特許第6584293号(P6584293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584293
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】コルゲートチューブ通し治具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/06 20060101AFI20190919BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   H02G1/06
   H02G3/04 062
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-219095(P2015-219095)
(22)【出願日】2015年11月9日
(65)【公開番号】特開2017-93107(P2017-93107A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】大西 功二
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−301614(JP,A)
【文献】 特開2000−59943(JP,A)
【文献】 特開平7−245840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/06
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに一方の側縁において前後方向に沿って連続し、断面略菱形の懐部を形成する可撓性を具備する第1板体および第2板体と、
前記一方の側縁の前記懐部の外側に設けられた側縁突条と、
前記第1板体と前記第2板体とに跨がって、前記第1板体、前記第2板体のそれぞれから外側に向かって突出するように設けられ、後方において前記側縁突条に接続され前記一方の側縁側から他方に向かうように延伸する傾斜突条とを有し、
前記側縁突条および前記傾斜突条は複数であって、互いに接続された前記側縁突条および前記傾斜突条のそれぞれにおいて、
前記傾斜突条の後側の面である傾斜突条後面が前記側縁突条と接続され、前記傾斜突条後面は、前方に向かうに従い前記一方の側縁から離れるように傾斜していることを特徴とするコルゲートチューブ通し治具。
【請求項2】
前記第1板体および前記第2板体の一方の端縁は、前記一方の側縁寄りの範囲が前記傾斜突条に略平行であることを特徴とする請求項1記載のコルゲートチューブ通し治具。
【請求項3】
前記第1板体および前記第2板体の前記懐部の外側に、前記傾斜突条の前記側縁突条に接続された方の面を延長した仮想延長面上に略配置された面を具備し、前記傾斜突条との間に間隙を空けて設けられた補助傾斜突条を有することを特徴とする請求項1または2記載のコルゲートチューブ通し治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコルゲートチューブ通し治具、特に、コルゲートチューブをワイヤハーネスに装着するためのコルゲートチューブ通し治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネスの幹線から分岐線(枝線)が引き出される分岐部にコルゲートチューブを装着するための治具として、正面視の断面が略Ω字状で、側面視略三角形であって、一対の傾斜縁のそれぞれに外方に突出するフランジ状の案内レールを設け、溝底の前端に分岐線収納切欠を備えた構造を有する発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、幹線を内部に保持する断面半円環状の内側筒部および外側筒部と、内側筒部の前端領域の下辺に設けられたそれぞれ外側に突出した一対の顎部と、一対の顎部にそれぞれ設けられた互いに平行な把持部と、コルゲートチューブに形成されている軸方向スリットを案内可能なフランジ部とを設けた発明が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−237530号公報(第2−3頁、図1
【特許文献2】特開2013−233031号公報(第6−7頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された発明は、可撓性を有するものであって、幹線を包囲した状態で分岐線収納切欠に分岐線を装着して、傾斜縁の後端を指先で押させることによって傾斜縁の後端を当接させ、一対の案内レールを突き合わせるものである。そして、当接している傾斜縁の後端をコルゲートチューブに形成されている軸方向スリットに係合させ、案内レールをコルゲートチューブ内に侵入させた状態で、コルゲートチューブを前端に向けて送り出して幹線を包囲すると共に、コルゲートチューブに形成されている孔あき部(分岐線貫通用孔)に分岐線を収納するものである。
このため、傾斜縁の後端を近接させるには、指先に大きな力をかける必要があり、また、傾斜縁の後端の近接が不十分である場合には、軸方向スリットを傾斜縁の後端に嵌めることができないことから、作業性が悪いという問題があった。
【0005】
特許文献2に開示された発明は、外側筒部の前端領域の下辺を鍔部に連結し、上辺を鍔部の前端に向けて傾斜状に形成し、フランジ部をかかる傾斜した上辺の外方に屈曲形成しているため、把持部を指先で把持し、断面半円環状の内側筒部を幹線に被せた状態で、フランジ部の後端に軸方向スリットを係合させ、前端に向けてコルゲートチューブを移動させるものである。したがって、軸方向スリットは、前端に向けての移動に伴って徐々に拡開され、前端を離れるときには十分に拡開された状態で、前端から露出している幹線へと案内され、やがて、前端から離れた後、コルゲートチューブが幹線を収納した状態で、弾性力によって閉鎖する。このとき、並行して治具を後端方向に移動させることによって、コルゲートチューブに形成された孔あき部から分岐線を引き出すことができる。
このため、特許文献1における問題を解消することはできるものの、内側筒部の内径は幹線の外径に対応した大きさであるため、幹線の外径毎に当該治具を用意する必要あるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、様々な外径のワイヤハーネス(幹線)に対しても使用可能で、コルゲートチューブをワイヤハーネスに装着する作業性を向上させるコルゲートチューブ通し治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコルゲートチューブ通し治具は、互いに一方の側縁において前後方向に沿って連続し、断面略菱形の懐部を形成する可撓性を具備する第1板体および第2板体と、前記一方の側縁の前記懐部の外側に設けられた側縁突条と、前記第1板体と前記第2板体とに跨がって、前記第1板体、前記第2板体のそれぞれから外側に向かって突出するように設けられ、後方において前記側縁突条に接続され前記一方の側縁側から他方に向かうように延伸する傾斜突条とを有し、前記側縁突条および前記傾斜突条は複数であって、互いに接続された前記側縁突条および前記傾斜突条のそれぞれにおいて、前記傾斜突条の後側の面である傾斜突条後面が前記側縁突条と接続され、前記傾斜突条後面は、前方に向かうに従い前記一方の側縁から離れるように傾斜していることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るコルゲートチューブ通し治具は、前記第1板体および前記第2板体の一方の端縁は、前記一方の側縁寄りの範囲が前記傾斜突条に略平行であることを特徴とする。
さらに、本発明に係るコルゲートチューブ通し治具は、前記第1板体および前記第2板体の前記懐部の外側に、前記傾斜突条の前記側縁突条に接続された方の面を延長した仮想延長面上に略配置された面を具備し、前記傾斜突条との間に間隙を空けて設けられた補助傾斜突条を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
(a)本発明によれば、軸方向スリットを具備するコルゲートチューブをワイヤハーネスに装着する際、コルゲートチューブ通し治具の懐部にワイヤハーネスを把持して、コルゲートチューブを斜め方向に送り出し、側縁突条をコルゲートチューブの軸方向スリットに侵入させ、傾斜突条をコルゲートチューブ内に侵入させる。そうすると、軸方向スリットは、第1板体の外面(懐部の外側の面に同じ)および第2板体の外面に摺動しながら広げられ、やがて、該外面から外れたところで、ワイヤハーネスを包囲した状態で、再び狭くなる。よって、簡単な動作でコルゲートチューブをワイヤハーネスに装着することができるから、作業性が向上する。
(b)また、傾斜突条および側縁突条が複数設けられているから、コルゲートチューブの大きさ(内径)毎に、好適な傾斜突条および側縁突条を選択することができる。すなわち、1つのコルゲートチューブ通し治具によって、複数径のコルゲートチューブをワイヤハーネスに装着することができるから、治具の保有数が減少し、治具管理が簡素になる。
(c)さらに、コルゲートチューブ通し治具は略U字状であって、第1板体および第2板体の他方の側縁が離れている。すなわち、懐部は一方の側縁の反対側が開口しているから、分岐線を具備するワイヤハーネスを分岐部において把持することができる。このため、ワイヤハーネスを把持した状態でコルゲートチューブを送り出して、ワイヤハーネスを保持(軽く把持)した状態でコルゲートチューブ通し治具を一方向に移動する作業を繰り返すだけで、複数の分岐部が設けられたワイヤハーネスに、複数の孔あき部が設けられたコルゲートチューブを簡単かつ迅速に装着することができる。すなわち、コルゲートチューブ通し治具を分岐部毎に取り付けたり、取り外したりする手間が不要になる。
よって、分岐線(分岐部)の有無や数に関わらず、ワイヤハーネスにコルゲートチューブを装着する作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に係るコルゲートチューブ通し治具を説明する側面図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るコルゲートチューブ通し治具を説明する底面図である。
図3】本発明の実施の形態1に係るコルゲートチューブ通し治具を説明する図1のA−A断面における背面視の断面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係るコルゲートチューブ通し治具の使用方法を作業工程を追って説明する側面図であって、コルゲートチューブ通し治具の取り付け工程(S1)である。
図5】本発明の実施の形態1に係るコルゲートチューブ通し治具の使用方法を作業工程を追って説明する側面図であって、コルゲートチューブの取り付け工程(S2)である。
図6】本発明の実施の形態1に係るコルゲートチューブ通し治具の使用方法を作業工程を追って説明する側面図であって、コルゲートチューブの押し込み工程(S3)である。
図7】本発明の実施の形態1に係るコルゲートチューブ通し治具の使用方法を作業工程を追って説明する側面図であって、コルゲートチューブの位置合わせ工程(S4)である。
図8】本発明の実施の形態1に係るコルゲートチューブ通し治具の使用方法を作業工程を追って説明する側面図であって、コルゲートチューブ通し治具の移動工程(S5)である。
図9】本発明の実施の形態1に係るコルゲートチューブ通し治具の使用方法を作業工程を追って説明する側面図であって、コルゲートチューブ通し治具の取り外し工程(S6)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態1]
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態1」と称す)を、図面を参照しつつ説明する。
図1図3は本発明の実施の形態1に係るコルゲートチューブ通し治具を説明するものであって、図1は側面図、図2は底面図、図3図1のA−A断面における背面視の断面図である。なお、各図面は模式的に描かれたものであって、本発明は描かれた形態に限定されるものではない。
【0012】
(コルゲートチューブ通し治具)
図1図3において、コルゲートチューブ通し治具(以下「COT通し治具」と称す)100は、一方の側縁(以下「接続側縁」と称す)11において連続し、断面略菱形の懐部110を形成する第1板体10aおよび第2板体10bによって形成されている。すなわち、第1板体10aおよび第2板体10bは、接続側縁11において折り曲げられたような形態で一体になっている。なお、COT通し治具100は面対称であるから、説明の便宜上、かかる対称面を「X−Y面」と、接続側縁11の方向を「X方向」と、X−Y面に垂直の方向を「Z方向」とそれぞれ称す。
そして、接続側縁11の懐部110の外側(以下「外面」と称す場合がある)には、X−Y面を含む所定の厚さ(Z方向の幅に同じ)の側縁突条20a、20b、20c、20dが、互いに間隔を空けて設けられている。また、接続側縁11において側縁突条20a、20b、20cのそれぞれに接続され、接続側縁11を経由して、第1板体10aと第2板体10bとに跨がって懐部110の外側(外面)に傾斜突条30a、30b、30c、30dが設けられている。以下、それぞれについて詳細に説明する。
【0013】
(板体)
第1板体10aは、接続側縁11に近い第1板体下面12aと、第1板体下面12aの一部に連なった第1板体中面13aと、第1板体中面13aに連なった第1板体上面14aとを具備している。同様に、第2板体10bは、接続側縁11に近い第2板体下面12bと、第2板体下面12bの一部に連なった第2板体中面13bと、第2板体中面13bに連なった第2板体上面14bとを具備している。
そして、第1板体下面12aの接続側縁11とは反対の側縁(以下「下面側縁」と称す)12uおよび第1板体上面14aの接続側縁11とは反対の側縁(以下「上面側縁」と称す)14uは、接続側縁11(Y方向)に平行である。
なお、第1板体下面12a、第1板体中面13aおよび第1板体上面14aの境界、第2板体下面12b、第2板体中面13bおよび第2板体上面14bの境界は、それぞれ滑らかに連なっていて、境界線は特定されないものであるが、説明の便宜上、境界に相当する位置に二点鎖線を付している。また、第1板体10aと第2板体10bとは面対称であるから、第2板体10bの各部位には第1板体10aの各部位と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0014】
そして、側面視(Z方向視)において、第1板体下面12aの一方の端縁(以下「下面前端」と称す)12fは、接続側縁11からY方向に離れるほど「−X方向」になるように傾斜し、第1板体中面13aの一方の端縁(以下「中面前端」と称す)13fおよび第1板体上面14aの一方の端縁(以下「上面前端」と称す)14fは、接続側縁11に垂直(Y方向に平行)である。
【0015】
また、第1板体下面12aの他方の端縁(以下「下面後端」と称す)12rは、接続側縁11からY方向に離れるほど「+X方向」になるように傾斜している。すなわち、下面後端12rは下面前端12fとは反対の方向に傾斜している。さらに、第1板体中面13aの他方の端縁(以下「中面後端」と称す)13rおよび第1板体上面14aの他方の端縁(以下「上面後端」と称す)14rは、接続側縁11からY方向に離れるほど「−X方向」になるように傾斜している。すなわち、中面後端13rおよび上面後端14rは、接続側縁11に対する傾き量は相違するものの、下面前端12fと同じ方向に傾斜している。
【0016】
(懐部)
次に、懐部110について説明する。正面視(X方向視)において、第1板体下面12aと第2板体下面12bとの間隔、および第1板体中面13aと第2板体中面13bとの間隔は、それぞれ接続側縁11からY方向に離れるほど増加するように開いている。なお、第1板体下面12aと第2板体下面12bとがなす角度(以下「下面開き角度」と称す)θ12は、第1板体中面13aと第2板体中面13bとがなす角度(以下「中面開き角度」と称す)θ13よりも小さい。一方、X方向視において、第1板体上面14aと第2板体上面14bとの間隔は、接続側縁11からY方向に離れるほど減少して、それぞれの上面側縁14u同士は離れている。
したがって、正面視(X方向視)において、第1板体中面13aと第1板体上面14aとは、および第2板体中面13bと第2板体上面14bとは、それぞれ略く字状(略V字状)に連なり、これら4者によって断面略菱形の懐部110が形成されている。
そして、COT通し治具100は可撓性を有する樹脂によって一体的に形成されているから、上面側縁14u同士の間隔を変更可能(互いに近接ないし当接可能)および懐部110の大きさを変更可能である。
【0017】
(側縁突条)
側縁突条20a、20b、20c、20dは、接続側縁11の懐部110の外側(外面)においてX−Y面に平行に設けられている。なお、側縁突条20a、20b、20c、20dは、後記するようにコルゲートチューブの軸方向スリット(図示しない)に侵入するものである。
なお、側縁突条20dは側縁突条20aよりも、側縁突条20aは側縁突条20bよりも、側縁突条20bは側縁突条20cよりも、接続側縁11からの突出量(−Y方向の高さ)および厚さ幅(Z方向の間隔)がそれぞれより小さくなっているが、本発明はこれに限定するものではなく、適宜選定されるもので、それぞれ同じであってもよい。
また、側縁突条20aは傾斜突条30bに、側縁突条20bは傾斜突条30cに、側縁突条20cは側縁突条20dに、それぞれ接続されてもよい。さらに、側縁突条20a、20b、20c、20dの間隔や数量は限定されるものではない。
【0018】
(傾斜突条)
傾斜突条30a、30b、30c、30dはそれぞれ、接続側縁11の懐部110の外側(外面)を経由して、第1板体10aの第1板体下面12aの外面と第2板体10bの第2板体下面12bの外面とに跨がって形成されている。
そして、傾斜突条30a、30b、30cの下面後端12r側の面(以下「傾斜突条後面31a、31b、31c」と称す)が側縁突条20a、20b、20cの下面前端12f側の面(以下「側縁突条前面21a、21b、21c」と称す)に連なり、Z方向視において、下面前端12fに平行になっている。すなわち、傾斜突条後面31aは接続側縁11から離れるほど側縁突条20aから遠ざかるように傾斜し、傾斜突条後面31bは接続側縁11から離れるほど側縁突条20bから遠ざかるように傾斜し、傾斜突条後面31cは接続側縁11から離れるほど側縁突条20cから遠ざかるように傾斜している。
一方、傾斜突条30dは、接続側縁11における下面前端12f側の面(以下「傾斜突条前面31d」と称す)が側縁突条20dの下面後端12r側の面(以下「側縁突条後面21d」と称す)に連なり、Z方向視において、下面後端12rに平行になっている。すなわち、傾斜突条前面31dは、接続側縁11から離れるほど側縁突条20dから遠ざかるように傾斜している。
なお、傾斜突条30a、30b、30c、30dの突出量は適宜選定されるものであって、それぞれ側縁突条20a、20b、20c、20dの突出量と相違してもよい。
【0019】
(補助傾斜突条)
さらに、第1板体中面13aの外面および第2板体中面13bの外面には、Z方向視において、傾斜突条後面31a、31b、31cを延長した仮想延長面上に略位置する補助傾斜突条後面41a、41b、41cを具備する補助傾斜突条40a、40b、40cがそれぞれ設けられている。このとき、補助傾斜突条40a、40b、40cは、第1板体下面12aの外面および第2板体下面12bの外面に設けられた傾斜突条30a、30b、30cとは間隔を空けて離れているから、下面開き角度θ12および中面開き角度θ13は容易に変更可能、すなわち、懐部110の大きさが容易に変更可能になっている。
一方、第1板体下面12aおよび第2板体下面12bの下面後端12r寄りの範囲に、傾斜突条前面31dに平行な補助傾斜突条後面51dを具備する補助傾斜突条50dが設けられている。補助傾斜突条50dは側縁突条20d側(傾斜突条30dを延長した仮想延長面から外れた位置)に配置され、傾斜突条前面31dと補助傾斜突条後面51dとは所定の距離離れている。なお、補助傾斜突条40a、40b、40c、50dの突出量や長さは適宜選定されるものである。
【0020】
(使用方法)
図4図9は本発明の実施の形態1に係るコルゲートチューブ通し治具の使用方法を作業工程を追って説明する側面図であって、図4はコルゲートチューブ通し治具の取り付け工程(S1)、図5はコルゲートチューブの取り付け工程(S2)、図6はコルゲートチューブの押し込み工程(S3)、図7はコルゲートチューブの位置合わせ工程(S4)、図8はコルゲートチューブ通し治具の移動工程(S5)、図9はコルゲートチューブ通し治具の取り外し工程(S6)である。
なお、各図面は模式的に描かれたものであって、本発明は描かれた形態に限定されるものではない。また、図面が煩雑になるのを避けるため、一部の部位については符号の記載を省略している。
【0021】
図4図9を参照して、幹線210と分岐線220とが分岐部230において分岐しているワイヤハーネス(以下「W/H」と称す)200に、軸方向スリット310と、軸方向スリット310の位置に形成された孔あき部320とを具備するコルゲートチューブ(以下「COT」と称す)300を装着する際のCOT通し治具100の使用方法について、各工程(S1〜S6)を順に説明する。
【0022】
(S1:治具の取り付け)
図4において、COT通し治具100の上面側縁14u同士の間隔を広げて、W/H200の分岐部230(幹線210の一部および分岐線220の一部)を懐部110(図3参照)に収容する。
まず、COT通し治具100を幹線210に対して斜めにして、矢印Y1の方向に移動し、幹線210に上面側縁14uを当接ないし摺動させる。そして、COT通し治具100を矢印R1の方向に回動する。
【0023】
(S2:COTの取り付け)
図5において、前記矢印R1方向の回転によって、接続側縁11は幹線210に平行になって、懐部110に分岐部230が収納され、幹線210の分岐部230を挟んだ両側が接続側縁11と平行に引き出され、分岐線220は接続側縁11に垂直に引き出されている。
そして、COT300の軸方向スリット310にCOT通し治具100の側縁突条20bを侵入させて、COT300を矢印Y2の方向に送り出し、COT300の内部に傾斜突条30bを侵入させる(あるいは、傾斜突条30bを侵入させた後、側縁突条20bを侵入させる)。このとき、指先で、第1板体10aと第2板体10bとを挟み付けて懐部110を狭くすることによって、COT通し治具100はW/H200を確実に把持可能であるから、COT300の矢印Y2の方向への送り出しが容易になる。
【0024】
なお、この場合に、傾斜突条30a、30b、30c、30dの内で傾斜突条30bが選択されたのは、傾斜突条30bと下面前端12fとの距離がCOT300の内径よりもわずかに小さいからである。すなわち、仮に、傾斜突条30cが選択されたのでは、傾斜突条30cと下面前端12fとの距離はCOT300の内径よりも大きいため、傾斜突条30cはCOT300の中に侵入不可能である。
一方、仮に、傾斜突条30aが選択されたのでは、傾斜突条30aと下面前端12fとの距離はCOT300の内径よりも十分小さいため、傾斜突条30aはCOT300の中に侵入可能であるもの、後記するように、軸方向スリット310が十分に拡大される前に、COT300はCOT通し治具100から外れてしまい、W/H200を包囲不可能になる。同様に、仮に、傾斜突条30dが選択されたのでは、W/H200を包囲不可能になる。
【0025】
(S3:COTの押し込み)
図6において、COT通し治具100は可撓性を有する樹脂によって成形されているから、第1板体上面14aおよび第2板体上面14bと、第1板体中面13aおよび第2板体中面13bとを挟み付けることによって、W/H200を懐部110において把持した状態で、COT300を矢印Y2の方向に押し込む。
そうすると、軸方向スリット310は第1板体下面12aおよび第2板体下面12bの外面に摺動して、幅が徐々に拡大され、さらに、第1板体中面13aおよび第2板体中面13bの外面に摺動して、幅はさらに拡大される。このとき、COT300の内面(図示しない)は傾斜突条後面31bに摺動し、さらに、補助傾斜突条後面41bに摺動するから、COT300はCOT通し治具100から脱落しない。
【0026】
そして、軸方向スリット310は第1板体中面13aおよび第2板体中面13bの外面に摺動した後、当該外面から外れ、COT300は、一部がW/H200を包囲した状態で矢印X1の方向に送り出される。そして、軸方向スリット310の幅は弾性復元力によって縮小し、COT300はW/H200を包囲する。
なお、軸方向スリット310は第1板体中面13aの外面および第2板体中面13bの外面から外れた後、幅が縮小して、第1板体上面14aの外面および第2板体上面14bの外面に摺動する場合がある。
【0027】
(S4:COTの位置合わせ)
図7において、COT300の孔あき部320が分岐部230の位置に到達したところ(図6参照)で、COT通し治具100を矢印X2の方向に移動して分岐部230から離す。そうすると、COT300は傾斜突条30bおよび補助傾斜突条40bに摺動して、矢印Y2の方向に引き付けられるため、孔あき部320の位置はCOT通し治具100から外れ、孔あき部320に分岐線220が侵入する。
【0028】
(S5:治具の移動)
図8において、COT通し治具100を矢印X2の方向にさらに移動すると、COT300は傾斜突条30bおよび補助傾斜突条40bに摺動して、矢印Y2の方向に引き付けられる。そうすると、軸方向スリット310の孔あき部320に近い範囲はCOT通し治具100から外れて閉じ、分岐線220はCOT300の孔あき部320から引き出された状態で、幹線210の分岐部230の前後がCOT300によって包囲される。
【0029】
(S6:治具の取り外し)
図9において、COT通し治具100がCOT300から外れたところで、COT通し治具100を矢印Y3の方向に引っ張り、W/H200から取り外す。このとき、第1板体上面14aおよび第2板体上面14bの懐部110側の面(「内面」に同じ)は幹線210に摺動して、互いの間隔が拡大するから、COT通し治具100をW/H200から容易に取り外すことができる。
【0030】
(別の使用方法)
以上は、軸方向スリット310に側縁突条20bを侵入させて、COT300(外径が例えば19mmまたは22mm)の内部に傾斜突条30bを侵入させているが、COT300がより小径(外径が例えば10mm、13mmまたは22mm)の場合は、軸方向スリット310に側縁突条20aを侵入させて、COT300の内部に傾斜突条30aを侵入させる(あるいは傾斜突条30aを侵入させた後、側縁突条20aを侵入させる)。反対に、COT300がより大径(外径が例えば25mm以上)の場合は、軸方向スリット310に側縁突条20cを侵入させて、COT300の内部に傾斜突条30cを侵入させる(あるいは傾斜突条30cを侵入させた後、側縁突条20cを侵入させる)。
また、COT300が非常に小径(外径が例えば10mm未満)の場合は、軸方向スリット310に側縁突条20dを侵入させて、COT300の内部に傾斜突条30dを侵入させる(あるいは傾斜突条30dを侵入させた後、側縁突条20dを侵入させる)。このとき、COT300の軸方向スリット310に近い内面および外面は、傾斜突条30dおよび補助傾斜突条50dに挟まれるように案内されるから、作業が容易である。
【0031】
さらに、孔あき部320を具備しないW/H200に装着する場合、前記S4(COTの位置合わせ)をする必要がなく、また、複数の分岐部230(複数の分岐線220)を具備するW/H200に装着する場合、前記S5(治具の移動)の後、前記S6(治具の取り外し)をすることなく、前記S4(COTの位置合わせ)を実行する。すなわち、分岐部230毎に、COT300を取り外したり、取り付けたりする面倒を排除して、COT通し治具100を一方向に移動するだけで、当該装着作業が可能になる。
【0032】
(作用効果)
本発明の実施の形態1に係るCOT通し治具100は、以上であるから、以下の作用効果を奏する。
(a)側縁突条20a等は軸方向スリット310に確実に侵入可能で、傾斜突条30a等はCOT300を確実に案内可能で、COT300は一方向の押し込みによって容易にW/H200を包囲するから、COT300を装着する作業性が向上する。
(b)側縁突条20a等および傾斜突条30a等が複数箇所に設けられているから、1つのCOT通し治具100によって、いろいろなサイズのCOT300をW/H200に装着することが可能になる。よって、治具の保管数が減少し、治具管理が簡素になる。
(c)また、COT通し治具100は、接続側縁11とは反対側が開口している。すなわち、上面側縁14u同士が連結されていないから、COT通し治具100を一方向(X2方向)に移動するだけで、COT通し治具100を分岐部230毎に取り付けたり、取り外したりすることなく、複数の孔あき部320が設けられたCOT300を複数の分岐部230(複数の分岐線220)を具備するW/H200に装着することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明に係るコルゲートチューブ通し治具は簡素な構成であって、1つのコルゲートチューブ通し治具によって、いろいろなサイズのコルゲートチューブをワイヤハーネスに簡単に装着することができるから、コルゲートチューブとワイヤハーネスとに限定することなく、軸方向スリットあるいは螺旋状スリットを具備する可撓性管体を、棒状部ないし管状部に具備する物体に装着する治具として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
10a:第1板体
10b:第2板体
11 :接続側縁
12a:第1板体下面
12b:第2板体下面
12f:下面前端
12r:下面後端
12u:下面側縁
13a:第1板体中面
13b:第2板体中面
13f:中面前端
13r:中面後端
14a:第1板体上面
14b:第2板体上面
14f:上面前端
14r:上面後端
14u:上面側縁
20a:側縁突条
20b:側縁突条
20c:側縁突条
20d:側縁突条
21a:側縁突条前面
21b:側縁突条前面
21c:側縁突条前面
21d:側縁突条後面
30a:傾斜突条
30b:傾斜突条
30c:傾斜突条
30d:傾斜突条
31a:傾斜突条後面
31b:傾斜突条後面
31c:傾斜突条後面
31d:傾斜突条前面
40a:補助傾斜突条
40b:補助傾斜突条
40c:補助傾斜突条
41a:補助傾斜突条後面
41b:補助傾斜突条後面
41c:補助傾斜突条後面
50d:補助傾斜突条
51d:補助傾斜突条後面
100:COT通し治具(コルゲートチューブ通し治具)
110:懐部
200:W/H(ワイヤハーネス)
210:幹線
220:分岐線
230:分岐部
300:COT(コルゲートチューブ)
310:軸方向スリット
320:孔あき部
θ12:下面開き角度
θ13:中面開き角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9