駆動電圧切替部による電圧印加動作開始時毎に、接続状態の切り替えを行うことが望ましい。特に、上述した電源切替部は、入力モード切替時毎に、接続状態の切り替えを行うことが望ましい。これらによって、抵抗分圧回路の両端部の接続状態を切り替える際に生じる映像の乱れを目立たなくすることができ、表示品質の低下を防止することができる。
【0011】
また、上述した電源切替部は、同一の接続状態における駆動電圧切替部による電圧印加の累積時間が所定値を超えた場合に、接続状態の切り替えを行うことが望ましい。これにより、抵抗分圧回路の両端部の接続状態を切り替えるまでの毎回の時間をほぼ一定にすることができ、切り替え前までに累積されるDCバイアスを確実に相殺することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態の液晶駆動回路の構成を示す図である。
【
図2】駆動電圧生成部、駆動電圧切替部および電源切替部の詳細構成を示す図である。
【
図3】入力信号によって指示される階調と駆動電圧生成部によって生成される電圧V1〜V18との関係を示す図である。
【
図4】各表示フレームと印加されるLCDパネルに印加される電圧との関係を示す図である。
【
図5】奇数回起動時と偶数回起動時にLCDパネルに印加される電圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態の液晶駆動回路について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、一実施形態の液晶駆動回路の構成を示す図である。
図1に示す液晶駆動回路100は、表示パネルとしてのLCDパネル200の液晶を挟んで配置された一対の電極に駆動電圧を印加するためのものであり、共通電圧生成部10、駆動電圧生成部20、駆動電圧切替部30、電源切替部40を備えている。
【0015】
共通電圧生成部10は、LCDパネル200の一対の電極の一方に印加する共通電圧Vcom を生成する。
【0016】
駆動電圧生成部20は、共通電圧Vcom との電位差が、入力信号によって指示される階調に対応する電圧値となるように、互いに極性が異なる第1の電圧Vaおよび第2の電圧Vbを、LCDパネル200の一対の電極の他方に印加する駆動電圧として生成する。この駆動電圧生成部20は、抵抗分圧回路によって構成されている。この抵抗分圧回路は、一方端が高電位側電源端子(例えば、動作電圧V
DDを印加する電源回路(図示せず)の正極端子)に、他方端が低電位側電源端子(例えば、グランド端子)にそれぞれ接続されている。
【0017】
駆動電圧切替部30は、駆動電圧生成部20によって生成される第1の電圧Vaおよび第2の電圧Vbが所定間隔(例えば、表示フレーム毎)で、LCDパネル200の一対の電極の他方に交互に印加されるように駆動電圧を切り替える。
【0018】
電源切替部40は、高電位側電源端子および低電位側電源端子のそれぞれと抵抗分圧回路の両端部のそれぞれとの接続を、所定のタイミング(例えば、液晶駆動回路100の電源投入時)で繰り返し切り替える。
【0019】
図2は、駆動電圧生成部20、駆動電圧切替部30および電源切替部40の詳細構成を示す図である。
【0020】
図2に示すように、駆動電圧生成部20は、例えば19個の抵抗R1〜R19が直列接続された抵抗分圧回路20Aによって構成されている。この抵抗分圧回路20Aは、中央に配置された抵抗R10を挟んで左右対称に9対の抵抗が配置されている。これら各対を構成する2つの抵抗は同じ抵抗値を有している。具体的には、抵抗R1と抵抗R19が同じ抵抗値を有する。抵抗R2と抵抗R18が同じ抵抗値を有する。抵抗R3と抵抗R17が同じ抵抗値を有する。抵抗R4と抵抗R16が同じ抵抗値を有する。抵抗R5と抵抗R15が同じ抵抗値を有する。抵抗R6と抵抗R14が同じ抵抗値を有する。抵抗R7と抵抗R13が同じ抵抗値を有する。抵抗R8と抵抗R12が同じ抵抗値を有する。抵抗R9と抵抗R11が同じ抵抗値を有する。このような構成を有する抵抗分圧回路20Aにおいて、19個の抵抗R1〜R19のそれぞれの接続点から18種類の電圧V1〜V18が出力される。
【0021】
駆動電圧切替部30は、駆動電圧生成部20から出力される18種類の電圧V1〜V18の中から一対の電圧を選択し、さらにこの一対の電圧(第1および第2の電圧)を所定間隔で切り替えてLCDパネル200の一対の電極の他方に印加する。
【0022】
電源切替部40は、駆動電圧生成部20を構成する抵抗分圧回路20Aの一方端に接続されてこの一方端に高電位側電源端子と低電位側電源端子の一方を選択的に接続する2つのスイッチ42a、44aを有する切替部40Aと、抵抗分圧回路20Aの他方端に接続されてこの他方端に高電位側電源端子と低電位側電源端子の他方を選択的に接続する2つのスイッチ42b、44bを有する切替部40Bとを備えている。
【0023】
次に、駆動電圧生成部20によって生成する18種類の電圧V1〜V18について説明する。
【0024】
図3は、入力信号によって指示される階調と駆動電圧生成部20によって生成される電圧V1〜V18との関係を示す図である。
図3において、横軸は階調を示しており、黒から白までの9階調が入力信号によって指定される場合を想定している。また、縦軸はガンマ特性を再現するように各階調に対応する駆動電圧を示しており、電圧V1〜V9が第1の電圧Vaに、電圧V18〜V10が第2の電圧Vbにそれぞれ対応している。また、
図3に示す特性は、一方の切替部40Aにおいてスイッチ42aがオンされ、スイッチ44aがオフされて、抵抗分圧回路20Aの一方端が高電位側電源端子に接続され、他方の切替部40Bにおいてスイッチ42bがオフされ、スイッチ44bがオンされて、抵抗分圧回路20Aの他方端が低電位側電源端子に接続された場合を想定している。
【0025】
黒(最も暗い輝度を示す階調)に対応する電圧V9、V10は、共通電圧Vcom との電位差がΔV9、ΔV10であり、これらの各電位差は理想的には絶対値が同じであって極性のみが異なっている。また、白(最も明るい輝度を示す階調)に対応する電圧V1、V18は、共通電圧Vcom との電位差がΔV1、ΔV18であり、これらの各電位差は理想的には絶対値が同じであって極性のみが異なっている。白と黒の間の中間調に対応する他の対となる2つの電圧について同様であり、理想的には共通電圧Vcom との電位差の絶対値が同じで、極性のみが異なっている。
【0026】
入力信号によって、ある階調が指定されたときに、駆動電圧切替部30は、この階調に対応する一対の電圧を決定し、表示フレームが切り替わる毎に、印加するこれらの電圧を切り替える。例えば、一対の電圧として、第1の電圧Vaとしての電圧V4と第2の電圧Vbとしての電圧V15を考えた場合に、奇数フレームを表示する際の駆動電圧として第1の電圧Vaとしての電圧V4が使用され、偶数フレームを表示する際の駆動電圧として第2の電圧Vbとしての電圧V15が使用される。これらの電圧V4、V15は、共通電圧Vcom との電位差がΔV4、ΔV15であり、理想的にはこれらの電位差の絶対値は同じであって、連続するフレームにおいて同じ階調が維持される。
【0027】
図4は、各表示フレームと印加されるLCDパネル200に印加される電圧との関係を示す図である。奇数フレームを表示する場合には、LCDパネル200の一対の電極の一方に共通電圧Vcom が印加され、一対の電極の他方に駆動電圧切替部30から出力される電圧V4が印加される。また、偶数フレームを表示する場合には、LCDパネル200の一対の電極の一方に共通電圧Vcom が印加され、一対の電極の他方に駆動電圧切替部30から出力される電圧V15が印加される。
【0028】
ところで、電圧V4と共通電圧Vcom との電位差ΔV4と、電圧V15と共通電圧Vcom との電位差ΔV15のそれぞれの絶対値は理想的には同じになるように設計されるが、実際には、同じにはならない。
【0029】
そこで、本実施形態の液晶駆動回路100では、電源投入時毎、すなわち、奇数回起動時と偶数回起動時で、電源切替部40を用いて、駆動電圧生成部20を構成する抵抗分圧回路20Aと高電位側電源端子および低電位側電源端子との接続状態を切り替えている。
【0030】
例えば、奇数回起動時には、切替部40Aにおいて、スイッチ42aをオンし、スイッチ44aをオフすることにより、抵抗分圧回路20Aの一方端を高電位側電源端子に接続する。また、切替部40Bにおいて、スイッチ42bをオフし、スイッチ44bをオンすることにより、抵抗分圧回路20Aの他方端を低電位側電源端子に接続する。
【0031】
偶数回起動時には、切替部40Aにおいて、スイッチ42aをオフし、スイッチ44aをオンすることにより、抵抗分圧回路20Aの一方端を低電位側電源端子に接続する。また、切替部40Bにおいて、スイッチ42bをオンし、スイッチ44bをオフすることにより、抵抗分圧回路20Aの他方端を低電位側電源端子に接続する。
【0032】
図5は、奇数回起動時と偶数回起動時にLCDパネル200に印加される電圧を示す図である。
図5(A)には奇数回起動時における印加電圧が、
図5(B)には偶数回起動時における印加電圧が示されている。
【0033】
奇数回起動時に長時間LCDパネル200を用いた映像表示を行うと、共通電圧Vcom や抵抗分圧回路20Aを構成する各抵抗の抵抗値の誤差、各種配線の引き回し長さ、形状等の違いなどに起因して、ΔV4とΔV15の絶対値が同じにはならず、DCバイアスΔV
DCが生じる(
図5(A))。
【0034】
また、偶数回起動時には、共通電圧Vcom は変わらないが、電圧V4(+)、V15(−)(括弧の+は極性が正であることを、−は極性が負であることを示している)の極性が変わるため、LCDパネル200の一対の電極間の電圧はそれまでのΔV4(+)とΔV15(−)からΔV4(−)とΔV15(+)となる。ΔV4(−)とΔV15(+)の絶対値が同じにはならない点は上述した奇数回起動時の場合と同じであり、DCバイアス−ΔV
DCが生じる(
図5(B))。
【0035】
このようにして奇数回起動時の表示動作と偶数回起動時の表示動作が繰り返されると、奇数回起動時に生じるDCバイアスΔV
DCと、偶数回起動時に生じるDCバイアス−ΔV
DCが互いに相殺される。
【0036】
このように、本実施形態の液晶駆動回路100では、抵抗分圧回路20Aによって生成される第1の電圧Vaと第2の電圧Vbの極性を繰り返し切り替えることにより、第1の電圧Vaと共通電圧Vcom との電位差と第2の電圧Vbと共通電圧Vcom との電位差とが正確に一致しない場合や、第1の電圧Vaおよび第2の電圧Vbの中心電圧と共通電圧Vcom とが正確に一致しない場合であっても、これらに起因するDCバイアスを相殺することができる。これにより、駆動信号によって生じるDCバイアスをなくして液晶パネルの焼き付きの発生を防止することができる。
【0037】
また、2つのスイッチ42a、44aを有する切替部40Aと、2つのスイッチ42b、44bを有する切替部40Bを備え、これらの各スイッチを切り替えることにより、抵抗分圧回路20Aの両端のそれぞれに接続する高電位側電源端子と低電位側電源端子の接続状態を切り替えている。これにより、駆動電圧としての第1の電圧Vaおよび第2の電圧Vbの極性を確実に入れ替えることが可能となる。
【0038】
また、同じ階調に対応して絶対値が同じで極性が互いに異なる第1の電圧Vaと第2の電圧Vbを交互に切り替える間隔を表示フレームの切替間隔とし、切替部40A、40Bにより高電位側電源端子および低電位側電源端子と抵抗分割回路20Aとの接続状態を繰り返し切り替える間隔の方が長くなるように設定している。これにより、駆動電圧として第1の電圧Vaと第2の電圧Vbを交互に印加する使用状態が継続したときに生じるDCバイアスを確実になくすことができる。
【0039】
また、切替部40A、40Bによる接続状態の切り替えを、これらの切替部40A、40Bによる電源電圧印加時毎、すなわち、液晶駆動回路100の電源投入時毎に行うことにより、抵抗分圧回路20Aの両端部の接続状態を切り替える際に生じる映像の乱れを目立たなくすることができ、表示品質の低下を防止することができる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、液晶駆動回路100の電源投入時毎に、抵抗分圧回路20Aの両端部に印加される高電位側電源端子と低電位側電源端子の接続状態を入れ替えたが、入力モード切替時毎、すなわち、LCDパネル200をナビゲーション装置、オーディオ装置、地デジ放送受信機、ラジオ受信機等の表示装置として使用する場合に、入力信号の供給元となる装置が変更される「入力モード切替時」に合わせて、抵抗分圧回路20Aの両端部に印加される高電位側電源端子と低電位側電源端子の接続状態を入れ替えるようにしてもよい。入力モード切替時の前後では映像の内容が大きく変化するため、抵抗分圧回路20Aの両端部の接続状態を切り替える際に生じる映像の乱れを目立たなくすることができ、表示品質の低下を防止することができる。
【0041】
また、同一の接続状態(高電位側電源端子と低電位側接続端子の接続状態が変更されない状態)における駆動電圧切替部30によるLCDパネル200への電圧印加の累積時間が所定値(例えば50時間)を超えた場合に、上述した液晶駆動回路100の電源投入時、あるいは、入力モード切替時に、抵抗分圧回路20Aの両端部に印加される高電位側電源端子と低電位側電源端子の接続状態を入れ替えるようにしてもよい。これにより、抵抗分圧回路20Aの両端部の接続状態を切り替えるまでの毎回の時間をほぼ一定にすることができ、切り替え前までに累積されるDCバイアスを確実に相殺することが可能となる。
【0042】
また、上述した実施形態では、奇数フレームにおいて第1の電圧Va(V1〜V9)を印加し、偶数フレームにおいて第2の電圧Vb(V18〜V10)を印加するようにしたが、第1の電圧Vaと第2の電圧Vbをフレーム単位で切り替えるのではなく、ライン単位で切り替え、しかも、同じラインに着目したときにフレーム単位でも切り替えるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
上述したように、本発明によれば、抵抗分圧回路によって生成される第1の電圧と第2の電圧の極性を繰り返し切り替えることにより、第1の電圧と共通電圧との電位差と第2の電圧と共通電圧との電位差とが正確に一致しない場合や、第1および第2の電圧の中心電圧と共通電圧とが正確に一致しない場合であっても、これらに起因するDCバイアスを相殺することができる。これにより、駆動信号によって生じるDCバイアスをなくして液晶パネルの焼き付きの発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 共通電圧生成部
20 駆動電圧生成部
20A 抵抗分圧回路
30 駆動電圧切替部
40 電源切替部
40A、40B 切替部
42a、42b、44a、44b スイッチ
100 液晶駆動回路
200 LCDパネル