(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584273
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20190919BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
G01R19/00 M
G01R35/00 E
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-200994(P2015-200994)
(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公開番号】特開2017-72541(P2017-72541A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 創一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 健次
【審査官】
山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−154602(JP,A)
【文献】
特開2006−003246(JP,A)
【文献】
特開平04−279071(JP,A)
【文献】
特開2014−085238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
G01R 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散電源に接続される計測装置本体と、
この計測装置本体に接続される電流センサとを備えた計測装置であって、
前記計測装置本体は、
前記分散電源からの出力を変換するとともに、前記電流センサに電力供給する電源部と、
この電源部が電流センサに出力する実測電圧及び定格電圧を記憶する記憶部と、
前記電流センサから返される電圧信号を実測電流値として読み取る演算部とを有し、
さらにこの演算部は、
前記実測電圧を定格電圧で割ってG(ゲイン)を求め、演算部に入力された実測電流値をこのGで割ることにより、前記実測電流値を補正する第1処理機能を備えたことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記第1処理機能が実行された後に、
計測電流が0Aのとき、前記電流センサから返される電圧信号を0Aと判定するよう調整する第2処理機能を備えたことを特徴とする請求項1記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散電源の発電量を計測するための計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池等の分散電源により発電される発電量は、時刻や天候等によって大きく変動する。このため、各太陽電池ストリングから出力される発電量を計測し、その計測情報を外部に送信する計測装置を設けることで、その発電状況を把握し管理するものとしている(特許文献1)。
【0003】
また、計測装置は、太陽電池ストリングに接続される計測装置本体と、計測装置本体に通信線を介して接続される電流センサとを有しており、電流センサによる計測情報は電圧信号として計測装置本体内の演算部に返され、演算部がその電圧値に基づき計測電流値を導き出し、その情報を上記のように外部機器に出力するものとしている。
【0004】
ここで、
図4のように、電流センサ8はホール素子により構成されているため、太陽電池ストリング1から電力供給されることにより駆動し、実際には、計測装置本体7内部の電源部において降圧された電圧により駆動される。また、電源部から出力される電圧には定格電圧値が決められている。しかしながら、実際に出力される実測電圧には、電源部の個体差に起因して、多少の誤差が生ずる。このため、電流センサに入力される実測電圧にも誤差が生じ、さらにこの誤差は演算部、外部機器に入力される測定値にも影響を与え、結果、誤った計測情報を後段に送信してしまうこととなる。
【0005】
この問題を解決するためには、演算部に入力された誤情報を補正して正しい数値として出力する方法が考えられる。具体的には、
図5に示すように測定装置の出荷前に予め計測電流の最大、最小値をそれぞれ流し、各々の電流値及び電流センサから出力される電圧値(a、b)を記憶させておけば、演算部にて計測情報を図中点線で表される理想値に補正することができる。
【0006】
しかしながら、上記方法では、計測装置本体と実際に設置する各電流センサとの組み合わせ毎に調整を行う必要があるため、例えば電流センサのみが故障した場合でも、計測装置本体と新調した電流センサとを設置現場等で再度組み合わせて計測電流の最大、最小値を流して調整しなければならず、手間とコストがかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−119579
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は前記した従来の問題点を解決し、電流センサの交換時に手間の掛かる再調整が不要となる計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明は、分散電源に接続される計測装置本体と、この計測装置本体に接続される電流センサとを備えた計測装置であって、前記計測装置本体は、前記分散電源からの出力を変換するとともに、前記電流センサに電力供給する電源部と、この電源部が電流センサに出力する実測電圧及び定格電圧を記憶する記憶部と、前記電流センサから返される電圧信号を実測電流値として読み取る演算部とを有し、さらにこの演算部は、前記実測電圧
を定格電圧で割ってG(ゲイン)を求め、演算部に入力された実測電流値をこのGで割ることにより、前記実測電流値を補正する第1処理機能を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の計測装置において、前記演算部は、前記第1処理機能が実行された後に、計測電流が0Aのとき、前記電流センサから返される電圧信号を0Aと判定するよう調整する第2処理機能を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る計測装置によれば、計測装置本体は、分散電源からの出力を変換するとともに、電流センサに電力供給する電源部と、この電源部が電流センサに出力する実測電圧及び定格電圧を記憶する記憶部と、電流センサから返される電圧信号を実測電流値として読み取る演算部とを有し、さらにこの演算部は、実測電圧と定格電圧との比率に基づき、実測電流値を補正する第1処理機能を備えるものとした。この第1処理機能を実行することにより、実測電圧/定格電圧によりG(ゲイン)を求め、次いで演算部に入力された実測電流値をこのGで割ることで、一次関数として表される電流センサからの出力電圧(y)と計測電流(x)との関係を、理想値と同じ傾きを有するものとして補正することができる。したがって、電流センサ毎に実測して電流値の補正を行う必要がないため、電流センサの交換時に再調整が不要となる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、第1処理機能が実行された後に、計測電流が0Aのとき、電流センサから返される電圧信号を0Aと判定するよう調整する第2処理機能を、演算部に備えるものとした。この第2処理機能を実行することによって、電流センサからの出力電圧(y)と計測電流(x)との関係が理想値と同じ0切片となるよう補正され、電流センサの個体差により出力電圧に誤差が生じていても、理想値とほぼ合致する近似値を得ることができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】計測装置本体と電流センサとの接続を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1のように、分散電源である複数の太陽電池ストリング1は、各接続箱2内で並列に接続されている。そしてこれら接続箱2を複数段に配置して並列に接続することで、集電箱3に電力を集約するものとしている。さらに集電箱3の後段には、パワーコンディショナ4やキュービクル5が設けられている。
【0015】
各接続箱2の内部には、太陽電池ストリング1から出力される発電量を計測するための計測装置6が設けられている。また、この計測装置6は、計測情報を後段の集電箱3等に送信するための外部機器9を備えている。さらにこれら計測情報は、パワーコンディショナ4から出力される情報等と統合されて、キュービクル5内で集約されるものとしても良い。
【0016】
本発明は、計測装置6に係るものであり、その詳細を
図2に示す。
1は太陽電池ストリングであるが、起動直後の出力が微弱な様々な分散電源とすることもでき、例えば風力発電機、ガス発電機、蓄電池等であっても良い。計測装置6は、太陽電池ストリング1に接続される計測装置本体7と、計測装置本体7に通信線10を介して接続される電流センサ8と、前述した外部機器9とを有する。なお、電流センサ8はホール素子により構成されている。計測装置本体7の内部には、太陽電池ストリング1から出力された直流電流を一定電圧に変換する変換器11と、変換器11と同様に、太陽電池ストリング1から出力される電圧を変換するとともに、電流センサ8に電力供給する電源部12とを備えている。さらに、計測装置本体7は、電源部12が電流センサ8に出力する実測電圧及び定格電圧を記憶する記憶部13と、電流センサ8から返される電圧信号を実測電流値として読み取る演算部14とを内蔵している。
【0017】
また、変換器11は外部機器9に電力供給を行うほか、電源部12を介して電圧を変換して演算部14等に電力供給を行うものとしている。
なお、外部機器9は、計測された発電量を外部に無線等で通信するものであるが、その他にも有線で通信するものであっても差し支えない。以上の構成により、電流センサ8により計測された電流値は、演算部14に返され、演算部14内で処理された計測情報が外部機器9に送られることで、太陽電池ストリング1から出力される発電量に関する情報を得ることができるものとなる。
【0018】
ここで、演算部14は、電源部12が電流センサ8に出力する実測電圧と定格電圧との比率に基づき、実測電流値を補正する第1処理機能を備えるものとしている。より詳細には、記憶部13に記憶された実測電圧、定格電圧の情報に基づき、先ず実測電圧を定格電圧により割り、G(ゲイン)を求める。次いで、演算部14に入力された実測電流値をこのGで割ることにより、
図3中に矢印cで示すように、一次関数として表される電流センサからの出力電圧(y)と計測電流(x)との関係を、理想値と同じ傾きを有するものとして補正することができる。したがって、電流センサ8毎に実測して電流値の補正を行う必要がないため、電流センサ8の交換時に再調整が不要となる。
【0019】
さらに、演算部14は第2処理機能を備えるものとし、詳しくは、第1処理機能を実行した後に、計測電流が0Aのとき電流センサ8から返される電圧信号を0Aと判定するよう調整するものとした。この第2処理機能を実行することによって、
図3中に矢印dで示すように、電流センサ8からの出力電圧(y)と計測電流(x)との関係が理想値と同じ0切片となるよう補正され、電流センサ8の個体差により出力電圧に誤差が生じていても、理想値とほぼ合致する近似値を得ることができるものとなる。なお、この第2処理機能は、計測装置本体7に設けられたリセットボタン等を押下することにより、実行されるものとしている。
【0020】
また、
図2のように、変換器11と外部機器9との間には、遅延回路15を配置するものとした。この遅延回路15は、変換器11に繋がる電位を監視するとともに、その電位が所定値を超えたときに、外部機器9に繋がる電路を閉路するものである。これにより、変換器11に過渡電流が流入するタイミングと外部機器9に過渡電流が流入するタイミングとをずらすことができるため、変換器11に流入する過渡電流を許容電流値内に抑えることができるものとしている。
【符号の説明】
【0021】
1 太陽電池ストリング
2 接続箱
3 集電箱
4 パワーコンディショナ
5 キュービクル
6 計測装置
7 計測装置本体
8 電流センサ
9 外部機器
10 通信線
11 変換器
12 電源部
13 記憶部
14 演算部
15 遅延回路