(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、該スチレン系単量体単位の含有量が69〜96質量%であり、該(メタ)アクリル酸系単量体単位の含有量が4〜16質量%であり、かつ、該(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量が0〜15質量%であるスチレン−メタクリル酸系共重合樹脂(a);
平均粒子径0.2〜5.0μmのゴム状弾性体を含有するハイインパクトポリスチレン(HIPS)(b);並びに
シリコーンオイル(c);
を含むスチレン系樹脂組成物であって、該(b)成分中の該ゴム状弾性体の含有量が、該(a)成分と該(b)成分の合計量を100質量部としたとき0.05質量部〜0.3質量部であり、かつ、該(c)成分中のSi元素量が、該(a)成分と該(b)成分の合計量に対して0.2ppm〜500ppmである、前記スチレン系樹脂組成物。
前記(c)成分中のSi元素量が、前記(a)成分と前記(b)成分の合計量に対して0.2ppm〜300ppmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
[スチレン系樹脂組成物]
前記したように、本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、該スチレン系単量体単位の含有量が69〜96質量%であり、該(メタ)アクリル酸系単量体単位の含有量が4〜16質量%であり、かつ、該(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量が0〜15質量%であるスチレン−メタクリル酸系共重合樹脂(a);
分散粒子としてゴム状弾性体を含有する樹脂(b);並びに
シリコーンオイル(c);
を含むスチレン系樹脂組成物であって、該(b)成分中の該ゴム状弾性体の含有量が、該(a)成分と該(b)成分の合計量を100質量部としたとき0.05質量部〜0.3質量部であり、かつ、該(c)成分中のSi元素量が、該(a)成分と該(b)成分の合計量に対して0.2ppm〜500ppmである、前記スチレン系樹脂組成物である。
【0010】
<スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合樹脂(a)>
本実施形態において、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合樹脂(a)は、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位からなる共重合体である。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用できるが、工業的に安価で使用できることからスチレンが好ましい。
(メタ)アクリル酸系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。耐熱性低下に対する影響が小さいことから(メタ)アクリル酸が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用できるが、耐熱性低下に対する影響が小さいことから(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。
【0011】
本実施形態においては、前記共重合樹脂中のスチレン系単量体の含有量としては、69〜96質量%、より好ましくは74〜92質量%、より好ましくは77〜88質量%である。この含有量が69質量%未満では、樹脂の流動性が低下し、他方、96質量%を超えると、(メタ)アクリル酸系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を所望量存在させることができないため、所望の効果が得られない。
【0012】
本実施形態において、(メタ)アクリル酸系単量体単位は、耐熱性の向上に寄与する。前記共重合樹脂のスチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位、及びメタクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、(メタ)アクリル酸系単量体単位の含有量は4〜16質量%であり、好ましくは6〜14質量%、より好ましくは9〜13質量%の範囲である。この含有量が4質量%未満では耐熱性向上の効果の発現が不十分であり、他方、16質量%を超えると、前記共重合樹脂中のゲル化物が増加し、外観不良となり、また、前記共重合樹脂の流動性と機械的物性の低下とを招来するため好ましくない。
【0013】
本実施形態の共重合樹脂の製造においては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、(メタ)アクリル酸系単量体との分子間相互作用で(メタ)アクリル酸系単量体の脱水反応を抑制するため、また、前記共重合体樹脂の機械的強度を向上させるために用いられる。更に、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の添加は、耐候性、表面硬度等の樹脂特性の向上にも寄与する。
【0014】
スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有量は0〜15質量%であり、シート外観良好の観点から好ましくは2〜12質量%、より好ましくは3〜10質量%の範囲である。この含有量が15質量%を超えると、該共重合樹脂の流動性が低下し、且つ、吸水性が増加する傾向があるため好ましくない。
【0015】
スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合樹脂(a)は、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位以外の単量体単位を、所望の効果を損なわない範囲で更に含有することができるが、典型的には、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位及び(メタ)アリル酸エステル系単量体単位からなる。
スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合樹脂(a)中のスチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量は、それぞれ、前記共重合樹脂を核磁気共鳴(
13C−NMR)測定装置で測定したときのスペクトルの積分比から求めることができる。
【0016】
本実施形態においては、前記共重合樹脂中のスチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の合計量に対し、該スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体の残存量の合計は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは400ppm以下である。スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体の合計が1000ppm以下であれば、シート押出時のダイス出口周りの臭気や、前記共重合樹脂の色調が改善される。ここで、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体の残存量は、それぞれ、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0017】
本実施形態において、前記共重合樹脂(a)のビカット軟化温度は、電子レンジでの使用環境の観点から、好ましくは110℃以上であり、より好ましくは113℃以上、さらに好ましくは117℃以上である。また、ビカット軟化温度の上限は特にない。ビカット軟化温度は、ISO306に準拠して測定することができる。
【0018】
本実施形態において、前記共重合樹脂(a)の重量平均分子量は10万〜35万であることが好ましく、Z平均分子量(Mz)の重量平均分子量(Mw)に対する比(Mz/Mw)は1.6〜3.5であることが好ましい。Mwは、より好ましくは13万〜30万、更により好ましくは16万〜25万である。Mwが10万〜35万であると、衝撃強度と流動性とのバランスに優れる樹脂が得られ、また、ゲル化物の混入も少ない。Mz/Mwの比は、より好ましくは1.7〜3.0、更に好ましくは1.7〜2.5である。Mz/Mwの比が1.6〜3.5であると、衝撃強度と流動性とのバランスに優れる樹脂が得られ、また、ゲル化物の混入も少ない傾向となる。Mz及びMwは、ゲルパーミエイション・クロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定することができる。
【0019】
前記共重合樹脂(a)の重合方法については、特に制限はないが、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法を採用できる。重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程とからなる。
以下、本実施形態の共重合樹脂(a)の重合方法について説明する。
【0020】
前記共重合樹脂(a)を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させる。重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4ービス(t−ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等が挙げられる。分解速度と重合速度との観点から、とりわけ1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
【0021】
前記共重合樹脂(a)の重合時には必要に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤としては、例えば、αメチルスチレンリニアダイマー、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等が挙げられる。
【0022】
例えば、スチレン系樹脂の原料であるスチレン、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸メチルの重合時には、スチレンの2量体や3量体が生成する。このスチレンの2量体や3量体の生成量は、重合開始の方法で異なる。すなわち、重合開始剤として有機過酸化物若しくはアゾ系重合開始剤を使用した場合と、熱開始のみとした場合では、それらの生成量は異なる。スチレンの2量体や3量体の生成量は、有機過酸化物を使用する場合が最も低く、熱開始のみの場合が最も高い。スチレンの2量体や3量体は、押出機での押出時のダイス出口への目やにの付着、射出成形時の金型への目やにの付着等で不具合を生じさせる場合がある。従って、重合開始方法としては重合開始剤として有機過酸化物の使用が好ましい。スチレン系樹脂100質量%中のスチレンの2量体と3量体の合計量は低いほど好ましいが、より好ましくは0.7質量%以下、更により好ましくは0.6質量%以下である。スチレンの2量体と3量体としては、1,3−ジフェニルプロパン、2,4−ジフェニル−1ブテン、1,2−ジフェニルシクロブタン、1−フェニルテトラリン、2,4,6−トリフェニル−1−ヘキセン、1−フェニル−4−(1’−フェニルエチル)テトラリン等が挙げられる。
【0023】
重合方法として、必要に応じて、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。用いられる重合溶媒としては、芳香族炭化水素類、例えば、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、それぞれ、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の重合溶媒、例えば、脂肪族炭化水素類等を、芳香族炭化水素類に更に混合することができる。これらの重合溶媒は、全単量体100質量部に対して、25質量部を超えない範囲で使用するのが好ましい。全単量体100質量部に対して重合溶媒が25質量部以下であれば、重合速度の低下、及び得られる樹脂の機械的強度の低下が抑制されるため好ましい。重合前に、全単量体100質量部に対して5〜20質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
【0024】
前記共重合樹脂(a)を得るための重合工程で用いる装置は、特に制限はなく、用いる重合方法に応じて適宜選択すればよい。例えば、塊状重合による場合には、完全混合型反応器を1基、又は複数基連結した重合装置を用いることができる。また、脱揮工程についても特に制限はなく、塊状重合で行う場合、最終的に未反応モノマーが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、かかる未反応モノマー等の揮発分を除去するために、既知の方法にて脱揮処理する。例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができるが、滞留部の少ない脱揮装置が好ましい。なお、脱揮処理の温度は、通常、190〜280℃程度であり、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルとの隣接による六員環酸無水物の形成を抑制する観点から、190〜260℃がより好ましい。また脱揮処理の圧力は、通常0.13〜4.0kPa程度であり、好ましくは0.13〜3.0kPaであり、より好ましくは0.13〜2.0kPaである。脱揮方法としては、例えば、加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、又は揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
【0025】
<分散粒子としてゴム状弾性体を含有する樹脂(b)>
分散粒子としてゴム状弾性体を含有する樹脂(b)は、ゴム状弾性体の存在下で、スチレン系単量体、又はスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを重合させることにより得られる。樹脂(b)は、共重合樹脂(a)とブレンドして用いることができる。樹脂(b)のブレンド量は、(a)+(b)の合計含有量を100重量部としとき(b)成分中のゴム状弾性体の含有量が0.05〜0.3質量部、好ましくは0.1〜0.2質量部となる量である。である。樹脂(b)のブレンド量が上記範囲より低いと十分な補強効果が得られず、他方、高いと透明性が不十分となる。
【0026】
樹脂(b)のスチレン系単量体としては、スチレンの他に、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t−ブチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、インデンなどのスチレン誘導体が挙げられる。工業的観点からスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、一種又は二種以上使用することができる。
【0027】
樹脂(b)には、(メタ)アクリル酸エステル単量体を使用する。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられるが、耐熱性の観点から、エステル部が炭素数1〜4のアルキル、特に(メタ)アクリル酸メチルが望ましい。
【0028】
<ゴム状弾性体>
樹脂(b)中の分散粒子としてのゴム状弾性体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などが使用できるが、工業的観点から、ポリブタジエン及びスチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、スチレン−ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体は一種又は二種以上使用することができる。また、ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを使用することもできる。
【0029】
ゴム状弾性体の含有量とは、共役ジエン単量体の成分量を指す。共役ジエン単量体とは、一対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。
【0030】
分散粒子としてゴム状弾性体を含有する樹脂(b)としては、衝撃強度と外観の観点からハインパクトポリスチレン(HIPS)であることが好ましい。HIPSは、スチレン系単量体、又はスチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体のマトリックス中に、それら単量体がグラフト重合したゴム状弾性体がオクルードを含んだサラミ状又はコアシェル状に分散粒子で存在する形態をとっている。HIPSはゴム状重合体の存在下で単量体を塊状重合、溶液重合、塊状-懸濁重合することで製造されうる。
【0031】
ゴム状弾性体の存在下で前記単量体を乳化重合することで得られた樹脂はHIPSに比べ分散粒子が変形しづらいため延伸シートで面衝撃が発現され難く、また、乳化剤の残渣により外観も劣る。
【0032】
分散粒子としてゴム状弾性体を含有する樹脂(b)中のゴム状弾性体の含有量は、5〜15質量%が好ましく、より好ましくは7〜14質量%、より好ましくは10〜13質量%である。該含有量が5質量%未満である場合、前記共重合樹脂(a)とのブレンドにおいて、持ち込まれるマトリックス量が増えるため透明性・耐熱性の低下が大きくなる。他方、該含有量が15質量%を超える場合、樹脂(b)を製造する時に重合系の粘度が高くなり過ぎ、ゴム粒子を微細化せずに分散してしまう。樹脂(b)中のゴム状弾性体の含有量が上記範囲であれば、共重合樹脂(a)と樹脂(b)とをブレンドする際、ゴム成分の分散不良などによる、機械的強度の低下又は製品の外観不良を防止できる。ゴム状弾性体の含有量は、実施例の項に記載する手順又はこれと等価な方法で測定されうる。
【0033】
樹脂(b)中の分散粒子としてゴム状弾性体の粒子径は、好ましくは0.2〜5.0μm、より好ましくは0.8〜4.5μm、更に好ましくは1.0〜4.0μm、である。粒子径が0.2μm以上である場合、シートにした際の耐折強度が良好であり、0.8μm以上であれば、面衝撃強度と耐折強度に優れた樹脂組成物を得ることができる。また、粒子径が5.0μm以下であれば、樹脂組成物の外観が良好である。樹脂(b)はゴム状重合体の存在下で撹拌機付きの反応器内でスチレン系単量体、又はスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合させて得られるが、分散粒子径は、撹拌機の回転数、用いるゴム状重合体の分子量などで調整することができる。
【0034】
ゴム状弾性体の粒子径は、透過型電子顕微鏡による断面観察によって観察された200個の粒子について、下記式:
平均粒子径=Σ(ni×Di
4)/Σ(ni×Di
3)
{式中、niは粒子径Diを有するゴム粒子の個数であり、Diは粒子の長径と短径の平均値である。}により計算される値である。
【0035】
樹脂(b)のトルエン不溶分の膨潤指数は、8.0〜14.0であり、且つトルエン不溶分中のゴム含有量に対するトルエン不溶分の質量比(トルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム量)は1.5〜4.0であることが好ましい。この膨潤指数は、より好ましくは9.0〜13.0、更に好ましくは9.5〜12.5であり、トルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム量の比は、より好ましくは2.0〜3.5、更に好ましくは2.5〜3.5である。樹脂(b)のトルエン不溶分の膨潤指数が8.0〜14.0であり、且つ、トルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム含有量の比が1.5〜4.0であれば、機械的強度に優れる樹脂が得られる。トルエン不溶分の膨潤指数、及びトルエン不溶分/トルエン不溶分中のゴム含有量の比は、それぞれ実施例の項で説明する手順又はこれと等価な手順で測定される値である。
【0036】
シリコーンオイル(c)の添加量は、共重合樹脂(a)と分散粒子としてゴム状弾性体を含有する樹脂(b)の合計量に対して、Si量換算で0.2ppm〜500ppm、好ましくは0.5ppm〜100ppm、より好ましくは1ppm〜50ppmとなる量である。シリコーンオイルの添加量がSi量換算で0.2ppm未満になると十分な補強効果が得られず、500ppmよりも多くなると、耐熱性が低下し、透明性が不十分となる。
【0037】
シリコーンオイルは、スチレン系樹脂組成物中で分散粒子としてのゴム状弾性体に作用し、共重合樹脂(a)と該分散粒子の親和性を向上させることで、強度向上に寄与すると考えられる。特に、分散粒子としてのゴム状弾性体に対する親和性が低い(メタ)アクリル酸を含む前記共重合樹脂(a)中では、GPPSに比べシリコーンオイル添加による耐折強度に対する改善効果が著しく、また、共重合樹脂(a)中コモノマー比率が多いものの方が、改善効果が大きい。
【0038】
シリコーンオイルとしては、25℃における比重が0.9〜1.1g/cm
3の範囲で、25℃動粘度が20mm
2/s〜1000mm
2/s、好ましくは30mm
2/s〜500mm
2/s、より好ましくは50mm
2/s〜200mm
2/sであるものであることができる。このようなシリコーンオイルを使用することにより、少量の添加でその効果が発現し、より優れた強度物性を得ることができる。1000mm
2/sを超えると、添加量に比較して補強効果が小さくなり、20mm
2/s未満では揮発性が高く、成型時の金型汚れの原因となる。
【0039】
シリコーンオイル(c)としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン等が挙げられる。中でも、市販されており、安価である点から、ジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0040】
シリコーンオイル(c)の樹脂組成物への添加法としては特に制限はなく、共重合樹脂(a)、分散粒子としてゴム状弾性体を含有する樹脂(b)と個別に添加してもよく、共重合樹脂(a)、樹脂(b)製造時に予め添加し、ブレンドしてもよい。
【0041】
スチレン系樹脂組成物の、ビカット軟化温度は、電子レンジでの使用環境の観点から108℃以上であり、好ましくは116℃以上、より好ましくは120℃以上である。また、ビカット軟化温度の上限は特にない。
【0042】
スチレン系樹脂組成物を2mm厚成形品に成型したときの曇り度は、35%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下である。この範囲であれば非発泡シートに成型した際に十分な透明性を保つことができる。曇り度はISO147
82に準拠し、測定することができる。また、曇り度の下限は特にない。
【0043】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物には、スチレン系樹脂において使用が一般的な各種添加剤を、適宜添加してもよい。例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、鉱油等が挙げられる。また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体やMBS樹脂等の補強材についても物性を損なわない範囲で添加してもよい。配合の方法については特に規定はないが、例えば、共重合体の重合時に添加して重合する方法や樹脂組成物を得る際、ブレンダーで予め添加剤を混合し、押出機やバンバリーミキサー等にて溶融混錬する方法等が挙げられる。
【0044】
[シート]
他の実施形態は、上述したスチレン系樹脂組成物を用いて製造したシートである。シートは非発泡及び発泡のいずれでもよい。シートの製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。非発泡シートの製造方法としては、Tダイを取り付けた単軸又は二軸押出成形機で押出し、その後一軸延伸機又は二軸延伸機でシートを引き取る装置を用いる方法等を用いることができ、発泡シートの製造方法としては、Tダイ又はサーキュラーダイを備え付けた押出発泡成形機を用いる方法等を用いることができる。
【0045】
非発泡シートにおいては、例えば、厚みが0.1〜1.0mm程度であることが剛性及び熱成形サイクルの観点から好ましい。また、シートは通常の低倍率のロール延伸のみで形成してもよいが、特にロールで1.3倍から7倍程度延伸した後、テンターで1.3倍から7倍程度延伸したシートが強度の面で好ましい。また、ポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂と多層化して用いてもよい。更にスチレン系樹脂以外の樹脂と多層化して用いてもよい。スチレン系樹脂以外の樹脂としては、PET樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。
【0046】
発泡シートを製造する場合、押出発泡時の発泡剤及び発泡核剤としては通常用いられる物質を使用できる。発泡剤としては、ブタン、ペンタン、フロン、二酸化炭素、水等を使用することができ、ブタンが好適である。また、発泡核剤としてはタルク等を使用できる。
【0047】
発泡シートは、厚み0.5mm〜5.0mmであることが好ましく、見かけ密度50g/L〜300g/Lであることが好ましく、また、坪量80g/m
2〜300g/m
2であることが好ましい。発泡シートは、例えば、フィルムを更にラミネートすること等によって多層化してもよい。使用するフィルムの種類は、一般のポリスチレンやポリプロピレンやポリプロピレン/ポリスチレンの張合せフィルム等である。
【0048】
別の実施形態は、上述した非発泡シート又は発泡シートの成形品である。発泡シート又はこれを含む多層体は、例えば、真空成形により成形してトレー等の容器を製造することができる。また、非発泡シートは、例えば、真空成形により成形して弁当の蓋材や惣菜等を入れる容器を製造することができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例及び比較例に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されると解されるべきでない。なお、実施例及び比較例における樹脂及びシート等の分析、評価方法は、下記の通りである。
【0050】
[樹脂の性状]
(1)ビカット軟化温度の測定
ISO306に準拠して測定した。荷重は49N、昇温速度は50℃/hとした。
【0051】
(2)重量平均分子量、数平均分子量、及びZ平均分子量の測定
試料調製 :テトラヒドロフランに樹脂約0.05質量%を溶解
測定条件
機器 :TOSOH HLC−8220GPC
(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム :super HZM−H
温度 :40℃
キャリア :THF 0.35ml/min
検出器 :RI 、UV:254nm
検量線 :TOSOH製の標準PS使用
【0052】
(3)スチレン単位、(メタ)アクリル酸単位、及び(メタ)アクリル酸単位の樹脂組成の含有量の測定
核磁気共鳴(13C−NMR)装置で測定したスペクトルの積分比から樹脂組成を定量した。
試料調製:樹脂75mgをd6−DMSO 0.75mlに60℃で4〜6時間加熱溶解した。
測定機器:日本電子 JNM ECA−500
測定条件:測定温度 60℃、観測核 13C、積算回数 2万回、繰返し時間 45秒
【0053】
(4)総揮発成分量の測定
スチレン−(メタ)アクリル酸系樹脂の質量を100質量%としたとき、スチレン単量体、(メタ)アクリル酸単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、及び溶媒の残存量の合計を総揮発成分量として、ガスクロマトグラフィーにて測定した。
試料調製 :樹脂1.0gを標準物質入りジメチルホルムアミド25mlに溶解した。
測定条件
機器 :島津製製作所製ガスクロマトグラフィー GC−14Bpf
カラム :SUS 3mmφ×3m(パックドカラム)
充填剤 :液相→PEG−20M 25%
担体→Chromosorb W(AW) 60〜80メッシュ
カラム温度 :110℃
注入口温度 :220℃
検出器温度 :220℃
キャリアガス :窒素
【0054】
(5)スチレンの2量体及び3量体の測定
定量は、スチレンの2量体と3量体の標準物質で行った。
試料調整 :樹脂をメチルエチルケトンに溶解した。
測定条件
検出方法 :FID
機器 :島津製作所 GC17Apf
カラム :DB−1(100%ジメチルポリシロキサン)
30m、膜厚0.1μm、0.25mmφ
カラム温度 :100℃−2分→5℃/分→260℃−5分
注入口温度 :200℃
検出器温度 :200℃
キャリアガス :窒素
【0055】
(6)ゴム量の定量
定量は熱分解GCにて分析をおこなった。
試料調整 :樹脂をクロロホルムに5wt%で溶解し、20μlをパイロホイルに塗布し、80℃で1day真空乾燥した。
測定条件
Py-GC
機器 :日本分析工業社製 キュリーポイントインジェクター
パイロホイル温度 :590℃
高周波照射時間 :10秒
GC
機器 :アジレント・テクノロジー社製 HP−GC−6890
カラム : HP-5MS
30m、膜厚0.25mm、0.25mmφ
カラム温度 :50℃−5分→10℃/分→100℃→70℃/分→
300℃−10分
注入口温度 :300℃
検出器温度 :300℃
スプリット比 :1/20
キャリアガス :ヘリウム
検出方法 :MSD
【0056】
(7)組成物中のSi量
プラズマ発光分光法(ICP法)にて定量した。
【0057】
(8)透明性
ISO147
82に準拠して、射出成型した2mm厚みのプレートを用いて曇り度(HAZE)を測定した。
【0058】
(9)シートの外観判定
創研社製の25mmφ単軸シート押出機で厚さ0.3mmのシートを作製し、シートから8cm×20cmの大きさのシートを3枚切り出し、シート3枚の表面において(長径+短径)/2の平均径が1mm以上の異物であるゲル物の個数を数え、以下の評価基準で外観を判定した:
◎:ゲル物の個数が2点以下
○:ゲル物の個数が3〜5点
×:ゲル物の個数が6点以上
【0059】
(10)延伸シートの作製
上記25mmφ単軸シート押出機にて、スチレン系樹脂組成物から厚み1.15〜1.35mmのシートを作製した。作製したシートから10cm×10cmの大きさのシートを切出した。切出したシートを東洋精機製二軸延伸装置(EX6−S1)にて下記条件で同時二軸延伸を行い、厚み0.19mm〜0.21mmの延伸シートを作製した。
延伸温度:Vicat軟化温度+20℃、
延伸速度:170%
延伸倍率:2.5倍
【0060】
(11)延伸シートのインパクト強度(kgf・cm)の測定
東洋精機社製のフィルムインパクトテスター(A121807502)を用いて、上記(10)に記載の方法で作製したシートのインパクト強度を測定した。
【0061】
(12)延伸シートのMIT耐折強度(回)の測定
JIS P8115に準拠し、上記(10)に記載の方法で作製したシートのMIT耐折強度を測定した。
【0062】
(13)メルトフローレート(MFR)の測定
ISO 1133に準拠して測定した(200℃、荷重49N)。
【0063】
(14)トルエン不溶分の膨潤指数の測定
沈殿管にゴム変性スチレン系樹脂1gを精秤し(W1)、トルエン20ミリリットルを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機((株)日立製作所製himac、CR−20(ローター:R20A2))にて10℃以下、20000rpmで60分間遠心分離する。沈殿管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除いた。トルエンを含んだ不溶分の質量を精秤し(W2)、引き続き、160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケータ内で室温まで冷却後、トルエン不溶分の質量を精秤した(W3)。
下記式により、トルエン不溶分の膨潤指数、及びトルエン不溶分を求めた。
トルエン不溶分(%)=((W3)/(W1))×100
トルエン不溶分の膨潤指数=(W2/W3)
【0064】
[共重合樹脂(a)の調製]
[樹脂A]
スチレン70質量部、メタクリル酸8.5質量部、メタクリル酸メチル6.5質量部、エチルベンゼン15.0質量部、及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部からなる重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が3.6リットルの完全混合型反応器に、更には未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に連続的に順次供給した。完全混合反応器の重合温度は124℃とした。単軸押出機の温度を200〜250℃に設定し、10torrの減圧下で未反応モノマーを脱揮した。脱揮された未反応ガスは−5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収し、ポリマー分は樹脂ペレットとして回収した。反応器出の重合液中のポリマー分は、重合液を215℃、3kPaの減圧下で30分間乾燥後、(乾燥後の試料質量/乾燥前の試料質量×100%)により測定したところ、54.7質量%であった。上述の分析法によって得られた物性を以下の表1に示す。
【0065】
[樹脂B]
重合原料組成液をスチレン71.3質量部、メタクリル酸5.7質量部、エチルベンゼン19.0質量部、及びシクロヘキサン0.023質量部とした以外は、樹脂Aと同様の製造条件で、表1に示す性状の樹脂Bを製造した。
【0066】
[樹脂C]
GPPS樹脂としてPSジャパン製680を使用した。
【0067】
【表1】
【0068】
[分散粒子としてゴム状弾性体を含有する樹脂(b)の調製]
[樹脂D]
スチレン系単量体としてスチレン77質量部、ゴム状重合体としてポリブタジエンゴム(宇部興産社製BR15HB)9質量部、溶剤としてエチルベンゼン14質量部、重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.004質量部、及び連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー0.2質量部を混合溶解した重合液を、攪拌機を備え、温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器−1に、3.2リットル/Hrで連続的に仕込み、温度を110〜130℃に調整した。攪拌機の回転数は毎分40回転とした。
続いて層流型反応器−1と直列に接続された、攪拌機を備え、温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器−2に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分15回転とし、温度は130〜150℃に設定した。続いて攪拌機を備え、温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器−3に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分10回転とし、温度は140〜170℃に設定した。重合反応器(層流型反応器−3)から連続して排出される重合体溶液を真空ベントつき押出機で、10torrの減圧下、脱揮後ペレタイズした。押出機の温度は200〜250℃に設定した。上述の試験法で得られた物性を以下の表2に示す。
【0069】
[樹脂E]
ゴム状(弾性)重合体としてポリブタジエンゴム(旭化成ケミカルズ製ジエン35)を使用し、混合溶解した重合液の組成を、スチレン79質量部、ゴム状重合体7質量部、エチルベンゼン15質量部、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.06質量部、及びα−メチルスチレンダイマー0.05質量部とし、さらに層流型反応器−1の回転数を毎分80回転とした以外は、樹脂Dと同様の条件で樹脂Eを製造した。
【0070】
[樹脂F]
ゴム状(弾性)重合体としてスチレン-ブタジエン共重合体(旭化成ケミカルズ社製 アサプレン670A)を使用し、混合溶解した重合液の組成を、スチレン76質量部、ゴム状重合体9質量部、エチルベンゼン15質量部、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.04質量部、及びn−ドデシルメルカプタン0.03質量部とし、さらに層流型反応器−1の回転数を毎分150回転とした以外は、樹脂Dと同様の条件で樹脂Fを製造した。
【0071】
[樹脂G]
樹脂Gの作製では、単量体としてさらにメタクリル酸メチルを加え、また、ゴム状(弾性)重合体としてスチレン-ブタジエン共重合体(旭化成ケミカルズ社製 アサプレン625A)を使用した。混合溶解した重合液の組成を、スチレン40質量部、メタクリル酸メチル38質量部、ゴム状重合体9質量部、エチルベンゼン13質量部、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.02質量部、及びα−メチルスチレンダイマー0.1質量部とし、また層流型反応器−1の回転数を毎分120回転とした以外は、樹脂Dと条件で樹脂Gを製造した。
樹脂D〜Gの組成および性状を以下の表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
[シリコーンオイル(c)]
[オイルA]
シリコーンオイルとして信越化学工業社製 KF−96−100csを使用した。
[オイルB]
シリコーンオイルとして信越化学工業社製 KF−96−50csを使用した。
[オイルC]
シリコーンオイルとして信越化学工業社製 KF−96−200csを使用した。
【0074】
[実施例1]
得られた共重合樹脂[樹脂A]を99部とゴム変性スチレン系樹脂[樹脂D]を1部にシリコーンオイル(c)をSi量換算で1.5ppm加え、30mmの2軸押出機を用いて、220℃、80rpmで混練後、ペレタイズし、スチレン系樹脂組成物を得た。スチレン系樹脂組成物について、透明性、耐熱性、延伸フィルム強度(インパクト強度、MIT耐折強度)を評価した。評価結果を以下の表3に示す。
【0075】
[実施例2〜10]
以下の表3に示す割合で共重合樹脂(a)、樹脂(b)、シリコーンオイル(c)を加え、30mmφの2軸押出機を用いて、220℃、80rpmで混練後、ペレタイズし、スチレン系樹脂組成物を得た。実施例1と同様に得られたスチレン系樹脂組成物を評価した。評価結果を表3に示す。
【0076】
[比較例1]
シリコーンオイルを加えない以外は実施例1と同様に実施し、得られたスチレン系樹脂を評価した。評価結果を以下の表3に示す。シリコーンオイルを加えない場合は実施例1と比較し、樹脂組成物の強度が著しくMIT耐折強度が低下した。
【0077】
[比較例2]
シリコーンオイルを加えない以外は実施例9と同様に実施し、得られたスチレン系樹脂を評価した。評価結果を以下の表3に示す。シリコーンオイルを加えない場合は実施例10と比較し、著しくMIT耐折強度が低下した。
【0078】
[比較例3]
シリコーンオイルとしてオイルAを600ppm添加した以外は実施例1と同様に実施し、得られたスチレン系樹脂組成物を評価した。評価結果を以下の表3に示す。実施例1と比較し、樹脂組成物の透明性が大幅に悪化し、耐熱性も低下した。
【0079】
[比較例4]
樹脂(b)を[樹脂D]から[樹脂E]とし、添加量を5部とした以外は実施例3と同様に実施し、得られたスチレン系樹脂組成物を評価した。評価結果を以下の表3に示す。実施例3と比較し、樹脂組成物の透明性が大幅に悪化し、耐熱性も低下した。
【0080】
[比較例5]
樹脂(b)を添加しない以外は実施例2と同様に実施し、得られたスチレン系樹脂組成物を評価した。評価結果を以下の表3に示す。実施例2と比較し、樹脂組成物の強度が著しく低下し、インパクト強度、MIT耐折強度がともに低下した。
【0081】
[比較例6]
共重合樹脂(a)の添加をGPPS[樹脂C]に変更した以外は実施例1と同様に実施し、得られた樹脂組成物を評価した。評価結果を以下の表3に示す。実施例1と比較し、樹脂組成物の耐熱性が大幅に低下した。
【0082】
[比較例7]
シリコーンオイルを加えない以外は比較例6と同様に実施し、得られた樹脂組成物を評価した。評価結果を以下の表3に示す。実施例1と比較例1との関係に比べ、比較例6では、比較例7に比較して、シリコーンオイル添加によるMIT耐折強度への改善幅はみられない。
【0083】
【表3】