(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6584368
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 3/26 20060101AFI20190919BHJP
E06B 3/988 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
E06B3/26
E06B3/988 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-126384(P2016-126384)
(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公開番号】特開2018-3251(P2018-3251A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 岳宏
(72)【発明者】
【氏名】酒井 順也
(72)【発明者】
【氏名】山中 里加子
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−317832(JP,A)
【文献】
実開昭55−27343(JP,U)
【文献】
特開2001−65249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/96−3/99
E06B 3/26
E06B 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面材と、
前記面材の周端部を収容する面材収容部を有し押出成形品でなる金属製枠材及び合成樹脂製枠材が組み合わされている複数の枠部材と、
を有し、
前記複数の枠部材のうちの互いに隣り合う2つの前記枠部材は、
一方の前記枠部材の端部が他方の前記枠部材の端部に挿入された状態で、前記他方の枠部材側から挿通されて前記一方の枠部材に螺合されるビスにより接合されており、
前記他方の枠部材の前記合成樹脂製枠材の、前記面材収容部を形成する面材対向部は、前記面材収容部において前記面材が挿入される開放側に位置し厚みが薄い薄肉部と、前記面材収容部における奥側に位置し厚みが厚い厚肉部と、を有し、
前記一方の枠部材の前記合成樹脂製枠材において挿入される側の前記端部は、前記他方の枠部材の前記薄肉部と前記金属製枠材との間に挿入されて前記薄肉部に当接され、
前記一方の枠部材の前記金属製枠材は、前記合成樹脂製枠材における前記挿入される側の端部より突出している部位が、前記厚肉部と対向すると共に前記厚肉部側に張り出す張出部を有していることを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具であって、
前記張出部は、前記厚肉部に当接していることを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建具であって、
前記張出部は、前記一方の枠部材における前記金属製枠材の挿入される側の端部側が、先端側に向かって前記厚肉部との間隔が広くなる傾斜部を備えていることを特徴とする建具。
【請求項4】
面材と、
前記面材の周端部を収容する面材収容部を有し押出成形品でなる金属製枠材及び合成樹脂製枠材が組み合わされている複数の枠部材と、
を有し、
前記複数の枠部材のうちの互いに隣り合う2つの前記枠部材は、
一方の前記枠部材の端部が他方の前記枠部材の端部に挿入された状態で、前記他方の枠部材側から挿通されて前記一方の枠部材に螺合されるビスにより接合されており、
前記他方の枠部材の前記合成樹脂製枠材の、前記面材収容部を形成する面材対向部は、前記面材収容部において前記面材が挿入される開放側に位置し厚みが薄い薄肉部と、前記面材収容部における奥側に位置し厚みが厚い厚肉部と、を有し、
前記一方の枠部材の前記合成樹脂製枠材において挿入される側の前記端部は、前記他方の枠部材の前記薄肉部と前記金属製枠材との間に挿入されて前記薄肉部に当接され、
前記金属製枠材の、前記一方の枠部材の前記合成樹脂製枠材の前記挿入される側の端部より突出している部位は、前記厚肉部と対向し、前記厚肉部との間にスペーサーを有していることを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項4に記載の建具であって、
前記スペーサーは、前記金属製枠材と前記厚肉部とのうちのいずれか一方に設けられており、他方に当接していることを特徴とする建具。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の建具であって、
前記スペーサーは、前記一方の枠部材の先端側に向かって前記他方の枠部材との間隔が広くなる傾斜部を備えていることを特徴とする建具。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の建具であって、
前記面材対向部は、中空部分を有しない板状をなしていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面材の周端部を収容する面材収容部を有し金属製枠材及び合成樹脂製枠材が組み合わされている複数の枠部材を有する建具に関する。
【背景技術】
【0002】
面材の周端部を収容する面材収容部を有し金属製枠材及び合成樹脂製枠材が組み合わされている複数の枠部材を有する建具としては、本体の内部にガラス取付用の凹部を有する金属製室外部材と、この金属製室外部材の室内面に取り付けた樹脂製室内側部材とを備えた金属樹脂複合框を有するガラス障子を含む建具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記建具のような、ガラス障子の上框及び下框をなす横框と戸当り框及び召合せ框をなす縦框は、それぞれ樹脂製室内側部材の、金属製室外側部材の凹部を形成する縦部と対向する一側部は薄板状であり、金属製室外側部材の縦部の室内面に接している。そして、横框と縦框との連結部は、縦框の縦部が切り欠かれており、縦部が切り欠かれている縦框の凹部に横框の凹部が挿入され、横框の一側部の室内面と縦框の一側部の室外面とが接する、或いは、近接している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂製の框のような長尺部材は、熱による伸縮量が大きいので、例えば、縦框と横框との接合部は、いずれか一方の合成樹脂製の框が他方の合成樹脂製の框側に入り込ませないと、合成樹脂製の框が収縮した際に縦框と横框との間に隙間が生じてしまい意匠性が損なわれる。このため、例えば、横框の樹脂製室内側部材を縦框の凹部の奥まで挿入させた状態で縦框と横框とを固定すると、縦框の室内側に臨む面と横框の室内側に臨む面との段差が大きくなり、框の見込み幅が広くなるとともに、意匠性も損なわれる。また、挿入された横框の樹脂製室内側部材が熱等による伸縮量だけ縦框の室内側部材に横框の樹脂製室内側部材を入り込ませて固定すると、縦框の室内側部材と横框の樹脂製室内側部材とが見込み方向に重なっていない部分では、横框の金属製室外部材と縦框の樹脂製室内側部材との間に隙間が生じてしまう。
【0005】
上記のようなガラス障子が備える金属樹脂複合框は、横框と縦框とが、縦框側から挿入されて横框に螺合されるビスにより連結されると、ビスの螺合により横框が回転する長手方向に沿う軸周りに回転する力が横框に作用する。このとき、横框の金属製室外部材と縦框の樹脂製室内側部材との間に隙間が生じていると、ビスの螺合により横框が回転し、横框が縦框に対して捻れて連結されてしまう虞がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属製枠材及び合成樹脂製枠材を有する枠部材同士が連結されつつも見込み方向の幅を狭く抑え意匠性に優れた枠体を有する建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために本発明の建具は、面材と、前記面材の周端部を収容する面材収容部を有し押出成形品でなる金属製枠材及び合成樹脂製枠材が組み合わされている複数の枠部材と、を有し、前記複数の枠部材のうちの互いに隣り合う2つの前記枠部材は、一方の前記枠部材の端部が他方の前記枠部材の端部に挿入された状態で、前記他方の枠部材側から挿通されて前記一方の枠部材に螺合されるビスにより接合されており、前記他方の枠部材の前記合成樹脂製枠材の、前記面材収容部を形成する面材対向部は、前記面材収容部において前記面材が挿入される開放側に位置し厚みが厚い厚肉部と、前記面材収容部における奥側に位置し厚みが薄い薄肉部と、を有し、前記一方の枠部材の前記合成樹脂製枠材において挿入される側の前記端部は、前記他方の枠部材の前記薄肉部と前記金属製枠材との間に挿入されて前記薄肉部に当接され、前記一方の枠部材の前記金属製枠材は、前記合成樹脂製枠材における前記挿入される側の端部より突出している部位が、前記厚肉部と対向すると共に前記厚肉部側に張り出す張出部を有していることを特徴とする建具である。
【0008】
このような建具によれば、互いに隣り合っている2つの枠部材のうちの一方の枠部材の合成樹脂製枠材の挿入される側の端部が、他方の枠部材の薄肉部と金属製枠材との間に挿入されて薄肉部に当接されているので、一方の枠部材の合成樹脂製枠材の挿入される側の端部を、他方の枠部材の厚肉部と金属製枠材との間まで挿入されている場合より、面材の面外方向における幅を薄くすることができるとともに、2つの枠部材の段差を小さく抑えることが可能である。
【0009】
また、一方の枠部材の合成樹脂製枠材の挿入される側の端部は、他方の枠部材の薄肉部と金属製枠材との間に挿入されており、一方の枠部材において合成樹脂製枠材より挿入される端部側に突出している金属製枠材は他方の枠部材の厚肉部と対向するとともに、厚肉部側に張り出している張出部を有しているので、一方の枠部材において合成樹脂製枠材より挿入される端部側に突出している金属製枠材と他方の枠部材の合成樹脂製枠材との間に生じる隙間をより狭く抑えることが可能である。
【0010】
このため、一方の枠部材の端部が他方の枠部材の端部に挿入された状態で、他方の枠部材側から挿通されて一方の枠部材に螺合されるビスにより接合されたとしても、ビスの螺合により一方の枠部材が回転して他方の枠部材に対して捻れて連結されてしまうことを抑制することが可能である。
【0011】
かかる建具であって、前記張出部は、前記厚肉部に当接していることが望ましい。
このような建具によれば、張出部が厚肉部に当接しているので、一方の枠部材において合成樹脂製枠材より端部側に突出している金属製枠材と他方の枠部材の合成樹脂製枠材との間に隙間が生じない。このため、他方の枠部材側から挿通されて一方の枠部材に螺合されるビスにより接合されたとしても、ビスの螺合により一方の枠部材が回転して他方の枠部材に対して捻れて連結されてしまうことを防止することが可能である。
【0012】
かかる建具であって、前記張出部は、前記一方の枠部材における前記金属製枠材の挿入される側の端部側が、先端側に向かって前記厚肉部との間隔が広くなる傾斜部を備えていることが望ましい。
このような建具によれば、他方の枠部材の厚肉部と対向する位置まで挿入される一方の枠部材の金属製枠材が有する張出部が、金属製枠材の先端側に向かって厚肉部との間隔が広くなる傾斜部を備えているので、一方の枠部材を他方の枠部材に容易に挿入することが可能である。
【0013】
また、面材と、前記面材の周端部を収容する面材収容部を有し押出成形品でなる金属製枠材及び合成樹脂製枠材が組み合わされている複数の枠部材と、を有し、前記複数の枠部材のうちの互いに隣り合う2つの前記枠部材は、一方の前記枠部材の端部が他方の前記枠部材の端部に挿入された状態で、前記他方の枠部材側から挿通されて前記一方の枠部材に螺合されるビスにより接合されており、前記他方の枠部材の前記合成樹脂製枠材の、前記面材収容部を形成する面材対向部は、前記面材収容部において前記面材が挿入される開放側に位置し厚みが厚い厚肉部と、前記面材収容部における奥側に位置し厚みが薄い薄肉部と、を有し、前記一方の枠部材の前記合成樹脂製枠材において挿入される側の前記端部は、前記他方の枠部材の前記薄肉部と前記金属製枠材との間に挿入されて前記薄肉部に当接され、前記金属製枠材の、前記一方の枠部材の前記合成樹脂製枠材の前記挿入される側の端部より突出している部位は、前記厚肉部と対向し、前記厚肉部との間にスペーサーを有していることを特徴とする建具である。
【0014】
このような建具によれば、互いに隣り合っている2つの枠部材のうちの一方の枠部材の合成樹脂製枠材の挿入される側の端部が、他方の枠部材の薄肉部と金属製枠材との間に挿入されて薄肉部に当接されているので、一方の枠部材の合成樹脂製枠材の挿入される側の端部を、他方の枠部材の厚肉部と金属製枠材との間まで挿入されている場合より、面材の面外方向における幅を薄くすることができるとともに、2つの枠部材の段差を小さく抑えることが可能である。
【0015】
また、一方の枠部材の合成樹脂製枠材の挿入される側の端部は、他方の枠部材の薄肉部と金属製枠材との間に挿入されており、一方の枠部材において合成樹脂製枠材より挿入される端部側に突出している金属製枠材は他方の枠部材の厚肉部と対向するとともに、厚肉部との間にスペーサーが設けられているので、一方の枠部材において合成樹脂製枠材より挿入される端部側に突出している金属製枠材と他方の枠部材の合成樹脂製枠材との間に生じる隙間をより狭く抑えることが可能である。
【0016】
このため、一方の枠部材の端部が他方の枠部材の端部に挿入された状態で、他方の枠部材側から挿通されて一方の枠部材に螺合されるビスにより接合されたとしても、ビスの螺合により一方の枠部材が回転して他方の枠部材に対して捻れて連結されてしまうことを抑制することが可能である。
【0017】
かかる建具であって、前記スペーサーは、前記金属製枠材と前記厚肉部とのうちのいずれか一方に設けられており、他方に当接していることが望ましい。
このような建具によれば、金属製枠材と前記厚肉部とのうちの一方に設けられているスペーサーが他方に当接しているので、金属製枠材と厚肉部との間に隙間は生じない。このため、他方の枠部材側から挿通されて一方の枠部材に螺合されるビスにより接合されたとしても、ビスの螺合により一方の枠部材が回転して他方の枠部材に対して捻れて連結されてしまうことを防止することが可能である。
【0018】
かかる建具であって、前記スペーサーは、前記一方の枠部材の先端側に向かって前記他方の枠部材との間隔が広くなる傾斜部を備えていることが望ましい。
このような建具によれば、他方の枠部材の厚肉部と対向する位置まで挿入される一方の枠部材に設けられているスペーサーは、一方の枠部材の先端側に向かって他方の枠部材との間隔が広くなる傾斜部を備えているので、一方の枠部材を他方の枠部材に容易に挿入することが可能である。
【0019】
かかる建具であって、前記面材対向部は、中空部分を有しない板状をなしていることが望ましい。
このような建具によれば、面材対向部が、中空部分を有しない板状をなしているので、面材の面外方向における幅をより薄くすることができるとともに、2つの枠部材の段差をより小さく抑えることが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、金属製枠材及び合成樹脂製枠材を有する枠部材同士が連結されつつも見込み方向の幅を狭く抑え意匠性に優れた枠体を有する建具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る建具を室内側から見た内観図である。
【
図4】上框と左の縦框とが接合される様子を示す平面図である。
【
図5】上框と左の縦框とが接合された状態を示す斜視図である。
【
図6】スペーサーが設けられた上框を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
本実施形態の建具1は、例えば、
図1に示すような建物等に設けられる窓枠2に装着される2枚の障子3を備えた引き違い窓用の建具1を例に挙げて説明する。
【0023】
以下の説明においては、建物等に設けられている状態の建具1を室内側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。建具1の各部位であっても、また、建具1を構成する各部材については単体の状態であっても、建物等に取り付けられた状態にて上下方向、左右方向、見込み方向となる方向にて方向を特定して説明する。
【0024】
2枚の障子3は各々、面材としてのガラス板4と、ガラス板4の周端部を収容して矩形をなす框体5と、を有している。
【0025】
框体5は、ガラス板4の上下に配置される上框6及び下框7と、ガラス板4の左右に配置される左右の縦框8とが接合されて矩形状をなしている。上框6、下框7及び左右の縦框8はいずれも、
図2、
図3に示すように、室外側に配置されて押出成形材でなるアルミニウムなどの金属製の室外部材61、81と、室内側に配置され押出成形材でなる合成樹脂製の室内部材62、82とが、互いに係止されて一体をなしている。ここで、下框7については図示を省略している。
【0026】
上框6、下框7及び左右の縦框8には、矩形状に接合された框体5の内周側に、ガラス板4の周端部が収容されるようにガラス収容部51が各々設けられている。ここで、上框6、下框7及び左右の縦框8が枠部材に相当し、室外部材61、81が金属製枠材に相当し、室内部材62、82が合成樹脂製枠材に相当する。
以下、上框6及び下框7と左右の縦框8との接合部について、上框6と左の縦框8との接合部を例に挙げて説明する。
【0027】
上框6の室外部材61は、窓枠2を形成する上枠21に設けられているレール(不図示)が挿入され下方に窪むレール挿入溝61aをなす室外壁部61b及び室内壁部61cと、室外壁部61bと室内壁部61cとの下端を繋ぐ底部61dと、室外壁部61bから下方に延出されガラス収容部51に収容されたガラス板4と室外側にて対向する室外上ガラス対向部61eと、底部61dから室内側に延出されて上框6の室内部材62が係止される上框係止片61fと、底部61dの下側にビス10が螺合されるビス螺合部61gが、押出成形により長手方向に沿って設けられている。また、室内壁部61cの上端部であって、左右方向における端部近傍に、室内側に張り出す張出部61hが設けられている。
【0028】
上框6の室内部材62は、室内壁部61cの室内側に設けられる室内樹脂壁部62aと、室内樹脂壁部62aの上端に設けられ室内壁部61cの上端に係止される室内上係止片62bと、室内樹脂壁部62aから下方に延出され室外ガラス対向部61eとともにガラス収容部51を形成しガラス板4と室内側にて対向する室内上ガラス対向部62cと、室内樹脂壁部62a室内ガラス対向部62cとの境界部分から室外側に延出されて上框係止片61fに係止される室内下係止片62dと、を有している。
【0029】
上框6は、室外部材61が室内部材62の左右方向の両側に突出する状態で係止されている。室外部材61に設けられている張出部61hは、室内部材より突出している部位に設けられている。
【0030】
左の縦框8の室外部材81は、矩形状の中空部81aと、中空部81aの室外側及び室内側から各々左方向に延出された室外延出部81b及び室内延出部81cと、中空部81aの室外側の縁から右方向に延出されガラス収容部51に収容されたガラス板4と室外側にて対向する室外ガラス対向部81dと、中空部81aと室内延出部81cとにそれぞれ設けられて左の縦框8の室内部材82が係止される縦框係止片81eと、が設けられている。
【0031】
左の縦框8の室内部材82は、中空部81a及び室内延出部81cの室内側を覆う室内縦壁部82aと、室内縦壁部82aの左右の両端部に設けられ室外部材81の縦框係止片81eに係止される2つの室内縦係止片82bと、室内縦壁部82aの右側の端部から延出されて室外ガラス対向部81dとともにガラス収容部51を形成しガラス板4と室内側にて対向する室内縦ガラス対向部82cと、を有している。
【0032】
上框6と左の縦框8とは、左の縦框8のガラス収容部51の上端部に、上框6の左端部が挿入され、左の縦枠8側から上框6の長手方向に沿って挿入されたビス10が、上框6のビス螺合部61gに螺合されて接合されている。
【0033】
合成樹脂製の室内部材62、82は、熱による伸縮量が大きく伸縮し易いので、上框6室内部材82の先端を、左の縦框8の室内部材82に突き当てて接合すると、例えば室温の変化により上框6が縮むと、左の縦框8の室内部材82との間に隙間が生じ意匠性が損なわれる。このため、上框6の室内部材62が、縦框8の室内部材82の室外側にて見込み方向に重なるように挿入された状態で、上框6と左の縦框8とが接合されていることが望ましい。
【0034】
しかしながら、上框6が左の縦框8のガラス収容部51内に挿入されると、障子3の室内側において上框6と左の縦框8との接合部にて大きな段差が生じるため意匠性が損なわれる。
【0035】
そこで、本実施形態の建具1は、上框6と左の縦框8との接合部にて段差をより小さくするために、上框6と左の縦框8が見込み方向において重なる部位、すなわち、上框6と左の縦框8においてガラス収容部51を形成し、挿入されたガラス板4と対向する面材対向部としての室内上ガラス対向部62c及び室内縦ガラス対向部82cの厚みをより薄く板状にしている。このとき、室内上ガラス対向部62c及び室内縦ガラス対向部82cには中空部を設けることなく、中実の板状として押出成形したときに反り等が生じること無く所望の形を形成可能な厚みに設定している。
【0036】
また、上框6が挿入されて見込み方向に重なる縦框8の室内縦ガラス対向部82cは、室内縦壁部82a側が、ガラス収容部51にガラス板4が挿入される開放側より厚肉に形成している。すなわち、室内縦ガラス対向部82cの室内縦壁部82a側が厚肉部82dをなし、開放側が薄肉部82eをなし、厚肉部82dと薄肉部82eとの境界部分に段差が設けられている。このとき、左の縦框8の薄肉部82eは、ガラス板4が挿入される端部(右端部)側からの幅及び厚みが、熱による上框6の長手方向の伸縮量より広く、且つ、押出成形したときに室内側の面にヒケが生じない、或いは、薄肉部82eに反りが生じないような幅及び厚みに設定されている。
【0037】
上框6は、室外部材61が室内部材62より左の縦框8側に突出するように、室外部材61と室内部材62とが組み合わされている。このとき、室外部材61の室内部材62に対する突出量は、上框6の室外部材61が、左の縦框8のガラス収容部51の底部61dに当接されたときに、上框6の室内部材62の左側の先端が、左の縦框8に設けられた厚肉部82dと薄肉部82eとの境界近傍に位置するように設定されている。
【0038】
このとき、上框6及び左の縦框8の室外部材61、81及び室内部材62、82はいずれも押出成形部材なので、各々の部材の長手方向においては断面形状が変化しない。このため、押出成形されて切断された室外部材81と室内部材82とでなる縦框8のガラス収容部51に、押出成形されて切断された室外部材61と室内部材62とでなる上框6の左端を挿入し、左の縦框8の薄肉部82eと上框6の室内上ガラス対向部62cとが見込み方向において重なるように配置されると、上框6の室外部材61と左の縦框8の厚肉部82dとの間に隙間が生じてしまう。このような状態で、左の縦框8側から上框6の長手方向に沿ってビス10を進入させ上框6に螺合させて左の縦框8と上框6とを接合すると、上框6が回転し左の縦框8に対して上框6が捻れた状態で接合されてしまう場合がある。
【0039】
このため、本実施形態の建具1は、
図4、
図5に示すように、左の縦框8のガラス収容部51に上框6の左端を挿入したときに、左の縦框8の厚肉部82dと対向する、上框6の室外部材61の室内壁部61cに厚肉部82d側に張り出す張出部61hを設けている。この張出部61hは、押出成形されて切断された上框6の室外部材61の室内側の室内壁部61cを室内側に張り出させるべく鍛造による加工を施して形成している。
【0040】
本実施形態の張出部61hは、押出成形されて切断された上框6の室外部材61の室内壁部61cにおいて、上框6の室外部材61の左右方向における端部、すなわち、挿入される側の端部より僅かに中央側に鍛造により設けられているので、張出部61hの左右方向における両側に、最も張り出している最張出部61iと張り出していない部位との間が、最張出部61iに向かって張出量が漸次大きくなるテーパー状をなす傾斜部61jを有している。
【0041】
本実施形態の建具1によれば、互いに隣り合う上框6及び左の縦框8のうちの上框6の室内部材62の端部が、左の縦框8の薄肉部82eと室外部材81との間に挿入されて薄肉部82eに当接されているので、上框6の室内部材62の端部を、左の縦框8の厚肉部82dと室外部材81との間まで挿入されている場合より、ガラス板4の面外方向における幅を薄くすることができるとともに、上框6と左の縦框8との段差を小さく抑えることが可能である。
【0042】
また、上框6の室内部材62の端部は、左の縦框8の薄肉部82eと室外部材81との間に挿入されており、上框6において室内部材62より挿入される端部側に突出している室外部材61は左の縦框8の厚肉部82dと対向するとともに、厚肉部82d側に張り出している張出部61hを有しているので、上框6において室内部材62より挿入される端部側に突出している室外部材61と左の縦框8の室内部材82との間に生じる隙間をより狭く抑えることが可能である。
【0043】
このため、上框6の端部が左の縦框8の端部に挿入された状態で、左の縦框8側から挿通されて上框6に螺合されるビス10により接合されたとしても、ビス10の螺合により上框6が回転して左の縦框8に対して捻れて連結されてしまうことを抑制することが可能である。
【0044】
また、張出部61hが厚肉部82dに当接しているので、上框6において室内部材62より挿入される端部側に突出している室外部材61と左の縦框8の室内部材82との間に隙間が生じることを防止することが可能である。このため、左の縦框8側から挿通されて上框6に螺合されるビス10により接合されたとしても、ビス10の螺合により上框6が回転して左の縦框8に対して捻れて連結されてしまうことを防止することが可能である。
【0045】
また、左の縦框8の厚肉部82dと対向する位置まで挿入される上框6の室外部材61が有する張出部61hが、室外部材61の先端側に向かって厚肉部82dとの間隔が広くなる傾斜部61jを備えているので、上框6を左の縦框8に容易に挿入することが可能である。
【0046】
また、室内上ガラス対向部62c及び室内縦ガラス対向部82cが、中空部分を有しない板状をなしているので、ガラス板4の面外方向における幅をより薄くすることができるとともに、上框6と左の縦框8との段差をより小さく抑えることが可能である。
【0047】
上記実施形態においては、上框6の室外部材61の室内壁部61cに張出部61hを設けて、左の縦框8と上框6とを接合するビス10の螺合により上框6が回転して左の縦框8に対して捻れて連結されてしまうことを抑制する例について説明したがこれに限るものではない。例えば、
図6に示すように、上框6の室外部材61の室内壁部61cに厚肉部82d側にスペーサー9を設けても構わない。
【0048】
この場合には、上框6の室内部材62の端部は、左の縦框8の薄肉部82eと室外部材81との間に挿入されているので、上框6においてにおいて室内部材62より挿入される端部側に突出している室外部材61は左の縦框8の厚肉部82dと対向するとともに、厚肉部82dとの間にスペーサー9が設けられているので、上框6において室内部材62より挿入される端部側に突出している室外部材61と左の縦框8の室内部材82との間に生じる隙間をより狭く押さえることが可能である。
【0049】
このため、上框6の端部が左の縦框8の端部に挿入された状態で、左の縦框8側から挿通されて上框6に螺合されるビス10により接合されたとしても、ビス10の螺合により上框6が回転して左の縦框8に対して捻れて連結されてしまうことを抑制することが可能である。
【0050】
また、スペーサー9が厚肉部82dに当接している場合には、上框6において室内部材62より挿入される端部側に突出している室外部材61と左の縦框8の室内部材82との間に隙間が生じない。このため、左の縦框8側から挿通されて上框6に螺合されるビス10により接合されたとしても、ビス10の螺合により上框6が回転して左の縦框8に対して捻れて連結されてしまうことを防止することが可能である。
【0051】
また、左の縦框8の厚肉部82dと対向する位置まで挿入される上框6の室外部材61に設けられているスペーサー9が、上框6の先端側に向かって厚肉部82dとの間隔が広くなる傾斜部9aを備えているので、上框6を左の縦框8に容易に挿入することが可能である。ここで、スペーサー9は、厚肉部82dに設けられていても構わず、また、上框6の室外部材61及び厚肉部82dのいずれにも設けられていても構わない。
【0052】
上記の説明においては、上框6と左の縦框8との接合部を例に挙げて説明したが、上框6と右の縦框8との接合部、及び、下框7と左右の縦框8との接合部においても同様である。
【0053】
また、上記実施形態においては、左の縦框8に上框6の左端を挿入して接合する例について説明したが、上框及び下框に縦框の上下端部を挿入して接合しても構わない。
また、上記実施形態においては、枠部材を框体としたが、例えば、FIX窓用の建具の窓枠等であっても構わない
【0054】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 建具、4 ガラス板、6 上框、8 縦框、51 ガラス収容部、9スペーサー、
9a 傾斜部、10 ビス、61 室外部材、61h 張出部、61j 傾斜部、
62 室内部材、81 室外部材、82 室内部材、82c 室内縦ガラス対向部、
82d 厚肉部、82e 薄肉部、